(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直列接続された複数の蓄電セルからなる集合電池における、前記蓄電セル間又は直列接続された複数の前記蓄電セルからなる蓄電モジュール間の電圧を均等化するバランス補正装置であって、
直列接続された第1の前記蓄電モジュールと第2の前記蓄電モジュールとの接続点にその一端が接続される、インダクタと、
前記第1の蓄電モジュールの正負端子間に前記インダクタとともに直列接続される、第1のスイッチング素子と、
前記第2の蓄電モジュールの正負端子間に前記インダクタとともに直列接続される、第2のスイッチング素子と、
前記第1の蓄電モジュールと前記第2の蓄電モジュールの電圧差Vxを検出する電圧差検出部と、
前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子をオンオフ制御することにより前記蓄電モジュールの夫々に対する電流の供給を制御し、それにより前記インダクタを介して前記蓄電モジュール間で電力の授受を生じさせて前記蓄電モジュール間の電圧を均等化させる、スイッチング制御部と、
を有するバランス補正ユニットを備え、
前記スイッチング制御部は、
前記電圧差Vxの絶対値が予め設定された閾値Vt2(>0)を超えているときは、周期T1(=前記第1及び前記第2のスイッチング素子のいずれかがオンになっている充放電期間tw2+前記第1及び前記第2のスイッチング素子が共にオフしている休止期間td2)で前記第1及び前記第2のスイッチング素子をオンオフ制御し、
前記電圧差Vxの絶対値がVt2以下かつ予め設定された閾値Vt3(Vt2>Vt3>0)を超えているときは、周期T2(>T1)(=スイッチング素子S1,S2のいずれかがオンになっている充放電期間tw3(<tw2)+スイッチング素子S1,S2が共にオフしている休止期間td3(>td2))で前記第1及び前記第2のスイッチング素子をオンオフ制御する
バランス補正装置。
【背景技術】
【0002】
複数の蓄電セルが直列接続されてなる集合電池にあっては、放電能力の低下や寿命の短縮化を防ぐために蓄電セル間の電圧(起電力)のばらつきを抑える必要がある。とくに電気自動車等に用いられる蓄電装置のように、多数の蓄電セルからなる集合電池については蓄電セル間の電圧のばらつきを厳密に抑えることが求められる。
【0003】
蓄電セル間の電圧を均等化させる仕組みとして、例えば、特許文献1には、直列接続された二次電池B1,B2の接続点にインダクタLの一端を接続しておき、スイッチング素子S1,S2を交互にオンオフすることにより、インダクタLの他端を電池B1の他端に接続して形成される第1閉回路に電流を流す第1モードと、インダクタLの他端を電池B2の他端に接続して形成される第2閉回路に電流を流す第2モードとを短時間ずつ交互に繰り返すスイッチング動作を適当な期間、実行して二次電池B1,B2の電圧を均等化する、いわゆるコンバータ方式のバランス補正方法について開示されている。
【0004】
ここで上記特許文献1に記載のバランス補正回路では、二次電池B1,B2がバランス状態あるか否かに拘わらずインダクタLの充放電が行われており、スイッチング動作が常に行われている。このため、インダクタLやスイッチング素子S1,S2に寄生する抵抗等のインピーダンス成分による無駄な電力損失が多いという課題がある。
【0005】
そこでこの電力損失を低減すべく、例えば、特許文献2には、2つの蓄電セル間の電圧差Vxが縮小した場合に両スイッチング素子S1,S2を共にオフにさせる休止期間tdを置くようにすることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4は特許文献2に開示されているバランス補正回路である。同図に示すように、このバランス補正回路4は、インダクタL1、2つのスイッチング素子S1,S2、及び補正制御回路20を備えている。
【0008】
補正制御回路20は、抵抗R1,R2、差動増幅回路21、及び可変パルス発生回路22を含む。抵抗R1,R2は等値であり、2つの蓄電セルB1,B2の直列電圧を等分割する分圧回路を構成している。
