(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングが、ハウジングの内部で少なくとも第1の端子の接触部又は第2の端子の接触部の何れかに通じる連通孔を有する請求項1〜請求項3何れか1項記載のコネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、そのような可動部を有するコネクタについては、柔軟な弾性変形を実現するため可動部が細幅の金属片として端子に設けられるのが通常であり、細幅で断面積が小さいままでは抵抗が高くなり過ぎて近年の大電流用途に対応させるのが困難となってきている。特に車載機器用で大電流対応のコネクタではコネクタに流す電流値が徐々に高くなってきている。そのため、限られたコネクタの大きさや端子数を前提として、端子の断面積の増加等によりできるだけ端子を低抵抗化して、益々高くなる大電流用途に対応できるコネクタ構造を実現することが先ず求められている。そしてその上で、接続信頼性を高めるために端子の可動部を実現することが要請されている。
【0005】
以上を背景になされたのが本発明であり、本発明の目的は端子を低抵抗化して大電流用途に対応できるコネクタを提供することにある。そしてさらなる本発明の目的は大電流用途に対応できる可動部を持つ端子を備えるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明は以下のように構成される。
即ち、一端を接続対象物となる同一の平型導体に接続し、他端を基板の同一の基板接点に接続する平板状の第1の端子及び第2の端子と、第1及び第2の端子を、平板状の端子面が基板の表面に対して垂直な縦方向に沿うように並列に保持するハウジングと、を備えており、前記第1及び第2の端子はそれぞれ、前記平型導体と導通接続する接触部と、前記接触部に連続する基部と、前記基部複数本に分岐して伸長しており前記平板状の端子面を平行に配置したバネ部と、各バネ部の末端側で前記基板接点と導通接続する基板接続部と、を備えるコネクタである。
【0007】
本発明によれば、ハウジングが第1及び第2の端子を平板状の端子面が基板の表面に対して垂直な縦方向に沿うように並列に保持するため、ハウジングのサイズを一定とした場合、平板状の端子面を横並びで配置する場合よりも端子の断面積を大きくして低抵抗化することができ大電流用途に対応できる。
【0008】
また、本発明によれば、第1の端子と第2の端子とを同一の平型導体と同一の基板接点に接続するため、平板状の端子の断面積を大きくしつつ導通経路を複数に分岐させることで大電流用途に対応できる。
【0009】
さらに本発明によれば、第1の端子と第2の端子は、接触部に連続する基部から分岐して伸長する複数本のバネ部をそれぞれ有するため、1つの平型導体に対して少なくとも4本のバネ部に分流させることができる。したがって1つの平型導体を1本のバネ部で接続する場合と比べて大電流を流すことで端子に生じる発熱を抑制でき、大電流用途に対応することができる。
【0010】
そして本発明によれば、第1の端子と第2の端子のバネ部は、基部から複数本に分岐して前記端子面が平行に伸長する構造であるため、第1及び第2の端子の端子配置を平行配置により板厚方向でコンパクトにしてコネクタ全体を小型化できる。しかもバネ部が平板状であるため、端子の断面積を大きくして低抵抗化することができ大電流用途に対応できる。
【0011】
前記本発明は、第1の端子の分岐するバネ部の間に第2の端子のバネ部を配置することができる。
これによればバネ部における端子配置を板厚方向でコンパクトにしてコネクタ全体を小型化できる。
【0012】
前記本発明は、ハウジングが前記縦方向に沿う前記平型導体の挿入口を有しており、第1の端子の接触部と第2の端子の接触部を前記縦方向に沿って上下に配置することができる。
これによれば、第1の端子の接触部と第2の端子の接触部が平型導体の縦長の挿入口に沿って縦並びとなるため、接触部の平板状の端子面を基板と平行に横並びで配置する場合よりも、端子の断面積を大きくして低抵抗化することができ大電流用途に対応できる。
【0013】
前記本発明は、ハウジングが、ハウジングの内部で少なくとも第1の端子の接触部又は第2の端子の接触部の何れかに通じる連通孔を有することができる。
これによれば、平型導体と接触する接触部で発生する熱を、連通孔を通じて放熱することができ、大電流用途に対応できるハウジング構造を実現できる。
【0014】
前記本発明は、第1及び第2の端子のバネ部が直線部と屈曲部とを有することができる。
