(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
直管部及び曲管部を有する金属管として、例えば、発電装置やボイラ等で用いられる蛇行管(ボイラーチューブ)がある。ボイラーチューブは、例えば、火力発電所や焼却炉、コークス乾式消火設備等において高温の燃焼ガス中に暴露され、ボイラーチューブの内側に流体例えば循環水を流通させることにより、循環水を介して燃焼ガスの熱によりタービンを駆動させたりしている。ボイラーチューブは、伝熱面積を大きくするために直管を複数回の180°曲げの曲げ加工で蛇行させた形状のものが知られている。このボイラーチューブは、1本の直管を複数回の180°曲げ加工で蛇行させた形状に形成されているが、実際には、ステッキ型(J型)の導管を複数連結して形成されている(例えば、特許文献1参照。)。例えば、5本のステッキ型の導管と1本の直管とを互いに溶接して連結することで、5つの曲管部を備えたボイラーチューブを形成していた。
【0003】
このように5つの曲管部を備えたボイラーチューブでは、5本のステッキ型の導管の作製と、5本のステッキ型の導管と1本の直管の連結を行わなければならず工数が多く作業時間が長いので、工数を削減して作業時間を短くしかも低コスト化を図るべく、1本の直管を連続して曲げて例えば5つの曲管部を備えたボイラーチューブを形成する手段が望まれている。
【0004】
ところで、金属管を曲げる曲げ加工装置としては、直線状の金属管を把持するクランプ体と、クランプ体の把持箇所より前方であって金属管の曲げ加工箇所の前方を把持するとともに金属管に関し一方の側部側に位置付けた回転軸を中心として旋回可能な曲げアームと、曲げ加工箇所を加熱する加熱手段と、クランプ体を前進させる移動手段とを備えたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。この曲げ加工装置を利用すれば、ステッキ型(J型)の導管を製造することができるが、しかし、クランプ体を前進させる移動手段である推進装置は、金属管の両側に配置された油圧シリンダによりクランプ体を前進させるために、金属管に小半径で180°曲げを施す場合に曲げ加工後の直管部の長さが長いと、油圧シリンダやその油圧シリンダを支持する支持部材をカバーするブラケット等が邪魔で金属管の曲げ加工を行うことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、曲げ加工後の直管部の長さが長くても金属管に小半径の180°曲げを施すことができる金属管の曲げ加工装置、蛇行管の製造方法及び蛇行管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明に係る金属管の曲げ加工装置は、直線状の金属管を把持するクランプ体と、前記クランプ体の把持箇所より前方であって当該金属管の曲げ加工箇所の前方を把持
し、前記金属管に関し一方の側部側に
配置され、上端が前記金属管より低い回転軸を中心として旋回可能な曲げアームと、前記曲げ加工箇所を加熱する加熱手段と、前記金属管の下方に設けられて前記クランプ体を当該金属管の軸方向に移動可能に支持する支持手段と、前記金属管の下方
において前記金属管に関し前記回転軸とは反対側の側部側の領域に配置されて前記クランプ体を移動させる
ボールねじによる移動手段
であって、前記ボールねじが、前記領域において当該金属管より下方に位置付けられ、且つ前記クランプ体の支持手段と干渉しない位置で前記金属管に近接して配置されている移動手段とを備え、前記クランプ体と曲げアームに把持させた金属管の曲げ加工箇所を加熱しながら前記クランプ体を前進させることにより、前記曲げアームを旋回させるとともに前記曲げ加工箇所に曲げモーメントを作用させ前記回転軸を中心に当該金属管を曲げ変形させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