【0009】
差動増幅回路21は、蓄電セルB1,B2の中間接続点の電圧Vmと抵抗R1,R2の中間接続点の分圧電圧Vnとの電圧差Vx(=Vm−Vn)を増幅して可変パルス発生回路22に入力する。
【0010】
可変パルス発生回路22は、スイッチング素子S1,S2を交互にオンオフさせる一定周期のパルス信号φ1,φ2を生成するとともに、その制御パルス信号φ1,φ2のデューティ幅tw(スイッチング素子S1,S2のオン期間)を上記電圧差Vxに応じて可変制御する。
【0011】
図5は上記バランス補正回路4の要部における動作波形である。
図5(a),(e)は、蓄電セルB1と蓄電セルB2との間に比較的大きな電圧差が現れているとき((a)は蓄電セルB1の電圧が蓄電セルB2の電圧よりも高いとき(B1>B2),(e)は蓄電セルB2の電圧が蓄電セルB1の電圧よりも高いとき(B1<B2))の動作波形である。2つのスイッチング素子S1,S2は、一定周期(=tw+td)で交互にオンオフさせられる。これにより、一方の蓄電セルB1(又は蓄電セルB2)からインダクタL1にインダクタ電流iLを充電させる充電期間と、そのインダクタ電流iLで他方の蓄電セルB2(又は蓄電セルB1)を充電する放電期間とが交互に切換設定される。またスイッチング素子S1,S2のいずれかがオンとなる充放電期間twは、スイッチング素子S1,S2が共にオフとなる休止期間tdに比べて十分に大きくなるように設定される。これによりインダクタL1を介して行われる蓄電セルB1から蓄電セルB2(又は蓄電セルB2から蓄電セルB1)への充電量(電気エネルギー)が大きくなり、両蓄電セルB1,B2間の電圧が急速に均等化される。
【0012】
図5(b),(d)は、それぞれ、2つの蓄電セルB1,B2の電圧差が縮小しているとき(B1≒B2)の動作波形である。スイッチング素子S1,S2は一定周期(=tw+td)でオンオフされるが、スイッチング素子S1,S2のいずれかがオンとなる充放電期間twは短縮され、代わりにスイッチング素子S1,S2が共にオフとなる休止期間tdが長く設定される。
【0013】
図5(c)は、蓄電セルB1,B2の電圧が完全にバランスしているとき(B1=B2)の動作波形である。スイッチング素子S1,S2は共にオフ状態を継続し、インダクタL1への充放電がまったく行われない休止期間tdだけとなる。
【0014】
以上のように、2つのセルB1,B2間の電圧差Vxが縮小したときにスイッチング素子S1,S2を共にオフにさせる休止期間tdを置くことにより、電力損失を増大させる過剰動作を回避させることができる。これにより、大きな電力損失をともなうことなく、直列接続された複数の蓄電セルの電圧を効率良く均等化させることができる。
【0015】
ところで、2つのスイッチング素子S1,S2は、これらをオンオフさせるのに所定の駆動電力を必要とするので不必要に動作させないようにすることが消費電力低減の観点から望ましい。
【0016】
しかし
図5(b),(d)に示すように、上記バランス補正回路4においては、2つの蓄電セルB1,B2の電圧差が縮小しているときもスイッチング素子S1,S2のオンオフ動作が周期的に継続して行われており、スイッチング素子S1,S2の動作が完全に停止するのは2つの蓄電セルB1,B2の電圧がバランスしている
図5(c)の場合に限られる。
【0017】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたもので、電力消費を抑えつつ、蓄電セル間の電圧を効率よく均等化させることが可能な、バランス補正装置及び蓄電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、直列接続された複数の蓄電セルからなる集合電池における、前記蓄電セル間又は直列接続された複数の前記蓄電セルからなる蓄電モジュール間の電圧を均等化するバランス補正装置であって、直列接続された第1の前記蓄電モジュールと第2の前記蓄電モジュールとの接続点にその一端が接続される、インダクタと、前記第1の