【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)展示会名:2013ゴールデンフェア 産業・機械工業見本市ふくい 開催日:平成25年6月1日 (2)集会名:JFEテクノワイヤ「RB会」会員企業東部地区会合 開催日:平成25年7月31日 (3)集会名:JFEテクノワイヤ「RB会」会員企業西部地区会合 開催日:平成25年8月2日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1対の被溶接部材をその溶接部の端面が互いに対向するように把持する把持手段と、該1対の被溶接部材の端面を互いに接触した状態に維持するための第1の圧力を前記把持手段に印加する第1の圧力印加手段と、前記第1の圧力印加手段により前記第1の圧力が印加されている状態で該1対の被溶接部材間に第1の電圧を印加することにより前記1対の被溶接部材の前記端面間にフラッシュを発生させると共に、該第1の電圧を所定期間印加した後に連続して該第1の電圧より実効的に低い第2の電圧を前記1対の被溶接部材間に印加する電圧印加手段と、前記第2の電圧の印加及び前記第1の圧力の印加により前記把持手段が第1の設定距離移動した際に、前記1対の被溶接部材の前記端面がより高い圧力で互いに押圧されるように前記把持手段に前記第1の圧力より高い第2の圧力を印加する第2の圧力印加手段とを備えており、前記1対の被溶接部材は前記第2の電圧及び前記第2の圧力が印加されることによりアップセット溶接されることを特徴とする抵抗溶接装置。
前記電圧印加手段が、印加電圧の点弧角制御により前記第1の電圧及び前記第2の電圧を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の抵抗溶接装置。
前記電圧印加手段が、前記把持手段が前記第1の設定距離より大きい第2の設定距離移動した際に、前記1対の被溶接部材間への前記第2の電圧の印加を終了するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の抵抗溶接装置。
前記第2の圧力印加手段が、前記把持手段が前記第2の設定距離移動した時から所定時間経過後に、前記把持手段への前記第2の圧力の印加を終了するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の抵抗溶接装置。
前記把持手段が前記1対の被溶接部材をそれぞれ把持すると共に電極を兼用する第1のクランプ電極部材及び第2のクランプ電極部材を備えており、前記第1の圧力印加手段が前記第1のクランプ電極部材に前記第1の圧力を印加するように構成された第1の圧力シリンダ部材を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の抵抗溶接装置。
前記第1の圧力シリンダ部材の可動ロッドが前記第1のクランプ電極部材に固着され、該第1のクランプ電極部材を前記第2のクランプ電極部材方向に前記第1の圧力で押圧されるように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の抵抗溶接装置。
当該抵抗溶接装置の溶接動作中は、前記第1の圧力シリンダ部材が前記第1のクランプ電極部材を前記第1の圧力で常に押圧するように構成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の抵抗溶接装置。
前記第1のクランプ電極部材及び前記第2のクランプ電極部材による前記1対の被溶接部材の把持が終了した後、前記第1の圧力シリンダ部材が前記第1のクランプ電極部材を前記第2のクランプ電極部材から引き離す方向に駆動するように構成されていることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の抵抗溶接装置。
前記把持手段が前記1対の被溶接部材をそれぞれ把持すると共に電極を兼用する第1のクランプ電極部材及び第2のクランプ電極部材を備えており、前記第2の圧力印加手段が前記第1のクランプ電極部材に前記第2の圧力を印加するように構成された第2の圧力シリンダ部材を備えていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の抵抗溶接装置。
前記第2の圧力シリンダ部材の可動ロッドが前記第1のクランプ電極部材に当接し、該第1のクランプ電極部材を前記第2のクランプ電極部材方向に前記第2の圧力で押圧するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の抵抗溶接装置。
前記1対の被溶接部材から前記把持手段に印加される力を相殺する力を該把持手段に印加するように構成されている第3の圧力シリンダ部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の抵抗溶接装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アップセット溶接法は、通電時間が比較的長くなり、加熱範囲が広くなると共に、被溶接部材の突き合わせ端面は全体が互いに良好に接触するように平坦であることが要求され、しかもその端面に汚れのないことが要求される。
【0005】
