特許第6205339号(P6205339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205339
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】油圧駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/14 20060101AFI20170914BHJP
   F15B 11/08 20060101ALI20170914BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20170914BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20170914BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   F15B21/14 B
   F15B21/14 A
   F15B11/08 C
   F15B11/02 C
   F15B11/028 G
   F15B11/02 V
   E02F9/22 K
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-235334(P2014-235334)
(22)【出願日】2014年11月20日
(65)【公開番号】特開2016-35321(P2016-35321A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2016年9月1日
(31)【優先権主張番号】特願2014-157865(P2014-157865)
(32)【優先日】2014年8月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】菅野 直紀
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−249198(JP,A)
【文献】 実開昭57−000102(JP,U)
【文献】 特開平11−002212(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0110166(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 21/14
E02F 9/22
F15B 11/02
F15B 11/028
F15B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を油圧によって動かすための装置であって、
前記負荷に接続されて当該負荷を動かすように作動する油圧アクチュエータと、
作動油を吐出するとともにその吐出流量を変化させることが可能な油圧ポンプであって、当該油圧ポンプから吐出される作動油を前記油圧アクチュエータに供給しかつこの油圧アクチュエータから排出される作動油を当該油圧ポンプの吸入側に戻す閉回路を構成するように当該油圧アクチュエータに接続される油圧ポンプと、
この油圧ポンプを駆動して当該油圧ポンプに作動油を吐出させる駆動源と、
前記閉回路内の圧力が予め定められた設定圧よりも低い場合に当該閉回路に作動油を補充するチャージ回路と、
前記負荷に重力が作用する方向の成分を含む下げ方向に当該負荷を動かすように前記油圧アクチュエータが作動する下げ駆動時に当該油圧アクチュエータから排出される作動油を受け入れることが可能となるように前記閉回路に接続されるアキュムレータと、
前記閉回路と前記アキュムレータとの間に介在し、当該閉回路から当該アキュムレータへの作動油の流量を変化させるアキュムレータ流量調節器と、
前記アキュムレータにより蓄えられた作動油のエネルギーによって駆動されることにより当該エネルギーを動力に変換する回生アクチュエータと、
当該アキュムレータと当該回生アクチュエータとの間に介在し、当該アキュムレータから当該回生アクチュエータへの作動油の供給を許容する位置と遮断する位置とに切換えられる回生切換弁と、
前記下げ駆動時に前記油圧ポンプの吐出流量を予め設定された回生用流量に制限するポンプ制御部と、
前記下げ駆動時に前記油圧アクチュエータの作動速度を目標速度に近づけるように前記アキュムレータ流量調節器を操作する速度制御部と、を備える、油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の油圧駆動装置であって、前記速度制御部は、前記油圧アクチュエータから前記アキュムレータに導入される作動油の流量であるアキュムレータ導入流量を、前記目標速度に対応する前記排出作動油の流量である目標排出流量と前記油圧ポンプの前記回生用流量に相当するポンプ吸収流量との差である目標導入流量に近づけるように、前記アキュムレータ流量調節器を操作する、油圧駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の油圧駆動装置であって、前記下げ方向に作動する油圧アクチュエータから排出される排出作動油の圧力である排出圧を検出する排出圧検出器と、前記アキュムレータに導入される作動油の圧力であるアキュムレータ圧を検出するアキュムレータ圧検出器と、をさらに備え、前記速度制御部は、前記排出圧と前記アキュムレータ圧との差により求められる前記アキュムレータ導入流量を前記目標導入流量に近づけるように前記アキュムレータ流量調節器を操作する、油圧駆動装置。
【請求項4】
請求項2記載の油圧駆動装置であって、前記アキュムレータ流量調節器は、変化可能な開口面積を有する可変絞りと、この可変絞りの上流側圧力と下流側圧力との差である前後差圧を一定に保つように開閉動作する流量調節弁と、を含み、前記速度制御部は、前記可変絞りの前後差圧が前記目標導入流量に相当する前後差圧となるように当該可変絞りを操作する、油圧駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の油圧駆動装置であって、前記回生アクチュエータの生成する動力が必要なときに当該アキュムレータから当該回生アクチュエータへの作動油の供給を許容するように前記回生切換弁の開閉操作を行う回生制御部をさらに備える、油圧駆動装置。
【請求項6】
請求項5記載の油圧駆動装置であって、前記回生アクチュエータは前記油圧ポンプの駆動について前記駆動源をアシストすることが可能となるように当該駆動源に接続され、前記回生制御部は前記負荷をこれに作用する重力に逆らう方向である上げ方向に動かす向きに前記油圧アクチュエータが作動する上げ駆動時に前記アキュムレータから前記回生アクチュエータへの作動油の供給を許容するように前記回生切換弁を開く、油圧駆動装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の油圧駆動装置であって、前記駆動源は前記油圧ポンプに加えて当該油圧ポンプとは別の油圧機器を駆動するために当該油圧機器に接続され、前記回生制御部は当該別の油圧機器の駆動力が要求されるときに前記アキュムレータから前記回生アクチュエータへの作動油の供給を許容するように前記回生切換弁を開く、油圧駆動装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の油圧駆動装置であって、前記閉回路とは別の回生油圧回路と、前記閉回路と前記回生油圧回路との間に介在して当該閉回路から当該回生油圧回路に供給される作動油の流量である回生流量を変化させる回生流量調節器と、をさらに備え、前記速度制御部は、前記下げ駆動時に前記油圧アクチュエータの作動速度を前記目標速度に近づけるように前記アキュムレータ流量調節器及び前記回生流量調節器を操作する、油圧駆動装置。
【請求項9】
請求項8記載の油圧駆動装置であって、前記下げ駆動時に前記油圧アクチュエータから排出される排出作動油の圧力である排出圧と前記回生油圧回路において前記回生流量調節器を通じて前記回生油圧回路に作動油が導入される部分の圧力である導入部位圧とのうちいずれの圧力が大きいかについての情報を生成する圧力検出部をさらに備え、前記速度制御部は、前記排出圧が前記導入部位圧より高い場合にのみ前記回生流量調節器における作動油の流通を許容する、油圧駆動装置。
【請求項10】