蓄電モジュールの正負端子間に前記インダクタとともに直列接続される、第1のスイッチング素子と、前記第2の蓄電モジュールの正負端子間に前記インダクタとともに直列接続される、第2のスイッチング素子と、前記第1の蓄電モジュールと前記第2の蓄電モジュールの電圧差Vxを検出する電圧差検出部と、前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子をオンオフ制御することにより前記蓄電モジュールの夫々に対する電流の供給を制御し、それにより前記インダクタを介して前記蓄電モジュール間で電力の授受を生じさせて前記蓄電モジュール間の電圧を均等化させる、スイッチング制御部と、を有するバランス補正ユニットを備え、前記スイッチング制御部は、前記電圧差Vxの絶対値が予め設定された閾値Vt2(>0)を超えているときは、周期T1(=前記第1及び前記第2のスイッチング素子のいずれかがオンになっている充放電期間tw2+前記第1及び前記第2のスイッチング素子が共にオフしている休止期間td2)で前記第1及び前記第2のスイッチング素子をオンオフ制御し、前記電圧差Vxの絶対値がVt2以下かつ予め設定された閾値Vt3(Vt2>Vt3>0)を超えているときは、周期T2(>T1)(=スイッチング素子S1,S2のいずれかがオンになっている充放電期間tw3(<tw2)+スイッチング素子S1,S2が共にオフしている休止期間td3(>td2))で前記第1及び前記第2のスイッチング素子をオンオフ制御することとする。
【0019】
本発明の他の一つは、上記バランス補正装置であって、前記周期T2は前記周期T1のn倍(nは2以上の自然数)であることとする。
【0020】
本発明の他の一つは、上記バランス補正装置であって、前記スイッチング制御部は、前記電圧差Vxの絶対値が予め設定された閾値Vt1(>Vt2)を超えているとき、前記周期T1(=前記第1及び前記第2のスイッチング素子のいずれかがオンになっている充放電期間tw1)で前記第1及び前記第2のスイッチング素子をオンオフ制御することとする。
【0021】
本発明の他の一つは、上記バランス補正装置であって、前記スイッチング制御部は、前記電圧差Vxの絶対値が予め設定された前記Vt3以下であるとき、前記第1及び前記第2のスイッチング素子を共にオフすることとする。
【0022】
本発明の他の一つは、上記バランス補正装置であって、前記第1の蓄電モジュールと前記第2の蓄電モジュールの直列電圧を分圧する分圧回路を備え、前記電圧差検出部は、前記分圧回路により前記直列電圧を等分割して得られる電圧と、前記第1の蓄電モジュールと前記第2の蓄電モジュールの直列接続点の電圧との差に基づき、前記電圧差Vxを検出することとする。
【0023】
本発明の他の一つは、上記バランス補正装置であって、複数の前記バランス補正ユニットを備え、一の前記バランス補正ユニットの前記第1の蓄電モジュールが、他の一の前記バランス補正ユニットの前記第2の蓄電モジュールと同一の前記蓄電モジュールとなるように結線されていることとする。
【0024】
本発明の他の一つは、蓄電装置であって、前記複数の蓄電セルと上記バランス補正装置を備えることとする。
【0025】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、電力消費を抑えつつ、蓄電セル間の電圧を効率よく均等化させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。尚、以下の説明において、同一又は類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。また符号の添字部分を省略して同一の構成要素を総称することがある(例えば、制御回路10A,10B,10Cを制御回路10と総称する)。
【0029】
[バランス補正回路の基本構成]