一方、抵抗溶接法の1つとして、フラッシュ溶接法が知られている。このフラッシュ溶接法は、通電の初期には被溶接部材への強い加圧は行わず、単に接触させるだけで溶接電流を通じ、接触部が火花(フラッシュ)となって溶融飛散し、溶接面全体が十分に加熱された際に強く加圧して行う抵抗溶接法である。フラッシュ溶接法によれば、被溶接部材の突き合わせ端面の平坦性は要求されない。
【0006】
このフラッシュ溶接法における、端面が平坦でなくとも良いという利点は、上述したようにアップセット溶接法では得られない。そもそもアップセット溶接法はフラッシュ溶接法とは、全く異なる方式の抵抗溶接法であり、アップセット溶接法とフラッシュ溶接法との両方の利点を備えている抵抗溶接装置は、従来より、全く存在しなかった。
【0007】
本発明の目的は、端面の平坦性は要求されず、比較的短時間で充分な溶接強度を有する抵抗溶接を行うことができる抵抗溶接装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、端面の平坦性は要求されず、比較的安価に構成できかつ充分な溶接強度を有する抵抗溶接を行うことができる抵抗溶接装置を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、端面の平坦性は要求されず、信頼性が高くかつ溶接部の形状が安定化した抵抗溶接を行うことができる抵抗溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、1対の被溶接部材をその溶接部の端面が互いに対向するように把持する把持手段と、1対の被溶接部材の端面を互いに接触した状態に維持するための第1の圧力を把持手段に印加する第1の圧力印加手段と、第1の圧力印加手段により第1の圧力が印加されている状態で1対の被溶接部材間に第1の電圧を印加することにより1対の被溶接部材の端面間にフラッシュを発生させると共に、第1の電圧を所定期間印加した後に連続して第1の電圧より実効的に低い第2の電圧を1対の被溶接部材間に印加する電圧印加手段と、第2の電圧の印加及び第1の圧力の印加により把持手段が第1の設定距離移動した際に、1対の被溶接部材の端面がより高い圧力で互いに押圧されるように把持手段に第1の圧力より高い第2の圧力を印加する第2の圧力印加手段とを備えており、1対の被溶接部材は第2の電圧及び第2の圧力が印加されることによりアップセット溶接される抵抗溶接装置が提供される。
【0011】
第1の圧力が印加されている状態で、電圧印加手段により1対の被溶接部材間に第1の電圧が印加されてフラッシュが発生する。このフラッシュにより被溶接部材の端面が浄化され、汚れ、酸化物や不純物が除去されると共に、表面の平滑化が行われる。さらに、端面全体が均熱化される。第1の電圧を所定期間印加した後に引き続いてこの第1の電圧より実効的に低い第2の電圧が印加される。この第2の電圧の印加及び第1の圧力の印加により被溶接部材が第1の設定距離移動した際に、第1の圧力より高い第2の圧力が印加され、この第2の電圧及び第2の圧力の両方が印加されることにより、1対の被溶接部材はアップセット溶接される。フラッシュ発生で均熱化された後に連続してアップセット溶接されるため、比較的短時間で充分な溶接強度を有する抵抗溶接を行うことができる。また、フラッシュ発生による均熱化の後にアップセット溶接しているため、接合部の品質が安定化し、信頼性が高い抵抗溶接を行うことができると共に、端面の形状の影響を受けにくく、形状の安定化した抵抗溶接を行うことができる。さらに、フラッシュ発生によって溶接処理を完了するのではなく、端面の浄化、平滑化及び均熱化を行うためにフラッシュを発生させているので、大規模な電源装置は不要であり、従って、比較的安価に抵抗溶接装置を構成することができる。
【0012】
電圧印加手段が、第1の電圧を間欠的に印加するように構成されていることが好ましい。高い電圧である第1の電圧の印加を連続的に行うと、被溶接部材の端面の温度が全体的又は部分的に急激に上昇することがあり、このため、このような高い電圧を連続的に印加する制御は好ましくない。これに対して、第1の電圧を間欠的に印加することにより、全体的又は部分的な急激な温度上昇を防止でき、その結果、端面全体にフラッシュを発生させることができるので、端面全体の浄化が可能となり、かつ端面の均熱化が可能となる。
【0013】
電圧印加手段が、印加電圧の点弧角制御により第1の電圧及び第2の電圧を制御するように構成されていることも好ましい。点弧角を制御して実効電圧を制御することにより、第1の電圧から第2の電圧へ連続的にかつ容易に切換え制御することが可能となる。
【0014】
電圧印加手段が、把持手段が第1の設定距離より大きい第2の設定距離移動した際に、1対の被溶接部材間への第2の電圧の印加を終了するように構成されていることも好ましい。移動した距離によって第2の電圧の印加を終了させているため、溶接の終了を正確に制御することが可能となる。
【0015】
この場合、第2の圧力印加手段が、把持手段が第2の設定距離移動した時(即ち、第2の電圧の印加終了)から所定時間経過後に、この把持手段への第2の圧力の印加を終了するように構成されていることがより好ましい。第2の電圧印加が終了した後にも第2の圧力の印加が行えるので、余熱により溶接部のコブ形成を進めることができる。
