特許第6205224号(P6205224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6205224ベース基材シート及び静電容量式タッチパネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205224
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】ベース基材シート及び静電容量式タッチパネル
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20170914BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20170914BHJP
   G06F 3/041 20060101ALN20170914BHJP
   H01B 5/14 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   B32B27/20 Z
   B32B27/16 101
   !G06F3/041 495
   !H01B5/14 A
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-197865(P2013-197865)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-63058(P2015-63058A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000125978
【氏名又は名称】株式会社きもと
(74)【代理人】
【識別番号】100111419
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】野澤 和洋
(72)【発明者】
【氏名】西永 光
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−227088(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/160894(WO,A1)
【文献】 国際公開第01/016963(WO,A1)
【文献】 特開2007−134293(JP,A)
【文献】 特開2005−265864(JP,A)
【文献】 特開2001−084839(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/077651(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/046230(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/141282(WO,A1)
【文献】 特開2014−145902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B05D 1/00−7/26
C08J 7/04
G06F 3/041
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極を積層するために使用されるベース基材シートにおいて、
透明材料で形成された基材フィルムの表面に微マット層を有し、
該微マット層は、硬化性組成物の硬化物で構成され、かつ表面凸数が単位面積あたり4000〜8000個/cmであり、
前記硬化性組成物は、平均粒子径が0.1〜10μmのマット剤と、樹脂分としての電離放射線硬化型樹脂を含み、
前記マット剤は、平均粒子径が異なる複数のマット剤を組み合わせて構成されるとともに、樹脂分100重量部に対して0.05〜0.2重量部の範囲で含有されてなることを特徴とするベース基材シート。
【請求項2】
静電容量式タッチパネルのパターン化された透明電極を積層するために使用される請求項1記載のベース基材シート。
【請求項3】
請求項1又は2記載のシートにおいて、前記複数のマット剤は、少なくとも、平均粒子径が0.1〜4.0μmの第1のマット剤と、平均粒子径が3.0〜10.0μmの第2のマット剤を含むことを特徴とするベース基材シート。
【請求項4】
請求項3記載のシートにおいて、前記マット剤が、前記第1のマット剤と前記第2のマット剤のみを組み合わせてなり、それぞれの、粒子径分布の変動係数が15%以下のものを用いたことを特徴とするベース基材シート。
【請求項5】
請求項3又は4記載のシートにおいて、全マット剤中での、前記第1のマット剤と前記第2のマット剤の重量比率が、8:2〜6:4であることを特徴とするベース基材シート。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のシートにおいて、前記基材フィルムの前記微マット層とは反対面に、マット剤非含有の透明ハードコート層が積層してあるベース基材シート。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載のベース基材シートに、透明導電層を所定パターンで積層した透明導電性積層体を電極基板として備えた静電容量式タッチパネル。
【請求項8】
静電容量式タッチパネルのパターン化された透明電極を積層するために使用されるベース基材シートの、透明材料で形成された基材フィルムに積層され、表面凸数が単位面積あたり4000〜8000個/cmの微マット層を形成するための硬化性組成物において、
平均粒子径が0.1〜10μmのマット剤と、樹脂分としての電離放射線硬化型樹脂を含み、
前記マット剤は、平均粒子径が異なる複数のマット剤を組み合わせて構成されるとともに、樹脂分100重量部に対して0.05〜0.2重量部の範囲で含有されてなることを特徴とする硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式タッチパネルのパターン化された透明導電層(透明電極)を積層するために使用するベース基材シートと、このシートに透明電極を積層した電極基板を備えた静電容量式タッチパネルとに関する。
【背景技術】
【0002】
