【実施例】
【0020】
決して限定的ではなく、例示を目的としている以下の実施例において、本発明をさらに説明する。
【0021】
実施例1−1233xfおよびE−1233zdの蒸気圧
全ての永久ガスを除去するために、認証された圧力計を備えた高圧セルを真空ポンプにより排気した。次いでこのセルに、14.21gの1233xfおよび9.17gのE−1233zdを個々にステンレス鋼製シリンジポンプにより装填した。この高圧セルを、温度が0.1℃の精度で制御された軌道周回シェーカ内に入れた。5℃、15℃、25℃、および35℃での圧力を測定した。平衡にするために、各温度における圧力を1時間後に測定した。圧力計の精度は、±0.1psia(ポンド/平方インチ(絶対圧力))であった。永久ガスが、圧力測定を妨害していなかったことを確認するために、1000/Tに対するln(自然対数)Pをプロットした。R
2=0.9999と良好な線形適合が得られ、永久ガスの関与を示さなかった。測定された圧力は、表1に見ることができる。
【0022】
【表1】
【0023】
表1のデータは、1233xfが、15℃から25℃までの温度範囲内で(14.7psia)の大気圧よりも高い圧力を有していることを示し、1233xfが急速に蒸発することを示している。このことは、溶剤用途には望ましくない。E−1233zdは、5℃から15℃までの温度範囲内で大気圧よりも低い圧力を示す。
【0024】
実施例2 E−1233zdのカウリブタノール価
カウリブタノール(Kb)は、溶解力の指標として用いられている重要なパラメータの一つである。Kb価が高くなるほど、溶解力が強くなる。ASTM D1133の「炭化水素のカウリブタノール価に関する標準的試験法(Standard Test Method for Kauri−Butanol Value of Hydrocarbons)」に記述された手法に従った。比較として、他の一般的に用いられる溶剤、TDCE、トランス−1,2−ジクロロエチレン;F1411b、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン;CFC11、トリクロロフルオロメタン;HCHC225、およびジクロロペンタフルオロプロパンのKb価もまた測定した。
【0025】
【表2】
【0026】
Clの存在は、物質の溶解力の増加に寄与すると考えられた。表2では、塩素が1個しかない物質にしては、E−1233zdが、驚くほど高いカウリブタノール価を示すことが見られる。同様に塩素が1個しかない物質である1233xfのカウリブタノール価は測定することができなかったが、E−1233zdに関するカウリブタノール価は相対的に高いことはさらに驚くべきことである。
【0027】
実施例3 E−1233zdの引火性
溶剤の引火性は、その使用安全性に関連する。大抵の用途で、溶剤は出来るだけ引火性が低いことが望ましい。E−1233zdの引火性は、ASTM D3278−96に従って測定された引火点を特徴とした。TDCEおよびHCFC225の引火点を、比較例として用いた。これらの結果を表3に要約してある。
【0028】
【表3】
【0029】
塩素の存在は、分子の引火性を減少させ、一方、水素は引火性を増加させると考えられる。表3のデータにおいて、水素対塩素の比率が相対的に低いE−1233zdが、驚くべきことに引火点を示さない。
【0030】
実施例4 E−1233zdとエラストマーとの物質適合性
E−1233zdの沸点で72時間超線形膨潤を測定することによって、E−1233zdと種々のエラストマーとの適合性を測定した。これらの結果を表4に要約した。
【0031】
【表4】
【0032】
E−1233zdは、天然ゴムおよびEPDMとの適合性が、HCFC225およびCFC113と同等であることを示した。しかしながら、E−1233zdは、シリコーンゴムとの適合性がHCFC225およびCFC113よりもはるかに高かった。
【0033】
実施例5 E−1233zdを用いる潤滑油の脱脂
30×10mmの数枚のステンレス鋼プレートの表面に、少量の市販潤滑油を沈着させた。沈着の前後に、各プレートの質量を0.1mgの精度で測定した。これら2つの値の差異は、潤滑油の初期質量に相当する。
【0034】
初期質量が得られたら、各鋼プレートを、洗浄組成物で満たされたビーカー内に周囲温度で5分間浸漬する。その後、鋼プレートをビーカーから取り出し、外気中5分間乾燥した。その後、各プレートの質量を測定して、試験中に除去された潤滑油のパーセンテージを評価した。これらの結果を表5に要約してある。
【0035】
【表5】
【0036】
E−1233zdは、HCFC141bの結果と同等である。
【0037】
実施例6 シリコーン油の洗浄
シリコーン油を用いて実施例5と同様の手法に従った。これらの結果を表6に要約した。