【0016】
把持手段が1対の被溶接部材をそれぞれ把持すると共に電極を兼用する第1のクランプ電極部材及び第2のクランプ電極部材を備えており、第1の圧力印加手段が第1のクランプ電極部材に第1の圧力を印加するように構成された第1の圧力シリンダ部材を備えていることも好ましい。
【0017】
この場合、第1の圧力シリンダ部材の可動ロッドが第1のクランプ電極部材に固着され、第1のクランプ電極部材を第2のクランプ電極部材方向に第1の圧力で押圧されるように構成されていることがより好ましい。
【0018】
抵抗溶接装置の溶接動作中は、第1の圧力シリンダ部材が第1のクランプ電極部材を第1の圧力で常に押圧するように構成されていることがより好ましい。
【0019】
第1のクランプ電極部材及び第2のクランプ電極部材による1対の被溶接部材の把持が終了した後、第1の圧力シリンダ部材が第1のクランプ電極部材を第2のクランプ電極部材から引き離す方向に駆動するように構成されていることも好ましい。
【0020】
把持手段が1対の被溶接部材をそれぞれ把持すると共に電極を兼用する第1のクランプ電極部材及び第2のクランプ電極部材を備えており、第2の圧力印加手段が第1のクランプ電極部材に第2の圧力を印加するように構成された第2の圧力シリンダ部材を備えていることも好ましい。
【0021】
この場合、第2の圧力シリンダ部材の可動ロッドが第1のクランプ電極部材に当接し、第1のクランプ電極部材を第2のクランプ電極部材方向に第2の圧力で押圧するように構成されていることがより好ましい。
【0022】
1対の被溶接部材から把持手段に印加される力を相殺する力を把持手段に印加するように構成されている第3の圧力シリンダ部材をさらに備えていることも好ましい。このような第3の圧力シリンダ部材を設けることにより、被溶接部材に依存することなく常に第1の圧力を被溶接部材に印加することが可能となり、従って、安定したフラッシュを発生させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、フラッシュ発生により被溶接部材の端面が浄化され、汚れ、酸化物や不純物が除去されると共に、表面の平滑化が行われる。さらに、端面全体が均熱化される。フラッシュ発生で均熱化された後に連続してアップセット溶接されるため、比較的短時間で充分な溶接強度を有する抵抗溶接を行うことができる。また、フラッシュ発生による均熱化の後にアップセット溶接しているため、接合部の品質が安定化し、信頼性が高い抵抗溶接を行うことができると共に、端面の形状の影響を受けにくく、形状の安定化した抵抗溶接を行うことができる。さらに、フラッシュ発生によって溶接処理を完了するのではなく、端面の浄化、平滑化及び均熱化を行うためにフラッシュを発生させているので、大規模な電源装置は不要であり、従って、比較的安価に抵抗溶接装置を構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明の一実施形態における抵抗溶接装置の外観構成を概略的に示しており、
図2はこの抵抗溶接装置の各要素を概略的に示している。
【0026】
本実施形態においては、溶接すべき被溶接部材が、閉鎖型鉄筋に用いられる高強度鋼材(例えば10〜16mmφ)であるとする。もちろん、本発明の抵抗溶接装置は、その他の径を有する部材や、その他の部材、例えば、その他の鋼材、PC鋼線、ばね用線材等の高炭素線、各種ステンレス線材、各種溶接棒用線材、合金鋼線材、PC鋼撚り線、スチールタイヤコード、電気伝導用銅線材、電気伝導用無酸素銅線材、電気伝導用アルミニウム線材、電気伝導用非鉄平角材、黄銅線材、非鉄撚り線、又は異種金属線材の溶接に用いることが可能である。
【0027】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の抵抗溶接装置は、溶接すべき1対の鋼材(本発明の被溶接部材に対応する)10及び11を、それらの端面10a及び11aが互いに対向するように端面10a及び11aの後側でそれぞれ把持(クランプ)する第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13を備えている。これら第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13は、鋼材10及び11へ後述するフラッシュ動作時及びアップセット溶接動作時の電流を供給するための電極を兼用しており、クランプする鋼材の径や形状に応じて交換可能となっている。これら第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13には、フラッシュ電圧及びアップセット溶接電圧を印加する出力トランス14の出力が電気的に接続されており、この出力トランス14の入力には点弧角・通電制御回路15が電気的に接続されている。
【0028】
第1のクランプ電極部材12は移動側ブロック16に一体化するように取り付けられており、第2のクランプ電極部材13は固定側ブロック17に一体化するように取り付けられている。移動側ブロック16は、軸方向に可動となっており、固定側ブロック17は台座18に固定されていて非可動となっている。なお、本明細書において、「軸方向」とは溶接すべき鋼材10及び11の溶接部を通る軸方向を称し、「軸前方向」とは軸方向であって移動側ブロック16から固定側ブロック17へ向かう方向を称し、「軸後方向」とは軸前方向の反対方向、即ち軸方向であって固定側ブロック17から移動側ブロック16へ向かう方向を称する。
