特許第6205375号(P6205375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6205375部分的なコーティングを備えた高多孔性セパレータフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205375
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】部分的なコーティングを備えた高多孔性セパレータフィルム
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20170914BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20170914BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M2/16 P
   H01M2/16 M
   B32B18/00 C
   B32B27/32 Z
【請求項の数】26
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-560268(P2014-560268)
(86)(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公表番号】特表2015-511053(P2015-511053A)
(43)【公表日】2015年4月13日
(86)【国際出願番号】EP2013000574
(87)【国際公開番号】WO2013131624
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年2月23日
(31)【優先権主張番号】102012004161.6
(32)【優先日】2012年3月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514144021
【氏名又は名称】トレオファン・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュ・デートレフ
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ・ベルトラム
(72)【発明者】
【氏名】クライン・ドミニク
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−168048(JP,A)
【文献】 特開2011−171290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/16
B32B 18/00
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの多孔性層を含み、かつこの層が少なくとも1種のプロピレンポリマーを含有し;
(i)多孔性フィルムの多孔率が30%〜80%であり;
(ii)多孔性フィルムの透過度が1000秒未満(ガーレー数)である、
二軸配向された単層または多層多孔性フィルムであって、
(iii)多孔性フィルムが部分的な無機コーティングを含み及びフィルムの一方の面の総表面積の10〜95%に、無機コーティングが施されており
(iv)コーティングされた多孔性フィルムが1200秒未満のガーレー数を有する、
ことを特徴とし、
延伸される際のβ結晶質ポリプロピレンの変換によって、多孔性がもたらされ、この際、少なくとも1種のβ核形成剤がフィルム中に存在する、
フィルム。
【請求項2】
プロピレンポリマーがプロピレンホモポリマー及び/またはプロピレンブロックコポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
50〜95重量%のプロピレンホモポリマー及び/またはプロピレンブロックコポリマー、及び50〜10,000ppmのβ核形成剤を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
シャットダウン機能を有し、そしてコーティングされたフィルムが、このフィルムが140℃超に5分間加熱された後に、6000秒を超えるガーレー数を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項5】
多孔性層が、多孔性フィルムにシャットダウン機能を与える材料を含む請求項4に記載のフィルムであって、前記材料がポリエチレンを含み及び存在するプロピレンポリマー及び/またはプロピレンブロックコポリマーに対して少なくとも5重量%の量で存在することを特徴とする、前記フィルム。
【請求項6】
無機コーティングが、D50値として表して、0.005〜10μmの範囲の粒度または少なくとも100kPaの圧縮強度を有する無機粒子を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項7】
無機粒子が、金属Al、Zr、Si、Sn、Ti、及び/またはYの非電導性酸化物を含むことを特徴とする、請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
無機粒子が、分子式SiOを有するケイ素の酸化物、ならびに分子式AlNaSiOを有する混合酸化物、及び分子式TiOを有するチタンの酸化物をベースとする粒子を含み、結晶質形態、非晶質形態、または混合形態で存在し得ることを特徴とする、請求項6または7に記載のフィルム。
【請求項9】
無機コーティングが、0.05μm〜10μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項10】
無機コーティングが、ポリ二塩化ビニレン(PVDC)をベースとする少なくとも一種の最終固結バインダー(endverfestigen Binder)をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項11】
無機コーティングが、多孔性フィルム上に直接施与されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項12】
フィルムの一方の面の総表面積の20〜95%に、無機コーティングが施されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項13】
無機コーティングがセラミックコーティングであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一つに記載のフィルム。
【請求項14】
(i)単層または多層多孔性ポリプロピレンフィルムを押し出すステップであって、プロピレンポリマーとβ核形成剤との混合物を押出機内で溶融させ、フラットダイを通して引取ロール上に押し出すステップと;
(ii)次いで、β微結晶を形成させながら、押し出された溶融フィルムを冷却及び固化するステップと;
(iii)次いで、このフィルムを縦方向に延伸し、その後、横方向に延伸するステップであって、横延伸を40%/秒未満の遅い延伸速度で実施し、フィルムが、製造後に1000秒未満のガーレー数を有するステップと;
(iv)以下(a)から(e):
(a)無機粒子20重量%〜90重量%;
(b)ポリ二塩化ビニレン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、グラフトポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、及びそれらの混合物から選択されるバインダー1重量%〜30重量%;
(c)場合によっては、モノアルコールまたはポリアルコール1重量%〜30重量%; (d)場合によっては、分散液安定剤及び/または消泡剤0.00001重量%〜10重量%;
(e)分散液の成分全部の合計が100重量%となるような水
を含む分散液を施与するステップと、
(v)分散液でコーティングした多孔性フィルムを乾燥させるステップと
を含む、請求項1〜13のいずれか一つに記載のコーティングされたフィルムを製造する方法であって、多孔性フィルムが、部分的な無機コーティングをし及びフィルムの一方の面の総表面積の10〜95%に、無機コーティングが施されていることを特徴とする、前記方法。
【請求項15】
コーティングされる多孔性フィルムがステップ(iv)において0.02〜6μmの粗さ(DIN4768、カットオフ2.5mm)を有することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
フィルムの一方の面の総表面積の20〜95%に、無機コーティングが施されていることを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
無機コーティングがセラミックコーティングであることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
高エネルギーまたは高性能システムにおけるセパレータとしての、請求項1〜13のいずれか一つに記載のフィルムの使用。
【請求項19】
リチウム、リチウムイオン、リチウム−ポリマー、及びアルカリ土類金属バッテリーにおけるセパレータとしての、請求項1〜13のいずれか一つに記載のフィルムの使用。
【請求項20】
請求項1〜13のいずれか一つに記載のフィルムを含有する高エネルギーまたは高性能システム。
【請求項21】
請求項1〜13のいずれか一つに記載のフィルムを含有するリチウム、リチウムイオン、リチウム−ポリマー、及びアルカリ土類金属バッテリー。
【請求項22】
請求項1〜13のいずれか一つに記載のコーティングされたフィルムを製造する方法であって、コーティングされていない多孔性フィルムを、無機粒子でできた粉体でコーティングすることを特徴とする、前記方法。
【請求項23】
粒子が、分子式SiOを有するケイ素の酸化物、並びに分子式AlNaSiOを有する混合酸化物、及び分子式TiOを有するチタンの酸化物をベースとする粒子を含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
フィルムの表面が、コーティングの前に、コロナ、火炎またはプラズマで処理されていないことを特徴とする、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
フィルムの表面が、コーティングの前に、コロナ、火炎またはプラズマで処理されており、次いで処理された表面に対しコーティングが行われることを特徴とする、請求項14または22または23に記載の方法。
【請求項26】
コーティングの後にガーレー数が、600ガーレー秒未満しか高まらないことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一つに記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングされた多孔性フィルム及びセパレータとしてのその使用、ならびにそのフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代のデバイスは、場所に関係なく使用することができるバッテリーまたは充電式バッテリーなどのエネルギー源を必要とする。バッテリーは、処分しなければならないという欠点を抱えている。その結果、主電源(mains electrical supply)に接続された充電ユニットを用いて、繰り返し充電され得る充電式バッテリー(二次電池)がますます使用されるようになっている。例として、正しく使用した場合、従来のニッケル−カドミウム充電式バッテリー(NiCd充電式バッテリー)は、充電サイクル約1000回に及ぶ耐用寿命を有し得る。
【0003】
高エネルギー及び高性能システムによって今では、リチウム、リチウムイオン、リチウム−ポリマー、及びアルカリ土類金属バッテリーを充電式バッテリーとして使用することが増えている。
【0004】
バッテリー及び充電式バッテリーは常に、電解質溶液に浸漬している2つの電極、及びアノードとカソードとを分離するセパレータからなる。様々な充電式バッテリーの種類は、使用される電極材料、使用される電解質、及びセパレータにおいて異なる。バッテリーセパレータのタスクは、バッテリー内でカソードをアノードから物理的に分離しておくか、または充電式バッテリー内でカソードをアノードから物理的に分離しておくことである。セパレータは、内部短絡を防止するために、2つの電極を互いに電気的に絶縁する隔膜でなければならない。しかしながら同時に、セパレータは、電気化学反応が電池内で起こり得るように、イオンに対しては透過性でなければならない。
【0005】
