(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る指針式メータ装置の具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0025】
(第1実施形態)
<装置の概要の説明>
<指針式メータ装置の外観>
指針式メータ装置10の外観の具体例を
図1に示す。
【0026】
図1に示した指針式メータ装置10は、車両に搭載されるメータユニットとして利用される。指針式メータ装置10は、車両における主要な計器であるスピードメータ11、タコメータ12、燃料計13、及び水温計14を備え、更に各種警報を表示するための警報表示部15を備えている。
【0027】
スピードメータ11は、円形に形成された文字板の中央部を中心として正逆両方向に回転可能な指針11aと、文字板の周縁に沿って形成された目盛り11bと、を有している。スピードメータ11は、指針11aが目盛り11b上の所定の位置を指し示すように指針11aの回転位置が制御されることにより、車両の現在の速度を指示する。タコメータ12、燃料計13、及び水温計14のそれぞれも、スピードメータ11と同様に、車両の各種状態量を呈示するための目盛りと回転可能な指針とを有している。
【0028】
警報表示部15は、車両に生じた異常などに応じて、警告用のランプを点灯したり、運転者に伝えるべき様々な情報を表示するために利用される。
【0029】
<電気回路の構成例>
指針式メータ装置10の電気回路の構成例を
図2に示す。
図2に示すように、指針式メータ装置10は、制御部101、不揮発性メモリ102、電源回路103、インタフェース回路104、表示部107、及び4つのステッピングモータ111〜114を備えている。
【0030】
制御部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)により構成されており、予め組み込まれているプログラムを実行することによって、指針式メータ装置10の全体の制御を行う。
【0031】
不揮発性メモリ102は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)により構成されており、制御部101が実行するプログラムや、様々な制御において使用される各種定数を保持している。不揮発性メモリ102上の一部のデータは、制御部101のアクセスにより必要に応じて逐次更新される。
【0032】
電源回路103は、車載バッテリー106から供給される電源電力を利用して、指針式メータ装置10が必要とする安定化された電源電圧を生成する。
【0033】
インタフェース回路104は、車両側から出力される各種信号を入力し、制御部101が処理可能な信号に変換する。例えばイグニッションスイッチ105からの信号が、インタフェース回路104を介して制御部101に入力される。表示部107は、液晶表示パネルで構成される表示画面や、表示ランプなどを備えており、様々な情報を表示することができる。
【0034】
4つのステッピングモータ111、112、113、及び114は、それぞれ
図1に示したスピードメータ11、タコメータ12、燃料計13、及び水温計14の各指針を駆動するために使用される。これらのステッピングモータ111〜114は、制御部101の出力に接続されており、制御部101からの制御信号に従って回転駆動される。尚、
図2には示してないが、実際には励磁コイルの通電状態を制御する所定のドライバ回路を介して、制御部101とステッピングモータ111〜114とが接続されている。
【0035】
<駆動機構の構成例>
指針式メータ装置10の駆動機構の具体的な構成例を
図3に示す。ステッピングモータ111の出力軸とスピードメータ11の指針11aとの間は、
図3に示すような構成の歯車機構20を介して機械的に連結されている。
図3に示すように、歯車機構20は、ローターギア21、中間ギア22、23、及び出力ギア24を有している。
【0036】
ステッピングモータ111の出力軸には、ローターギア21が同軸上に連結されている。そして、互いに隣接する位置に配置されているローターギア21及び中間ギア22の外周に形成されている歯が互いに噛み合っている。
【0037】
また、中間ギア22の回転軸と同軸に中間ギア23が連結されている。さらに、中間ギア23と、出力ギア24とが互いに隣接する位置に配置してあり、中間ギア23及び出力ギア24の外周に形成されている歯が互いに噛み合っている。
【0038】
出力ギア24の中心に連結されている回転軸25には、指針11aの基部が圧入され固定されている。したがって、出力ギア24が回転すると、それに伴って、指針11aが回転する。
【0039】
つまり、ステッピングモータ111を駆動すると、ローターギア21が回転し、ローターギア21の駆動力が中間ギア22、中間ギア23、及び出力ギア24に順次に伝達され、これにより指針11aを駆動することができる。
【0040】
尚、歯車機構20においては、ローターギア21と中間ギア22との噛み合い部分、及び中間ギア23と出力ギア24との噛み合い部分には、歯車の滑らかな回転のために必要なバックラッシュ(間隙)が存在している。
【0041】