【0029】
移動側ブロック16には、この移動側ブロック16を軸前方向及び軸後方向に押引駆動する1次シリンダ(本発明の第1の圧力シリンダ部材に対応する)19の可動ロッド19aの先端部が固着されており、さらに、この移動側ブロック16を軸前方向に押圧する2次シリンダ(本発明の第2の圧力シリンダ部材に対応する)21の可動ロッド21aの先端が当接するように構成されており、さらにまた、この移動側ブロック16を軸後方向に押圧するバランスシリンダ(本発明の第3の圧力シリンダ部材に対応する)23の可動ロッド23aの先端が当接するように構成されている。これら1次シリンダ19、2次シリンダ21及びバランスシリンダ23はいずれも空気圧によって作動するエアシリンダであり、空気圧従って加圧力及び作動方向が第1の電磁弁20、第2の電磁弁22及び第3の電磁弁24によってそれぞれ制御される。
【0030】
溶接すべき鋼材10及び11に対する第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13のクランプ動作は、空気圧によって作動するエアシリンダであるクランプシリンダ25及び26をそれぞれ駆動することによって行われる。
【0031】
なお、1次シリンダ19、2次シリンダ21、バランスシリンダ23並びにクランプシリンダ25及び26は、油圧等の液圧によって駆動される液圧シリンダであっても良いし、電気的又は磁気的制御によるアクチュエータ又はモータであっても良い。
【0032】
移動距離測定器27は移動側ブロック16の移動距離を測定する機器であり、例えばエンコーダ等によって構成されている。操作表示盤28は本抵抗溶接装置の設定及び操作を行うと共に種々の表示を行う操作及び表示用機器である。この操作表示盤28には、
図1に示すように、電気的な設定及び表示を行うタッチパネル28a、移動側ブロック16の移動位置設定用のカウンタ28b、操作電源スイッチ28c、非常停止スイッチ28d、1次シリンダ作動スイッチ28e、クランプ方式切換スイッチ28f、主電源ランプ28g、サイリスタ温度上昇ランプ28h、及び冷却水流量不足ランプ28i等が設けられている。左クランプ開閉スイッチ29及び右クランプ開閉スイッチ30は作業者が足で踏むことによりクランプシリンダ25及び26を作動させるフットスイッチである。溶接開始スイッチ31は作業者が足で踏むことにより本抵抗溶接装置の溶接動作を開始させるフットスイッチである。
【0033】
以上述べた点弧角・通電制御回路15、第1の電磁弁20、第2の電磁弁22、第3の電磁弁24、クランプシリンダ25及び26、移動距離測定器27、操作表示盤28、左クランプ開閉スイッチ29、右クランプ開閉スイッチ30、並びに溶接開始スイッチ31は、コンピュータから主として構成される溶接動作制御回路32に電気的に接続されており、この溶接動作制御回路32から出力される指示信号で作動すると共に、この溶接動作制御回路32へ測定信号及び操作信号を送り込む。
【0034】
図3は溶接動作制御回路32の構成を概略的に示している。同図に示すように、溶接動作制御回路32は、バス32aを介して互いに接続された中央処理装置(CPU)32bと、リードオンリメモリ(ROM)32cと、ランダムアクセスメモリ(RAM)32dと、入出力インタフェース32eとを少なくとも備えたコンピュータ及びこれを作動させるプログラムから構成される。
【0035】
CPU32bは、ROM32cに記憶されているオペレーションシステム(OS)やブートプログラム等の基本プログラムに従ってROM32cに記憶されているプログラムを実行して本実施形態の処理を行うように構成されている。また、CPU32bは、RAM32d及び入出力インタフェース32eの動作を制御するように構成されている。
【0036】
RAM32dは抵抗溶接装置のメインメモリとして使用され、ROM32c等から転送されたプログラムやデータを保存するように構成されている。また、このRAM32dは、プログラム実行時の各種データが一時的に保存されるワークエリアとしても使用される。
【0037】
入出力インタフェース32eは、点弧角・通電制御回路15、第1の電磁弁20、第2の電磁弁22、第3の電磁弁24、クランプシリンダ25及び26、移動距離測定器27、操作表示盤28、左クランプ開閉スイッチ29、右クランプ開閉スイッチ30、並びに溶接開始スイッチ31とCPU32b又はRAM32dとの間のデータのやり取りを制御するように構成されている。
【0038】
このような構成のコンピュータにおいて、CPU32bは、プログラム起動時は、まず、RAM32d内にプログラム記憶領域、データ記憶領域及びワークエリアを確保し、ROM32c又は外部からプログラム及びデータを取り込んで、プログラム記憶領域及びデータ記憶領域に格納する。次いで、このプログラム記憶領域に格納されたプログラムに基づいて、後述する処理フローを実行する。
【0039】
以下、この溶接動作制御回路32の動作を含む本実施形態における抵抗溶接装置の操作及び動作について詳細に説明する。
【0040】