これによれば、バネ部によってフローティング機構を有するコネクタ端子を実現することができ、コネクタ嵌合の位置ずれや使用時の振動によるはんだ付け部への負荷を緩和することができる。そのバネ部は直線部と屈曲部とを組み合わせて構成されるため、ばね長のある低バネ係数で柔軟性の高い端子構造を実現することができる。
【0015】
前記本発明は、第1及び第2の端子の接触部が複数本のアーム状の接点部を有するものとして構成できる。
接触部での接点数を複数とすることで1接点部あたりの電流値を小さくして接触部での発熱を抑制することができるので、大電流用途に対応する接点構造とすることができる。
【0016】
前記本発明は、ハウジングが、前記縦方向で基板の厚みと重ねて設置した状態で基板表面と係止する基板固定部を有する。
これによれば、基板からのコネクタの突出高さを抑えることができるので、基板を設置する機器内部での省スペースの要請に対応できる。この場合、基板の板端に取付けることでエッジコネクタとすることができる。さらにこの場合、平型導体の嵌合方向を基板の基板面に沿う方向とすることで、水平接続が可能なエッジコネクタとすることができる。
【0017】
前記本発明は、第1及び第2の端子がハウジングに対する固定片部を有しており、ハウジングは、第1及び第2の端子の各固定片部が固定される固定ハウジングと、第1及び第2の端子の接触部が固定される可動ハウジングとを備えており、可動ハウジングは固定ハウジングに対して第1及び第2の端子のバネ部の弾性変形によって相対変位可能にできるものとして構成できる。
これによれば、大電流用途に対応しつつフローティング機能を備えるコネクタを実現できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコネクタによれば端子の低抵抗化を実現して大電流用途に対応できるコネクタを実現できる。また大電流対応の可動コネクタを実現できる。さらに低抵抗且つ低バネ係数の端子による可動機構を省スペースで備えるコネクタを実現することができる。したがって車載機器等の大電流対応の要請が高い用途で、接続信頼性、接続安全性の高いコネクタを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のコネクタの一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では車載機器に備える接続対象物と基板とを導通接続し、フローティング機能を備えるコネクタ1を例として説明する。
【0021】
なお、本明細書、特許請求の範囲、図面では、
図1で示すコネクタ1の長手に沿う幅方向をX方向、短手に沿う前後方向をY方向、基板面に対して垂直なコネクタの高さ方向をZ方向とし、高さ方向Zにおけるコネクタ1の平面側を「上側」、コネクタ1の底面側を「下側」として説明する。
【0022】
実施形態〔図1〜図39〕:
図1〜
図39で示すように、コネクタ1は、エッジコネクタであって、基板2の端に実装されるハウジング3と、ハウジング3に保持されて電子部品の平型導体4に接続する端子部5とを備える。なお、本実施形態では「平型導体」の例としてバスバーを示す。
【0023】
〔ハウジング〕
図1〜
図7、
図11〜
図24で示すように、ハウジング3は、絶縁性の樹脂でなり全体として略直方体形状に設けられ、高さ方向Zはコネクタ1の幅方向X及び前後方向Yよりも小さく形成されている。ハウジング3は「可動ハウジング」としてのハウジング本体6と、「固定ハウジング」としてのリテーナ7とを備える。そしてリテーナ7は内側に空間8を有しており、この空間8内にハウジング本体6を収容する。
【0024】
〔ハウジング本体〕
図11〜
図17で示すように、ハウジング本体6は、平型導体4の挿入口6bと、収容孔6cと、連通孔6dと、係止部6eと、脱落防止部6fとを有する。
挿入口6bは、基板2に対して垂直なハウジング本体6の前面部6a1に設けられ、縦長に形成される。そして、この挿入口6bには電子部品の平型導体4を挿入することができる。本実施形態では挿入口6bを3つ設け、各挿入口6bには平型導体4を1つずつ挿入することができる。この挿入口6bはコネクタ1の高さ方向Zに沿わせて設けられ、平型導体4の外周よりも大きく形成されている。そして、平型導体4は、基板2に対する垂直方向に板面を維持した状態で、基板2の面方向に対して平行となるように挿入口6bに挿入される。
【0025】