内部抵抗が可能な限り低く、高いパッキング密度を得ることができるように、バッテリーセパレータは薄くなければならない。これは、良好な動作特性及び高いキャパシタンスを保証するための唯一の方法である。加えて、セパレータは、電解質を吸収する必要があり、電池が満たされた場合には、ガス交換を保証する必要がある。織物などが以前は使用されたが、この機能は今では主に、不織布及び膜などの微細有孔材料によって果たされている。
【0006】
リチウムバッテリーでは、短絡の発生が問題である。熱負荷下では、リチウムイオンバッテリー内のバッテリーセパレータが溶融してしまい、壊滅的な結果を伴う短絡をもたらす恐れがある。リチウムバッテリーが機械的な損傷を受けたり、または充電ユニット内の不良エレクトロニクスによって過充電された場合には、類似のリスクがある。
【0007】
リチウムイオンバッテリーの安全性を向上させるために過去には、シャットダウンセパレータ(シャットダウン膜)が開発された。そのような特殊なセパレータは、リチウムの融点または着火点よりもかなり低い所与の温度で、その細孔を非常に迅速に閉鎖する。この手法では、リチウムバッテリー内における短絡の破局的結果は大部分回避される。
【0008】
しかしながら同時に、セパレータは、高い融点を有する材料によって提供される高い機械的強度を有することも必要である。したがって、例えば、ポリプロピレン膜が、その良好な貫入抵抗によって有利であるが、ポリプロピレンの融点は、リチウムの引火点(170℃)に非常に近い約164℃である。
【0009】
リチウム技術に基づく高エネルギーバッテリーは、可能な限り大きな電気エネルギーを最小可能体積で利用することができる必要のある用途で展開されている。これは例えば、電気自動車において使用するためのトラクションバッテリーでの場合であり、他にも、最大エネルギー密度が低重量で必要な他の移動用途、例えば、航空旅行及び宇宙旅行において使用するためのトラクションバッテリーでの場合である。現在、350〜400Wh/Lまたは150〜200Wh/kgのエネルギー密度が、高エネルギーバッテリーでは標的化されている。特殊な電極材料(例えば、Li−CoO)を使用し、ハウジング材料を経済的に使用することによって、これらの高エネルギー密度は得られる。したがって、パウチセル型(pouch cell type)のLiバッテリーでは、個々のバッテリーユニットは現在、フィルムのみによって互いに分離されている。この理由から、内部短絡及び過熱の場合には、爆発様燃焼反応が、隣接する電池にまで広がるので、そのような電池内のセパレータに対する要求はさらに大きくなっている。
【0010】
そのような用途のためのセパレータ材料は、以下の特性を有さなければならない:小さい比体積を保証するために、かつ内部抵抗を低くしておくために、可能な限り薄くなければならない。そのような低い内部抵抗を保証するために、セパレータが高い多孔率を有することも重要である。さらに、低い比重量を有するように、軽くなければならず、かつ完全に安全でなければならない。これは、過熱または機械的損傷の場合には、バッテリーの燃焼または爆発をもたらすさらなる化学的反応が回避されるように、アノード及びカソードが常時、分離したままであることを意味する。
【0011】
従来技術では、ポリプロピレン膜と、より低い融点を有する材料、例えば、ポリエチレンから構成される追加の層との組合せが既知である。短絡または他の外部影響によって過熱された場合には、ポリエチレン層は溶融して、多孔性ポリプロピレン層の細孔を閉鎖し、その結果、バッテリー内でのイオンの流れ、したがって電流の流れが遮断される。さらに、温度がさらに上昇すると(160℃超)、ポリプロピレン層も溶融して、アノード及びカソードの接触による内部短絡、ならびにその結果として起こる問題、例えば、自己発火及び爆発はもはや防止することができない。さらに、ポリエチレン層とポリプロピレンとの接着に問題があるので、これらの層は、積層によってしか組み合わせることができないか、またはこれら2種の群のうちの特定のポリマーしか、同時押出することができない。高エネルギー用途におけるそのようなセパレータは、安全性に関して不十分である。この種のフィルムは、WO2010048395号(特許文献1)に記載されている。
【0012】
米国特許出願公開第2011171523号(特許文献2)には、溶剤法によって得られる耐熱性セパレータが記載されている。その方法では、第1のステップで、無機粒子(チョーク、シリケート、または酸化アルミニウム)を原料(UHMW−PE)に、オイルと一緒に配合する。次いで、このブレンドを金型を介して押し出して、プレフィルム(pre−film)を形成し、細孔を作成するために、溶剤を使用して、オイルをプレフィルムから除去し、次いでこのフィルムを延伸して、セパレータを形成する。したがって、セパレータ中の無機粒子によって、バッテリー内のアノード及びカソードを激しい過熱下でも分離しておくことが保証される。
【0013】
しかしながら、その方法は、粒子がセパレータの機械的特性を弱化させ、加えて、粒子の凝集によって、傷及び不規則な細孔構造が生じ得るという欠点を抱えている。
【0014】
米国特許出願公開第2007020525号(特許文献3)には、ポリマーをベースとするバインダーと共に無機粒子を加工することによって得られるセラミックセパレータが記載されている。このセパレータによっても、激しく過熱されても、バッテリー内のアノード及びカソードを分離したままにすることが保証される。しかしながら、製造プロセスに費用がかかり、セパレータの機械的特性は不十分である。
【0015】
独国特許第19838800号(特許文献4)は、積層構造を有する電気的セパレータを提案しており、この電気的セパレータは、多数の開口部を備え、その上にコーティングを有する平坦で柔軟な基材を含む。基材の材料は、金属、合金、プラスチック、ガラス、及び炭素繊維、またはそのような材料の組合せから選択され、コーティングは、導電性ではない平坦で連続する多孔性セラミックコーティングである。セラミックコーティングを使用することで、耐熱性及び耐化学薬品性は約束される。しかしながら、支持材料によって、その種のセパレータは非常に厚く、製造に問題があることが判明している。それというのも、傷のない広範囲のコーティングは、相当な技術的経費を用いて初めて生成することができるためである。
【0016】
独国特許第10208277号(特許文献5)では、セパレータの重量及び厚さを、不織ポリマーを使用することによって低減しているが、この場合も、その明細書に記載されているセパレータの実施形態は、殊にこの出願の教示によると、可能な限り大きな細孔をセパレータ内で得ることが特に強調されているので、リチウム高エネルギーバッテリーについてセパレータに課されている要件のすべては満たしていない。しかしながら、5μmまでのその明細書において記載されている粒子を用いると、この場合、数個の粒子しか上下に位置しないので、10〜40μm厚のセパレータを製造することはできない。したがって、セパレータは必然的に、高い傷及び欠陥密度(flaw and defect density)(例えば、穴、クラックなど)を有する。
【0017】
WO2005038946号(特許文献6)には、織物または不織ポリマー繊維から形成された支持材と、この支持材の上及び間にあり、接着剤を使用して支持材と結合されている多孔性無機セラミック層とからできた耐熱性セパレータが記載されている。この場合も、コーティングが傷を有さないことを保証することと、その結果生じる厚さ及び重量が問題となる。
【0018】
有機コーティング層の接着が既に極めて不十分であり、したがって、接着促進剤を使用する必要があることが既知であるので、延伸ポリプロピレンフィルムを無機材料でコーティングすることは、現在まで、多くは実施されていない。この問題は、例えば、米国特許第4794136号(特許文献7)に記載されている。この場合、メラミン/アクリレート下塗剤を、ポリオレフィンフィルムとPVDCコーティングとの間の接着促進剤として使用することが記載されている。しかしながら、接着促進剤は、細孔を閉鎖する傾向を有するので、抵抗が不必要に増大する。バッテリーを調製する間のコーティングの剥離によって、追加の安全性リスクが生じる。さらに、とりわけ電解質の導電性にマイナスの作用を有さないように、接着促進剤は、Liバッテリー内で使用される有機電解質に不溶性でなければならない。
【0019】
欧州特許出願公開第1173330号(特許文献8)は、セラミックコンデンサーの製造における支持フィルムとしてのboPPフィルムの使用に関する。この多層フィルムは、ベース層と少なくとも一つのカバー層(A)から構成され、この際、カバー層(A)は、プロピレンポリマーと少なくとも一種の非相容性のポリオレフィンを含み、及び前記の非相容性のポリオレフィンは、LDPE、HDPE、MDPE、エチレン−プロピレンコポリマーまたはシクロオレフィンポリマーまたはシンジオタクチックポリマーである。このフィルムには、一つの面でセラミックコーティングが施され、このコーティングは乾燥され、次いで支持フィルムから剥がされる。この発明では、boPPフィルムに対するセラミックコーティングの低い接着性を利用している。
【0020】
本発明の枠内において、意外にも、特定の表面構造を有するポリプロピレンセパレータは、下塗剤を使用しなくても、部分的にコーティングすることができ、この際、粒子は、バインダーを少量で使用してまたはバインダーを使用しなくとも表面構造中に接着性を有し、そしてさらに加工するために十分な接着を示すことが見出された。下塗剤を使用せずとも、複数のコーティングに対する接着も与えられる。
【0021】
ポリオレフィンセパレータは現在、様々な方法、すなわち、充填剤法;冷延伸、抽出法、及びβ微結晶法を使用して製造することができる。これらの方法における基本的な相違は、細孔を生じさせる多様な機構にある。
【0022】
例として、非常に大量の充填剤を加えることによって、多孔性フィルムを製造することができる。充填剤とポリマーマトリックスとの不適合性によって、延伸の間に細孔を作成する。しかしながら、高い多孔率を得るために必要な40重量%までの大量の充填剤は、高い延伸比にもかかわらず、機械的強度に有害な作用を有するので、そのような製品は、高エネルギー電池においてセパレータとして使用することはできない。
【0023】
いわゆる「抽出法」では、原理的には、適切な溶剤を使用して、ポリマーマトリックスから成分を放出することによって、細孔を作成する。添加剤及び適切な溶剤の性質において異なる数多くの変形形態が開発されている。有機添加剤及び無機添加剤の両方が抽出され得る。この種の抽出は、フィルムを製造する際の最後のプロセスステップとして実施され得るか、または後続の延伸ステップと組み合わされ得る。この場合の欠点は、生態的及び経済的な懸念のある抽出ステップである。
【0024】
さらに以前のものだが、成功している方法は、非常に低温でポリマーマトリックスを延伸することに基づく(冷延伸)。この目的のために、フィルムを初めに押し出し、次いで、数時間にわたって焼戻して、その結晶質成分を増大させる。次のプロセスステップで、多数の傷を非常に小さなマイクロクラックの形態で作成するために、フィルムを縦方向に非常に低温で延伸する。次いで、傷を有するこの事前延伸フィルムを同じ方向に、より高温で、かつより高い係数で再び延伸するが;このことによって欠陥が拡大して、ネットワーク様構造を形成する細孔になる。これらのフィルムは、高い多孔率と、良好な機械的強度とを、それらが延伸される方向、一般的には縦方向では兼ね備えている。しかしながら、横方向でのその機械的強度はまだ不十分であるので、その貫入抵抗は不十分であり、かつそれらは、縦方向に極めて分裂しやすくなっている。全体として、この方法はコスト集約的である。
【0025】
多孔性フィルムを製造するための他の既知の方法は、β核形成剤をポリプロピレンと混合することに基づく。β核形成剤によって、溶融物が冷却するにつれて、ポリプロピレンは高濃度の「β微結晶」を形成する。後続の縦延伸の間に、β相はポリプロピレンのα変態へと変換される。これらの異なる結晶形は異なる密度を有するので、多数の顕微鏡的傷も、このステップで先ず作成され、それらが、後続の延伸によって裂けて細孔になる。この方法によって製造されたフィルムは高い多孔率及び良好な機械的強度を縦方向及び横方向に有し、それらは非常に対費用効果が高い。単軸に冷間延伸されたセパレータと比べて、これは、本発明にとって重要な表面構造を形成する。これらのフィルムは、本明細書において下記では、多孔性βフィルムと称される。多孔率を向上させるために、横延伸の前に、縦方向でのより高度な配向を導入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】WO2010048395号