図3に示すように、出力ギア24上にはストッパピン24a(当接部)が固定されている。したがって、出力ギア24が回転すると、それに伴ってストッパピン24aの位置も変化する。また、指針式メータ装置10のケース側には、ストッパ26が所定の位置に固定されている。ストッパ26が配置されている位置は、ストッパピン24aの移動経路上にあるので、出力ギア24が回転を続けると、所定の回転位置でストッパピン24aがストッパ26に当接し、この状態で出力ギア24の回転が停止する。したがって、ストッパピン24aがストッパ26に当接した状態の位置を基準として、指針11a等の可動部の位置を管理することができる。尚、本実施形態では、当接部であるストッパピン24aが出力ギア24上に固定されているとして説明したが、即ち、歯車機構20が当接部を有するとして説明したが、キャップ裏面にストッパピンが成形されている場合には指針11aが当接部を有すると看做すことができるし、或いは指針11aから当接部が延設されていても構わない。
【0042】
<ステッピングモータの構成例>
ステッピングモータ111を含む駆動機構の構成例を
図4に示す。
図4に示すように、ステッピングモータ111は、互いに独立した2相の励磁コイル51a及び51bと、回転子52とを備えている。回転子52については、
図4のように円周方向において永久磁石のN極とS極とが交互に配置されている。
【0043】
したがって、2相の励磁コイル51a及び51bに流す電流によって発生する磁界と、回転子52の各極の永久磁石との間で生じる磁気吸引力又は磁気反発力により、回転子52を回転駆動することができる。
【0044】
<励磁信号の具体例>
ステッピングモータを駆動するための励磁信号の具体例を
図5に示す。
図5に示すような互いに90度(π/2[rad])の位相差を有する2相の励磁信号SIN及びCOSを用いることにより、ステッピングモータ111の回転量及び回転方向を制御することができる。即ち、励磁コイル51aに対して正弦波形の励磁信号SINを与え、同時に励磁コイル51bに対して余弦波形の励磁信号COSを与えることにより、ステッピングモータ111を駆動する。また、励磁信号SIN又はCOSの位相の進み/遅れを切り替えることにより、回転子52の回転方向を切り替える。
【0045】
励磁信号の制御周期T0は、励磁信号SIN及びCOSの波形の1周期と同じ長さである。
図5のように制御周期T0を繰り返すように励磁信号SIN及びCOSを出力することにより、連続的に又は間欠的にステッピングモータ111を駆動することができる。また、制御周期T0以内の精密な回転位置についても、励磁信号SIN及びCOSの2π[rad]以内の位相制御を行うことにより制御できる。
【0046】
<従来の励磁制御において、励磁開始時に発生する指針の挙動の説明>
図6を参照して、従来の励磁制御を用いた場合における、励磁開始時における指針の挙動を説明する。
図6は、従来の励磁制御の場合における原点復帰処理の例を示す図であり、
図6(A)は、励磁信号及び指針の回転角度の時間変化を示す図、
図6(B)は、励磁信号の位相と指針の回転角度との関係を表す図、
図6(C)は、励磁信号の位相を示すベクトル図である。
図6においては、指針の挙動が実線で示されており、励磁信号の位相が破線で示されている。この点は、後述する
図7、
図9〜
図14においても同様である。また、以下では、スピードメータ11の指針11aを制御対象として説明するが、同様の制御は他の計器であるタコメータ12、燃料計13、及び水温計14の各指針にも実施される。
【0047】
まず、
図6が示す内容について説明する。
図6に示すように、この例では、励磁信号の制御周期T0に相当する電気角の360度(2π[rad])が、機械角の2度の変化に対応している。つまり、励磁信号SIN及びCOSを制御して励磁信号の位相が1周期分だけ変化すると、機械角に相当する指針11aの回転角度が2度変化する。
【0048】
図6(C)のベクトル図における位置P1、P2、P3、及びP4は、それぞれ次に示すような点である。
P1:励磁信号COSがプラスの最大値になり、SINが0になる位置。
P2:励磁信号SINがプラスの最大値になり、COSが0になる位置。
P3:励磁信号COSがマイナスの最大値になり、SINが0になる位置。
P4:励磁信号SINがマイナスの最大値になり、COSが0になる位置。
励磁信号SIN及びCOSを用いてステッピングモータ111の駆動を制御することにより、各位置P1、P2、P3、及びP4に回転子52を位置決めすることができる。また、励磁信号の位相を切り替えることにより、回転方向のCW(時計回り、正方向)/CCW(反時計回り、逆方向)を切り替えることができる。
【0049】
制御部101が出力する励磁信号の位相と、指針11aの回転角度(指示角度)との関係は、
図6(B)に「理論値」として示す直線のように線形であれば理想的である。しかしながら、実際には歯車機構20のバックラッシュの影響があるので指示誤差が生じ、実際の指針の動きと「理論値」との間には違いが生じる。このため、
図6(B)のI〜Vの順番で制御した場合には次のような動作になる。
Iの区間:励磁信号の位相を0から増加させても、バックラッシュの影響がある間は指示角度が0のまま変化しない。
IIの区間:励磁信号の位相角度の増加に比例して指示角度が増える。
IIIの区間:励磁信号の位相角度を減少させても、バックラッシュの影響がある間は指示角度に変化が現れない。