請求項8または9記載の油圧駆動装置であって、前記回生油圧回路が、作動油を吐出するとともにその吐出流量を変化させることが可能な油圧ポンプからなる回生側油圧ポンプと、この回生側油圧ポンプが吐出する作動油によって駆動される回生側油圧アクチュエータと、を含み、前記油圧駆動装置は、前記回生流量調節器により調節される前記回生流量またはその回生流量について設定される目標回生流量の分だけ前記回生側油圧ポンプの吐出流量を減らす回生側ポンプ制御部をさらに備える、油圧駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械等における負荷を油圧によって駆動するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械等における負荷を駆動するための装置として、当該負荷に連結される油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータを動かすための作動油を吐出する油圧ポンプと、この油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間に介在するコントロールバルブと、を備え、このコントロールバルブが前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータへの作動油の給排の制御を行うものが、一般に知られている。この装置は、いわゆる開回路を基本とするものであり、タンク内に収容される作動油が前記油圧ポンプにより吸入されて前記コントロールバルブを通じて前記油圧アクチュエータに供給され、当該油圧アクチュエータから排出される作動油が前記コントロールバルブを通じて前記タンクに戻される。
【0003】
この開回路式の装置に対し、特許文献1には、いわゆる閉回路型の油圧駆動装置が開示されている。この装置は、可変容量型の油圧ポンプと油圧アクチュエータとを備えて両者が閉回路を構成するように接続され、当該油圧ポンプから吐出される作動油が当該閉回路内を循環しながら前記油圧アクチュエータを動かす。この装置では、前記油圧ポンプの容量や回転数の調節によって前記油圧アクチュエータの速度が制御されるため、前記のようなコントロールバルブが不要であり、従って、当該コントロールバルブの圧損による動力損失をなくして省エネルギー化を図ることができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−117098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
油圧駆動装置の中には、例えば、クレーンに設けられる油圧ウインチや、油圧ショベルのブームやアームを動かす装置のように、負荷に対して重力が作用する方向すなわち下げ方向に当該負荷を動かすことを要求されるものがある。このような下げ方向の駆動にあたっては、降下する負荷及びこれに接続される油圧アクチュエータに適当なブレーキ力を与えて当該下げ方向の速度を適正な速度に制御しながら、当該負荷のもつ運動エネルギーや位置エネルギーを効率よく回収する、すなわち回生する、ことが重要な課題である。
【0006】
しかし、このような下げ方向の駆動が要求される油圧アクチュエータを、前記のようないわゆる閉回路式の装置で駆動する場合において、当該下げ方向の速度を適正に制御しながら当該負荷のもつ運動エネルギーや位置エネルギーを効率よく回収する手段については何ら提供されていないのが実情である。
【0007】
前記特許文献1には、前記油圧アクチュエータが可変容量型の油圧モータであることを前提に、当該可変容量油圧モータの容量を調節することによってブレーキトルクを制御する技術が開示されているが、この技術は当該油圧モータのもつ可変容量機能に依存するものであるから、当該油圧アクチュエータが油圧シリンダや固定容量型油圧ポンプのように可変容量機能を有しない場合には成立しない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、油圧アクチュエータを用いて負荷を当該負荷に重力が作用する方向と同じ下げ方向に駆動することが可能な装置であって、前記油圧アクチュエータの可変容量機能の有無にかかわらず、前記下げ方向の速度を制御しながら効率よくエネルギーの回生を行うことができる油圧駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記回生を行う手段として、下げ駆動時に閉回路において油圧アクチュエータから油圧ポンプに戻る作動油の一部を蓄えるアキュムレータを採用するのに加え、当該閉回路から当該アキュムレータに導入される作動油の流量を調節することによって前記油圧アクチュエータの下げ方向の速度ひいては負荷の速度を制御することが可能である点に想到した。すなわち、前記アキュムレータの使用により、下げ駆動時における有効な回生と速度制御の双方を簡素な構成で実現することに想到した。
【0010】
本発明は、このような観点からなされたものであり、負荷を油圧によって動かすための装置であって、前記負荷に接続されて当該負荷を動かすように作動する油圧アクチュエータと、作動油を吐出するとともにその吐出流量を変化させることが可能な油圧ポンプであって、当該油圧ポンプから吐出される作動油を前記油圧アクチュエータに供給しかつこの油圧アクチュエータから排出される作動油を当該油圧ポンプの吸入側に戻す閉回路を構成するように当該油圧アクチュエータに接続される油圧ポンプと、この油圧ポンプを駆動して当該油圧ポンプに作動油を吐出させる駆動源と、前記閉回路内の圧力が予め定められた設定圧よりも低い場合に当該閉回路に作動油を補充するチャージ回路と、前記負荷に重力が作用する方向の成分を含む下げ方向に当該負荷を動かすように前記油圧アクチュエータが作動する下げ駆動時に当該油圧アクチュエータから排出される作動油を受け入れることが可能となるように前記閉回路に接続されるアキュムレータと、前記閉回路と前記アキュムレータとの間に介在し、当該閉回路から当該アキュムレータへの作動油の流量を変化させるアキュムレータ流量調節器と、前記アキュムレータにより蓄えられた作動油のエネルギーによって駆動されることにより当該エネルギーを動力に変換する回生アクチュエータと、当該アキュムレータと当該回生アクチュエータとの間に介在し、当該アキュムレータから当該回生アクチュエータへの作動油の供給を許容する開位置と遮断する閉位置とに切換えられる回生切換弁と、前記下げ駆動時に前記油圧ポンプの吐出流量を予め設定された回生用流量に制限するポンプ制御部と、前記下げ駆動時に前記油圧アクチュエータの作動速度を目標速度に近づけるように前記アキュムレータ流量調節器を操作する速度制御部と、を備える。
【0011】
この装置によれば、前記下げ駆動時、すなわち、前記負荷を下げ方向に動かす向きに前記油圧アクチュエータが作動する時に、前記ポンプ吐出速度制御部が前記油圧ポンプの吐出流量を予め設定された回生用流量に制限する一方、当該油圧アクチュエータから排出される作動油がアキュムレータ流量調節器を通じてアキュムレータに導入されることにより、余剰の作動油が当該アキュムレータに蓄えられる。さらに、当該油圧アクチュエータの下げ方向の作動速度が目標速度に近づくように速度制御部が前記アキュムレータ流量調節器を操作することにより、当該油圧アクチュエータの作動速度ひいては前記負荷の下げ方向の速度が適正に制御される。そして、前記アキュムレータに作動油が受け入れられた後、回生切換弁が適宜開かれて当該アキュムレータ内の作動油が回生アクチュエータに供給されることにより、当該作動油の持つエネルギーを当該回生アクチュエータが動力に変換し、これにより、前記下げ駆動時における前記負荷の運動エネルギーや位置エネルギーの回収すなわち回生を行うことができる。
【0012】
前記速度制御部は、例えば、前記油圧アクチュエータから前記アキュムレータに導入される作動油の流量であるアキュムレータ導入流量を、前記目標速度に対応する前記排出作動油の流量である目標排出流量と前記油圧ポンプの前記回生用流量に相当するポンプ吸収流量との差である目標導入流量に近づけるように、前記アキュムレータ流量調節器を操作するものが、好適である。これにより、実際に油圧アクチュエータから排出される作動油の流量を検出しなくても、当該作動油の流量を前記目標速度に対応した流量に制御することが可能である。
【0013】
