特許第6205425号(P6205425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6205425-新規のROCK阻害剤 図000057
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205425
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】新規のROCK阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 217/00 20060101AFI20170914BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20170914BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20170914BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 31/4725 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 31/472 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20170914BHJP
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   A61P 13/12 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170914BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C07D217/00
   C07D401/12CSP
   C07D405/14
   C07D405/12
   A61K31/4725
   A61K31/454
   A61K31/472
   A61P21/00
   A61P29/00
   A61P35/00
   A61P9/00
   A61P25/28
   A61P27/02
   A61P27/16
   A61P11/02
   A61P11/04
   A61P1/04
   A61P13/12
   A61P15/00
   A61P19/00
   A61P13/08
   A61P37/06
   A61P21/02
   A61P13/10
   A61P37/08
   A61P27/06
   A61P11/00
   A61P17/00
   A61P25/00
   A61P43/00 111
   C07D401/14
【請求項の数】15
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2015-540120(P2015-540120)
(86)(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公表番号】特表2015-535270(P2015-535270A)
(43)【公表日】2015年12月10日
(86)【国際出願番号】EP2013072774
(87)【国際公開番号】WO2014068035
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年10月18日
(31)【優先権主張番号】12190859.4
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516225717
【氏名又は名称】ピーエイチ ファーマ シーオー.,エルティディ.
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100152319
【弁理士】
【氏名又は名称】曽我 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】ブーラン,アルノー,ピエール,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】レイセン,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】デフェール,オリヴィア
(72)【発明者】
【氏名】ボラン,サンドロ
【審査官】 笠原 暢子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/146724(WO,A2)
【文献】 国際公開第2012/015760(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/075415(WO,A1)
【文献】 特表2010−513319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 217/00
A61K 31/454
A61K 31/472
A61K 31/4725
A61P 1/04
A61P 9/00
A61P 11/00
A61P 11/02
A61P 11/04
A61P 13/08
A61P 13/10
A61P 13/12
A61P 15/00
A61P 17/00
A61P 19/00
A61P 21/00
A61P 21/02
A61P 25/00
A61P 25/28
A61P 27/02
A61P 27/06
A61P 27/16
A61P 29/00
A61P 35/00
A61P 37/06
A61P 37/08
A61P 43/00
C07D 401/12
C07D 401/14
C07D 405/12
C07D 405/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物又はその立体異性体、互変異性体、ラセミ体、塩、水和物、若しくは溶媒和物:
【化1】
(式中、Ar1は、
【化2】
を含む群から選択され、
Ar2はアリール又はヘテロアリールを表し、
Cyは、1つの炭素原子が窒素原子により任意に置き換えられているC3〜15シクロアルキルであり、
Xは、直接結合、-NH-又は-N(C1〜6アルキル)-であり、
R1は、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、及びC1〜6アルコキシルを含む群から選択され、
R2は、水素及びC1〜3アルキルを含む群から選択され、
R3は、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、及びC1〜6アルコキシルを含む群から選択され、
R4は、C1〜20アルキル、C1〜20アルケニル、C1〜20アルキニル、C3〜15シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、及びヘテロアリールを含む群から選択される任意に置換された基であり、
R5は、水素、C1〜6アルキル及びNH2から選択され、
R6は、水素、ハロ又はC1〜6アルキルから選択され、
kは、0〜3の整数であり、
lは、0〜3の整数であり、
mは0〜3の整数である)。
【請求項2】
Ar1が、
【化3】
を含む群から選択され、
Ar2がアリール又はヘテロアリールを表し、
Cyが、1つの炭素原子が窒素原子により任意に置き換えられているC3〜15シクロアルキルであり、
Xが、直接結合、-NH-又は-N(C1〜6アルキル)-であり、
R1が、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、及びC1〜6アルコキシルを含む群から選択され、
R2が、水素及びC1〜3アルキルを含む群から選択され、
R3が、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、及びC1〜6アルコキシルを含む群から選択され、
R4が、C1〜20アルキル、C1〜20アルケニル、C1〜20アルキニル、C3〜15シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、及びヘテロアリールを含む群から選択される任意に置換された基であり、
R5が、水素、C1〜6アルキル及びNH2から選択され、
R6が、水素、ハロ及びC1〜6アルキルから選択され、
kが、0〜3の整数であり、
lが、0〜3の整数であり、
mが0〜3の整数であり、
ただし、Cyが窒素原子を含有する場合、Xが直接結合であり、Cyが窒素原子を含有しない場合、Xが-N(C1〜6アルキル)-又は-NH-である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
-Cy-X-が、
【化4】
からなる群、
あるいは
【化5】
からなる群、
あるいは
【化6】
からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Ar2が、アリール、あるいはフェニルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R1が、水素、ハロゲン、メチル、及びメトキシル、或は水素、フルオロ、クロロ、メチル、及びメトキシルからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R2が水素であり、
R3が水素又はC1〜6アルコキシル、あるいは水素又はエトキシル、あるいは水素である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R4が、C1〜20アルキル、C3〜15シクロアルキル、及びヘテロシクリルからなる群から選択される任意に置換された基であり、あるいはR4が任意に置換されたC1〜20アルキルであり、
任意の置換基がハロ、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、シアノ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、及びアルコキシ、あるいはC1〜6アルコキシ及びヘテロシクリル、あるいはメトキシル及びオキソラニルから選択される、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R5が、水素、メチル、及びNH2からなる群から選択され、あるいはR5が水素であり、
R6が、水素、フルオロ、又はメチル、あるいは水素である、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
k、l、及びmが各々、独立して0及び1から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
ヒト又は動物用の医薬として使用される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
ヒト又は動物用の医薬として使用される請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物を含む組成物。
【請求項12】
平滑筋細胞機能、炎症、線維化、過剰な細胞増殖、過剰な血管形成、過敏性、バリア機能障害、神経変性、及びリモデリングに関わる疾患等のROCKが関与する少なくとも1つの疾患又は障害の予防及び/又は治療に使用される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物又は請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
眼疾患、気道疾患、耳鼻咽喉疾患、腸疾患、皮膚疾患、心血管及び他の血管の疾患、炎症性疾患、神経障害、増殖性疾患、腎疾患、性機能障害、骨疾患、良性前立腺過形成、移植片拒絶反応、痙攣、慢性閉塞性膀胱疾患、及びアレルギーからなる群から選択される少なくとも1つの疾患又は障害の予防及び/又は治療に使用される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物又は請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
網膜症、視神経症、緑内障、炎症性眼疾患、並びに黄斑変性症及び網膜色素変性症の網膜変性疾患からなる群から選択される眼疾患、あるいは緑内障の予防及び/又は治療に使用される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物又は請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
眼疾患、気道疾患、耳鼻咽喉疾患、腸疾患、皮膚疾患、心血管及び他の血管の疾患、炎症性疾患、神経障害及びCNS障害、増殖性疾患、腎疾患、性機能障害、骨疾患、良性前立腺過形成、移植片拒絶反応、痙攣、慢性閉塞性膀胱疾患、及びアレルギーを含む群から選択される少なくとも1つの疾患又は障害予防及び/又は治療であって、それを必要とする対象に治療的有効量の請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物又は請求項11に記載の組成物を投与することを含む、
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たなキナーゼ阻害剤、より具体的にはROCK阻害剤、かかる阻害剤を含む組成物、特に医薬品、並びに疾患の治療及び予防法におけるかかる阻害剤の使用に関する。特に、本発明は、新たなROCK阻害剤、かかる阻害剤を含む組成物、特に医薬品、並びに疾患の治療及び予防法におけるかかる阻害剤の使用に関する。本発明の化合物はソフトドラッグ(soft drug)特性を呈する、すなわち本発明の化合物は体循環に入ると急速に不活性化する。そのため、本発明の化合物は機能的に活性なROCK阻害剤への全身曝露の低減を可能にする。
【背景技術】
【0002】
セリン/トレオニンプロテインキナーゼROCKは、ヒトにおいては2つのアイソフォームROCK I及びROCK IIからなる。ROCKIは18番染色体上にコードされるが、Rhoキナーゼとも呼ばれるROCK IIは12番染色体上に位置する。これらはどちらも160 kDa近くの分子量を有する。これらは65%の全体的な相同性を有し、キナーゼ領域においては95%相同である。それらの配列類似性にも関わらず、ROCK I及びROCK IIは組織分布が異なる。ROCK Iの最高レベルの発現は、心臓、肺、及び骨格組織において観察されるが、ROCK IIは主として脳において発現される。最近のデータから、これら2つのアイソフォームが部分的に機能的に(functionally)余剰であり、ROCK Iがより免疫学的事象に関与し、ROCK IIがより平滑筋機能に関与することが示されている。ROCKという用語は、ROCK I(ROK-β、p160ROCK、又はRhoキナーゼβ)及びROCK II(ROCK-α又はRhoキナーゼα)を指すものである。