収容孔6cは、挿入口6bに連通して形成され、端子部5を収容する。そして、挿入口6bから挿入された平型導体4は、この収容孔6cで端子部5と導通接続する。また収容孔6cの幅方向Xにおける側方には仕切壁6c1、6c1が設けられている。収容孔6cが幅方向Xに沿って複数設けられている場合には、仕切壁6c1によって収容孔6cを隔てることができる。また各仕切壁6c1及び側面部6a3の内壁には収容孔6cの内側に向けて、前後方向Yに沿う突条部6c2が形成されている。収容孔6cに収容される端子部5はこの突条部6c2によってハウジング本体6に固定することができる。
【0026】
連通孔6dは前記挿入口6bの脇に形成されている。そして複数の連通孔6dはハウジング本体6の内部で一体となり、ハウジング本体6を後方に向けて貫通する。本実施形態においては、この連通孔6dは挿入口6bの両脇に2対形成されている。連通孔6dは前面部6a1の上方及び下方にも形成されており、計16個の連通孔6dが設けられる。また、ハウジング本体6の上面部6a2には突状の係止部6eが形成されている。そして、側面部6a3、6a3には突状の脱落防止部6f、6fが形成されている。
【0027】
〔リテーナ〕
図18〜
図24で示すように、リテーナ7は、挿通孔7bと、収容空間7cと、係止孔7dと、凹部7eと、固定溝7fと、基板固定部7gとを有する。
挿通孔7bは、前後方向Yにおける後部に設けられ、コネクタ1を組み上げる際に端子部5を挿入することができる。本実施形態では3つ形成されており、各挿通孔7bには端子部5が1つずつ挿入されている。
【0028】
収容空間7cは、リテーナ7がハウジング本体6に固定された状態で、ハウジング本体6の収容孔6cと連続して形成される。この収容空間7cは隔壁7c1で仕切られており、各収容空間7cには端子部5が挿入される。本実施形態では収容空間7cが3つ形成され、各収容空間7cには端子部5が1つずつ挿入される。
係止孔7dはリテーナ7の上部に形成され、縁部で可動ハウジング3の係止部6eを係止することができる。
凹部7eは、リテーナ7の側面であって、前後方向Yにおける前側に設けられる。この凹部7eは、リテーナ7の空間8にハウジング本体6を収容する際に前記の脱落防止部6fを受けることができる。
固定溝7fは、リテーナ7の前後方向Yにおける後方に設けられ、端子部5を固定することができる。
【0029】
基板固定部7gは、リテーナ7の側面部7a1、7a1に、前後方向Yに沿って設けられている。この基板固定部7gは側面部7a1、7a1からコネクタ1の幅方向Xの両方向に向けて突出して形成されている。
【0030】
〔端子部〕
図8〜
図10、
図25〜37で示すように、端子部5は第1の端子9と第2の端子10とを備えている。第1の端子9と第2の端子10はそれぞれ平板状の金属板を部分的に折り曲げ加工して形成されている。これらの第1の端子9と第2の端子10は、それぞれが一端側で同一の平型導体4に接続し、他端側で基板2の同一の基板接点2bに導通接続する。
【0031】
〔第1の端子〕
図25〜
図28で示すように、第1の端子9は、接触部9aと、基部9bと、バネ部9cと、固定片部9d、基板接続部9eとを備える。
【0032】
接触部9aは、前後方向Yに沿って設けられ、平型導体4と導通接続する接点アーム9a1、9a2を有する。接点アーム9a1、9a2はそれぞれ互いに対向して1対ずつ設けられる。そして、これらの接点アーム9a1、9a2は互いに略同じ長さで形成される。また、接点アーム9a1、9a2は基部9bから片持ち梁状に伸長して設けられ、基部9b側から自由端側にかけて対向する接点アーム9a1、9a2に相互に近づく方向に傾斜して形成される。
【0033】
接点アーム9a1、9a2の自由端側には屈曲部9a3、9a3が設けられて、この屈曲部9a3を境界として対向する接点アーム9a2、9a1から離れる方向に向けて傾斜する。また、接点アーム9a1、9a2において、高さ方向Zにおける上側の1対の接点アーム9a1の屈曲部9a3は、1対の接点アーム9a2の屈曲部9a3よりも前後方向Yにおける前側に位置している。第1の端子9の接触部9aは、主にこの屈曲部9a3で平型導体4と導通接続する。相互に対向する屈曲部9a3同士の隙間は平型導体4の板厚よりも狭く形成されている。挿入口6bからハウジング本体6の収容孔6cに挿入された平型導体4は、まず接点アーム9a1に接触し、続いて接点アーム9a2に接触する。その際、対向する接点アーム9a1、9a2を相互に離間する方向に弾性変形させ、前記隙間を押し広げながら収容孔6c内に進入する。こうして収容孔6cに挿入された平型導体4は接点アーム9a1、9a2の屈曲部9a3と接触し、第1の端子9を介して基板2と導通接続される。
【0034】
