(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205355
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】イソソルビドジエステルの増粘剤としての使用
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20170914BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20170914BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20170914BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20170914BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20170914BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
C09K3/00 103H
C11D3/20
A61K8/49
A61Q1/14
A61Q5/02
A61K47/22
【請求項の数】35
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-523221(P2014-523221)
(86)(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公表番号】特表2014-525972(P2014-525972A)
(43)【公表日】2014年10月2日
(86)【国際出願番号】EP2012003245
(87)【国際公開番号】WO2013017256
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年7月30日
(31)【優先権主張番号】102011109428.1
(32)【優先日】2011年8月4日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ピルツ・モリース・フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】クルーク・ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シェール・フランツ−クサーファー
【審査官】
吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−537938(JP,A)
【文献】
特開昭59−175408(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0113664(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/108738(WO,A2)
【文献】
国際公開第2010/115565(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
A61K 8/、9/、47/
A61P
A61Q
C11D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/FSTA/FROSTI(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I)、
【化1】
(式中、
Rは、
7個の炭素原子を有する線
状の飽和アルキル基であるか、又は、7
個の炭素原子を有する線
状の一価又は多価不飽和アルケニル基である。)
で表される、一種又は多種の化合物の増粘剤としての使用であって、
その際、該式(I)の一種又は多種の化合物が、ソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、イソソルビド、イソソルビドモノエステル及びカルボン酸からなる群から選択される一種又は多種の他の物質を含有する組成物中で使用され、かつ、
その際、該式(I)の一種又は多種の化合物、及びソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、イソソルビド、イソソルビドモノエステル及びカルボン酸からなる群から選択される一種又は多種の化合物の混合物の組成物中でのOH価が250以下であり、かつ、
その際、該組成物が、ソルビトール及びソルビトールエステルからなる群から選択される一種又は多種の化合物を含み、かつ、
その際、該組成物が、式(I)の一種又は多種の化合物、及び、該式(I)の一種又は多種の化合物1.0重量部に基づいて、
II) 0.001〜0.2重量部の式(II)の一種又は多種の次式(II)で表されるイソソルビドモノエステル、
【化2】
(式中、Rは、上記で与えられた意味を有する。)、
を追加的に含有する、上記の使用。
【請求項2】
