特許第6205223号(P6205223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205223
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】マグネトロン
(51)【国際特許分類】
   H01J 23/15 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   H01J23/15 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-197035(P2013-197035)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-64962(P2015-64962A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113322
【氏名又は名称】東芝ホクト電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082740
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵基
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(74)【代理人】
【識別番号】100081732
【弁理士】
【氏名又は名称】大胡 典夫
(72)【発明者】
【氏名】土肥 早百合
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−000832(JP,A)
【文献】 特開昭53−037348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネトロン本体の一対の陰極端子を覆うフィルターボックスと、
前記一対の陰極端子に接続され、前記フィルターボックスに収容された一対のチョークコイルと、
前記チョークコイルに接続され、前記チョークコイルとともにフィルター回路を構成するコンデンサと、
を具備し、
前記一対のチョークコイルは、陰極センターリード側のチョークコイルと、陰極サイドリード側のチョークコイルとでなり、それぞれ前記陰極端子に接続された空芯型インダクタと、磁性体コアを備え前記空芯側インダクタに直列接続されたコア型インダクタとを有し、さらに、前記陰極センターリード側のチョークコイルの方が前記陰極サイドリード側のチョークコイルよりも熱容量が大きくなるように、前記陰極センターリード側のチョークコイルの磁性体コアの方が、前記陰極サイドリード側のチョークコイルの磁性体コアよりも直径が大きい
ことを特徴とするマグネトロン。
【請求項2】
マグネトロン本体の一対の陰極端子を覆うフィルターボックスと、
前記一対の陰極端子に接続され、前記フィルターボックスに収容された一対のチョークコイルと、
前記チョークコイルに接続され、前記チョークコイルとともにフィルター回路を構成するコンデンサと、
を具備し、
前記一対のチョークコイルは、陰極センターリード側のチョークコイルと、陰極サイドリード側のチョークコイルとでなり、それぞれ前記陰極端子に接続された空芯型インダクタと、磁性体コアを備え前記空芯側インダクタに直列接続されたコア型インダクタとを有し、さらに、前記陰極センターリード側のチョークコイルの方が前記陰極サイドリード側のチョークコイルよりも熱容量が大きくなるように、前記陰極センターリード側のチョークコイルの磁性体コアの方が、前記陰極サイドリード側のチョークコイルの磁性体コアよりも体積が大きい
ことを特徴とするマグネトロン。
【請求項3】
マグネトロン本体の一対の陰極端子を覆うフィルターボックスと、
前記一対の陰極端子に接続され、前記フィルターボックスに収容された一対のチョークコイルと、
前記チョークコイルに接続され、前記チョークコイルとともにフィルター回路を構成するコンデンサと、
を具備し、
前記一対のチョークコイルは、陰極センターリード側のチョークコイルと、陰極サイドリード側のチョークコイルとでなり、それぞれ前記陰極端子に接続された空芯型インダクタと、磁性体コアを備え前記空芯側インダクタに直列接続されたコア型インダクタとを有し、さらに、前記陰極センターリード側のチョークコイルの方が前記陰極サイドリード側のチョークコイルよりも熱容量が大きくなるように、前記陰極センターリード側のチョークコイルの方が、前記陰極サイドリード側のチョークコイルよりもワイヤが太い