位置入力装置であるタッチパネルには、タッチ位置の検出原理の違いから、一般に、抵抗膜式、静電容量式、光学式および超音波式等の各方式がある。静電容量方式としては、表面型静電容量(Surface Capacitive)方式と、投影型静電容量(Projected Capacitive)方式とが知られている。静電容量式のタッチパネルは、表面型および投影型ともに、タッチ位置に生じる静電容量の変化を捉えて入力位置の検出を行う。このため、機械的な接触変形(透明導電膜を凹ませる)を伴う抵抗膜式と比較して入力に力を必要とせず、画面に触れるだけの軽いタッチで入力を行うことができるメリットがある。
【0003】
投影型静電容量式タッチパネルの電極に利用する透明導電性積層フィルムとして、透明材料で形成された基材フィルムの表面に積層されたハードコート層上に、透明導電層を格子状又はストライプ状などの形状にパターン化して形成したものが知られている(特許文献1)。すなわち、特許文献1の透明導電性積層フィルムにおいて、これを投影型静電容量式タッチパネルの電極に利用する場合の、電極(パターン化した透明導電層)を積層するベース基材シートは、透明材料で形成された基材フィルムの表面に、ハードコート層を積層した構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−218368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のベース基材シートは、まず、透明材料で形成された帯状の基材フィルム上にハードコート層を形成して帯状の積層体とした後、これを一旦ロール状に巻き取り原反(ロール状原反)とする。次に、切断機を用いて、ロール状原反から繰り出される積層体を所定サイズ(例えば、利用するタッチパネル等の形状サイズ)のシート状に切断する。こうした工程を経ることで、特許文献1のベース基材シートは得られている。
【0006】
特許文献1の技術で用いられているベース基材シート中のハードコート層は、層表面の光散乱を抑制して視認性を向上させるべく、nm(ナノメータ)サイズの非常に細かなマット剤となる無機粒子を多量(組成物全体の25%〜75%。同文献の実施例の表1参照)に配合した重合性組成物(硬化性樹脂前駆体)の硬化物で構成されている。このような構成であるため、視認性を向上できるだけの表面凹凸が存在しているにすぎず、実質的に表面凹凸はほとんど形成されていない(明確な凸がない)。その結果、帯状の積層体(前出)をロール状に巻き取る際、間に、気泡が巻き込まれ、またホコリなどの異物が混入してしまった場合、これらが跡となって、帯状積層体のところどころにデント(小さな凹み又は変形)が生ずる。
【0007】
デントが生じた帯状積層体から所定サイズに切り出して得られるベース基材シートにデントが含まれていると、その上に透明導電パターンを形成することで得られる透明導電性フィルムをタッチパネルの電極に使用した場合、その変形が存在することによって、センサー部分である透明導電パターンに誤作動を生じたり、液晶表示装置としたときにデントが見えてしまい、外観不良となることがある。
なお、官能評価によるざらっと感(マット感)がこの種のベース基材シートに生じていると、これを利用した透明導電性積層フィルムを組み込んだ静電容量式タッチパネル画面上の、画像が暗くなったり、また不鮮明になったりすることなど視認性の低下が懸念される。したがって、この種のベース基材シートでは、上述したデントが防止されているとともに、マット感が抑制されていることが望ましい。
【0008】
本発明の一側面では、静電容量式タッチパネルのパターン化された透明導電層(透明電極)を積層するために使用され、デントが防止され、かつマット感が抑制されたベース基材シートを提供する。本発明の他の側面では、誤作動を生じないパターン化された透明導電層を備え、視認性に優れた静電容量式タッチパネルを提供する。本発明の他の側面では、デントの発生防止機能とマット感抑制機能を発現させる塗膜を形成可能な硬化性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明において、透明材料で形成された基材フィルムの一方の面を「第1面」と言い、この第1面とは反対側の面を「第2面」と言う。また「デント」とは、基材フィルムの微マット層(後述)とは反対面に形成される、視認可能な浅い凹み(へこみ)又は変形を言う。「マット感」とは、官能評価によるざらっと感を意味する。
【0010】
本発明者らは、マット剤と電離放射線硬化型樹脂を含む硬化性組成物(硬化性樹脂前駆体)において、マット剤としてμm(マイクロメータ)サイズの粒径が比較的大きな有機粒子を極微量(組成物全体の0.05%〜0.1%)に配合すると、その組成物の硬化後に層表面に適切な数の明確な凸が発現することを見出した。
【0011】
層表面に所定数以上の明確な凸が発現することにより、透明材料で形成された基材フィルムの第1面に、上記所定の硬化性組成物の硬化物で構成される微マット層(微マット化ハードコート層)を積層した帯状積層体を、ロール状に巻き取りロール状原反を得ようとする際、間に、気泡が巻き込まれ、またホコリなどの異物が混入した場合でも、微マット層表面に明確に発現した凸が基材フィルムの第2面側と点で接触し、間に空隙を確保することができ、この確保された空隙により、巻き取りの際に巻き込まれた気泡や混入した異物は、ロール状原反の内部から解放され、その結果、帯状積層体へのデントが防止でき、引いては、デントが防止されたベース基材シートが得られることを見出した。
【0012】
また、層表面に所定数以下の明確な凸が発現することにより、マット感が抑制されたベース基材シートが得られ、その結果、誤作動を生じないパターン化された透明導電層を備え、視認性に優れた静電容量式タッチパネルが得られることを見出した。以上の知見に基づき本発明を完成させた。
【0013】
すなわち本発明によれば、以下に示す構成のベース基材シートが提供される。また本発明によれば、以下に示す構成のベース基材シートにパターン化された透明導電層(透明電極)を積層した透明導電性積層体を電極基板として備えた静電容量式タッチパネルが提供される。また本発明によれば、以下に示す構成の硬化性組成物が提供される。
【0014】
本発明のベース基材シートは、静電容量式タッチパネルの透明電極を積層するために使用されるものであって、透明材料で形成された基材フィルムの表面に微マット層を有する。微マット層は、マイクロメーターサイズのマット剤と、樹脂分としての電離放射線硬化型樹脂を含む硬化性組成物の硬化物で構成され、かつ表面凸数が単位面積あたり4000〜8000個/cmである。マット剤は、樹脂分100重量部に対して0.05〜0.2重量部の範囲で含有されてなることを特徴とする。