このように、クランプ体を移動させる移動手段が金属管の下方であって回転軸とは反対側の側部側の領域に配置されていることで、金属管を小半径で180°曲げを施す場合に曲げ加工後の直管部の長さが長くても、移動手段が邪魔になることがない。従って、曲げ加工後の直管部の長さが長くても金属管に小半径の180°曲げを施すことが可能となる。
【0009】
本発明では、移動手段は、クランプ体を移動させる駆動部材が1本のボールネジであり、ボールネジを、直管部の軸とボールネジの軸との水平方向の距離と高さ方向の距離がそれぞれ短くなるように金属管に近接して配置してもよい。また、クランプ体及び曲げアームの金属管を把持する箇所がアルミ製のクランプ部材で形成してもよい。
【0010】
また、前記課題を解決するため本発明に係る蛇行管の製造方法は、上述の金属管の曲げ加工装置を用いて、1本の直線状の金属管から複数の直管部及び曲管部を有する無接続の蛇行管を製造する
とき、前記金属管の曲げ加工箇所を当該金属管の塑性変形可能な温度に加熱しながら当該金属管を前進させて180°曲げ加工する曲管部形成工程と、1つの曲管部を形成した後に次の曲管部を形成する前に、前記金属管を前方へ空送りして軸周りに180°回転させ反転させる反転工程を備え、前記曲管部形成工程と反転工程を繰り返し行って前記金属管を蛇行させる蛇行管の製造方法
であって、前記1本の直線状の金属管は、曲げ加工後の直管部となる部分に自溶合金皮膜が形成されており、前記曲げ加工箇所が加熱再溶融処理される自溶合金を含む金属粉末層を有する部分と前記金属粉末層を有しない部分とに形成された金属管であり、前記曲管部形成工程は、前記金属粉末層を有する曲げ加工箇所では金属管の塑性変形可能でかつ金属粉末層の加熱再溶融処理可能な温度で加熱しながら当該金属管を180°曲げ加工する第1曲管部形成工程と、前記金属粉末層を有しない曲げ加工箇所では金属管の塑性変形可能な温度に加熱しながら当該金属管を180°曲げ加工する第2曲管部形成工程と、を備えてもよい。
【0012】
また、1本の直線状の金属管として、曲げ加工後の直管部となる部分に加熱再溶融処理される自溶合金を含む金属粉末層が形成されており、曲げ加工箇所が金属粉末層を有する部分と金属粉末層を有しない部分とに形成された金属管を用いて、金属粉末層を有する曲げ加工後の直管部となる部分を金属粉末層の加熱再溶融処理可能な温度で加熱しながら金属管を前進させて自溶合金皮膜を形成する直管部形成工程を備え、曲管部形成工程を、金属粉末層を有する曲げ加工箇所では金属管の塑性変形可能でかつ金属粉末層の加熱再溶融処理可能な温度で加熱しながら当該金属管を180°曲げ加工する第1曲管部形成工程と、金属粉末層を有しない曲げ加工箇所では金属管の塑性変形可能な温度に加熱しながら当該金属管を180°曲げ加工する第2曲管部形成工程とからなるようにしてもよい。
【0013】
さらに、1本の直線状の金属管として、曲げ加工後の直管部となる部分に自溶合金皮膜が形成されており、曲げ加工箇所に加熱再溶融処理される自溶合金を含む金属粉末層が形成されている金属管を用いて、曲管部形成工程を、曲げ加工箇所を金属管の塑性変形可能でかつ金属粉末層の加熱再溶融処理可能な温度で加熱しながら当該金属管を180°曲げ加工するようにしてもよい。
【0014】
また、1本の直線状の金属管として、加熱再溶融処理される自溶合金を含む金属粉末層が形成されている金属管を用いて、曲げ加工後の直管部となる部分を金属粉末層の加熱再溶融処理可能な温度で加熱しながら金属管を前進させて自溶合金皮膜を形成する直管部形成工程を備え、曲管部形成工程を、曲げ加工箇所を金属管の塑性変形可能でかつ金属粉末層の加熱再溶融処理可能な温度で加熱しながら当該金属管を180°曲げ加工するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、曲げ加工後の直管部の長さが長くても金属管に小半径の180°曲げを施すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る金属管の曲げ加工装置の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1〜