ことを特徴とするマグネトロン。
【請求項4】
マグネトロン本体の一対の陰極端子を覆うフィルターボックスと、
前記一対の陰極端子に接続され、前記フィルターボックスに収容された一対のチョークコイルと、
前記チョークコイルに接続され、前記チョークコイルとともにフィルター回路を構成するコンデンサと、
を具備し、
前記一対のチョークコイルは、陰極センターリード側のチョークコイルと、陰極サイドリード側のチョークコイルとでなり、それぞれ前記陰極端子に接続された空芯型インダクタと、磁性体コアを備え前記空芯側インダクタに直列接続されたコア型インダクタとを有し、さらに、前記陰極センターリード側のチョークコイルの方が前記陰極サイドリード側のチョークコイルよりも熱容量が大きくなるように、前記陰極センターリード側のチョークコイルの方が、前記陰極サイドリード側のチョークコイルよりもワイヤの巻き数が多い
ことを特徴とするマグネトロン。
【請求項5】
マグネトロン本体の一対の陰極端子を覆うフィルターボックスと、
前記一対の陰極端子に接続され、前記フィルターボックスに収容された一対のチョークコイルと、
前記チョークコイルに接続され、前記チョークコイルとともにフィルター回路を構成するコンデンサと、
を具備し、
前記一対のチョークコイルは、陰極センターリード側のチョークコイルと、陰極サイドリード側のチョークコイルとでなり、それぞれ前記陰極端子に接続された空芯型インダクタと、磁性体コアを備え前記空芯側インダクタに直列接続されたコア型インダクタとを有し、さらに、前記陰極センターリード側のチョークコイルの方が前記陰極サイドリード側のチョークコイルよりも熱容量が大きくなるように、前記陰極センターリード側のチョークコイルの磁性体コアの方が、前記陰極サイドリード側のチョークコイルの磁性体コアよりも長い
ことを特徴とするマグネトロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マグネトロンに関するものであり、特に、フィルターボックス内に配置するチョークコイルに係るものである。
【背景技術】
【0002】
マグネトロンは、発振部と入力部と出力部とを有している。発振部は、陽極円筒とこの内側に配置された複数のベインとからなる陽極部と、陽極円筒の中心軸、すなわち管軸に配置されたフィラメントの陰極部と、陽極円筒の管軸方向の両端面に配置された一対のポールピースとで構成されている。
【0003】
入力部は、発振部の一方のポールピースを貫通して延びる陰極リードを支持するステムを有し、出力部は、発振部の他方のポールピースを貫通して延びるアンテナを有している。一対のポールピースは、それぞれ永久磁石で挟まれ、陽極部と陰極部との間の作用空間に磁束を収束させる。
【0004】
このような構成でなるマグネトロンは、入力部から陰極部にフィラメント電流を供給し、陽極部と陰極部との間に電圧を印加すると、マイクロ波発振し、出力部からマイクロ波を出力する。一般的な電子レンジ用のマグネトロンの場合、発振周波数は2450MHzである。発振出力の一部は、入力部から漏洩して外部機器の障害となる為、入力部をフィルターボックスでシールドして電波漏洩を防止している。また、発振出力は、2450MHzの基本波だけでなく、電子擾乱などによって広い帯域にわたる周波数の電波を発振しており、フィルターボックスはこれらの電波の漏洩も阻止している。
【0005】
フィルターボックスは、外部電源に接続され、外部入力端子を兼ねる一対の貫通コンデンサを有している。また、フィルターボックス内には、一対の陰極端子と一対の貫通コンデンサとの間にそれぞれ接続された一対のチョークコイルが配置されている。
【0006】
一対のチョークコイルは、対称でなり、磁性体コアを有するコイル状のコア型インダクタと空芯コイルの空芯型インダクタを直列接続したものからなっている。
【0007】
フィルター回路を構成するチョークコイルは、陰極部から漏洩するマイクロ波を熱として消費する。また、チョークコイルは、過熱で磁性体コアの透磁率が低下するとインダクタンスが低下し、マイクロ波の漏洩が増大する。さらに、空芯型インダクタは、漏洩波の最大成分である2450MHzの基本波の定在波の最大振幅部をこのインダクタ内に位置させて減衰させ、コア型インダクタに至らないようにし、コア型インダクタの負担を軽減している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−77516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、図3に、陰極リードのセンターリード側にのみチョークコイルを配置した場合と、サイドリード側にのみチョークコイルを配置した場合の2つの配置パターンでのフィルターボックス内の漏洩電力を示す。