【0015】
本発明の静電容量式タッチパネルは、本発明のベース基材シートに、透明導電層を所定パターンで積層した透明導電性積層体を電極基板として備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の硬化性組成物は、透明材料で形成された基材フィルムに積層され、表面凸数が単位面積あたり4000〜8000個/cmの微マット層を形成するために用いられ、マイクロメーターサイズのマット剤と、樹脂分としての電離放射線硬化型樹脂を含み、前記マット剤は、樹脂分100重量部に対して0.05〜0.2重量部の範囲で含有されてなることを特徴とする。
【0017】
本発明は、以下の態様を含む。
(1)ベース基材シート、静電容量式タッチパネル及び硬化性組成物において、マット剤を、平均粒子径が0.1〜10μmのもので構成することができる。マット剤は、平均粒子径が異なる複数のマット剤を組み合わせて用いることが好ましい。この場合、少なくとも、平均粒子径が0.1〜4.0μmの第1のマット剤と、平均粒子径が3.0〜10.0μmの第2のマット剤を含むようにすることができる。マット剤は、第1のマット剤と第2のマット剤のみを組み合わせて用いることもできる。この場合、それぞれの、粒子径分布の変動係数が15%以下のものを用いることができる。含有させる全マット剤中での、第1のマット剤と第2のマット剤の重量比率は、第3以降のマット剤の含有、非含有を問わず、8:2〜6:4とすることができる。
(2)ベース基材シート及び静電容量式タッチパネルにおいて、基材フィルムの前記微マット層とは反対面に、マット剤を含有しない(マット剤非含有の)透明ハードコート層を積層することもできる。この場合、静電容量式タッチパネルにおけるパターン化された透明導電層(透明電極)は、マット剤非含有透明ハードコート層および微マット層の少なくともいずれか(すなわち一方又は双方)に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、微マット層を形成する、マット剤と電離放射線硬化型樹脂を含む硬化性組成物において、マット剤として、マイクロメーターサイズのものを用い、かつこれを極微量で含有させたので、塗膜の、硬化後に層表面に適切な数の明確な凸が発現する。その結果、この塗膜(微マット層)を透明材料で形成された基材フィルムの第1面に積層した帯状積層体を用いてロール状原反とした場合でも、これを得ようとする過程で、間に、気泡が巻き込まれ、またホコリなどの異物が混入した場合でも、微マット層表面に明確に発現した凸が基材フィルムの第2面側と点で接触し、間に空隙を確保することができる。この確保された空隙により、巻き取りの際に巻き込まれた気泡や混入した異物は、ロール状原反の内部から解放される。その結果、帯状積層体へのデント(変形)が防止され、引いては、デントが防止されたベース基材シートを提供することができる。また、マット感が抑制されたものとすることもできる。
【0019】
本発明の硬化性組成物を用いれば、透明材料で形成された基材フィルム上に、表面凸数が適切な塗膜(微マット層)を積層することができる。その結果、その積層体をロール状に巻き取った際に帯状積層体に対してデントの発生防止とマット感の抑制とが実現される。
【0020】
本発明の静電容量式タッチパネルは、電極基板として、デントが防止された本発明のベース基材シートに、透明導電層を所定パターンで積層した透明導電性積層体を備えるため、誤作動を生じにくいものとすることができる。また電極基板のベースに、マット感が抑制された本発明のベース基材シートを用いるため、これを利用した透明導電性積層体を組み込み静電容量式タッチパネルとしても、該パネル画面上の、画像が暗くなったり、また不鮮明になったりすることが防止され、視認性に優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本発明のベース基材シートの一例を示す断面図である。
図2図2は本発明のベース基材シートの他の例を示す断面図である。
図3図3は本例の透明導電性積層体を示す断面図である。
図4図4は本発明の静電容量式タッチパネルの一例を模式的に示す平面図である。
図5図5は本発明の静電容量式タッチパネルの一例を模式的に示す拡大断面図である。
図6図6図4,5のタッチパネルに備える縦方向位置(Y座標位置)検出用センサ電極を模式的に示す底面図である。
図7図7図4,5のタッチパネルに備える横方向位置(X座標位置)検出用センサ電極を模式的に示す底面図である。
図8図8は実施例1で得られたベース基材シートの微マット層側、表面の様子を示した顕微鏡写真である。
図9図9は比較例2で得られたベース基材シートの微マット層側、表面の様子を示した顕微鏡写真である。
図10図10は実施例1で得られたベース基材シートの微マット層側、表面の様子を示した写真である。
図11図11は比較例1で得られたベース基材シートの微マット層側、表面の様子を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示すように、本例のベース基材シート1は、静電容量式タッチパネルの透明電極を積層するために使用されるものであり、透明材料で形成された基材フィルム11の第1面11a(図3参照)に、微マット層12を積層した構造を有する。
【0023】
基材フィルム11としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、アクリルなどの材質で形成された透明フィルムが挙げられる。これらの中でも、延伸加工、特に二軸延伸加工されたポリエチレンテレフタレートフィルムが、機械的強度や寸法安定性に優れる点で好ましい。また、透明基材11の表面にコロナ放電処理を施したり、易接着層を設けることによって微マット層12や機能層13(いずれも後述)との接着性を向上させたものも好適に用いられる。基材フィルム11の厚みとしては、一般には20〜500μmであり、好ましくは23〜200μmである。
【0024】