溶接動作を行う前に、抵抗溶接装置の設定が行われる。この設定は、作業者が、操作表示盤28のタッチパネル、カウンタ、及び/又は空気圧用のレギュレータ等を操作することによって行われる。
【0041】
(1)機械的構成の設定
抵抗溶接装置の機械的構成の設定を初期作動時や鋼材10及び11の径が変更された時等に必要に応じて行う。具体的には、鋼材10及び11をクランプする第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13をこれら鋼材10及び11の径に合った凹形状クランプ面を有するクランプ電極部材に選択又は交換する。
【0042】
さらに、鋼材10及び11の溶接しろを考慮して移動側ブロック16及び固定側ブロック17の初期間隔を調整する。溶接すべき鋼材が閉鎖型鉄筋である場合、溶接しろは、
図4(A)に示すように、その両端部が互いに重なり合っている部分の長さとなる。
図4(B)に示すように、作業者がこの閉鎖型鉄筋を矢印のように強制的に開いて両端面を突き合わせ、この状態で第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13にクランプする。
図4(C)の上段に示すように、この状態で溶接が行われ、これにより、移動側ブロックの第1のクランプ電極部材12が
図4(C)の下段に示すように移動すると、この第1のクランプ電極部材12(移動側ブロック16)の移動長が溶接しろとなる。
【0043】
さらに、初期状態において、2次シリンダ21の可動ロッド21aの先端が移動側ブロック16に当接しているように、移動側ブロック16の調整ボルト(図示なし)の突出位置調整を行い、さらにまた、2次シリンダ21の軸前方向への前進ストロークの調整を行う。
【0044】
(2)移動距離の閾値設定
2次シリンダ21からの第2の圧力印加開始タイミングに相当する移動側ブロック16の移動位置である第1の設定距離L
1と、アップセット溶接電流の印加終了タイミングに相当する移動側ブロック16の移動位置である第2の設定距離L
2とを、初期作動時や鋼材10及び11の径が変更された時等に必要に応じて設定する。この設定は、作業者が操作表示盤28に設けられているカウンタ28bを操作することによって行う。
【0045】
(3)シリンダの空圧設定
1次シリンダ19、2次シリンダ21及びバランスシリンダ23に送るエアーの圧力を初期作動時や鋼材10及び11の径が変更された時等に必要に応じて設定する。1次シリンダ19への1次空圧は作業者が圧力計33を見ながらレギュレータ34を操作することによって設定し、2次シリンダ21への2次空圧は作業者が圧力計35を見ながらレギュレータ36を操作することによって設定し、バランスシリンダ23へのバランス空圧は作業者が圧力計37を見ながらレギュレータ38を操作することによって設定する。
【0046】
1次空圧として0.1MPaのエアーを供給した場合、1次シリンダ19のシリンダ内径が50mm(断面積が約20cm
2)とすると、この1次シリンダ19からは200Nの圧力が移動側ブロック16に印加される。実際には、100N未満の圧力が移動側ブロック16に印加されることが望ましい。
【0047】
また、2次空圧として0.5MPaのエアーを供給した場合、2次シリンダ21のシリンダ内径が175mm(断面積が約240cm
2)とすると、この2次シリンダ21からは12kNの圧力が移動側ブロック16に印加される。実際には、約5〜12kNの圧力が移動側ブロック16に印加されることが望ましい。
【0048】
さらに、バランス空圧として0.1MPaのエアーを供給した場合、バランスシリンダ23のシリンダ内径が32mm(断面積が約8cm
2)とすると、このバランスシリンダ23からは80Nの圧力が移動側ブロック16に、1次シリンダ19からの圧力と反対方向に印加される。鋼材10及び11側から移動側ブロック16に印加される圧力が、即ち強制的に開いてクランプした閉鎖型鉄筋からの戻ろうとする力が、約160Nであるとすると、0.2MPaのバランス空圧をバランスシリンダ23に供給すれば、このバランスシリンダ23からは160Nの圧力が移動側ブロック16に逆方向に印加される。
【0049】
(4)印加電圧に関する設定
フラッシュ動作時の印加電圧及びアップセット溶接動作時の印加電圧と、フラッシュ動作時のヒートサイクル期間及びクールサイクル期間と、フラッシュ動作の全サイクル数と、ホールドタイム値とを初期作動時や鋼材10及び11の径が変更された時等に必要に応じて設定する。この設定は、作業者が操作表示盤28に設けられているタッチパネル28aを操作することによって行う。
【0050】
出力トランス14から第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13を介して鋼材10及び11間へ印加する電圧の実効値は、例えばサイリスタ及びその点弧制御回路からなる点弧角・通電制御回路15によって制御される。即ち、
図5(A)及び(B)に示すように、点弧角・通電制御回路15によって、正弦波印加電圧の点弧角が制御されてその実効値が制御される。即ち、
図5(A)に示すように点弧角を早めることによって印加電圧の実効値を高くすることができ、