【0038】
【表6】
【0039】
E−1233zdは、HCFC141bよりも良好な洗浄結果を示した。
【0040】
実施例7 1233zdおよびアルコール類の脱フラックス
30×10mmの数枚のステンレス鋼プレートの表面に、市販の少量のはんだ用フラックスを沈着させた。沈着前に、各プレートの質量を0.1mgの精度で測定したが、これは風袋質量に相当する。はんだ用フラックスに由来する金属が溶融するまで(1〜2分間)、これらのプレートを250℃に加熱した。次いでプレートから金属を容易に取り出すことができ、フラックスだけがプレート上に残存した。
【0041】
この方法で調製されたプレートを、外気中、周囲温度で16時間乾燥した。各乾燥プレートの質量を、沈着の前後に0.1mgの精度で測定した。これら2つの値の差異は、フラックスの初期質量に相当する。
【0042】
初期質量が得られたら、鋼プレートの半分を、洗浄組成物で満たされたビーカー内に周囲温度で30分間浸漬し、プレートの他の半分を、洗浄溶液で満たされたビーカー内に60分間浸漬する。浸漬後、ビーカーから鋼プレートを取り出し、外気中5分間乾燥した。その後、各プレートの質量を測定して、試験中に除去されたフラックスのパーセンテージを評価した。これらの結果を表7に要約してある。
【0043】
【表7】
【0044】
実施例8 1233zdおよびエステル類
市販の天然鉱油を用い高圧で実施例5と同様の手法に従った。これらの結果を表8に要約した。
【0045】
【表8】
【0046】
E−1233zdと1,2−トランスジクロロエチレンおよび酢酸メチルとの組成物は、各成分単独よりも予想外の良好な洗浄結果を示した。
【0047】
実施例9 エバポレータの洗浄
冷凍システムからのエバポレータには、既知量の300SUSの鉱油を含有する。エバポレータを、周囲温度で10分間、フラッシング剤でフラッシュすることができた。フラッシング時間後に、除去された油と残渣の量が測定されるであろう。このことは、フラッシングおよびフラッシング剤の排気後にエバポレータの重量を測定すること、ならびに/または除去した油および残渣からのフラッシング剤を取り除き、その重量を測定することにより実施できた。HFC−245faおよびトランス−HCFO−1233zdは、フラッシング剤として用いられるであろう。トランス−HCFO−1233zdは、フラッシングの間にHFC−245faよりも油と残渣をより大きなパーセンテージで除去し得ることが判明するであろう。
【0048】
実施例10 残渣
エアーコンディショニングからのエバポレータを洗浄するために、測定量のフラッシング液を加えて、開ループエバポレータのフラッシング手法後の条件をシミュレートすることが考えられる。エバポレータは、乾燥を補助するためエバポレータを通す緩流通気により25℃に維持されるであろう。このエバポレータを、例えば10分間乾燥してから、重量を測定して残存しているフラッシング剤の量が測定されるであろう。この手法は、トランス−HCFO−1233zdおよびシス−HCFO−1233zdを用いての実施が考えられるが、トランス−HCFO−1233zdよりもシス−HCFO−1233zdの方が、乾燥後の残存が多いことが予想される。
【0049】
蒸気脱脂装置の多数の種類とタイプが、本法と関連した使用に対して適応可能であることが考慮されている。当該溶解法/洗浄法はまた、汚染物品を、周囲温度もしくは室温条件下、本発明の流体組成物に浸すか、またはこのような条件下、溶剤/洗浄剤中に浸漬させたぼろきれまたは同様の対象物で拭き取る冷洗浄を含むことができる。
一側面において本発明は以下の発明を包含する。
(発明1)
ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdのトランス立体異性体を約70重量%以上含んでなる溶剤/洗浄剤組成物。
(発明2)
前記ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdが、約90重量%以上の前記トランス立体異性体を含んでなる発明1に記載の溶剤/洗浄剤組成物。
(発明3)
前記ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdが、約97重量%以上の前記トランス立体異性体を含んでなる発明1に記載の溶剤/洗浄剤組成物。
(発明4)
ヒドロフルオロカーボン類、ヒドロフルオロオレフィン類、炭化水素類、エーテル類、ヒドロフルオロエーテル類、エステル類、ケトン類、アルコール類、1,2−トランスジクロロエチレンおよびそれらの混合物をさらに含んでなる発明1に記載の溶剤/洗浄剤組成物。
(発明5)
前記アルコールが、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される発明4に記載の溶剤/洗浄剤組成物。