図3に示すように、本実施形態の金属管の曲げ加工装置1は、例えば、1本の直線状の金属管10を曲げ加工して、例えば、
図4に示すような複数の直管部8a及び曲管部8bを有する無接続の蛇行管(ボイラーチューブ)8を形成し得るものである。金属管10としては、例えば、発電装置やボイラ等で用いられる直径約30〜80mmの鋼管等を用いることができる。
【0019】
金属管の曲げ加工装置1は、
図1〜
図3に示すように、直線状の金属管10を把持するクランプ体2と、金属管10の曲げ加工箇所の前方を把持するとともに金属管10に関し一方の側部側に位置付けた回転軸30を中心として旋回可能な曲げアーム3と、金属管10を加熱する加熱手段4と、金属管10の下方に設けられてクランプ体2を金属管10の軸方向に移動可能に支持する支持手段5と、金属管10の下方であって回転軸とは反対側の側部側の領域に配置されてクランプ体2を移動させる移動手段6とを備えている。これらクランプ体2、曲げアーム3、加熱手段4、支持手段5及び移動手段6は、基台11に設けられている。
【0020】
基台11は、金属管10を曲げ加工を行う際に金属管10の軸が動かないように堅牢に形成されていることが好ましい。基台11は、例えば、アルミや鋼鉄等の金属製の断面略矩形筒状の枠材を用いて前後方向に長く形成されている。基台11は、床等に設置される設置台12と、設置台12の上方に配置されて前後方向に長い断面略矩形筒状の第1固定台13と、第1固定台13の前端に連接された第2固定台14とを備えている。
【0021】
第1固定台13上には、クランプ体2を当該クランプ体2で把持した金属管10の軸方向に移動可能に支持する支持手段5であるレール51が設けられている。レール51には、レール51に沿って移動する凹状の移動部材52が係合されている。移動部材52は、一種の車輪であり、前後方向に長く平板状の移動体53の下面に取り付けられている。移動体53の上面には、クランプ体2が固定されている。これにより、クランプ体2は、レール51上をレール51に沿って移動、すなわち、金属管10の軸方向に移動し得るようになっている。レール51の長さは、移動体53すなわちクランプ体2を前進させて金属管10の180°曲げの曲げ加工を行える範囲から任意に設定される。
【0022】
クランプ体2は、直線状の金属管10を例えば水平に把持するもので、周知のもの等、例えば、一対の上下クランプ部材21、22を備えたものを用いることができる。クランプ体2は、金属管10が挿入される略矩形筒状に形成された枠体20を備え、この枠体20が移動体53上に固定されている。枠体20の底部は、上面に凹部が設けられて下クランプ部材22として形成されている。枠体20内の下クランプ部材22の上方には、下クランプ部材22に対して上下方向に移動可能に支持され、下面に凹部が設けられている上クランプ部材21が設けられている。
【0023】
枠体20の上部には、上クランプ部材21を上下に移動させる移動手段である油圧シリンダ23が設けられている。これにより、上クランプ部材21を下降させることで、下クランプ部材22と上クランプ部材21とで金属管10を把持することができるようになっている。このとき、クランプ体2は、金属管10を直接把持する箇所がアルミ製のクランプ部材で形成されていることが好ましい。すなわち、上下クランプ部材21、22の各凹部がアルミで形成されていてもよいし、一対の凹状のアルミ製のクランプ部材27を介して上下クランプ部材21、22で金属管10を把持するようにしてもよい。
【0024】