式(I)における残基Rが、7個の炭素原子を有する線状の飽和アルキル残基であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式(I)における残基Rが、7個の炭素原子を有する線状の不飽和アルケニル残基であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記式(I)で表される一種又は多種の化合物の量が、該式(I)で表される一種又は多種の化合物、ソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、イソソルビド、イソソルビドモノエステル及びカルボン酸からなる群から選択される化合物の全重量に基づいて、70重量%以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載の使用。
【請求項5】
前記量が80重量%以上であることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記量が85重量%以上であることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
前記イソソルビドモノエステルが、イソソルビドモノカプリレートであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の使用。
【請求項8】
前記組成物が、式(I)の一種又は多種の化合物1.0重量部に基づいて、
II) 0.01〜0.15重量部の、式(II)で表される一種又は多種のイソソルビドモノエステルを含有し、その際、該イソソルビドモノエステルがイソソルビドモノカプリレートであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一つに記載の使用。
【請求項9】
前記組成物が、式(I)の一種又は多種の化合物1.0重量部に基づいて、
II) 0.05〜0.13重量部の、式(II)で表される一種又は多種のイソソルビドモノエステルを含有し、その際、該イソソルビドモノエステルがイソソルビドモノカプリレートであることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記式(I)の一種又は多種の化合物がイソソルビドジカプリレートであることを特徴とする、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が、前記式(I)の一種又は多種の化合物、及びソルビタン及びカルボン酸RaCOOH(式中、Raは、5〜11個の炭素原子を有する線状もしくは分岐状の、飽和アルキル基、又は5〜11個の炭素原子を有する線状もしくは分岐状の一価又は多価不飽和アルケニル基である。)からの、一種又は多種のソルビタンエステルを含有し、かつ、前記式(I)の一種又は多種の化合物と、上記の一種又は多種のソルビタンエステルとの重量比が、70:30〜100:0であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の使用。
【請求項12】
前記一種又は多種のソルビタンエステルが、1,4−ソルビタン及び/又は1,5−ソルビタン及びカルボン酸RaCOOHからなるソルビタンエステルから選択されることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記カルボン酸のRaが、7〜9個の炭素原子を有する線状もしくは分岐状の、飽和アルキル基、又は7〜9個の炭素原子を有する線状もしくは分岐状の一価又は多価不飽和アルケニル基であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
前記カルボン酸のRaが、7個の炭素原子を有する線状もしくは分岐状の、飽和アルキル基、又は7個の炭素原子を有する線状もしくは分岐状の一価又は多価不飽和アルケニル基であることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記重量比が、80:20〜100:0であることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一つに記載の使用。
【請求項16】
前記重量比が、90:10〜100:0であることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一つに記載の使用。
【請求項17】
前記重量比が、95:5〜100:0であることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一つに記載の使用。
【請求項18】
前記ソルビタン及びカルボン酸RaCOOHからなる一種又は多種のソルビタンエステルが、ソルビタン及びカプリル酸からなるソルビタンエステルから選択されることを特徴とする、請求項11〜17のいずれか一つに記載の使用。
【請求項19】