図5(B)に示すように点弧角を遅らせることによって印加電圧の実効値を低くすることができる。従って、点弧角を設定することによりフラッシュ動作時及びアップセット溶接動作時の印加電圧の実効値を設定することができる。
【0051】
また、出力トランス14から第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13を介して鋼材10及び11間へ印加する電圧の通電及び非通電の期間も点弧角・通電制御回路15によって制御される。即ち、
図5(C)に示すように、ヒートサイクルのサイクル数及びクールサイクルのサイクル数をそれぞれ設定することにより、フラッシュ動作時における間欠的な電圧印加の態様を設定することができる。
【0052】
さらに、フラッシュ通電期間であるフラッシュ動作の全サイクル数及びホールドタイムを設定する。全サイクル数として、例えば99以下の数値が設定される。ホールドタイムとして、例えば2秒が設定される。
【0053】
なお、本実施形態においては、フラッシュ動作時及びアップセット溶接動作時の印加電圧と、フラッシュ動作時のヒート及びクールサイクルと、フラッシュ動作の全サイクル数と、ホールドタイムとの複数のパターンがあらかじめ設定されており、コンピュータの例えばROM32cにパターンデータとして記憶されている。従って、この設定動作時では、その中から所望のパターンデータを選択するのみで良い。もちろん、このパターンデータを再設定することも可能である。
【0054】
図6は溶接動作制御回路32の制御動作の流れを示しており、
図7は溶接動作制御回路32によって制御される印加電圧及び印加圧力を示している。以下これらの図を参照して本実施形態における抵抗溶接装置の溶接動作について説明する。
【0055】
作業者は、最初に、溶接すべき閉鎖型鉄筋の鋼材10及び11を第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13にクランプさせる。このクランプ動作は、鋼材10及び11を、それらの端面10a及び11aが互いに対向するように第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13の位置において手で保持し、左クランプ開閉スイッチ29及び/又は右クランプ開閉スイッチ30を足で踏むことによって実行される。左クランプ開閉スイッチ29及び右クランプ開閉スイッチ30を踏むことにより対応するクランプシリンダ25及び26がそれぞれ作動し、第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13がそれぞれ個別にクランプ動作を行う。クランプを解除するには、これら左クランプ開閉スイッチ29及び右クランプ開閉スイッチ30をもう一度踏めば良いように構成されている。再度クランプするには、これらスイッチをさらにもう一度踏めば良い。なお、クランプ方式切換スイッチ28fを操作することにより、左クランプ開閉スイッチ29及び右クランプ開閉スイッチ30のいずれかを踏めば第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13の両方が同時にクランプされるようなクランプ方式に切換えすることができる。
【0056】
その後、作業者が溶接開始スイッチ31を踏むと、溶接動作が開始(スタート)する。即ち、
図6に示すフローに従って、溶接動作制御回路32の制御処理が実行される。
【0057】
溶接動作制御回路32は、まず、第1の電磁弁20を制御し、設定された圧力のエアーを1次シリンダ19に送り込み、その可動ロッド19aを軸前方向に付勢する。可動ロッド19aの先端部が移動側ブロック16に固着されているため、この移動側ブロック16には1次シリンダ19から、100N未満の第1の圧力が印加される(ステップS1)。
図7は1次シリンダ19からの第1の圧力の印加がこのスタート時点で開始されることを示している。
【0058】
次いで、溶接動作制御回路32は、第3の電磁弁24を制御し、設定された圧力のエアーをバランスシリンダ23に送り込み、その可動ロッド23aを軸後方向に付勢する。可動ロッド23aの先端が移動側ブロック16に当接するように構成されているため、この移動側ブロック16にはバランスシリンダ23から、1次シリンダ19の第1の圧力とは反対方向の例えば約160Nの第3の圧力が印加される(ステップS2)。
図7はバランスシリンダ23からの第3の圧力の印加がこのスタート時点で開始されることを示している。
【0059】
図8に示すように、1次シリンダ19からの移動側ブロック16への圧力印加方向は軸前方向であり、一方、鋼材10及び11(閉鎖型鉄筋)から移動側ブロック16へ印加される「戻ろうとする力」の方向は軸前方向であり、バランスシリンダ23からの移動側ブロック16への圧力印加方向はこれらとは反対方向の軸後方向である。従って、バランスシリンダ23によって、閉鎖型鉄筋からの「戻ろうとする力」を相殺することができ、1次シリンダ19からの第1の圧力が閉鎖型鉄筋からの力に影響されずにそのまま移動側ブロック16に印加される。閉鎖型鉄筋からの「戻ろうとする力」はそのフープ寸法及び径に依存して異なるが、バランスシリンダ23からの第3の圧力をこれに応じた値に設定すれば、閉鎖型鉄筋の種類に依存することなく、常に安定したフラッシュ動作を実行することができる。
【0060】