第2固定台14上には、ガイド部7が設けられている。ガイド部7は、クランプ体2で把持した直線状の金属管10の軸方向への移動をガイドするもので、例えば、中央部が括れた左右一対のガイドローラ71、72で形成されている。左右一対のガイドローラ71、72の一方例えば右側のガイドローラ72は、ハンドル73により左右に移動可能に形成されている。これにより、金属管10の径が異なっても金属管10をその軸方向に案内することができるようになっている。
【0025】
第2固定台14のガイド部7の前方には、曲げアーム3が設けられている。曲げアーム3は、金属管10に関し一方の側部側例えば右側部側に位置付けた回転軸30を中心として旋回可能に設けられている。回転軸30は、高さ方向(垂直方向)に延びた状態で回転軸支持部15に回転可能に支持されている。回転軸支持部15は、第2固定台14に左右方向に移動可能すなわち左右方向の位置を調節可能に取り付けられている。これにより、金属管10に対する回転軸30の位置を調節し得るようになっている。
【0026】
曲げアーム3は、回転軸30に取り付けられたアーム部31と、アーム部31に取り付けられたクランプ部32とから形成されている。クランプ部32は、直線状の金属管10を把持するものであり、例えば、一対の左右クランプ部材33、34を備えたものを用いることができる。クランプ部32は、例えば、L字状に形成され、高さ方向に延びる垂直部分が一対の左右クランプ部材33、34で形成され、一方のクランプ部材例えば左クランプ部材33の上端が他方のクランプ部材例えば右クランプ部材34の上端に回転可能に設けられて金属管10の把持と解放を行えるようになっている。左右クランプ部材33、34は、金属管10を直接把持する箇所がアルミ製のクランプ部材で形成されていることが好ましい。すなわち、左右クランプ部材33、34の各凹部がアルミで形成されていてもよいし、一対の凹状のアルミ製のクランプ部材29を介して左右クランプ部材33、34で金属管10を把持するようにしてもよい。また、クランプ部32の水平方向に延びる水平部分には、一対の左右クランプ部材33、34で金属管10を把持した状態を保持するための油圧シリンダ等の締め込み部材35が設けられている。
【0027】
アーム部31は、クランプ体2で把持されかつガイド部7でガイドされた金属管10をクランプ部32で把持し得るとともに、この状態からその金属管10を前進させて180°曲げの曲げ加工を行えるようにクランプ部32を旋回させるためのものである。すなわち、クランプ部32は、金属管10を把持し得る把持位置と、この把持位置から回転軸30を軸に180°回転した180°曲げ終了位置との間で回転移動し得るようにアーム部31に連結されている。
【0028】
アーム部31は、例えば、回転軸30が一体に設けられている回転体36と、回転体36に第1アーム37を介して取り付けられている中間体38と、中間体38に取り付けられているとともにクランプ部32に固定されている第2アーム39とを備えている。中間体38は、直方体状に形成され、一側面に断面矩形状であって水平方向に延びる棒状の第1アーム37が固定されている。第1アーム37は、回転体36に長さ調節可能に取り付けられている。これにより、クランプ部32の水平方向の位置を調節し得るようになっている。さらに、金属管10に対する回転軸30の位置の調節と相俟って金属管10の曲げ加工の半径を調節し得るようになっている。第2アーム39は、断面矩形状であって高さ方向に延びる棒状に形成され、上端がクランプ部32の下面に固定されている。第2アーム39は、中間体38に長さ調節可能に取り付けられている。これにより、クランプ部32の高さ方向の位置を調節し得るようになっている。
【0029】
加熱手段4は、曲げアーム3のクランプ部32の把持位置とガイド部7との間に配設され、中に金属管10が挿入されるリング状の加熱体41を備えている。加熱体41は、加熱体41内に挿入されている金属管10を環状に誘導加熱するための高周波電流が通電される誘導コイルである。加熱体41は、金属管10を金属粉末層の加熱溶融処理可能な温度及び金属管10の塑性変形可能な温度に加熱し得るように形成されている。