微マット層12は、ベース基材シート1全体のブロッキングや変形(デント、小さな凹み)を防止する機能を司り、樹脂分121とマット剤122を含み、硬化性組成物の硬化物で構成されている。
【0025】
本例の硬化性組成物は、樹脂分とマット剤を含む。なお、本例でいう樹脂分には、硬化型樹脂や熱可塑性樹脂が含まれる。また本例でいう硬化物とは、硬化主剤としての硬化型樹脂とともに、該硬化型樹脂の硬化に必要な、重合開始剤や、重合促進剤(紫外線増感剤など)、硬化剤などの硬化助剤をも含む概念で用いる。
【0026】
本例の樹脂分は、少なくとも電離放射線硬化型樹脂を含む。電離放射線硬化型樹脂としては、電離放射線(紫外線若しくは電子線)の照射により架橋硬化するものが用いられる。このようなものとしては、光カチオン重合可能な光カチオン重合性樹脂、光ラジカル重合可能な光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーなどの1種又は2種以上を混合したものを使用することができる。
【0027】
光カチオン重合性樹脂としては、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂やビニルエーテル系樹脂などが挙げられる。
【0028】
光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、シリコーンアクリレート等が使用できる。さらにこれらのアクリル系プレポリマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性を向上させ機能層の硬度をより向上させるために、光重合性モノマーを加えることが好ましい。
【0029】
光重合性モノマーとしては、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等の2官能アクリルモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の多官能アクリルモノマー等の1種若しくは2種以上が使用される。
【0030】
電離放射線硬化型樹脂は、上述した光カチオン重合性樹脂、光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーの他、紫外線照射によって硬化させる場合には、光重合開始剤や紫外線増感剤などの硬化助剤を含有させることが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル、チオキサンソン類などの光ラジカル重合開始剤や、オニウム塩類、スルホン酸エステル、有機金属錯体などの光カチオン重合開始剤が挙げられる。紫外線増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィンなどが挙げられる。
【0031】
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合障害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどが挙げられる。
【0032】
また、電離放射線硬化型樹脂として、電離放射線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂を用いてもよい。電離放射線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂(以下単に「有機無機ハイブリッド樹脂」と略記することもある。)とは、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)で代表される昔からの複合体と異なり、有機物と無機物の混ざり方が緊密であり、また分散状態が分子レベルかそれに近いもので、電離放射線の照射により、無機成分と有機成分とが反応して、被膜を形成することができるものである。
【0033】
有機無機ハイブリッド樹脂中の無機成分としては、シリカ、チタニア等の金属酸化物が挙げられるが、好ましくはシリカである。シリカとしては、表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカが挙げられる。有機無機ハイブリッド樹脂中での無機成分の含有率は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%であって、好ましくは65重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
【0034】
有機無機ハイブリッド樹脂中の有機成分としては、前記無機成分(好ましくは反応性シリカ)と重合可能な重合性不飽和基を有する化合物(例えば、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、または分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等)が挙げられる。
【0035】
本例では、上述した電離放射線硬化型樹脂とともに、特定の、熱可塑性樹脂及び熱硬化型樹脂の1つ以上を、硬化性組成物中に含有させることもできる。
【0036】
電離放射線硬化型樹脂とともに、熱可塑性樹脂及び熱硬化型樹脂の1つ以上を含めることで、硬化の過程で電離放射線硬化型樹脂の流動が抑制され、これによって硬化後の微マット層12表面に、より一層、適切な数の明確な凸を発現させることができる。
【0037】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
熱硬化型樹脂としては、例えば、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂と熱硬化型樹脂とを比較すると、表面形状を調整しやすく、取扱い性に優れるという点で熱可塑性樹脂が好適である。
【0038】
熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入しても良い。(メタ)アクリロイル基を導入することで電離放射線硬化型樹脂と強固に結合することができる。
【0039】
熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂として特に、ガラス転移温度(Tg)が45℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上のものを用いる。Tgが45℃以上の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂を電離放射線硬化型樹脂とともに用いることで、硬化の過程で、電離放射線硬化型樹脂の流動を抑制しやすくできる。
