特許第6205293号(P6205293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6205293-キャップ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205293
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   B65D47/20 111
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-36829(P2014-36829)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-160633(P2015-160633A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】井田 辰春
(72)【発明者】
【氏名】宮入 圭介
【審査官】 佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−235941(JP,A)
【文献】 特開2003−072816(JP,A)
【文献】 特開2004−256148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 39/00 − 55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体内に連通する連通孔が形成されるとともに、前記連通孔を開閉する弁体を備えるキャップであって、
前記弁体の外周縁と前記連通孔の内周縁とが弾性ヒンジ部を介して連結され、前記弾性ヒンジ部が弾性変形することで、前記弁体が前記連通孔を開閉し、
前記弁体の外周縁のうち、前記弾性ヒンジ部との接続部分を除いた部分が全域にわたって破断可能な第1弱化部を介して、前記連通孔の内周縁に連結され
前記弁体は、
前記連通孔における径方向の中央部に位置する弁本体と、
周方向に延びるとともに、一端が前記弁本体の外周縁に連結され、かつ他端が前記弾性ヒンジ部に連結された弾性連結片と、を備え、
前記弾性連結片の外縁のうち、径方向の外側を向く端縁が、前記第1弱化部を介して前記連通孔の内周縁に連結され、かつ径方向の内側を向く端縁が、破断可能な第2弱化部を介して、前記弁本体の外周縁に連結されていることを特徴とするキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に示されるような、容器本体内に連通する連通孔が形成された弁座部材と、連通孔の開口周縁部上に配置されて連通孔を開閉する弁体を有する弁部材と、を備えるキャップが知られている。
このキャップでは、弁体が、弁座部材における連通孔の開口周縁部上に配置されるため、弁体の、連通孔に対する容器本体の外側に向けた移動は許容される一方、容器本体の内側に向けた移動は抑えられ、逆止弁として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−133116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のキャップでは、部品点数を削減し低コスト化を図ることに改善の余地があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、容器本体を倒したときに内容物が連通孔から外側に漏出するのを抑えつつ、低コスト化を図ることができるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のキャップは、容器本体内に連通する連通孔が形成されるとともに、前記連通孔を開閉する弁体を備えるキャップであって、前記弁体の外周縁と前記連通孔の内周縁とが弾性ヒンジ部を介して連結され、前記弾性ヒンジ部が弾性変形することで、前記弁体が前記連通孔を開閉し、前記弁体の外周縁のうち、前記弾性ヒンジ部との接続部分を除いた部分が全域にわたって破断可能な第1弱化部を介して、前記連通孔の内周縁に連結され、前記弁体は、前記連通孔における径方向の中央部に位置する弁本体と、周方向に延びるとともに、一端が前記弁本体の外周縁に連結され、かつ他端が前記弾性ヒンジ部に連結された弾性連結片と、を備え、前記弾性連結片の外縁のうち、径方向の外側を向く端縁が、前記第1弱化部を介して前記連通孔の内周縁に連結され、かつ径方向の内側を向く端縁が、破断可能な第2弱化部を介して、前記弁本体の外周縁に連結されていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、弁体の外周縁と連通孔の内周縁とが、弾性ヒンジ部との接続部分を除いた全域にわたって第1弱化部を介して連結されているので、第1弱化部を破断した後に、弁体の外周縁部が、例えば、第1弱化部の破断時に形成されたバリ部分上に載ったり、前記バリ部分に引っ掛かったりすることとなり、弁体の、連通孔に対する容器本体の外側に向けた移動は許容される一方、容器本体の内側に向けた移動は抑えることが可能になり、逆止弁として機能させることができる。これにより、キャップ本体に、弁体の、容器本体側の下面を支持する弁座を設けなくても、弁体を逆止弁として機能させることが可能になり、部品点数を削減し低コスト化を図ることができる。