基部9bは接点アーム9a1、9a2の基端部9b1と、連結部9b2とを有する。基端部9b1は接触部9aに連続して設けられる。また基端部9b1の下側縁には係止部9b3が形成されている。連結部9b2は基端部9b1の上端側に連続して設けられ、相互に対向する基端部9b1同士を連結する。
【0035】
バネ部9cは、外向屈曲部9c1と、折返し部9c2と、可動部9c3とを有する。本実施形態においては、バネ部9cは各基端部9b1、9b1から1つずつ伸長する。
外向屈曲部9c1は、基部9bの基端部9b1における前後方向Yの後端側から後方に向けて伸長し、前側から後側にかけてコネクタ1の幅方向Xにおける外側に向けて屈曲して形成される。
折返し部9c2は、外向屈曲部9c1の後端側に連続して設けられ、まず外向屈曲部9c1の側から後方に延び、コネクタ1の高さ方向Zにおける下方向に下がり、続いて前方に折返す形状でなる。
【0036】
可動部9c3は平板状に形成され、傾斜部9c4と、屈曲部9c5と、直線部9c6と、後端部9c7を有する。
可動部9c3は平板状に形成されるため、例えば細軸状とする場合と比べて端子の断面積を大きくすることができる。したがって可動部9c3における低抵抗化を実現することができる。また、可動部9c3が平板状に形成されることで、そのバネ長を長く設けるほど可動部9c3が柔らかくなり、板厚方向に向けて弾性変形しやすくなる。この可動部9c3は、第1の端子9がハウジング3に保持される際、リテーナ7の収容空間7cに収容される。しかし、コネクタ1を小型化するほどリテーナ7の収容空間7cが狭くなるため、バネ長を長く設けることが困難となる。
【0037】
そこで、本実施形態では、可動部9c3が略直線状でなる傾斜部9c4と直線部9c6を有することとし、これらを屈曲部9c5で連結させた。傾斜部9c4は収容空間7cの前端側かつ下端側から後端側かつ下端側にかけて形成される。そして、直線部9c6は収容空間7cの後端側かつ下端側から後端側かつ上端側にかけて形成される。こうすることで、収容空間7cを最大限利用してバネ長を長く設けることができ、低バネ係数で板厚方向により変形しやすい可動部9c3とすることができる。
また、バネ部9cが前述の外向屈曲部9c1を有することで、対向するバネ部9c、9c及び、基板接続部9e、9eの間隔は対向する基端部9b1の間隔よりも広く設定されている。
【0038】
固定片部9dは、後端部9c7に連続して設けられる。そして、後端部9c7の上端部からコネクタ1の高さ方向Zにおける上方向に向けて伸長した後、前後方向Yにおける前方向に延出して形成される。そして固定片部9dの下側縁部には係止突起9d1が形成されている。
【0039】
基板接続部9eは、後端部9c7の後端部から後方に向けて、前後方向Yに沿って伸長して設けられる。また、基板接続部9eは固定突部9e1を有する。固定突部9e1は基板接続部9eの後端側の下部に設けられ、半田付けされることで基板接点2bと接続する。
【0040】
〔第2の端子〕
図29〜
図32で示すように、第2の端子10は、接触部10aと、基部10bと、バネ部10cと、固定片部10dと、基板接続部10eとを備える。第2の端子10は、第1の端子9とコネクタ1の高さ方向Zが略同じ高さに形成される。また前後方向Yの長さも略同程度に形成される。
【0041】
接触部10aは、前後方向Yに沿って設けられ、平型導体4と導通接続する接点アーム10a1、10a2を有する。接点アーム10a1は互いに対向して1対ずつ設けられる。そして、これらの接点アーム10a1、10a2はそれぞれが互いに略同じ長さで形成される。また、接点アーム10a1、10a2は基部10bから片持ち梁状に伸長して設けられ、基部10b側から自由端側にかけて対向する接点アーム10a1、10a2に相互に近づく方向に傾斜して形成される。
【0042】
接点アーム10a1、10a2の自由端側には屈曲部10a3が設けられて、この屈曲部10a3を境界として対向する接点アーム10a1、10a2から離れる方向に向けて傾斜する。また、接点アーム10a1、10a2において、高さ方向Zにおける下側の1対の接点アーム10a1の屈曲部10a3は、他方の1対の接点アーム10a2の屈曲部10a3よりも前後方向Yにおける前側に位置している。第2の端子10の接触部10aは、主にこの屈曲部10a3で平型導体4と導通接続する。相互に対向する屈曲部10a3同士の隙間は平型導体4の板厚よりも狭く形成されている。挿入口6bからハウジング本体6の収容孔6cに挿入された平型導体4は、まず接点アーム10a1に接触し、続いて接点アーム10a2に接触する。その際、対向する接点アーム10a1を相互に離間する方向に弾性変形させ、前記隙間を押し広げながら収容孔6c内に進入する。こうして収容孔6cに挿入された平型導体4は接点アーム10a1の屈曲部10a3と接触し、第2の端子10を介して基板2と導通接続される。