【特許文献2】米国特許出願公開第2011171523号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007020525号
【特許文献4】独国特許第19838800号
【特許文献5】独国特許第10208277号
【特許文献6】WO2005038946号
【特許文献7】米国特許第4794136号
【特許文献8】欧州特許出願公開第1173330号
【特許文献9】独国特許第102010018374号
【特許文献10】独国特許第3610644号
【特許文献11】独国特許第4420989号
【特許文献12】欧州特許第0557721号
【特許文献13】WO2011047797A
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】J.o.Appl.Polymer Science,Vol.74,p.:2357−2368,1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
したがって、本発明の課題は、一方では、高い多孔率及び透過度ならびに傑出した機械的強度を有する多孔性の柔軟なフィルムを提供することであり、他方では、耐熱性の材料でコーティングし、そして過熱された時に、アノード及びカソードを、多孔性フィルムの溶融後に直接に接触することから保護することにある。このフィルムは、高エネルギーバッテリー中においても十分な安全性を保証するべきである。さらに、多孔性の柔軟なフィルムはまた、セパレータ膜として使用する場合に内部短絡に対して十分な保護を提供すべきである。
【0029】
意外にも、少なくとも1つの多孔性層を含み、この層が少なくとも1種のプロピレンポリマー及びβ核形成剤を含有し、及びコーティング前に1000秒未満のガーレー数を有するフィルムを延伸する際のβ結晶質ポリプロピレンの変換によって多孔性がもたらされる二軸配向された単層または多層多孔性フィルムにセラミックコーティングを施与し、かつコーティングを、連続的な層がフィルムの表面上に形成しないように少量で施与すると、要求される安全性を提供する多孔性ポリオレフィンフィルムをベースとする無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングされたセパレータフィルムを製造することができることを見出した。
【0030】
したがって、本発明は、少なくとも1つの多孔性層を含み、この層が少なくとも1種のプロピレンポリマーを含有し、
(i)多孔性フィルムの多孔率が30%〜80%であり;かつ
(ii)コーティングする前の多孔性フィルムの透過度が1000秒未満(ガーレー数)である、
二軸配向された単層または多層多孔性フィルムであって、
(iii)多孔性フィルムが、部分的な無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを含み;かつ
(iv)コーティングされた多孔性フィルムが1200秒未満のガーレー数を有する、
ことを特徴とするフィルムに関する。
【0031】
セパレータフィルム
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムをベースとする、無機系の、好ましくはセラミック部分コーティングされたセパレータフィルムは、ポリプロピレン(BOPP)から形成され、非常に高い多孔率及び1000秒未満の高い透過度(ガーレー数)を有する多孔性の二軸配向されたフィルムを含む。そのようなBOPPフィルムをセパレータフィルムとして使用することは既に知られている。これらのフィルムは、好ましくは、β核形成剤を含有する。フィルムを延伸する際のβ結晶質ポリプロピレンの変換によって、本発明のフィルムの多孔率がもたらされ、その際、少なくとも1種のβ核形成剤がフィルム中に存在する。
【0032】
この種の多孔性BOPPフィルムはまた、二重層コンデンサ(DSK)においてセパレータとして使用するためにも特に適している。
【0033】
縦延伸の後に、コーティングのために本発明によって使用される多孔性フィルムは、縦方向に中程度の配向を有し、その後に、横方向に配向されるので、BOPPフィルムとして、それらは高い多孔率及び非常に高い透過度を有することとなり、かつ、縦方向への分裂傾向は緩和される。この場合、横延伸を非常に遅い延伸速度で、好ましくは、40%/秒未満の速度で実施することが有利である。
【0034】
コーティングとして本発明によって使用されるフィルムは、単層フィルムとしてまたは多層フィルムとして構成され得る。ポリプロピレンポリマー及びβ核形成剤を押出機内で溶融させ、スロットダイを通して引取ロール上に押し出すそのような単層または多層多孔性ポリプロピレンフィルムの製造は既に、独国特許第102010018374号(特許文献9)に詳述されている。溶融フィルムは、β微結晶を形成しながら引取ロール上で冷却して、固化する。次に、このフィルムを縦方向に延伸し、その直後に、横方向に延伸する。
【0035】
すぐに横延伸する代わりに、コーティングのために本発明によって使用されるフィルムを、縦方向に延伸した後に巻き取ることもでき、後で、第2の横延伸手順で巻き出し、横延伸温度まで加熱し、横方向に延伸することもでき、その際、縦延伸手順のための延伸速度は、横延伸手順の延伸速度よりも速いか、または遅い。
【0036】
本発明によるコーティングのために使用される多孔性BOPPフィルムは、プロピレンポリマー、好ましくはプロピレンホモポリマー及び/またはプロピレンブロックコポリマーから構成され、β核形成剤を含有する少なくとも1つの多孔性層を含む。必要な場合には、多孔性及び他の必要な特性を損なわない限り、他のポリオレフィンが、そこに少量含有されてよい。さらに、必要な場合には、微孔性層はまた、それぞれ有効量の通常の添加剤、例えば、安定剤及び/または中和剤を含有してよい。
【0037】
適切なプロピレンホモポリマーはプロピレン単位98重量%〜100重量%、好ましくは99重量%〜100重量%を含有し、150℃以上、好ましくは155℃〜170℃の融点(DSC)及び一般的に、230℃及び2.16kgの力で0.5〜10g/10分、好ましくは2〜8g/10分のメルトフローインデックス(DIN 53735)を有する。層に好ましいプロピレンホモポリマーは、15重量%未満、好ましくは1重量%〜10重量%のn−ヘプタン可溶性画分を有するプロピレンホモポリマーである。少なくとも96%、好ましくは97〜99%の高い鎖アイソタクチシティを有するアイソタクチックプロピレンホモポリマー(13C−NMR;トリアッド(triad)法)も有利に使用することができる。これらの原料は、当技術分野ではHIPP(高アイソタクチックポリプロピレン)またはHCPP(高結晶質ポリプロピレン)ポリマーとして知られており、それらのポリマー鎖の高度な立体規則性、比較的高い結晶化度、及び比較的高い融点(90%〜96%未満の13C−NMRアイソタクチシティを有し、使用することもできるプロピレンポリマーと比較した場合に)によって識別される。
【0038】
プロピレンブロックコポリマーは、140℃超〜170℃、好ましくは145℃〜165℃、殊に150℃〜160℃の融点、及び120℃超で、好ましくは125〜140℃の範囲で始まる溶融範囲を有する。コモノマー含有率、好ましくはエチレン含有率は、1重量%〜20重量%の範囲、例えば、好ましくは1重量%〜10重量%の範囲である。プロピレンブロックコポリマーのメルトフローインデックスは一般的に、1〜20g/10分、好ましくは1〜10g/10分の範囲である。
【0039】
場合によっては、多孔性層は、特性、殊に多孔率及び機械的強度を損なわない限り、他のポリオレフィンを追加的に含有することができる。他のポリオレフィンの例は、20重量%以下のエチレン含有率を有するエチレン及びプロピレンのランダムコポリマー、20重量%以下のオレフィン含有率を有するプロピレンとC〜Cオレフィンとのランダムコポリマー、ならびに10重量%以下のエチレン含有率を有し、かつ15重量%以下のブチレン含有率を有するプロピレン、エチレン、及びブチレンのターポリマーである。好ましい実施形態の一つでは、多孔性層は、プロピレンホモポリマー及び/またはプロピレンブロックコポリマーならびにβ核形成剤、さらには場合によっては、安定剤及び中和剤からのみ構成されている。
【0040】
好ましい実施形態の一つでは、本発明によってコーティングに使用される多孔性BOPPフィルムは、いわゆるメタロセン触媒を用いて製造されるポリオレフィンを全く含有しない。
【0041】
基本的に、多孔性層のためのβ核形成剤は、ポリプロピレン溶融物を冷却する際にポリプロピレンのβ結晶の形成を促進する任意の既知の添加剤であってよい。この種のβ核形成剤及びポリプロピレンマトリックス中におけるそれらの作用機序は、当技術分野でそれ自体知られており、以下で詳述することとする。
【0042】
ポリプロピレンは、様々な結晶相を有することが既知である。溶融物を冷却する際に、通常は、α結晶質PP形態が主に形成され;これは、155〜170℃、好ましくは158〜162℃の範囲の融点を有する。特異的な温度プロファイルを使用することによって、溶融物を冷却する際に、少量のβ結晶相を生成することができ、これは、単斜晶系α変態とは対照的に、145〜152℃、好ましくは148〜150℃のかなり低下した融点を有する。ポリプロピレンを冷却する際に増大した画分のβ変態を生成する添加剤、例えば、γ−キナクリドン、ジヒドロキナクリジン、またはフタル酸のカルシウム塩が当技術分野で既知である。
【0043】
本発明の目的のために、好ましくは、プロピレンホモポリマー溶融物を冷却する際に、40〜95%、好ましくは50〜85%(DSC)のβ画分を生成する高度に活性なβ核形成剤を使用する。β画分は、冷却したプロピレンホモポリマー溶融物のDSCから決定する。好ましくは例えば、本明細書で参照される独国特許第3610644号(特許文献10)に記載されているとおりの炭酸カルシウム及び有機二炭酸から形成される二成分β核形成系を使用する。これも本明細書で参照される独国特許第4420989号(特許文献11)に記載されているとおりのピメリン酸カルシウムまたはスベリン酸カルシウムなどの二炭酸のカルシウム塩が特に好ましい。加えて、欧州特許第0557721号(特許文献12)に記載されているジカルボキサミド、殊にN,N−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキサミドが、適切なβ核形成剤である。更に、WO2011047797A1(特許文献13)(この文献の内容は本明細書に掲載されたものとする)に記載のナノスケールの核形成剤、例えばナノ−ピメリン酸カルシウム及びナノ−スベリン酸カルシウムの使用が好ましい。本発明の意味において、ナノスケールとは、1〜500nmの範囲の平均粒子直径を意味する。
【0044】
β核形成剤に加えて、高い画分のβ結晶質ポリプロピレンを得るために、未延伸溶融フィルムが冷却している間、一定の温度範囲及びそれらの温度での滞留時間を維持することも重要である。溶融フィルムを好ましくは、60℃〜140℃、殊に80℃〜130℃、例えば85℃〜128℃の温度で冷却する。β微結晶の成長は、遅い冷却によっても促進されるので、選択された温度での必要な滞留時間が十分に長くなるように、引取速度、すなわち、溶融フィルムが第1の冷却ロール上を通過する速度を遅くすべきである。引取速度は好ましくは、25m/分未満、特に1〜20m/分である。滞留時間は一般的に、20〜300秒、好ましくは30〜200秒である。
【0045】
多孔性層は一般に、多孔性層の重量に対して表して、プロピレンホモポリマー及び/またはプロピレンブロックコポリマー45重量%〜100重量%未満、好ましくは50重量%〜95重量%、ならびに少なくとも1種のβ核形成剤0.001重量%〜5重量%、好ましくは50〜10000ppmを含有する。本発明の他の実施形態の一つでは、さらなるポリオレフィンが多孔性層中に存在することができる。それによって、プロピレンホモポリマーまたはブロックコポリマーの割合が相応して低減される。他のポリオレフィンとしては、例えばポリエチレンが使用される。一般に、層中の追加のポリマー、特にポリエチレンをベースとするポリマーの量は、0〜<40重量%、好ましくは5〜30重量%、殊に10重量%〜25重量%である。同様に、5重量%までのより多い量の核形成剤を使用する場合には、プロピレンホモポリマーまたはプロピレンブロックコポリマーの前述の割合を低減することとなる。加えて、層は、通常の安定剤及び中和剤、さらには場合によっては他の添加剤を2重量%未満の通常の低量で含有することができる。
【0046】