IVの区間:励磁信号の位相角度の減少に比例して指示角度が減少する。
Vの区間:励磁信号の位相角度を0から増加させても、バックラッシュの影響がある間は指示角度が変化しない。
したがって、「理論値」と実際の指針11aの指示角度との間には、バックラッシュ量に相当する指示誤差βが発生する。また、指針が目盛りの「0」の位置を指示する位置である原点位置と、ストッパピン24aがストッパ26に当接する位置であるストッパ位置との間には、指示誤差αが発生する。このため、従来の制御では、
図6に示すように、原点位置とストッパ位置との間隔が、バックラッシュにより発生する指示誤差αと等しく設定され、励磁開始時に原点復帰処理が実施されている。
【0050】
続いて、励磁開始時における具体的な制御内容を説明する。
脱調による位置ずれをリセットするために、励磁開始時に、原点復帰処理を実行する。この原点復帰処理では、
図6に符号Aで示す位置を励磁信号における励磁開始位置として、
図6(A)に示すように励磁信号の位相を当該励磁開始位置から所定の逆転角度だけ戻し、ストッパピン24aがストッパ26に当接するストッパ位置まで指針11aを回転させる。このとき、歯車機構20は片寄せされた状態となる。この片寄せされた状態から、バックラッシュによる影響が無くなる位置まで指針11aを正回転(時計回り方向への回転)させ、この位置を原点位置(0目盛位置)として指針11aの位置を制御する。この原点復帰処理後には、励磁信号の位相は、
図6に符号Bで示す位置になる。即ち、この符号Bから励磁開始位置Aまでの角度が、励磁開始位置から原点復帰処理後までの角度である原点復帰角度であり、
図6の例では歯車機構20のバックラッシュ量に対応するバックラッシュ角度と等しい。また、上記逆転角度は、ヒステリシス特性の除去のために必要である励磁信号の制御周期T0に相当する角度以上の値が設定される。この例では、逆転角度を、制御周期T0に相当する360度(2π[rad])である基本逆転角度として説明する。
【0051】
一方、通常の指針制御の実施後、励磁終了時には、指針11aが逆方向に回転して上記原点位置(0目盛位置)に位置付けられるように(
図6(B)のIVに示すように)、励磁信号の位相を戻した後で、ステッピングモータ111への励磁を停止する。このとき、励磁信号の位相は、
図6中に符号B2で示す位置になる。この終了処理を実行することにより、ストッパピン24aがストッパ26に当接して歯車機構20が片寄せされた状態で、指針11aが原点位置に位置付けられて停止する。したがって、次に励磁を開始する前には、指針11aは原点位置に位置付けられている。
【0052】
このため、励磁を再開して、上記原点復帰処理を実行すると、励磁信号の位相が励磁開始位置Aとされ、指針11aがストッパ位置に位置付けられるので、
図6(A)に示すように、指針11aが原点位置からストッパ位置まで一気に動く。このような指針11aの挙動は、これを視認する運転者に不自然な動きとして認識される虞がある。尚、
図6(A)において、励磁信号を逆転角度だけ戻す間に指針11aがストッパ位置にて振動しているのは、ヒステリシスの除去処理中に指針11aに生じるリバウンド挙動(例えば特許第4176984参照。)のためである。
【0053】
続いて、
図7を参照して、従来の励磁制御により打込誤差の補正を実施する場合における、励磁開始時における指針の挙動を説明する。
図7は、従来の励磁制御により打込誤差の補正を実施する場合の原点復帰処理の例を示す図であり、
図7(A)は励磁信号及び指針の回転角度の時間変化の例を示す図、
図7(B)は、励磁信号の位相と指針の回転角度との関係を表す図、
図7(C)は、回転子の位置を示すベクトル図である。
【0054】
図7に示す例では、指針11aが機械角で0.3度だけ目標位置からずれて打ち込まれた場合を想定している。即ち、指針11aの打込誤差が0.3度である場合を想定している。この場合には、
図7に示すように、励磁開始位置Aから符号Cで示される原点復帰処理後の位置までの角度である原点復帰角度は、上記バックラッシュ角度に、打込誤差0.3度に基づき設定される打込誤差補正角度Xを加算した角度とする。励磁開始位置Aから励磁信号の位相を戻す逆転角度は、
図6の例と同様に基本逆転角度とする。これにより、
図7に示すように、原点復帰処理を実行して指針11aを原点位置に位置付けることができる。
【0055】
この場合における終了処理後の励磁信号の位相は、
図7中に符号C2で示す位置になる。このとき、指針11aは原点位置にて停止している。したがって、励磁を再開して原点復帰処理を実行すると、励磁信号の位相が励磁開始位置Aとされ、指針11aがストッパ位置に位置付けられるので、
図7(A)に示すように、指針11aが原点位置からストッパ位置まで一気に動く。さらに、
図7(A)に示すように、打込誤差を補正するための指示調整を実施する場合、当該指示調整を実施しない場合よりもストッパ位置と原点位置とが更に離れることになる。このため、励磁開始時に指針11aが一気に動く量が更に多くなる。
【0056】
以上説明したように、従来の励磁制御では、励磁開始時に指針が一気に動く。このため、例えばスピードメータ11、タコメータ12、燃料計13、及び水温計14の各指針間で打込誤差の補正の有無や補正量に違いがある場合には、励磁開始時における指針の挙動に違いが生じる可能性があり、運転者に不自然な動きであると認識される可能性がある。例えば、