【0030】
移動手段6は、クランプ体2を前後方向(金属管10の軸方向)に移動させるもので、前方に移動させて金属管10の曲げ加工を行え得るものである。移動手段6は、クランプ体2を実際に移動させる移動部材である1本のボールネジ61と駆動モータ62とを備えている。ボールネジ61は、例えば、レール51より長さが少し長く形成され、レール51と平行に設けられている。ボールネジ61の位置は、クランプ体2に把持された金属管10の下方であって曲げアーム3の回転軸30と反対側である。ボールネジ61の位置は、金属管10の軸とボールネジ61の軸との水平方向の距離と高さ方向の距離がそれぞれ短くなるように金属管10に近接して配置することが好ましい。本実施形態では、ボールネジ61は、例えば、クランプ体2の枠体20が矩形に形成されているとした場合の左下角部近傍に配置されている。
【0031】
ボールネジ61の一方の端部(前端部)は、第1固定台13の前方であってレール51の前端近傍に設けられている軸受63に回転可能に支持されている。ボールネジ61の他方の端部(後端部)近傍は、第1固定台13の後方であってレール51の後端近傍に設けられている軸受64に回転可能に支持されている。ボールネジ61の後端部には、従動プーリー65が取り付けられている。すなわち、ボールネジ61及びボールネジ61を支持する軸受63、64、従動プーリー65は、金属管10の小半径での180°曲げの曲げ加工を行う際に曲げ加工後の直管部8aの長さが長くても邪魔にならない位置に配置されている。
【0032】
従動プーリー65は、ベルトやチェーン66等を介して駆動プーリー67に接続されている。駆動プーリー67は、設置台12の左側部上に設けられている正逆回転可能な駆動モータ62の回転軸に取り付けられている。ボールネジ61は、クランプ体2の左下角部近傍に設けられている係合部25に螺合されている。これにより、駆動モータ62の駆動によりボールネジ61が回転して、クランプ体2がレール51に沿って移動するようになっている。なお、
図3中、符号69は、チェーン66をガイドするガイドプーリーを示している。
【0033】
次に、上記のように構成した金属管の曲げ加工装置1を用いて1本の直線状の金属管10から複数の直管部8a及び曲管部8bを有するとともに自溶合金皮膜を有する無接続の蛇行管を形成する場合について説明する。
【0034】
1本の直線状の金属管10としては、例えば、曲げ加工後の直管部8aとなる部分に自溶合金皮膜9が形成されており、曲げ加工箇所が加熱再溶融処理される自溶合金を含む金属粉末層を有する部分と金属粉末層を有しない部分とに形成された金属管を用いる。
【0035】
自溶合金としては、周知のものを用いることができ、例えば、フラックス生成成分であるBやSiを配合して自溶性を付与したNi基、Ni−Cr基又はCo基の合金、あるいは、これらに耐摩耗性向上目的でWC系サーメットなどを配合した合金等を用いることができる。被覆の厚さは、特に限定されず、例えば、加熱再溶融処理後で0.5〜3mm程度に設定される。金属粉末層は、例えば、溶射機を用いて形成することができる。溶射機としては、ガスフレーム溶射機、プラズマ溶射機、HVOF溶射機等の公知のものを用いることができる。曲げ加工後の直管部8aとなる部分の自溶合金皮膜9の形成(金属粉末層の加熱再溶融処理)は、例えば、公知のものを用いてもよいし、本実施形態の曲げ加工装置1を用いてもよい。また、自溶合金皮膜9は、緻密で硬く密着力が高く、厚さが均一で、表面が平滑な膜であるので、蛇行管(ボイラーチューブ)の皮膜としては最適である。
【0036】
金属粉末層と自溶合金皮膜が形成された1本の直線状の金属管10を、クランプ体2の上下クランプ部材21、22間、ガイド部7のガイドローラ71、72間及び加熱体41を順次通して、クランプ体2の下クランプ部材22上に載置する。上クランプ部材21を下降させてクランプ体2の上下クランプ部材21、22で金属管10を把持する。この金属管10の前方を曲げアーム3のクランプ部32の一対の左右クランプ部材33、34で把持する。これら2つの把持は、金属管10の曲げ加工を行う曲げ加工箇所を挟んで行うとともに、曲げ加工箇所を加熱体41で十分に加熱し得るように行う。