図1にコンバータ方式のバランス補正回路1(バランス補正装置)を示している。バランス補正回路1は、例えば、直列接続された複数の蓄電セルからなる集合電池を利用する蓄電装置(電気自動車、ハイブリッド自動車、電気二輪車、鉄道車両、昇降機、系統連携用蓄電装置、パーソナルコンピュータ、ノートブック型コンピュータ、携帯電話機、スマートフォン、PDA機器等)に適用される。蓄電セルは、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池等であるが、電気二重層キャパシタ等の他の種類の蓄電素子であってもよい。
【0030】
集合電池を構成している蓄電セル間で製造品質や劣化の度合いが異なる場合、蓄電セル間の電池特性(電池容量、放電電圧特性)に差が生じることがあり、この電池特性の差に起因して、充放電時等に蓄電セル間の電圧にばらつきが生じることがある。このばらつきの発生を防ぐべく、バランス補正回路1は、蓄電セル間の電圧もしくは直列接続された複数の蓄電セルからなる蓄電モジュール間の電圧を均等化させる(セルバランスが確保される)ように動作する。
【0031】
同図に示すように、直列接続された蓄電セルB1,B2によって集合電池3が構成されている。集合電池3の正負端子31,32には、例えば、集合電池3に充電電流を供給する電流供給源(例えば、充電器、回生回路等)、集合電池3の起電力を利用して機能する負荷(例えば、モータ、電子回路、電気製品等)等が接続される。
【0032】
蓄電セルB1の負極と蓄電セルB2の正極とを結ぶ線路(蓄電セルB1,B2の直列接続点Nmを含む線路)には、インダクタLの一端が接続している。インダクタLの他端と蓄電セルB1の正極とを結ぶ線路には、スイッチング素子S1が設けられている。インダクタLの他端と蓄電セルB2の負極とを結ぶ線路には、スイッチング素子S2が設けられている。
【0033】
スイッチング素子S1,S2は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を用いて構成されている。スイッチング素子S1,S2は、後述する制御信号生成回路12(スイッチング制御部)から入力される制御信号φ1,φ2によって、図示しないゲートドライバを介してオンオフ制御される。尚、スイッチング素子S1,S2はバイポーラトランジスタを用いて構成することも可能である。
【0034】
スイッチング素子S1,S2には、夫々、一方向性素子D1,D2(ダイオード等)が並列に接続されている。一方向性素子D1は、蓄電セルB1の電圧(端子間電圧)に対して逆方向に(インダクタLから蓄電セルB1に流れ込む電流に対しては順方向に)に接続されている。また一方向性素子D2は、蓄電セルB2の電圧(端子間電圧)に対して逆方向に(インダクタLから蓄電セルB2に流れ込む電流に対しては順方向に)接続されている。
【0035】
スイッチング素子S1,S2が共にオフとなった期間にインダクタ電流iLが残留していた場合、その残留インダクタ電流iLは一方向性素子D1,D2を経由して流れ続けることができる。これによりインダクタLに蓄えられたエネルギーを無駄なく利用することができる。またインダクタ電流iLを遮断した場合に生じるサージ電圧の発生も抑制することができる。
【0036】
尚、MOSFETには通常、ソース−ドレイン間に並列して寄生ダイオード(内部ダイオードとも称する)が形成されているが、これを上記一方向性素子D1,D2として利用すれば、回路構成の簡素化、素子数の減少、製造コストの低減を図ることができる。
【0037】
制御回路10は、制御信号生成回路12、抵抗素子R1,R2、及び差動増幅回路13を含む。
【0038】
抵抗素子R1,R2の抵抗値は等値に設定されていて、これらは上記2つの蓄電セルB1,B2の直列電圧(集合電池3の正負端子31,32間の電圧)を等分割する分圧回路を構成している。
【0039】
差動増幅回路13は、蓄電セルB1,B2の中間接続点Nmに現れる電圧Vmと抵抗素子R1,R2の接続点Nnに現れる分圧電圧Vnとの電圧差Vx(=Vm−Vn=蓄電セルB1の電圧VB1−蓄電セルB2の電圧VB2)を所定の利得で線形増幅して制御回路10に入力する。
【0040】