より具体的には、前記油圧駆動装置が、前記下げ方向に作動する油圧アクチュエータから排出される排出作動油の圧力である排出圧を検出する排出圧検出器と、前記アキュムレータに導入される作動油の圧力であるアキュムレータ圧を検出するアキュムレータ圧検出器と、をさらに備え、前記速度制御部は、前記排出圧と前記アキュムレータ圧との差により求められる前記アキュムレータ導入流量を前記目標導入流量に近づけるように前記アキュムレータ流量調節を操作するものが、好適である。この装置は、前記排出作動油の圧力及び前記アキュムレータ圧を検出するだけの簡素な構成で、前記下げ駆動時における前記油圧アクチュエータの作動速度を目標速度に近づける制御を行うことが可能である。
【0014】
あるいは、前記アキュムレータ流量調節器が、変化可能な開口面積を有する可変絞りと、この可変絞りの上流側圧力と下流側圧力との差である前後差圧を一定に保つように開閉動作する流量調節弁と、を含むものである場合、前記速度制御部は、前記可変絞りの前後差圧が前記目標導入流量に相当する前後差圧となるように当該可変絞りを操作することにより、前記排出圧や前記アキュムレータ圧の検出を行わずに適正な速度制御を行うことも、可能である。
【0015】
一方、前記アキュムレータから前記回生アクチュエータの作動油の供給については、当該回生アクチュエータの生成する動力が必要なときに当該アキュムレータから当該回生アクチュエータへの作動油の供給を許容するように前記回生切換弁の開閉操作を行う回生制御部をさらに備えることが好ましい。
【0016】
具体的には、前記回生アクチュエータが前記油圧ポンプの駆動について前記駆動源をアシストすることが可能となるように当該駆動源に接続され、前記回生制御部は前記負荷をこれに作用する重力に逆らう方向である上げ方向に動かす向きに前記油圧アクチュエータが作動する上げ駆動時に前記アキュムレータから前記回生アクチュエータへの作動油の供給を許容するように前記回生切換弁を開くものが、好適である。この装置によれば、負荷に作用する重力に逆らわない方向である下げ方向に当該負荷を動かす下げ駆動時にアキュムレータに回収したエネルギーを利用して、当該重力に逆らって当該負荷を動かす上げ駆動時に前記油圧ポンプを駆動する駆動源をアシストすることができる。これにより、回生エネルギーの合理的な活用が達成される。
【0017】
回生動力の活用は前記油圧ポンプの駆動についてのアシストに限られない。例えば、前記駆動源が前記油圧ポンプに加えて当該油圧ポンプとは別の油圧機器を駆動するために当該油圧機器に接続されている場合に、前記回生制御部は当該別の油圧機器の駆動力が要求されるときに前記アキュムレータから前記回生アクチュエータへの作動油の供給を許容するように前記回生切換弁を開くものであってもよい。この装置によれば、前記別の油圧機器の駆動にも回生動力を利用することにより、前記回生アクチュエータの作動時間すなわちアキュムレータの蓄えたエネルギーを動力に変換する時間を長くとることが可能である。このことは、当該回生アクチュエータとして比較的小型のものを用いながらも前記アキュムレータに蓄えられたエネルギーを有効に使い切ることを可能にする。
【0018】
本発明において、前記下げ駆動時に前記油圧アクチュエータから排出される作動油の逃がし先は、前記アキュムレータのみに限定されない。例えば、下げ駆動時に前記油圧アクチュエータから排出される作動油は、前記アキュムレータと、前記油圧アクチュエータ及び前記油圧ポンプを含む前記閉回路とは別の回生油圧回路と、の双方に逃がされてもよい。具体的には、前記油圧駆動装置が、前記閉回路と前記回生油圧回路との間に介在して当該閉回路から当該回生油圧回路に供給される作動油の流量である回生流量を変化させる回生流量調節器をさらに備え、前記速度制御部は、前記下げ駆動時に前記油圧アクチュエータの作動速度を前記目標速度に近づけるように前記アキュムレータ流量調節器及び前記回生流量調節器を操作するのが、よい。
【0019】
この装置では、前記下げ駆動時に前記油圧アクチュエータから排出される作動油の一部を前記アキュムレータに加えてこれとは別の前記回生油圧回路にも逃がすことができる分、当該下げ駆動時に前記油圧アクチュエータの作動速度を目標速度に近づけるために必要なアキュムレータ導入流量すなわちアキュムレータに導入される作動油の流量を減らすことができ、これにより、当該アキュムレータの必要容量を削減することが可能である。
【0020】
この場合、前記油圧駆動装置は、前記下げ駆動時に前記油圧アクチュエータから排出される排出作動油の圧力である排出圧と前記回生油圧回路において前記回生流量調節器を通じて前記回生油圧回路に作動油が導入される部分の圧力である導入部位圧とのうちいずれの圧力が大きいかについての情報を生成する圧力検出部をさらに備え、前記速度制御部は、前記排出圧が前記導入部位圧より高い場合にのみ前記回生流量調節器における作動油の流通を許容することが、好ましい。このことは、前記排出圧が前記導入部位圧よりも低い場合に前記回生油圧回路から前記閉回路に作動油が逆流することを確実に防ぐ。
【0021】
前記回生油圧回路が、作動油を吐出するとともにその吐出流量を変化させることが可能な油圧ポンプからなる回生側油圧ポンプと、この回生側油圧ポンプが吐出する作動油によって駆動される回生側油圧アクチュエータと、を含む場合、前記油圧駆動装置は、前記回生流量調節器により調節される前記回生流量またはその回生流量について設定される目標回生流量の分だけ前記回生側油圧ポンプの吐出流量を減らす回生側ポンプ制御部をさらに備えるのが、好ましい。この回生側ポンプ制御部による制御は、前記回生流量の有無及び大小にかかわらず前記回生側油圧アクチュエータに供給される作動油の総流量を安定させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、油圧アクチュエータを用いて負荷を当該負荷に重力が作用する方向と同じ下げ方向に駆動することが可能な装置であって、前記油圧アクチュエータの可変容量機能の有無にかかわらず、前記下げ方向の速度を制御しながら効率よくエネルギーの回生を行うことができる油圧駆動装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る油圧駆動装置を示す回路図である。
図2】前記油圧駆動装置におけるコントローラの機能構成を示すブロック図である。
図3】前記コントローラが行う演算制御動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る油圧駆動装置を示す回路図である。
図5】本発明の第3の実施の形態に係る油圧駆動装置を示す回路図である。
図6】本発明の第4の実施の形態に係る油圧駆動装置を示す回路図である。
図7】前記第4の実施の形態に係る油圧駆動装置におけるコントローラの機能構成を示すブロック図である。
図8】前記第4の実施の形態に係るコントローラが行う演算制御動作を示すフローチャートである。
図9】本発明の第5の実施の形態に係る油圧駆動装置を示す回路図である。
図10】本発明の第6の実施の形態に係る油圧駆動装置を示す回路図である。
図11】本発明の第7の実施の形態に係る油圧駆動装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る油圧駆動装置を示す。この装置は、負荷2を油圧によって動かすための装置であって、油圧アクチュエータである油圧シリンダ10と、当該油圧シリンダ10に作動油を供給するための油圧ポンプ20と、補助油圧ポンプ24と、これらの油圧ポンプ20,24を駆動するための駆動源26と、チャージ回路30と、回生回路40と、複数の圧力センサ51,52,53と、操作装置56と、コントローラ60と、を備える。
【0026】
前記油圧シリンダ10は、前記負荷2を動かすように当該負荷2に接続される。この油圧シリンダ10は、例えば油圧ショベルのブームを起伏させるブームシリンダであり、この場合、当該ブームが前記負荷2に相当する。当該油圧シリンダ10の用途はこれに限定されず、負荷2をこれに重力が作用する方向の成分を含む下げ方向、すなわち下方向または斜め下方向、に動かすものが広く含まれる。また、本発明に係る油圧アクチュエータは前記油圧シリンダ10に限定されず、例えば油圧モータであってもよい。この油圧モータがクレーンの油圧ウインチのウインチドラムの駆動に用いられる場合、当該油圧ウインチの吊り荷が前記負荷2に相当する。
【0027】
図1に示される油圧シリンダ10は、シリンダ本体12と、このシリンダ本体12内に装填されるピストン14と、このピストン14につながるロッド16と、を有し、当該ロッド16の先端が前記負荷2に接続される。前記ピストン14は、前記シリンダ本体12内の空間を前記ロッド16のある側のロッド側室17とその反対側のへッド側室18とに区画する。