前記ソルビタン及びカルボン酸RaCOOHからなる一種又は多種のソルビタンエステルが、1,4−ソルビタン及び/又は1,5−ソルビタン及びカプリル酸からなるソルビタンエステルから選択されることを特徴とする、請求項11〜17のいずれか一つに記載の使用。
【請求項20】
前記ソルビタンエステルが、ソルビタンジカプリレートであることを特徴とする、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記式(I)で表される一種又は多種の化合物、及びソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、イソソルビド、イソソルビドモノエステル及びカルボン酸からなる群から選択される一種又は多種の化合物の混合物のOH−価が、200以下であることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一つに記載の使用。
【請求項22】
前記OH−価が150以下であることを特徴とする、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記OH−価が100以下であることを特徴とする、請求項21に記載の使用。
【請求項24】
前記組成物が、完成した前記組成物の全重量に基づいて、少なくとも50重量%の量で前記式(I)の一種又は多種の化合物を含有することを特徴とする、請求項1〜23のいずれか一つに記載の使用。
【請求項25】
前記組成物が、完成した前記組成物の全重量に基づいて、少なくとも60重量%の量で前記式(I)の一種又は多種の化合物を含有することを特徴とする、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記組成物が、完成した前記組成物の全重量に基づいて、少なくとも70重量%の量で前記式(I)の一種又は多種の化合物を含有することを特徴とする、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
化粧料用、皮膚用又は薬剤用組成物における、植物保護用調合物における、洗濯洗剤もしくは洗剤における、又は着色料もしくはコーティング剤における、請求項1〜26のいずれか一つに記載の使用。
【請求項28】
前記化粧料用、皮膚用又は薬剤用組成物、前記植物保護用調合物、前記洗濯洗剤もしくは洗剤、又は前記着色料もしくはコーティング剤が、前記式(I)の一種又は多種の化合物を、完成した化粧料用、皮膚用又は薬剤用組成物、植物保護用調合物、洗濯洗剤もしくは洗剤、又は着色料もしくはコーティング剤の全重量に基づいて、0.01〜10.0重量%の量で含有することを特徴とする、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記量が0.1〜5.0重量%であることを特徴とする、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記量が0.2〜3.0重量%であることを特徴とする、請求項28に記載の使用。
【請求項31】
前記化粧料用、皮膚用又は薬剤用組成物、前記植物保護用調合物、前記洗濯洗剤もしくは洗剤、又は着色料もしくはコーティング剤が、水性若しくは水性−アルコール性ベースに基づいて形成されるか、あるいはエマルションもしくは分散液として存在することを特徴とする、請求項27〜30のいずれか一つに記載の使用。
【請求項32】
前記化粧料用、皮膚用又は薬剤用組成物、前記植物保護用調合物、前記洗濯洗剤もしくは洗剤、又は着色料もしくはコーティング剤が、エマルションとして存在することを特徴とする、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記化粧料用、皮膚用又は薬剤用組成物、前記植物保護用調合物、前記洗濯洗剤もしくは洗剤、又は前記着色料もしくはコーティング剤が、2〜11のpH値を有することを特徴とする、請求項27〜32のいずれか一つに記載の使用。
【請求項34】
前記pH値が4.5〜8.5であることを特徴とする、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記pH値が5.5〜6.5であることを特徴とする、請求項33に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増粘剤としてのイソソルビドジエステルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
産業界では、例えば、化粧料用、皮膚用又は薬剤用組成物、植物保護用調合物、洗浄剤もしくは清浄剤、又は着色料もしくは塗料のような製品の粘度を目的に応じて調整するために、増粘剤が使用されている。この目的のための多数の増粘剤が知られている。これらの増粘剤は、合成により製造することができるか、あるいは天然の原材料をベースとするものであった。
【0003】