【0037】
把持後、加熱体41により金属管10の曲げ加工箇所を環状に加熱する。この加熱は、金属粉末層を有する曲げ加工箇所では、金属管10の塑性変形可能でかつ金属粉末層の加熱再溶融処理可能な温度で行い、金属粉末層を有しない曲げ加工箇所では、金属管10の塑性変形可能な温度で行う。この加熱を行いながら駆動モータ62を駆動させてクランプ体2を前進させる。このとき、クランプ体2はレール51の後方側に位置されているようにする。クランプ体2の前進により、曲げアーム2が回転軸30を中心に旋回するとともに曲げ加工箇所に曲げモーメントが作用して、回転軸30を中心に金属管10が曲げ変形する。すなわち、金属管10が徐々に右側部側に曲がっていく。この曲げが180°行われたら、クランプ体2の前進を停止させる。加熱体41の金属管10への加熱は、クランプ体2の前進の停止とともに停止させてもよいし、曲げ加工を行うのに十分に金属管10の加熱を行えた時点で駆動モータ62の停止より前に停止させてもよい。
【0038】
これにより、金属管10には、右側に180°曲がった曲管部8bが形成される。このとき、曲げ加工箇所が金属粉末層を有している場合には、曲管部8bの外表面には、曲げ加工を行った際に金属粉末層の加熱再溶融処理可能な温度で加熱が行われるので、金属粉末層が加熱再溶融処理されて自溶合金皮膜9が形成される(第1曲管部形成工程)。また、曲げ加工箇所が金属粉末層を有していない場合には、単に曲げ加工のみが行われる(第2曲管部形成工程)。これで1つの曲管部8bが形成される。なお、例えば、
図4に示す蛇行管8を形成する場合、左側の3つの曲管部8bが表面に自溶合金皮膜9が形成されているもので、右側の2つの曲管部8bが表面に自溶合金皮膜9が形成されていないものである。
【0039】
次の曲げ加工を行うには、曲げアーム3のクランプ部32での把持を解除し、金属管10を軸方向に沿って前進させて次に曲げ加工を行う曲げ加工箇所が加熱体41で十分に加熱し得るように金属管10を移動させる。すなわち、金属管10を前方へ空送りする。この空送りは、クランプ体2を用いて行うようにしてもよいし、クランプ体2での把持を解除した状態で手動や他の装置等を用いて行うようにしてもよい。金属管10の移動後、曲げ加工前の直線状の金属管10の軸周りに金属管10を180°回転させて反転させる(反転工程)。その結果、曲げ加工後の直管部8aが左側(曲げ方向とは反対側)に移動する。この移動後には、クランプ体2がレール51の後方側に位置されているようにする。
【0040】
そして、クランプ体2及び曲げアーム3のクランプ部32で金属管10を次の曲げ加工箇所を挟んだ状態で把持した後に、加熱体41によりその曲げ加工箇所を加熱する。この加熱は、上述の加熱と同様に行う。その曲げ加工箇所を加熱しながら、クランプ体2を前進させて金属管10を右側部側に曲げ、前述と同様に金属管10に曲げ加工を施す。これらのような曲管部形成工程(第1曲管部形成工程、第2曲管部形成工程)と反転工程を繰り返し行うことにより、1本の直線状の金属管10から複数の直管部8a及び曲管部8bを有するとともに外表面の所望の箇所に自溶合金皮膜9が形成された蛇行管8、例えば、
図4に示すような蛇行管8を形成することができる(第1の蛇行管の製造方法)。
【0041】