【0043】
なお、本実施形態において、第2の端子10の接触部10aは、第1の端子9と第2の端子10を並列配置した際に、第1の端子9の接触部9aよりも高さ方向Zにおける下側位置に設けられる。
【0044】
基部10bは接点アーム10a1、10a2の基端部10b1と、連結部10b2とを有する。基端部10b1は、接触部10aに連続して設けられる。また基端部10b1の上側縁には係止部10b3が形成されている。連結部10b2は基端部10b1の下端側に連続して設けられ、相互に対向する基端部10b1同士を連結する。
【0045】
バネ部10cは、内向屈曲部10c1と、可動部10c3とを有する。また、本実施形態においてバネ部10cは各基端部10b1、10b1から1つずつ伸長する。
内向屈曲部10c1は、基部10bの基端部10b1における前後方向Yの後端側から後方に向けて伸長し、前側から後側にかけて幅方向Xの内側に向けて屈曲して形成される。
【0046】
可動部10c3は平板状に形成され、直線部10c4と、屈曲部10a5と、傾斜部10c6と、屈曲部10a7と、直線部10c8とを有する。
直線部10c4と、傾斜部10c6と、直線部10c8はいずれも直線上でなり、屈曲部10a5、10a7で連結している。直線部10c4は収容空間7cの前端側で基端部10b1と連続し、そこから収容空間7cの後端側にかけて形成される。また、傾斜部10c6は収容空間7cの後端側かつ下端側の位置から、収容空間7cの前端側かつ上端側にかけて形成される。さらに直線部8は収容空間7cの前端側から後端側にかけて形成される。こうすることで、第1の端子9の可動部10c3と同様に、収容空間7cを最大限利用してバネ長を長く設けることができ、低バネ係数で板厚方向に弾性変形しやすい可動部10c3とすることができる。
【0047】
第2の端子10の可動部10c3においても、第1の端子9の可動部10c3の場合と同様に平板状に形成される。したがって、例えば細軸状とする場合と比べて端子の断面積を大きくすることができるため、可動部10c3における低抵抗化を実現することができる。また、バネ部10cが前述の内向屈曲部10c1を有することで、対向するバネ部10c、10c及び基板接続部10e、10eの間隔はそれぞれ基部10bの基端部10b1、10b1の間隔よりも狭く設定されている。
【0048】
固定片部10dは、直線部10c8の上端部に連続して設けられる。そして、コネクタ1の高さ方向Zにおける上方向に伸長した後、前後方向Yにおける前方向に延出して形成される。また、固定片部10dは、基板接続部10eの上端から幅方向Xにおける外側に向けて湾曲して形成される。この固定片部10dの幅方向Xにおける外側の縁部には係止突起10d1が形成されている。
【0049】
基板接続部10eは、バネ部10cの後端部から後方に向けて、前後方向Yに沿って伸長して設けられる。また、基板接続部10eは固定突部10e1を有する。固定突部10e1は基板接続部10eの後端側の下部に設けられ、半田付けされることで基板接点2bと接続する。
【0050】
〔端子部のハウジングへの組付け方法の説明〕
次に、端子部5のハウジング3への組付け方法を説明する。まず、リテーナ7の空間8にハウジング本体6を収容し、ハウジング本体6の係止部6eをリテーナ7の係止孔7dに係止させる。その際、ハウジング本体6の脱落防止部6fをリテーナ7の凹部7eに入り込ませる。これによりリテーナ7がハウジング本体6に固定され、リテーナ7の内部にハウジング本体6の収容孔6cと通じる収容空間7cが形成される。
【0051】
続いてリテーナ7の挿通孔7bから第1の端子9を収容空間7cに挿入し、さらに前側に押し込むことで、第1の端子9の接触部9aをハウジング本体6の収容孔6c内に挿入される。その際に接触部9aはハウジング本体6の突条部6c2よりも上側部分に挿入する。基部9bの基端部9b1における下側縁に設けられる係止部9b3を突条部6c2の上側縁に噛み込ませることで、第1の端子9の基部9bをハウジング本体6に固定することができる。また、その際に基板接続部9eの固定片部9dをリテーナ7の固定溝7fに圧入する。固定片部9dには係止突起9d1が設けられており、この係止突起9d1を固定溝7fの内壁に噛み込ませることで、第1の端子9をリテーナ7に対して固定することができる。
【0052】