しかし、例えば、合成ポリマーのような、合成して製造された増粘剤の多くが使用の際に、それらの製造が、しばしば煩雑であり、そして合成原材料をベースとするという欠点を有する。それとは対照的に、天然の原材料をベースとする増粘剤の多くが使用の際には、そのような増粘剤を含有する多くの製品の外観は改善の余地があるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/108738A2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、上述の欠点を有さないか、あるいは、少なくとも部分的に改善され、そしてさらには、有利な増粘性能を示す増粘剤を提供するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、次の式(I)の化合物、
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、
Rは、5〜11個、好ましくは7〜9個、そして特に好ましくは7個の炭素原子を有する線状もしくは分岐状の飽和アルキル基であるか、又は、5〜11個、好ましくは7〜9個、そして特に好ましくは7個の炭素原子を有する線状もしくは分岐状の一価又は多価不飽和アルケニル基である。)
によって、この課題が解決されることが今や見出された。
【0009】
それゆえ、本発明の対象は、次式(I)、
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、
Rは、5〜11個、好ましくは7〜9個、そして特に好ましくは7個の炭素原子を有する線状もしくは分岐状の飽和アルキル基であるか、又は、5〜11個、好ましくは7〜9個、そして特に好ましくは7個の炭素原子を有する線状もしくは分岐状の一価又は多価不飽和アルケニル基である。)
で表される一種又は多種の化合物の、増粘剤としての使用である。
【0012】
式(I)の化合物は、例えば、イソソルビドのような再利用可能な原材料をベースとしており、イソソルビドは、糖から得ることができる。これの製造は、当業者に知られた方法に従って製造することができる。例えば、式(I)の化合物は、慣用的かつ当業者に公知の方法に従ってイソソルビドの、カルボン酸のような酸成分によるエステル化によって製造できる。式(I)の化合物を含有する製品の外観は、その化合物の存在によって不利な影響を受けない。例えば、天然の増粘剤として、しばしば製品の表面を“脆性”のあるいは規格外のもしくは滑らかさのない表面にする、キサンタンガムの使用と比較して、式(I)の化合物を用いることにより、滑らかな表面を有する、増粘された製品を製造することができる。
【0013】
少なくとも一部が再生性原材料をベースとし、増粘剤として使用可能な組成物は、すでに知られている。
【0014】
国際公開第2010/108738A2号(Evonik)(特許文献1)は、ヒト又は動物の身体部分の清浄及びケアのための、ソルビタンカルボン酸エステルを含有する調合物を開示しており、ここで、ソルビタンカルボン酸エステルのカルボン酸部分は、6〜10個の炭素を含有するカルボン酸から誘導され、そしてソルビタンカルボン酸エステルは、350超の水酸基価(OH−価)を有すること、さらには、上述のソルビタンカルボン酸エステルの、清浄用もしくは手入れ用調合物中の粘度調整剤、ケア用品の活性成分(Pflegewirkstoff)、泡発生剤又は溶解剤としての使用が開示されている。
【0015】
式(I)の化合物は、例えば、当業者に知られた方法に従って製造することができる。例えば、式(I)の化合物は、慣用的かつ当業者に公知の方法に従ってイソソルビドのエステル化によって製造でき、その際、イソソルビド自体も、エステル化に使用された酸成分も、購入によって得ることができる。
【0016】
好ましくは、式(I)で表される一種又は多種の化合物中の残基Rは、7〜9個の炭素原子を有する線状の飽和アルキル残基である。
【0017】
特に好ましくは、式(I)で表される一種又は多種の化合物中の残基Rは、7個の炭素原子を有する線状の飽和アルキル残基である。
【0018】
本発明によれば、式(I)で表される一種又は多種の化合物は、単独で、又は一種又は多種のその他の物質を含有する組成物中で増粘剤として使用することができる。これらの組成物は、以下で“組成物A”と呼ぶ。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、組成物Aは、式(I)で表される一種又は多種の化合物、及びソルビトール、ソルビトールエステル(ソルビトールエステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ペンタエステル及び/又はヘキサエステルであってよい。)、ソルビタン、ソルビタンエステル(ソルビタンエステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステル及び/又はテトラエステルであってよい。)、イソソルビド、イソソルビドモノエステル及びカルボン酸からなる群から選択される、一種又は多種のその他の物質を追加的に含有する。“ソルビタン”は、例えば、1,4−ソルビタン又は1,5−ソルビタンであってよい。