【0003】
ROCK活性は、Rho(Ras相同)GTP結合タンパク質の成員であるGTPアーゼRhoAによって増強されることが示されている。活性なGTP結合状態のRhoAは、自己阻害カルボキシル末端ループ中に位置するROCKのRho結合領域(RBD)と相互作用する。結合の際に、ROCK陰性調節領域とキナーゼ領域との間の相互作用が妨げられる。このプロセスによって、キナーゼが、それが完全に活性であるオープンな立体配座を得ることが可能となる。オープンな立体配座は、キナーゼカルボキシル末端領域中のPH領域へのアラキドン酸等の脂質活性化因子の結合によっても誘導される。別の活性化機構はアポトーシス中に起こると記載され、ROCK I及びROCK IIのそれぞれについてカスパーゼ-3及びカスパーゼ-2(又はグランザイムB)によるカルボキシル末端の切断を伴う。
【0004】
ROCKは、平滑筋収縮、アクチン細胞骨格構築、血小板活性化、ミオシンホスファターゼの細胞接着、細胞移動、細胞増殖、及び細胞生存の下方制御、大動脈平滑筋細胞のトロンビン誘導応答、心筋細胞の肥大、気管支平滑筋収縮、平滑筋収縮、並びに非筋細胞の細胞骨格再構築、容積調節アニオンチャネルの活性化、神経突起退縮、創傷治癒、細胞形質転換、並びに遺伝子発現等の様々な細胞機能において重要な役割を果たす。ROCKは自己免疫及び炎症に関与する幾つかのシグナリング経路においても作用する。ROCKは、TNF及び他の炎症性サイトカインの産生をもたらす重要な分子であるNF-κBの活性化の一端を担うことが示されている。ROCK阻害剤は、リポ多糖(LPS)刺激性THP-1マクロファージにおけるTNF-α及びIL-6の産生に対して作用することが報告されている。したがって、ROCK阻害剤は、自己免疫疾患及び炎症性疾患、並びに酸化的ストレスを治療する有用な治療法を提供する。
【0005】
ROCKは、血管形成に関与する多数の重要な細胞プロセスにおいても重要な役割を果たす。これらのプロセスとしては、ストレスファイバー形成、内皮細胞(EC)極性、EC接着、EC運動性、細胞質分裂、及びアポトーシスが挙げられる。以前の研究によって、Rhoシグナリングが、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)依存性のin vitro毛細管形成及びin vivo血管形成に不可欠であることが既に示されている。このことから、Rho/ROCK阻害が、角膜の血管新生又は加齢性黄斑変性症等の血管形成関連障害を治療する新たな方法となり得ることが示唆される。
【0006】
結論として、ROCKは平滑筋細胞機能における主要な制御点であり、様々な炎症細胞における炎症プロセス、並びに多くの罹病器官における線維化及びリモデリングに関わる重要なシグナリング成分である。加えて、ROCKは、眼疾患、気道疾患、心血管及び他の血管の疾患、炎症性疾患、神経障害及びCNS障害、増殖性疾患、腎疾患、性機能障害、血液疾患、骨疾患、糖尿病、良性前立腺過形成、移植片拒絶反応、肝疾患、全身性エリテマトーデス、痙攣、高血圧、慢性閉塞性膀胱疾患、早産、感染、アレルギー、肥満、膵疾患、並びにAIDSを含む様々な疾患及び障害に関係があるとされている。
【0007】
ROCKは、ノックアウトモデル及び多数の学術研究によって実証されるように比較的安全な標的であるようである。これらのKOマウスデータを、くも膜下出血後の血管攣縮の治療に使用される適度に強力なROCK阻害剤であるファスジルを用いた市販後調査と組み合わせると、ROCKが真の重要な薬物標的であることが示される。
【0008】
ROCK阻害剤は、ROCK経路に関係がある障害の治療用の治療剤として有用であり得る。したがって、特にこれらの障害の大半に対する現在利用可能な不適切な治療を考えると、ROCK活性化に関連する様々な疾患又は病態を治療するのに有用なROCK阻害剤を開発することの必要性は大きい。幾つかの非限定的な例は緑内障、喘息、及びCOPDである。
【0009】
緑内障は、不可逆的失明の2番目に重要な原因である神経変性疾患である。この疾患は、眼圧(IOP)の上昇及び網膜神経節細胞アポトーシスの進行を特徴とし、不可逆的な視野欠損を引き起こす。この疾患の現行の治療は、緑内障の唯一ではないが主要な危険因子であるIOPを低下させることを対象とする。現行の治療法は疾患を治癒せず、抑制するものでしかなく、更には刺激、局部的副作用及び全身性副作用を引き起こすことから、治療の改善が必要とされている。加えて、ROCK阻害剤の抗炎症要素及び神経再生要素のような更なるプラス効果が非常に好ましい。Y-27632等の参照ROCK阻害剤は、培養ヒトTM細胞において細胞形状の変化を引き起こし、ストレスファイバー、接着斑、及びMLCリン酸化を減少させる。これらはin vitroでヒト小柱網を弛緩させ、in vitroでヒトシュレム管内皮細胞を弛緩させ、動物に局所的に適用した場合に、小柱網房水流出(trabecular outflow)の著しい増加をもたらし、眼圧の強い低下を生じる。
【0010】
アレルギー性喘息は、遺伝的に感受性の強い人における遍在性環境タンパク質に対する不適応な免疫応答に起因する慢性炎症性気道障害である。それなりに成功した治療法にも関わらず、これらの治療法は治癒をもたらさないため、アレルギー性喘息の有病率は増加しており、依然として憎悪及び無反応者数の増加が存在する。この疾患の全ての要素に対処する新たな効果的なステロイド節約治療が必要とされている。
【0011】
加齢性黄斑変性症(AMD)は、高齢者集団における視力喪失の主な原因である。ウェット型、すなわち新生血管性のAMDは、脈絡膜血管新生(CNV)、黄斑浮腫及び光受容細胞死のために急激で重篤な視力喪失をもたらす。最近では、抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)治療法が、ウェット型AMDにおける活動性CNVに対して第1選択の治療法となっている。VEGFは血管形成及び血管透過性を促進し、CNV形成において重要な役割を果たす。VEGF又はその受容体を妨げることを目的とする種々の薬物が開発されている。血管新生に加えて、AMDの病因には炎症及び瘢痕も含まれる。最近の前臨床試験により、抗VEGF治療が血管形成の低減に制限され、炎症及び瘢痕を生じることさえあることが示されている。別の大きな懸念は、抗VEGFが血管の退縮及び神経変性による大きな全身性副作用、並びに局所副作用を生じる可能性があることである。そのため、代替的な治療法が必要とされている。以前の研究から、Y-27632によるROCK1及びROCK2の薬理学的阻害が血管形成を強く妨げ、ROCK阻害が炎症及び瘢痕を低減することが既に示されている。したがって、ROCK阻害剤は、ウェット型AMDの治療にとって魅力的な改善された抗VEGF治療法の代替案であり得る。
【0012】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、異常な炎症性応答、気管支収縮、並びに肺組織のリモデリング及び破壊に関連する不可逆的な気流制限を特徴とする疾患群を表す。これは世界中で主要な死因の1つであり、有病率は着実に増大している。現行のレジメンでは不十分であるため、新規の治療アプローチが緊急に必要とされている。グルココルチコイドは効果が限られているか、又は効果を有しないため、現行の治療は気管支拡張剤に本質的に基づくものである。ROCK阻害剤は、COPDの新規の治療戦略を提供することができる。Y-27632等の参照ROCK阻害剤は、ヒトの単離気管支標本を弛緩させ、麻酔動物において気道抵抗の増大を抑え、in vitro及びin vivoでβ作動薬の弛緩効果を高め、吸入時の急速な気管支拡張をもたらす。加えて、ROCK阻害剤は酸化的ストレスの臨床的指標であるH2O2によって誘導される気管平滑筋収縮を妨げる。気道炎症に関しては、ROCK阻害剤は、炎症性物質によって媒介される経内皮透過性の増大に対抗し、内皮障壁の完全性を維持し、in vivoでオボアルブミンチャレンジ後の好酸球の流入を阻害し、肺水腫形成及び好中球移動を防ぎ、アレルギーマウスにおけるメタコリン(methachoiine)及びセロトニンに対する気道HRを抑制し、LPS誘導性TNF放出を妨げる。気道の線維化及びリモデリングについては、ROCK阻害剤は、気道平滑筋細胞の移動の誘導を妨げる。気道リモデリングにおけるROCKの役割のin vitroエビデンスが、ヒト肺癌細胞株、ウシ気管平滑筋細胞、及びヒト気道平滑筋において得られた。線維症全般におけるROCKの役割のin vivo証拠が、ROCKの部分欠失に応じて減弱化した(attenuated)心筋線維症を示すマウスによってもたらされた。慢性高血圧ラットモデルにおける心筋梗塞に応じたY-27632による、また、鬱血性心不全の場合のファスジルによる心筋線維症の減弱化は、リモデリングにおけるROCKの重要性を更に示唆する。最後に、ROCK阻害剤は、平滑筋細胞のアポトーシスによる細胞消失を増大させる。
【0013】
幾つかの異なるクラスのROCK阻害剤が知られている。現在の焦点は腫瘍学及び心臓血管系への適用である。これまで、ROCK阻害剤の顕著な治療可能性は、限られた範囲内でしか検討されてこなかった。これは、ROCKが強力かつ広範な生化学的調節因子であり、ROCKの全身的阻害が、ほとんどの疾患の治療にとって副作用であると考えられる強い生物学的影響をもたらすためである。実際に、非心臓病学的適応症へのROCK阻害剤の医学的使用は、平滑筋細胞収縮の強直期の調節におけるROCKの極めて重要な役割によって阻まれている。全身に利用可能なROCK阻害剤は、血圧の著しい低下を誘導する。したがって、異なる性質を有するROCK阻害剤が強く必要とされている。
【0014】
平滑筋機能、及び/又は炎症プロセス、及び/又はリモデリングを調節することによる障害の標的特異的治療については、ROCK阻害剤を標的器官に送達すること、及び相当量のこれらの薬物が他の器官に入るのを回避することが非常に望ましい。したがって、局部適用又は局所適用が望まれる。通常、薬物の局所投与は、気道障害、眼障害、性機能障害、及び皮膚障害の治療に適用されている。加えて、罹病組織への局部的な注射/浸潤は、局部に適用されるROCK阻害剤の潜在的な医学的使用を更に拡大する。或る特定の基準が満たされていれば、これらの局部適用によって、標的組織において高い薬物濃度が達成される。加えて、ROCK阻害剤をインプラント及びステントに含入させることによって、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患、及び心不全等のCV疾患の局部治療にまで医学的適用を更に広げることができる。
【0015】
直接局部適用が医療行為において好ましいにも関わらず、体循環に到達する薬物レベルが懸念されている。例えば吸入による局部送達による気道疾患の治療は例えば、大量の薬物がGI管に入ること及び/又は肺を介した体内吸収による全身曝露のリスクを有する。局部送達による眼疾患の治療についても、角膜の低い透過性、流体に対する低い容量、効率的な排出、及び眼瞼における血管の存在のために、相当量の薬物がGI管及び/又は体循環に入る。皮膚適用、局部注射、及び埋め込み型の医療機器についても、体循環への漏出の重大なリスクがある。したがって、局部適用に加えて、化合物は好ましくは相当の全身的曝露を回避する更なる性質を有するべきである。
【0016】
アンテドラッグとしても知られるソフトドラッグは、体循環に入ると迅速に不活性化されるように設計された生物学的に活性な化合物である。この不活性化は、著しく低下した機能活性、又は好ましくは無視することのできる機能活性を示す予測可能な代謝産物への上記ソフトドラッグの制御された変換を伴う。不活性化は肝臓内又は血流中で達成することができる。これらの化合物は、標的組織/器官に局部適用すると、それらの所望の効果を局部的に発揮する。ソフトドラッグは標的組織から体循環へ漏出すると、迅速に不活性化される。このため、最適なソフトドラッグは、標的組織/器官において所望の生物学的効果を発揮するのに十分に安定であるが、血液中で生物学的に不活性な化合物へと迅速に分解される。したがって、ソフトドラッグは、機能的に活性な薬物化合物への全身曝露の低減を可能にする。ソフトドラッグは、機能的に活性な代謝産物への制御された変換を受け、通常は機能的に活性な化合物への曝露の増加をもたらすことを目的とするプロドラッグと混同すべきではない。
【0017】
ROCK阻害剤の望ましくない副作用を生じる可能性の高さに鑑みると、ソフトドラッグアプローチが、改善された性質を有するROCK阻害剤、特に全身曝露の低減に関連するROCK阻害剤を生成する魅力的な方法であり、したがって望ましくない副作用の可能性を低下させることが理解されよう。
【0018】
ソフトドラッグは、ROCKの阻害及びROCKに関連する疾患又は病態の治療にとって魅力的なアプローチであるが、かかる化合物の設計及び最適化は簡単なことではない。奏功するソフトドラッグは、強いオンターゲット効果及び機能的有効性を保持する必要がある。さらに、奏功するソフトドラッグは、目標とする作用部位(例えば眼又は肺)で薬理学的に関連する薬物濃度を達成し、長期間(通常は数時間)にわたってこの濃度を維持することができるように、その目標とする作用部位で良好な安定性を示さなくてはならない。さらに、奏功するソフトドラッグは、全身曝露及び全身曝露に関連する望ましくない副作用が回避されるように、体循環に入った時点で急速に分解されなくてはならない。最後に、ソフトドラッグの分解により生じる分子(複数の場合もあり)は、著しく低下した、好ましくは無視することのできる機能活性を示さなくてはならない。結果として、これらの側面の全てを首尾よく組み合わせた分子の設計及び最適化は、重大な技術的課題である。
【0019】
結論として、広範な疾患状態の治療に対するソフトROCK阻害剤を設計及び開発することが引き続き必要とされている。
【0020】
本明細書に記載の化合物はソフトROCK阻害剤であり、強いオンターゲット効果及び機能的有効性と、標的器官(眼又は肺等であるが、これらに限定されない)における良好な安定性と、血中での予測可能な機能的に不活性な種への急速な変換とを首尾よく組み合わせるという技術的課題を解決するものである。本明細書中に記載される化合物及び薬学的に許容可能なその組成物は、ROCK活性化に関連する様々な障害若しくは病態の治療又はその重症度の軽減に有用である。より具体的には、本発明の化合物は好ましくは、平滑筋細胞機能、炎症、線維化、過剰な細胞増殖、過剰な血管形成、過敏性、バリア機能障害、神経変性(neurodegeneration)、及びリモデリングに関わる疾患等のROCKが関与する少なくとも1つの疾患又は障害の予防及び/又は治療に使用される。例えば、本発明の化合物は、下記のような疾患及び障害の予防及び/又は治療に使用することができる:
網膜症、視神経症、緑内障、及び黄斑変性症、増殖性硝子体網膜症、増殖性糖尿病性網膜症、網膜色素変性症等の網膜変性疾患、及び炎症性眼疾患、緑内障濾過手術ミス、ドライアイ、アレルギー性結膜炎、後嚢混濁、角膜創治癒異常及び眼痛を含むが、これらに限定されない眼疾患又は眼障害;
肺線維症、肺気腫、慢性気管支炎、喘息、線維症、肺炎、嚢胞性(cystic)線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、及び鼻炎、及び呼吸窮迫症候群を含むが、これらに限定されない気道疾患;
副鼻腔問題、聴覚問題、歯痛、扁桃炎、潰瘍、及び鼻炎を含むが、これらに限定されない耳鼻咽喉疾患;
過角化症、錯角化症、顆粒層肥厚、表皮肥厚症、異常角化症、海綿状態、及び潰瘍形成を含むが、これらに限定されない皮膚疾患;
炎症性腸疾患(IBD)、大腸炎、胃腸炎、腸閉塞、回腸炎、虫垂炎、及びクローン病を含むが、これらに限定されない腸疾患;
肺高血圧及び肺血管収縮を含むが、これらに限定されない心血管及び他の血管の疾患;
接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患、クローン病、及び潰瘍性大腸炎を含むが、これらに限定されない炎症性疾患;
神経障害痛を含むが、これに限定されない神経障害。本化合物はしたがって、様々な神経障害における神経変性の予防及び神経発生の刺激に好適である;
乳房、結腸、腸、皮膚、頭頸部、神経、子宮、腎臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、又は甲状腺のがん、キャッスルマン病、肉腫、悪性腫瘍、及び黒色腫等(これらに限定されない)の増殖性疾患;
腎線維症又は腎機能障害を含むが、これらに限定されない腎疾患;
性機能障害(これは、血管作動性の応答の欠陥によって引き起こされる男性及び女性の両方の性機能障害を含むことが意図される)。本発明のソフトROCK阻害剤は、様々な原因から生じる性機能障害を治療するためにも使用することができる。例えば、1つの実施の形態では、ソフトROCK阻害剤は、性腺機能低下症(より具体的には、性腺機能低下症はアンドロゲンホルモンレベルの低下に関連する)に関連する性機能障害を治療するために使用することができる。別の実施の形態では、ソフトROCK阻害剤は、膀胱疾患、高血圧、糖尿病、又は骨盤手術を含むが、これらに限定されない様々な原因に関連する性機能障害を治療するために使用することができる。加えて、ソフトROCK阻害剤は、高血圧、鬱病、又は不安神経症の治療に使用される薬物等の或る特定の薬物を用いた治療に関連する性機能障害を治療するために使用することができる;
骨粗鬆症及び変形性関節炎を含むが、これらに限定されない骨疾患。
加えて、本発明の化合物は、良性前立腺過形成、移植片拒絶反応、痙攣、慢性閉塞性膀胱疾患、及びアレルギー等の疾患及び障害の予防及び/又は治療において使用することができる。
【発明の概要】
【0021】
本発明者らは驚くべきことに、本明細書中に記載される化合物がROCKの阻害剤、特にソフトROCK阻害剤として作用することを見出した。従来技術の既知のROCK阻害剤、例えば国際公開第2012/015760号、国際公開第2008/077057号、国際公開第2010/065782号、国際公開第2009/158587号、米国特許出願公開第2009/0325959号、米国特許出願公開第2009/325960号、Iwakubo et al. (Bioorg. Med.Chem., 2007, 15, 350-364 & Bioorg. Med. Chem., 2007, 15, 1022-1033)、及び国際公開第2001/56988号に記載のもの等と比較すると、本発明の化合物は、体循環に入った時点で予測可能な機能的に不活性な化合物へと非常に急速に変換されるが、標的器官において良好な安定性を保持するという点で異なる。化合物の不活性化は肝臓で起こる場合もあるが、血中酵素、例えばコリンエステラーゼ、パラオキソナーゼ1(PON1)等のカルボン酸エステルヒドロラーゼ(EC 3.1.1)、又はヒト血清アルブミン等の偽エステラーゼ活性を示す血漿タンパク質によって直接血流中で優先的に達成される。したがって、本発明の化合物は、オンターゲット効果(ROCKに対する阻害活性)及び機能的有効性と、標的器官における良好な安定性と、血中での予測可能な機能的に不活性な種への急速な変換とを首尾よく組み合わせるという技術的課題を解決する。本発明の化合物は結果として、目標とする作用部位(例えば眼又は肺)でのROCKの阻害によって所望の薬理学的効果を達成する一方で、副作用の可能性をもたらすROCKの全身性阻害を回避することができる。
【0022】
カルボン酸エステルヒドロラーゼ(EC 3.1.1)は、アルコール及びカルボン酸へのカルボン酸エステルの分解に関与する大きな酵素群である。そのため、この触媒活性を示す酵素は、ソフトキナーゼ阻害剤の設計にとって潜在的に興味深いものである。EC 3.1.1には、以下のサブクラスが含まれる:EC 3.1.1.1 カルボキシルエステラーゼ、EC 3.1.1.2 アリールエステラーゼ、EC 3.1.1.3 トリアシルグリセロールリパーゼ、EC 3.1.1.4 ホスホリパーゼA2、EC 3.1.1.5 リゾホスホリパーゼ、EC 3.1.1.6 アセチルエステラーゼ、EC 3.1.1.7 アセチルコリンエステラーゼ、EC 3.1.1.8 コリンエステラーゼ、EC 3.1.1.10 トロピンエステラーゼ、EC 3.1.1.11 ペクチンエステラーゼ、EC 3.1.1.13 ステロールエステラーゼ、EC 3.1.1.14 クロロフィラーゼ、EC 3.1.1.15 L-アラビノノラクトナーゼ、EC 3.1.1.17 グルコノラクトナーゼ、EC 3.1.1.19 ウロノラクトナーゼ、EC 3.1.1.20 タンナーゼ、EC 3.1.1.21 レチニルパルミチン酸エステラーゼ、EC 3.1.1.22 ヒドロキシ酪酸二量体ヒドロラーゼ、EC 3.1.1.23 アシルグリセロールリパーゼ、EC 3.1.1.24 3-オキソアジピン酸エノールラクトナーゼ、EC 3.1.1.25 1,4-ラクトナーゼ、EC 3.1.1.26 ガラクトリパーゼ、EC 3.1.1.27 4-ピリドキソラクトナーゼ、EC 3.1.1.28 アシルカルニチンヒドロラーゼ、EC 3.1.1.29 アミノアシルtRNAヒドロラーゼ、EC 3.1.1.30 D-アラビノノラクトナーゼ、EC 3.1.1.31 6-ホスホグルコノラクトナーゼ、EC 3.1.1.32 ホスホリパーゼA1、EC 3.1.1.33 6-アセチルグルコースデアセチラーゼ、EC 3.1.1.34 リポタンパク質リパーゼ、EC 3.1.1.35 ジヒドロクマリンヒドロラーゼ、EC 3.1.1.36 リモニンD環ラクトナーゼ、EC 3.1.1.37 ステロイドラクトナーゼ、EC 3.1.1.38 トリ酢酸ラクトナーゼ、EC 3.1.1.39 アクチノマイシンラクトナーゼ、EC 3.1.1.40 オルセリン酸デプシドヒドロラーゼ、EC 3.1.1.41 セファロスポリンCデアセチラーゼ、EC 3.1.1.42 クロロゲン酸ヒドロラーゼ、EC 3.1.1.43 α-アミノ酸エステラーゼ、EC 3.1.1.44 4-メチルオキサロ酢酸エステラーゼ、EC 3.1.1.45 カルボキシメチレンブテノリダーゼ、EC 3.1.1.46 デオキシリモン酸A環ラクトナーゼ、EC 3.1.1.47 1-アルキル-2-アセチルグリセロホスホコリンエステラーゼ、EC 3.1.1.48 フサリニンCオルニチンエステラーゼ、EC 3.1.1.49 シナピンエステラーゼ、EC 3.1.1.50 ワックスエステルヒドロラーゼ、EC 3.1.1.51 ボルボールジエステルヒドロラーゼ、EC 3.1.1.52 ホスファチジルイノシトールデアシラーゼ、EC 3.1.1.53 シアル酸O-アセチルエステラーゼ、EC 3.1.1.54 アセトキシブチニルビチオフェンデアセチラーゼ、EC 3.1.1.55アセチルサリチル酸デアセチラーゼ、EC 3.1.1.56 メチルウンベリリフェリル酢酸デアセチラーゼ、EC 3.1.1.57 2-ピロン-4,6-ジカルボン酸ラクトナーゼ、EC 3.1.1.58 N-アセチルガラクトサミノグリカンデアセチラーゼ、EC 3.1.1.59幼若ホルモンエステラーゼ、EC 3.1.1.60 ビス(2-エチルヘキシル)フタル酸エステラーゼ、EC 3.1.1.61 タンパク質-グルタミン酸メチルエステラーゼ、EC 3.1.1.63. 11-シス-レチニルパルミチン酸ヒドロラーゼ、EC 3.1.1.64 オールトランス-レチニルパルミチン酸ヒドロラーゼ、EC 3.1.1.65 L-ラムノノ-1,4-ラクトナーゼ、EC 3.1.1.66 5-(3,4-ジアセトキシブタ-1-イニル)-2,2'-ビチオフェンデアセチラーゼ、EC 3.1.1.67 脂肪アシルエチルエステルシンターゼ、EC 3.1.1.68 キシロノ-1,4-ラクトナーゼ、EC 3.1.1.70 セトラキサートベンジルエステラーゼ、EC 3.1.1.71 アセチルアルキルグリセロールアセチルヒドロラーゼ、EC 3.1.1.72アセチルキシランエステラーゼ、EC 3.1.1.73 フェルロイルエステラーゼ、EC 3.1.1.74 クチナーゼ、EC 3.1.1.75 ポリ(3-ヒドロキシ酪酸)デポリメラーゼ、EC 3.1.1.76 ポリ(3-ヒドロキシオクタン酸)デポリメラーゼ、EC 3.1.1.77 アシルオキシアシルヒドロラーゼ、EC 3.1.1.78 ポリノイリジンアルデヒトエステラーゼ、EC 3.1.1.79 ホルモン感受性リパーゼ、EC 3.1.1.80 アセチルアジュマリンエステラーゼ、EC 3.1.1.81 クオラム-クエンチングN-アシル-ホモセリンラクトナーゼ、EC 3.1.1.82 フェオホルビダーゼ、EC 3.1.1.83 モノテルペンε-ラクトンヒドロラーゼ、EC 3.1.1.84 コカインエステラーゼ、EC 3.1.1.85 マンノシルグリセリン酸ヒドロラーゼ(mannosylglyceratehydrolases)。
【0023】
コリンエステラーゼは、主に、神経伝達物質アセチルコリンの分解における役割で知られる酵素である。また、アセチルコリンエステラーゼ(EC 3.1.1.7)は、コリンエステラーゼI、真性コリンエステラーゼ、RBCコリンエステラーゼ、赤血球コリンエステラーゼ、又はアセチルコリンアセチルヒドロラーゼとしても知られている。そのいくつかの代替名により示唆されるように、アセチルコリンエステラーゼは、脳内において見られるのみならず、血液の赤血球画分中にも見出される。アセチルコリンに対するその作用に加え、アセチルコリンエステラーゼは多様な酢酸エステルを加水分解し、またアセチル基転移を触媒する。アセチルコリンエステラーゼは、通常、アセチルコリンのアセチル基のように短い酸鎖を有する基質に対して優先性を呈する。また、ブチリルコリンエステラーゼ(EC 3.1.1.8)は、ベンゾイルコリンエステラーゼ、コリンエステラーゼII、非特異的コリンエステラーゼ、偽性コリンエステラーゼ、血漿コリンエステラーゼ又はアシルコリンアシルヒドロラーゼとしても知られている。ブチルコリンエステラーゼは主に肝臓で見られるが、血漿にも存在する。そのいくつかの代替名によって示されるように、ブチルコリンエステラーゼはアセチルコリンエステラーゼよりも特異性が低く、典型的には、アセチルコリンエステラーゼよりも早い速度でより大きな酸鎖(ブチリルコリンのブチリル基、又はベンゾイルコリン(benzoylcholine)のベンゾイル基等)を有する基質の加水分解を行う。そのアセチルコリンに対する作用に加え、ブチリルコリンエステラーゼは、プロカイン等のいくつかのエステル薬の代謝に関与することが知られている。
【0024】
カルボキシルエステラーゼ(CES)は多重遺伝子ファミリーであり、普遍的な発現プロファイルを示し、肝臓、腸及び肺で高レベルである。カルボキシルエステラーゼの大部分がカルボキシルエステラーゼ1(CES1)ファミリー又はカルボキシルエステラーゼ2(CES2)ファミリーのいずれかに分類することができる。興味深いことに、これらの異なるCESファミリーは組織分布及び基質特異性に違いがある。ヒトCES1は多くの組織に広く分布するが、腸では低レベルで見られる。CES1は、比較的小さなアルコール基とより大きな酸基とを有するエステルを優先的に加水分解する。典型例としては、hCES1はコカインのメチルエステルの加水分解を優先的に触媒する。ヒトCES2は主に腸、肝臓及び腎臓に見られる。CES2は、より小さなアルコール基とより大きな酸基とを有するエステルを優先的に加水分解する。典型例としては、ヒトCES2はコカインのベンゾイルエステルの加水分解を触媒する。CES酵素に関する別の興味深い観察結果は、ヒト血漿におけるカルボキシルエステラーゼ活性の欠如である。全体として、カルボキシルエステラーゼはエステルを含有する薬物及び生体異物の生物変換に大きな役割を果たし得る。
【0025】
ヒト血清アルブミン(HSA)は、全血漿タンパク質のおよそ60%を占める血漿(blood plasma)の主成分である。HSAはアスピリン、シンナモイルイミダゾール、p-ニトロフェニル酢酸、有機リン系殺虫剤、脂肪酸エステル又はニコチン酸エステル等の様々な化合物の加水分解を触媒することが見出されている。HSAは、その主要な反応部位に加えて複数の非特異的触媒部位を示す。しかしながら、これらの部位の触媒効率は低く、HSAは真のエステラーゼではなく、偽エステラーゼと称されることが多い。その低い触媒効率にも関わらず、HSAは依然として、血漿中におけるその高い濃度のために薬物様化合物の代謝において重要な役割を果たしている。
【0026】
当業者であれば、ソフトROCK阻害剤を含むソフトドラッグの設計における主な技術的課題が、強いオンターゲット効果及び機能活性と、標的器官における良好な安定性と、体循環における機能的に不活性な種への急速な分解とを首尾よく組み合わせることであると理解するであろう。ソフトROCK阻害剤は、標的器官において所望の効果(複数の場合もあり)をもたらすために、該標的器官において薬理学的に関連する濃度を達成し、長期間(通常は数時間)にわたってこの濃度を維持しなくてはならない。望ましくない影響を及ぼす可能性のあるROCKの全身性阻害を回避するためには、ソフトROCK阻害剤は、体循環に入った時点で、血流又は非標的器官において薬理学的に関連する濃度となる前に急速に分解されなくてはならない。
【0027】