次に、リテーナ7の挿通孔7bから第2の端子10を収容空間7cに挿入し、さらに前側に押し込むことで、第2の端子10の接触部10aをハウジング本体6の収容孔6c内に挿入する。その際に接触部10aはハウジング本体6の突条部6c2よりも下側部分に挿入する。基部10bの基端部10b1における上側縁に設けられる係止部10b3を突条部6c2の下側縁に噛み込ませることで、第1の端子9の基部9bをハウジング本体6に固定することができる。また、その際に基板接続部10eの固定片部10dをリテーナ7の固定溝7fに圧入する。
固定片部10dには係止突起9d1が設けられており、この係止突起9d1を固定溝7fの内壁に噛み込ませることで、第2の端子10をリテーナ7に対して固定することができる。
【0053】
前述のとおり、第1の端子9のバネ部9cが前側から後側にかけて幅方向Xの外側に向けて湾曲する外向屈曲部9c1を有しており、対向するバネ部9c、9cの間隔と基板接続部9e、9eの間隔が、それぞれ基部9bの対向する基端部9b1、9b1の間隔よりも大きく形成されている。これに対して第2の端子10のバネ部10cは、前側から後側にかけて幅方向Xにおける内側に向けて湾曲する内向屈曲部10c1を有しており、対向するバネ部10c、10cの間隔と基板接続部10e、10eの間隔が、基部9bの対向する基端部9b1、9b1の間隔よりも狭く形成されている。
したがって、第2の端子10をハウジング3に取り付ける際に、ハウジング3に固定されている第1の端子9の対向するバネ部9c、9c及び基板接続部9e、9eの間に接触部10aを挿通させて収容孔6cに挿入する。第2の端子10がハウジング3に固定された状態で、バネ部10c、10cは第1の端子9の対向するバネ部9c、9cの間に収容される。また、同様に第2の端子10の基板接続部10e、10eは、第1の端子9の対向する基板接続部9e、9eの間に収容される。
【0054】
また、第1の端子9と第2の端子10をハウジング3に取り付けた状態で、各接触部9a、10aが縦長の挿入口6bに沿って並列する。
【0055】
〔使用方法の説明〕
まず、コネクタ1の基板2への実装方法について説明する。
図38、39で示すように、コネクタ1は基板2の端部に実装することができる。基板2の端部には、リテーナ7の側面部7a1、7a1及び後面部7a2の外形に沿う切欠き2aを形成する。そして、この切欠き2aにコネクタ1をリテーナ7の後面部7aから挿入する。その際、基板固定部7gと、第1の端子9及び第2の端子10の基板接続部9e、10eを基板2の表面側に配置する。基板固定部7gは補強金具や接着剤などを用いて基板2に対して固定することができる。コネクタ1を基板2に固定した後、第1の端子9及び第2の端子10の基板接続部9e、10eを基板2に半田付けする。
【0056】
コネクタ1を基板2に固定した状態で、ハウジング本体6の前面部6a1は基板2に対して垂直に設けられる。例えば接触部9a、10aの平板状の端子面を基板2と平行に横並びで配置すると、端子9、10の配列方向に沿ってコネクタ1を小型化するためには各端子9、10を板幅方向に短くする必要がある。しかし、そのように端子を短くすると端子の断面積が小さくなり、抵抗が大きくなってしまう。そこで、ハウジング本体6に設けられて、平型導体4を挿入する縦長の挿入口6bは、長手方向が基板2に対して垂直となるように設け、第1の端子9の接触部9aと第2の端子10の接触部10aの平板状の端子面を挿入口6bに沿って縦並びとする。こうすることで、各端子9、10を板幅方向では大きさを変えずに断面積を大きくして低抵抗化を図ることができる。こうすることで小型化しつつ大電流用途に対応できる。
【0057】
この挿入口6bには、平型導体4を板面が基板2に対して垂直となるように挿入することができる。第1の端子9の上側の接点アーム9a1における屈曲部9a3と、第2の端子10の下側の接点アーム10a1における屈曲部10a3とは、コネクタ1における前後方向Yにおいて同じ位置に配置される。これに対し、第1の端子9の下側の接点アーム9a2における屈曲部9a3と、第2の端子10の上側の接点アーム10a2における屈曲部10a3もまた前後方向Yにおける同じ位置に配置される。しかし、これらの接点アーム9a2、10a2は前記接点アーム9a1、10a1より後側に配置される。
