(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電源周波数を、前記伝送特性の二つのピーク帯域のうち高周波側に形成されるピーク帯域に対応する周波数帯域に設定した際における、前記給電共振器と前記受電共振器とが対向配置された状態における無線電力伝送装置の伝送時入力インピーダンス、前記給電共振器の近辺に金属異物が配置された状態における無線電力伝送装置の金属異物配置時入力インピーダンス、及び、前記給電モジュールの待機時入力インピーダンスの関係が、待機時入力インピーダンス>伝送時入力インピーダンスの条件を満たし、金属異物配置時入力インピーダンス>伝送時入力インピーダンスの条件を満たし、
金属異物配置時入力インピーダンス≧待機時入力インピーダンスの場合は、給電モジュールと受電モジュールとの間で無線電力供給が行われている時の伝送時入力電流値と、給電モジュールと受電モジュールとの間で無線電力供給が行われておらず、給電モジュールが電力伝送に対して待機状態にある時の待機時入力電流値との間に前記閾値を設け、
待機時入力インピーダンス>金属異物配置時入力インピーダンスの場合は、給電モジュールと受電モジュールとの間で無線電力供給が行われている時の伝送時入力電流値と、給電モジュールが有する給電共振器の近辺に、金属異物が配置された時の金属異物配置時入力電流値との間に前記閾値を設けることを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明である無線電力伝送に用いる無線電力伝送装置1について説明する。
【0020】
(実施形態)
本実施形態では、
図1に示すように、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G1を形成可能な(詳細は後述)、給電共振器22を備えた給電モジュール2及び受電共振器32を備えた受電モジュール3を主な構成要素とする無線電力伝送装置1を、給電モジュール2を搭載した充電器101、及び、受電モジュール3を搭載した無線式ヘッドセット102を例に説明する。
【0021】
(充電器101及び無線式ヘッドセット102の構成)
充電器101は、
図1に示すように、給電コイル21及び給電共振器22を有した給電モジュール2を備えている。また、無線式ヘッドセット102は、受電コイル31及び受電共振器32を有した受電モジュール3を備えている。そして、給電モジュール2の給電コイル21には、電源回路5を介してAC/DC電源6が接続されている。また、受電モジュール3の受電コイル31には、受電された電力を整流化する安定回路7及び過充電を防止する充電回路8を介して二次電池9が接続されている。そして、安定回路7、充電回路8及び二次電池9は、受電共振器32の内周側に位置するように配置されている。詳細は後述するが、これら安定回路7、充電回路8及び二次電池9が配置された、受電共振器32の内周側には、充電時に、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G1が形成される。なお、本実施形態における安定回路7、充電回路8、及び、二次電池9は、
図1に示すように、最終的な電力の給電先となる被給電機器10であり、被給電機器10は、受電モジュール3に接続された電力の給電先の機器全体の総称である。
【0022】
給電コイル21は、AC/DC電源6から電源回路5を介して得られた電力を電磁誘導によって給電共振器22に供給する役割を果たす。この給電コイル21は、
図2に示すように、抵抗器R
1、コイルL
1、及び、コンデンサC
1を要素とするRLC回路を構成している。なお、コイルL
1部分には、ソレノイドコイルを使用している。また、給電コイル21を構成する回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
1としており、本実施形態では、給電コイル21を構成する抵抗器R
1、コイルL
1、及び、コンデンサC
1を要素とするRLC回路(回路素子)が有する合計のインピーダンスをZ
1とする。また、給電コイル21に流れる電流をI
1する。なお、本実施形態では、給電コイル21にRLC回路を例に挙げて説明しているが、RL回路の構成としてもよい。
【0023】
受電コイル31は、給電共振器22から受電共振器32に磁界エネルギーとして伝送された電力を電磁誘導によって受電し、安定回路7及び充電回路8を介して二次電池9に供給する役割を果たす。この受電コイル31は、給電コイル21同様に、
図2に示すように、抵抗器R
4、コイルL
4、及び、コンデンサC
4を要素とするRLC回路を構成している。なお、コイルL
4部分には、ソレノイドコイルを使用している。また、受電コイル31を構成する回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
4としており、本実施形態では、受電コイル31を構成する抵抗器R
4、コイルL
4、及び、コンデンサC
4を要素とするRLC回路(回路素子)が有する合計のインピーダンスをZ
4とする。また、受電コイル31に接続された被給電機器10(安定回路7、充電回路8及び二次電池9)の合計のインピーダンスをZ
Lにしている。また、受電コイル31に流れる電流をI
4にしている。なお、
図2に示すように、受電コイル31に接続された被給電機器10(安定回路7、充電回路8及び二次電池9)の各負荷インピーダンスを合わせたものを便宜的に抵抗器R
L(Z
Lに相当)として説明している。また、本実施形態では、受電コイル31にRLC回路を例に挙げて説明しているが、RL回路の構成としてもよい。
【0024】
給電共振器22は、
図2に示すように、抵抗器R