カルボン酸自体も、上述のエステルの酸成分に存在するカルボン酸も、式RCHOOHに対応しており、ここで、Rは、式(I)で与えられた意味を有し、好ましくは、7個の炭素原子を有する線状の飽和アルキル残基であり、つまり、カルボン酸RCOOHは、好ましくはカプリル酸である。上記の式(I)で表される一種又は多種の化合物の量は、該式(I)で表される一種又は多種の化合物、ソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、イソソルビド、イソソルビドモノエステル及びカルボン酸からなる群から選択される化合物の全重量に基づいて、70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、そして特に好ましくは85重量%以上である。
【0020】
本発明の特に好ましい実施形態において、組成物Aは、式(I)で表される一種又は多種の化合物、及び、追加的に、
(II) 次式(II)、
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、Rは、式(I)で与えられた意味を有する。)、
で表される一種又は多種のイソソルビドモノエステルを含有し、そしてその際、イソソルビドモノエステルは、好ましくはイソソルビドモノカプリレートである。
【0023】
この中で、さらに好ましくは、上述の組成物Aは、式(I)で表される一種又は多種の化合物、及び、
II) 0.001〜0.2、好ましくは0.01〜0.15、そして特に好ましくは0.05〜0.13重量部の、式(II)で表される一種又は多種のイソソルビドモノエステル、
をそれぞれ式(I)で表される一種又は多種の化合物1.0重量部、特に好ましくは、イソソルビドジカプリレート1.0重量部に基づいて追加的に含み、その際、イソソルビドモノエステルは好ましくはイソソルビドモノカプリレートである。
【0024】
この中でもさらに好ましい本発明の実施形態において、前述の組成物Aは、カルボン酸RCOOHを全く含まないか、又は、式(I)で表される一種又は多種の化合物1.0重量部、及び好ましくはイソソルビドジカプリレート1.0重量部に基づいて、0.1重量部まで、好ましくは0.0001〜0.05重量部、そして特に好ましくは0.001〜0.01重量部のカルボン酸RCOOH(式中、Rは、式(I)で与えられた意味を有する。)を含み、その際、カルボン酸は、好ましくはカプリル酸である。
【0025】
本発明のさらなる、特に好ましい実施形態において、組成物Aは、式(I)で表される一種又は多種の化合物、及びソルビタン及びカルボン酸R
aCOOH(式中、Raは、5〜11個、好ましくは7〜9個、そして特に好ましくは7個の炭素原子を有する、線状又は分岐状の飽和アルキル基である。)からなる一種又は多種のソルビタンエステル、好ましくは、1,4−ソルビタン及び/又は1,5−ソルビタン及びカルボン酸R
aCOOHからなるソルビタンエステルから選択される、一種又は多種のソルビタンエステルを含有し、その際、式(I)で表される一種又は多種の化合物と前述の一種又は多種のソルビタンエステルの重量比は、70:30〜100:0、好ましくは80:20〜100:0、特に好ましくは90:10〜100:0、就中95:5〜100:0である。上記の“100:0”の重量比は、前述の組成物Aが、この、本発明の特に好ましい実施形態において、ソルビタンエステルを含有する必要がないことを意味する。
【0026】
上述の組成物Aのうち好ましいのは、ソルビタン及びカルボン酸R
aCOOHからなる、一種又は多種のソルビタンエステルが、ソルビタン及びカプリル酸からなるソルビタンエステルから選択される場合であり、好ましくは、1,4−ソルビタン及び/又は1,5−ソルビタン及びカプリル酸からなるソルビタンエステルから選択され、ソルビタンエステルは、特に好ましくはソルビタンジカプリレートである。
【0027】
これらの組成物Aにおいて、式(I)で表される一種又は多種の化合物、及び(場合によって含有される)ソルビタン及びカルボン酸R
aCOOHからなる、一種又は多種のソルビタンエステルの混合物のOH−価は、好ましくは250以下、特に好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下、就中、100以下である。
【0028】
本発明の別の特に好ましい実施形態において、組成物A中、式(I)で表される一種又は多種の化合物、及びソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、イソソルビド、イソソルビドモノエステル及びカルボン酸からなる群から選択される一種又は多種の化合物の混合物のOH−価は、250以下、好ましくは200以下、特に好ましくは150以下、就中、100以下である。
【0029】
また、本発明のさらに別の特に好ましい実施形態において、組成物Aは、ソルビトール及びソルビトールエステルから選択される化合物を含有しない。
【0030】