このように、1本の直線状の金属管10を蛇行管8に形成する場合、曲管部8bが複数あっても複数の曲げ加工の際には曲げ方向は常に同じで金属管10の右側部側であり、この右側部側には、クランプ体2を移動させる移動手段6(1本のボールネジ61及びボールネジ61を支持する軸受63、64(軸受を覆うカバーも含む)、従動プーリー65(従動プーリーを覆うカバーも含む))が設置されていない。このため、金属管10に小半径例えばR95(直径95cm)で180°曲げの曲げ加工を施す場合、曲げ加工後の直管部8aの長さが長くても、移動手段6が邪魔になることなく、金属管10に曲げ加工を施せる。すなわち、移動手段6は、直管部8aの下方であって直管部8aの左側部側の領域(曲げ方向と反対側の領域)に配置されているので、移動手段6が小半径で180°曲げの曲げ加工の妨げとならない。その結果、1本の直線状の金属管10から小半径で曲げ加工した複数の直管部8a及び曲管部8bを有するとともに自溶合金皮膜9が形成された蛇行管8を形成することができる。
【0042】
クランプ体2を移動させる移動部材である1本のボールネジ61は、クランプ体2に把持させた金属管10の軸とボールネジ61の軸との水平方向の距離と高さ方向の距離がそれぞれ短くなるように金属管10に近接して配置することが好ましく、これにより、金属管10を前進させるときに、金属管10に作用する曲げモーメントを小さくすることができる。また、クランプ体2やクランプ部32で金属管10を把持する場合、直接金属管10を把持する箇所がアルミ製のクランプ部材27、29で形成されていると、金属管10を把持したときの金属管10の割れ、金属粉末層や自溶合金皮膜の割れ、剥離を防止することができる。
【0043】
第2固定台14上にガイド部7が設けられ、このガイド部7によって金属管10が加熱体41に案内されるので、金属管10をずれることなく軸方向に前進させることができる。このとき、ガイド部7が左右一対のガイドローラ71、72で形成され、左右一対のガイドローラ71、72の一方例えば右側のガイドローラ72がハンドル73により左右に移動可能に形成されていると、金属管10の径が異なっても金属管10をその軸方向に案内することができる。
【0044】
曲げアーム3の回転軸30を回転可能に支持する回転軸支持部15が第2固定台14に左右方向の位置調節可能に取り付けられ、かつ、曲げアーム3のアーム部31はクランプ部32の水平方向の位置を調節可能に形成されているので、回転軸30の位置を金属管10に対して左右に調節することができる。これにより、金属管10を曲げ加工する際の半径を任意に調節することができる。また、曲げアーム3のアーム部31は、クランプ部32の水平方向の位置及び高さ方向の位置を調節可能に形成されているので、金属管10を把持するクランプ部32の位置を上下左右に移動することができる。その結果、金属管10の径が異なっても金属管10を把持するクランプ部32の位置を最適な位置に調節することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態の金属管の曲げ加工装置1を用いて、曲げ加工とともに曲げ加工後の直管部8aとなる部分の自溶合金皮膜9の形成を行うようにしてもよい。この場合、1本の直線状の金属管10として、例えば、曲げ加工後の直管部8aとなる部分に加熱再溶融処理される自溶合金を含む金属粉末層が形成されており、曲げ加工箇所が金属粉末層を有する部分と金属粉末層を有しない部分とに形成された金属管を用いる。
【0046】
まず、金属管10の先端から曲げ加工箇所までの金属粉末層の加熱再溶融処理を行う。金属管10を、先端からクランプ体2の上下クランプ部材21、22間、ガイドローラ71、72間及び加熱体41を順次通して、クランプ体2の下クランプ部材22上に載置する。載置後、クランプ体2の上下クランプ部材21、22で金属管10を把持し、加熱体41により金属管10の金属粉末層が形成されている端部を環状に金属粉末層の加熱溶融処理可能な温度に加熱しながらクランプ体2を前進させる。これにより、金属管10は前方に進みながらその金属粉末層が加熱再溶融処理されて自溶合金皮膜9に形成される。その結果、曲げ加工箇所までの直管部8aとなる金属管10に自溶合金皮膜9が形成される(直管部形成工程)。
【0047】