したがって、平型導体4を挿入口6bからハウジング本体6に挿入すると、前側に屈曲部9a3、10a3を有する接点アーム9a1、10a1にまず接触し、続いて後側に屈曲部9a3、10a3を有する接点アーム9a2、10a2に接触する。このように屈曲部9a3、10a3の位置が異なる接点アーム9a1、9a2、10a1、10a2を設けることで平型導体4と同時に接触する屈曲部9a3、10a3を減らし、平型導体4が前記各接点アームを変位させる際の抵抗を減らすことができる。よってより小さい力で平型導体4をコネクタ1に接続させることができる。
【0058】
平型導体4とコネクタ1とが導通接続すると、端子部5から発熱する。この発熱量は、電流値が上昇するほど増える。この熱は、リテーナ7の上部に形成される係止孔7dと連通孔6dを通じてコネクタ1の外部に放熱される。
【0059】
〔フローティング構造の説明〕
前述のとおり、基部9b、10bはハウジング本体6に固定され、基板接続部9e、10eはリテーナ7に固定されるとともに、基板2に半田付けされている。これに対し、リテーナ7は基板固定部7gを有しており、ここでコネクタ1を補強金具や接着剤などを用いて基板2に固定することができる。また、コネクタ1は、第1の端子9と第2の端子10にそれぞれバネ部9c、10cを有している。
【0060】
リテーナ7にハウジング本体6を収容した状態において、リテーナ7の側面部7a1とハウジング本体6の側面部6a3の内壁の間には、隙間Lが形成される。コネクタ1や基板2に振動が加えられると、このバネ部9c、10cが弾性変形する。そして、自由状態の第1の端子9、第2の端子10の接触部9a、10aがそれに応じて弾性変形して、ハウジング本体6をリテーナ7に対して前記隙間Lの分だけ幅方向Xに向けて相対変位させることができる。また、このようにハウジング本体6がリテーナ7に対して相対変位しても、ハウジング本体6の脱落防止部6fがリテーナ7の凹部7eに挿入されているため、ハウジング本体6が高さ方向Zに変位してもリテーナ7から脱落することを抑制できる。
【0061】
また、挿入口6bから挿入された平型導体4は、まず先端部4aで屈曲部9a3、10a3に接触し、さらに奥まで挿入されることで正規の接触位置4bで接触する。この平型導体4の先端部4aから正規の接触位置4bまでの前後方向Yにおける距離は、平型導体4の可動代として確保されている。よって基板2やコネクタ1に振動が加えられると、平型導体4は正規の接触位置4bから先端部4aまでのいずれかの位置で屈曲部9a3、10a3に接触している状態で前後方向Yに沿って移動することができる。
さらに、挿入口6bの高さ方向Zにおける長さはコネクタ1の長さ方向Zにおける長さよりも長く形成されている。この挿入口6bの高さ方向Zにおいて、平型導体4の高さ方向Zにおける長さを超える部分は可動代として確保されている。よって平型導体4は挿入口6bに挿入されて端子部5と接触している状態であっても高さ方向Zに変位することができる。
これにより、振動が生じても平型導体4はコネクタ1に対して幅方向X、前後方向Y、高さ方向Zに相対変位することができる。よって振動が生じても基板2の導通接続を維持しやすいコネクタ1とすることができる。
【0062】
〔作用・効果の説明〕
すでに説明したものを除く本実施形態の作用・効果について説明する。
図33、37で示すように第1の端子9の接触部9aと第2の端子10の接触部10aは、前記高さ方向Zに沿って並列配置されている。
挿入口6bからハウジング本体6の収容孔6cに挿入された平型導体4は、第1の端子9の2つの接点アーム9a1、9a2と第2の端子10の2つの接点アーム10a1、10a2に対して接触する。そして、さらに平型導体4を挿入口6bに押し込むことで、平型導体4が対向する接点アーム9a1、9a2と接点アーム10a1、10a2の隙間を押し広げて屈曲部9a3、10a3と接触する。これにより、平型導体4が端子部5を介して基板2と導通接続する。複数の接点アーム9a1、9a2、10a1、10a2が順次接触して、最終的にはこれら複数の接点アームが平型導体4と接触することで、各接点アームの電流値を低下させて、大電流に対応させることができる。これにより、接点アームを複数設けずに電流を例えば1本の接点アームに集約する場合よりも、接点アームからの発熱量を減らすことができる。
【0063】
また、第1の端子9と第2の端子10のバネ部9c、10cをそれぞれ基部9b、10bから分岐させて設けている。これにより、バネ係数を低下させて弾性変形させやすくすることができる。また、一つの平型導体4から端子部5に流れる電流を4つのバネ部に流すことができ、各バネ部9c、10cを流れる電流値を低下させて、大電流に対応させることができる。これにより電流を例えば1本のバネ部に集約する場合よりも、バネ部からの発熱量を減らすことができる。
【0064】