【0028】
この実施の形態に係る油圧シリンダ10は、前記ロッド16が上向きに延びる姿勢で配置される。従って、当該油圧シリンダ10は、前記へッド側室18への作動油の供給を受けてロッド側室17から作動油を排出することにより伸長し、前記負荷2をこれに作用する重力に逆らう方向である上げ方向に動かす。逆に、油圧シリンダ10は、前記ロッド側室17への作動油の供給を受けてヘッド側室18から作動油を排出することにより収縮し、前記負荷2をこれに重力が作用する方向と同じ下げ方向に動かす。この油圧シリンダ10の向きは、逆であってもよい。
【0029】
前記油圧ポンプ20は、前記駆動源26によって駆動されることにより前記作動油を吐出し、前記油圧シリンダ10に供給する。さらに、この油圧ポンプ20は、その回転方向の切換及び吐出流量の変更が可能なものである。具体的に、この実施の形態に係る油圧ポンプ20は、正逆両方向に傾転角の変更が可能なタイプの可変容量型油圧ポンプにより構成される。
【0030】
この油圧ポンプ20は、当該油圧ポンプ20から吐出される作動油を前記油圧シリンダ10に供給しかつこの油圧シリンダ10から排出される作動油を当該油圧ポンプ20の吸入側に戻す閉回路4を構成するように、当該油圧シリンダ10に接続される。具体的に、この油圧ポンプ20は、それぞれが吐出ポートと吸入ポートを兼ねる第1ポート21及び第2ポート22を有し、前記第1ポート21が第1配管5を介して前記油圧シリンダ10のロッド側室17に接続され、第2ポート22が第2配管6を介して前記油圧シリンダ10のへッド側室18に接続されている。
【0031】
前記油圧ポンプ20の回転方向は、当該油圧ポンプ20が当該第1ポート21から作動油を吐出して第2ポート22から作動油を吸入する第1方向と、当該第2ポート22から作動油を吐出して第1ポート21から作動油を吸入する第2方向と、に切換えられることが可能である。前記第1方向は、前記油圧シリンダ10を収縮させて負荷2を下げ方向に移動させる回転方向であり、前記第2方向は、前記油圧シリンダ10を伸ばして負荷2を上げ方向に移動させる回転方向である。
【0032】
前記閉回路4には、第1及び第2リリーフ弁7,8が接続される。前記第1リリーフ弁7は、前記第1配管5とタンクとの間に介在し、当該第1配管5内の圧力が設定圧以上になったときに開弁する。同様に、前記第2リリーフ弁8は、前記第2配管6とタンクとの間に介在し、当該第2配管6内の圧力が設定圧以上になったときに開弁する。
【0033】
前記補助油圧ポンプ24は、例えば可変容量型油圧ポンプからなり、前記第2配管6に逆流防止用のチェック弁23を介して接続され、前記油圧シリンダ10の伸長時、すなわち上げ方向の駆動時である上げ駆動時に、前記ロッド側室17と前記へッド側室18の面積の差に相当する作動油の補充を前記第2配管6に対して行う。前記ロッド側室17の面積は前記ロッド16の面積の分だけ前記へッド側室18の面積よりも小さいため、閉回路4における作動油の良好な循環を維持しながら前記油圧シリンダ10を伸長させるためには、前記面積の差に相当する分だけ前記油圧ポンプ20から前記油圧シリンダ10のへッド側室18に供給される作動油を当該油圧シリンダ10のロッド側室17から油圧ポンプ20に戻る作動油よりも増量しなければならない。前記補助油圧ポンプ24は、前記上げ駆動時に前記駆動源26により駆動されて前記第2配管6に前記作動油の補給を行う。
【0034】
この補助油圧ポンプ24は、本発明において必ずしも要しない。例えば、負荷に接続される油圧アクチュエータが油圧モータである場合には前記補助油圧ポンプ24の省略が可能である。
【0035】
前記駆動源26は、前記油圧ポンプ20及び前記補助油圧ポンプ24の双方を駆動するための動力を生成する。具体的には、当該駆動源26の出力軸が前記各油圧ポンプ20,24の入力軸に連結されている。この駆動源26は、燃料の供給を受けて動力を生成するエンジンであってもよいし、電力の供給を受けて作動する電動機であってもよい。後者の場合、当該電動機の回転数の調節によって前記油圧ポンプ20の吐出流量を制御することが可能であるため、当該油圧ポンプ20は必ずしも可変容量型であることを要しない。すなわち、この場合は油圧ポンプ20が固定容量型であってもよい。
【0036】
前記チャージ回路30は、前記閉回路4内の圧力が予め定められた設定圧よりも低くなった場合に当該閉回路に作動油を補充する。具体的には前記第1及び第2配管5,6のうちのいずれかにおける作動油の圧力が前記設定圧未満に低下した場合に、その配管に対して作動油の補給を行う。チャージ回路30は、前記作動油の補給のための手段として、チャージポンプ32と、チャージ配管34と、第1及び第2チェック弁35,36と、リリーフ弁38と、を含む。
【0037】
前記チャージポンプ32は、油圧ポンプからなり、前記油圧ポンプ20,24と同様に前記駆動源26からの動力の供給を受けて作動油を吐出し、前記チャージ配管34を通じて前記第1配管5または第2配管6に作動油を供給する。チャージ配管34は、前記チャージポンプ32の吐出口と前記第1及び第2配管5,6とを接続するように途中で分岐する。前記第1及び第2チェック弁35,36は、前記チャージ配管34のうち第1配管5及び第2配管6にそれぞれ分岐した部分に設けられ、当該第1及び第2配管5,6からチャージポンプ32への逆流を阻止する。
【0038】
前記リリーフ弁38は、前記第1及び第2配管5,6のいずれかにおける作動油の圧力が前記設定圧以下となった場合にのみ前記チャージポンプ32からその設定圧以下となった配管への作動油の供給を許容するように、作動する。具体的に、当該リリーフ弁38は、前記チャージ配管34とタンクとの間に介在し、その一次圧が前記設定圧以上である場合に開弁して前記チャージポンプ32の吐出する作動油をタンクに逃がすことにより当該作動油の閉回路4への補給を阻止する一方、前記一次圧が前記設定圧よりも低くなった場合に閉弁して前記チャージポンプ32から前記第1配管5または第2配管6への作動油の補給を許容する。
【0039】
前記回生回路40は、前記負荷2を前記下げ方向に動かすように前記油圧シリンダ10が作動する下げ駆動時に当該負荷2のもつ位置エネルギーまたは運動エネルギーの回生を行うとともに、当該負荷2の下げ方向の速度を制御するための回路である。具体的に、この回生回路40は、アキュムレータ42と、蓄圧弁44と、回生モータ46と、回生切換弁48と、を含む。
【0040】
前記アキュムレータ42は、前記下げ駆動時に前記油圧シリンダ10のへッド側室18から前記第2配管6に排出される作動油の一部を受け入れて蓄えるように、当該第2配管6に前記蓄圧弁44を介して接続されている。
【0041】
前記蓄圧弁44は、前記第2配管6から前記アキュムレータ42への作動油の流量を調節するために当該第2配管6と当該アキュムレータ42との間に介在するものであり、本発明に係るアキュムレータ流量調節器に相当する。この実施の形態に係る蓄圧弁44はパイロットポート44aを有するパイロット式の切換弁であり、当該パイロットポート44aに入力されるパイロット圧に対応した開度で開弁し、当該開度に対応した流量で前記第2配管6から前記アキュムレータ42への作動油の流入を許容する。前記パイロットポート44aは電磁比例弁45を介して図略のパイロット油圧源に接続されており、前記電磁比例弁45は前記コントローラ60から入力される流量指令信号に対応した開度で開弁することにより、前記パイロット油圧源から前記パイロットポート44aに入力されるパイロット圧の大きさを変化させる。また、蓄圧弁44と第2配管6との間には、前記アキュムレータ42から前記第2配管6への作動油の逆流を阻止するチェック弁41が介在する。
【0042】
前記回生モータ46は、前記アキュムレータ42により蓄えられた作動油のエネルギーによって駆動されることにより当該エネルギーを動力に変換する回生アクチュエータであり、前記アキュムレータ42に対して前記蓄圧弁44と並列に接続されている。回生モータ46は、詳しくは、前記アキュムレータ42から前記蓄圧弁44とは別の経路でタンクに至る配管の途中に設けられ、当該アキュムレータ42から供給される作動油のエネルギーによって回転駆動され、当該作動油を前記タンクに排出する。さらに、この実施の形態では当該回生モータ46が前記油圧ポンプ20,24とともに前記駆動源26に接続され、当該油圧ポンプ20,24の駆動について、当該回生モータ46が生成する動力によって前記駆動源26をアシストすることが可能となっている。