なお、本例での熱硬化型樹脂のTgは、硬化前のものである。
【0040】
熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂として特に、重量平均分子量(Mw)が70,000以上、好ましくは80,000以上のものを用いる。Mwが70,000以上の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂を電離放射線硬化型樹脂とともに用いることで、硬化の過程で、電離放射線硬化型樹脂の流動を抑制しやすくできる。
【0041】
すなわち本例では、電離放射線硬化型樹脂とともに、下記(a)および(b)の1つ以上を含めることができる。
(a)重量平均分子量が7万以上で、かつガラス転移温度が45℃以上の熱可塑性樹脂、
(b)重量平均分子量が7万以上で、かつガラス転移温度が45℃以上の熱硬化型樹脂。
【0042】
なお、重量平均分子量(Mw)の値は、例えば、示差屈折率検出器(RID)を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によって、化合物の分子量分布を測定して、得られたクロマトグラム(チャート)から、標準ポリスチレンを検量線として、算出することができる。
【0043】
上記(a)および(b)の1つ以上を含める場合、電離放射線硬化型樹脂と、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂との重量比を、好ましくは前者が50重量%以上85重量%未満、後者が15重量%を超え50重量%以下とし、より好ましくは前者が60重量%以上80重量%以下、後者が20重量%以上40重量%以下とし、さらに好ましくは前者が60重量%以上75重量%以下、後者が25重量%以上40重量%以下とする。熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂を15重量%を超す量とすることにより、うねりの発生を十分に抑制して層表面へ、より一層、適切な数の明確な凸を発現しやすくすることができる。熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂を50重量%以下とすることにより、必要以上に熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化型樹脂を含むことによる塗膜強度の低下を防止しやすくすることができる。
【0044】
マット剤としては、無機粒子(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、シリカ、カオリン、クレー、タルクなど)や、樹脂粒子(例えば、アクリル樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、エポキシ樹脂粒子など)が挙げられる。中でも、取扱い性や、表面形状の制御のしやすさの観点から、球形の微粒子が好ましい。また、樹脂粒子は、樹脂と粒子との屈折率差が少なく、透明性を阻害しない点で好適である。
【0045】
マット剤の平均粒子径は、微マット層12の厚みによって異なるため一概にはいえないが、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であって、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下とする。マット剤の平均粒子径を10μm以下とすることにより、マット感を抑え、クリア性を発現させやすくでき、平均粒子径を0.1μm以上とすることにより、ブロッキングの防止や、デントの抑制を発現させやすくできる。
【0046】
本例のマット剤は、マット感を抑える観点で、平均粒子径が異なる複数のマット剤の組み合わせで構成することが好ましい。微マット層12にマット感が生じると、画像が暗くなったり、不鮮明になったりしてタッチパネル画面の視認性が低下しやすい。
本例の場合、平均粒子径が、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは2.5μm以上であって、好ましくは4.0μm以下、より好ましくは3.5μm以下の第1のマット剤と、平均粒子径が、好ましくは3.0μm以上、より好ましくは4.0μm以上であって、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは7.0μm以下、さらに好ましくは6.0μm以下の第2のマット剤とを、少なくとも、含めて構成することがより好ましい。平均粒子径が異なる複数のマット剤を組み合わせて用いることにより、デントの抑制を発現させやすくできるとともに、マット感を抑制しやすい。
【0047】
本例のマット剤として、上述した2種(第1のマット剤、第2のマット剤)のみを組み合わせて用いる場合(これら2種以外の、第3以降のマット剤を含有しない)、それぞれの、粒子径分布の変動係数が15%以下、好ましくは10%以下のもの(いわゆる単分散粒子)を用いることが好ましい。上述した第1のマット剤と第2のマット剤のみを組み合わせて用いる場合、それぞれの、粒子径分布の変動係数が15%以下のものを用いることで、極大粒子を起点としたデントを抑制しやすくでき、また、安定した外観としやすくできる。
なお、変動係数(CV値:coefficient of variation)とは、粒子径分布の分散状態を示す値であって、粒子径分布の標準偏差(不偏分散の平方根)を粒子径の算術平均値(平均粒子径)で除した値の百分率である。つまり、粒径分布の拡がり(粒子径のばらつき)が平均値(算術平均径)に対してどの程度あるのかを表したものであり、通常は、CV値(単位なし)=(標準偏差/平均値)、で求められる。CV値は、これが小さいほど粒度分布は狭くなり(シャープ)、これが大きいほど粒度分布は広くなる(ブロード)。
【0048】