また、第1弱化部の破断後に、弁体の外周縁部が、前述のように前記バリ部分上に載る等することから、弁体と連通孔との間に径方向の隙間が形成されるのを防ぐことが可能になり、第1弱化部を破断した後に、容器本体を倒しても、内容物が連通孔から漏出するのを抑制することができる。
【0009】
また、第1弱化部のみならず、第2弱化部も備えているので、開封後に、弁体が載ったり引っ掛かったりするバリ部分を多く形成することが可能になり、弁体を逆止弁として機能させること、並びに、内容物の不意の漏出を抑制することの双方を確実に実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、容器本体を倒したときに内容物が連通孔から外側に漏出するのを抑えつつ、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る一実施形態として示したキャップの縦断面図である。
図2図1のキャップの要部を示す上面図である。
図3】本発明に係る他の実施形態として示したキャップの要部を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るキャップ1について説明する。
本実施形態のキャップ1は、図1及び図2に示されるように、容器本体Wの口部に装着され、かつ内容物の吐出孔11が形成されたキャップ本体12と、容器本体W内と吐出孔11とを連通する連通孔13が形成されるとともに、連通孔13を開閉する弁体14が備えられた中栓部材15と、吐出孔11を開閉する蓋体16と、を備えている。
【0013】
キャップ本体12は有頂筒状に形成され、その天壁部21に、内側が容器本体W内に連通し、かつ上方に向けて突出する吐出筒22が形成されている。吐出筒22の上端開口が前記吐出孔11となっている。なお、天壁部21は、容器本体Wの口部の上端開口縁上に配置される。キャップ本体12の周壁部23に、容器本体Wの口部に螺着される雌ねじ部が形成されている。
蓋体16は、ヒンジ部24を介してキャップ本体12に連結されており、蓋体16をキャップ本体12に対してヒンジ部24回りに上下に回動させることにより、吐出孔11が開閉される。蓋体16には、下方に向けて突出し、吐出孔11に着脱自在に嵌合されるシール筒16aが形成されている。なお、蓋体16は、キャップ本体12の天壁部21の上面を全域にわたって覆っている。
【0014】
中栓部材15は、キャップ本体12の吐出筒22内に嵌合され、かつ内側が前記連通孔13とされた装着筒部31と、前記弁体14と、を備え、弁体14の外周縁と、連通孔13の内周縁とが弾性ヒンジ部32を介して連結され、弾性ヒンジ部32が弾性変形することで、弁体14が連通孔13を開閉する。
以下、連通孔13の平面視において、その中央を通り上下方向に延びる軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
そして、本実施形態では、弁体14の外周縁のうち、弾性ヒンジ部32との接続部分を除いた部分が全域にわたって破断可能な第1弱化部33を介して、連通孔13の内周縁に連結されている。
図示の例では、弾性ヒンジ部32が、周方向に間隔をあけて複数配設されており、第1弱化部33が、弾性ヒンジ部32を介して周方向に複数連ねられて配置された構成となっている。
【0015】
弁体14は、連通孔13における径方向の中央部に位置する弁本体34と、周方向に延びるとともに、一端35aが弁本体34の外周縁に連結され、かつ他端35bが弾性ヒンジ部32に連結された弾性連結片35と、を備えている。そして、弾性連結片35の外縁のうち、径方向の外側を向く端縁35cが、第1弱化部33を介して連通孔13の内周縁に連結され、かつ径方向の内側を向く端縁35dが、破断可能な第2弱化部36を介して、弁本体34の外周縁に連結されている。
【0016】
また、第2弱化部36は、弁本体34の外周縁のうち、弾性連結片35の一端35aとの接続部分を除いた部分に全域にわたって連結されている。
ここで、弾性連結片35は、周方向に間隔をあけて複数配設されており、第2弱化部36が、弾性連結片35の一端35aを介して周方向に複数連ねられて配置された構成となっている。
そして、それぞれの第1弱化部33及び第2弱化部36が、図2に示されるような上面視において、弾性連結片35を介して径方向で互いに対向している。
以下、前記上面視において、周方向のうち、弾性連結片35が他端35b側から一端35a側に向かう方向を一方側といい、その逆を他方側という。
【0017】