好ましい実施形態の一つでは、プロピレンホモポリマー及びプロピレンブロックコポリマーをブレンドすることによって、多孔性層を形成する。これらの実施形態での多孔性層は一般に、層に対する重量として表して、プロピレンホモポリマー50重量%〜85重量%、好ましくは60重量%〜75重量%、及びプロピレンブロックコポリマー15重量%〜50重量%、好ましくは25重量%〜40重量%、及び少なくとも1種のβ核形成剤0.001重量%〜5重量%、好ましくは50〜10000ppm、ならびに場合によっては、上述の安定剤及び中和剤などの添加剤を含有する。この場合も、0〜<10重量%、好ましくは0〜5重量%、殊に0.5重量%〜2重量%の量のさらなるポリオレフィンが存在してよく、次いで、プロピレンホモポリマーまたはブロックコポリマーの割合を応じて低減する。
【0047】
本発明の多孔性フィルムの特に好ましい実施形態の一つは、ナノスケールのピメリン酸カルシウムまたはスベリン酸カルシウム50〜10000ppm、好ましくは50〜5000ppm、殊に50〜2000ppmを多孔性層におけるβ核形成剤として含有し、この際、ナノスケールのピメリン酸カルシウムまたはスベリン酸カルシウムが好ましい。
【0048】
多孔性フィルムは、単層または多層であってよい。フィルムの厚さは一般的に、10〜100μm、好ましくは15〜60μm、例えば15〜40μmの範囲である。多孔性フィルムの表面に、電解質の充填を改善するために、コロナ処理、火炎処理、またはプラズマ処理を施すことができる。
【0049】
多層実施形態の一つでは、フィルムは、上記のとおりに構成されているさらなる多孔性層を含み、その場合、様々な多孔性層の組成は、必ずしも同じである必要はない。多層実施形態では、個々の層の厚さは一般的に、2〜50μmである。
【0050】
コーティングされる多孔性フィルムの密度は一般的に、0.1〜0.6g/cm、好ましくは0.2〜0.5g/cmの範囲である。施与される部分的なコーティングは、多孔性フィルムの密度を本質的に変えないか、または約1〜5%の僅かな程度でしか変えない。
【0051】
コーティングされるフィルムの泡立ち点は、350nm超であるべきではなく、好ましくは20〜350nm、殊に40〜300nm、特に好ましくは50〜300nmの範囲であるべきであり、平均細孔直径は、50〜100nmの範囲、好ましくは60〜80nmの範囲であるべきである。
【0052】
コーティングされる多孔性フィルム(BOPPフィルム)の多孔率は一般的に、30%〜80%、好ましくは50%〜70%の範囲である。
【0053】
コーティングされる多孔性フィルム(BOPPフィルム)は、0.02μm〜6μm、好ましくは0.3〜6μm、特に好ましくは0.5〜5μm、殊に0.5〜3.5μmである規定の粗さRz(DIN4768、カットオフ2.5mm)を有する。
【0054】
コーティングされる多孔性フィルム(BOPPフィルム)は、好ましくは35%〜99%のβ活性度を有する。
【0055】
他の実施形態の一つでは、コーティングされる多孔性BOPPフィルムはシャットダウン機能を有する。シャットダウン機能は、多孔性フィルム中に統合することができ、そうして多孔性フィルムは、上記の材料の他に、追加的に以下に記載のシャットダウン材料を含む。または、シャットダウン機能は、有形のシャットダウン層の形で、コーティングされる多孔性BOPPフィルム上に存在する。この場合、コーティングされる多孔性BOPPフィルムは少なくとも二層であり、この際、シャットダウン材料は、多孔性フィルムのポリマーと一緒なってシャットダウン層を形成する。シャットダウン層が有形のシャットダウン層として存在する場合には、この別個のシャットダウン層の厚さは、好ましくは3〜25μm、特に5〜15μmである。場合により、多孔性フィルムは、多孔性フィルムのポリマーと、シャットダウン材料のポリマーとからの混合物から構成される、二つのシャットダウン層を含んでいてもよい。
【0056】
シャットダウン材料としては、HDPEまたはMDPEなどのポリエチレンが好ましい。これらは、一般的に、ポリプロピレンと不相溶性であり、ポリプロピレンとの混合物中において別個の相を形成する。別個の相の存在は、例えばDSC測定において、ポリエチレンの融点範囲、一般的には115〜140℃の範囲内の別個の融解ピークによって示される。
【0057】
HDPEは、DIN53735に従い測定して、一般的に0.1超〜50g/10分、好ましくは0.6〜20g/10分のMFI(50N/190℃)、及びDIN53728,パート4またはISO1191に従い測定して一般的に100〜450cm/g、好ましくは120〜280cm/gの範囲の粘度数を有する。結晶化度は、35〜80%、好ましくは50〜80%である。DIN53479,メゾッドAまたはISO1183に従い測定した密度は、0.94超〜0.97g/cmの範囲である。DSCで測定した融点(融解曲線の最大、加熱速度20℃/分)は、120と145℃の間、好ましくは125〜140℃である。
【0058】
適当なMDPEは、DIN53735に従い測定して、一般的に0.1超〜50g/10分、好ましくは0.6〜20g/10分のMFI(50N/190℃)を有する。DIN53479,メゾッドAまたはISO1183に従い23℃で測定した密度は、0.925超〜0.94g/cmの範囲である。DSCで測定した融点(融解曲線の最大、加熱速度20℃/分)は、115と130℃の間、好ましくは120〜125℃である。
【0059】
追加的に、ポリエチレンが融解範囲を有することが本発明にとって有利である。これは、ポリエチレンのDSCにおいて、融解範囲の始点と融解範囲の終点が、最大10K、好ましくは3〜8K離れていることを意味する。補外始点が融解範囲の始点として取られ、そして相応して融解範囲の終点は、融解曲線の補外終点であると取られる(加熱速度10K/分)。
【0060】
シャットダウン機能を形成する材料、特にポリエチレンは、本発明による多孔性BOPPフィルム中に、多孔性フィルムのポリマーと一緒に使用され、存在するプロピレンポリマー及び/又はプロピレンブロックコポリマーを基準にして好ましくは少なくとも5重量%の量で、特に好ましくは少なくとも10重量%の量で存在する。
【0061】
シャットダウン機能が付与された多孔性フィルムは、多孔率、透過率、β核形成、横延伸、ポリマー組成、製造、密度、泡立ち点、表面粗さ及び/またはβ活性度に関して上記の好ましい範囲を有する。これらの点で明示的に繰り返すことなく、これらは、同様に明示的に本発明及びその実施形態のそれの記載の一部である。
【0062】
無機コーティング、好ましくはセラミックコーティング
本発明による、シャットダウン機能を持つかまたは持たない、二軸配向された単層または多層多孔性フィルムは、少なくとも一方の表面上に、部分的な無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを有する。これに関連して、“部分的に”という記載は、フィルムの一面の全表面には、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングが施されないことを意味する。通常は、フィルムの一面の全表面積の最大95%だけが、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを施され、好ましくは10〜95%、特に好ましくは20〜95%、特に25〜90%が、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを施される。部分的なコーティングは、一方では内部短絡に対する十分な保護を、他方では、コーティングされた多孔性フィルムの1200秒ガーレー未満の十分な透過性を可能とする。
【0063】
好ましい実施形態の一つでは、部分的な無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングはフィルムの両面に施される。
【0064】
コーティングまたは部分的なコーティングの材料は、電気絶縁性である。
【0065】
本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、無機粒子も意味すると理解すべきセラミック粒子を含む。D50値として表される粒度は、0.005〜10μmの範囲、好ましくは0.01〜7μmの範囲である。正確な粒径の選択は、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さに依存している。この場合、D50値は、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの50%以下、好ましくは無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの33%以下、殊に無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの25%以下であるべきであることが示されている。本発明の特に好ましい実施形態の一つでは、D90値は、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの50%以下、好ましくは無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの33%以下、殊に無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの25%以下である。
【0066】
用語「無機粒子、好ましくはセラミック粒子」は、本発明の内容において使用する場合、上記の粒径を有する限り、すべての天然または合成無機質を意味すると理解すべきである。無機粒子、好ましくはセラミック粒子は、任意の寸法を有してよいが、球形粒子が好ましい。さらに、無機粒子、好ましくはセラミック粒子は、結晶質、部分結晶質(最小30%の結晶化度)、または非結晶質であってよい。
【0067】
用語「セラミック粒子」は、本発明の内容で使用する場合、シリケート原料、酸化物原料、殊に金属酸化物、ならびに/または非酸化物及び非金属原料をベースとする材料を意味すると理解すべきである。
【0068】
適切なシリケート原料には、SiO四面体、例えば、シート状またはフレームワーク状シリケートを有する材料が包含される。
【0069】
適切な酸化物原料、殊に金属酸化物の例は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、ジルコン酸チタン酸鉛、亜鉄酸塩、及び酸化亜鉛である。
【0070】
適切な非酸化物及び非金属原料の例は、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ホウ化チタン、及びケイ化モリブデンである。
【0071】
さらなる本発明によって使用される粒子は、電気絶縁性材料、好ましくは、金属Al、Zr、Si、Sn、Ti、及び/またはYの非導電性酸化物からなる。そのような粒子の製造は例えば、独国特許第10208277号(特許文献5)に詳述されている。
【0072】
無機粒子、好ましくはセラミック粒子のうちには、殊に、分子式SiOを有するケイ素の酸化物、ならびに分子式AlNaSiOを有する混合酸化物、及び分子式TiOを有するチタンの酸化物をベースとする粒子が好ましく、これらは、結晶質形態、非晶質形態、または混合形態で存在してよい。好ましくは、無機粒子、好ましくはセラミック粒子は、殊に30%超の結晶化度を有する多結晶質材料である。
【0073】
部分的な無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの施与量は、乾燥後の粒子に対してまたはバインダーが使用される場合には乾燥後の粒子とバインダーに対して、好ましくは0.1g/m〜20g/m、殊に0.5g/m〜10g/mである。
【0074】
無機粒子、好ましくはセラミック粒子の施与量は、乾燥後の粒子に対して、好ましくは0.08g/m〜18g/m、殊に0.4g/m〜8g/mである。
【0075】
本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、1.5〜8g/cm、好ましくは2〜5g/cmの範囲の密度を好ましくは有する無機粒子、好ましくはセラミック粒子を含む。
【0076】
本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、モース硬度(Moh scale)で少なくとも2の硬度を好ましくは有する無機粒子、好ましくはセラミック粒子を含む。
【0077】
本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、少なくとも160℃、殊に少なくとも180℃、特に好ましくは少なくとも200℃の融点を好ましくは有する無機粒子、好ましくはセラミック粒子を含む。さらに、前述の粒子はまた、前述の温度で分解しない。既知の方法、例えばDSC(示差走査熱分析)またはTG(熱重量分析)を使用して、上記のデータを決定することができる。