【0043】
前記回生切換弁48は、前記アキュムレータ42と前記回生モータ46との間に介在し、当該アキュムレータ42から当該回生モータ46への作動油の供給を許容する位置と遮断する位置とに切換えられる。この実施の形態に係る回生切換弁48はパイロットポート48aを有する切換弁であり、当該パイロットポート48aに入力されるパイロット圧に対応した開度で開弁し、当該開度に対応した流量で前記アキュムレータ42から前記回生モータ46への作動油の供給を許容する。前記パイロットポート48aは電磁比例弁49を介して前記パイロット油圧源に接続されており、前記電磁比例弁49は前記コントローラ60から入力される回生指令信号に対応した開度で開弁することにより、前記パイロット油圧源から前記パイロットポート48aに入力されるパイロット圧の大きさを変化させる。また、前記回生切換弁48と前記回生モータ46との間には、当該回生モータ46から前記アキュムレータ42への逆流を阻止するチェック弁47が設けられている。
【0044】
前記回生切換弁48は、前記のような流量調節機能を有するものでない、単なる切換弁、例えば電磁切換弁であってもよい。前記回生モータ46の駆動速度は、前記回生切換弁48による流量調節により制御可能であるが、当該回生モータ46が図1に示される可変容量型油圧モータである場合にはその容量の操作によっても制御可能である。
【0045】
前記圧力センサ51,52,53は、それぞれが設けられた位置での作動油の圧力を感知し、これを電気信号である圧力検出信号に変換する。具体的に、圧力センサ51は、前記第1配管5内の作動油の圧力P1を検出し、圧力センサ52は前記第2配管6内の作動油の圧力P2を検出する。この第2配管6内の圧力P2は、前記下げ駆動時に前記油圧シリンダ10のへッド側室18から排出される作動油の圧力である「排出圧」に相当する。すなわち、前記圧力センサ52は「排出圧検出器」に相当する。前記圧力センサ53は、前記アキュムレータ42に導入される作動油の圧力Paを検出するものであり、この圧力は「アキュムレータ圧」に相当する。すなわち、圧力センサ53は本発明にいう「アキュムレータ圧検出器」に相当する。
【0046】
前記操作装置56は、操作部材57、例えば操作レバー、を備え、この操作部材57の操作方向及び操作量に対応した電気信号である操作信号を生成する。前記操作部材57の操作方向により、前記油圧ポンプ20の回転方向すなわち前記油圧シリンダ10の作動方向が指定され、前記操作部材57の操作量により前記油圧シリンダ10の作動速度が指定される。この実施の形態では、当該操作部材57の操作により指定された速度が前記油圧シリンダ10の目標速度となる。
【0047】
前記圧力センサ51,52,53が生成する圧力検出信号及び前記操作装置56が生成する操作信号は、いずれも前記コントローラ60に入力される。コントローラ60は、例えばマイクロコンピュータからなり、前記圧力検出信号及び操作信号の入力に基づき、各種制御を行う。
【0048】
具体的に、この実施の形態に係るコントローラ60は、その主要な機能として、図2に示されるポンプ制御部62、速度制御部64及び回生制御部66を有する。
【0049】
前記ポンプ制御部62は、装置の運転状態に応じて前記各油圧ポンプ20,24の容量を変化させる。具体的には、当該油圧ポンプ20,24にそれぞれ付設されたレギュレータに容量指令信号を出力して当該油圧ポンプ20,24の傾転角を変化させる。油圧ポンプ20の傾転角については、ポンプ制御部62は、前記操作装置56から入力される操作信号に基づき、当該油圧ポンプ20の回転方向及び容量を決定し、当該回転方向及び容量に対応した油圧ポンプ20の傾転角を当該油圧ポンプ20に指令する。
【0050】
ポンプ制御部62は、さらに、前記下げ駆動時における有効な回生を行うために、当該下げ駆動時に前記油圧ポンプ20の吐出流量を予め設定された回生用流量に制限する機能、具体的には当該油圧ポンプ20の容量を予め設定された回生用容量qpまで下げる機能を有する。この回生用容量qpは、例えば当該油圧ポンプ20の最低容量またはこれに近い容量であることが好ましい。前記油圧ポンプ20が固定容量型油圧ポンプであって前記駆動源26が電動機である場合は、ポンプ制御部62は、前記下げ駆動時に当該電動機の回転数を予め設定された回生用回転数に制限する制御を行えばよい。
【0051】
前記速度制御部64は、前記上げ駆動時には前記蓄圧弁44を閉弁させて前記第2配管6からアキュムレータ42への作動油の流入を阻止する一方、前記下げ駆動時には前記蓄圧弁44を開弁させるとともに、前記油圧シリンダ10の作動速度すなわち収縮速度を目標速度に近づけるように、前記蓄圧弁44の開度を変化させる。この目標速度は、この実施の形態では前記のように操作装置56の操作部材57の操作により指定された速度であるが、それ以外の速度、例えば予め設定された速度であってもよい。前記速度制御部64は、具体的には、前記蓄圧弁44に接続された前記電磁比例弁45に流量指令信号を入力して当該電磁比例弁45から当該蓄圧弁44に当該流量指令信号に対応したパイロット圧を入力させることにより、前記蓄圧弁44における作動油の流量すなわち第2配管6からアキュムレータ42に流入する作動油の流量を調節する。前記油圧シリンダ10の収縮速度の制御の具体的手法については後に詳述する。
【0052】
前記回生制御部66は、前記回生切換弁48を開閉操作することにより、前記アキュムレータ42から前記回生モータ46への作動油の供給の制御、すなわち、当該アキュムレータ42に蓄えられた作動油のエネルギーを動力に変換する回生動作の制御、を行う。具体的には、前記回生切換弁48に接続された前記電磁比例弁49に回生指令信号を入力して当該電磁比例弁49から当該回生切換弁48に当該回生指令信号に対応したパイロット圧を入力させることにより、前記回生切換弁48における作動油の流量すなわちアキュムレータ42から回生モータ46に供給される作動油の流量を調節する。
【0053】
次に、前記コントローラ60が実際に行う演算制御動作及びこれに伴う装置の作用を、図3のフローチャートを併せて参照しながら説明する。
【0054】
まず、操作装置56の操作部材57が負荷2を下げ方向に動かす駆動を指令するように操作された場合(ステップS1でYES)、ポンプ制御部62は、補助油圧ポンプ24を停止させる一方で油圧ポンプ20を当該下げ方向に対応する方向すなわち第1方向に回転させるように指令信号を当該油圧ポンプ20のレギュレータに入力する(ステップS2)。換言すれば、油圧シリンダ10を収縮方向に作動させる回転方向、すなわち、油圧ポンプ20の第1ポート21から第1配管5を通じて油圧シリンダ10のロッド側室17に作動油を供給するとともに当該油圧シリンダ10のへッド側室18内の作動油を第2配管6を通じて油圧ポンプ20の第2ポート22に戻す方向、に油圧ポンプ20を回転させる。
【0055】
このように負荷2に重力が作用する方向の成分を含む下げ方向である収縮方向に油圧シリンダ10が作動するため、当該負荷2に作用する重力の分だけヘッド側室18の圧力が高くなる一方、ロッド側室17の圧力は低くなり、これにより、当該ヘッド側室18から高圧の作動油が排出される。
【0056】
この下げ駆動時において、回生制御部66は、回生切換弁48を閉弁させてアキュムレータ42から回生モータ46への作動油の供給を遮断し(ステップS3)、ポンプ制御部62は、回生を可能にすべく油圧ポンプ20の容量を回生用容量qpまで下げる(ステップS4)。一方、速度制御部64は蓄圧弁44を開弁させて第2配管6からアキュムレータ42への作動油の流入すなわちアキュムレータ42の蓄圧を許容するとともに、その流入する作動油の流量を調節することによって、前記油圧シリンダ10の下げ方向の作動速度すなわち収縮速度Vを、前記操作部材57の操作により指定された目標速度Vrに近づける制御を行う(ステップS5)。
【0057】
当該制御の具体的手法として、前記速度制御部64は、圧力センサ52が検出する排出圧である排出作動油の圧力(第2配管6内の圧力)P2と圧力センサ53が検出するアキュムレータ圧Paとの差から求められる作動油の流量、すなわち油圧シリンダ10からアキュムレータ42に導入される作動油の流量であるアキュムレータ導入流量Qaを、前記目標速度Vrに対応する前記排出作動油の流量である目標排出流量Qhrと前記油圧ポンプ20の回生用容量qpに対応するポンプ吸収流量Qpとの差である目標導入流量Qar=Qhr−Qpに近づけるように、アキュムレータ流量調節器である前記蓄圧弁44の開度を変化させる。当該速度制御部64は、このようにして、前記排出圧P2及びアキュムレータ圧Paという簡素な情報をもとに前記下げ駆動時における油圧シリンダ10の速度制御を行うことができる。