【0010】
尚、この漏洩電力は、一般的な電子レンジ用マグネトロンのフィルターボックス内で測定したものであり、このマグネトロンの負荷特性を表すリーケ線図を図4に示す。このリーケ線図は、極座標表示されたインピーダンス線図上に一定出力及び一定周波数を等高線で表すものであり、半径方向の座標が負荷に対する定在波比を示し、円周方向の座標が定在波の位相(λg)を示している。
【0011】
図3は、このような負荷特性を有するマグネトロンの定在波比を3に固定して、定在波の位相(λg)を、0.000λg〜0.500λgまで所定刻みで変化させながら、フィルターボックス内の漏洩電力を、各配置パターンで測定したときの測定結果を示している。
【0012】
この図3からわかるように、フィルターボックス内では、陰極リードのサイドリード側にのみチョークコイルを配置した場合(センターリード側チョークコイルレス)の方が、センターリード側にのみチョークコイルを配置した場合(サイドリード側チョークコイルレス)よりも漏洩電力が大きい。
【0013】
このことは、漏洩電力が、陰極リードのサイドリード側の陰極端子からよりもセンターリード側の陰極端子から大きく漏洩していることを意味する。
【0014】
この為、センターリード側とサイドリード側の両側にチョークコイルが配置されていると、サイドリード側のチョークコイルよりもセンターリード側のチョークコイルの方が、漏洩するマイクロ波を熱として多く消費することにより温度が高くなり、さらにはバックヒート(電子逆衝撃)を悪化させるなどの悪影響を及ぼす。
【0015】
そこで、本発明は、上記課題を解決する為になされたものであり、チョークコイルの温度上昇を抑えてバックヒートを改善し得るマグネトロンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係るマグネトロンは、マグネトロン本体の一対の陰極端子を覆うフィルターボックスと、前記一対の陰極端子に接続され、前記フィルターボックスに収容された一対のチョークコイルと、前記チョークコイルに接続され、前記チョークコイルとともにフィルター回路を構成するコンデンサと、を具備し、前記一対のチョークコイルは、陰極センターリード側のチョークコイルと、陰極サイドリード側のチョークコイルとでなり、それぞれ前記陰極端子に接続された空芯型インダクタと、磁性体コアを備え前記空芯側インダクタに直列接続されたコア型インダクタとを有し、さらに、前記陰極センターリード側のチョークコイルの方が前記陰極サイドリード側のチョークコイルよりも熱容量が大きくなるように、前記陰極センターリード側のチョークコイルの磁性体コアの方が、前記陰極サイドリード側のチョークコイルの磁性体コアよりも直径が大きくなっている。また、本発明に係るマグネトロンは、前記陰極センターリード側のチョークコイルの方が前記陰極サイドリード側のチョークコイルよりも熱容量が大きくなるように、前記陰極センターリード側のチョークコイルの磁性体コアの方が、前記陰極サイドリード側のチョークコイルの磁性体コアよりも体積が大きくなっている。さらに、本発明に係るマグネトロンは、前記陰極センターリード側のチョークコイルの方が前記陰極サイドリード側のチョークコイルよりも熱容量が大きくなるように、前記陰極センターリード側のチョークコイルの方が、前記陰極サイドリード側のチョークコイルよりもワイヤが太くなっている。さらに、本発明に係るマグネトロンは、前記陰極センターリード側のチョークコイルの方が前記陰極サイドリード側のチョークコイルよりも熱容量が大きくなるように、前記陰極センターリード側のチョークコイルの方が、前記陰極サイドリード側のチョークコイルよりもワイヤの巻き数が多くなっている。さらに、本発明に係るマグネトロンは、前記陰極センターリード側のチョークコイルの方が前記陰極サイドリード側のチョークコイルよりも熱容量が大きくなるように、前記陰極センターリード側のチョークコイルの磁性体コアの方が、前記陰極サイドリード側のチョークコイルの磁性体コアよりも長くなっている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、チョークコイルの温度上昇を抑えて、フィルターボックス内の電波漏洩を抑制し、バックヒートを改善し得るマグネトロンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るマグネトロンの一実施の形態における全体の縦断面図である。
