(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
細長い挿入部を被検体内に挿入して、観察および各種処置を施す内視鏡が広く用いられている。内視鏡の挿入部の先端部には金属からなる円柱状の枠本体が配設されている。枠本体には、長手方向に貫通する複数の貫通孔があり、それぞれの貫通孔に、撮像ユニット、照明ユニット、送気送水管、および鉗子チューブ等が挿通され固定されている。
【0003】
挿入部の細径化により、枠本体に複数の貫通孔を配置することが容易ではなくなっている。このため、異なる機能の貫通孔が連通している、すなわち、貫通孔の壁面の開口が、隣り合う貫通孔の壁面の開口となっている枠本体が使用されはじめている。
【0004】
しかし、連通した複数の貫通孔に、それぞれのユニットを接着剤で固定することは容易ではない。例えば、ユニットの外周部に接着剤を付着させて貫通孔に挿入すると、別の貫通孔に挿入済みの別のユニットが干渉して、接着剤がかき取られてしまうことがある。すると、ユニットの枠本体への固定が不十分となるおそれがある。ユニットの枠本体への固定が不十分だと、外部からの衝撃でユニットが破損したり、抜け落ちたりするおそれがあり、内視鏡の信頼性が低下する。
【0005】
ここで、特開2005−192642号公報には、枠本体の外周の透孔から撮像ユニット取り付けのための貫通孔に放熱用充填剤を充填した内視鏡が開示されている。しかし、この内視鏡では撮像ユニット貫通孔は他のユニットの貫通孔とは連通していないため、挿入済みのユニットの干渉により接着剤がかき取られてしまうという問題が生じることがない。また、撮像ユニットと貫通孔の壁面との間の狭い隙間の全周にわたって、透孔から樹脂を充填することは容易ではなかった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
最初に、
図1を用いて本発明の第1実施形態の内視鏡10を含む内視鏡装置1の全体構成を説明する。なお、以下の説明において、実施形態に基づく図面は、模式的なものであり、構成要素の長さと幅との関係(寸法関係)、夫々の部分の長さの比率等は実際のものとは異なることに留意すべきであり、複数の図面の間においても、寸法関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また一部の構成要素の図示を省略する場合がある。
【0013】
内視鏡装置1は、内視鏡10と、照明光を出力する光源装置2と、送気、吸気および送水を行う送気吸気送水装置3と、撮像処理等を行うプロセッサー4と、内視鏡画像を表示するモニタ5とを含む。なお、光源装置2と送気吸気送水装置3とが1つの筐体に収容されていてもよいし、送気吸気装置と給水装置が別の筐体になっていてもよい。
【0014】
光源装置2は、照明ランプと、照明ランプの光量等を調整する制御部と、照明光を集光する照明レンズ系等とを有する。送気吸気送水装置3は、送気ポンプと、送水タンクと、汚物や流体を吸引する吸引ポンプと、送気ポンプ等を制御する制御部等とを有する。プロセッサー4は、撮像部を制御するとともに撮像信号に所定の信号処理を施してモニタ5に表示される内視鏡映像信号を生成する。
【0015】
内視鏡10は、細長い挿入部11と操作部12とユニバーサルコード13とスコープコネクタ14とを含む。
【0016】
被検体内に挿入される挿入部11は、先端部11Aと、湾曲部11Bと細長な可撓部11Cとからなる。先端部11Aには枠本体20が配設されている。複数の湾曲駒からなる湾曲部11Bは、湾曲ワイヤにより操作部12から湾曲操作されて、先端部11Aの向きを変える。可撓部11Cは、可撓性部材により形成されている。挿入部11の基端は、操作部12に連設されている。
【0017】