また、当業者であれば、ROCKの阻害がROCKとソフトROCK阻害剤との間の認識(互助作用)によって起こり、肝臓又は血流におけるソフトROCK阻害剤の不活性化が、該ソフトROCK阻害剤が1つ又は複数の肝臓酵素又は血中酵素、例えばカルボン酸エステルヒドロラーゼ(EC 3.1.1)に基質として認識されることによって起こると理解するであろう。これら2つの認識プロセスには独立した高分子(ROCK及びヒドロラーゼ(複数の場合もあり))、したがって独立したリガンド結合部位が関与するため、かかる認識プロセスを支配する構造的特徴も相互に独立し、必ずしも互換性があるわけではない。したがって、ROCKに対する化学化合物の阻害活性が、体循環におけるその(不)安定性の予測因子とはならないことが理解される。
【0028】
以上で論考したように、奏功するソフトROCK阻害剤は体循環における低い安定性に加えて、標的器官における良好な安定性を同時に示す必要がある。当業者であれば、異なる器官と流体との間のこのような安定性の違いが、これらの組織又は流体における異なる酵素(特にエステラーゼ)の存在、その酵素の異なる発現レベル(「濃度」)、又はそれら両方に起因すると理解するであろう。器官又は流体に存在するエステラーゼを含む付加的な酵素の各々が、基質としての認識を支配する一連の独自の規則を有する新たなリガンド結合部位を示すことも理解される。かかる規則は必ずしも相互に互換性があるわけではなく、通常は大半の酵素が或る程度の基質特異性を示すこととなる。したがって、標的器官における許容可能な安定性を達成するためには、奏功するソフトROCK阻害剤は、標的器官に大量に存在するカルボン酸エステルヒドロラーゼを含む分解酵素によって基質として認識されることを、少なくとも或る特定の程度まで回避しなくてはならない。この場合も、ROCKに対する化学化合物の阻害活性が、標的器官におけるその(不)安定性の予測因子とはならないことが理解される。さらに、肝臓、血流及び標的器官における潜在的な分解機構には異なる酵素が関与し得るため、肝臓又は血流における(不)安定性が標的器官における(不)安定性の予測因子とはならないことが理解される。
【0029】
上記に鑑みると、適切な活性及び安定性プロファイルを示すソフトROCK阻害剤の設計が、解決すべき重大な技術的課題となることが理解される。特に、ROCKに対する阻害活性及び肝臓、血流又は標的器官における安定性が、独立した一連の構造的規則によって支配され、奏功するソフトROCK阻害剤の設計を不明瞭なものとしていることが理解される。
【0030】
また、当業者であれば、ソフトドラッグ及びプロドラッグが、どちらも投与化合物の制御された予測可能な代謝を伴うにも関わらず、その概念及び目的において正反対のアプローチであることを理解するであろう。実際に、ソフトドラッグは強い機能活性を有する化学化合物であり、機能的に不活性な、したがって非毒性の種への制御された代謝を受ける。ソフトドラッグの目的は、機能的に活性な化合物への全身曝露を減少させ、機能的に不活性な非毒性の代謝産物をもたらす予測可能な経路へのこの薬物化合物の代謝及び排出を誘導することである。逆に、プロドラッグは、必ずしも機能活性を有するわけではないが、機能的に活性な化合物への制御された代謝を受ける化学化合物である。プロドラッグの目的は、例えばプロドラッグがより高い細胞透過性、より高いバイオアベイラビリティを示すか、又はそうでなければ急速に血流から除去される機能的に活性な化合物の持続放出を可能とすることから、機能的に活性な化合物への曝露を増大させることである。
【0031】
文脈上他に指示がない限り、アスタリスクは、示した一価又は二価のラジカルが、それが関係し、ラジカルが一部を形成する構造に連結する点を示すために本明細書中で使用される。
【0032】
第1の態様から見ると、本発明は、式Iの化合物又はその立体異性体、互変異性体、ラセミ体(racemic)、塩、水和物、若しくは溶媒和物を提供する:
【化1】
(式中、Ar1は、
【化2】
を含む群から選択され、
Ar2はアリール又はヘテロアリールを表し、
Cyは、
1つの炭素原子が窒素原子により任意に置き換えられているC3〜15シクロアルキルであり、
Xは、直接結合、-NH-又は-N(C1〜6アルキル)-であり、
R1は、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、及びC1〜6アルコキシルを含む群から選択され、
R2は、水素及びC1〜3アルキルを含む群から選択され、
R3は、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、及びC1〜6アルコキシルを含む群から選択され、
R4は、C1〜20アルキル、C1〜20アルケニル、C1〜20アルキニル、C3〜15シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、及びヘテロアリールを含む群から選択される任意に置換された基であり、
R5は、水素、C1〜6アルキル及びNH2から選択され、
R6は、水素、ハロ及びC1〜6アルキルから選択され、
kは、0〜3の整数であり、
lは、0〜3の整数であり、
mは0〜3の整数である)。
【0033】
上記から分かるように、式Iの化合物は全て、少なくとも1つのエステルを含有する。このエステルのカルボン酸エステルヒドロラーゼによる加水分解により、オンターゲット効果及び/又は機能活性が低減した化合物が生じる。そのため、式Iの化合物はソフトROCK阻害剤として有効である。
【0034】
更なる態様から見ると、本発明は、in vitro又はin vivoでの少なくとも1つのキナーゼの活性の阻害への本発明の化合物又はかかる化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0035】
更なる態様から見ると、本発明は、in vitro又はin vivoでの少なくとも1つのROCKキナーゼ、例えばROCK IIアイソフォーム及び/又はROCK Iアイソフォームの活性の阻害への本発明の化合物又はかかる化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0036】
更なる態様から見ると、本発明は、本発明の化合物を含む医薬用及び/又は動物用の組成物を提供する。
【0037】
また更なる態様から見ると、本発明は、ヒト又は動物用の医薬において使用される本発明の化合物を提供する。
【0038】
また更なる態様から見ると、本発明は、眼疾患、気道疾患、耳鼻咽喉疾患、腸疾患、心血管及び他の血管の疾患、炎症性疾患、神経障害及びCNS障害、増殖性疾患、腎疾患、性機能障害、血液疾患、骨疾患、良性前立腺過形成、移植片拒絶反応、痙攣、慢性閉塞性膀胱疾患、並びにアレルギーを含む群から選択される少なくとも1つの疾患及び/又は障害の予防及び/又は治療用の薬剤の調製への本発明の化合物の使用を提供する。
【0039】
ここで図面を具体的に参照すると、示される詳細が一例であり、本発明の種々の実施形態の例示的な論考を目的とするものにすぎないことが強調される。図面は、本発明の原理及び概念的態様の最も有用かつ簡単であると考えられる説明を与えるために提示される。この点に関して、本発明の構造的な詳細を、本発明の基本的理解に必要とされるよりも具体的に示すことは意図されない。本明細書を図面と併せて検討することで、本発明の幾つかの形態を実際にどのように具現化することができるのかが当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】親化合物と代謝産物との間の機能活性の差異を示す、MLCリン酸化アッセイにおける化合物32(菱形)及びその代謝産物Met1(中空円)についての濃度応答曲線を示す図である。相対的MLCリン酸化を、非処理細胞(陽性対照、1.0)及び100 μMのY-27632で処理した細胞(陰性対照、0.0)に対して測定している。各データ点は3つの測定結果の平均である。両曲線についての95% CIが点線で表されている。
【発明を実施するための形態】
【0041】
これより、本発明を更に説明する。以下の節では、本発明の種々の態様を更に詳細に規定する。そこで規定された各々の態様は、そうではないことが明確に示されていない限り、他の任意の態様(単数又は複数)と組み合わせてもよい。特に、好適又は有利であると示される任意の特徴を、好適又は有利であると示される他の任意の特徴(単数又は複数)と組み合わせてもよい。
【0042】
文脈上他に指示がない限り、アスタリスクは、示した一価又は二価のラジカルが、それが関係し、ラジカルが一部を形成する構造に連結する点を示すために本明細書中で使用される。
【0043】
本発明の化合物中に存在し得る不確定の(ラセミ体の)不斉中心は、結合の不確定の立体特性を視覚化するために、波線の結合又は直線の結合を描くことによって互換的に示される。
【0044】
以上で既に言及したように、第1の態様では、本発明は、その立体異性体形態、溶媒和物、及び薬学的に許容可能な付加塩を含む、式I:
【化3】
(式中、Ar1、Ar2、X、Cy、X、R1、R2、R3、R4、k、l、mは以上で定義されたとおりである)の化合物を提供する。
【0045】
本発明の化合物を説明する場合、使用される用語は、文脈上他に指示がない限り、以下の定義に従って解釈されるものとする:
【0046】
「アルキル」という用語は、それ自体が又は別の置換基の一部として、式CxH2x+1(式中、xは1以上の数である)の完全に飽和した炭化水素を指す。概して、本発明のアルキル基は1個〜20個の炭素原子を含む。アルキル基は線状であっても、又は分岐状であってもよく、本明細書中で示されるように置換されていてもよい。本明細書中で炭素原子の後に下付き文字が使用されている場合、下付き文字は指定の基が含有し得る炭素原子の数を指す。したがって、例えばC1〜4アルキルとは、1個〜4個の炭素原子を有するアルキルを意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、ブチル及びその異性体(例えば、n-ブチル、i-ブチル、及びt-ブチル)、ペンチル及びその異性体、ヘキシル及びその異性体、ヘプチル及びその異性体、オクチル及びその異性体、ノニル及びその異性体、デシル及びその異性体が挙げられる。C1〜6アルキルは、1個〜6個の炭素原子を有する線状、分岐状、又は環状のアルキル基全てを含み、そのためメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、ブチル及びその異性体(例えば、n-ブチル、i-ブチル、及びt-ブチル)、ペンチル及びその異性体、ヘキシル及びその異性体、シクロペンチル、2-メチルシクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、又は4-メチルシクロペンチル、シクロペンチルメチレン、及びシクロヘキシルを含む。
【0047】
「任意に置換されたアルキル」という用語は、利用可能な任意の結合点で、1つ又は複数の置換基(例えば1つ〜4つの置換基、例えば1つ、2つ、3つ、若しくは4つの置換基又は1つ若しくは2つの置換基、特に1つの置換基)で任意に置換されたアルキル基を指す。かかる置換基の非限定的な例としては、ハロ、ヒドロキシル、オキソ、カルボニル、ニトロ、アミノ、アミド、オキシム、イミノ、アジド、ヒドラジノ、シアノ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アシル、アルキルアミノ、アルコキシ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、チオール、アルキルチオ、カルボン酸、アシルアミノ、アルキルエステル、カルバメート、チオアミド、尿素、スルホンアミド等が挙げられる。好ましくは、かかる置換基はハロ、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、シアノ、アリール(特にフェニル)、シクロアルキル、ヘテロシクリル(特にピロリジン、オキソラン、チオラン、又は以下に記載のHet1、より具体的にはピロリジン又はオキソラン)、及びアルコキシから選択される。より好ましくは、置換基はヒドロキシル、アリール(特にフェニル)、シクロアルキル、ヘテロシクリル(特にピロリジン、オキソラン、チオラン、又は以下に記載のHet1、より具体的にはピロリジン又はオキソラン)、及びアルコキシから選択される。
【0048】
「アルケニル」という用語は、本明細書中で使用される場合、他に指定のない限り、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する直鎖状、環状又は分岐鎖状の炭化水素ラジカルを意味する。アルケニルラジカルの例としては、エテニル、E-プロペニル及びZ-プロペニル、イソプロペニル、E-ブテニル及びZ-ブテニル、E-イソブテニル及びZ-イソブテニル、E-ペンテニル及びZ-ペンテニル、E-ヘキセニル及びZ-ヘキセニル、E,E-ヘキサジエニル、E,Z-ヘキサジエニル、Z,E-ヘキサジエニル、Z,Z-ヘキサジエニル等が挙げられる。任意に置換されたアルケニルとは、置換されたアルキルについて上記で定義されるものから選択される、1つ又は複数の(例えば1つ、2つ、3つ、又は4つの)置換基を任意に有するアルケニルを指す。
【0049】
「アルキニル」という用語は、本明細書中で使用される場合、他に指定のない限り、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素ラジカルを意味する。アルキニルラジカルの例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル等が挙げられる。任意に置換されたアルキニルとは、置換されたアルキルについて上記で定義されるものから選択される、1つ又は複数の(例えば1つ、2つ、3つ、又は4つの)置換基を任意に有するアルキニルを指す。
【0050】
「シクロアルキル」という用語は、それ自体が又は別の置換基の一部として、環状アルキル基、すなわち1つ、2つ、又は3つの環状構造を有する一価の飽和又は不飽和ヒドロカルビル基である。シクロアルキルは、単環式、二環式又は多環式のアルキル基を含む、1つ〜3つの環を含有する全ての飽和した又は部分的に飽和した(1つ又は2つの二重結合を含有する)炭化水素基を含む。シクロアルキル基は環中に3個以上の炭素原子を含んでいてもよく、概して、本発明によると、3個〜15個の原子を含む。多重環シクロアルキルの更なる環は、1つ又は複数のスピロ原子を介して縮合、架橋及び/又は結合していてもよい。シクロアルキル基は以下で論考される単素環のサブセットとみなされる場合もある。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、アダマンタニル、ビシクロ(2.2.1)ヘプタニル、及びシクロデシルが挙げられるが、これらに限定されず、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンタニル、及びビシクロ(2.2.1)ヘプタニルが特に好ましい。「任意に置換されたシクロアルキル」とは、置換されたアルキルについて上記で定義されるものから選択される、1つ又は複数の置換基(例えば1つ〜3つの置換基、例えば1つ、2つ、3つ、又は4つの置換基)を任意に有するシクロアルキルを指す。以下で「シクロアルキレン」とも称する環状基と関連して接尾辞「エン」が使用される場合、他の基との結合点として2つの単結合を有する本明細書中に定義される環状基を意味することが意図される。本発明のシクロアルキレン基は、好ましくはそれらのシクロアルキルラジカル対応物と同じ数の炭素原子を含む。