【0058】
当該制御の原理は次のとおりである。いま、前記油圧シリンダ10のヘッド側室18の面積をAhとすると、前記目標速度Vtに対応するヘッド側室18からの排出作動油の流量である目標排出流量QhrはQhr=Ah×Vrで表される。一方、油圧ポンプ20の回転数をNpとすると、前記回生用容量qpに対応する油圧ポンプ20の吸収流量Qpは、Qp=qp×Npで表される(従って、Qh>Qp=qp×Npとなるように前記回生用容量qpが設定されれば下げ駆動時のエネルギーの回生が可能である。)。
【0059】
この場合において、実際の排出作動油(油圧シリンダ10のへッド側室18から排出される作動油)の流量Qhと、蓄圧弁44を流れる作動油の流量すなわち前記第2配管6からアキュムレータ42に流入する作動油の流量であるアキュムレータ導入流量Qaとの関係は、Qa=Qh−Qpとなる。従って、当該蓄圧弁44における流量Qaを前記目標導入流量Qar=Qhr−Qpに近づけるように当該アキュムレータ導入流量Qaを調節すれば、実際の油圧シリンダ10の作動速度を前記目標速度Vrに近づけること、すなわち速度制御、が可能である。
【0060】
一方、前記蓄圧弁44における流量Qaは、当該蓄圧弁44の開口面積をAr、流量係数をCvとすると、前記圧力センサ52,53がそれぞれ検出する排出圧(第2配管6内の圧力)P2及びアキュムレータ圧Paから次式に基いて求められる。
【0061】
Qa=Ar×Cv×√(P2−Pa)…(1)
従って、速度制御部64は、前記排出圧P2及びアキュムレータ圧Paから前記(1)式に基づき求められるアキュムレータ導入流量Qaを前記目標導入流量Qarに近づけるように前記開口面積Arを操作する(すなわち電磁比例弁45に流量指令信号を入力する)フィードバック制御を実行すること、あるいは、前記の(1)式から導かれる次の(2)式を満足するように前記開口面積Arを前記排出圧P2及びアキュムレータ圧Paに基いて操作すること、により、前記油圧シリンダ10の下げ方向の作動速度を適正に制御することができる。
【0062】
Ar=Qar/[Cv×√(P2−Pa)]…(2)
一方、操作装置56の操作部材57が負荷2を上げ方向に動かす駆動を指令するように操作された場合(ステップS1でNO)、ポンプ制御部62は、補助油圧ポンプ24を作動させるとともに油圧ポンプ20を当該上げ方向に対応する第2方向に回転させるように、指令信号を入力する(ステップS6)。換言すれば、油圧シリンダ10を伸長方向に作動させる回転方向、すなわち、油圧ポンプ20の第2ポート22から第2配管6を通じて油圧シリンダ10のへッド側室18に作動油を供給するとともに当該油圧シリンダ10のロッド側室17内の作動油を第1配管5を通じて油圧ポンプ20の第1ポート21に戻す方向、に油圧ポンプ20を回転させる。
【0063】
このように負荷2に作用する重力に抗する上げ方向である伸長方向に油圧シリンダ10を作動させることから、その駆動には大きな動力が必要となる。また、へッド側室18とロッド側室17との面積差に相当する第2配管6への作動油の補給のために補助油圧ポンプ24の作動を要する。
【0064】
この上げ駆動時において、速度制御部64は、蓄圧弁44を閉弁させて第2配管6からアキュムレータ42への作動油の流入を阻止し(ステップS7)、ポンプ制御部62は、運転状態に応じて油圧ポンプ20の容量を制御する(ステップS8)。一方、回生制御部66は回生切換弁48を開弁させてアキュムレータ42から回生モータ46への作動油の供給を許容する(ステップS9)。これにより、回生モータ46は当該作動油のエネルギーを動力に変換し、その動力でもって、前記油圧ポンプ20,24の駆動について駆動源26のアシストを行う。これにより、油圧シリンダ10を上げ方向に駆動するのに必要な動力が確保されるとともに、下げ駆動時に回収されたエネルギーの有効活用が達成される。
【0065】
本発明において、回生アクチュエータが生成する動力の活用は、前記油圧ポンプ20,24の駆動に限られない。例えば、前記第1の実施の形態に係る回生モータ46が前記駆動源26とは別の駆動源に接続されてもよい。あるいは、当該駆動源26が前記油圧ポンプ20,24とは別の油圧機器にも接続されていて当該油圧機器を駆動する場合に、その油圧機器の駆動について前記駆動源26をアシストするように前記回生動力が用いられてもよい。この場合、回生制御部66は前記別の油圧機器の駆動力が要求されるときに前記アキュムレータ42から前記回生モータ46への作動油の供給を許容するように回生切換弁48を開くのがよい。
【0066】
この例を、第2の実施の形態として図4に示す。この第2の実施の形態に係る装置は、第1の実施の形態に係る装置の構成要素を全て含み、かつ、その駆動源26が前記油圧ポンプ20,24に加えて他の油圧シリンダ10Aを駆動するための他の油圧ポンプ20A及び補助油圧ポンプ24Aに接続されている。
【0067】
図4に示すように、前記油圧シリンダ10Aは、前記閉回路4の油圧シリンダ10と同様にシリンダ本体12、ピストン14及びロッド16を有し、当該ロッド16が上を向く姿勢で配置され、当該ロッド16の先端に負荷2Aが接続される。従って、油圧シリンダ10Aは、その伸長により前記負荷2Aの自重に抗して当該負荷2Aを上昇させ(上げ駆動状態)、逆にその収縮により前記負荷2Aの自重の向きに負荷2Aを下降させる(下げ駆動状態)。
【0068】
前記油圧ポンプ20Aは、前記油圧ポンプ20と同様に、前記油圧シリンダ10Aと閉回路4Aを構成するように当該油圧シリンダ10Aに接続され、前記補助油圧ポンプ24Aは前記油圧シリンダ10Aの伸長時に前記閉回路4Aへの作動油の補給を行う。具体的に、前記閉回路4Aは、前記閉回路4と同様、前記第1配管5、前記第2配管6、前記第1及び第2リリーフ弁7,8にそれぞれ相当する第1配管5A、第2配管6A、第1及び第2リリーフ弁7A,8Aを含む。また、前記チャージ回路30は、前記チャージポンプ32の吐出口と前記第1及び第2配管5A,6Aとを接続するように途中で分岐するチャージ配管34Aと、このチャージ配管34のうち前記第1配管5A及び第2配管6Aにそれぞれ分岐した部分に設けられる第1及び第2チェック弁35A,36Aを含む。
【0069】
この第2の実施の形態において、コントローラ60の回生制御部は、油圧シリンダ10の上げ駆動時に加え、前記油圧ポンプ20Aの駆動に大きな動力を要する前記油圧シリンダ10Aの上げ駆動時にもアキュムレータ42から回生モータ46への作動油の供給を許容するように回生切換弁48を開くのがよい。これにより、前記回生モータ46の作動時間すなわちアキュムレータ42の蓄えたエネルギーを動力に変換する時間を長くとることができ、これにより、当該回生モータ46として比較的小型のものを用いながら前記アキュムレータ42に蓄えられたエネルギーを有効に使い切ることができる。
【0070】
本発明に係るアキュムレータ流量調節器は、それ自身が流量調節機能をもつもの、例えば、前記コントローラ60の速度制御部64から指令される流量を実現するようにセルフコントロールを行うことが可能なものであってもよい。その例を第3の実施の形態として図5に示す。
【0071】
ここに示される装置は、図1に示される装置の蓄圧弁44に代えてアキュムレータ流量調節器70を備え、このアキュムレータ流量調節器70は、可変絞り71と流量調節弁72とを有する。
【0072】
前記可変絞り71は、パイロットポート71aを有する油圧パイロット式の流量制御弁からなり、当該パイロットポート71aに入力されるパイロット圧に対応した開口面積を実現するように開閉作動する。前記パイロットポート71aには、電磁比例弁75を介して図略のパイロット油圧源が接続されている。コントローラ60の速度制御部64は、前記電磁比例弁75に流量指令信号を入力することにより、その流量指令信号に対応したパイロット圧を前記パイロット部71aに入力させる。
【0073】