マット剤の含有量は、樹脂分100重量部に対して、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であって、好ましくは5重量部以下、より好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは1重量部以下とする。樹脂分100重量部に対する含有量を5重量部以下とすることにより、微マット層12表面のマット感を抑えることができ、含有量を0.05重量部以上とすることにより、微マット層12表面でのブロッキング防止や、デントが効果的に抑制される。
なお、本例のマット剤として、上述した2種(第1のマット剤、第2のマット剤)以外の、第3以降のマット剤を含有する場合も含め、これら2種(第1のマット剤、第2のマット剤)を組み合わせて用いる場合、全マット剤中での、第1のマット剤と第2のマット剤の重量比率は、8:2〜6:4であることが好ましい。
【0049】
なお、本例におけるマット剤の「平均粒子径」及び「粒子径分布の変動係数」は、コールターカウンター法によって測定した値である。
コールターカウンター法とは、溶液中に分散しているマット剤粒子の数及び大きさを、電気的に測定する方法であって、粒子を電解液中に分散させ、吸引力を使って電気が流れている細孔に粒子を通過させる際に、粒子の体積分だけ電解液が置換され、抵抗が増加し、粒子の体積に比例した電圧パルスを測定する方法である。従って、この電圧パルスの高さと数とを電気的に測定することにより、粒子数と個々の粒子体積を測定して、粒子径及び粒子径分布を求めるものである。
【0050】
硬化性組成物中には、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を添加してもよい。
【0051】
本例の微マット層12は、上述したように、マット剤として、特定サイズの(粒径が比較的大きいなど。好ましくは平均粒子径が異なる複数のマット剤の組み合わせる)有機粒子を極微量に配合することにより、層表面に明確な凸が単位面積あたり4000〜8000個/cm、発現している。なお、上述した、(a)の熱可塑性樹脂、及び(b)の熱硬化性樹脂、の1つ以上を含有させた場合、この凸の発現数がより一層適切なものとなる。具体的には、単位面積あたり4500〜7500個/cm、発現することとなる。
このように、層表面に明確な凸を単位面積あたり4000個/cm以上、発現させることにより、デントの抑制に効果があることが、本発明者らにより見出されたものである。なお、単位面積あたりの凸数を8000個/cm以下にすることで、マット感の抑制に効果があることも見出した。
【0052】
平均粒子径が異なる複数のマット剤を組み合わせて用いた場合、微マット層12表面に発現する明確な凸のうち、小さい方の凸の高さは、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1.0μm以上であって、好ましくは2.5μm以下、より好ましくは2.0μm以下となる。大きい方の凸の高さは、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2.0μm以上であって、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.0μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下となる。
【0053】
微マット層12は、上述した本例の硬化性組成物を、基材フィルム11の第1面11aに塗布、乾燥、電離放射線照射することにより硬化させ、これにより形成することができる。
【0054】
微マット層12は、傷つき防止の観点から、JIS−K5400:1990の鉛筆硬度がF以上であることが好ましい。より好ましくはH以上、さらに好ましくは2H以上、特に好ましくは3H以上である。
微マット層12の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であって、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下とされる。
【0055】
本例では、図3に示すように、基材フィルム11の第2面11bに、機能層13を形成してもよい。本例の機能層13としては、プライマー層、AR層、透明ハードコート層などが挙げられる。
【0056】
透明ハードコート層は、微マット層12とは異なった外観で、微マット層12裏面の傷付き防止の機能を司り、樹脂分のみを含み(マット剤は含有しない)、硬化性組成物の硬化物で構成することができる。透明ハードコート層を形成する硬化性組成物は、微マット層12を形成する硬化性組成物に含まれる樹脂分(すなわち、電離放射線硬化型樹脂。場合により、特定(前出)の、熱可塑性樹脂及び熱硬化型樹脂の1つ以上を含むことができる。)のみで構成することが好ましい。透明ハードコート層は、上記硬化性組成物を、基材フィルム11の第2面11bに塗布、乾燥、電離放射線照射することにより硬化させ、これにより形成することができる。
【0057】
機能層13は、微マット層12と同様、傷つき防止の観点から、JIS−K5400:1990の鉛筆硬度がF以上であることが好ましい。より好ましくはH以上、さらに好ましくは2H以上、特に好ましくは3H以上である。
機能層13の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であって、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下とされる。
【0058】
本例のベース基材シート1は、タッチパネルとして、ディスプレイの画像の視認性を阻害しないといった観点から、全光線透過率(JIS K7361−1:1997)が90%以上、へーズ(JIS K7136:2000)が10%以下であることが好ましい。
【0059】
本例のベース基材シート1は、基材フィルム12上に凸が適切な数で明確に発現した微マット層12を有するため、所定サイズへ切り出す前の帯状積層体(断面構造は、図1の部0巣基材シート1と同一)を巻き取りロール状原反を得る過程で、間に、気泡が巻き込まれ、またホコリなどの異物が混入した場合でも、微マット層12表面に明確に発現した凸が基材フィルム12の第2面11b側と点で接触し、間に空隙が確保される。この確保された空隙により、巻き取りの際に巻き込まれた気泡や混入した異物は、ロール状原反の内部から解放される。その結果、帯状積層体へのデント(変形)が防止される。すなわち、本例のベース基材シート1は、デントが防止されたものとされる。また本例のベース基材シート1は、明確な凸が適切な数で発現した微マット層12を有するため、マット感が抑制されたものともなる。