また、分岐している第1の端子9のバネ部9cの内側に第2の端子10のバネ部10cを入り込ませることで、コネクタ1を幅方向Xに小型化することができる。
【0065】
さらに、ハウジング3が第1の端子9と第2の端子10を平板状の端子面が基板2の表面に対して垂直な縦方向に沿うように並列に保持することで、平板状の端子面を横並びで配置する場合よりも、各コネクタ1を幅方向Xに小型化しつつ、前記各端子9、10の断面積をより大きくすることができる。したがって、各端子9、10を低抵抗化することができる。
【0066】
また第1の端子9のバネ部9cと第2の端子10のバネ部10cの長さが略同程度となるように形成されている。こうすることで、第1の端子9と第2の端子10の抵抗値を同程度とし、各端子9、10の電流値を略同程度とすることができる。これにより、第1の端子9と第2の端子10の発熱を同程度に抑え、いずれか一方の端子だけが他方の端子よりも高温になり過ぎることを抑制できる。
【0067】
前述のとおり、第1の端子9の接触部9aは収容孔6cにおける突条部6c2よりも上側に挿入され、第2の端子10の接触部10aは収容孔6cにおける突条部6c2よりも下側に挿入される。よって各接触部9a、9aはコネクタ1の高さ方向Zに沿って配置される。これにより、それぞれの屈曲部9a3、10a3もまた前記高さ方向Zに沿って配置されている。
よって第1の端子9と第2の端子10をハウジング3に固定した状態で、第1の端子9の接点アーム9a1、9a2、第2の端子10の接点アーム10a1、10a2は高さ方向Zに沿って配置される。
こうすることで、第1の端子9の端子面と第2の端子10の端子面とを例えば基板2と平行に配置する場合と比較して、幅方向Xがコンパクトなコネクタ1とすることができる。
【0068】
本実施形態によるコネクタ1によれば端子部5の低抵抗化を実現して大電流用途に対応できるコネクタ1を実現できる。また大電流対応であり、フローティング構造を有するコネクタ1を実現できる。さらに低抵抗且つ低バネ係数の端子部5によるフローティング構造を省スペースで備えるコネクタ1を実現することができる。したがって車載機器等の大電流対応の要請が高い用途で、接続信頼性、接続安全性の高いコネクタ1を実現することができる。
【0069】
変形例:
前記本実施形態では、エッジコネクタであって、水平嵌合が可能なコネクタ1を示した。しかし、基板2の端以外の位置に実装するコネクタ1とすることもできる。また、垂直嵌合が可能なコネクタ1とすることもできる。これにより、より基板2への実装構造の自由度を上げることができる。
【0070】
前記本実施形態では、係止部6eがハウジング本体6に設けられ、係止孔7dがリテーナ7に形成される例を示した。しかし、反対に係止部6eをリテーナ7に設け、係止孔7dをハウジング本体6に形成することもできる。また、前記本実施形態では、脱落防止部6fをハウジング本体6に設け、凹部7eがリテーナ7に形成される例を示した。これに対して脱落防止部6fをリテーナ7に設け、凹部7eをハウジング本体6に形成しても良い。
【0071】
前記本実施形態では、コネクタ1が3つの端子部5を備えており、それぞれの端子部5に対して平型導体4が1つずつ接続する例を示した。そして、コネクタ1のハウジング本体6が挿入口6bと収容孔6cを3つずつ有し、リテーナ7が収容空間7cと挿通孔7bを3つずつ有する例を示した。しかし、コネクタ1が接続する平型導体4の数に応じてコネクタ1が備える端子部5の数を増減することができる。また、各平型導体4が導通接続する端子部5の数も1つに限らず増減することができる。そして、平型導体4の数や端子部5の数に応じてハウジング本体6が有する挿入口6bと収容孔6cの数や、リテーナ7が有する収容空間7cと挿通孔7bの数も増減することができる。
【0072】
また、前記本実施形態では、第1の端子9および第2の端子10の各接触部9a、10aがアーム状でなる接点アーム9a1、9a2、又は10a1、10a2をそれぞれ1対ずつ有し、計4本の接点アームを有する例を示した。これに対して接点アームを2本だけ有していたり、3対以上有していても良い。接点アームを2本だけ有し、より板面方向に幅広の接点アームを有する場合には、平型導体4との接触面積を増やすことができ、より大電流に対応可能なコネクタ1とすることができる。また、例えばより細幅の接点アームを3対以上有している場合には各接点アームに分流する電流値を小さくすることで、発熱を減少させることができる。そして、各接点アームを平型導体4の表面形状に追従させやすくなるため、接点アームと平型導体4とを確実に接触させることができる。