操作部12は、術者が把持する把持部を構成すると共に、湾曲部11Bを操作する湾曲操作ノブ12A等が配設されている。操作部12の鉗子孔12Bは、挿入部11の鉗子チャンネルチューブ50に治療処置用の各種鉗子を挿入するための開口である。
【0018】
操作部12にはユニバーサルコード13が接続されている。ユニバーサルコード13には、信号ケーブル36、ライトガイドバンドル42、鉗子チャンネルチューブ50、および送気・送水チューブ等が内装されており、操作部12の基端側には、スコープコネクタ14が接続されている。
【0019】
スコープコネクタ14は、プロセッサー4と信号ケーブル36を介して接続される電気コネクタ14Aと、光源装置2とライトガイドバンドル42を介して接続される受光ロッド14Bと、送気吸気送水装置3と接続される吸引口金14C、送気口金14Dおよび送水口金14Eが設けられている。
【0020】
次に、
図2を用いて挿入部11の先端部11Aの構成について説明する。先端部11Aは、枠本体20と枠本体20の先端面から外周面にかけて配置され、被検体と枠本体20との電気的絶縁を行う電気的絶縁部材により形成された先端カバー21とを有する。枠本体20は、SUS等の耐食性の金属からなる。先端カバー21はポリサルフォン等の電気的絶縁樹脂からなる。
【0021】
枠本体20には、撮像ユニット30と、照明ユニット40A〜40Cとが接着剤により接着されている。なお、以下、複数の同じ機能の構成要素のそれぞれを示すときには、符号の末尾のアルファベット1文字を省略する。例えば、照明ユニット40A〜40Cのそれぞれを照明ユニット40という。
【0022】
後述するように、撮像ユニット30はシリコーン樹脂またはウレタン樹脂等の第1の樹脂からなる第1の接着剤により撮像ユニット取り付け孔30Hに固定されており、照明ユニット40はシリコーン樹脂、ウレタン樹脂の第2の樹脂からなる第2の接着剤により照明ユニット取り付け孔40Hに固定されている。
【0023】
枠本体20の先端面には、送気吸気送水装置3からの送気・送水を撮像ユニット30の方向に行うノズル開口69と、鉗子チャンネルチューブ50の開口59がある。操作部12の鉗子孔12Bから挿入された鉗子は、鉗子チャンネルチューブ50を挿通して先端部11Aの開口59から観察部位方向に導出される。また、鉗子チャンネルチューブ50を介して、被検体内の汚物や流体が吸引される。
【0024】
図3に示すように、略円柱状の枠本体20には、撮像ユニット取り付け孔30Hと、照明ユニット取り付け孔40HA〜40HCと、鉗子チャンネル取り付け孔50Hと、送気・送水孔60Hとが長手方向に貫通している。
【0025】
図4および
図5に示すように、撮像ユニット取り付け孔30Hは、先端側の断面が円形で基端側の断面が先端側よりも大きく略矩形である。これは
図6に示す撮像ユニット30の形状と対応している。すなわち、撮像ユニット30は、先端側の対物レンズユニット31が略円柱形で、基端側の撮像部32が対物レンズユニット31よりも径が大きく略直方体である。対物レンズユニット31は被写体像を結像させる複数のレンズ33を有する。撮像部32は、CCD等の撮像素子34と配線板35と、配線板35と接続された、信号ケーブル36とを有する。
【0026】
一方、照明ユニット取り付け孔40HA〜40HCは断面が円形である。
図7に示すように、円柱形の照明ユニット40は、照明レンズユニット41と、ライトガイドバンドル42とを有する。光源装置2からライトガイドバンドル42を介して導光された照明光は照明レンズユニット41を介して被写体を照射する。
【0027】
内視鏡10では、照明ユニット取り付け孔40HA、40HBは、基端側(後方)において、撮像ユニット取り付け孔30Hと連通し一体化している。言い替えれば、撮像ユニット取り付け孔30Hの撮像部32収容部は、照明ユニット取り付け孔40HA、40HBと連通している。撮像ユニット取り付け孔30Hの長軸方向に沿った細長い開口が、照明ユニット取り付け孔40HA、40HBの長軸方向に沿った細長い開口でもある。