また、本発明のさらに別の特に好ましい実施形態において、組成物Aは、ソルビタン及びソルビタンエステルから選択される化合物を含有しない。
【0031】
組成物Aが、ソルビトール及びソルビトールエステル(ここで、このエステルの酸成分のカルボン酸は、好ましくはカプリル酸をベースとする。)からなる一種又は多種の化合物を含有する場合、これらの化合物は、一緒に、好ましくは、5.0重量%以下の量で、特に好ましくは3.0重量%以下の量で、さらに好ましくは1.0重量%以下の量で、就中、0.5重量%以下の量で組成物A中に含有され、ここで、重量%で示される量は、いずれも、完成した組成物Aの全重量に基づく。
【0032】
組成物Aが、ソルビタン及びソルビタンエステル(ここで、このエステルの酸成分のカルボン酸は、好ましくはカプリル酸をベースとする。)からなる一種又は多種の化合物を含有する場合、これらの化合物は、一緒に、好ましくは、20.0重量%以下の量で、特に好ましくは10.0重量%以下の量で、さらに好ましくは5.0重量%以下の量で、就中、1.0重量%以下の量で組成物A中に含有され、ここで、重量%で示される量は、いずれも、完成した組成物Aの全重量に基づく。
【0033】
本発明のさらに別の特に好ましい実施形態において、組成物Aは、完成した組成物Aの全重量に基づいて、式(I)で表される一種又は多種の化合物を少なくとも50重量%の量で、好ましくは少なくとも60重量%の量で、そして特に好ましくは、少なくとも70重量%の量で含有する。
【0034】
物質の水酸基価又はOH−価は、1gの物質をアセチル化する時に結合される酢酸と当量のKOH(mg)の量であると理解される。
【0035】
OH−価を測定するのに適した測定方法は、例えば、DGF C−V 17 a(53),Ph.Eur.2. 5.3 Method A及びDIN 53240である。
【0036】
本発明の範囲において、OH−価は、DIN 53240−2に準拠して測定される。この場合、次のようにして行う。均質化された測定試料を、正確に、0.1mgに対して1g計量する。20.00mlのアセチル化混合物(アセチル化混合物:1リットルのピリジン中で、50mlの無水酢酸を撹拌する。)を添加する。試料を、必要に応じて撹拌下でかつ加熱しながら、アセチル化混合物中に完全に溶解する。5mlの触媒溶液(触媒溶液:2gの4−ジメチルアミノピリジンを100mlのピリジン中に溶解する。)を添加する。反応容器を密閉し、そして10分間、55℃に加熱した水浴中に置き、そしてその場で混合する。その後、反応溶液を、完全に脱塩した10mlの脱塩水と混合し、反応容器を再度密閉し、もう一度、振とう水浴中で10分間反応させる。試料を室温(25℃)に冷却する。引き続き、50mlの2−プロパノール及び2滴のフェノールフタレインを添加する。この溶液を、苛性ソーダ溶液(苛性ソーダ、c=0.5mol/l)で滴定する(Va)。同じ条件下ではあるが、試料を用いずに、アセチル化混合物の作用を測定する(Vb)。
【0037】
試料の、作用測定における消費量及び滴定から、OH−価(OHZ)を、次の式に従って算出する。
【0038】
【数1】
【0039】
式中、
OHZ = 物質の水酸基価(mgKOH/g)
Va = 試料の滴定時の苛性ソーダ溶液の消費量(ml)
Vb = 試料(Wirkwerte)の滴定時の苛性ソーダ溶液の消費量(ml)
C = 苛性ソーダ溶液の物質濃度(モル/l)
t = 苛性ソーダ溶液の力価
M = KOH=56.11g/molのモル質量
E = 試料重量(g)
(Vb-Va)は、使用した苛性ソーダ溶液の量(ml)であり、測定する試料の上述のアセチル化時に結合する酢酸量の当量である。
【0040】
OH−価を測定するための上述の方法は、以下で“方法OHZ−A”と呼ぶ。
【0041】
好ましくは、本発明は、化粧料用組成物、皮膚用組成物又は薬剤組成物中、作物保護調合物中、洗浄剤もしくは清浄剤中、又は着色料もしくは塗料中において使用される。作物保護剤は、一種又は多種の殺虫剤を含有する。
【0042】
化粧料用組成物、皮膚用組成物又は薬剤組成物、作物保護調合物、洗浄剤もしくは清浄剤、又は着色料もしくは塗料は、式(I)で表される一種又は多種の化合物を、いずれも、完成した化粧料用組成物、皮膚用組成物又は薬剤組成物、作物保護調合物、洗浄剤もしくは清浄剤、又は着色料もしくは塗料の全重量に基づいて、好ましくは、0.01〜10.0重量%の量で、より好ましくは0.1〜5.0重量%の量で、そして特に好ましくは0.2〜3.0重量%の量で含有する。
【0043】
化粧料用組成物、皮膚用組成物又は薬剤組成物、作物保護調合物、洗浄剤もしくは清浄剤、又は着色料もしくは塗料は、好ましくは、50〜200,000mPa・sの範囲の、より好ましくは、500〜100,000mPa・sの範囲の、特に好ましくは2,000〜50,000mPa・sの範囲の、そして就中、5,000〜30,000mPa・s(Brookfield RVT、RV−Spindel−Satzにより、20℃において、1分当たり20回転での測定)を有する。
【0044】