2、コイルL
2、及び、コンデンサC
2を要素とするRLC回路を構成している。また、受電共振器32は、
図2に示すように、抵抗器R
3、コイルL
3、及び、コンデンサC
3を要素とするRLC回路を構成している。そして、給電共振器22及び受電共振器32は、それぞれ共振回路となり、磁界共鳴状態を創出する役割を果たす。ここで、磁界共鳴状態(共振現象)とは、2つ以上のコイルが共振周波数帯域において共振することをいう。また、給電共振器22を構成する回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
2とし、本実施形態では、給電共振器22を構成する、抵抗器R
2、コイルL
2、及び、コンデンサC
2を要素とするRLC回路(回路素子)が有する合計のインピーダンスをZ
2とする。また、受電共振器32を構成する回路素子が有する合計のインピーダンスをZ
3とし、本実施形態では、受電共振器32を構成する、抵抗器R
3、コイルL
3、及び、コンデンサC
3を要素とするRLC回路(回路素子)が有する合計のインピーダンスをZ
3とする。また、給電共振器22に流れる電流をI
2とし、受電共振器32に流れる電流をI
3とする。
【0025】
また、給電共振器22、及び、受電共振器32における共振回路としてのRLC回路では、インダクタンスをL、コンデンサ容量をCとすると、(式1)によって定まる周波数が共振周波数となる。
【数1】
・・・(式1)
【0026】
また、給電共振器22及び受電共振器32には、ソレノイドコイルを使用している。また、給電共振器22及び受電共振器32における共振周波数は一致させている。なお、給電共振器22及び受電共振器32は、コイルを使用した共振器であれば、スパイラル型やソレノイド型などのコイルであってもよい。
【0027】
また、給電コイル21と給電共振器22との間の距離をd12とし、給電共振器22と受電共振器32との間の距離をd23とし、受電共振器32と受電コイル31との間の距離をd34としている(
図4参照)。
【0028】
また、
図2に示すように、給電コイル21のコイルL
1と給電共振器22のコイルL
2との間の相互インダクタンスをM
12、給電共振器22のコイルL
2と受電共振器32のコイルL
3との間の相互インダクタンスをM
23、受電共振器32のコイルL
3と受電コイル31のコイルL
4との間の相互インダクタンスをM
34としている。また、給電モジュール2及び受電モジュール3において、コイルL
1とコイルL
2との間の結合係数をk
12と表記し、コイルL
2とコイルL
3との間の結合係数をk
23と表記し、コイルL
3とコイルL
4との間の結合係数をk
34と表記する。
【0029】
上記無線電力伝送装置1(給電モジュール2及び受電モジュール3)によれば、給電共振器22と受電共振器32との間に磁界共鳴状態(共振現象)を創出することができる。給電共振器22及び受電共振器32が共振した状態で磁界共鳴状態が創出されると、給電共振器22から受電共振器32に電力を磁界エネルギーとして伝送することが可能となり、給電モジュール2を備えた充電器101から、受電モジュール3を備えた無線式ヘッドセット102に電力が無線伝送され、無線式ヘッドセット102内に設けられた二次電池9が充電される。
【0030】
(磁界空間の形成)
本実施形態の無線電力伝送装置1では、給電モジュール2及び受電モジュール3の内部・周辺に発生する磁界の強度を抑制するために、磁界強度を弱めた磁界空間G1又は磁界空間G2を形成することができる。具体的には、
図1〜
図6に示すように、給電モジュール2の給電共振器22から受電モジュール3の受電共振器32に共振現象を利用した電力供給をする際に、給電共振器22及び受電共振器32の近辺に、周辺の磁界強度よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G1又は磁界空間G2を形成することができる。形成した磁界空間G1又は磁界空間G2に、電子機器などを配置すれば、磁場の影響を軽減することが可能となる。
【0031】
磁界空間G1・G2を形成するためには、給電共振器22及び受電共振器32における、電源周波数に対する伝送特性『S21』を示すグラフが、二つのピーク帯域を有するように設定(設計)し、給電モジュールに供給する電力の電源周波数を、二つのピーク帯域の何れかに対応する電源周波数に設定することにより実現する。本実施形態では、
図1〜
図6に示すように、給電共振器22と受電共振器32との間に磁界空間G1を形成するために、電源周波数を、二つのピーク帯域のうち高周波側に形成されるピーク帯域に対応する電源周波数に設定する。なお、給電共振器22及び受電共振器32の外側に、磁界空間G2を形成したい場合は(
図3参照)、電源周波数を、二つのピーク帯域のうち低周波側に形成されるピーク帯域に対応する電源周波数に設定する。
【0032】
ここで、伝送特性『S21』とは、無線電力伝送装置1(給電モジュール2及び受電モジュール3)をネットワークアナライザ110(例えば、アジレント・テクノロジー株式会社製のE5061Bなど、
図3参照)に接続して計測される信号を表しており、デシベル表示され、数値が大きいほど電力伝送効率が高いことを意味する。また、電力伝送効率とは、ネットワークアナライザ110に無線電力伝送装置1を接続した状態で、出力端子111から給電モジュール2に供給される電力に対する入力端子112に出力される電力の比率のことをいう。
【0033】
具体的には、ネットワークアナライザ110を使用して、給電共振器22及び受電共振器32における、電源周波数に対する伝送特性『S21』を、給電共振器22に供給する交流電力の電源周波数を変えながら解析する。この際、
