【実施例1】
【0013】
図1〜
図3は本発明の実施例1に係る無段変速装置を説明するための図である。
【0014】
図において、1は自動車用動力分割型無段変速装置であり、該無段変速装置1は、CVT(無段変速機)10と、遊星歯車機構13と、エンジン回転が入力されるトルクコンバータ2とで構成されている。該トルクコンバータ2はトルコンケース3内に収容されており、前記CVT10及び遊星歯車機構13はミッションケース4内に収容されている。また、4′は、ミッションケース4の後端開口を閉塞するケースカバーである。
【0015】
前記CVT10は、互いに平行に配置された入力軸5、駆動プーリ軸6、左部7′と右部7′′とを有する従動プーリ軸7及びアイドラ軸8を備えている。なお、前記従動プーリ軸7の出力ギヤ7bは、差動機構16の入力ギヤ16aに噛合している。
【0016】
前記トルクコンバータ2の、ドライブプレート2aにはエンジンのクランクシャフト2cが接続され、タービンランナ2bには前記入力軸5が接続されている。
【0017】
前記入力軸5には、前進駆動ユニット9が配設されている。この後進駆動ユニット9は前記入力軸5に回転可能に装着された前進用駆動ギヤ9aと、該前進用駆動ギヤ9aを入力軸5に対して結合又は分離する前進用クラッチ9bとで構成されている。
【0018】
前記駆動プーリ軸6の、入力側基端部6′には前記入力軸5の前進用駆動ギヤ9aが噛合する前進用入力ギヤ6aが固定され、出力側先端部6′′には駆動プーリ19が装着されており、該駆動プーリ19の反入力側には後進用従動ギヤ6cが固定されている。
【0019】
前記従動プーリ軸7には、前記駆動プーリ19が金属ベルト11を介して連結される従動プーリ20が装着されている。
【0020】
ここで前記駆動プーリ19は、前記駆動プーリ軸6の反入力側に一体形成された固定プーリ半体19aと、該駆動プーリ軸6の入力側に該プーリ軸6に対して軸方向移動可能にかつ回転力伝達可能に装着された可動プーリ半体19bと、該可動プーリ半体19bの入力側、つまり前進用クラッチユニット9側に形成された油室19cとを有する。該油室19cに油圧を供給することにより該可動プーリ半体19bが前進し、該駆動プーリ19は、有効巻き径が拡大し、高速側に変化する。
【0021】
また、前記従動プーリ20は、前記従動プーリ軸7の入力側に一体形成された固定プーリ半体20aと、該従動プーリ軸7の反入力側に該プーリ軸7に対して軸方向移動可能にかつ回転力伝達可能に装着された可動プーリ半体20bと、該可動プーリ半体20bの反入力側に形成された油室20cとを有する。該油室20cに油圧を供給することにより該可動プーリ半体20bが前進し、該従動プーリ20は、有効巻き径が拡大し、低速側に変化する。
【0022】
また、前記アイドラ軸8の、基端部8′には前記入力軸5の先端部5′に固定された後進入力ギヤ5aが噛合するアイドラギヤ8aが固定されており、また、アイドラ軸8の先端部8′′には後進駆動ユニット12が配設されている。
【0023】
前記後進駆動ユニット12はアイドラ軸8に回転可能に装着された後進用駆動ギヤ12aと、該駆動ギヤ12aをアイドラ軸8に対して回転力伝達可能に結合し、または相対回転可能に分離させる後進用クラッチ12bとで構成されている。
【0024】
前記後進用クラッチ12bは、具体的には、
図4に示すように、前記アイドラ軸8に共に回転するよう結合されたクラッチドラム12cと、該クラッチドラム12c内に軸方向に摺動可能に配置されたピストン12dと、ドラム側に係止するディスク及びギヤ側に係止するディスクからなるディスク12eとを有する。前記クラッチドラム12cとピストン12dとで形成される油室12fに油圧を供給することにより前記ドラム側ディスクがギヤ側ディスクに圧接してアイドラ軸8の回転力が後進用駆動ギヤ12aに伝達される。
【0025】
ここで前記入力軸5の先端部5′、アイドラ軸8の基端部8′は、それぞれ軸受5b,8dを介して支持壁4aで支持されている。この支持壁4aは、前記ミッションケース4の内部に形成されている。
【0026】
また、前記アイドラ軸8の軸芯部には、前記後進用クラッチ12bの、作動油室12fに作動油を供給する作動油路8b及び被潤滑部12gに潤滑油を供給する潤滑油路8cが
軸芯と平行に形成されている。この作動油路8b及び潤滑油路8cは、前記支持壁4aに形成された作動油給油路4b,潤滑油給油路4cに貫通孔8d,8eを介して連通している。そして前記作動油給油路4b及び潤滑油給油路4cは、前記支持壁4a内をミッションケース4の底部まで延びており、該底部に配設され、各油路への作動油,潤滑油の供給を制御するバルブボディ18に接続されている。なお、19はミッションケース4の底部に装着されたオイルパンである。