化粧料用組成物、皮膚用組成物又は薬剤組成物は、好ましくは、液体、ゲル、泡、噴霧、ローション(Lotion)もしくはクリームの形態で存在する。
【0045】
化粧料用組成物、皮膚用組成物又は薬剤組成物、作物保護調合物、洗浄剤もしくは清浄剤、又は着色料もしくは塗料は、好ましくは、水性もしくは水性アルコール性ベースに基づいて構成されるか、又は、エマルションもしくは分散物として存在する。これらは、より好ましくは、エマルションとして、そして特に好ましくは、水中油型エマルションとして存在する。
【0046】
化粧料用組成物、皮膚用組成物又は薬剤組成物、作物保護調合物、洗浄剤もしくは清浄剤、又は着色料もしくは塗料は、さらなる助剤及び添加剤として、慣習的に使用される、例えば、油、ワックス、乳化剤、乳化助剤(Co−Emulgatoren)、分散剤、界面活性剤、消泡剤、可溶化剤、電解質、ヒドロキシ酸、安定剤、ポリマー、塗膜形成剤、(式(I)の化合物とは異なる)増粘剤、ゲル化剤、過脂肪化剤、再脂肪化剤、抗菌作用物質、生物起源剤、収れん剤、活性物質、脱臭剤、サンブロック剤、抗酸化剤、酸化剤、軟化剤、溶剤、着色剤、顔料、真珠様つや出剤、香料、乳白剤及び/又はシリコーンなど、それぞれの使用のための物質を全て含むことができる。
【0047】
水性もしくは水性アルコール性ベースに基づいて構成される化粧料用組成物、皮膚用組成物又は薬剤組成物、作物保護調合物、洗浄剤もしくは清浄剤、又は着色料もしくは塗料は、一種又は多種の界面活性剤を含有する組成物であることが好ましい。
【0048】
化粧料用組成物、皮膚用組成物又は薬剤組成物、作物保護調合物、洗浄剤もしくは清浄剤、又は着色料もしくは塗料は、好ましくは、2〜11、より好ましくは4.5〜8.5、そして就中、5.5〜6.5のpH値を有する。
【0049】
以下の例及び使用は本発明をより詳細に説明するものであるが、本発明はそれらに限定されるものではない。全てのパーセンテージは、別途示さない限り、重量%を意味する。
【実施例】
【0050】
増粘性能は、以下の条件下で測定した。
Brookfield RVT、RV−Spindel−Satzにより、20℃において、1分当たり20回転
【0051】
実験例:
A) イソソルビドジカプリレートの製造
窒素導入管を備えた1リットル−撹拌装置中の、219.0g(1.5モル)のイソソルビド及び461.4g(3.2モル)のカプリル酸を、撹拌下かつ窒素導入下で180℃に加熱した。反応水が留出しなくなるまで、反応投入物を180℃で加熱する(約28時間)。その後、温度を段階的に210℃まで上昇させる(全体で約30時間かける)。それから、残存する酸価が<2mgKOH/gに到達したら反応は終了する。透明で赤褐色の液体が得られる。
【0052】
反応生成物のさらなる分析特性:
酸価: 0.8mgKOH/g(DIN EN ISO 2114に従って測定)
水酸基価: 25.2mgKOH/g(DIN 53240−2に準拠した方法OHZ−Aに従って測定)
ケン化価: 54.6mgKOH/g(DIN EN ISO 3681に従って測定)
【0053】
さらなる精製のために、生成物を、≦1ミリバールの圧力で、かつ、210℃〜240℃の底部温度で蒸留した。251.6gの黄色の透明液が得られる。
【0054】
イソソルビドジカプリレートは次の組成を有する。
【0055】
【表1】
【0056】
B) 増粘性能の測定
Genapol(登録商標) LRO(ラウレス−2硫酸ナトリウム、水中27重量%)及びGenagen(登録商標) KB(ココベタイン、水中30重量%)、及び追加的に水の使用下で、該2種の界面活性剤を重量比8:2で、水中15重量%まで含有する混合物を製造した。この混合物に、製造例A)からのイソソルビドジカプリレートを添加し、そして得られた組成物の粘度を測定した。結果を以下の表1に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表1から明らかなように、イソソルビドジカプリレートは顕著な増粘作用を引き起こす。
【0059】
C) 使用例
本発明の使用を、例えば、以下の調合物中で行うことができる。調合物は、製造例A)で得られたイソソルビドジカプリレートを使用して製造される。
【0060】
【表3】
【0061】
製造:
I: AにBを加え、透明な溶液が得られるまで撹拌する。
II: IにCを加え、溶液が均質になるまで撹拌する。
III: DでpH値を7.0〜7.2に調整する。
IV: IIIにEを加える。
【0062】
【表4】
【0063】
製造:
I: 相Aを混合し、80℃に加熱する。
II: Bの成分を加え、Iにゆっくり加えて80℃で撹拌する。
III: 相Cを混合し、IIに加える。
IV: 60℃に冷却し、IIIにDを加える。
V: 40℃でIVにEを加える。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
調合物例3及び4の製造:
半量の水を仕込み、そして成分を、表に挙げた順に入れて撹拌する。それから残量の水を加える。透明で水性の組成物が得られる。