図4のグラフに示すように、横軸を出力端子111から出力される交流電力の電源周波数とし、縦軸を伝送特性『S21』として解析する。ここで、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』を測定するにあたり、給電コイル21と給電共振器22との間の結合が強いと、給電共振器22と受電共振器32との間の結合状態に影響を与えてしまい、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』の正確な測定ができないため、給電コイル21と給電共振器22との間の距離d12は、給電共振器22が十分に励振でき、給電共振器22による磁界を生成させ、かつ、給電コイル21と給電共振器22とができるだけ結合しない距離に保持する必要がある。また、同様の理由で受電共振器32と受電コイル31との間の距離d34も、受電共振器32が十分に励振でき、受電共振器32による磁界を生成させ、かつ、受電共振器32と受電コイル31とができるだけ結合しない距離に保持する必要がある。そして、解析された給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』の解析波形が、
図4に示すように、低周波数側に形成されるピーク帯域(f(Low P))と高周波数側に形成されるピーク帯域(f(High P))との二つのピーク帯域を有するように設計される(実線150参照)。
【0034】
なお、上記のように給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』の解析波形が、低周波側と高周波側とにピークが分離して二つのピーク帯域を有するには、給電共振器22と受電共振器32との間の距離d23を調整したり、給電共振器22のRLC回路のR
2、L
2、C
2、受電共振器32のRLC回路のR
3、L
3、C
3における抵抗値、インダクタンス、コンデンサ容量、結合係数k
23などの給電共振器22及び受電共振器32を構成する変更可能なパラメータを調整したりすることにより実現される。
【0035】
そして、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』の解析波形が、二つのピーク帯域を有する場合に、高周波数側に形成されるピーク帯域(f(High P))に、供給する交流電力の電源周波数を設定した場合、給電共振器22及び受電共振器32が逆位相で共振状態となり、
図5に示すように、給電共振器22に流れる電流の向き(22A)と受電共振器32に流れる電流の向き(32A)とが逆向きになる。その結果、
図5の磁界ベクトル図に示すように、給電共振器22の内周側に発生する磁界と受電共振器32の内周側に発生する磁界とが打ち消し合うことにより、給電共振器22及び受電共振器32の内周側に、磁界による影響が低減されて、給電共振器22及び受電共振器32の内周側以外の磁界強度(例えば、給電共振器22及び受電共振器32の外周側の磁界強度)よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G1を形成することができる。ここで、給電共振器22に流れる電流の向きと受電共振器32に流れる電流の向きとが逆向きとなる共振状態を逆相共振モードと呼ぶことにする。
【0036】
一方、給電共振器22及び受電共振器32における伝送特性『S21』の解析波形が、二つのピーク帯域を有する場合に、低周波数側に形成されるピーク帯域(f(Low P))に、供給する交流電力の電源周波数を設定した場合、給電共振器22及び受電共振器32が同位相で共振状態となり、
図6に示すように、給電共振器22に流れる電流の向き(22A)と受電共振器32に流れる電流の向き(32A)とが同じ向きになる。その結果、
図6の磁界ベクトル図に示すように、給電共振器22の外周側に発生する磁界と受電共振器32の外周側に発生する磁界とが打ち消し合うことにより、給電共振器22及び受電共振器32の外周側に、磁界による影響が低減されて、給電共振器22及び受電共振器32の外周側以外の磁界強度(例えば、給電共振器22及び受電共振器32の内周側の磁界強度)よりも小さな磁界強度を有する磁界空間G2を形成することができる。ここで、給電共振器22に流れる電流の向きと受電共振器32に流れる電流の向きとが同じ向きとなる共振状態を同相共振モードと呼ぶことにする。
【0037】
なお、無線電力伝送装置1に関して、給電コイル21と給電共振器22を含む給電モジュール2、及び、受電共振器32と受電コイル31とを含む受電モジュール3における、電源周波数に対する伝送特性『S21』を示すグラフが、
図7に示すように単峰性の性質を有するように設定するのが一般的である。単峰性とは、電源周波数に対する伝送特性『S21』のピークが一つで、そのピークが共振周波数帯域(fo)において現れるものをいう(
図7の実線151参照)。
【0038】
単峰性の性質を有するように設定すると、給電モジュール2及び受電モジュール3の伝送特性『S21』は、
図7の破線151に示すように、電源周波数が共振周波数f
0の帯域で最大化する(電力伝送効率が最大化する)。このため、無線伝送技術における電力伝送効率を最大化するために、給電モジュール2及び受電モジュール3の伝送特性『S21』が単峰性の性質を有するように設定し、電源周波数を共振周波数f
0に設定して使用されるのが一般的である。
【0039】
(待機状態、及び、金属異物近接時における問題)
給電モジュール2と受電モジュール3とが給電可能領域内にない場合(待機状態)、給電モジュール2では、受電モジュール3が給電可能領域に近接配置されるのに備えて常に電力が供給され続け、無駄に電力が消費されてしまう問題がある(待機電力が大きくなる)。