次に、クランプ体2での金属管10の把持を解除してクランプ体2をレール51の後方側に移動させる。移動後、クランプ体2及び曲げアーム3のクランプ部32で金属管10の曲げ加工箇所を挟んだ状態で把持した後に、加熱体41によりその曲げ加工箇所を加熱する。この加熱は、上述の加熱と同様に金属粉末層の有無によって異なる温度で行う。その曲げ加工箇所を加熱しながら、クランプ体2を前進させて金属管10を右側部側に曲げ、前述と同様に金属管10に曲げ加工を施す。これにより、金属管10には、180°曲がった曲管部11cが形成されるとともに、曲げ加工箇所が金属粉末層を有している場合には自溶合金皮膜9が形成される(曲管部形成工程)。これで1つの曲管部8bの曲げ加工が終了する。
【0048】
1つの曲管部8bの形成後、次の曲げ加工箇所までの金属管10の金属粉末層の加熱再溶融処理を前述の金属粉末層の加熱再溶融処理と同様に行う(直管部形成工程)。これにより、次の曲げ加工箇所までの直管部8aとなる金属管10の外表面に自溶合金皮膜9が形成される。
【0049】
そして、クランプ体2での把持を解除し、曲げ加工前の直線状の金属管10の軸周りに金属管10を180°回転させて反転させてから(反転工程)、クランプ体2及び曲げアーム3のクランプ部32で金属管10を曲げ加工箇所を挟んだ状態で把持した後に、前述と同様に加熱体41によりその曲げ加工箇所を加熱しながら、クランプ体2を前進させ、金属管10に曲げ加工を施す。これにより、金属管10は、前端から2つの直管部11bと2つの曲管部11cが連続して形成される。よって、これらの直管部形成工程と曲管部形成工程と反転工程を繰り返し行うことにより、1本の直線状の金属管10から複数の直管部8a及び曲管部8bを有するとともに外表面の所望の箇所に自溶合金皮膜9を有する蛇行管8、例えば、
図4に示すような蛇行管8を形成することができる(第2の蛇行管の製造方法)。
【0050】
また、本実施形態の金属管の曲げ加工装置1は、外表面の所望の箇所に金属粉末層が形成された金属管10から蛇行管8を形成する場合について説明したが、これに限定されず、例えば、曲げ加工のみを行って蛇行管を形成したり、金属粉末層が全体に形成されている金属管から蛇行管を形成したり、曲げ加工後の直管部となる部分に自溶合金皮膜が形成されているとともに曲げ加工箇所に金属粉末層が形成されている金属管から蛇行管を形成したりすることができる。
【0051】
曲げ加工のみを行って蛇行管を形成する場合、曲げ加工を行う際に加熱体41による金属管10の加熱を金属管10の塑性変形可能な温度で行う以外は前述と同様に曲管部形成工程(第2曲管部形成工程)と反転工程を繰り返し行うことにより、1本の直線状の金属管10から複数の直管部8a及び曲管部8bを有する蛇行管を形成することができる。
【0052】
金属粉末層が全体に形成されている金属管から蛇行管を形成する場合には、前述の第2の蛇行管の製造方法と略同様に、すなわち、曲げ加工を行う際に加熱体41による金属管10の加熱を金属管10の塑性変形可能であって金属粉末層の加熱再溶融処理可能な温度で行う以外は前述と同様に行う曲管部形成工程(第1曲管部形成工程)と直管部形成工程と反転工程とを繰り返し行うことにより、1本の直線状の金属管10から複数の直管部8a及び曲管部8bを有するとともに自溶合金皮膜9を有する蛇行管を形成することができる。
【0053】
曲げ加工後の直管部となる部分に自溶合金皮膜が形成されているとともに曲げ加工箇所に金属粉末層が形成されている金属管から蛇行管を形成する場合には、前述の第1の蛇行管の製造方法と略同様に、すなわち、曲げ加工を行う際に加熱体41による金属管10の加熱を金属管10の塑性変形可能であって金属粉末層の加熱再溶融処理可能な温度で行う以外は前述と同様に行う曲管部形成工程(第1曲管部形成工程)と反転工程を繰り返し行うことにより、1本の直線状の金属管10から複数の直管部8a及び曲管部8bを有するとともに自溶合金皮膜9を有する蛇行管を形成することができる。