制御信号生成回路12は、ゲートドライバの夫々に供給する2相の制御信号φ1,φ2を生成する。本実施形態では、制御信号φ1,φ2は、所定のデューティ比の2相(ハイレベル(High level)、ローレベル(Low level))の方形波(例えばPWMパルス(PWM:Pulse Width Modulation)であるものとする。制御信号生成回路12は、差動増幅回路13から入力される上記電圧差Vxに応じて制御信号φ1,φ2のデューティ幅や制御信号φ1,φ2の生成有無等を決定する。制御信号生成回路12は、例えば、演算装置(CPU(Central Processing Unit),MPU(Micro Processing Unit)等)や記憶装置(RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)等)を備えたマイクロコンピュータを用いて構成されている。
【0041】
以上の構成の他、スイッチング素子のオンオフ動作に起因して生じるノイズの低減、スイッチング素子のオンオフ動作に起因して蓄電セルB1,B2に生じる電圧変化の緩和などを目的として、蓄電セルB1,B2の夫々の正負端子間、集合電池3の正負端子31,32間等に容量素子を設けてもよい。
【0042】
続いて、バランス補正回路1の動作について説明する。
図2A及び
図2Bに、スイッチング素子S1,S2のオンオフ状態並びにインダクタLを流れる電流iLの波形を示している。
【0043】
図2A(a)は、蓄電セルB1の電圧VB1が蓄電セルB2の電圧VB2よりも「かなり高い」(Vx>Vt1)(Vt1は予め設定された正の閾値)ときのスイッチング素子S1,S2のオンオフ状態並びにインダクタ電流iLの波形である。また
図2A(b)は、蓄電セルB1の電圧VB1が蓄電セルB2の電圧VB2よりも「高い」(Vt1≧Vx>Vt2)(Vt2は予め設定された正の閾値)ときのスイッチング素子S1,S2のオンオフ状態並びにインダクタ電流iLの波形である。また
図2A(c)は、蓄電セルB1の電圧VB1が蓄電セルB2の電圧VB2よりも「やや高い」(Vt2≧Vx>Vt3)(Vt3は予め設定された正の閾値)ときのスイッチング素子S1,S2のオンオフ状態並びにインダクタ電流iLの波形である。また
図2A(d)は、蓄電セルB1の電圧VB1と蓄電セルB2の電圧VB2とが「ほぼ等しい(均等)」(Vt3≧Vx≧−Vt3)ときのスイッチング素子S1,S2のオンオフ状態並びにインダクタ電流iLの波形である。また
図2B(e)は、蓄電セルB1の電圧VB1が蓄電セルB2の電圧VB2よりも「やや低い」(−Vt3>Vx≧−Vt2)ときのスイッチング素子S1,S2のオンオフ状態並びにインダクタ電流iLの波形である。また
図2B(f)は、蓄電セルB1の電圧VB1が蓄電セルB2の電圧VB2よりも「低い」(−Vt2>Vx≧−Vt1)ときのスイッチング素子S1,S2のオンオフ状態並びにインダクタ電流iLの波形である。また
図2C(g)は、蓄電セルB1の電圧VB1が蓄電セルB2の電圧VB2よりも「かなり低い」(−Vt1>Vx)ときのスイッチング素子S1,S2のオンオフ状態並びにインダクタ電流iLの波形である。
【0044】
図2A(a)及び
図2B(g)に示すように、蓄電セルB1,B2の電圧差Vxの絶対値が「かなり高い」(Vx>Vt1又は−Vt1>Vx)とき、制御信号生成回路12は、スイッチング素子S1,S2を、周期T1(=スイッチング素子S1,S2のいずれかがオンになっている充放電期間tw1+スイッチング素子S1,S2が共にオフしている休止期間td1)で相補的にオンオフする。これにより、一方の蓄電セルから流れ込むインダクタ電流iLによってインダクタLが充電される充電期間と、インダクタLに充電されたエネルギーに基づくインダクタ電流iLによって他方の蓄電セルを充電するインダクタLの放電期間とが交互に発生する。
【0045】
またこのとき、制御信号生成回路12は、充放電期間tw1が休止期間td1に比べて十分に大きくなるように設定する。(
図2A(a),
図2B(g)では休止期間td1を0としてスイッチング素子S1,S2をフル稼働状態としている)。これにより、インダクタLを介して行われる、一方の蓄電セルから他方の蓄電セルへの充電量(電気エネルギー)が大きくなり、蓄電セルB1,B2間の電圧を急速に均等化することができる。