図2】本発明に係るマグネトロンの一実施の形態におけるフィルターボックスの横断面図である。
図3】従来のマグネトロンにおいて、チョークコイルを片側配置にした場合のフィルターボックス内の漏洩電力を示すグラフである。
図4】従来のマグネトロンの負荷特性を示すリーケ線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るマグネトロンの一実施の形態を、図面を参照して説明する。尚、以下の実施の形態は、単なる例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
図1は、本実施の形態のマグネトロン1全体の概略を示す縦断面図であり、図2は、マグネトロン1の一部分を示す横断面図である。このマグネトロン1は、2450MHz帯の基本波を発生する電子レンジ用のマグネトロンである。
【0021】
以下、図1及び図2を用いて詳しく説明するが、本実施の形態のマグネトロン1は、センターリード側のチョークコイル37(図2参照)とサイドリード側のチョークコイル38(図2参照)とを、サイドリード側のチョークコイル38よりもセンターリード側のチョークコイル37の方が熱容量が大きくなるように、非対称としたものである。
【0022】
尚、この場合の熱容量を大きくするという言葉には、所定熱量に対して温度を上昇しにくくすることと、熱放散を大きくすることとが含まれているものとする。つまり、熱容量を大きくするということは、所定熱量に対して温度を上昇しにくくすると共に、熱放散を大きくすることを意味する。
【0023】
マグネトロン1は、マグネトロン本体2と、フィルターボックス3とを有している。マグネトロン本体2は、発振部4と入力部5と出力部6とで構成され、発振部4の管軸m方向の一端側に入力部5が設けられ、他端側に出力部6が設けられている。
【0024】
尚、管軸mは、マグネトロン本体2の中心軸である。また、以下の説明では、マグネトロン本体2の管軸m方向の一端側を下端側及び入力側と定義すると共に、他端側を上端側及び出力側と定義する。
【0025】
発振部4は、陽極部7と陰極部8とで構成され、陽極部7は、陽極円筒9と、この陽極円筒9の内周面から管軸mに向かって突出した複数個のベイン10とを有している。
【0026】
陰極部8は、フィラメント11と、一対のエンドハット12、13と、陰極センターリード14と、陰極サイドリード15とを有している。フィラメント11は、管軸m上に配設されていて、エンドハット12、13は、フィラメント11の上下両端部に設けられている。
【0027】
陰極センターリード14は、フィラメント11の中心を貫通して上端がエンドハット12に固定され、当該エンドハット12を介してフィラメント11と接続されている。陰極サイドリード15は、上端がエンドハット13に固定され、当該エンドハット13を介してフィラメント11と接続されている。また、陰極センターリード14と陰極サイドリード15は、それぞれその下端が、マグネトロン本体2の下端側に位置する入力部5に向かって延びている。
【0028】
ベイン10は、その先端である遊端が、フィラメント11との間に所定の間隔を保つように配設されている。ベイン10の遊端とフィラメント11との間に形成される環状空間が作用空間となっている。
【0029】
陽極円筒9の上下両端部には、略漏斗状(略すり鉢状)の一対のポールピース16、17が、作用空間を管軸m方向に挟んで対向して設けられている。陽極円筒9の下端側に設けられている入力側のポールピース17の下方には、フィラメント印加用電流及びマグネトロン駆動用高電圧を供給する為の入力部5が設けられている。入力部5は、陰極センターリード14及び陰極サイドリード15を中継端子18で保持すると共にこれらをそれぞれ後述する陰極端子30、31(図2参照)として外部に導出するセラミックステム19を有している。
【0030】
入力部5は、管軸m方向に延びる筒状の金属封着体20により、陽極円筒9と真空気密に接合され、フィルターボックス3に覆われている。