【0060】
図4に示すように、本例の透明導電性積層体3は、静電容量式タッチパネルの電極基板に使用されるものであり、図1に示すベース基材シート1の第2面11bに機能層13としての透明ハードコート層を形成した上に、透明導電層31を所定パターンで積層した構造を有する。
【0061】
透明導電層31は、透明電極として利用されている慣用の透明導電層を利用でき、導電性無機化合物で形成された透明導電層でよい。導電性無機化合物としては、ITO膜などの金属酸化物が汎用される。
【0062】
本例の透明導電層31は、ベース基材シート1の第2面11b側、機能層13表面の一部の領域に(部分的に)形成されており、通常、格子状などにパターン化されて形成される。なお、透明導電層31は、機能層13表面に代え、あるいはこれとともに、ベース基材シート1の第1面11a側、微マット層12表面に積層されていてもよい。
【0063】
透明導電層13の厚みは、例えば、1〜1000nm、好ましくは5〜500nm、さらに好ましくは10〜400nm(特に20〜300nm)程度であってもよい。
【0064】
透明導電層31を導電性無機化合物で形成する場合の形成方法は、金属又は金属化合物を含む薄膜を形成可能な方法であれば、特に限定されず、慣用の成膜方法を利用して形成できる。成膜方法としては、例えば、物理的気相法(PVD)[例えば、真空蒸着法、フラッシュ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビーム蒸着法、イオンプレーティング法(例えば、HCD法、エレクトロンビームRF法、アーク放電法など)、スパッタリング法(例えば、直流放電法、高周波(RF)放電法、マグネトロン法など)、分子線エピタキシー法、レーザーアブレーション法など]、化学的気相法(CVD)[例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、MOCVD法(有機金属気相成長法)、光CVD法など]、イオンビームミキシング法、イオン注入法などが例示できる。これらの成膜方法のうち、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの物理的気相法、化学的気相法などが汎用され、スパッタリング法、プラズマCVD法(特にスパッタリング法)が好ましい。
【0065】
一方、透明導電層31を導電性ポリマーで形成する場合の形成方法は、導電性ポリマーを含有する液状組成物を塗布して乾燥することにより製造できる。
【0066】
透明導電層31は、タッチパネルなどの種類に応じて、格子状又はストライプ状などの形状にパターン化される。投影型静電容量方式タッチパネルでは、例えば、機能層13の全面に透明導電層31を形成した後、酸やアルカリなどを用いたエッチングにより格子状にパターン化する方法や、マスクなどを利用したパターニングにより格子状のパターンを形成する方法などが挙げられる。
【0067】
図5及び図6に示すように、本例の静電容量式タッチパネル5は、センサグリッドを備えて接触体のタッチ位置を画面に平行な二次元座標(X−Y座標)平面内における座標位置(横方向位置と縦方向位置)として算出するものであり、内部に電極基板51が配置してある。
【0068】
電極基板51として、図4の透明導電性積層体3(片面に電極パターン31を形成した例)を構成するベース基材シート1の第1面11aにも電極パターンが形成してあるものを用いる。具体的には、図6に示すように、電極基板51は、本例のベース基材シート1を有する。ベース基材シート1の第2面11bには、縦方向位置検出用のセンサ電極53(Y用電極)が所定パターンで形成され、またベース基材シート1の第1面11aには、横方向位置検出用のセンサ電極55(X用電極)が所定パターンで形成されている。
【0069】
Y用電極としてのセンサ電極53は、図7に示すように、複数の菱形(正方形を45°回転させた形状)の電極片50aを連結導体50bによって数珠繋ぎに接続して連ね、横方向(X方向)に延びるように配置したセンサ電極群57を、縦方向(Y軸方向)のタッチ位置を検出できるように、縦方向(Y軸方向)に複数本互いに平行に並べて配置したものである。なお、左右両端の電極片は、三角形の平面形状を有し、各センサ電極群57の左右いずれかに銀ペーストからなる導体線路61を接続することにより各センサ電極群57と駆動用IC(制御部62。図5参照)とを電気的に接続する。
【0070】
X用電極としてのセンサ電極55は、図8に示すように、Y用電極としてのセンサ電極53と同様の形状を有するセンサ電極群59を複数本備えたものであるが、横方向(X軸方向)のタッチ位置を検出できるように各センサ電極群59を、縦方向(Y軸方向)に延びるように配置し、かつ、横方向(X軸方向)に複数本互いに平行に並べて配置したものである。したがって、X用電極としての各センサ電極群57と、Y用電極としての各センサ電極群59とは互いに直交する。
【0071】
そして、これら各センサ電極群57,59は、平面から見たときに市松模様を45°回転させたように各センサ電極群57,59同士が組み合わされてタッチパネル画面の略全面をX用、Y用いずれかのセンサ電極群57,59の電極片50aが覆うように配置される。
【0072】
なお、各センサ電極群57,59及びこれらを構成する電極片50aの数について、図面は実際の装置に適する数を示したものではなく、実際には図示したより多くのセンサ電極群57,59及び電極片50aを備えてタッチ位置の検出精度を高めることが可能である。また、センサ電極群57,59(電極片50a)の形状は、前述したように様々なものであって良く、図示した例のほかにも各種の形状や配置パターン、構造のセンサ電極を採用することが可能である。
【0073】
本例の静電容量式タッチパネル5は、電極基板として、上述したデントが防止され、かつマット感が抑制されたベース基材シート1に、透明導電層31を所定パターンで積層した透明導電性積層体3を備えるため、誤作動が生じにくく、かつ視認性も優れている。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の実施形態をより具体化した実施例を挙げ、さらに詳細に説明する。なお、本実施例において「部」、「%」は、特に示さない限り重量基準である。