【0078】
本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、少なくとも100kPa、特に好ましくは少なくとも150kPa、殊に少なくとも250kPaの圧縮強度を好ましくは有する無機粒子、好ましくはセラミック粒子を含む。用語「圧縮強度」は、存在する粒子のうちの少なくとも90%が、施与された圧力によって破壊されないことを意味する。
【0079】
好ましくは、コーティングは、0.5μm〜10μmの厚さ及び0.02〜5μm(D50値)の範囲、好ましくは0.05〜2μm(D50値)の範囲の無機粒子、好ましくはセラミック粒子を有する。
【0080】
特に好ましくは、コーティングは、(i)0.5μm〜10μmの厚さ、(ii)0.02〜5μm(D50値)の範囲、好ましくは0.05〜2μm(D50値)の範囲で、少なくとも100kPa、特に好ましくは少なくとも150kPa、殊に少なくとも250kPaの圧縮強度の無機粒子、好ましくはセラミック粒子を有する。
【0081】
特に好ましいコーティングは、(i)0.05μm〜10μmの厚さ、(ii)0.02〜5μm(D50値)の範囲、好ましくは0.05〜2μm(D50値)の範囲で、少なくとも100kPa、特に好ましくは少なくとも150kPa、殊に少なくとも250kPaの圧縮強度の無機粒子、好ましくはセラミック粒子を有し、D50値は、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの50%以下、好ましくは無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの33%以下、殊に無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングの厚さの25%以下である。
【0082】
列挙した無機粒子、好ましくはセラミック粒子に加えて、本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、ポリ二塩化ビニレン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、グラフトポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、例えばPTFE、及びそれらの混合物をベースとするバインダーの群から選択される少なくとも1種の最終固結バインダー(endverfestigen Binder)を含むことができる。
【0083】
本発明によって使用されるバインダーは、電気絶縁性であるべきであり、すなわち、いかなる導電性も示すべきではない。「電気絶縁性」または「非導電性」は、これらの特性が僅かな程度までは存在してよいが、コーティングされていないフィルムでの値を増大させないことを意味する。
【0084】
ポリ二塩化ビニレン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、グラフトポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、例えばPTFE、及びそれらの混合物をベースとするバインダーの群から選択される最終固結バインダーの施与量は、好ましくは0.05g/m〜10g/m、殊に0.1g/m〜5g/m[バインダーのみ、乾燥時]である。ポリ二塩化ビニレン(PVDC)をベースとするバインダーでの好ましい範囲は、0.05g/m〜10g/m、好ましくは0.1g/m〜5g/m[バインダーのみ、乾燥時]である。
【0085】
バインダーを使用する場合には、本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、乾燥状態のバインダー及び無機粒子、好ましくはセラミック粒子に対して、無機粒子、好ましくはセラミック粒子98重量%〜50重量%と、ポリ二塩化ビニレン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、グラフトポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、例えばPTFE、及びそれらの混合物をベースとするバインダーの群から選択されるバインダー2重量%〜50重量%とを含み、ここで、バインダーのうち、ポリ二塩化ビニレン(PVDC)をベースとする最終固結バインダーが好ましい。さらに、本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、分散液の調節に必要なだけの少量の添加剤を含有することもできる。
【0086】
既知のコーティング技術を使用して、例えばアプリケーターブレードを用いるか、または噴霧もしくは印刷することによって、本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを粉体としてまたは分散液として多孔性BOPPフィルム上に施与する。
【0087】
一つの変形では、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを、分散液として施与する。これらの分散液は、本発明の無機粒子、好ましくはセラミック粒子に加えて、列挙したバインダーのうちの少なくとも1種、好ましくはポリ二塩化ビニレン(PVDC)をベースとするバインダー、及び/または水、及び/または場合によっては、分散液の安定性または多孔性BOPPフィルムに対するぬれ性を向上させる有機物質を含む。有機物質は、モノアルコールまたはポリアルコール、殊に、140℃を超えない沸点を有するものなどの揮発性有機物質である。イソプロパノール、プロパノール、及びエタノールが、その入手し易さから特に好ましい。
【0088】
無機粒子、好ましくはセラミック粒子の施与は、例えば、独国特許第10208277号(特許文献5)に詳述されている。
【0089】
好ましい分散液は:
(i)無機粒子、好ましくはセラミック粒子20重量%〜90重量%、特に好ましくは30重量%〜80重量%;
(ii)ポリ二塩化ビニレン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、グラフトポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、例えばPTFE、及びそれらのブレンドをベースとするバインダーによって形成される群から選択されるバインダー1重量%〜30重量%、特に好ましくは1.5重量%〜20重量%(ここで、バインダーのうち、ポリ二塩化ビニレン(PVDC)をベースとする最終固結バインダーが好ましい);
(iii)場合によっては、分散液の安定性または多孔性BOPPフィルムに対するぬれ性を向上させる有機物質、殊にモノアルコールまたはポリアルコール0.01重量%〜3.0重量%、特に好ましくは0.01重量%〜0.5重量%;
(iv)場合によっては、分散安定剤及び/または消泡剤などのさらなる添加剤0.00001重量%〜10重量%、特に好ましくは0.001重量%〜5重量%;
(v)成分全部の合計が100重量%となるような水
を含む。
【0090】
さらに別の実施形態の一つでは、多孔性フィルムの乾式コーティングを行うことができる。この場合、上述の粒子を、適当な工具、例えばブレード、ローラーまたは類似品を用いて、多孔性フィルムの表面に直接施与する。この場合、施与されるコーティングは粒子のみからなる。この方法に従った場合、好ましくは、5μm以下の粒度、好ましくは0.001〜2μmの粒度を有する粒子、特にシリケートをベースとする粒子またはTiO2粒子を施与することができる。
【0091】
本発明はさらに、本発明による無機、好ましくはセラミックコーティングされた多孔性BOPPフィルムの製造方法に関する。この方法では、自体既知のフラットフィルム押出または同時押出法を使用して、多孔性フィルムを製造する。プロピレンホモポリマー及び/またはプロピレンブロックコポリマーならびにβ核形成剤及び場合によっては、個々の層の他のポリマー(例えばシャットダウン機能の材料)のブレンドを一緒に混合し、押出機内で溶融させ、かつ必要な場合には、同時に、かつ一緒にスロットダイを通して、引取ロール上に押し出すか、または同時押し出しし、その引取ロール上で単層または多層溶融フィルムを固化させ、β微結晶を形成させながら冷却するような手法で、この方法を実施する。プレフィルム中で形成するβ結晶質ポリプロピレンの画分が可能な限り高いように、冷却温度及び冷却時間を選択する。一般に、1つの引取ロールまたは複数の引取ロールのこの温度は、60℃〜140℃、好ましくは80℃〜130℃である。この温度での滞留時間は変動させることができ、少なくとも20〜300秒、好ましくは30〜100秒であるべきである。こうして得られるプレフィルムは一般的に、β微結晶40〜95%、好ましくは50〜85重量%を含有する。
【0092】
次いで、延伸によって、β微結晶がα−結晶質ポリプロピレンに変換し、ネットワーク様多孔性構造が形成するような手法で、高いβ結晶質ポリプロピレン画分を有するこのプレフィルムを二軸延伸する。二軸延伸(配向)を一般的に、順々に実施し、その際に好ましくは、初めに縦延伸(流れ方向)を実施し、続いて横延伸(流れ方向に対して垂直)を実施する。
【0093】
縦方向への延伸に関して、初めに、冷却したプレフィルムを先ず1つまたは複数の加熱ロール上にガイドし、その加熱ロールで、フィルムを適切な温度まで加熱する。一般に、この温度は140℃未満、好ましくは70℃〜120℃である。次いで、縦延伸を一般的に、標的延伸比に適した異なる速度で作動する2つのロールを用いて実施する。この場合の縦延伸比は、2:1〜6:1、好ましくは3:1〜5:1の範囲である。縦方向での配向が高くなりすぎることを防止するために、例えば、比較的狭い延伸ギャップを設置することによって、縦延伸の際の幅収縮を小さくしておく。延伸ギャップの長さは一般的に、3〜100mm、好ましくは5〜50mmである。場合によっては、エキスパンダーなどの固定エレメントが、小さな幅収縮に寄与し得る。収縮は、10%未満、好ましくは0.5〜8%、殊に1〜5%であるべきである。
【0094】
この縦延伸の後に、フィルムを先ず、適切な焼戻しロール上で、もう一度冷却する。次に、いわゆる加熱帯域において、一般的に120〜145℃の温度である横延伸温度までフィルムを再加熱する。次に、適切な幅出し機を使用して、横延伸を実施し、その際、横延伸比は、2:1〜9:1、好ましくは3:1〜8:1の範囲である。本発明の高い多孔率を得るために、0%超〜40%/秒、好ましくは0.5%〜30%/秒、殊に1%〜15%/秒の範囲の中程度から遅い横延伸速度で、横延伸を実施する。
【0095】
場合により、最終延伸、一般的には横延伸の後に、電解質の充填を促進するように、フィルムの表面をコロナ処理、プラズマ処理、または火炎処理する。好ましくは、後でコーティングされないフィルム表面を、この手法で処理する。
【0096】
最後に、必要な場合には、フィルムを110℃〜150℃、好ましくは125℃〜145℃の温度で約5〜500秒、好ましくは10〜300秒にわたって、例えばロールまたは温風キャビネット上に保持する熱硬化(thermofixing)(加熱処理)を実施する。場合によっては、熱硬化の直前か、またはその間に、フィルムを収束するようにガイドし、その際、収束率は好ましくは5〜25%、殊に8%〜20%である。用語「収束」は、横延伸プロセスの終了時での最大フレーム幅が、熱硬化の終了時の幅よりも大きくなるように、横延伸フレームの軽微な合流を意味すると理解すべきである。明らかに、同じことが、フィルムウェブの幅にも当てはまる。横延伸フレームの収束程度は、横延伸フレームの最大幅Bmax及び最終フィルム幅Bフィルムから、以下の式を使用して算出される収束率として示される:
収束率[%]=100×(Bmax−Bフィルム)/Bmax
最後に、通常の手法で、引取装置を使用して、フィルムを巻き取る。
【0097】
縦延伸及び横延伸を1つのプロセスで順番に実施する既知の連続法では、プロセス速度に依存しているのは、横延伸速度だけではない。引取速度及び冷却速度も、プロセス速度の関数として変動する。したがってこれらのパラメーターは、互いに独立に選択することはできない。このことから、その他については同一の条件下で、比較的遅いプロセス速度では、横延伸速度が低下するだけでなく、プレフィルムの冷却速度または引取速度も低下するということになる。このことは、必ずではないが、追加の問題の原因となり得る。
【0098】