前記流量調節弁72は、前記可変絞り71の上流側圧力と下流側圧力との差である前後差圧、つまり、この可変絞り71を流れる作動油の流量に対応する差圧、を常に一定の設定差圧に保つように、開閉動作する。具体的に、この流量調節弁72は、互いに反対の側に位置する一対のパイロットポートを有し、各パイロットポートに前記可変絞り71の上流側圧力及び下流側圧力がそれぞれパイロット圧として入力され、その差に対応する開度で流量調節弁72が開弁する。従って、この流量調節弁72の開度は、前記可変絞り71の開度と当該可変絞り71における作動油の流量とによって決定される。
【0074】
このアキュムレータ流量調節器70によれば、前記可変絞り71の開度及び当該可変絞り内における作動油の流量によって変化する当該可変絞り71の前後差圧が決められた設定差圧になるように流量調節弁72の開度が自動的に調節されるため、コントローラ60の速度制御部64は、図1に示される圧力センサ52,53すなわち排出圧検出器及びアキュムレータ圧検出器を要することなく、前記目標導入流量Qar(=Qhr−Qp)に対応する流量指令信号を電磁比例弁75に入力するだけの単純な操作で、油圧シリンダ10の排出作動油の流量を前記目標速度に対応した目標排出流量Qhrに近づける制御を行うことが可能である。
【0075】
本発明に係る速度制御部は、あるいは、前記排出作動油の流量を直接検出してこの流量を前記目標速度に対応する流量に近づけるように前記アキュムレータ流量調節器を操作する、つまりこの流量調節器におけるアキュムレータ流量を変化させる、ものであってもよい。
【0076】
本発明において、下げ駆動時に油圧アクチュエータから排出される作動油の逃がし先は、前記アキュムレータのみに限定されない。例えば、下げ駆動時に前記油圧アクチュエータから排出される作動油は、前記アキュムレータと、前記油圧アクチュエータ及び前記油圧ポンプを含む前記閉回路とは別の回生油圧回路、例えば図4に示された閉回路4Aと、の双方に逃がされてもよい。その具体例を第4の実施の形態として図6に示す。
【0077】
図6に示す装置において、前記回生油圧回路に相当する前記閉回路4Aのうち、油圧ポンプ20A及び油圧シリンダ10Aがそれぞれ回生側油圧ポンプ及び回生側油圧アクチュエータに相当する。さらに、この装置は、前記図4に示される装置の構成要素に加え、回生用配管80と、チェック弁82と、回生流量調節弁84と、圧力センサ86と、を含む。
【0078】
前記回生用配管80は、前記閉回路4における第2配管6またはこれと連通する補助油圧ポンプ24の吐出側配管と、前記閉回路4Aにおける第2配管6Aつまり上げ駆動時に油圧ポンプ20Aから油圧シリンダ10Aのへッド側室に作動油を供給するための配管と、を結ぶように、これらの配管に接続される。
【0079】
前記回生流量調節弁84は、回生流量調節器に相当するもので、前記閉回路4と回生油圧回路である前記閉回路4Aとの間、この実施の形態では前記チェック弁82と前記閉回路4Aとの間、に介在するように前記回生用配管82の途中に設けられる。この実施の形態に係る回生流量調節弁84は、パイロットポート84aを有するパイロット式の切換弁であり、当該パイロットポート84aに入力されるパイロット圧に対応した開度で開弁し、当該開度に対応した流量で前記閉回路4の第2配管6から前記閉回路4Aの第2配管6Aへの作動油の流入を許容する。前記パイロットポート84aは電磁比例弁85を介して前記パイロット油圧源に接続されている。前記電磁比例弁85は前記コントローラ60から入力される回生流量指令信号に対応した開度で開弁することにより、前記パイロット油圧源から前記パイロットポート84aに入力されるパイロット圧の大きさを変化させる。前記チェック弁82は、前記回生流量調節弁84と前記閉回路4の第2配管6との間に介在し、回生油圧回路である前記閉回路4Aから前記第2配管6への作動油の逆流を阻止する。
【0080】
前記圧力センサ86は、前記閉回路4Aのうち前記回生用配管80を通じて作動油が導入される部位の圧力である導入部位圧P3を検出することが可能な位置、例えば図6に示すように回生用配管80における前記回生流量調節弁84の下流側の位置、に設けられ、当該導入部位圧P3に対応する電気信号である圧力検出信号を生成し、前記コントローラ60に入力する。この圧力センサ86は、前記圧力センサ82と協働して、前記排出圧(下げ駆動時に油圧シリンダ10のへッド側室18から排出される作動油の圧力)P2と前記導入部位圧P3のうちいずれの圧力が高いかについての情報を生成する圧力検出部を構成する。
【0081】
一方、図6に示すコントローラ60は、図2に示されるポンプ制御部62、速度制御部64及び回生制御部66に加え、図7に示す回生ポンプ制御部68を含む。
【0082】
この実施の形態に係る前記コントローラ60の速度制御部64は、図6に示されるように前記電磁比例弁45に加えて前記電磁比例弁85に接続されており、当該電磁比例弁85を通じて前記回生流量調節弁84の開閉操作を行うことにより、回生流量すなわち前記閉回路4から前記閉回路4Aに供給される作動油の流量の制御を行う。具体的には、閉回路4における下げ駆動時において、図3に示されるステップS5の動作に代え、下記のように、図8に示されるステップS51〜S53の動作を行う。
【0083】
ステップS51:速度制御部64は、回生油圧回路である閉回路4Aの運転状態が予め定められた回生条件を満たすか否かの判定を行う。この実施の形態に係る回生条件は次のとおりである。
【0084】
I)閉回路4Aが上げ駆動状態にあること。すなわち、油圧ポンプ20Aが第2配管6Aを通じて油圧シリンダ10Aのへッド側室に作動油を供給することにより当該油圧シリンダ10Aを伸長させてそのロッドの先端の負荷2Aをその自重に抗して上昇させる状態にあること。この条件は、回生油圧回路の具体的構成によって適宜設定される。例えば、回生油圧回路が負荷を水平方向に動かすものである場合、その負荷の移動方向にかかわらず駆動状態にあることが回生条件として設定されてもよい。
【0085】
II)圧力センサ52により検出される排出圧(すなわち下げ駆動時に油圧シリンダ10のへッド側室18から排出される作動油の圧力)P2が、圧力センサ56により検出される導入部位圧P3よりも高いこと。つまり、閉回路4から閉回路4Aへの作動油の流れが可能であること。前記チェック弁82が存在する場合、この条件IIは省略することも可能であるが、当該条件IIの考慮は閉回路4Aから閉回路4への作動油の逆流の防止をより確実にする。
【0086】
ステップS52:前記回生条件を満たさない場合、速度制御部64は、図3に示されるステップS5と同等の速度制御を行う。すなわち、速度制御部64は、前記回生流量調節弁84を閉弁させて蓄圧弁44のみを開弁させ、下げ駆動時における油圧シリンダ10の作動速度(この実施の形態では収縮速度)を目標速度に近づけるように前記蓄圧弁44の開度の調節を行う。
【0087】
ステップS53:前記回生条件を満たす場合、速度制御部64は、前記蓄圧弁44に加えて前記回生流量調節弁84を開弁させ、閉回路4から回生用配管80を通じての閉回路4Aへの作動油の供給を許容する。さらに、下げ駆動時における油圧シリンダ10の作動速度(この実施の形態では収縮速度)を目標速度に近づけるように、前記蓄圧弁44及び前記回生流量調節弁84の双方の開度の調節を行う。
【0088】
両弁44,84の開度の調節による下げ駆動速度の制御は、例えば、一方の弁の開度を固定して他方の弁の開度のみを変化させることによって行うことが可能であるが、アキュムレータ42の必要容量の削減という観点からは、速度制御部64は例えば以下のような演算制御動作を行うことが、好ましい。
【0089】
i)第1の実施の形態と同じく、例えば操作部材57の操作により指定される油圧シリンダ10の目標速度Vrと、油圧シリンダ10のヘッド側面積をAhとに基づき、目標排出流量Qhr=Ah×Vrを算定する。
【0090】
ii)目標回生流量Qgr、すなわち、回生流量調節弁84を通じて閉回路4から閉回路4Aに供給される作動油の流量の目標値、を決定する。この目標回生流量Qgrの最大値、つまり、回生可能な流量の最大値である最大回生流量Qgmaxは、下記の式(3)に示されるように、回生流量調節弁84の最大許容流量Qvmaxと、油圧シリンダ10からの実際の排出流量Qhと、回生流量Qgが0であるとき、つまり回生流量調節弁84が閉じているとき、に上げ駆動のために補助油圧ポンプ24に求められる吐出流量Qapの中からの高位選択により決定される。
【0091】
Qgmax=Max{Qvmax,Qh,Qap}…(3)