図8に示すように、スピードメータ11の指針11aでは打込誤差の補正が実施され、タコメータ12の指針では打込誤差の補正が実施されない場合には、励磁開始時にはスピードメータ11の指針11aのみが動くので、励磁開始時におけるスピードメータ11の指針11aの挙動がタコメータ12の指針の挙動よりも大きくなってしまう。
【0057】
次に、
図9を参照して、励磁開始時において跳ね上がりが発生した場合の指針の挙動を説明する。
図9は、励磁開始時において跳ね上がりが発生した場合の指針の挙動を説明するための図であり、
図9(A)は、励磁信号の位相と指針の回転角度との関係を表す図、
図9(B)は、回転子の位置を示すベクトル図である。
【0058】
図9では、打込誤差の補正量が、指針11aの回転角度で1.0度であり、電気角では励磁信号の制御周期T0の半分に相当する180度(π[rad])である例を示している。励磁信号の位相は、原点復帰処理後には
図9中に符号Dで示す位置となり、終了処理後には
図9中に符号D2で示す位置となる。この場合には、終了処理後の励磁信号の位相が1.0度よりも僅かに正方向側であるか、逆方向側であるかによって、指針11aの回転方向が異なるので、励磁を開始するまで指針11aの回転方向が分からない。つまり、
図9(A)に示すように、終了処理後の励磁信号の位相が1.0度よりも大きい場合には、指針11aが原点位置からストッパ方向である逆方向(反時計回り方向)ではなく正方向(時計回り方向)に一旦動いた後で、ストッパ方向に移動してしまう跳ね上がりが発生する。一方、終了処理後の励磁信号の位相が1.0度よりも小さい場合には、指針11aは原点位置からストッパ方向である逆方向に移動する。このような跳ね上がりは、打込誤差の補正量が、指針11aの回転角度で1.0度よりも大きい場合に生じる。このため、従来は、跳ね上がりの発生を防止するために、打込誤差の補正量を励磁信号の半周期分に対応する量よりも小さくする必要があった。
【0059】
<第1実施形態に係る指針式メータ装置における励磁制御の説明>
図10を参照して、第1実施形態に係る指針式メータ装置における、励磁開始時における指針の挙動を説明する。
図10は、第1の実施形態係る指針式メータ装置の励磁制御の場合における原点復帰処理の例を示す図であり、
図10(A)は、励磁信号及び指針の回転角度の時間変化を示す図、
図10(B)は、励磁信号の位相と指針の回転角度との関係を表す図、
図10(C)は、励磁信号の位相を示すベクトル図である。
【0060】
第1実施形態の指針式メータ装置10における励磁制御では、
図6に示した例と比較して、励磁開始位置が異なる。即ち、励磁開始位置が、
図6の例では
図10に符号Aで示す位置であったのに対して、第1実施形態の励磁制御では、符号B2で示す終了処理実行後における励磁信号の位相から、バックラッシュ角度の半分だけ進んだ位置であり、
図10に符号A2で示す位置である。
【0061】
励磁開始位置が、符号B2で示す位置からバックラッシュ角度の半分だけ(開始時補正角度だけ)進んだ符号A2で示す位置であるので、
図10に示すように、逆転角度は、制御周期T0に相当する360度(2π[rad])である基本逆転角度に、当該開始時補正角度を加えた角度とする。原点復帰角度は、
図6に示した例と同様にバックラッシュ角度とする。
【0062】
以上説明した第1実施形態の指針式メータ装置10における励磁制御では、励磁開始位置が、終了処理の実行後における励磁信号の位相からバックラッシュ角度の半分だけ進んだ位置A2であるので、励磁開始時におけるステッピングモータ111の回転子の移動は歯車機構20のバックラッシュ内での動きとなり、励磁開始時に指針11aが動かない。そして、励磁開始後、上記逆転角度だけ励磁信号の位相を戻すことにより、
図10(A)に示すように、指針11aがストッパ位置まで連続的に滑らかに回転した後で、原点位置(0目盛位置)まで回転し、原点位置に位置付けられる。尚、このとき、ストッパ位置までの指針11aの回転速度と、当該ストッパ位置から原点位置までの回転速度とは、同一であってもよいし、異なる速度であっても構わない。
図10では、速度が異なる例を示している。また、上記逆転角度だけ励磁信号の位相を戻す際に、指針11aがストッパ位置まで連続的に滑らかに回転した後で、一旦停止し、所定の時間が経過した後、原点位置まで回転する構成としても構わない。
【0063】
次に、
図11を参照して、第1実施形態に係る指針式メータ装置の励磁制御により打込誤差の補正を実施する場合における、励磁開始時における指針の挙動を説明する。
図11は、第1の実施形態係る指針式メータ装置の励磁制御により打込誤差の補正を実施する場合における、原点復帰処理の例を示す図であり、
図11(A)は、励磁信号及び指針の回転角度の時間変化を示す図、
図11(B)は、励磁信号の位相と指針の回転角度との関係を表す図、
図11(C)は、励磁信号の位相を示すベクトル図である。
【0064】
この例における励磁制御は、
図7に示した例と比較して、励磁開始位置が異なる。即ち、励磁開始位置が、
図7の例では
図11に符号Aで示す位置であったのに対して、第1実施形態の励磁制御では、符号C2で示す終了処理実行後における励磁信号の位相から、バックラッシュ角度の半分だけ進んだ位置であり、