したがって、本発明の方法のさらなる実施形態の一つでは、連続して延伸されるフィルムを製造するための方法を、2つの別々のプロセスに、すなわち、縦延伸後の最終冷却までで、それを包含するプロセスのステップすべてを含む第1のプロセスと(本明細書において下記では、縦延伸プロセスと称する)、縦延伸プロセス後のプロセスのステップすべてを含む第2のプロセス(本明細書において下記では、横延伸プロセスと称される)とに分割することが有利である。2ステッププロセスとしての本発明の方法のこの実施形態は、第1のプロセスのプロセス速度を、したがって、個々の条件、殊に、冷却速度及び引取速度、さらには縦延伸条件を横延伸速度とは独立に選択することが可能であることを意味する。同様に、第2の横延伸プロセスでは、任意の手法で、例えば、プロセス速度を低下させることによってか、または延伸フレームを延長することによって、β微結晶の形成または縦延伸条件にマイナスの影響をもたらすことなく、横延伸速度を低下させることができる。上記のとおりに縦延伸プロセスを実施し、次いで、この縦に延伸させたフィルムを冷却した後に、フィルムを巻き取ることによって、プロセスのこの変形形態を実行する。次いで、この縦に延伸させたフィルムを第2の横延伸プロセスで使用する。すなわち、この第2のプロセスでは、上記のとおりに縦に延伸させたフィルムを冷却した後のプロセスのステップすべてを実施する。こうして、最適な横延伸速度を独立に選択することができる。
【0099】
縦延伸プロセスまたは横延伸プロセスまたは連続プロセスに関して上記で挙げた用語「プロセス速度」はそれぞれの場合に、個々の最終巻取のためにフィルムが走行する、例えばm/分での速度を意味すると理解すべきである。状況に応じて、横延伸プロセスは有利には、縦延伸プロセスよりも速いか、または遅いプロセス速度を有してよい。
【0100】
多孔性フィルムを製造するための本発明の方法におけるプロセス条件は、二軸配向フィルムを製造するために通常適用されるプロセス条件とは異なる。高い多孔率及び透過度を得るために、プレフィルムを形成するための固化のための冷却条件及び他にも温度と、延伸係数との両方が重要である。初めに、高いβ微結晶画分をプレフィルムにおいて得るために、適切に遅く、かつ中程度の冷却を、すなわち、比較的高温を使用する必要がある。後続の縦延伸で、β結晶をα変態に変換すると、傷がマイクロクラックの形態で生成する。これらの傷が十分な数及び正確な形態で得られるように、縦延伸は比較的低温で実施する必要がある。横延伸で、これらの傷を破壊して細孔にすることで、これらの多孔性フィルムの特徴的なネットワーク構造を形成する。
【0101】
通常のBOPPプロセスと比較すると、これらの低温、殊に縦延伸の間のこれらの低温は、一方では、ポリマーマトリックスに高い配向を導入し、他方では、引裂の危険を増大する高い延伸力を必要とする。所望の多孔率が高いほど、延伸の際の温度は低くなければならず、それに応じて、延伸係数を増大させる必要がある。したがって、フィルムの多孔率及び透過度を増大させるにつれて、プロセスは基本的により臨界的になる。したがって、無制限に、より高い延伸係数またはより低い延伸温度を使用して、多孔率を増大させることはできない。殊に、低い縦延伸温度は、フィルムの操作信頼性のかなりの減損及び分裂傾向の望ましくない増大をもたらす。したがって、例えば、70℃未満のより低い縦延伸温度によって、多孔率を向上させることはもはやできない。
【0102】
さらに、フィルムの多孔率及び透過度に、横延伸の際の延伸速度によって、追加的な影響を及ぼすことが可能である。遅い横延伸速度によって、製造プロセスの間に引裂または他の傷がさらに増えることなく、多孔率及び透過度が増大する。フィルムは、高い多孔率及び透過度、機械的強度、製造プロセスの間の良好な操作信頼性、ならびに縦方向への低い分裂傾向の特殊な組合せを示す。
【0103】
続いて、既知の技術、例えばアプリケーターブレードまたはスプレーまたは印刷を使用して、多孔性BOPPフィルム上に分散液または粉体、好ましくは水性分散液の形態で、本発明の無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを、先に調製した多孔性BOPPフィルムに施与する。施与はロールを用いても行うことができ、そうしてコーティングされる面を、ローラーの表面パターンを介して調節することができる。
【0104】
好ましくは、コーティングされる多孔性フィルム(BOPPフィルム)は、0.02μm〜6μm、好ましくは0.3〜6μmの規定された粗さR(DIN4768、カットオフ2.5mm)を有する。
【0105】
コーティングされる多孔性フィルム(BOPPフィルム)は、好ましくは35%〜99%のβ活性度を有する。
【0106】
コーティングされる多孔性フィルム(BOPPフィルム)が0.02〜1μmの低い粗さRを有する場合には、部分的なコーティングは、様々な方法で生じさせることができる。一つの可能な方法は、フィルムを部分的に覆うまたは施与を部分的にのみ行わせるマスクまたはステンシルの使用である。本発明による部分的なコーティングを生じさせる他の可能性は、然るべき印刷技術、例えばインキジェット印刷や、または部分的な範囲を施与できる画定された表面パターン(窪み)を有するローラーの使用による印刷技術にある。好ましい表面パターンは、画定された幾何形状、例えば均一なn−角体(特に、nが3〜8の整数であるn角体)、円または楕円である。パターンの深さは、セラミックコーティングの所望の厚さによって決定される。
【0107】
コーティングされる多孔性フィルム(BOPPフィルム)が0.02〜6μm、特に0.3〜6μm、好ましくは1超〜6μmの粗さRを有する場合には、施与された無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、表面の凹部にたまって、これを平滑化する。分散液の存在する表面張力は、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを施与する分散液が、上記の凹部から突き出て、そうして本発明のコーティングが生じるように選択することができる。
【0108】
部分的な無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、好ましくは先に調製した多孔性BOPPフィルムに直接施与するので、接着促進剤でフィルムの事前処理を実施するか、またはコーティングのために使用される無機コーティング剤、好ましくはセラミックコーティング剤中に接着促進を使用する必要はない。
【0109】
さらに、殊に多孔性BOPPフィルムを用いる場合、フィルムの表面、殊に、次いでコーティングされる予定のフィルム面の後処理を、コロナ処理、プラズマ処理、または火炎処理方法などの既知の方法を使用して実施する必要はなく、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを、未処理の多孔性BOPPフィルムに直接施与することができることが分かった。さらなる実施形態の一つでは、部分的なコーティングの施与は、コロナ、火炎またはプラズマを用いた表面処理の後にも行うことができる。
【0110】
好ましくは、分散液の施与量は、0.5g/mと20g/mの間である。粒子を分散液として施与する場合には、通常の乾燥機を使用して、新たにコーティングした多孔性BOPPフィルムを乾燥させ、その後、場合により存在するバインダーを硬化させる。乾燥を通常、50℃〜140℃の範囲の温度で実施する。この場合の乾燥期間は、30秒〜60分である。
【0111】
本発明によって、その高い透過度のために高エネルギーバッテリーでの使用に適していて、同時に、機械的強度、殊に低い分裂傾向に関する要件を満たし、この適用に必要な熱安定性も有するフィルムを利用することができるようになる。
【0112】
さらに、非常に高い透過度が必要とされるか、または有利であろう他の用途で、フィルムを有利に利用することができる。例は、高い所要出力のバッテリー、殊にリチウムバッテリーにおける高多孔性セパレータとしてのものである。
【0113】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムをベースとする部分的に無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングされたセパレータフィルムは、30%〜80%の多孔率及び1000秒未満の透過度(ガーレー数)を有するポリプロピレンから形成される多孔性二軸配向フィルムを含み、部分的な無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを有する本発明のセパレータフィルムの透過度は、1200秒未満(ガーレー数)である。
【0114】
本発明では、多孔性フィルムのガーレー数は、部分的なコーティングによって僅かにしか高まらない。一般的に、ガーレー数は、部分的なコーティングの後に、1000ガーレー秒未満、好ましくは1〜600ガーレー秒、特に3〜400ガーレー秒高まり、その結果、フィルムの透過度は実質的に維持される。詳しくは、施与量及びコーティング率は、部分的なコーティングがガーレー数を上述の値だけしか高めないように制御される。特に有利な実施形態では、ガーレー数は、ほぼ一定に維持される、すなわちこれは、0超〜200ガーレー秒しか高まらない。
【0115】
本発明による、多孔性ポリオレフィンフィルムをベースとする部分的に無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングされたセパレータフィルムが追加的にシャットダウン機能を有する場合には、これらは、コーティングされたセパレータフィルムを5分間140超に加熱した時にまたは加熱した後に、6000秒を超えるガーレー数を有する。シャットダウン機能を形成する材料、特にポリエチレンは、本発明に従い使用される多孔性BOPPフィルム中に、存在するプロピレンポリマー及び/またはプロピレンブロックコポリマーに対して少なくとも5重量%の量で、特に好ましくは少なくとも10重量%の量で存在する。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1図1は、多孔性ポリオレフィンフィルムをベースとする本発明による部分的にコーティングされたセパレータフィルムの顕微鏡写真を示す。
図2図2は、コーティング率を決定するために写真用紙上にPtをスパッタした後の、多孔性ポリオレフィンフィルムをベースとする本発明による部分的にコーティングされたセパレータフィルムの顕微鏡写真の印刷を示す。暗い領域は、コーティングされていない領域であり、明るい領域はコーティングされた領域である。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本発明のセパレータフィルム上に存在する無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングは、接着促進剤の介在なしに達成される良好な接着を示す。
【0118】
驚くべきことに、コロナ処理、火炎処理またはプラズマ処理を施さなくともフィルムとコーティングとの間の良好な接着が生じ、この際、基本的に、接着は、上記手段によってさらに向上することができる。
【0119】
驚くべきことに、施与を分散液から行った場合ではなく、粒子を直接施与した場合にも、粒子が十分に多孔性フィルム上に付着する。この乾式法においても、コロナ、火炎またはプラズマを用いた表面の処理は必要ではないが、ただし可能である。
【0120】
以下の測定方法を使用して、原料及びフィルムを特性決定した:
粒度の定義及び決定:
ISO13320−1に従ってレーザ散乱法によって、平均粒子直径または平均粒度(=D50またはD90)を決定した。粒度分析の適切な装置の例は、Microtrac S 3500である。
【0121】
コーティング率:
コーティングされたフィルムから、5×5mmのサンプルを切り出し、そして真空中でPtスパッタし(4nm層厚)、次いで走査電子顕微鏡(JEOL JIM−7000F)で調べる。550倍に拡大して、200×200μmの領域を撮影する。加速電圧は20kVであった(二次電子像)。上記の拡大の下に、粒子でコーティングされたフィルム領域及びコーティングされていないフィルム領域が良好に可視である。写真を写真用紙に余すこと無く印刷し、そしてハサミを用いて、コーティングされた領域及びコーティングされていない領域を切り抜き、互いに別けてそして重さを量る。暗い領域はコーティングされていない領域であり、明るい領域はコーティングされた領域である(図2参照)。
【0122】
次いで、百分率で表されるコーティング率(BG)を、求めた重量から以下のように算出する。
BG[%]=100×M/(M+M
は、コーティングされた領域を示す写真用紙の質量であり、そしてMは、コーテイングの無い領域の写真用紙の質量である。