【0028】
すなわち、
図5に示すように、3個ある照明ユニット取り付け孔40HA〜40HCのうち、撮像ユニット取り付け孔30Hの近傍にある照明ユニット取り付け孔40HA、40HBは、先端側(前方)は独立した貫通孔であるが、基端側は撮像ユニット取り付け孔30Hと側面の一部が撮像ユニット取り付け孔30Hと連通した連通部70XA、70XBとなっている。
【0029】
連通部70XA、70XBのある枠本体20、すなわち高密度に配置された複数の貫通孔がある枠本体20を有する内視鏡10は、複数の貫通孔がゆとりをもって配置され複数の貫通孔が独立している枠本体を有する内視鏡よりも先端部11Aが細径であるため低侵襲である。
【0030】
そして、内視鏡10の枠本体20には、側面の開口から撮像ユニット取り付け孔30Hと照明ユニット取り付け孔40HA、40HBとの連通部70XA、70XBまで挿通している透孔70HA、70HBがある。透孔70HA、70HBにより撮像ユニット取り付け孔30Hと照明ユニット取り付け孔40HA、40HBとは、枠本体20の外側と通じている。
【0031】
内視鏡10は、照明ユニット取り付け孔40Hと撮像ユニット取り付け孔30Hとが連通しているため細径である。そして、後述するように、透孔70Hの開口からシリコーン樹脂またはポリイミド樹脂等の第3の接着剤79(
図11参照)が注入され連通部70Xに充填されている。撮像ユニット30が撮像ユニット取り付け孔30Hに確実に固定されているため、外部からの衝撃でユニットが破損したり、抜け落ちたりするおそれがなく、内視鏡10は信頼性が高い。
【0032】
次に、
図8のフローチャートに沿って内視鏡10の先端部11Aの製造方法について説明する。なお、
図9〜
図11においては、それぞれの工程で用いた接着剤を黒色で塗りつぶしている。
【0033】
<ステップS11、S12>照明ユニット接着、硬化
図9に示すように枠本体20の照明ユニット取り付け孔40Hに第1の接着剤49を外周に塗布した照明ユニット40が挿入され、硬化処理が行われる。
【0034】
照明ユニット40は光を照射するのでほかの部品よりも温度が高くなるために、第1の接着剤49としては、比較的、耐熱性の高いシリコーン系を用いることが望ましい。
【0035】
<ステップS13>撮像ユニット接着
図10に示すように枠本体20の撮像ユニット取り付け孔30Hに第2の接着剤39を外周に塗布した撮像ユニット30が挿入される。
【0036】
撮像ユニット30は熱による損傷を受けやすいため、第2の接着剤39としては、比較的、硬化温度が低い、例えば硬化温度が120℃未満のウレタン樹脂、または、シリコーン樹脂等を用いる。また、撮像ユニット30はその構造上照明ユニット40よりも外部からの衝撃で揺れやすく破損しやすいため、第2の接着剤39は、第1の接着剤49よりも硬化後のヤング率が大きくかつできるだけ衝撃吸収性の高い樹脂であることが好ましい。
【0037】
ここで、撮像ユニット取り付け孔30Hの内壁と撮像ユニット30との間の隙間は、例えば、間隔が0.3mm以上0.5mm以下で、長さは6mm以上10mm以下である。
【0038】
そして、撮像ユニット取り付け孔30Hの基端部は、すでに照明ユニット40が固定されている照明ユニット取り付け孔40Hと連通し一体化している。このため、撮像ユニット30を撮像ユニット取り付け孔30Hに挿入するときに照明ユニット40により、連通部70Xの近傍の第2の接着剤39がかき取られてしまうことがある。すると、撮像ユニット30の枠本体20への固定が不十分になるおそれがある。
【0039】
<ステップS14>樹脂注入