図11に符号A3で示す位置である。
【0065】
励磁開始位置が、符号C2で示す位置からバックラッシュ角度の半分だけ(開始時補正角度だけ)進んだ符号A3で示す位置であるので、
図11(A)示すように、逆転角度は、基本逆転角度(2π[rad])に、当該開始時補正角度と、打込誤差0.3度に基づき設定される打込誤差補正角度Xとを加算した角度とする。原点復帰角度は、
図7に示した例と同様に、バックラッシュ角度に打込誤差補正角度Xを加算した角度とする。
【0066】
以上説明したように打込誤差の補正を実施する場合であっても、励磁開始位置が、終了処理の実行後における励磁信号の位相からバックラッシュ角度の半分だけ進んだ位置A3であるので、励磁開始時におけるステッピングモータ111の回転子の移動は歯車機構20のバックラッシュ内での動きとなり、励磁開始時に指針11aが動かない。そして、励磁開始後、
図11(A)に示すように、上記逆転角度だけ励磁信号の位相を戻すことにより、指針11aがストッパ位置まで連続的に滑らかに回転した後で、原点位置まで回転する。尚、このとき、
図7に示した例と同様に、ストッパ位置までの指針11aの回転速度と、当該ストッパ位置から原点位置までの回転速度とは、同一であってもよいし、異なる速度であっても構わない。
図11では、速度が異なる例を示している。また、上記逆転角度だけ励磁信号の位相を戻す際に、指針11aがストッパ位置まで連続的に滑らかに回転した後で、一旦停止し、所定の時間が経過した後、原点位置まで回転する構成としても構わない。
【0067】
<原点復帰処理における処理フロー>
図12を参照して、第1実施形態に係る指針式メータ装置による原点復帰処理におけるの処理フローを説明する。
図12は、第1実施形態に係る指針式メータ装置による励磁制御における処理フローを示すフローチャートである。
図12に示す処理を行うための動作プログラムは、不揮発性メモリ102に格納されており、当該動作プログラムは制御部101により実行される。
【0068】
ステップS11では、制御部101は、指針式メータ装置10の電源がオンされたか否かを識別する。制御部101は、識別の結果、電源がオンされたと識別した場合には、次のステップS12を実行し、電源がオンされていないと識別した場合には、再びステップS11を実行する。
【0069】
ステップS12では、制御部101は、不揮発性メモリ102を参照し、ステッピングモータ111に入力する励磁信号の励磁開始位置を読み出す。上述したように、励磁開始位置は、終了処理実行後における励磁信号の位相からバックラッシュ角度の半分だけ進んだ位置とされている。当該終了処理実行後における励磁信号の位相は、前回の終了処理実行時に、制御部101により不揮発性メモリ102に格納されている。また、バックラッシュ角度の大きさも、不揮発性メモリ102に予め格納されている。
【0070】
続くステップS13では、制御部101は、ステッピングモータ111への励磁を開始し、励磁信号の位相をステップS12で読み出した励磁開始位置とする。励磁開始位置においては、指針11aは終了処理実行後における停止位置である原点位置(0目盛位置)に位置付けられている。また、励磁信号の位相を励磁開始位置とする際には、ステッピングモータ111の回転子の移動は歯車機構20のバックラッシュ内での動きとなり、指針11aは動かない。
【0071】
続くステップS14では、制御部101は、励磁信号の位相を戻し、指針11aのストッパ側(逆方向側)への回転を開始させる。
【0072】
続くステップS15では、制御部101は、ステップS14で励磁信号の位相を戻し始めてからの角度が、所定の逆転角度を超えているか否かを識別する。制御部101は、識別の結果、逆転角度を超えていると識別した場合には、次のステップS16を実行し、超えていないと識別した場合には、再びステップS15を実行する。これにより、励磁信号の位相が逆転角度だけ戻される。上述したように、逆転角度は、制御周期T0に相当する360度(2π[rad])である基本逆転角度に、開始時補正角度(バックラッシュ角度の半分)と、打込誤差がある場合には当該打込誤差に基づき設定される打込誤差補正角度Xと、を加算した角度とする。打込誤差の有無及び打込誤差の大きさは、指針11aの打ち込み作業時に作業者等により計測されて不揮発性メモリ102に格納されている。
ステップS14、S15の処理により、指針11aが原点位置(0目盛位置)からストッパ位置まで回転した後、励磁信号が基本逆転角度だけ戻され、脱調リセットが行われる。
尚、ステップS14、S15の処理により励磁信号の位相を逆転角度だけ戻す際には、まず、開始時補正角度と、打込誤差がある場合には打込誤差補正角度Xとを加算した角度だけ戻した後、所定時間だけ待機し、その後、基本逆転角度だけ更に戻す構成としてもよい。このようにすれば、指針11aが一旦ストッパ位置にて停止した後で、脱調リセットが行われる。
【0073】
ステップS16では、制御部101は、励磁信号の位相を所定の原点復帰角度だけ進める。上述したように、原点復帰角度は、打込誤差の補正が無い場合にはバックラッシュ角度であり、打込誤差の補正がある場合には当該バックラッシュ角度に更に打込誤差補正角度Xを加算した角度とする。