【0046】
尚、充放電期間tw1は、例えば、バランス補正回路1の利用目的、バランス補正回路1を構成している素子の性質、バランス補正回路1に要求される性能等に応じて適切な値に設定する。またこの例では
図2A(a)と
図2B(g)とで充放電期間tw1(又は休止期間td1)を同じ値に設定しているが、異なる値に設定してもよい。
【0047】
図2A(b)と
図2B(f)に示すように、蓄電セルB1の電圧VB1が蓄電セルB2の電圧VB2よりも「高い」(Vt1≧Vx>Vt2又は−Vt2>Vx≧−Vt1)とき、制御信号生成回路12は、スイッチング素子S1,S2を、周期T1(=スイッチング素子S1,S2のいずれかがオンになっている充放電期間tw2(<tw1)+スイッチング素子S1,S2が共にオフしている休止期間td2(>td1))で相補的にオンオフする。
【0048】
同図に示すように、制御信号生成回路12は、蓄電セルB1の電圧VB1が蓄電セルB2の電圧VB2よりも「かなり高い」ときに比べて、充放電期間tw2を充放電期間tw1よりも短く設定し、代わりに休止期間td2を休止期間td1よりも長く設定する。このように蓄電セルB1の電圧VB1が蓄電セルB2の電圧VB2よりも「高い」とき、制御信号生成回路12は、電圧差が「かなり高い」ときに比べて休止期間を長く設定するので、電力損失を増大させる過剰動作を回避させることができる。これにより、大きな電力損失をともなうことなく、直列接続された複数の蓄電セルの電圧を効率良く均等化させることができる。
【0049】
尚、制御信号生成回路12は、例えば、バランス補正回路1の利用目的、バランス補正回路1を構成している素子の性質、バランス補正回路1に要求される性能等に応じて充放電期間tw2を適切な範囲内で設定する。またこの例では
図2A(b)と
図2B(f)とで充放電期間tw2(又は休止期間td2)を同じ値に設定しているが、異なる値に設定してもよい。
【0050】
図2A(c)と
図2B(e)に示すように、蓄電セルB1の電圧VB1が蓄電セルB2の電圧VB2よりも「やや高い」(Vt2≧Vx>Vt3又は−Vt3>Vx≧−Vt2)とき、制御信号生成回路12は、スイッチング素子S1,S2を、周期T2(>T1)(=スイッチング素子S1,S2のいずれかがオンになっている充放電期間tw3(<tw2)+スイッチング素子S1,S2が共にオフしている休止期間td3(>td2))で相補的にオンオフする。
【0051】
このように蓄電セルB1の電圧VB1が蓄電セルB2の電圧VB2よりも「やや高い」とき、制御信号生成回路12は、周期T1よりも長い周期T2(=充放電期間tw3(<tw2)+休止期間td3(>td2))でスイッチング素子S1,S2を相補的にオンオフし、スイッチング素子S1,S2が共にオフしている休止期間を長くするので、スイッチング素子S1,S2をオンオフさせることによる電力損失を低減することができる。またこの場合でも充放電期間tw3の存在により、「やや高い」電圧差を解消させるために必要となるインダクタLの充放電電流iLは確保することができるので、スイッチング素子S1,S2の電圧を効率良く均等化させることができる。
【0052】
尚、このように周期T2(>T1)(=充放電期間tw3(<tw2)+休止期間td3(>td2))でスイッチング素子S1,S2を相補的にオンオフする方法として、例えば、スイッチング素子S1,S2を周期T1のn倍(nは2以上の整数)の周期T2(=充放電期間tw3(<tw2)+休止期間td3(>td2))で相補的にオンオフするようにしてもよい。周期T2を周期T1の整数倍とすることで、回路構成を簡素化することができ、例えば、
図2A(b)、
図2A(f)に示す制御信号φ1,φ2から充放電期間tw3を間引く(スキップする)回路を構成する(もしくはそのようなアルゴリズムとする)ことで、
図2A(c)や
図2B(e)に示したような制御を容易に実現することができる。
【0053】