図11に示すように、透孔70Hから第3の接着剤79が注入され、照明ユニット40により第2の接着剤39がかき取られて生じた空洞部のある連通部70Xに充填される。なお、透孔70の外径は0.3mm以上0.7mm以下が好ましい。前記範囲未満では第3の接着剤79の注入が容易ではなく、前記範囲超では他の部材と干渉するおそれがある。
【0040】
第3の接着剤79は、第2の接着剤39と同じでもよい。しかし、小径の透孔70Hから注入するため、第3の接着剤79は、粘度が低いことが好ましい。第3の接着剤79の粘度は、例えば、50Pa・s以上200Pa・s以下が好ましい。なお、粘度はB型粘度計を用いて角周波数ωが100rad/秒、測定温度が23℃の値である。これに対して第2の接着剤39の粘度は作業性の観点から200Pa・s超が好ましい。
【0041】
また、第3の接着剤79は第2の接着剤39よりも透湿性が低く耐薬品性に優れていることが好ましい。第2、第3の接着剤は特に組み合わせを限定するものではなく、隙間に十分に充填できればどんな組み合わせでもよい。
【0042】
<ステップS15>硬化
第2の接着剤39と第3の接着剤79とが硬化処理されることで、撮像ユニット30が枠本体20へ固定される。なお、第2の接着剤39を硬化処理後に第3の接着剤79を注入し、第3の接着剤79を硬化処理してもよい。
【0043】
上記製造方法により製造された内視鏡10は、撮像ユニット30が撮像ユニット取り付け孔30Hに確実に固定されているため、外部からの衝撃でユニットが破損したり、抜け落ちたりするおそれがなく、信頼性が高い。
【0044】
なお、説明を省略したが、撮像ユニット30の対物レンズユニット31の枠本体20への取り付けは、撮像ユニット30の撮像部32の取り付けの精度よりも高くするために、ビスにより固定してもよい。
【0045】
<変形例>
変形例の内視鏡10Aは、内視鏡10と類似しているので、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0046】
図12の部分断面図に示すように、内視鏡10Aの枠本体20Aには、長手方向に2つの透孔70HA1、70HA2がある。すなわち、枠本体20Aには4つの透孔がある。
【0047】
すでに説明したように、小径の透孔70Hから注入するため、第3の接着剤は粘度が低いことが好ましい。しかし、粘度が低い接着剤は注入後に重力により流れ出して偏在しやすい。
【0048】
本実施形態の内視鏡10Aでは、第3の接着剤79Aは、チキソトロピー(thixotropy)流体であり、ペースト状である。すなわち、第3の接着剤79Aは、せん断応力を受け続けると粘度が低下し、静止すると粘度が徐々に上昇する。例えば、粘度測定時の角周波数ωが100rad/秒のときは、粘度ηは50Pa・sであるが、角周波数ωが0.1rad/秒のときは、粘度ηは15000Pa・sと、角周波数ωが1/100になると、粘度ηが300倍になる。
【0049】
このため、第3の接着剤79Aは、細い透孔70Hに注入された直後は粘度が低く、狭い隙間にも入りやすいが、注入完了後は粘度が上昇するため重力により流れ出すことがない。
【0050】
しかし、チキソトロピー性の接着剤では、撮像ユニット取り付け孔30Hの内壁と撮像ユニット30との間の長さ6mm以上の隙間に充填することは容易ではない場合がある。
【0051】
枠本体20Aの長手方向に2つの透孔70HA1、70HA2がある枠本体20Aを有する内視鏡10Aでは、チキソトロピー性の第3の接着剤を用いても、長さ6mm以上の隙間に容易に充填できる。
【0052】
なお、枠本体20の透孔の数は複数個であればよく、撮像ユニット30の形状や接着剤の種類等に応じて選択される。また、
図12では、対物レンズユニット31がビス22により枠本体20に固定されている例を示している。
【0053】
本発明は上述した実施形態等に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等ができる。