【0051】
定義されるアルキル基が二価である、すなわち、2つの他の基との結合に対して2つの単結合を有する場合、「アルキレン」基と称される。アルキレン基の非限定的な例としては、メチレン、エチレン、メチルメチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、エチルエチレン、1,2-ジメチルエチレン、ペンタメチレン、及びヘキサメチレンが挙げられる。同様に、上記に定義されるアルケニル基及び上記に定義されるアルキニル基がそれぞれ、2つの他の基との結合に対して単結合を有する二価のラジカルである場合、それぞれ「アルケニレン」及び「アルキニレン」と称される。
【0052】
概して、本発明のアルキレン基は、好ましくはそれらのアルキル対応物と同じ数の炭素原子を含む。アルキレン又はシクロアルキレンのビラジカルが存在する場合、それが一部を形成する分子構造への結合(connectivity)は、共通の炭素原子又は異なる炭素原子、好ましくは共通の炭素原子を介したものであり得る。これを説明するのに、本発明のアスタリスクによる命名法(nomenclature)を適用すると、C3アルキレン基は、例えば*-CH2CH2CH2-**-CH(-CH2CH3)-*、又は*-CH2CH(-CH3)-*であり得る。同様に、C3シクロアルキレン基は、
【化4】
であり得る。
【0053】
シクロアルキレン基が存在する場合、好ましくはC3〜C6シクロアルキレン基、より好ましくはC3シクロアルキレン基(すなわちシクロプロピレン基)であり、ここで、それが一部を形成する構造への結合は共通の炭素原子を介したものである。本発明の化合物におけるシクロアルキレン及びアルキレンのビラジカルは置換されてもよいが、置換されていないのが好ましい。
【0054】
「ヘテロシクリル」又は「ヘテロシクロ」という用語は、本明細書中で使用される場合、それ自体が又は別の基の一部として、少なくとも1つの炭素原子含有環中に少なくとも1つのヘテロ原子を有する、非芳香族の完全に飽和した又は部分的に不飽和の環状基(例えば3員〜13員の単環式、7員〜17員の二環式、若しくは10員〜20員の三環式の環系、又は合計で3個〜10個の環原子を含有する)を指す。ヘテロ原子を含有する複素環基の各々の環は、窒素原子、酸素原子、及び/又は硫黄原子から選択される1個、2個、3個、又は4個のヘテロ原子を有していてもよく、ここで、窒素ヘテロ原子及び硫黄ヘテロ原子が任意に酸化されていても、窒素ヘテロ原子が任意に四級化されていてもよい。複素環基は、原子価が許容する限り、環又は環系の任意のヘテロ原子又は炭素原子で結合することができる。多重環複素環の環は、1つ又は複数のスピロ原子を介して縮合、架橋及び/又は結合していてもよい。任意に置換されたヘテロシクリルとは、置換されたアリールについて定義されたものから選択される、1つ又は複数の置換基(例えば1つ〜4つの置換基、又は例えば1つ、2つ、3つ、若しくは4つの置換基)を任意に有するヘテロシクリルを指す。
【0055】
例示的な複素環基としては、ピペリジニル、アゼチジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソオキサゾリニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、ピペリジル、スクシンイミジル、3H-インドリル、イソインドリニル、クロメニル、イソクロマニル、キサンテニル、2H-ピロリル、1-ピロリニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、ピロリジニル、4H-キノリジニル、4aH-カルバゾリル、2-オキソピペラジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、2-ピラゾリニル、3-ピラゾリニル、ピラニル、ジヒドロ-2H-ピラニル、4H-ピラニル、3,4-ジヒドロ-2H-ピラニル、フタラジニル、オキセタニル、チエタニル、3-ジオキソラニル、1,3-ジオキサニル、2,5-ジオキソイミダゾリジニル(2,5-dioxoimidazolidinyl)、2,2,4-ピペリドニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル(2-oxopyrrolidinyl)、2-オキソアゼピニル、インドリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル(:tetrahydrothienyl)、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニルスルホキシド、チオモルホリニルスルホン、1,3-ジオキソラニル、1,4-オキサチアニル、1,4-ジチアニル、1,3,5-トリオキサニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、2H-1,5,2-ジチアジニル、2H-オキソシニル、1H-ピロリジニル、テトラヒドロ-1,1-ジオキソチエニル、N-ホルミルピペラジニル及びモルホリニルが挙げられる。
【0056】
「アリール」という用語は、本明細書中で使用される場合、単環(すなわちフェニル、又は融合した(例えばナフタレン若しくはアントラセン)若しくは共有結合した、通常は6個〜10個の原子を含有する多芳香環(少なくとも1つの環が芳香族である)を有する、多価不飽和の芳香族ヒドロカルビル基を指す。芳香環は、任意にそれに融合した1つ〜3つの更なる環(シクロアルキル、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールのいずれか)を含んでもよい。アリールはまた、本明細書に列挙された炭素環系の部分的に水素化された誘導体を含むことが意図される。アリールの非限定的な例には、フェニル、ビフェニルイル、ビフェニルエニル、5-テトラリニル又は6-テトラリニル、1-アズレニル、2-アズレニル、3-アズレニル、4-アズレニル、5-アズレニル、6-アズレニル、7-アズレニル、又は8-アズレニル、1-ナフチル又は2-ナフチル、1-インデニル、2-インデニル、又は3-インデニル、1-アントリル、2-アントリル、又は9-アントリル、1-アセナフチレニル、2-アセナフチレニル、3-アセナフチレニル、4-アセナフチレニル、又は5-アセナフチレニル、3-アセナフテニル、4-アセナフテニル、又は5-アセナフテニル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、又は10-フェナントリル、1-ペンタレニル又は2-ペンタレニル、1-フルオレニル、2-フルオレニル、3-フルオレニル、又は4-フルオレニル、4-インダニル又は5-インダニル、5-テトラヒドロナフチル、6-テトラヒドロナフチル、7-テトラヒドロナフチル、又は8-テトラヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、1,4-ジヒドロナフチル、ジベンゾ[a,d]シクロヘプテニル、及び1-ピレニル、2-ピレニル、3-ピレニル、4-ピレニル、又は5-ピレニルが含まれる。
【0057】
アリール環は、1つ又は複数の置換基によって任意に置換されてもよい。「任意に置換されたアリール」とは、利用可能な任意の結合点に1つ又は複数の置換基(例えば1つ〜5つの置換基、例えば1つ、2つ、3つ、又は4つの置換基)を任意に有するアリールを指す。かかる置換基の非限定的な例は、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、ニトロ、アミノ、ヒドラジン、アミノカルボニル、アジド、シアノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルアルキル、アルキルアミノ、アルコキシ、-SO2-NH2、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ヘテロアリールアルキル、アルキルスルホンアミド、ヘテロシクリル、アルキルカルボニルアミノアルキル、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アシル、アリールカルボニル、アミノカルボニル、アルキルスルホキシド、-SO2Ra、アルキルチオ、カルボキシル等(ここで、Raはアルキル又はシクロアルキルである)から選択される。好ましくは、かかる置換基はハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、シアノ、アルキル(特にC1〜6アルキル、より具体的にはメチル)、アルキルアミノ、アルコキシ、及びハロアルキルから選択される。
【0058】
アリール基の炭素原子がヘテロ原子によって置き換えられた場合、得られる環は、本明細書中ではヘテロアリール環と称される。
【0059】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書中で使用される場合、それ自体が又は別の基の一部として、縮合又は共有結合した1つ〜3つの環を含有し、通常は5個〜8個の原子を含有する炭素原子数5〜12の芳香環又は芳香族環系を指すが、これに限定されず、その少なくとも1つが、これらの環のうち1つ又は複数における1つ又は複数の炭素原子が酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子によって置き換えられていてもよく、窒素ヘテロ原子及び硫黄ヘテロ原子が任意に酸化されていても、窒素ヘテロ原子が任意に四級化されていてもよい芳香環である。かかる環はアリール環、シクロアルキル環、ヘテロアリール環、又はヘテロシクリル環に縮合していてもよい。かかるヘテロアリールの非限定的な例としては、ピロリル、フラニル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、オキサジニル、ジオキシニル、チアジニル、トリアジニル、イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾリル、チエノ[3,2-b]フラニル、チエノ[3,2-b]チオフェニル、チエノ[2,3-d][1,3]チアゾリル、チエノ[2,3-d]イミダゾリル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジニル、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾピラニル、1(4H)-ベンゾピラニル、1(2H)-ベンゾピラニル、3,4-ジヒドロ-1(2H)-ベンゾピラニル、3,4-ジヒドロ-1(2H)-ベンゾピラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、1,3-ベンズオキサゾリル、1,2-ベンズイソオキサゾリル、2,1-ベンズイソオキサゾリル、1,3-ベンゾチアゾリル、1,2-ベンゾイソチアゾリル、2,1-ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3-ベンズオキサジアゾリル、2,1,3-ベンズオキサジアゾリル、1,2,3-ベンゾチアジアゾリル、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル、チエノピリジニル、プリニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、6-オキソ-ピリダジン-1(6H)-イル、2-オキソピリジン-1(2H)-イル、6-オキソ-ピリダジン-1(6H)-イル、2-オキソピリジン-1(2H)-イル、1,3-ベンゾジオキソリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、7-アザインドリル、6-アザインドリル、5-アザインドリル、4-アザインドリルが挙げられる。
【0060】
「ピロリル」(アゾリルとも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル及びピロール-3-イルを含む。「フラニル」(「フリル」とも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、フラン-2-イル及びフラン-3-イル(フラン-2-イル及びフラン-3-イルとも呼ばれる)を含む。「チオフェニル」(「チエニル」とも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、チオフェン-2-イル及びチオフェン-3-イル(チエン-2-イル及びチエン-3-イルとも呼ばれる)を含む。「ピラゾリル」(1H-ピラゾリル及び1,2-ジアゾリルとも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、ピラゾール-1-イル、ピラゾール-3-イル、ピラゾール-4-イル及びピラゾール-5-イルを含む。「イミダゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、イミダゾール-1-イル、イミダゾール-2-イル、イミダゾール-4-イル及びイミダゾール-5-イルを含む。「オキサゾリル」(1,3-オキサゾリルとも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、オキサゾール-2-イル;オキサゾール-4-イル及びオキサゾール-5-イルを含む。「イソオキサゾリル」(1,2-オキサゾリルとも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、イソオキサゾール-3-イル、イソオキサゾール-4-イル及びイソオキサゾール-5-イルを含む。「チアゾリル」(1,3-チアゾリルとも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、チアゾール-2-イル、チアゾール-4-イル及びチアゾール-5-イル(2-チアゾリル、4-チアゾリル及び5-チアゾリルとも呼ばれる)を含む。「イソチアゾリル」(1,2-チアゾリルとも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、イソチアゾール-3-イル、イソチアゾール-4-イル及びイソチアゾール-5-イルを含む。「トリアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1H-トリアゾリル及び4H-1,2,4-トリアゾリルを含み、「1H-トリアゾリル」は、1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル、1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル、1H-1,2,3-トリアゾール-5-イル、1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル、1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル及び1H-1,2,4-トリアゾール-5-イルを含む。「4H-1,2,4-トリアゾリル」は、4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル及び4H-1,2,4-トリアゾール-3-イルを含む。「オキサジアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1,2,3-オキサジアゾール-4-イル、1,2,3-オキサジアゾール-5-イル、1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,2,5-オキサジアゾール-3-イル及び1,3,4-オキサジアゾール-2-イルを含む。「チアジアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1,2,3-チアジアゾール-4-イル、1,2,3-チアジアゾール-5-イル、1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル、1,2,5-チアジアゾール-3-イル(フラザン-3-イルとも呼ばれる)及び1,3,4-チアジアゾール-2-イルを含む。「テトラゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1H-テトラゾール-1-イル、1H-テトラゾール-5-イル、2H-テトラゾール-2-イル及び2H-テトラゾール-5-イルを含む。「オキサトリアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1,2,3,4-オキサトリアゾール-5-イル及び1,2,3,5-オキサトリアゾール-4-イルを含む。「チアトリアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1,2,3,4-チアトリアゾール-5-イル及び1,2,3,5-チアトリアゾール-4-イルを含む。「ピリジニル」(「ピリジル」とも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル及びピリジン-4-イル(2-ピリジル、3-ピリジル及び4-ピリジルとも呼ばれる)を含む。「ピリミジル」という用語は、本明細書で使用される場合、ピリミジ-2-イル(pyrimid-2-yl)、ピリミジ-4-イル、ピリミジ-5-イル及びピリミジ-6-イルを含む。「ピラジニル」という用語は、本明細書で使用される場合、ピラジン-2-イル及びピラジン-3-イルを含む。「ピリダジニル」という用語は、本明細書で使用される場合、ピリダジン-3-イル及びピリダジン-4-イルを含む。「オキサジニル」(「1,4-オキサジニル」とも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、1,4-オキサジン-4-イル及び1,4-オキサジン-5-イルを含む。「ジオキシニル」(「1,4-ジオキシニル」とも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、1,4-ジオキシン-2-イル及び1,4-ジオキシン-3-イルを含む。「チアジニル」(「1,4-チアジニル」とも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、1,4-チアジン-2-イル、1,4-チアジン-3-イル、1,4-チアジン-4-イル、1,4-チアジン-5-イル及び1,4-チアジン-6-イルを含む。「トリアジニル」という用語は、本明細書で使用される場合、1,3,5-トリアジン-2-イル、1,2,4-トリアジン-3-イル、1,2,4-トリアジン-5-イル、1,2,4-トリアジン-6-イル、1,2,3-トリアジン-4-イル及び1,2,3-トリアジン-5-イルを含む。「イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾール(thiazol)-2-イル、イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾール-3-イル、イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾール-5-イル及びイミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾール-6-イルを含む。「チエノ[3,2-b]フラニル」という用語は、本明細書で使用される場合、チエノ[3,2-b]フラン-2-イル、チエノ[3,2-b]フラン-3-イル、チエノ[3,2-b]フラン-4-イル及びチエノ[3,2-b]フラン-5-イルを含む。「チエノ[3,2-b]チオフェニル」という用語は、本明細書で使用される場合、チエノ[3,2-b]チエン-2-イル、チエノ[3,2-b]チエン-3-イル、チエノ[3,2-b]チエン-5-イル及びチエノ[3,2-b]チエン-6-イルを含む。「チエノ[2,3-d][1,3]チアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、チエノ[2,3-d][1,3]チアゾール-2-イル、チエノ[2,3-d][1,3]チアゾール-5-イル及びチエノ[2,3-d][1,3]チアゾール-6-イルを含む。「チエノ[2,3-d]イミダゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、チエノ[2,3-d]イミダゾール-2-イル、チエノ[2,3-d]イミダゾール-4-イル及びチエノ[2,3-d]イミダゾール-5-イルを含む。「テトラゾロ[1,5-a]ピリジニル」という用語は、本明細書で使用される場合、テトラゾロ[1,5-a]ピリジン-5-イル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イル及びテトラゾロ[1,5-a]ピリジン-8-イルを含む。「インドリル」という用語は、本明細書で使用される場合、インドール-1-イル、インドール-2-イル、インドール-3-イル、インドール-4-イル、インドール-5-イル、インドール-6-イル及びインドール-7-イルを含む。「インドリジニル」という用語は、本明細書で使用される場合、インドリジン-1-イル、インドリジン-2-イル、インドリジン-3-イル、インドリジン-5-イル、インドリジン-6-イル、インドリジン-7-イル及びインドリジン-8-イルを含む。「イソインドリル」という用語は、本明細書で使用される場合、イソインドール-1-イル、イソインドール-2-イル、イソインドール-3-イル、イソインドール-4-イル、イソインドール-5-イル、イソインドール-6-イル及びイソインドール-7-イルを含む。「ベンゾフラニル」(ベンゾ[b]フラニルとも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、ベンゾフラン-2-イル、ベンゾフラン-3-イル、ベンゾフラン-4-イル、ベンゾフラン-5-イル、ベンゾフラン-6-イル及びベンゾフラン-7-イルを含む。「イソベンゾフラニル」(ベンゾ[c]フラニルとも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、イソベンゾフラン-1-イル、イソベンゾフラン-3-イル、イソベンゾフラン-4-イル、イソベンゾフラン-5-イル、イソベンゾフラン-6-イル及びイソベンゾフラン-7-イルを含む。「ベンゾチオフェニル」(ベンゾ[b]チエニルとも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、2-ベンゾ[b]チオフェニル、3-ベンゾ[b]チオフェニル、4-ベンゾ[b]チオフェニル、5-ベンゾ[b]チオフェニル、6-ベンゾ[b]チオフェニル及び7-ベンゾ[b]チオフェニル(ベンゾチエン-2-イル、ベンゾチエン-3-イル、ベンゾチエン-4-イル、ベンゾチエン-5-イル、ベンゾチエン-6-イル及びベンゾチエン-7-イルとも呼ばれる)を含む。「イソベンゾチオフェニル」(ベンゾ[c]チエニルとも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、イソベンゾチエン-1-イル、イソベンゾチエン-3-イル、イソベンゾチエン-4-イル、イソベンゾチエン-5-イル、イソベンゾチエン-6-イル及びイソベンゾチエン-7-イルを含む。「インダゾリル」(1H-インダゾリル又は2-アザインドリルとも呼ばれる)という用語は、本明細書で使用される場合、1H-インダゾール-1-イル、1H-インダゾール-3-イル、1H-インダゾール-4-イル、1H-インダゾール-5-イル、1H-インダゾール-6-イル、1H-インダゾール-7-イル、2H-インダゾール-2-イル、2H-インダゾール-3-イル、2H-インダゾール-4-イル、2H-インダゾール-5-イル、2H-インダゾール-6-イル及び2H-インダゾール-7-イルを含む。「ベンズイミダゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、ベンズイミダゾール-1-イル、ベンズイミダゾール-2-イル、ベンズイミダゾール-4-イル、ベンズイミダゾール-5-イル、ベンズイミダゾール-6-イル及びベンズイミダゾール-7-イルを含む。「1,3-ベンズオキサゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1,3-ベンズオキサゾール-2-イル、1,3-ベンズオキサゾール-4-イル、1,3-ベンズオキサゾール-5-イル、1,3-ベンズオキサゾール-6-イル及び1,3-ベンズオキサゾール-7-イルを含む。「1,2-ベンズイソオキサゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1,2-ベンズイソオキサゾール-3-イル、1,2-ベンズイソオキサゾール-4-イル、1,2-ベンズイソオキサゾール-5-イル、1,2-ベンズイソオキサゾール-6-イル及び1,2-ベンズイソオキサゾール-7-イルを含む。「2,1-ベンズイソオキサゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、2,1-ベンズイソオキサゾール-3-イル、2,1-ベンズイソオキサゾール-4-イル、2,1-ベンズイソオキサゾール-5-イル、2,1-ベンズイソオキサゾール-6-イル及び2,1-ベンズイソオキサゾール-7-イルを含む。「1,3-ベンゾチアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1,3-ベンゾチアゾール-2-イル、1,3-ベンゾチアゾール-4-イル、1,3-ベンゾチアゾール-5-イル、1,3-ベンゾチアゾール-6-イル及び1,3-ベンゾチアゾール-7-イルを含む。「1,2-ベンゾイソチアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1,2-ベンズイソチアゾール-3-イル、1,2-ベンズイソチアゾール-4-イル、1,2-ベンズイソチアゾール-5-イル、1,2-ベンズイソチアゾール-6-イル及び1,2-ベンズイソチアゾール-7-イルを含む。「2,1-ベンゾイソチアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、2,1-ベンズイソチアゾール-3-イル、2,1-ベンズイソチアゾール-4-イル、2,1-ベンズイソチアゾール-5-イル、2,1-ベンズイソチアゾール-6-イル及び2,1-ベンズイソチアゾール-7-イルを含む。「ベンゾトリアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、ベンゾトリアゾール-1-イル、ベンゾトリアゾール-4-イル、ベンゾトリアゾール-5-イル、ベンゾトリアゾール-6-イル及びベンゾトリアゾール-7-イルを含む。「1,2,3-ベンズオキサジアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1,2,3-ベンズオキサジアゾール-4-イル、1,2,3-ベンズオキサジアゾール-5-イル、1,2,3-ベンズオキサジアゾール-6-イル及び1,2,3-ベンズオキサジアゾール-7-イルを含む。「2,1,3-ベンズオキサジアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、2,1,3-ベンズオキサジアゾール-4-イル、2,1,3-ベンズオキサジアゾール-5-イル、2,1,3-ベンズオキサジアゾール-6-イル及び2,1,3-ベンズオキサジアゾール-7-イルを含む。「1,2,3-ベンゾチアジアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1,2,3-ベンゾチアジアゾール-4-イル、1,2,3-ベンゾチアジアゾール-5-イル、1,2,3-ベンゾチアジアゾール-6-イル及び1,2,3-ベンゾチアジアゾール-7-イルを含む。「2,1,3-ベンゾチアジアゾリル」という用語は、本明細書で使用される場合、2,1,3-ベンゾチアジアゾール-