充放電期間tw3や周期T2は、例えば、バランス補正回路1の利用目的、バランス補正回路1を構成している素子の性質、バランス補正回路1に要求される性能等に応じて適切な値に設定する。また
図2A(c)と
図2B(e)とで充放電期間tw3(又は休止期間td3)を同じ値に設定しているが、異なる値に設定してもよい。
【0054】
図2A(d)に示すように、蓄電セルB1の電圧VB1と蓄電セルB2の電圧VB2とが「ほぼ等しい(均等)」とき(Vt3≧Vx≧−Vt3)、制御信号生成回路12は、スイッチングS1,S2のいずれについてもオンオフ制御を停止し、オフ状態を継続する。このため、この状態のときはスイッチング素子S1,S2をオンオフ制御することに伴う損失は発生しない。尚、スイッチS1,S2が共にオフとなった期間にインダクタ電流iLが残留していても、その残留インダクタ電流iLは一方向性素子D1,D2を経由して流れ続けることができる。このため、インダクタLに蓄えられたエネルギーを無駄なく利用することができ、インダクタ電流iLを遮断した場合に生じるサージ電圧の発生を抑えることができる。
【0055】
以上に説明したように、蓄電セルB1の電圧VB1が蓄電セルB2の電圧VB2よりも「やや高い」(Vt2≧Vx>Vt3)か、もしくは「やや低い」(−Vt3>Vx≧−Vt2)とき、制御信号生成回路12は、スイッチング素子S1,S2を、周期T2(>T1)(=スイッチング素子S1,S2のいずれかがオンになっている充放電期間tw3(<tw2)+スイッチング素子S1,S2が共にオフしている休止期間td3(>td2))で相補的にオンオフし、スイッチング素子S1,S2が共にオフしている休止期間を長くする。このため、スイッチング素子S1,S2をオンオフさせることによる電力損失を低減することができる。またこの場合でも充放電期間tw3の存在により、「やや高い」もしくは「やや低い」電圧差を解消させるために必要となるインダクタLの充放電電流iLは確保することができるので、スイッチング素子S1,S2の電圧を効率良く均等化させることができる。
【0056】
ところで、以上に説明した実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0057】
例えば、以上に説明したバランス補正回路1において、蓄電セルB1,B2の電圧差Vxに代えて、インダクタ電流iLに応じて充放電期間tw1〜tw3及び休止期間td1〜td3を設定するようにしてもよい。この場合、インダクタ電流iLは、インダクタLに直列に設けた電流センサにより取得してもよいし、インダクタLに並列に設けた電圧センサによりインダクタ電圧vLを検出し、これを積分することにより取得するようにしてもよい。
【0058】
また以上に説明したバランス補正回路1の構成は、蓄電セルが3つ以上の場合に拡張することができる。
図3は3つ以上の蓄電セルの電圧の均等化に対応したバランス補正回路の一例である。尚、同図にはバランス補正回路の要部のみを示している。このバランス補正回路5は、前述したバランス補正回路1と同等の構成を有する複数のバランス補正ユニット51を含む。
【0059】
同図に示すように、このバランス補正回路5にあっては、一のバランス補正ユニット51の蓄電セルの一つが、前後して設けられている他の一のバランス補正ユニット51の蓄電セルの一つと共通になるように結線されている。制御回路10Aは、スイッチング素子S1,S2を相補的にオンオフして蓄電セルB1の電圧と蓄電セルB2の電圧を均等化させ、また制御回路10Bは、スイッチング素子S3,S4を相補的にオンオフして蓄電セルB2の電圧と蓄電セルB3の電圧を均等化させる。その結果、蓄電セルB2の電圧は2つの蓄電セルB1,B3の双方の電圧と均等化され、3つの蓄電セルB1,B2,B3の電圧が均等化されることとなる。そして同様に他の蓄電セルB4,B5,B6・・・の電圧も均等化され、バランス補正回路5の均等化の対象になっている全ての蓄電セル間で電圧が均等化されることとなる。
【0060】
本発明のバランス補正回路は、蓄電セルとは別体に設けられるものであってもよいし、蓄電セルと一体化されて電池パック等を構成するものであってもよい。