更に、給電モジュール2と受電モジュール3の間、若しくは、給電モジュール2の周辺に、金属異物(例えば、硬貨、釘、クリップ、鍵など)が置かれたりすると、金属異物が磁場の影響を受け、渦電流が引き起こされてしまう。そして、渦電流が引き起こされると金属異物や給電モジュール2に過剰な熱が生じてしまう場合がある。
【0040】
そこで、本実施形態では、給電モジュール2が電力伝送に対して待機しているときの給電モジュール2の入力インピーダンスZ
in(W)(待機状態:Waiting、待機時入力インピーダンスに相当)が、正常に充電されているときの無線電力伝送装置1の入力インピーダンスZ
in(T)(正常充電状態:Transmission、伝送時入力インピーダンスに相当)よりも高い値を示すようにすれば、一定電圧の下で、待機状態における電流値は、正常充電状態における電流値よりも低くなり、待機状態における待機電力(消費電力)を抑制することができることに着目している。
また、給電モジュール2の近辺に金属異物がある状態における金属異物を含めた給電モジュール2の入力インピーダンスZ
in(A)(異常状態: Abnormality、金属異物配置時入力インピーダンスに相当)が、正常に充電されているときの無線電力伝送装置1の入力インピーダンスZ
in(T)(正常充電状態:Transmission、伝送時入力インピーダンスに相当)よりも高い値を示すようにすれば、一定電圧の下で、異常状態における電流値は、正常充電状態における電流値よりも低くなり、異常状態における消費電力が下がるとともに、金属異物を含めた給電モジュール2に発生する過剰な熱を抑制することができることに着目している。
【0041】
なお、入力インピーダンスZ
in(W)(待機状態:Waiting、待機時入力インピーダンス)、及び、入力インピーダンスZ
in(A)(異常状態: Abnormality、金属異物配置時入力インピーダンス)は、広義では、無線電力供給が行われていない時の非伝送時入力インピーダンスのことである。
【0042】
以下では、無線電力伝送装置1を使用して、給電モジュール2の近辺に金属異物がある状態における金属異物を含めた給電モジュール2の入力インピーダンスZ
in(A)、正常に充電されているときの無線電力伝送装置1の入力インピーダンスZ
in(T)、及び、給電モジュール2が電力伝送に対して待機しているときの給電モジュール2の入力インピーダンスZ
in(W)を測定し、考察する。
【0043】
(測定実験)
測定実験で使用する無線電力伝送装置1では、給電コイル21は、抵抗器R
1、コイルL
1、コンデンサC
1を要素とするRLC回路を構成しており、コイルL
1部分は、線径0.14mmの銅線材を使用し、コイル径を11mmφに設定している。また、給電共振器22は、抵抗器R
2、コイルL
2、及び、コンデンサC
2を要素とするRLC回路を構成しており、コイルL
2部分は、線径0.2mmの銅線材を使用し、コイル径11mmφのソレノイド型のコイルを使用している。また、受電共振器32は、抵抗器R
3、コイルL
3、及び、コンデンサC
3を要素とするRLC回路を構成しており、コイルL
3部分は、線径0.1mmの銅線材を使用し、コイル径8mmφのソレノイド型のコイルを使用している。また、受電コイル31は、抵抗器R
4、コイルL
4、コンデンサC
4を要素とするRLC回路を構成しており、コイルL
4部分は、線径0.1mmの銅線材を使用し、コイル径を8mmφに設定している。また、給電コイル21及び給電共振器22の内周側に、形成される磁界空間G1の磁界強度をより小さくするため、厚み300μmの円筒状の磁性材を配置している。同様に、受電共振器32及び受電コイル31の内周側にも、厚み300μmの円筒状の磁性材を配置している。そして、測定実験1〜4で使用する無線電力伝送装置1におけるR
1、R
2、R
3、R
4の値をそれぞれ、1.5Ω、2.6Ω、2.1Ω、0.6Ωに設定した。また、L
1、L
2、L
3、L
4の値をそれぞれ、13μH、18μH、7μH、2.5μHに設定した。また、C
1、C
2、C
3、C
4の値をそれぞれ、2nF、1.4nF、3.6nF、10nFに設定した。また、給電共振器22及び受電共振器32における共振周波数は1MHzである。また、結合係数k
12は、0.32、結合係数k
23は、0.15、結合係数k
34は、0.93である。
【0044】
測定実験では、
図8に示すように、正常に無線伝送されているときの無線電力伝送装置1の入力インピーダンスZ
in(T)、
図9に示すように、給電モジュール2が無線電力伝送に対して待機しているときの給電モジュール2の入力インピーダンスZ
in(W)、及び、
図10に示すように、給電モジュール2の近辺に金属異物がある状態における金属異物を含めた給電モジュール2の入力インピーダンスZ
in(A)を、インピーダンスアナライザ(本実施形態では、アジレント・テクノロジー株式会社製のE5061Bを使用)によって測定している。また、測定実験では、金属異物にアルミを使用して測定している。なお、測定実験では、安定回路7、充電回路8、及び、二次電池9に代えて、100Ωの抵抗器(R
L)を使用している。また、金属異物を含めた給電モジュール2の入力インピーダンスZ
in(A)を測定する際には、
図10に示す、給電共振器22と金属異物60との間の距離d23が、3mmの場合、及び、2mmの場合について測定している。また、共振周波数f
0は、1MHzであり、同相共振モードにおけるピーク帯域の周波数(f(Low P))は、0.94MHzであり、逆相共振モードにおけるピーク帯域の周波数(f(High P))は、1.05MHzである。