【0031】
また、陽極円筒9の上端側に設けられている出力側のポールピース16の上方には、マイクロ波を伝送し放射する為のアンテナリード21を有する出力部6が設けられている。
【0032】
出力部6は、アンテナリード21と、絶縁筒22と、排気管23とを有している。排気管23は、絶縁筒22の上端に接合されている。アンテナリード21は、下端が複数のベイン10のうちの1つに接続され、上端が管軸mに沿って上方へと延び、絶縁筒22内を通り排気管23に挟持され固定されている。
【0033】
出力部6は、管軸m方向に延びる筒状の金属封着体24により、陽極円筒9と真空気密に接合されている。
【0034】
入力側のポールピース17の下方と出力側のポールピース16の上方には、金属封着体20、24の外周側に、一対のフェライトでなる環状永久磁石25、26が、陽極円筒9を管軸m方向に挟んで対向して設けられている。
【0035】
陽極円筒9と、環状永久磁石25、26は、枠状ヨーク27、28により覆われている。環状永久磁石25、26は、ポールピース16、17と対向する下面とポールピース16、17とが磁気的に結合されると共に、その反対側の上面と枠状ヨーク27、28とが磁気的に結合されることにより形成された磁気回路によって、ベイン10とフィラメント11との間の作用空間に磁界を供給している。
【0036】
マグネトロン1の構成の概略は、以上のようになっている。
【0037】
次に、図2を用いて、フィルターボックス3とその内部の構成について、さらに詳しく説明する。
【0038】
フィルターボックス3に覆われる入力部5は、中継端子18と、セラミックステム19と、陰極センターリード14及び陰極サイドリード15にそれぞれ接続された一対の陰極端子30、31とを有している。
【0039】
フィルターボックス3の側壁には、その側壁を貫通する2端子の貫通コンデンサ32が取り付けられている。この貫通コンデンサ32は、フィルターボックス3の外側に位置する2端子33、34と、内側に位置する2端子35、36とを有している。尚、内側に位置する2端子35、36を、以下、内側端子35、36とも呼ぶ。
【0040】
一対の陰極端子30、31は、フィルターボックス3内のほぼ中央に位置していて、この陰極端子30、31と、貫通コンデンサ32の内側端子36、36のそれぞれとの間には、ワイヤを螺旋状に巻いたチョークコイル37、38が直列接続されている。このチョークコイル37、38と、貫通コンデンサ32により、フィルター回路が形成されている。
【0041】
ここで、陰極センターリード14に接続された陰極端子30と、内側端子35との間に接続されているチョークコイル37を、センターリード側チョークコイル37と呼び、陰極サイドリード15に接続された陰極端子31と、内側端子36との間に接続されているチョークコイル38を、サイドリード側チョークコイル38と呼ぶことにする。
【0042】
センターリード側チョークコイル37は、フェライトなどの円柱状の磁性体コア40aを持つコイルでなるコア型インダクタ40と、疎巻きの空芯コイルでなる空芯型インダクタ41とを直列接続したものである。このセンターリード側チョークコイル37は、空芯型インダクタ41側が所定長の折り曲げ配線42を介して陰極端子30に接続され、コア型インダクタ40側が内側端子35に接続されている。
【0043】
尚、センターリード側チョークコイル37のコア型インダクタ40のコイルは、その中間部分で磁性体コア40aが露出するように分割巻きされている。
【0044】
一方、サイドリード側チョークコイル38は、フェライトなどの円柱状の磁性体コア50aを持つコイルでなるコア型インダクタ50と、疎巻きの空芯コイルでなる空芯型インダクタ51とを直列接続したものである。このサイドリード側チョークコイル38は、空芯型インダクタ51側が所定長の折り曲げ配線52を介して陰極端子31に接続され、コア型インダクタ50側が内側端子36に接続されている。
【0045】
尚、サイドリード側チョークコイル38のコア型インダクタ50のコイルも、その中間部分で磁性体コア50aが露出するように分割巻きされている。また、ここでは、一例として、センターリード側チョークコイル37のコア型インダクタ40のコイルと、サイドリード側チョークコイル38のコア型インダクタ50のコイルを、それぞれ分割巻きとしたが、それぞれ分割巻きでなくてもよい。
【0046】