1次シリンダ19及びバランスシリンダ23のこのような機能により、鋼材10及び11の端面10a及び11aが、常に適切な圧力(第1の圧力)で互いに当接し、フラッシュ動作期間中はその接触した状態が保たれる。
【0061】
次いで、溶接動作制御回路32は、抵抗溶接装置の溶接部の前面を覆うことにより、作業者方向へのフラッシュの飛散を防止する前面カバー(図示なし)を下降させる(ステップS3)。
【0062】
その後、溶接動作制御回路32は、溶接動作開始(スタート)から例えば1秒程度のスクイズ時間が経過したか否かを判別する(ステップS4)。
【0063】
スクイズ時間が経過したと判別した場合(YESの場合)のみ、
図7に示すように、フラッシュ通電を開始する(ステップS5)。即ち、溶接動作制御回路32は、点弧角・通電制御回路15により正弦波印加電圧の点弧角を、
図5(A)に示すように、早い角度に制御し、実効値が10V以下に設定されたフラッシュ通電用電圧を出力トランス14を介して、さらに第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13を介して鋼材10及び11間に印加する。さらに、点弧角・通電制御回路15により、フラッシュ通電期間を制御し、その電圧印加を間欠的に行う。即ち、
図5(C)及び
図7に示すように、例えば2サイクルのヒート(通電)を行った後1サイクルのクール(非通電)を行う等の通電及び非通電を設定されたヒートサイクル数及びクールサイクル数に制御する。なお、
図5(C)の例では2ヒートサイクルの次に1クールサイクルの繰り返しであるが、ヒートサイクル数及びクールサイクル数はそれぞれ任意の最適値に設定可能である。後述するごとく、このように間欠的に電圧を印加することによって、溶接部分全体に渡って充分なフラッシュを発生させることができる。
【0064】
1次シリンダ19からの100N未満の適切な圧力(第1の圧力)の印加により、鋼材10及び11の端面10a及び11aが軽く押し当たる程度に互いに当接している状態でフラッシュ通電が開始されると、鋼材10及び11の端面(溶接面)10a及び11a間でフラッシュが発生する。ただし、この場合、圧力が強すぎると、フラッシュは全く又はほとんど発生しない。
【0065】
一般に、鋼材10及び11の端面10a及び11aは、
図9(A)に示すように、カッター等の切断工具の特性から、ミクロ的に見ると平滑な面ではなく(端面11a参照)、さらに、軸方向に垂直な面ではない(端面10a参照)。1次シリンダ19からの第1の圧力印加によりこのような端面10a及び11aの一部が接触している状態で、フラッシュ通電が行われると、最も突出して対向面に接触している部分に局所的に電流が流れ、充分な断面積がないことからフラッシュオーバーが発生する。例えば、
図9(B)に示すように、端面10a及び11a間で最も突出していることから互いに接触しているaの部分に電流が流れ、フラッシュオーバーが発生する。このフラッシュオーバーによって突出部分が吹き飛ぶと、1次シリンダ19より第1の圧力が印加されていることから移動側ブロック16が軸前方向にわずかに移動する。これにより、次の高さで突出して互いに接触するbの部分に電流が流れ、フラッシュオーバーによって突出部分が吹き飛び、以下同様にしてcの部分、dの部分と続けてフラッシュオーバーが生じるため、端面全面に渡って連続的にフラッシュが生じる。このようなフラッシュにより、汚れ、酸化部や不純物の除去が行われ溶接面の浄化(クリーニング)が行われると共に、溶接面全面の平滑化、及び溶接面全面の均熱化が行われる。
【0066】
また、本実施形態によれば、フラッシュ通電期間の電圧が間欠的に印加されるため、溶接部分に充分なフラッシュを発生させることが可能となっている。その理由は、フラッシュ動作時に高い電圧を連続的に印加すると、溶接部分の温度が全体的又は部分的に急激に上昇することがあり、このため、このような高い電圧を連続的に印加する制御は好ましくない。これに対して、電圧を間欠的に印加することにより、高い電圧であっても溶接部分の温度が全体的又は部分的に急上昇することがなく、その結果、溶接面全面に充分なフラッシュが発生する。なお、溶接面の全面にフラッシュが発生しないと、端面のクリーニングが不充分となり、特に、端面の一部が傾いて向き合っている場合にこの傾向が顕著となる。さらに、フラッシュが不充分であると、熱が全面に行き渡らないため、均熱動作が行われないこととなる。即ち、本実施形態によれば、溶接面全体にフラッシュを発生させることができるので、溶接面全体の浄化が可能となり、かつ溶接面全面の均熱化が可能となる。
【0067】
次いで、溶接動作制御回路32は、あらかじめ設定された全サイクル数のフラッシュ通電が行われたか否かを判別する(ステップS6)。
【0068】
全サイクル数が終了したと判別した場合(YESの場合)のみ、
図7に示すように、印加電圧をフラッシュ通電用の高い電圧(フラッシュ電圧)からアップセット溶接通電用の低い電圧(アップセット溶接電圧)に切換える(ステップS7)。即ち、溶接動作制御回路32は、点弧角・通電制御回路15により正弦波印加電圧の点弧角を