ここで、前記最大許容流量Qvmaxは、回生流量調節弁84の開度が最大のときに当該回生流量調節弁84を通過することが可能な作動油の流量の最大値であり、当該回生流量調節弁84の流量係数をCvg、最大開口面積をAgmaxとすると、次式(4)で表される。
【0092】
Qvmax=Cvg×Agmax×√(P2−P3)…(4)
目標回生流量Qgrは、前記最大回生流量Qgmax以下の範囲内で任意に設定されることが可能であるが、当該目標回生流量Qgrを最大回生流量Qgmaxに近い値、すなわちその許容範囲内でなるべく大きな値に設定することが、アキュムレータ42の必要容量の削減効果を高める。
【0093】
以上のようにして決定された目標回生流量Qgrに基づき、下記式(5)によって回生流量調節弁84の開度Agrを決定することができる。
【0094】
Agr=Qgr/[Cvg×√(P2−P3)]…(5)
このようにして0よりも大きな目標回生流量Qgrが設定された場合、当該目標回生流量Qgrにかかわらず油圧シリンダ10の作動速度(下げ速度)を目標速度Vrに近づけるためには、つまり前記回生流量調節弁84を通じての回生にかかわらず油圧シリンダ10からの排出流量Qhを前記目標速度Vrに対応する目標排出流量Qhrに近づけるためには、蓄圧弁44における流量Qaを回生用の目標導入流量Qagr=Qhr−Qp−Qgrに近づけるように当該蓄圧弁44の開度が調節されればよい。ここでQpは前記第1の実施の形態と同じくステップS4で設定される回生用容量に相当するポンプ流量である。
【0095】
一方、回生ポンプ制御部68は、前記目標回生流量Qgrの分だけ回生側油圧ポンプ、例えば補助油圧ポンプ24Aの吐出流量を減らす制御を行う(ステップS54)。具体的には、補助油圧ポンプ24Aの回転数をNapとするとき、当該補助油圧ポンプ24Aの容量qapgを次式(6)により与えられる容量に設定する。
【0096】
qapg=(Qap−Qgr)/Nap…(6)
この制御は、前記回生流量の有無及び大小にかかわらず上げ駆動時に回生側油圧アクチュエータである油圧シリンダ10Aに供給される作動油の総流量を安定させることを可能にする。このことは、油圧シリンダ10の負荷2の自重により上昇する当該油圧シリンダ10の排出側の圧力に対応するエネルギーを回生側油圧アクチュエータである油圧シリンダ10Aの上げ方向の駆動に効率よく利用しながら、油圧シリンダ10のヘッド側室への作動油供給流量とロッド側室からの作動油排出流量とのアンバランスに起因するキャビテーションや圧力の上昇を防ぐことを可能にする。
【0097】
なお、前記回生ポンプ制御部68は、前記補助油圧ポンプ24Aの吐出流量に代えて油圧ポンプ20Aの吐出流量を前記目標回生流量の分だけ減らす制御を行ってもよい。また、実際の回生流量の検出が可能である場合にはその回生流量の分だけ油圧ポンプ20Aまたは補助油圧ポンプ24Aの吐出流量を減らす制御が行われてもよい。
【0098】
一方、第4の実施の形態において、閉回路4についての上げ駆動指令が行われているときは(ステップS1でNO)、速度制御部64は前記蓄圧弁44に加えて前記回生流量調節弁84も閉弁させ(ステップS7A)、それ以外は第1の実施の形態と同様の制御を行う(ステップS6,S8,S9)。
【0099】
図6に示される装置では、油圧アクチュエータである油圧シリンダ10及び回生側油圧アクチュエータである油圧シリンダ10Aがともに上向きの姿勢、すなわち、当該油圧シリンダ10,10Aの伸長に伴ってこれらに連結される負荷2,2Aをその自重に抗して上昇させる姿勢、で配置されているが、これらの姿勢は同一でなくてもよい。例えば、第5の実施の形態として図9に示されるように、回生側油圧アクチュエータである油圧シリンダ10Aが下向きの姿勢、すなわち、当該油圧シリンダ10Aのロッド16がピストン14から下向きに延びていて当該油圧シリンダ10Aの収縮により負荷2Aをその自重に抗して上昇させる上げ駆動を行う姿勢、に配置されてもよい。この場合、前記上げ駆動のための油圧ポンプ20A,24Aから油圧シリンダ10Aへの作動油の供給は、当該油圧シリンダ10Aのロッド側室17につながる第1配管5Aを通じて行われるので、回生用配管80は当該第1配管5Aに接続されるのがよい。
【0100】
また、前記回生油圧回路は、前記閉回路4Aのような閉回路、つまり、回生側油圧ポンプが吐出する作動油が当該回生側油圧ポンプと回生側油圧アクチュエータとの間を循環する回路、に限らず、開回路、すなわち、回生側油圧ポンプがタンク内の作動油を吸入して吐出し、回生側油圧アクチュエータから排出される作動油がタンクに戻される回路、であってもよい。
【0101】
その例を第6の実施の形態として図10に示す。この第6の実施の形態に係る装置は、前記回生油圧回路として開回路4Bを備え、この開回路4Bは、回生側油圧ポンプである油圧ポンプ20Bと、回生側油圧アクチュエータである油圧シリンダ10Bと、これら油圧ポンプ20Bと油圧シリンダ10Bとの間に介在するコントロールバルブ90と、を備える。
【0102】
前記油圧シリンダ10Bは、図9に示される油圧シリンダ10Aと同様に、ロッド16がを向く姿勢で配置され、当該ロッド16の先端に負荷2Bが連結されている。従って、油圧シリンダ10Bは、その収縮により前記負荷2Bをその自重に抗して上昇させ、その収縮により前記負荷2Bをその自重の向きに下降させる。
【0103】
前記コントロールバルブ90は、3位置油圧切換弁からなり、中立位置と上げ駆動位置と下げ駆動位置とを有する。コントロールバルブ90は、前記中立位置では油圧ポンプ20Bと油圧シリンダ10Bとの間を遮断し、前記上げ駆動位置では、油圧ポンプ20Bが吐出する作動油を第1配管5Bを通じて油圧シリンダ10Bのロッド側室18に供給して当該油圧シリンダ10Bを収縮させるとともに当該油圧シリンダ10Bのへッド側室17から第2配管6Bに排出される作動油をタンクに導き、前記下げ駆動位置では、油圧ポンプ20Bが吐出する作動油を第2配管6Bを通じて油圧シリンダ10Bのへッド側室18に供給して当該油圧シリンダ10Bを伸長させるとともに当該油圧シリンダ10Bのロッド側室17から第1配管5Bに排出される作動油をタンクに導く。
【0104】
このように回生油圧回路が開回路4Bである場合も、この開回路4Bにおいて上げ駆動のために作動油の供給を行うための配管、すなわち、前記第1配管5B、に回生用配管80が接続されることにより、閉回路4での下げ駆動時に油圧シリンダ10から排出される高圧の作動油のエネルギーを開回路4Bでの上げ駆動に用いること、すなわち、有効な回生を行うこと、が可能である。
【0105】
本発明では、上述した油圧回路に別の回路がさらに付加されることを除外しない。その例を第7の実施の形態として図11に示す。この図11に示す装置は、前記図6に示される閉回路4及び閉回路4Aに加えて閉回路4Cを備える。この閉回路4Cは、閉回路4Aにおける油圧ポンプ20A,24A及び油圧シリンダ10Aと同様の油圧ポンプ20C,24C及び油圧シリンダ10Cを含み、当該油圧ポンプ20C,24Cが前記油圧ポンプ20,24,20A及び24Aと共通の駆動源26に連結されている。
【0106】
この実施の形態において、閉回路4における回生切換弁48は、前記駆動源26に連結される油圧ポンプ20,24,20A,24A,20C,24Cのうち少なくとも一つの駆動について駆動源26のアシストを要する場合に開弁されるのが、よい。
【符号の説明】
【0107】
2,2A,2B,2C 負荷
4 閉回路
4A 閉回路(回生油圧回路)
4B 開回路(回生油圧回路)
10 油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)
10A,10B 油圧シリンダ(回生側油圧アクチュエータ)
20 油圧ポンプ
20A,20B 油圧ポンプ(回生側油圧ポンプ)
24A,24B 補助油圧ポンプ(回生側油圧ポンプ)
26 駆動源
30 チャージ回路
40 回生回路
42 アキュムレータ
44 蓄圧弁(アキュムレータ流量調節器)
46 回生モータ(回生アクチュエータ)
48 回生切換弁
52 圧力センサ(排出圧検出器)
53 圧力センサ(アクチュエータ圧検出器)
60 コントローラ
62 ポンプ制御部
64 速度制御部
66 回生制御部
68 回生ポンプ制御部
70 アキュムレータ流量調節器
71 可変絞り
72 流量調節弁
80 回生用配管
84 回生流量調節弁
86 圧力センサ(圧力検出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11