【0045】
(測定実験)
測定実験では、入力インピーダンスZ
in(T)、及び、入力インピーダンスZ
in(W)、並びに、金属異物60を、直径12mmφ、厚み0.5mmの円柱形状のアルミ片Aにした場合の入力インピーダンスZ
in(A)を、給電共振器22と金属異物60との間の距離d23が、3mmの場合について測定した。その測定結果を
図11に示す。
【0046】
図11の測定結果(アルミ片A、d23=3mm)を見ると、入力インピーダンスZ
in(W)>入力インピーダンスZ
in(T)の関係、及び、入力インピーダンスZ
in(A)(アルミ片A)>入力インピーダンスZ
in(T)の関係を満たす条件帯域は、0.955MHz〜1.06MHzの範囲に形成されていることが分かる。これによれば、電源周波数を、条件帯域(0.955MHz〜1.06MHz)の範囲に設定することにより、一定電圧の下で、待機状態における電流値は、正常充電状態における電流値よりも低くなり、待機状態における待機電力(消費電力)を抑制することができ、また、一定電圧の下で、異常状態における電流値は、正常充電状態における電流値よりも低くなり、異常状態における消費電力が下がるとともに、金属異物を含めた給電モジュール2に発生する過剰な熱を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態では、上述したように磁界空間G1・G2を形成可能としている。この場合、上記条件帯域(0.955MHz〜1.06MHz)の範囲内であり、且つ、磁界空間の形成が可能な周波数は、逆相共振モードにおける周波数帯域(f(High P))であることがわかる(同相共振モードにおける周波数帯域(f(Low P))は、上記条件帯域の範囲外である)。
【0048】
(各入力インピーダンスZ
in(A)、Z
in(W)、Z
in(T)の設計式)
上記を踏まえて、本発明では、電源周波数を逆相共振モードにおける周波数帯域(f(High P))に設定した際に、入力インピーダンスZ
in(W)>入力インピーダンスZ
in(T)の関係、及び、入力インピーダンスZ
in(A)(アルミ片A)>入力インピーダンスZ
in(T)の関係を満たすように設計される。
【0049】
具体的には、正常充電状態における入力インピーダンスZ
in(T)を求めるために、被給電機器10を含む無線電力伝送装置1の構成を等価回路によって表すと
図8に示すようになる。そして、
図9の等価回路より、入力インピーダンスZ
in(T)は、(式2)のように表記することができる。
【数2】
・・・(式2)
【0050】
そして、本実施形態における無線電力伝送装置1の給電コイル21、給電共振器22、受電共振器32、及び、受電コイル31におけるインピーダンスZ
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
Lは、それぞれ(式3)のように表記することができる。
【数3】
・・・(式3)
【0051】
次に、(式2)に(式3)を導入すると、(式4)のようになる。
【数4】
・・・(式4)
【0052】
また、待機状態における入力インピーダンスZ
in(W)を求めるために、給電モジュール2の構成を等価回路によって表すと
図9に示すようになる。そして、
図9の等価回路より、入力インピーダンスZ
in(W)は、(式5)のように表記することができる。
【数5】
・・・(式5)
【0053】
また、給電モジュール2の近辺に金属異物60がある状態における金属異物60を含めた給電モジュール2の入力インピーダンスZ
in(A)を求めるために、金属異物60を含めた給電モジュール2の構成を等価回路によって表すと
図10に示すようになる。ここで、金属異物60は、抵抗R
m、及び、コイルL
mを要素とするRL回路に見立てている(給電共振器22のコイルL
2と金属異物60のコイルL
mとの間の相互インダクタンスをM
2m、コイルL
2とコイルL
mとの間の結合係数をk
2mとする)。そして、
図10の等価回路より、入力インピーダンスZ
in(A)は、(式6)のように表記することができる。
【数6】
・・・(式6)
【0054】
上記より、電源周波数を逆相共振モードにおける周波数帯域(f(High P))に設定した際に、設定した電源周波数に対する各入力インピーダンスZ
inの関係が、上記等価回路によって示された関係式(式4)〜(式6)に基づいて、入力インピーダンスZ
in(W)>入力インピーダンスZ
in(T)の関係、及び、入力インピーダンスZ
in(A)(アルミ片A)>入力インピーダンスZ
in(T)の関係を満たすように設計される。
【0055】
なお、上記等価回路によって示された関係式(式4)〜(式6)に基づいて、入力インピーダンスZ
in(W)>入力インピーダンスZ
in(T)の関係、及び、入力インピーダンスZ
in(A)(アルミ片A)>入力インピーダンスZ
in(T)の関係を満たすように設計するために、給電コイル21のRLC回路のR
1、L
1、C
1、給電共振器22のRLC回路のR
2、L
2、C
2、受電共振器32のRLC回路のR
3、L
3、C
3、受電コイル31のRLC回路のR
4、L
4、C
4における抵抗値、インダクタンス、コンデンサ容量、相互インダクタンス、及び、結合係数k
12、k
23、k
34などが、設計・製造段階等で変更可能なパラメータとして用いられる。
【0056】
(電源回路5)
本実施形態では、
図2に示すように、AC/DC電源6と給電モジュール2との間に電源回路5が接続されている。電源回路5は、発振出力器11、電流検出器12、比較回路13、信号発振器14、及び、論理回路15を含む構成としている。