ステップS16の処理により、指針11aがストッパ位置から原点位置(0目盛位置)まで正方向に回転して当該原点位置に位置付けられる。
その後、制御部101は、原点復帰処理を終了する。
【0074】
<第1実施形態に係る指針式メータ装置の作用効果>
第1実施形態に係る指針式メータ装置10によれば、励磁開始位置が、終了処理の実行後における励磁信号の位相からバックラッシュ角度の半分である開始時補正角度だけ進んだ位置であるので、励磁開始時におけるステッピングモータ111の回転子の移動は歯車機構20のバックラッシュ内での動きとなり、励磁開始時に指針11aが動かない。したがって、励磁開始において、指針11aに不自然な挙動が生じることを防止できる。また、複数の計器であるタコメータ12、燃料計13、及び水温計14の指針それぞれについて、励磁開始時における位置からストッパ位置まで同時に連続的に動かす構成とすれば、全ての指針が儀式的に動く様になるので、運転者に与える違和感を低減することができる。また、励磁開始時に指針が動かないので、打込誤差の補正量が励磁信号の半周期分である場合であっても、励磁開始時に指針に跳ね上がりが発生することを防止できる。このように跳ね上がりを防止できるので、打込誤差の補正量を励磁信号の半周期分に対応する量よりも小さくする必要がなく、補正量に制限を設ける必要がない。
【0075】
尚、上記第1実施形態では、開始時補正角度は、バックラッシュ角度の半分としたが、バックラッシュ角度よりも小さい値であればよく、このように設定すれば、励磁開始時におけるステッピングモータ111の回転子の移動は歯車機構20のバックラッシュ内での動きとなり、励磁開始時に指針11aが動かない。即ち、励磁開始位置が、終了処理の実行後における前記励磁信号の位相から、バックラッシュ角度よりも小さい開始時補正角度だけ進んだ位置である構成としても構わない。
【0076】
(第2実施形態)
以下では、第2実施形態に係る指針式メータ装置10Bについて説明する。指針式メータ装置10Bは、原点復帰処理の内容のみが指針式メータ装置10と異なり、電気回路の構成等は同一であるので、同一の部材には同一の符号を付して説明を省略する。
また、概略的には、指針式メータ装置10Bは、原点位置(0目盛位置)が正方向側にプリオフセットされている点が、指針式メータ装置10と異なる。
【0077】
<打込誤差補正を実施しない場合>
図13は、第2実施形態に係る指針式メータ装置の場合における原点復帰処理の例を示す図であり、
図13(A)は、励磁信号及び指針の回転角度の時間変化を示す図、
図13(B)は、励磁信号の位相と指針の回転角度との関係を表す図、
図13(C)は、励磁信号の位相を示すベクトル図である。
【0078】
図13に示した、打込誤差補正を実施しない場合の第2実施形態の指針式メータ装置10Bにおける励磁制御では、
図10に示した例と比較して、原点復帰角度及び逆転角度が異なる。即ち、原点復帰角度が、バックラッシュ角度に、所定の正のプリオフセット角度を加算した角度に設定されている。また、逆転角度が、制御周期T0に相当する360度(2π[rad])である基本逆転角度と、開始時補正角度(バックラッシュ角度の半分)と、上記プリオフセット角度と、を加算した角度に設定されている。
図13の例では、プリオフセット角度は、指針11aの回転角度で1.0度に相当する励磁信号における180度(π[rad])に設定されている。尚、プリオフセット角度は、ストッパ位置からプリオフセット角度分だけ指針11aが正方向に回転した場合に指針11aとストッパ26が乖離する角度以上の値であれば任意の大きさに設定し得る。
尚、励磁開始位置は、
図10に示した例と同等に、終了処理の実行後における励磁信号の位相からバックラッシュ角度の半分だけ進んだ位置である。
【0079】
図13の例では、原点復帰処理処理後の励磁信号の位相は、符号Eで示す位置であり、終了処理後の励磁信号の位相は、符号E2で示す位置である。また、励磁開始位置は、符号E2からバックラッシュ角度の半分だけ進んだ位置であり、符号A4で示す位置である。
【0080】
このように、原点復帰角度及び逆転角度にプリオフセット角度を加えた場合であっても、上述した
図10に示した例と同様に指針11aを原点位置に位置付けることができる。
【0081】
<正方向に打込誤差補正を実施する場合>
図14は、第2実施形態に係る指針式メータ装置の励磁制御により正方向に打込誤差の補正を実施する場合における、原点復帰処理の例を示す図であり、
図14(A)は、励磁信号及び指針の回転角度の時間変化を示す図、
図14(B)は、励磁信号の位相と指針の回転角度との関係を表す図、
図14(C)は、励磁信号の位相を示すベクトル図である。
【0082】
図14に示した、正方向に打込誤差補正を実施する場合の第2実施形態の指針式メータ装置10Bにおける励磁制御では、
図11に示した例と比較して、原点復帰角度及び逆転角度が異なる。即ち、原点復帰角度が、バックラッシュ角度に、所定の正のプリオフセット角度と、正の打込誤差補正角度と、を加算した角度に設定されている。
図14の例では、打込誤差補正角度は、指針11aの回転角度で0.5度に相当する励磁信号における90度(π/2[rad])に設定されている。また、逆転角度が、制御周期T0に相当する360度(2π[rad])である基本逆転角度と、開始時補正角度(バックラッシュ角度の半分)と、上記プリオフセット角度と、上記打込誤差補正角度と、を加算した角度に設定されている。