【0027】
また、前記遊星歯車機構13は、前記駆動プーリ軸6の前記駆動プーリ19より入力側に配設された駆動側遊星歯車機構14と、前記従動プーリ軸7の前記従動プーリ20より入力側に配設された従動側遊星歯車機構15とで構成されており、該両機構14,15はチェーン17で連結されている。
【0028】
前記駆動側遊星歯車機構14は、駆動プーリ軸6にサンギヤ14aを回転自在に支持させ、駆動プーリ軸6に固定されたキャリア14bにより回転自在に支持されたピニオンギヤ14cを前記サンギヤ14aに噛合させ、該ピニオンギヤ14cにリングギヤ14eを相対回転自在に噛合させ、該リングギヤ14dに駆動スプロケット14eを形成し、さらに前記サンギヤ14aの回転をブレーキ14fにより阻止又は許容するように構成されている。
【0029】
前記従動側遊星歯車機構15は、従動プーリ軸7の左部7′サンギヤ15aを固定し、従動プーリ軸7の右部7′′に相対回転自在に支持されたキャリア15bに回転自在に支持され、前記サンギヤ15aに噛合するピニオンギヤ15cリングギヤ15dを相対回転自在に噛合させ、該リングギヤ15dをクラッチ15fにより従動プーリ軸7の左部7′に結合又は分離させる構造となっている。また前記キャリア15bに前記従動スプロケット15eが形成されており、該従動スプロケット15eは、前記駆動側遊星歯車機構14の駆動スプロット14eに前記チェーン17で連結されている。
【0030】
本実施例装置1では、エンジン回転数,車速等に応じてベルト駆動モード又は動力分割モ−ドが選択制御される。ベルト駆動モードでの前進走行時には、前進用クラッチ9bオン、後進用クラッチ12bオフ、ブレ−キ14fオフ、クラッチ15fオンとされ、これによりエンジン回転が入力軸5から前進用駆動ギヤ9a及び前進用入力ギヤ6aを介して駆動プーリ軸6に伝達され、CVT10で変速され、従動プーリ軸7,クラッチ15f及び差動機構16を介して駆動輪に伝達される。
【0031】
一方、後進走行時には、前進用クラッチ9bオフ、後進用クラッチ12bオン、ブレ−キ14fオフ、クラッチ15fオンとされ、これによりエンジン回転が入力軸5からアイドラ軸8で反転され、後進用駆動ギヤ12a,後進用従動ギヤ6cを介して駆動プーリ軸6に伝達され、CVT10,従動プーリ軸7,クラッチ15f及び差動機構16を介して駆動輪に伝達される。
【0032】
また、動力分割モ−ドでは、動力はCVT10と遊星歯車機構13とに分割して伝達される。具体的にはブレ−キ14fオン,クラッチ15fオフとされ、エンジン回転は駆動側遊星歯車機構14で変速されて従動側遊星歯車機構15に伝達され、ここでCVT10からの回転と合成されて差動機構16に出力される。
【0033】
本実施例によれば、アイドラ軸8に後進用クラッチ12b及び後進用駆動ギヤ12aからなる後進駆動ユニット12を装着し、駆動プーリ軸6の、駆動プーリ19に対して前進用クラッチ9b及び後進用入力ギヤ5a等の反対側部分に後進用従動ギヤ6cを配置することで、大径の前記駆動プーリ19を大径の前記後進用クラッチ12bと大径の前進用クラッチ9bとの間に位置させたので、駆動プーリ19が後進用クラッチ12b等に干渉しにくくなり、その結果、アイドラ軸8と駆動プーリ軸6との径方向間隔を狭めることができ、装置をコンパクト化することができる。
【0034】
また、アイドラ軸8の延長線上でかつ駆動プーリ19の径方向外方の従来デッドスペースであった領域Aに後進用クラッチ12bを配設したので、駆動プーリ19の反入力側に後進用クラッチ12bを配設しながら装置全体で見た場合の軸長の増大を抑制できる。
【0035】
またアイドラ軸8に後進用クラッチ12bを配設すると共に、該アイドラ軸8の軸芯に作動油路8b,潤滑油路8cを形成したので、該作動油路8b,潤滑油路8cに作動油,潤滑油を供給する作動油給油路4b,潤滑油給油路4cを、ミッションケース4のアイドラ軸軸受8d及び入力軸軸受5bを支持する支持壁4aに形成することができる。その結果、該両給油路4b,4cを、作動油の流れをコントロールするバルブボディ18に直接連通するように直線的に形成でき、該両給油路4b,4cの構造を簡素化でき、加工工数を削減できる。ちなみに、入力軸に後進用クラッチを配設した従来装置では、作動油給油路,潤滑油給油路をトルコンケースの壁部に形成していたため、ミッションケース側のバルブボディとの連通構造が必要となり、その分構造が複雑化し、加工工数が増大するといった問題があった。