4-イル、2,1,3-ベンゾチアジアゾール-5-イル、2,1,3-ベンゾチアジアゾール-6-イル及び2,1,3-ベンゾチアジアゾール-7-イルを含む。「チエノピリジニル」という用語は、本明細書で使用される場合、チエノ[2,3-b]ピリジニル、チエノ[2,3-c]ピリジニル、チエノ[3,2-c]ピリジニル及びチエノ[3,2-b]ピリジニルを含む。「プリニル」という用語は、本明細書で使用される場合、プリン-2-イル、プリン-6-イル、プリン-7-イル及びプリン-8-イルを含む。「イミダゾ[1,2-a]ピリジニル」という用語は、本明細書で使用される場合、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-4-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル及びイミダゾ[1,2-a]ピリジン-7-イルを含む。「1,3-ベンゾジオキソリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1,3-ベンゾジオキソール-4-イル、1,3-ベンゾジオキソール-5-イル、1,3-ベンゾジオキソール-6-イル及び1,3-ベンゾジオキソール-7-イルを含む。「キノリニル」という用語は、本明細書で使用される場合、キノリン-2-イル、キノリン-3-イル、キノリン-4-イル、キノリン-5-イル、キノリン-6-イル、キノリン-7-イル及びキノリン-8-イルを含む。「イソキノリニル」という用語は、本明細書で使用される場合、イソキノリン-1-イル、イソキノリン-3-イル、イソキノリン-4-イル、イソキノリン-5-イル、イソキノリン-6-イル、イソキノリン-7-イル及びイソキノリン-8-イルを含む。「シンノリニル」という用語は、本明細書で使用される場合、シンノリン-3-イル、シンノリン-4-イル、シンノリン-5-イル、シンノリン-6-イル、シンノリン-7-イル及びシンノリン-8-イルを含む。「キナゾリニル」という用語は、本明細書で使用される場合、キナゾリン-2-イル、キナゾリン(quinazolin)-4-イル、キナゾリン-5-イル、キナゾリン-6-イル、キナゾリン-7-イル及びキナゾリン-8-イルを含む。「キノキサリニル」という用語は、本明細書で使用される場合、キノキサリン-2-イル、キノキサリン-5-イル及びキノキサリン-6-イルを含む。「7-アザインドリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジニルを表し、7-アザインドール-1-イル、7-アザインドール-2-イル、7-アザインドール-3-イル、7-アザインドール-4-イル、7-アザインドール-5-イル、7-アザインドール-6-イルを含む。「6-アザインドリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1H-ピロロ[2,3-c]ピリジニルを表し、6-アザインドール-1-イル、6-アザインドール-2-イル、6-アザインドール-3-イル、6-アザインドール-4-イル、6-アザインドール-5-イル、6-アザインドール-7-イルを含む。「5-アザインドリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1H-ピロロ[3,2-c]ピリジニルを表し、5-アザインドール-1-イル、5-アザインドール-2-イル、5-アザインドール-3-イル、5-アザインドール-4-イル、5-アザインドール-6-イル、5-アザインドール-7-イルを含む。「4-アザインドリル」という用語は、本明細書で使用される場合、1H-ピロロ[3,2-b]ピリジニルを表し、4-アザインドール-1-イル、4-アザインドール-2-イル、4-アザインドール-3-イル、4-アザインドール-5-イル、4-アザインドール-6-イル、4-アザインドール-7-イルを含む。
【0061】
例えば、ヘテロアリールの非限定的な例は、2-フリル若しくは3-フリル、2-チエニル若しくは3-チエニル、1-ピロリル、2-ピロリル若しくは3-ピロリル、1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル若しくは5-イミダゾリル、1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル若しくは5-ピラゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル若しくは5-イソオキサゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル若しくは5-オキサゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル若しくは5-イソチアゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル若しくは5-チアゾリル、1,2,3-トリアゾール-1-イル、1,2,3-トリアゾール-4-イル若しくは1,2,3-トリアゾール-5-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル、1,2,4-トリアゾール-4-イル若しくは1,2,4-トリアゾール-5-イル、1H-テトラゾール-1-イル若しくは1H-テトラゾール-5-イル、2H-テトラゾール-2-イル若しくは2H-テトラゾール-5-イル、1,2,3-オキサジアゾール-4-イル若しくは1,2,3-オキサジアゾール-5-イル、1,2,4-オキサジアゾール-3-イル若しくは1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,3-チアジアゾール-4-イル若しくは1,2,3-チアジアゾール-5-イル、1,2,4-チアジアゾール-3-イル若しくは1,2,4-チアジアゾール-5-イル、1,2,5-チアジアゾール-3-イル若しくは1,2,5-チアジアゾール-4-イル、1,3,4-チアジアゾリル、1-テトラゾリル若しくは5-テトラゾリル、2-ピリジル、3-ピリジル若しくは4-ピリジル、3-ピリダジニル若しくは4-ピリダジニル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ピリミジル若しくは6-ピリミジル、2-2H-チオピラニル、3-2H-チオピラニル、4-2H-チオピラニル、5-2H-チオピラニル、6-2H-チオピラニル、2-4H-チオピラニル、3-4H-チオピラニル若しくは4-4H-チオピラニル、4-アザインドール-1-イル、4-アザインドール-2-イル、4-アザインドール-3-イル、4-アザインドール-5-イル若しくは4-アザインドール-7-イル、5-アザインドール-1-イル若しくは5-アザインドール-2-イル、5-アザインドール-3-イル、5-アザインドール-4-イル、5-アザインドール-6-イル若しくは5-アザインドール-7-イル、6-アザインドール-1-イル、6-アザインドール-2-イル、6-アザインドール-3-イル、6-アザインドール-4-イル、6-アザインドール-5-イル若しくは6-アザインドール-7-イル、7-アザインドール-1-イル、7-アザインドール-2-イル、7-アザインドール-3-イル、7-アザインドール-4-イル、7-アザインドール-5-イル若しくは7-アザインドール-6-イル、2-ベンゾフリル、3-ベンゾフリル、4-ベンゾフリル、5-ベンゾフリル、6-ベンゾフリル若しくは7-ベンゾフリル、1-イソベンゾフリル、3-イソベンゾフリル、4-イソベンゾフリル若しくは5-イソベンゾフリル、2-ベンゾチエニル、3-ベンゾチエニル、4-ベンゾチエニル、5-ベンゾチエニル、6-ベンゾチエニル若しくは7-ベンゾチエニル、1-イソベンゾチエニル、3-イソベンゾチエニル、4-イソベンゾチエニル若しくは5-イソベンゾチエニル、1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル若しくは7-インドリル、2-ピラジニル若しくは3-ピラジニル、1,4-オキサジン-2-イル若しくは1,4-オキサジン-3-イル、1,4-ジオキシン-2-イル若しくは1,4-ジオキシン-3-イル、1,4-チアジン-2-イル若しくは1,4-チアジン-3-イル、1,2,3-トリアジニル、1,2,4-トリアジニル、1,3,5-トリアジン-2-イル、1,3,5-トリアジン-4-イル若しくは1,3,5-トリアジン-6-イル、チエノ[2,3-b]フラン-2-イル、チエノ[2,3-b]フラン-3-イル、チエノ[2,3-b]フラン-4-イル若しくはチエノ[2,3-b]フラン-5-イル、ベンズイミダゾール-1-イル、ベンズイミダゾール-2-イル、ベンズイミダゾール-4-イル、ベンズイミダゾール-5-イル、ベンズイミダゾール-6-イル若しくはベンズイミダゾール-7-イル、1-ベンゾピラゾリル、3-ベンゾピラゾリル、4-ベンゾピラゾリル、5-ベンゾピラゾリル、6-ベンゾピラゾリル若しくは7-ベンゾピラゾリル、3-ベンズイソオキサゾリル、4-ベンズイソオキサゾリル、5-ベンズイソオキサゾリル、6-ベンズイソオキサゾリル若しくは7-ベンズイソオキサゾリル、2-ベンズオキサゾリル、4-ベンズオキサゾリル、5-ベンズオキサゾリル、6-ベンズオキサゾリル若しくは7-ベンズオキサゾリル、3-ベンズイソチアゾリル、4-ベンズイソチアゾリル、5-ベンズイソチアゾリル、6-ベンズイソチアゾリル若しくは7-ベンズイソチアゾリル、1,3-ベンゾチアゾール-2-イル、1,3-ベンゾチアゾール-4-イル、1,3-ベンゾチアゾール-5-イル、1,3-ベンゾチアゾール-6-イル若しくは1,3-ベンゾチアゾール-7-イル、1,3-ベンゾジオキソール-4-イル、1,3-ベンゾジオキソール-5-イル、1,3-ベンゾジオキソール-6-イル若しくは1,3-ベンゾジオキソール-7-イル、ベンゾトリアゾール-1-イル、ベンゾトリアゾール-4-イル、ベンゾトリアゾール-5-イル、ベンゾトリアゾール-6-イル若しくはベンゾトリアゾール-7-イル、1-チアントレニル、2-チアントレニル、3-イソベンゾフラニル、4-イソベンゾフラニル若しくは5-イソベンゾフラニル、1-キサンテニル、2-キサンテニル、3-キサンテニル、4-キサンテニル若しくは9-キサンテニル、1-フェノキサチイニル、2-フェノキサチイニル、3-フェノキサチイニル若しくは4-フェノキサチイニル、2-ピラジニル、3-ピラジニル、1-インドリジニル、2-インドリジニル、3-インドリジニル、4-インドリジニル、5-インドリジニル、6-インドリジニル、7-インドリジニル若しくは8-インドリジニル、2-イソインドリル、3-イソインドリル、4-イソインドリル若しくは5-イソインドリル、1H-インダゾール-1-イル、1H-インダゾール-3-イル、1H-インダゾール-4-イル、1H-インダゾール-5-イル、1H-インダゾール-6-イル若しくは1H-インダゾール-7-イル、2H-インダゾール-2-イル、2H-インダゾール-3-イル、2H-インダゾール-4-イル、2H-インダゾール-5-イル、2H-インダゾール-6-イル若しくは2H-インダゾール-7-イル、イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾール(thiazol)-2-イル、イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾール-3-イル、イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾール-5-イル若しくはイミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾール-6-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-4-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル若しくはイミダゾ[1,2-a]ピリジン-7-イル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジン-5-イル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イル若しくはテトラゾロ[1,5-a]ピリジン-8-イル、2-プリニル、6-プリニル、7-プリニル若しくは8-プリニル、4-フタラジニル、5-フタラジニル若しくは6-フタラジニル、2-ナフチリジニル、3-ナフチリジニル若しくは4-ナフチリジニル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル若しくは6-キノキサリニル、2-キナゾリニル、4-キナゾリニル、5-キナゾリニル、6-キナゾリニル、7-キナゾリニル若しくは8-キナゾリニル、1-キノリジニル、2-キノリジニル、3-キノリジニル若しくは4-キノリジニル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル若しくは8-キノリニル(キノリル)、2-キナゾリル、4-キナゾリル、5-キナゾリル、6-キナゾリル、7-キナゾリル若しくは8-キナゾリル、1-イソキノリニル、3-イソキノリニル、4-イソキノリニル、5-イソキノリニル、6-イソキノリニル、7-イソキノリニル若しくは8-イソキノリニル(イソキノリル)、3-シンノリニル、4-シンノリニル、5-シンノリニル、6-シンノリニル、7-シンノリニル若しくは8-シンノリニル、2-プテリジニル、4-プテリジニル、6-プテリジニル若しくは7-プテリジニル、1-カルバゾリル、2-カルバゾリル、3-カルバゾリル、4-カルバゾリル若しくは9-カルバゾリル、1-カルボリニル、2-カルボリニル、3-カルボリニル、4-カルボリニル、5-カルボリニル、6-カルボリニル、7-カルボリニル、8-カルボリニル若しくは9-カルボリニル、1-フェナントリジニル、2-フェナントリジニル、3-フェナントリジニル、4-フェナントリジニル、5-フェナントリジニル、6-フェナントリジニル、7-フェナントリジニル、8-フェナントリジニル、9-フェナントリジニル若しくは10-フェナントリジニル、1-アクリジニル、2-アクリジニル、3-アクリジニル若しくは4-アクリジニル、1-ペリミジニル、2-ペリミジニル、3-ペリミジニル、4-ペリミジニル、5-ペリミジニル、6-ペリミジニル、7-ペリミジニル、8-ペリミジニル若しくは9-ペリミジニル、2-(1,7)フェナントロリニル、3-(1,7)フェナントロリニル、4-(1,7)フェナントロリニル、5-(1,7)フェナントロリニル、6-(1,7)フェナントロリニル、7-(1,7)フェナントロリニル、8-(1,7)フェナントロリニル、9-(1,7)フェナントロリニル若しくは10-(1,7)フェナントロリニル、1-フェナジニル若しくは2-フェナジニル、1-フェノチアジニル、2-フェノチアジニル、3-フェノチアジニル、4-フェノチアジニル若しくは10-フェノチアジニル、3-フラザニル若しくは4-フラザニル、1-フェノキサジニル、2-フェノキサジニル、3-フェノキサジニル、4-フェノキサジニル若しくは10-フェノキサジニル、又はそれらの更に置換された誘導体であり得る。
【0062】
「任意に置換されたヘテロアリール」とは、置換されたアリールについて上記で定義されるものから選択される、1つ又は複数の置換基(例えば1つ〜4つの置換基、例えば1つ、2つ、3つ、又は4つの置換基)を任意に有するヘテロアリールを指す。
【0063】
「オキソ」という用語は、本明細書中で使用される場合、=O基を指す。
【0064】