【0075】
1.硬化性組成物及びベース基材シートの作製
[実施例1〜5,比較例1〜3]
基材フィルムとして、厚み125μmの透明ポリエステルフィルム(コスモシャインA4350:東洋紡績社)を使用し、その一方の面(第1面)に、下記処方の塗布液a〜hをそれぞれ塗布、乾燥、紫外線照射して厚さ2μmの微マット層を形成し、他方の面(第2面)に、下記処方の塗布液iを塗布、乾燥、紫外線照射して厚さ2μmの透明ハードコート層を形成することにより、各例のベース基材シートを得た。微マット層形成用の各塗布液a〜hのマット剤の種類と添加量を表1に示す。各塗布液中の全固形分はいずれも20%に調製した。
【0076】
<塗布液a〜h>
・電離放射線硬化型樹脂(固形分80%) 125部(100部)
(ユニディック17−813:DIC社)、
・熱可塑性アクリル樹脂 107部(42.8部)
(アクリディックA195:DIC社、固形分40%、ガラス転移温度94℃、重量平均分子量85000)
・光重合開始剤 3部
(イルガキュア184:チバ・ジャパン社)
・マット剤 表1記載の種類と固形分比
・希釈溶剤 200部
【0077】
<塗布液i>
・電離放射線硬化型樹脂(固形分80%) 125部(100部)
(ユニディック17−813:DIC社)、
・熱可塑性アクリル樹脂 107部(42.8部)
(アクリディックA195:DIC社、固形分40%、ガラス転移温度94℃、重量平均分子量85000)
・光重合開始剤 3部
(イルガキュア184:チバ・ジャパン社)
・希釈溶剤 200部
【0078】
【表1】
【0079】
なお、表1中、マット剤A、Bは次のものを用いた。
[マット剤A] アクリル樹脂粒子(MX−300:綜研化学工業社、平均粒子径3μm、変動係数9%)
[マット剤B] アクリル樹脂粒子(MX−500:綜研化学工業社、平均粒子径5μm、変動係数9%)
【0080】
2.評価
各例により得られたベース基材シートについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
(1)顔料個数
各例で得られたベース基材シートを微マット層裏面から光を照らし、マイクロスコープで透過画像の透過光量を解析し、透過光が少ない部分で球状形状(顔料がある部分)の数をカウントし、単位面積当たりのマット剤の微粒子の個数を測定した。凸の高さは、平均粒子径が小さい方(マット剤A)によるものが凡そ1μm程度、平均粒子径が大きい方(マット剤B)によるものが凡そ2μm程度であった。
なお、参考までに、実施例1と比較例2の各ベース基材シートの微マット層側、表面の様子を示した顕微鏡写真を図8,9に示す。図中の黒粒が塗膜中の顔料(マット剤)である。実施例1の様子を示した図8では、黒粒の割合が多い。比較例2の様子を示した図9では、その割合が僅かである。
【0082】
(2)マット感
各例で得られたベース基材シートを、目線より上方向で斜め45°に傾け、微マット層から蛍光灯を照らし、微マット層の表面を目視評価した。その結果、5人中3人以上が、クリア感がある(マット感がない)と判断したものを「○」、5人中2人以下が、マット感(ざらっと感)があると判断したものを「×」とした。
なお、参考までに、実施例1と比較例1の各ベース基材シートの微マット層側、表面の様子を示した写真を図10,11に示す。実施例1の様子を示した図10では、天井の蛍光灯の映り込みが鮮明であり、マット感がない。比較例1の様子を示した図11では、天井の蛍光灯の映り込みがぼやけており、マット感がある。
【0083】
(3)ブロッキング防止性
各例で得られたベース基材シートを、10cm×10cmのサイズで10枚用意し、各々のベース基材シートのハードコート層面と微マット層面とを重ね合わせた。次に、当該ベース基材シートをガラス板で挟み込み、約2kgの重りを載せて23℃
24時間放置した。重ね合わせ面を目視により観察し、ブロッキングの発生状況を確認した。ブロッキングが発生せず、透明な部分がなかったものを「○」、ブロッキングが発生したが、透明な部分(ブロッキングした部分)が50%より少ないものを「△」、ブロッキングが発生し、透明な部分(ブロッキングした部分)が50%以上あったものを「×」として評価した。
【0084】
(4)ヘーズと全光線透過率
各例で得られたベース基材シートのヘーズ(JIS K7136:2000)及び、全光線透過率(JIS
K7361−1:1997)を測定した。
【0085】
(5)デント防止性
各例で得られたベース基材シートを1.5Mの長さのサンプル片とし、高さ2mの検査台に、サンプル片の上部を貼り付け、サンプル片の下部をたわませた状態で手間に45°傾けた。反射で、ハードコート層面のデント(凹み、変形)の有無を目視確認した。
デントが、5個/m以下(0個を含む)であったものを「○」、6個〜50個/mであったものを「△」、51個/m以上であったものを「×」とした。
【0086】
表1に示すように、実施例1〜5では、適切な粒子径を持つマット剤を適正量含んだ塗布液を用いて塗膜(微マット層)を形成したので、層表面に発現した凸数(粒子個数)が適正範囲となり、これにより、デントが防止され、かつマット感も抑制された。
これに対し、比較例1では、適切な粒子径を持つマット剤を用いたが、その添加量が多かったため、形成された塗膜(微マット層)の表面に発現した凸数(粒子個数)が多くなり、これにより、マット感(ざらっと感)を生じてしまった。比較例2,3では、適切な粒子径を持つマット剤を用いたが、その添加量が少なかったため、形成された塗膜(微マット層)の表面に発現した凸数(粒子個数)が少なくなり、これにより、デントを防止できなかった。
【符号の説明】
【0087】
1…ベース基材シート、11…基材フィルム、12…微マット層、121…樹脂分(バインダー)、122…マット剤、13…機能層、3…透明導電性積層体、31…透明導電層、5…静電容量式タッチパネル、51…電極基板、53,55…センサ電極、50a…電極片、50b…連結導体、57,59…センサ電極群、61…導体線路、62…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11