【0057】
発振出力器11は、電力の電源周波数を所定の値に設定する発振器(インバータ回路など)や、外部からの制御信号(後述するON制御信号、OFF制御信号)によって給電モジュール2に対する電力供給のON/OFFの切り替えが可能なスイッチング回路などにより構成されている。
【0058】
電流検出器12は、発振出力器11から給電モジュール2に出力される電流値を検出可能な電流計である。なお、本実施形態では、電圧を測定することで電流値を測定している。
【0059】
比較回路13は、予め設定した閾値と電流検出器12で検出した電流値とを比較し、電流検出器12で検出した電流値が閾値以上であると判断した場合にLow[0](第1信号)を出力し、電流検出器12で検出した電流値が閾値より小さい値であると判断した場合にHigh[1](第2信号)を出力する比較器である。
【0060】
ここで、閾値は、給電モジュール2から受電モジュール3に対して無線電力供給が行われている時に給電モジュール2に入力される電流値と、給電モジュール2から受電モジュール3に対して無線電力供給が行われていない時に給電モジュール2に入力される電流値との間に設けられる。
【0061】
具体的には、入力インピーダンスZ
in(A)≧入力インピーダンスZ
in(W)の場合は、給電モジュール2と受電モジュール3との間で無線電力供給が行われている時(正常充電状態)の電流値(伝送時入力電流値)と、待機状態にある時の電流値(待機時入力電流値)との間に閾値を設ける。また、入力インピーダンスZ
in(W)>入力インピーダンスZ
in(A)の場合は、給電モジュール2と受電モジュール3との間で無線電力供給が行われている時(正常充電状態)の電流値(伝送時入力電流値)と、給電モジュール2が有する給電共振器22の近辺に、金属異物60が配置された時(異常状態)の電流値(金属異物配置時入力電流値)との間に閾値を設ける。なお、左記条件を満たす範囲ならば自由に閾値を設定することができる。
【0062】
信号発振器14は、Low[0](発振信号)とHigh[1](休止信号)とを所定周期で交互に繰り返し出力する間欠動作を実行する。所定周期は、デューティー比として、自由に設定可能である。
【0063】
論理回路15は、比較回路13から出力されるLow[0](第1信号)又はHigh[1](第2信号)と、信号発振器14から出力されるLow[0](発振信号)又はHigh[1](休止信号)と、に基づき論理積演算を行い、その結果、論理積がHigh[1]である場合(電力遮断条件を満たす場合)、給電モジュール2に対する電力供給をOFFにするOFF制御信号を発振出力器11に出力する。一方、論理積演算の結果、論理積がLow[0]である場合(電力遮断条件を満たさない場合)、給電モジュール2に対する電力供給をONにするON制御信号を発振出力器11に出力する。
【0064】
なお、本実施形態では、論理回路15に論理積回路を使用しているが、論理回路15には、論理和回路を使用してもよい。この場合、比較回路13から出力される第1信号をHigh[1]とし、第2信号をLow[0]とし、信号発振器14から出力される発振信号をHigh[1]とし、休止信号をLow[0]とする。そして、比較回路13から出力されるLow[0](第2信号)又はHigh[1](第1信号)と、信号発振器14から出力されるLow[0](休止信号)又はHigh[1](発振信号)と、に基づき論理和演算を行い、その結果、論理和がHigh[1]である場合、給電モジュール2に対する電力供給をONにするON制御信号を発振出力器11に出力する。一方、論理和演算の結果、論理和がLow[0]である場合(電力遮断条件を満たす場合)、給電モジュール2に対する電力供給をOFFにするOFF制御信号を発振出力器11に出力する。
【0065】
(電力供給ON/OFF制御フロー)
次に、電源回路5が実行する電力供給ON/OFF制御を、
図12のフローチャート及び
図13の論理積表により説明する。
【0066】
まず、電流検出器12による電流値の検出を行う(S11)。そして、比較回路13は、検出した電流値が、前述した閾値(予め設定する)以上か否かを判断する(S12)。
【0067】
そして、検出した電流値が、閾値以上である場合(S12:YES)、比較回路13は、論理回路15に対して、Low[0](第1信号)を出力する(S13)。一方、検出した電流値が、閾値以上でない場合(S12:NO)、比較回路13は、論理回路15に対して、High[1](第2信号)を出力する(S14)。
【0068】
また、信号発振器14は、間欠動作を実行する(S15)。具体的には、信号発振器14は、論理回路15に対して、Low[0](発振信号)とHigh[1](休止信号)とを所定周期で交互に繰り返し出力する(S16)。
【0069】
次に、論理回路15は、比較回路13から出力されるLow[0](第1信号)又はHigh[1](第2信号)と、信号発振器14から出力されるLow[0](発振信号)又はHigh[1](休止信号)と、に基づき論理積演算を行い(
図13参照)、その結果、論理積がLow[0]であるか否かを判断する(S17)。
【0070】
そして、論理積がLow[0]である場合(S17:YES)、給電モジュール2に対する電力供給をONにするON制御信号を発振出力器11に出力する(S18)。その結果、発振出力器11は、給電モジュール2に対する電力供給を行う(スイッチング回路ON)。
【0071】
一方、論理積がLow[0]でない場合(即ち、論理積がHigh[1]である場合)(S17:NO)、給電モジュール2に対する電力供給をOFFにするOFF制御信号を発振出力器11に出力する(S19)。その結果、発振出力器11は、給電モジュール2に対する電力供給を遮断する(スイッチング回路OFF)。