フィルターボックス3内では、陰極端子30、31を通して漏洩するマイクロ波のうち、2450MHzの基本波成分が最大となる。ゆえに、センターリード側チョークコイル37は、この基本波の1/4波長に相当する位置、すなわち漏洩マイクロ波の振幅が最大となる位置が、空芯型インダクタ41内となるように、折り曲げ配線42を含めた長さが設定されている。
【0047】
同様に、サイドリード側チョークコイル38も、基本波の1/4波長に相当する位置、すなわち漏洩マイクロ波の振幅が最大となる位置が、空芯型インダクタ51内となるように、折り曲げ配線52を含めた長さが設定されている。
【0048】
こうすることで、漏洩するマイクロ波の大部分が、空芯型インダクタ41、51で吸収される。空芯型インダクタ41、51は、周囲の空気等を利用して冷却できる為、疎巻きの空芯型インダクタ41、51の最大発熱部をコア型インダクタ40、50から離すことにより、コア型インダクタ40、50の温度上昇が抑制され、センターリード側チョークコイル37及びサイドリード側チョークコイル38のそれぞれのインダクタンスの低下を抑制できる。
【0049】
そして、これらセンターリード側チョークコイル37とサイドリード側チョークコイル38が、対称ではなく非対称となっている。
【0050】
すなわち、センターリード側チョークコイル37とサイドリード側チョークコイル38は、ともにコア型インダクタ40、50と空芯型インダクタ41、51とを直列接続した構成であるものの、センターリード側チョークコイル37の磁性体コア40aの直径L1が、サイドリード側チョークコイル38の磁性体コア50aの直径L2よりも大きくなっている。
【0051】
尚、本実施の形態では、磁性体コア40aの方が磁性体コア50aよりも直径が大きくなっていることにともなって、センターリード側チョークコイル37の方がサイドリード側チョークコイル38よりも径が大きくなっている。
【0052】
実際、従来の問題として述べたように、フィルターボックス3内では、マイクロ波が、陰極サイドリード15側の陰極端子31からよりも陰極センターリード14側の陰極端子30から大きく漏洩する。
【0053】
この為、サイドリード側チョークコイル38よりもセンターリード側チョークコイル37の方が、漏洩するマイクロ波を熱として多く消費する。ゆえに、センターリード側チョークコイル37とサイドリード側チョークコイル38とが、従来のように対称であった場合、センターリード側チョークコイル37の方が過熱し易い。そして、実際に、センターリード側チョークコイル37が過熱してしまうと、磁性体コア40aの透磁率が低下してインダクタンスが低下し、マイクロ波の漏洩が増大する。
【0054】
そこで、本実施の形態では、サイドリード側チョークコイル38よりもセンターリード側チョークコイル37の方が漏洩するマイクロ波を熱として多く消費する点に着目して、サイドリード側チョークコイル38よりもセンターリード側チョークコイル37の方が熱容量が大きくなるように、サイドリード側チョークコイル38の磁性体コア50aよりもセンターリード側チョークコイル37の磁性体コア40aの方の直径を大きくした。
【0055】
このように、センターリード側チョークコイル37の熱容量を大きくすれば、温度上昇が抑えられ、過熱し難くなる。この結果、センターリード側チョークコイル37の磁性体コア40aの透磁率が低下してマイクロ波の漏洩が増大してしまうことを防ぐことができるので、全体として、フィルターボックス3内のマイクロ波の漏洩を抑制して、バックヒートを改善し、ノイズを低減できる。
【0056】
また、本実施の形態では、サイドリード側チョークコイル38の磁性体コア50aが、センターリード側チョークコイル37の磁性体コア40aよりも直径が小さくなっているが、磁性体コア50aの直径L2が小さすぎると、サイドリード側チョークコイル38が過熱し易くなってしまうので、従来と同程度の大きさ(例えば3.0mm〜4.5mm)に設定されているものとする。
【0057】
ここまで説明したように、本実施の形態のマグネトロン1は、サイドリード側チョークコイル38よりもセンターリード側チョークコイル37の方が熱容量が大きくなるように、サイドリード側チョークコイル38の磁性体コア50aよりもセンターリード側チョークコイル37の磁性体コア40aの方の直径を大きくした。
【0058】