【0123】
メルトフローインデックス:
DIN 53 735に従って、2.16kgの負荷下及び230℃で、プロピレンポリマーのメルトフローインデックスを測定した。
【0124】
融点:
本発明の内容における融点は、DSC曲線の最大値である。融点を決定するために、20℃〜200℃の範囲で10K/1分の加熱及び冷却速度で、DSC曲線を記録した。融点を決定するために、通常どおり、200℃から20℃まで10K/1分で冷却した後に、第2の加熱曲線を評価した。
【0125】
β含有率及びβ活性度:
β結晶質ポリプロピレンの割合は、DSCを用いて決定する。この特性付けは、VargaのJ.o.Appl.Polymer Science,Vol.74,p.:2357−2368,1999(非特許文献1)に記載されており、次のように行う:β核形成剤を添加したサンプルを、DSC中で、ます20℃/分の加熱速度で220℃に加熱し、溶融する(第一加熱)。その後、これを、10℃/分の冷却速度で100℃に冷却し、その後、10℃/分の加熱速度で再び溶融する(第二加熱)。
【0126】
第一加熱のDSC曲線から、β及びα結晶質相の融解エンタルピーの合計(Hβ+Hα)に対するβ結晶質相の融解エンタルピー(Hβ)の比率に基づいて、測定したサンプル(未延伸フィルム、射出成形部材)中に存在する結晶化度Kβ,DSC(β結晶質ポリプロピレンの割合)を決定する。百分率値は次のように算出する:
β,DSC[%]=100×(Hβ)/(Hβ+Hα
この値は、サンプル、例えばフィルムサンプルまたは原料サンプルのβ含有率に相当する。
【0127】
第2加熱のDSC曲線に基づいて、β及びα結晶質相の融解エンタルビーの合計(Hβ+Hα)に対するβ結晶質相の融解エンタルピー(Hβ)の比率から、結晶化度Kβ,DSC(第二加熱)が決定され、これは、最大限に達成できる各々のポリプロピレンサンプルのβ割合を与える。この値は、サンプルのβ活性度に相当する。
【0128】
密度:
DIN53 479のメゾッドAに従って、密度を決定する。
【0129】
泡立ち点:
ASTM F316に従って、泡立ち点を測定する。
【0130】
多孔率:
以下のとおり、純粋なポリプロピレンの密度ρppに対するフィルムの密度の低下(ρフィルム−ρpp)として、多孔率を算出する:
多孔率[%]=100×(ρpp−ρフィルム)/ρpp
透過度(ガーレー数)
ASTM D726−58に従って、ガーレー試験器を使用して、フィルムの透過度を測定した。この場合、空気100cmが試験片1平方インチ(6.452cm)を透過するために必要な時間(秒)を決定した。フィルムを挟んでの差圧は、12.4cm高さの水柱の圧力に対応する。必要な時間が、ガーレー数に相当する。
【0131】
粗さ:
粗さは、DIN4768に基づいて、共焦点レーザー顕微鏡(Leica DCM3D)を用いて、2.5mmのカットオフでRz値及びRmax値として決定した。これのために、500μm×500μmの表面を評価した。
【0132】
収縮:
収縮によって、縦延伸の間にフィルムの幅が変化する。この場合、Bは、縦延伸の前のフィルムの幅を定義しており、Bは、縦延伸の後のフィルムの幅を定義している。縦方向は流れ方向であり;横方向は、流れ方向を横断する方向である。したがって、%としての収縮は、元の幅Bと、決定された幅との差に100を掛けたものである:
収縮B[%]=[(B−B)/B]×100[%]
【0133】
接着性:
テンプレートを使用して、フィルムの6×6cm切片を切り取った。この切片を、3cm重ねて0.5mmのエッジ半径及び8×8×8cmの寸法を有するステンレス鋼製立方体に施与した。次いで、突出部3cmを、立方体のエッジの上で直角に曲げた。コーティングの接着が不十分だった場合には、コーティングはエッジから剥げ落ち、指でこすり落とすことができた。接着が良好な場合には、クラックが折り曲げエッジ部分でせいぜい見られた程度で、フィルムへの接着は残った。
【実施例】
【0134】
次いで、本発明を以下の例によって説明する。
【0135】
無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングには、球状のシリケート粒子及びTiO2粒子を選んだ。
例において言及されるフィルムの製造:
【0136】
フィルム例1
核形成剤としてのピメリン酸カルシウムをミキサー内で、0.04重量%の濃度でアイソタクチックポリプロピレンホモポリマー(融点162℃;MFI3g/10分)、及びプロピレンブロックコポリマーから形成された粒状物と混合し、二軸スクリュー押出機内で溶融させた(ケーシング温度240℃及び200L/分)。押し出しプロセスの後に、溶融物をスロットダイを通して、245℃の押出温度で押し出して、単層のフィルムを形成した。
【0137】
このフィルムは以下の組成を有した:
4.5重量%のn−ヘプタン可溶性画分(PP100%に対して)及び165℃の融点;ならびに230℃及び負荷2.16kgで3.2g/10分のメルトフローインデックス(DIN53 735)を有するプロピレンホモポリマー(PP) 約50重量%;
ブロックコポリマーに対して約5重量%のエチレン画分及び6g/10分のメルトフローインデックス(230℃及び2.16kg)を有するプロピレン−エチレン−ブロックコポリマー 約49.96重量%
β核形成剤として微小なピメリン酸Ca 0.04重量%。
フィルムは追加的に、通常の量の安定剤及び中和剤を含有した。
【0138】
押出の後に、第1の引取ロール及びさらなる三本ロール(roller trio)上でポリマーブレンドを引き取り、冷却し、固化させ、次いで、縦延伸し、横延伸し、固定した。条件の詳細は以下のとおりである:
押出: 押出温度245℃、
冷却ロール: 温度125℃、
引取速度: 1.5m/分(引取ロール上での滞留時間:55秒)、
プレフィルムのβ含有率:72%
縦延伸: 延伸ロールT=90℃、
縦延伸: 4倍、
横延伸: 加熱帯域T=145℃、
延伸帯域: T=145℃、
横延伸: 4倍。
【0139】
このように製造された多孔性フィルムは厚さ約20μmであり、0.30g/cmの密度を有し、均一な白色不透明の外観を有した。多孔率は66%であり、ガーレー数は180秒であった。コーティングされる表面の粗さ:1.88μm。
【0140】
フィルム例2:
押出法に従い、240〜250℃の押出温度でスロットダイから、単層のプレフィルムを押出した。このプレフィルムを先ず冷却ロール上で引取り及び冷却した。次いで、このプレフィルムを、縦方向及び横方向に配向し、そして最後に固定した。このフィルムは、次の組成を有していた:
97%の13C−NMRアイソタクティシティ及び2.5重量%のn−ヘプタン可溶性画分(PP100%に対して)及び165℃の融点;並びに230℃及び負荷2.16kgで2.5g/10分(DIN53 735)のメルトフローインデックスを有する高アイソタクチックプロピレンホモポリマー(PP)約60重量%;及び
0.954の密度(ISO1183)及び190℃及び負荷2.16kgで0.4g/10分(ISO 1133/D)のMIFまたは190℃及び負荷21.6kgで27g/10分(ISO 1333/G)のMFI、及び融解範囲が125℃で始まる130℃の融点(DSC: 10℃/分の加熱速度でのピーク)を有するHDPE(高密度ポリエチレン)約20重量%;
ブロックコポリマーに対して約5重量%の割合のエチレン及び6g/10分のMFI(230℃及び2.16kg)及び165℃の融点(DSC)を有するプロピレ−エチレン−ブロックコポリマー 約20重量%;及び
β核形成剤としてのピメリン酸Ca 0.04重量%。
【0141】
このフィルムは追加的に、通常の少量で安定剤及び中和剤を含有した。
【0142】
押出の後に、溶融したポリマー混合物を、第1のの引取ロール及びさらなる三本ロール上で引取り、固化させ、次いで縦延伸し、横延伸し、固定した。この際、詳しくは、以下の条件を選択した。
押出: 押出温度235℃
引取ロール: 温度125℃
引取速度: 4m/分
プレフィルムのβ含有率: 66%
縦延伸: 延伸ロール=90℃
縦延伸: 3.0倍
横延伸: 加熱帯域T=125℃
延伸帯域: T=125℃
横延伸: 5.0倍
固定: T=125℃
【0143】
こうして製造された多孔性フィルムは厚さが約25μmであり、0.38g/cmの密度を有し、そして均一な白色不透明の外観を示した。コーティングされる表面の粗さRzは2.05μmであった。
【0144】
【表1】
【0145】
例1
微孔性BOPPフィルム(フィルム例1)上に、ゴム製スキージーを用いて、粉末状TiO顔料(表1、コーティング)を施与した。このコーティングは、フィルムに対する良好な接着を示す。次いで、コーティングの施与量を量って決定し、及びガーレー数に基づいて空気透過度を決定した。REM写真は、粒子で満たされたフィルムの部分領域を示す。ガーレー数は僅かな上昇しか観察されない。
【0146】
例2
微孔性BOPPフィルム(フィルム例2)上に、ゴム製スキージーを用いて、粉末状TiO2顔料(表1,コーティング1)を施与した。このコーティングはフィルムに対し良好な接着を示す。次いで、コーティングの施与量を量って決定し、及びガーレー数に基づいて空気透過度を決定した。REM写真は、粒子で満たされたフィルムの部分領域を示す。ガーレー数は僅かな上昇しか観察されない。
【0147】
例3
微孔性BOPPフィルム(フィルム例1)上に、ワイヤーバー(ワイヤー直径:0.3mm)を用いて、イソプロパノール中のTiO2の分散液を施与した(表1、コーティング3)。乾燥庫中90℃で30分間乾燥した後、コーティングの施与量を量って決定し、及びガーレー数に基づいて空気透過度を決定する。ガーレー数は僅かな上昇しか観察されない。REM写真は、粒子で満たされたフィルムの部分領域を示す。
【0148】
例4:
微孔性BOPPフィルム(フィルム例2)上に、ワイヤーバー(ワイヤー直径:0.3mm)を用いて、イソプロパノール中のTiO2の分散液を施与した(表1、コーティング3)。乾燥庫中90℃で30分間乾燥した後、コーティングの施与量を量って決定し、及びガーレー数に基づいて空気透過度を決定した。ガーレー数の僅かな上昇だけが観察される。REM写真は、粒子で部分的にコーティングされたフィルムの領域を示す。
【0149】
例5:
微孔性BOPPフィルム(フィルム例1)上に、ワイヤーバー(ワイヤー直径:0.3mm)を用いて、水及びイソプロパノール中にSiO2及びPVDCバインダーを含む分散液を施与した(表1、コーティング4)。乾燥庫中90℃で30分間乾燥した後、コーティングの施与量を量って決定し、及びガーレー数に基づいて空気透過度を決定した。ガーレー数の僅かな上昇だけが観察される。REM写真は、粒子で満たされたフィルムの部分領域を示す。
【0150】
例6:
微孔性BOPPフィルム(フィルム例1)上に、ワイヤーバー(ワイヤー直径:0.3mm)を用いて、水及びイソプロパノール中にTiO2及びPVCDバインダーを含む分散液を施与した(表1、コーティング5)。乾燥庫中90℃で30分間乾燥した後、コーティングの施与量を量って決定し、及びガーレー数に基づいて空気透過度を決定した。ガーレー数の僅かな上昇だけが観察される。REM写真は、フィルム中に粒子で覆われた部分的な領域を示す。
【0151】
例7(比較):
商業的に入手できるCelgard社製の微孔性セパレータ(C200)上に、ゴム製スキージーを用いて、粉末状TiO2顔料(表1、コーティング1)を施与した。接着性を、上記の接着性試験を用いて試験した。この粉末は、フィルムに対して接着性を示さない。
【0152】
例8(比較):
Celgard社製のセパレータ(C200)上に、ワイヤーバー(ワイヤー直径:0.3mm)を用いて、イソプロパノール中のTiO2の分散液を施与した(表1、コーティング3)。乾燥庫中90℃で30分間乾燥した。接着性を、上記の接着性試験を用いて試験した。この粉末は、接着性を示さず、離れ落ちる。
【0153】
例9(比較):
他の商業的に入手可能なUBE社製のポリオレフィンセパレータ上に、ゴム製スキージーを用いて、粉末状TiO2顔料(表1、コーティング1)を施与した。接着性を上記の接着性試験を用いて試験した。この粉末は、フィルムに対して接着性を示さない。
【0154】
例10(比較):
UBE社製のポリオレフィンセパレータ上に、ワイヤーバー(ワイヤー直径:0.3mm)を用いて、イソプロパノール中のTiO2の分散液を施与した(表1、コーティング3)。乾燥庫中90℃で30分間乾燥した。接着性を上記の接着性試験を用いて試験した。この粉末は接着性を示さず、離れ落ちる。
【0155】
【表2】
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する。
1.