第2弱化部36における他方側の周端縁36aと、この第2弱化部36に弾性連結片35を径方向に挟んで対向する第1弱化部33に対して、周方向の他方側に隣接する他の第1弱化部33における一方側の周端縁33aと、が破断可能な第3弱化部37を介して連結されている。第3弱化部37は、周方向の一方側から他方側に向かうに従い漸次、径方向の内側から外側に向けて延びている。また、第3弱化部37は、弾性連結片35の他端35b、及び弾性ヒンジ部32と、この弾性連結片35に対して、周方向の他方側に隣接する他の弾性連結片35における一端35aと、を連結している。
【0018】
以上の弁体14、第1弱化部33、第2弱化部36、及び第3弱化部37により、連通孔13が密閉されている。
また、第1弱化部33、第2弱化部36、及び第3弱化部37は、それぞれの延在方向に直交する縦断面視で、図1に示されるように、上方から下方に向かうに従い漸次、幅が狭くなるV字状を呈する溝となっている。
そして、第1弱化部33、第2弱化部36、及び第3弱化部37は、中栓部材15をキャップ本体12に装着する前に、弁体14を下方から上方に突き上げ、弁体14を装着筒部31に対して上昇させることで破断される。
【0019】
以上説明したように、本実施形態によるキャップ1によれば、弁体14の外周縁と連通孔13の内周縁とが、弾性ヒンジ部32との接続部分を除いた全域にわたって第1弱化部33を介して連結されているので、第1弱化部33を破断した後に、弁体14の外周縁部が、例えば、第1弱化部33の破断時に形成されたバリ部分上に載ったり、前記バリ部分に引っ掛かったりすることとなり、弁体14の、連通孔13に対する容器本体Wの外側に向けた移動は許容される一方、容器本体Wの内側に向けた移動は抑えることが可能になり、逆止弁として機能させることができる。これにより、キャップ1に、弁体14の、容器本体W側の下面を支持する弁座を設けなくても、弁体14を逆止弁として機能させることが可能になり、部品点数を削減し低コスト化を図ることができる。
また、第1弱化部33の破断後に、弁体14の外周縁部が、前述のように前記バリ部分上に載る等することから、弁体14と連通孔13との間に径方向の隙間が形成されるのを防ぐことが可能になり、第1弱化部33を破断した後に、容器本体Wを倒しても、内容物が連通孔13から漏出するのを抑制することができる。
【0020】
さらに、第1弱化部33のみならず、第2弱化部36も備えているので、開封後に、弁体14が載ったり引っ掛かったりするバリ部分を多く形成することが可能になり、弁体14を逆止弁として機能させること、並びに、内容物の不意の漏出を抑制することの双方を確実に実現することができる。
また、第1弱化部33、第2弱化部36、及び第3弱化部37を破断すると、弁体14が、弁本体34及び複数の弾性連結片35を備える、いわゆる3点弁となるので、弁体14により連通孔13の上方を覆わせた状態で、容器本体W内の内容物が連通孔13を通過することとなる。したがって、容器本体W内の内容物が、粘度の低い液体であっても、内容物の吐出孔11に向けた流れの勢いを適度に抑えることができる。
【0021】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0022】
例えば 前記実施形態では、弾性ヒンジ部32、及び弾性連結片35が複数ずつ配設された構成を示したが、1つずつ配設されてもよい。
また、前記実施形態において、第3弱化部37は形成しなくてもよい。
また、前記実施形態では、弁体14が、弁本体34及び弾性連結片35を備え、かつ第2弱化部36、及び第3弱化部37が形成された構成を示したが、例えば図3に示されるように、弁体14が弁本体34のみを備え、第2弱化部36、及び第3弱化部37が形成されておらず、弁本体34の外周縁のうち、一部が、1つの弾性ヒンジ部32を介して、連通孔13の内周縁に連結され、残りの全てが破断可能な第1弱化部33を介して、連通孔13の内周縁に連結された構成を採用してもよい。
この構成においても、図1及び図2で示した実施の形態と同様の作用効果を奏する。さらに、図3に示される構成においては、弁体14が弾性ヒンジ部32回りに上方に回動した際に、連通孔13を広く開口させやすくなり、例えば高粘度の内容物や固形物が混入された内容物であっても、容器本体W内から連通孔13を容易に通過させることができる。
また、キャップ本体12及び中栓部材15を一体に形成してもよい。
また、弁体14に容器本体Wの内側から外側に向けた力を加えて第1弱化部33等を破断するタイミングは、前記実施形態に限らず適宜変更してもよい。
例えば、中栓部材15を成形する金型内でその型開き前であってもよいし、中栓部材15をキャップ本体12に装着した後、キャップ1を容器本体Wに装着する前であってもよい。さらに、容器本体Wに内容物を充填してキャップ1を装着した後であってもよい。この場合、容器本体Wを弾性変形させる等してその内圧を高めることで、第1弱化部33等を破断してもよい。
【0023】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 キャップ
13 連通孔
14 弁体
32 弾性ヒンジ部
33 第1弱化部
34 弁本体
35 弾性連結片
35a 一端
35b 他端
35c、35d 端縁
36 第2弱化部
W 容器本体
図1
図2
図3