これにより、センターリード側チョークコイル37の温度が上がり難くなって過熱し難くなり、この結果、磁性体コア40aの透磁率が低下してマイクロ波の漏洩が増大してしまうことを防ぐことができる。かくして、本実施の形態のマグネトロン1は、センターリード側チョークコイル37の温度上昇を抑えて、フィルターボックス3内のマイクロ波の漏洩を抑制し、バックヒートを改善してノイズを低減できる。
【0059】
すなわち、本実施の形態によれば、従来のマグネトロンと比較して、一段と良好な特性を有するマグネトロンを提供できる。
【0060】
尚、上述した実施の形態では、サイドリード側チョークコイル38よりもセンターリード側チョークコイル37の方が熱容量が大きくなるように、サイドリード側チョークコイル38の磁性体コア50aよりもセンターリード側チョークコイル37の磁性体コア40aの方の直径を大きくした。
【0061】
これに限らず、センターリード側チョークコイル37とサイドリード側チョークコイル38が非対称で、サイドリード側チョークコイル38よりもセンターリード側チョークコイル37の方が熱容量が大きくなるのであれば、例えば、サイドリード側チョークコイル38の磁性体コア50aよりもセンターリード側チョークコイル37の磁性体コア40aの方の中心軸方向の長さを長くしてもよいし、体積を大きくしてもよい。尚、例えば、サイドリード側チョークコイル38の磁性体コア50aよりもセンターリード側チョークコイル37の磁性体コア40aの方の中心軸方向の長さを長くした場合、センターリード側チョークコイル37の磁性体コア40aの直径L1と、サイドリード側チョークコイル38の磁性体コア50aの直径L2とが同寸であっても構わない。
【0062】
またこれに限らず、サイドリード側チョークコイル38よりもセンターリード側チョークコイル37の方のワイヤの径を大きく(すなわちワイヤを太く)してもよいし、ワイヤの巻き数を多くしてもよい。
【0063】
さらにこれに限らず、サイドリード側チョークコイル38よりもセンターリード側チョークコイル37の方が熱容量が大きくなるのであれば、磁性体コアの直径、体積、ワイヤの径、巻き数以外の部分を、センターリード側チョークコイル37とサイドリード側チョークコイル38とで異なるようにしてもよい。
【0064】
また、上述した実施の形態では、入力部5をフィルターボックス3で覆うようにしたが、このフィルターボックス3の側壁に、空気の通り道となる複数の孔(図示せず)を設けるようにしてもよい。
【0065】
さらに、フィルターボックス3の外側に、例えばファン等の送風装置を設け、この送風装置により送られてくる空気が、側壁の孔を通ってフィルターボックス3内を通り抜けるようにしてもよい。
【0066】
このようにすれば、フィルターボックス3内を通り抜ける空気によって、センターリード側チョークコイル37とサイドリード側チョークコイル38が冷却される。尚、このときの空気が流れる方向は、冷却効果を考慮すると、例えば、図2に矢印で示すように、サイドリード側チョークコイル38側からセンターリード側チョークコイル37側への方向、又はその逆方向とすることが望ましい。
【0067】
またこの場合、サイドリード側チョークコイル38の磁性体コア50aよりもセンターリード側チョークコイル37の磁性体コア40aの方の直径が大きいことにより、サイドリード側チョークコイル38よりもセンターリード側チョークコイル37の方が、フィルターボックス3内を通り抜ける空気に触れる面積が大きくなる。この結果、サイドリード側チョークコイル38よりもセンターリード側チョークコイル37の方が空気に触れることによる冷却効果が高くなり過熱し難くなる。
【0068】
すなわち、フィルターボックス3内を空気が通り抜けるようにしたうえで、サイドリード側チョークコイル38よりもセンターリード側チョークコイル37の方が熱容量が大きくなるように、サイドリード側チョークコイル38の磁性体コア50aよりもセンターリード側チョークコイル37の磁性体コア40aの方の直径を大きくすれば、センターリード側チョークコイル37の温度が上がり難くなると共に冷却効果が高くなり、センターリード側チョークコイル37を一層過熱し難くすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1…………マグネトロン、3……フィルターボックス、14……陰極センターリード、15……陰極サイドリード、30、31……陰極端子、37、38……チョークコイル、40、50……コア型インダクタ、40a、50a………磁性体コア、41、51……空芯型インダクタ。
図1
図2
図3
図4