少なくとも1つの多孔性層を含み、かつこの層が少なくとも1種のプロピレンポリマーを含有し;
(i)多孔性フィルムの多孔率が30%〜80%であり;
(ii)多孔性フィルムの透過度が1000秒未満(ガーレー数)である、
二軸配向された単層または多層多孔性フィルムであって、
(iii)多孔性フィルムが部分的な無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを含み;
(iv)コーティングされた多孔性フィルムが1200秒未満のガーレー数を有する、
ことを特徴とするフィルム。
2.
延伸される際のβ結晶質ポリプロピレンの変換によって、多孔性がもたらされ、この際、少なくとも1種のβ核形成剤がフィルム中に存在することを特徴とする、上記1に記載のフィルム。
3.
多孔性フィルムが35%〜99%のβ活性度を有することを特徴とする、上記1または2に記載のフィルム。
4.
プロピレンポリマーがプロピレンホモポリマー及び/またはプロピレンブロックコポリマーであることを特徴とする、上記1〜3のいずれか一つに記載のフィルム。
5.
β核形成剤が、γ−キナクリドン、ジヒドロキナクリジン、ジカルボキサミドまたはジカルボン酸のカルシウム塩、好ましくはフタル酸のカルシウム塩、ピメリン酸のカルシウム塩及び/またはスベリン酸のカルシウム塩、及び/またはナノスケールの酸化鉄を含み、好ましくはβ核形成剤が、炭酸カルシウムと有機ジカルボン酸からなる二成分系β核形成剤であることを特徴とする、上記1〜4のいずれか一つに記載のフィルム。
6.
50〜95重量%のプロピレンホモポリマー及び/またはプロピレンブロックコポリマー、好ましくは50〜85重量%及び15〜50重量%のプロピレンブロックコポリマーを含み、かつ50〜10,000ppmのβ核形成剤を含むことを特徴とする、上記1〜5のいずれか一つに記載のフィルム。
7.
さらなるポリオレフィンを0〜10重量%未満の量、好ましくは0〜5重量%、特に0.5〜2重量%の量で含み、そしてプロピレンホモポリマーまたはブロックコポリマーの割合が相応して減じられていることを特徴とする、上記6に記載のフィルム。
8.
追加的にシャットダウン機能を有し、そしてコーティングされたフィルムが、140℃超に5分間加熱した後に、6000秒を超えるガーレー数を有することを特徴とする、上記1〜7のいずれか一つに記載のフィルム。
9.
多孔性層が、多孔性層にシャットダウン機能を与える材料を含むことを特徴とする、上記8に記載のフィルム。
10.
前記材料がポリエチレン、好ましくはHDPEまたはMDPEを含み、この際、シャットダウン機能を形成する材料が、存在するプロピレンポリマー及び/またはプロピレンブロックコポリマーに対して少なくとも5重量%の量で存在することを特徴とする、上記9に記載のフィルム。
11.
密度が0.1〜0.6g/cmの範囲にあることを特徴とする、上記1〜10のいずれか一つに記載のフィルム。
12.
10〜100μmの厚さを有することを特徴とする、上記1〜11のいずれか一つに記載のフィルム。
13.
プロピレンポリマーが、メタロセン触媒の使用によって製造されたものではないことを特徴とする、上記1〜12のいずれか一つに記載のフィルム。
14.
無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングが、D50値として表して、0.005〜10μmの範囲、好ましくは0.01〜7μmの範囲の粒度を有する無機粒子、好ましくはセラミック粒子を含むことを特徴とする、上記1〜13のいずれか一つに記載のフィルム。
15.
無機粒子、好ましくはセラミック粒子が、金属Al、Zr、Si、Sn、Ti、及び/またはYの非電導性酸化物を含むことを特徴とする、上記14に記載のフィルム。
16.
無機粒子、好ましくはセラミック粒子が、分子式SiOを有するケイ素の酸化物、ならびに分子式AlNaSiOを有する混合酸化物、及び分子式TiOを有するチタンの酸化物をベースとする粒子を含み、結晶質形態、非晶質形態、または混合形態で存在し得ることを特徴とする、上記14または15に記載のフィルム。
17.
無機粒子、好ましくはセラミック粒子が、少なくとも160℃、殊に少なくとも180℃、非常に特に好ましくは少なくとも200℃の融点を有することを特徴とする、上記1〜16のいずれか一つに記載のフィルム。
18.
部分的な無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングが、フィルムの少なくとも一方の面に、好ましくはフィルムの両面に存在することを特徴とする、上記1〜17のいずれか一つに記載のフィルム。
19.
無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングが、0.05μm〜10μm、好ましくは0.1μm〜5μmの厚さを有することを特徴とする、上記1〜18のいずれか一つに記載のフィルム。
20.
無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングが、少なくとも一種の最終固結バインダー(endverfestigen Binder)、好ましくはポリ二塩化ビニレン(PVDC)をベースとする最終固結バインダーをさらに含むことを特徴とする、上記1〜19のいずれか一つに記載のフィルム。
21.
無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングが、少なくとも100kPaの圧縮強度、好ましくは少なくとも150kPa、殊に少なくとも250kPaの圧縮強度を有する無機粒子、好ましくはセラミック粒子を含むことを特徴とする、上記1〜20のいずれか一つに記載のフィルム。
22.
無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングが、多孔性フィルム上に直接施与されていることを特徴とする、上記1〜21のいずれか一つに記載のフィルム。
23.
フィルムの一方の面、好ましくはフィルムの両面上の総表面積のわずか95%まで、好ましくは10〜95%、殊に25〜90%に、無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングが施されていることを特徴とする、上記1〜22のいずれか一つに記載のフィルム。
24.
(i)単層または多層多孔性ポリプロピレンフィルムを押し出すステップであって、プロピレンポリマーとβ核形成剤との混合物を押出機内で溶融させ、フラットダイを通して引取ロール上に押し出すステップと;
(ii)次いで、β微結晶を形成させながら、押し出された溶融フィルムを冷却及び固化するステップと;
(iii)次いで、このフィルムを縦方向に延伸し、その後、横方向に延伸するステップであって、横延伸を40%/秒未満の遅い延伸速度で実施し、フィルムが、製造後に1000秒未満のガーレー数を有するステップと;
(iv)以下(a)から(e):
(a)無機粒子、好ましくはセラミック粒子20重量%〜90重量%、特に好ましくは30重量%〜80重量%;
(b)ポリ二塩化ビニレン(PVDC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエチレンイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、シリケートバインダー、グラフトポリオレフィン、ハロゲン化ポリマー群からのポリマー、例えば、PTFE、及びそれらの混合物をベースとするバインダーの群から選択されるバインダー1重量%〜30重量%、特に好ましくは1.5重量%〜20重量%、ここで、これらのバインダーの中でも、ポリ二塩化ビニレン(PVDC)をベースとするバインダーが好ましく;
(c)場合によっては、分散液の安定性または多孔性BOPPフィルム上へのぬれ性を向上させる有機物質、殊にモノアルコールまたはポリアルコール1重量%〜30重量%、特に好ましくは0.01重量%〜0.5重量%;
(d)場合によっては、分散液安定剤及び/または消泡剤などのさらなる添加剤0.00001重量%〜10重量%、特に好ましくは0.001重量%〜5重量%;
(e)分散液の成分全部の合計が100重量%となるような水
を含む分散液を施与するステップと、
(v)分散液でコーティングした多孔性フィルムを乾燥させるステップと
を含む、上記1〜23のいずれか一つに記載のコーティングされたフィルムを製造する方法であって、多孔性フィルムが、部分的な無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングを有することを特徴とする、前記方法。
25.
(iii)による延伸を、2つの別々のプロセスステップで実施することを特徴とする、上記24に記載の方法。
26.
部分的な無機コーティング、好ましくはセラミックコーティングが、フィルムの少なくとも一方の面、好ましくはフィルムの両面に施与されることを特徴とする、上記24に記載の方法。
27.
コーティングされる多孔性フィルムがステップ(iv)において平滑な表面を有するか、または0.02〜6μmの規定された粗さ(DIN4768、カットオフ2.5mm)を有することを特徴とする、上記24〜26のいずれか一つに記載の方法。
28.
多孔性BOPPフィルムに、既知のコロナ処理、プラズマ処理、または火炎処理方法のいずれかでのフィルムの表面、殊に、後でコーティングする予定のフィルム面の後処理を施さないことを特徴とする、上記24〜27のいずれか一つに記載の方法。
29.
ステップ(iii)の後であってステップ(iv)においてコーティングを施与する前に、多孔性BOPPフィルムに、さらなる後処理を施さず、直接コーティングすることを特徴とする、上記24〜28のいずれか一つに記載の方法。
30.
高エネルギーまたは高性能システムにおける、殊にリチウム、リチウムイオン、リチウム−ポリマー、及びアルカリ土類金属バッテリーにおけるセパレータとしての、上記1〜23のいずれか一つに記載のフィルムの使用。
31.
上記1〜23のいずれか一つに記載のフィルムを含有する高エネルギーまたは高性能システム、殊にリチウム、リチウムイオン、リチウム−ポリマー、及びアルカリ土類金属バッテリー。
32.
上記1〜23のいずれか一つに記載のコーティングされたフィルムを製造する方法であって、コーティングされていない多孔性フィルムを、無機粒子、好ましくはセラミック粒子でできた粉体でコーティングすることを特徴とする、前記方法。
33.
粒子が、分子式SiOを有するケイ素の酸化物、並びに分子式AlNaSiOを有する混合酸化物、及び分子式TiOを有するチタンの酸化物をベースとする粒子を含むことを特徴とする、上記32に記載の方法。
34.
フィルムの表面が、コーティングの前に、コロナ、火炎またはプラズマで処理されていないことを特徴とする、上記32または33に記載の方法。
35.
フィルムの表面が、コーティングの前に、コロナ、火炎またはプラズマで処理されており、次いで処理された表面に対しコーティングが行われることを特徴とする、上記24または32または33に記載の方法。
36.
コーティングの後にガーレー数が、600ガーレー秒未満、好ましくは200ガーレー秒未満しか高まらないことを特徴とする、上記1〜23のいずれか一つに記載のフィルム。
図1
図2