図5(B)に示すように遅い角度に制御し、実効値がフラッシュ通電用電圧よりも低い印加電圧を出力トランス14を介して、さらに第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13を介して鋼材10及び11間に印加する。本実施形態では、このように点弧角を制御しているため、印加電圧の切換えを連続してスムーズに行うことができる。
【0069】
次いで、溶接動作制御回路32は、移動側ブロック16の移動距離があらかじめ設定された第1の設定距離L
1となったか否かを判別する(ステップS8)。
【0070】
移動距離が第1の設定距離L
1となったと判別した場合(YESの場合)のみ、バランスシリンダ23からの第3の圧力の印加を終了し(ステップS9)、さらに、2次シリンダ21からの第2の圧力の印加を開始する(ステップS10)。移動側ブロック16には1次シリンダ19より第1の圧力が印加され続けているため、通電により鋼材10及び11の溶接部は発熱して徐々に又は急激にコブ形成するため、移動側ブロック16は軸前方向に移動する。例えばエンコーダである移動距離測定器27によって移動側ブロック16の移動距離を測定し、その測定値が第1の設定距離L
1に等しくなった際に、
図7に示すように、バランスシリンダ23からの第3の圧力印加を終了し、2次シリンダ21からの第2の圧力印加を開始する。このように、フラッシュ通電に引き続くアップセット通電の大電流のジュール熱によって溶接面やその周辺が均熱化された状態で、2次シリンダ21から例えば約5〜12kNの強い圧力(第2の圧力)が印加されるため、確実なアップセット溶接が行われる。即ち、接合部の品質が安定化し、信頼性が高い抵抗溶接を行うことができると共に、端面の形状の影響を受けにくく、形状の安定化した抵抗溶接を行うことができる。
【0071】
その後、溶接動作制御回路32は、移動側ブロック16の移動距離があらかじめ設定された第2の設定距離L
2となったか否かを判別する(ステップS11)。
【0072】
移動距離が第2の設定距離L
2となったと判別した場合(YESの場合)のみ、
図7に示すように、アップセット溶接通電を終了する(ステップS12)。アップセット溶接電圧の印加が終了した後にも、余熱と、2次シリンダ21からの強い圧力(第2の圧力)とが印加されているため、鋼材10及び11の溶接部にコブが形成される。
【0073】
次いで、溶接動作制御回路32は、移動距離が第2の設定距離L
2となった時から、即ち、アップセット溶接通電終了時から、例えば2秒等のあらかじめ設定された時間(ホールドタイム)経過したか否かを判別する(ステップS13)。
【0074】
アップセット溶接通電終了時から設定されたホールドタイム経過したと判別した場合(YESの場合)のみ、
図7に示すように、2次シリンダ21からの第2の圧力の印加を終了し(ステップS14)、クランプシリンダ25及び26を作動させて第1のクランプ電極部材12及び第2のクランプ電極部材13による鋼材10及び11のクランプを解放すると共に前面カバーを上昇させ(ステップS15)、その後、1次シリンダ19からの第1の圧力の印加を終了させて(ステップS16)、移動側ブロック16を軸後方向へ引き戻す。これによって、溶接された鋼材10及び11を本抵抗溶接装置から取り外すことが可能となる。
【0075】
なお、前面カバーの下降及び上昇のタイミングは、フラッシュが行われている間に前面カバーによって溶接部の前方が覆われさえすれば、上述したタイミングに限定されるものではない。
【0076】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、まず、フラッシュ動作が行われることにより、溶接すべき鋼材の端面が浄化され、汚れ、酸化物や不純物が除去されると共に、表面の平滑化が行われる。さらに、端面全体が均熱化される。フラッシュ発生で均熱化された後に連続してアップセット溶接を行っているため、比較的短時間で充分な溶接強度を有する抵抗溶接を行うことができる。その場合、点弧角制御によって実効電圧値を変化させているため、装置構成を非常に簡略化させることができる。また、フラッシュによる均熱化の後にアップセット溶接しているため、接合部の品質が安定化し、信頼性が高い抵抗溶接を行うことができると共に、端面の形状の影響を受けにくく、形状の安定化した抵抗溶接を行うことができる。さらに、フラッシュ発生によって溶接処理を完了するのではなく、端面の浄化、平滑化及び均熱化を行うためにフラッシュを発生させているので、大規模な電源装置は不要であり、従って、比較的安価に抵抗溶接装置を構成することができる。
【0077】
なお、上述した実施形態においては、2次シリンダ21からの第2の圧力の印加時間であるホールドタイムをコンピュータのプログラムによる内部タイマで管理しているが、このホールドタイムを外部タイマで管理しても良い。その場合も、ホールドタイムを操作表示盤28に設けられているタッチパネル28aを操作して設定できるように構成することが望ましい。
【0078】
さらに、上述した実施形態においては、フラッシュ発生の後、単一の圧力値である第2の圧力を印加してアップセット溶接を行っているが、フラッシュ発生の後、圧力が段階的に又は連続的に変化する複数の圧力値を印加してアップセット溶接を行うようにしても良い。
【0079】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。