(発明6)
前記エステルが、ギ酸メチル、酢酸メチル、ギ酸エチルおよび酢酸エチルからなる群から選択される発明4に記載の溶剤/洗浄剤組成物。
(発明7)
約15超のカウリブタノール価を有する発明1に記載の溶剤/洗浄剤組成物。
(発明8)
約20超のカウリブタノール価を有する発明1に記載の溶剤/洗浄剤組成物。
(発明9)
前記ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdのトランス立体異性体を約70重量%以上含んでなる伝熱流体組成物。
(発明10)
前記ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdが、約90重量%以上の前記トランス立体異性体を含んでなる発明9に記載の伝熱流体組成物。
(発明11)
前記ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdが、約97重量%以上のトランス立体異性体を含んでなる発明9に記載の伝熱流体組成物。
(発明12)
ヒドロフルオロカーボン類、ヒドロフルオロオレフィン類、炭化水素類、エーテル類、ヒドロフルオロエーテル類、エステル類、ケトン類、アルコール類、1,2−トランスジクロロエチレンおよびそれらの混合物をさらに含んでなる発明9に記載の伝熱流体組成物。
(発明13)
前記アルコールが、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される発明12に記載の伝熱流体組成物。
(発明14)
前記エステルが、ギ酸メチル、酢酸メチル、ギ酸エチルおよび酢酸エチルからなる群から選択される発明12に記載の伝熱流体組成物。
(発明15)
前記ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdのトランス立体異性体を70重量%以上含んでなる液体および/または蒸気と表面との接触を含んでなる、前記表面から不純物を除去する方法。
(発明16)
前記液体および/または蒸気が、約90重量%以上の前記トランス立体異性体を含んでなる発明15に記載の方法。
(発明17)
前記液体および/または蒸気が、約97重量%以上の前記トランス立体異性体を含んでなる発明15に記載の方法。
(発明18)
前記液体および/または蒸気が、ヒドロフルオロカーボン類、ヒドロフルオロオレフィン類、炭化水素類、エーテル類、ヒドロフルオロエーテル類、エステル類、ケトン類、アルコール類およびそれらの混合物をさらに含んでなる発明15に記載の方法。
(発明19)
前記アルコールが、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される発明18に記載の方法。
(発明20)
前記エステルが、ギ酸メチル、酢酸メチル、ギ酸エチルおよび酢酸エチルからなる群から選択される発明18に記載の方法。
(発明21)
脱脂、精密洗浄、脱フラックス、脱水、脱酸素またはシリコン沈着の除去を含んでなる発明15に記載の方法。
(発明22)
脱脂を含んでなる発明15に記載の方法。
(発明23)
精密洗浄および脱フラックスを含んでなる発明15に記載の方法。
(発明24)
脱水を含んでなる発明15に記載の方法。
(発明25)
潤滑剤、およびスプレー接着剤のための担体流体適用を含んでなる発明15に記載の方法。
(発明26)
シリコン沈着の除去を含んでなる発明15に記載の方法。
(発明27)
前記液体および/または蒸気が、約15超のカウリブタノール価を有する発明15に記載の方法。
(発明28)
前記液体および/または蒸気が、約20超のカウリブタノール価を有する発明15に記載の方法。
(発明29)
コンプレッサー内の冷媒を圧縮すること、および冷却する本体の近傍に前記冷媒を蒸発させることを含んでなり、前記冷媒が、ヒドロクロロフルオロオレフィン1233zdのトランス立体異性体を約70重量%以上含んでなる、冷却を生じさせる方法。
(発明30)
前記冷媒が、実質的に、前記トランス立体異性体を約90重量%以上含んでなる発明29に記載の方法。
(発明31)
前記冷媒が、実質的に、前記トランス立体異性体を約97重量%以上含んでなる発明29に記載の方法。
(発明32)
前記冷媒が、ヒドロフルオロカーボン類、ヒドロフルオロオレフィン類、炭化水素類、エーテル類、ヒドロフルオロエーテル類、エステル類、ケトン類、アルコール類、1,2−トランスジクロロエチレンおよびそれらの混合物をさらに含んでなる発明29に記載の方法。
(発明33)
前記アルコールが、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される発明32に記載の方法。
(発明34)
前記エステルが、ギ酸メチル、酢酸メチル、ギ酸エチルおよび酢酸エチルからなる群から選択される発明32に記載の方法。