【0072】
上記の過程を繰り返すことにより電力供給ON/OFF制御が行われる。
【0073】
(効果)
上記構成によれば、入力インピーダンスZ
in(A)及び入力インピーダンスZ
in(W)(非伝送時入力インピーダンス)>入力インピーダンスZ
in(T)(伝送時入力インピーダンス)の条件を満たすことにより、給電モジュール2と受電モジュール3との間で無線電力供給が行われている時(正常充電状態)の入力電流値を、給電モジュール2と受電モジュール3との間で無線電力供給が行われていない時(待機状態、異常状態)の入力電流値よりも高くすることができる。そして、無線電力供給が行われている時の入力電流値と無線電力供給が行われていない時の入力電流値との間に閾値を設ける。
そして、電流検出器12が検出した、発振出力器11から給電モジュール2に入力される電流値が、閾値以上の場合、比較回路13は第1信号を出力する。この場合、信号発振器14から出力される信号が発振信号、又は、休止信号の何れの場合であっても、論理回路15は、給電モジュール2に対する電力供給をONにするON制御信号を発振出力器11に出力し、給電モジュール2に対する電力供給をON(供給)にする。
一方、電流検出器12が検出した、発振出力器11から給電モジュール2に入力される電流値が、閾値より小さい場合、比較回路13は第2信号を出力する。
この場合、信号発振器14から出力される信号が発振信号の場合、論理回路15は、給電モジュール2に対する電力供給をONにするON制御信号を発振出力器11に出力し、給電モジュール2に対する電力供給をON(供給)にする。また、信号発振器14から出力される信号が休止信号の場合(比較回路13から出力される信号が第2信号であり、且つ、信号発振器14から出力される信号が休止信号であるという電力遮断条件を満たす場合)、論理回路15は、給電モジュール2に対する電力供給をOFFにするOFF制御信号を発振出力器11に出力し、給電モジュール2に対する電力供給をOFF(遮断)にする。
【0074】
これにより、無線電力伝送装置1において、無線電力給電が行われている状態から無線電力給電が行われていない状態に移行した際は、給電モジュール2に対する電力供給をOFF(遮断)にすることにより、消費電力を抑制することができる。
また、給電が行われていない状態から無線電力給電が行われる状態に移行するために、給電が行われていない状態において、電力供給のON/OFFを所定周期で繰り返す(間欠動作)ことができる。これにより、給電モジュール2と受電モジュール3との間で給電可能な状態になった場合に、間欠動作により、給電モジュール2に対する電力供給をONにすることができる。これにより、間欠動作による消費電力の抑制と、給電が行われていない状態から無線電力給電が行われる状態へのスムーズな移行が可能になる。
【0075】
また、上記構成によれば、待機状態にある時の電流値、及び、金属異物60が配置された時(異常状態)の電流値は、閾値よりも小さい値が検出されることから、無線電力伝送装置1において、無線電力給電が行われている状態から給電モジュール2が有する給電共振器22の近辺に、金属異物60が配置された状態に移行した際は、給電モジュール2に対する電力供給をOFF(遮断)にすることにより、金属異物60が給電共振器22の近辺に配置された状態での電力供給による不具合(発熱・渦電流)の発生を未然に防止することができる。
また、給電モジュール2が有する給電共振器22の近辺に、金属異物60が配置された状態から無線電力給電が行われる状態に移行された場合に無線電力給電可能にするために、給電モジュール2が有する給電共振器22の近辺に、金属異物60が配置された状態においても、電力供給のON/OFFを所定周期で繰り返す(間欠動作)ことができる。これにより、給電モジュール2と受電モジュール3との間で給電可能な状態になった場合に、間欠動作により、給電モジュール2に対する電力供給をONにすることができる。これにより、金属異物60が配置された状態から無線電力給電が行われる状態へのスムーズな移行が可能になる。また、金属異物60が配置された状態の時に、間欠動作によって給電モジュール2に対する電力供給を一時的に許可しているだけであるため、金属異物60が給電共振器22の近辺に配置された状態での電力供給による発熱・渦電流も抑制することができる。
【0076】
(変形例)
上記実施形態では、電源回路5が実行する電力供給ON/OFF制御を、電源周波数が伝送特性の二つのピーク帯域のうち「高周波側」に形成されるピーク帯域に対応する周波数帯域に設定された場合の無線電力伝送装置1について説明したが、電源周波数が前記伝送特性の二つのピーク帯域のうち「低周波側」に形成されるピーク帯域に対応する周波数帯域に設定した場合でも実行可能である。
【0077】
その場合、給電モジュールが有する給電共振器及び受電モジュールが有する受電共振器における、電力の電源周波数に対する伝送特性の値が二つのピーク帯域を有し、
前記電源周波数が前記伝送特性の二つのピーク帯域のうち低周波側に形成されるピーク帯域に対応する周波数帯域に設定された際における、前記給電モジュールと前記受電モジュールとの間で無線電力供給が行われている時の伝送時入力インピーダンス、及び、無線電力供給が行われていない時の非伝送時入力インピーダンスの関係が、非伝送時入力インピーダンス<伝送時入力インピーダンスの条件を満たす無線電力伝送装置であって、
前記給電モジュールに対する電力供給のON/OFFの切り替えが可能な発振出力器と
前記発振出力器から前記給電モジュールに入力される電流値を検出する電流検出器と、