尚、励磁開始位置は、
図11に示した例と同等に、終了処理の実行後における励磁信号の位相からバックラッシュ角度の半分だけ進んだ位置である。
【0083】
図14の例では、原点復帰処理処理後の励磁信号の位相は、符号Fで示す位置であり、終了処理後の励磁信号の位相は、符号F2で示す位置である。また、励磁開始位置は、符号F2からバックラッシュ角度の半分だけ進んだ位置であり、符号A5で示す位置である。
【0084】
このように、原点復帰角度及び逆転角度にプリオフセット角度及び正の打込誤差補正角度を加えた場合であっても、上述した
図11に示した例と同様に指針11aを原点位置に位置付けることができる。
【0085】
<逆方向に打込誤差補正を実施する場合>
図15は、第2実施形態に係る指針式メータ装置の励磁制御により逆方向に打込誤差の補正を実施する場合における、原点復帰処理の例を示す図であり、
図15(A)は、励磁信号及び指針の回転角度の時間変化を示す図、
図15(B)は、励磁信号の位相と指針の回転角度との関係を表す図、
図15(C)は、励磁信号の位相を示すベクトル図である。
【0086】
図15に示した、逆方向に打込誤差補正を実施する場合の第2実施形態の指針式メータ装置10Bにおける励磁制御では、他の例と比較して、原点復帰角度及び逆転角度が異なる。即ち、原点復帰角度が、バックラッシュ角度に、所定の正のプリオフセット角度と、負の打込誤差補正角度と、を加算した角度に設定されている。
図21及び
図22の例では、打込誤差補正角度は、指針11aの回転角度で−0.5度に相当する励磁信号における−90度(−π/2[rad])に設定されている。また、逆転角度が、制御周期T0に相当する360度(2π[rad])である基本逆転角度と、開始時補正角度(バックラッシュ角度の半分)と、上記プリオフセット角度と、上記打込誤差補正角度と、を加算した角度に設定されている。尚、負の打込誤差補正角度は、プリオフセット角度よりも小さい値が設定可能である。
また、励磁開始位置は、他の例と同等に、終了処理の実行後における励磁信号の位相からバックラッシュ角度の半分だけ進んだ位置である。
【0087】
図15の例では、原点復帰処理処理後の励磁信号の位相は、符号Gで示す位置であり、終了処理後の励磁信号の位相は、符号G2で示す位置である。また、励磁開始位置は、符号G2からバックラッシュ角度の半分だけ進んだ位置であり、符号A6で示す位置である。
【0088】
このように、原点復帰角度及び逆転角度にプリオフセット角度及び負の打込誤差補正角度を加えた場合であっても、上述した他の例と同様に指針11aを原点位置に位置付けることができる。
【0089】
以上説明したように、第2実施形態に係る指針式メータ装置10Bによれば、原点復帰角度に所定の正のプリオフセット角度が加算されているので、ストッパ26に対する指針11aの正方向側及び逆方向側への打込誤差を許容できる。このため、指針11aの打込作業時に、作業者は指針11aを所定の位置に対して正逆両方向側に打ち込むことができるので、打込誤差の補正の自由度を高めることができる。
【0090】
尚、上記プリオフセット角度は、スピードメータ11、タコメータ12、燃料計13、及び水温計14の各指針間で異なる値に設定してもよく、指針の長さやデザインに応じてグループ毎に異なるプリオフセット角度を設定してもよい。例えば、スピードメータ11やタコメータ12等の指針が長いもののプリオフセット角度を指針の指示角度で1.0度とし、燃料計13や水温計14等の指針が短いもののプリオフセット角度を指針の指示角度で0.5度としてもよい。
【0091】
また、第2実施形態に係る指針式メータ装置10Bによる原点復帰処理を実行する場合には、
図12のステップS14、S15に相当する処理により励磁信号の位相を逆転角度だけ戻す際には、連続的に戻してもよいし、或いは、まず、開始時補正角度と、打込誤差がある場合には打込誤差補正角度Xと、プリオフセット角度と、を加算した角度だけ戻した後、所定時間だけ待機し、その後、基本逆転角度だけ更に戻す構成としてもよい。このようにすれば、指針11aが一旦ストッパ位置にて停止した後で、ヒステリシスの除去処理が行われる。
【0092】
以下では、実施形態に係る指針式メータ装置10、10Bについて纏める。
(1) 指針式メータ装置10Bは、制御部101と、前記制御部101からの励磁信号の位相に従って回転駆動されるステッピングモータ111と、前記ステッピングモータ111の回転に従って正逆両方向に回転する指針11aと、前記ステッピングモータ111の回転駆動力を前記指針11aに伝達する歯車機構20と、を備えている。前記指針11a又は前記歯車機構20は、前記指針11aが所定の回転位置に位置している場合にストッパ26に当接する当接部としてのストッパピン24aを有している。前記制御部101は、前記ステッピングモータ111の励磁開始時には、まず、前記励磁信号の位相を所定の励磁開始位置とし、その後、前記当接部が前記ストッパ26に接近する方向である逆方向に前記指針11aが回転するように、前記励磁信号の位相を所定の逆転角度だけ戻し、これにより前記当接部が前記ストッパ26に当接するストッパ位置に前記指針11aを位置付ける。制御部101は、続いて、前記歯車機構20のバックラッシュ量に対応するバックラッシュ角度に基づき設定された原点復帰角度だけ前記励磁信号の位相を進め、これにより前記ストッパ位置から所定角度だけ離れた原点位置まで前記指針11aを正方向に回転させて該原点位置に位置付ける。これらの処理が、原点復帰処理である。一方、制御部101は、前記ステッピングモータ111の励磁終了時には、前記指針11aが逆方向に回転して前記原点位置に位置付けられるように、前記励磁信号の位相を戻す終了処理を実行する。ここで、前記原点復帰角度は、前記バックラッシュ角度と、所定の正のプリオフセット角度と、前記ストッパ26に対する前記指針11aの打込誤差に基づき設定される正の打込誤差補正角度と、を加算した角度である。