前記電流検出器で検出した電流値と、前記給電モジュール及び前記受電モジュールの間で無線電力供給が行われている時に前記給電モジュールに入力される電流値と前記給電モジュール及び前記受電モジュールの間で無線電力供給が行われていない時に前記給電モジュールに入力される電流値との間に設定された閾値と、を比較し、前記電流検出器で検出した電流値が前記閾値以下であると判断した場合に第1信号を出力し、前記電流検出器で検出した電流値が前記閾値より大きい値であると判断した場合に第2信号を出力する比較回路と、
発振信号と休止信号とを所定周期で交互に繰り返し出力する間欠動作を実行する信号発振器と、
前記比較回路から出力される信号と前記信号発振器から出力される信号とに基づき論理演算を行い、その結果、前記比較回路から出力される信号が前記第2信号であり、且つ、前記信号発振器から出力される信号が前記休止信号であるという電力遮断条件を満たす場合は、前記発振出力器における前記給電モジュールに対する電力供給をOFFにするOFF制御信号を前記発振出力器に出力し、一方、前記電力遮断条件を満たさない場合は、前記発振出力器における前記給電モジュールに対する電力供給をONにするON制御信号を前記発振出力器に出力する論理回路と、
を備えたことを特徴にする。
【0078】
上記構成によれば、非伝送時入力インピーダンス<伝送時入力インピーダンスの条件を満たすことにより、給電モジュールと受電モジュールとの間で無線電力供給が行われている時の入力電流値は、給電モジュールと受電モジュールとの間で無線電力供給が行われていない時の入力電流値よりも低くなる。そして、無線電力供給が行われている時の入力電流値と無線電力供給が行われていない時の入力電流値との間に閾値を設ける。
そして、電流検出器が検出した、発振出力器から給電モジュールに入力される電流値が、閾値以下の場合、比較回路は第1信号を出力する。この場合、信号発振器から出力される信号が発振信号、又は、休止信号の何れの場合であっても、論理回路は、発振出力器における給電モジュールに対する電力供給をONにするON制御信号を発振出力器に出力し、給電モジュールに対する電力供給をON(供給)にする。
一方、電流検出器が検出した、発振出力器から給電モジュールに入力される電流値が、閾値より大きい場合、比較回路は第2信号を出力する。
この場合、信号発振器から出力される信号が発振信号の場合、論理回路は、発振出力器における給電モジュールに対する電力供給をONにするON制御信号を発振出力器に出力し、給電モジュールに対する電力供給をON(供給)にする。また、信号発振器から出力される信号が休止信号の場合(比較回路から出力される信号が前記第2信号であり、且つ、前記信号発振器から出力される信号が前記休止信号であるという電力遮断条件を満たす場合)、論理回路は、発振出力器における給電モジュールに対する電力供給をOFFにするOFF制御信号を発振出力器に出力し、給電モジュールに対する電力供給をOFF(遮断)にする。
これにより、無線電力伝送装置において、無線電力給電が行われている状態から無線電力給電が行われていない状態に移行した際は、給電モジュールに対する電力供給をOFF(遮断)にすることにより、消費電力を抑制することができる。
また、給電が行われていない状態から無線電力給電が行われる状態に移行するために、給電が行われていない状態において、電力供給のON/OFFを所定周期で繰り返す(間欠動作)ことができる。これにより、給電モジュールと受電モジュールとの間で給電可能な状態になった場合に、間欠動作により、給電モジュールに対する電力供給をONにすることができる。これにより、間欠動作による消費電力の抑制と、給電が行われていない状態から無線電力給電が行われる状態へのスムーズな移行が可能になる。
【0079】
(その他の実施形態)
また、上記製造方法の説明では、無線式ヘッドセット102を例示して説明したが、二次電池を備えた機器であれば、タブレット型PC、デジタルカメラ、携帯電話、イヤホン型音楽プレイヤー、補聴器、集音器などにも使用することができる。
【0080】
また、上記説明では、給電モジュール2及び受電モジュール3が備える共振器(コイル)間の共振現象(磁界共鳴状態)を利用して磁場を結合させることにより電力伝送を行う無線電力伝送装置1を例示して説明したが、給電装置及び受電装置が備えるコイル間の共振及び電磁誘導を利用して電力伝送を行う無線電力伝送装置においても適用可能である。
【0081】
また、上記説明では、無線電力伝送装置1を携帯型の電子機器に搭載した場合を想定して説明したが、用途はこれら小型なものに限らず、必要電力量に合わせて仕様を変更することにより、例えば、比較的大型な電気自動車(EV)における無線充電システムや、より小型な医療用の無線式胃カメラなどにも搭載することができる。
【0082】
以上の詳細な説明では、本発明をより容易に理解できるように、特徴的部分を中心に説明したが、本発明は、以上の詳細な説明に記載する実施形態・実施例に限定されず、その他の実施形態・実施例にも適用することができ、その適用範囲は可能な限り広く解釈されるべきである。また、本明細書において用いた用語及び語法は、本発明を的確に説明するために用いたものであり、本発明の解釈を制限するために用いたものではない。また、当業者であれば、本明細書に記載された発明の概念から、本発明の概念に含まれる他の構成、システム、方法等を推考することは容易であると思われる。従って、請求の範囲の記載は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で均等な構成を含むものであるとみなされるべきである。また、本発明の目的及び本発明の効果を充分に理解するために、すでに開示されている文献等を充分に参酌することが望まれる。