【0093】
(2) 指針式メータ装置10Bは、第1計器としてのスピードメータ11及び第2計器としての燃料計13を備えている。そして、前記指針11aが、前記第1計器及び前記第2計器それぞれに第1指針及び第2指針として設けられ、前記プリオフセット角度が、前記第1指針と前記第2指針とで異なる。
【0094】
(3) 指針式メータ装置10、10Bでは、前記励磁開始位置は、前記終了処理の実行後における前記励磁信号の位相から、前記バックラッシュ角度よりも小さい開始時補正角度だけ進んだ位置である。
上記(3)の指針式メータ装置10、10Bによれば、ストッパ26に対する指針11aの正方向側及び逆方向側への打込誤差を許容しつつ、励磁開始において、指針11aに不自然な挙動が生じることを防止できる。
即ち、上記(3)の指針式メータ装置10、10Bによれば、励磁開始位置が、終了処理の実行後における励磁信号の位相からバックラッシュ角度よりも小さい開始時補正角度だけ進んだ位置であるので、励磁開始時におけるステッピングモータ111の回転子52の移動は歯車機構20のバックラッシュ内での動きとなり、励磁開始時に指針11aが動かない。したがって、励磁開始において、指針11aに不自然な挙動が生じることを防止できる。また、複数の計器それぞれについて打込誤差の補正を実施している場合には、例えば励磁開始時における位置からストッパ位置まで全ての指針を同時に連続的に動かす構成とすれば、全ての指針が儀式的に動く様になるので、運転者に与える違和感を低減することができる。また、励磁開始時に指針が動かないので、打込誤差の補正量が励磁信号の半周期分に対応する量よりも大きい場合であっても、励磁開始時に指針に跳ね上がりが発生することを防止できる。このように跳ね上がりを防止できるので、打込誤差の補正量を励磁信号の半周期分に対応する量よりも小さくする必要がなく、補正量に制限を設ける必要がない。
また、単に、従来の制御方法において、原点復帰角度に所定の正のプリオフセット角度を加算した場合、その分だけストッパ位置と原点位置とが離れるので、プリオフセット角度を加算しない場合よりもストッパ位置と原点位置とが更に離れることになる。このため、励磁開始時に指針11aが一気に動く量が更に多くなる。この結果、打込誤差の補正の自由度を高めることができたとしても、励磁開始時に運転者に与える違和感も大きくなってしまう可能性がある。
これに対して、上記(3)の指針式メータ装置10、10Bによれば、励磁開始時に指針11aが動かないので、打込誤差の補正の自由度を高めつつ、励磁開始において指針11aに不自然な挙動が生じることを防止できる。
また、プリオフセット角度が正の値に設定されているので、励磁開始直後からストッパ位置まで移動するまでの間、指針11aはストッパ26に接近する方向である逆方向のみに回転する。このため、指針が複数ある場合に指針の移動方向を揃えることができる。
【0095】
(4) 指針式メータ装置10Bでは、前記逆転角度が、前記励磁信号の制御周期T0に相当する角度以上に設定された基本逆転角度と、前記開始時補正角度と、前記プリオフセット角度と、前記打込誤差補正角度と、を加算した角度である。そして、前記制御部101は、前記原点復帰処理において、前記励磁信号の位相を前記逆転角度だけ戻す際に、まず、前記開始時補正角度と前記プリオフセット角度と前記打込誤差補正角度とを加算した角度だけ戻した後、所定時間だけ待機し、その後、前記基本逆転角度だけ更に戻す。換言すれば、前記制御部101は、前記原点復帰処理において、前記励磁信号の位相を前記逆転角度だけ戻す際に、まず、前記逆転角度から前記基本逆転角度を除した角度だけ戻した後、所定時間だけ待機し、その後、前記基本逆転角度だけ更に戻す。
上記(4)の指針式メータ装置によれば、励磁信号の位相を、はじめに開始時補正角度とプリオフセット角度と打込誤差補正角度とを加算した角度だけ戻した後、所定時間だけ待機し、その後、基本逆転角度だけ更に戻すので、指針11aが一旦ストッパ位置にて停止した後で、ヒステリシスの除去処理が実施される。このヒステリシスの除去処理中には、励磁信号が1周期変化する間に、指針11aがストッパ位置にて振動するリバウンド挙動が生じる(例えば特許第4176984参照。)。この点、上記(4)の指針式メータ装置10Bによれば、指針11aが一旦ストッパ位置にて停止した後、当該リバウンド挙動が生じるので、意図的に全ての指針が動くことを運転者に認識させることができる。
【0096】
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態は、本発明の技術的範囲内で種々の変形や改良等を伴うことができる。