「アルコキシ」又は「アルキルオキシ」という用語は、本明細書中で使用される場合、式-ORb(式中、Rbはアルキルである)を有するラジカルを指す。好ましくは、アルコキシはC1〜C10アルコキシ、C1〜C6アルコキシ、又はC1〜C4アルコキシである。好適なアルコキシの非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、及びヘキシルオキシが挙げられる。アルコキシ基中の酸素原子が硫黄で置換される場合、得られるラジカルはチオアルコキシと称される。「ハロアルコキシ」は、アルキル基中の1つ又は複数の水素原子がハロゲンで置換されたアルコキシ基である。好適なハロアルコキシの非限定的な例としては、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ、2-フルオロエトキシ、2-クロロエトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリクロロエトキシ、トリクロロメトキシ、2-ブロモエトキシ、ペンタフルオロエチル、3,3,3-トリクロロプロポキシ、4,4,4-トリクロロブトキシが挙げられる。
【0065】
「アリールオキシ」という用語は、本明細書中で使用される場合、-O-アリール基を表し、ここでアリールは上記に定義されるとおりである。
【0066】
「アリールカルボニル」又は「アロイル」という用語は、本明細書中で使用される場合、-C(O)-アリール基を表し、ここでアリールは上記に定義されるとおりである。
【0067】
「シクロアルキルアルキル」という用語は、それ自体が又は別の置換基の一部として、上述のアルキル鎖の1つと結合した上述のシクロアルキル基の1つを有する基を指す。かかるシクロアルキルアルキルラジカルの例としては、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、1-シクロペンチルエチル、1-シクロヘキシルエチル、2-シクロペンチルエチル、2-シクロヘキシルエチル、シクロブチルプロピル、シクロペンチルプロピル、3-シクロペンチルブチル、シクロヘキシルブチル等が挙げられる。
【0068】
「ヘテロシクリル-アルキル」という用語は、それ自体が又は別の置換基の一部として、上述のアルキル鎖の1つと結合した上述のヘテロシクリル基の1つを有する基、すなわち-Rd-Rc基(式中、Rdはアルキレン、又はアルキル基によって置換されたアルキレンであり、Rcはヘテロシクリル基である)を指す。
【0069】
「カルボキシ」又は「カルボキシル」又は「ヒドロキシカルボニル」という用語は、それ自体が又は別の置換基の一部として、-CO2H基を指す。このため、カルボキシアルキルは、-CO2Hである少なくとも1つの置換基を有する上記に定義されるアルキル基である。
【0070】
「アルコキシカルボニル」という用語は、それ自体が又は別の置換基の一部として、アルキルラジカルに結合した、すなわち-C(=O)ORe(式中、Reはアルキルについて上記に定義されるとおりである)を形成するカルボキシ基を指す。
【0071】
「アルキルカルボニルオキシ」という用語は、それ自体が又は別の置換基の一部として、-O-C(=O)Re(式中、Reはアルキルについて上記に定義されるとおりである)を指す。
【0072】
「アルキルカルボニルアミノ」という用語は、それ自体が又は別の置換基の一部として、式-NH(C=O)R又は-NR'(C=O)R(式中、R及びR'は各々独立して、アルキル又は置換されたアルキルである)の基を指す。
【0073】
「チオカルボニル」という用語は、それ自体が又は別の置換基の一部として、-C(=S)-基を指す。
【0074】
「アルコキシ」という用語は、それ自体が又は別の置換基の一部として、1つの任意に置換された直鎖又は分岐アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基又はシクロアルキルアルキル基に結合した酸素原子からなる基を指す。好適なアルコキシ基の非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ヘキサノキシ等が挙げられる。
【0075】
「ハロ」又は「ハロゲン」という用語は、基又は基の一部として、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードの総称である。
【0076】
「ハロアルキル」という用語は、単独で又は組合せで、1つ又は複数の水素が上記に定義されるハロゲンで置き換えられた、上記に定義される意味を有するアルキルラジカルを指す。かかるハロアルキルラジカルの非限定的な例としては、クロロメチル、1-ブロモエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1,1,1-トリフルオロエチル等が挙げられる。
【0077】
「ハロアリール」という用語は、単独で又は組合せで、1つ又は複数の水素が上記に定義されるハロゲンで置き換えられた、上記に定義される意味を有するアリールラジカルを指す。
【0078】
「ハロアルコキシ」という用語は、単独で又は組合せで、アルキル基が1つ、2つ、又は3つのハロゲン原子により置換された式-O-アルキルの基を指す。例えば、「ハロアルコキシ」には、-OCF3、-OCHF2、-OCH2F、-O-CF2-CF3、-O-CH2-CF3、-O-CH2-CHF2、及び-O-CH2-CH2Fが含まれる。
【0079】
本発明において使用される場合、「置換される」という用語は常に、この表現で「置換される」を使用して指定される原子上の1つ又は複数の水素が、指定の群から選択される基に置き換えられることを指すと意図されるが、ただし指定の原子の通常の原子価を超過せず、その置換により化学的に安定した化合物、すなわち反応混合物からの有用な純度での単離、及び治療剤への配合に十分に耐えられるほど強固な化合物が生じることを条件とする。
【0080】
本明細書中で使用される場合、「で各々が任意に置換されたアルキル、アリール、又はシクロアルキル」又は「で任意に置換されたアルキル、アリール、又はシクロアルキル」等の用語は、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアリール、及び任意に置換されたシクロアルキルを指す。
【0081】
本明細書中に記載されるように、本発明の化合物の一部は、種々の光学形態(optical forms)(例えば鏡像異性体又はジアステレオ異性体)をもたらし得る、キラル中心となる1つ又は複数の不斉炭素原子を含有していてもよい。本発明は、全ての考え得る立体配置の全てのかかる光学形態及びそれらの混合物を含む。
【0082】
より一般的には、以上のことから、本発明の化合物が、幾何異性体、配座異性体、E/Z異性体、立体化学異性体(すなわち、鏡像異性体及びジアステレオ異性体)、及び本発明の化合物中に存在する環の異なる位置の同じ置換基の存在に対応する異性体を含むが、これらに限定されない種々の異性体及び/又は互変異性体の形態で存在し得ることは当業者には明らかであろう。全てのかかる考え得る異性体、互変異性体、及びそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。
【0083】
本発明において使用される場合、「本発明の化合物」という用語又は同様の用語は常に、一般式Iの化合物及びその任意のサブグループを含むと意図される。この用語はまた、下記表に示される化合物、その誘導体、N-オキシド、塩、溶媒和物、水和物、立体異性体形態、ラセミ混合物、互変異性体形態、光学異性体、類似体及び代謝産物、並びにその四級化窒素類似体を指す。上記化合物のN-オキシド型は、1つ又は幾つかの窒素原子がいわゆるN-オキシドに酸化されている化合物を含むと意図される。
【0084】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、数量を特定していない単数形(singular forms "a","an", and "the")は文脈上他に明白に規定されない限り、複数の指示対象を含む。一例としては、「化合物」とは、1つの化合物又は2つ以上の化合物を意味する。
【0085】
上記の用語及び本明細書中で使用される他の用語は、当業者に十分理解されている。
【0086】
本明細書中で使用される場合、「ROCK」という用語は、ROCK-Iアイソフォーム若しくはROCK-IIアイソフォームのいずれか、又はそれらの両方を指す。「ROCK-I」、「ROCK1」という用語、又は当該技術分野で認められるそれらの同義語のいずれかは、ROCK-Iの既知の天然の又は生物学的に設計された突然変異体及び構築物を包含する。「ROCK-2」、「ROCK2」という用語、又は当該技術分野で認められるそれらの同義語のいずれかは、ROCK-IIの既知の天然の又は生物学的に設計された突然変異体及び構築物を包含する。
【0087】
本明細書中で使用される場合、「ソフト阻害剤(複数の場合もあり)」、「ソフトキナーゼ阻害剤」、「ソフトROCK阻害剤」という用語、又は類似の用語は、標的器官において安定であるが、体循環に入った時点で予測可能な機能的に不活性な種へと急速に変換される、ROCKに対する阻害性を有する化合物を指す。この不活性化プロセスは肝臓で起こる場合もあるが、血中で選択的に達成される。
【0088】
本明細書中で使用される場合、「標的器官」という用語は、ROCKの阻害が有益な効果をもたらすことが期待される器官(例えば眼)、器官の一部(例えば角膜、網膜)、又は細胞組織を指す。
【0089】
本明細書中で使用される場合、「機能的に活性な種」又は(or)「機能的に活性な化合物」という用語は、当該技術分野で細胞ROCK活性の生理学的に関連する読取り(readouts)として認められている顕著なin vivo活性及び/又は細胞アッセイにおける顕著な活性を示す化合物を指す。かかる細胞アッセイの一例は、本発明の化合物の細胞活性の評価に用いた、Schroeteret alによってBiochemical and Biophysical Research Communications374 (2008) 356-360に記載されるミオシン軽鎖リン酸化アッセイである(実施例のC.1.2セクションを参照されたい)。本明細書中で使用される場合、「機能的に不活性な種」又は「機能的に不活性な化合物」という用語は、同じROCK活性のin vivo又は細胞での読取りにおいて著しく低下した、好ましくは無視することのできる活性を示す化合物を指す。
【0090】
本明細書中で使用される場合、「エステラーゼ」(単数又は複数)という用語は、カルボン酸エステルヒドロラーゼ(EC 3.1.1)活性を示す全ての酵素を包含する。この定義には、カルボン酸エステルではない基質に対して付加的な加水分解活性を示す酵素も含まれる。例えば、パラオキソナーゼ1(PON1)は、アリールジアルキルホスファターゼ活性(EC 3.1.8.1、その名前から取ってパラオキソナーゼ活性としても知られる)及びジイソプロピル-フルオロホスファターゼ活性(EC 3.1.8.2)だけでなく、アリールエステラーゼ活性(EC 3.1.1.2)及びラクトナーゼ活性も示す。したがって、PON1はエステラーゼとみなされる。本明細書中で使用される場合、「偽エステラーゼ」という用語は、或る程度のカルボン酸エステルヒドロラーゼ活性を示すが、カルボン酸エステルに対する触媒効率が低いタンパク質を指す。血清アルブミン等の偽エステラーゼとして知られる一部のタンパク質は、実際は真の触媒部位を欠いている。
【0091】
更なる実施形態では、本発明は、式Iの化合物を提供する:
【化5】
(式中、Ar1は、
【化6】
を含む群から選択され、
Ar2はアリール又はヘテロアリールを表し、
Cyは、1つの炭素原子が窒素原子により任意に置き換えられているC3〜15シクロアルキルであり、
Xは、直接結合、-NH-又は-NC1〜6アルキル-であり、
R1は、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、及びC1〜6アルコキシルを含む群から選択され、
R2は、水素及びC1〜3アルキルを含む群から選択され、
R3は、水素、ハロゲン、C1〜6アルキル、及びC1〜6アルコキシルを含む群から選択され、
R4は、C1〜20アルキル、C1〜20アルケニル、C1〜20アルキニル、C3〜15シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、及びヘテロアリールを含む群から選択される任意に置換された基であり、
R5は、水素、C1〜6アルキル及びNH2から選択され、
R6は、水素、ハロ又はC1〜6アルキルから選択され、具体的には水素、ハロ又はメチルから選択され、
kは、0〜3の整数であり、
lは、0〜3の整数であり、
mは0〜3の整数であり、
ただし、Cyが窒素原子を含有する場合、Xが直接結合であり、Cyが窒素原子を含有しない場合、Xが-N(C1〜6アルキル)-又は-NH-である)。
【0092】
更なる具体的な実施形態では、Cyは、1つの炭素原子が窒素原子によって任意に置き換えられているC3〜10シクロアルキルである。別の具体的な実施形態では、Cyは、1つの炭素原子が窒素原子によって置き換えられているC3〜10シクロアルキルである。
【0093】
別の具体的な実施形態では、本発明は、本明細書で記載されているような式Iの化合物を提供する(ただし、Xが直接結合であり、かつCyがN含有複素環基であるならば、Cyはその環(複数の場合もあり)内の窒素原子を介して
【化7】
と連結している)。
【0094】
具体的には、Cyは、その環(複数の場合もあり)内の窒素原子を介して
【化8】
と連結している。
【0095】
更に別の実施形態では、本発明は、-Cy-X-が
【化9】
からなる群、
具体的には
【化10】
からなる群、
より具体的には
【化11】
からなる群から選択される、式Iの化合物を提供する。
【0096】
更なる実施形態では、本発明は、Ar2がアリール、具体的にはフェニルである式Iの化合物を提供する。
【0097】
更に別の実施形態では、本発明は、R1が水素、ハロゲン、メチル及びメトキシル、具体的には水素、フルオロ、クロロ、メチル及びメトキシルからなる群から選択される式Iの化合物を提供する。
【0098】
更なる実施形態では、本発明は、R1が水素、ハロゲン及びC1〜6アルキル、具体的には水素、フルオロ、クロロ及びメチルからなる群から選択される式Iの化合物を提供する。
【0099】
特定の実施形態では、本発明は、R2が水素である式Iの化合物を提供する。
【0100】
別の特定の実施形態では、本発明は、R3が水素又はC1〜6アルコキシル、具体的には水素又はC1〜2アルコキシルである式Iの化合物を提供する。
【0101】
更なる実施形態では、本発明は、R3が水素又はハロゲン、具体的には水素、クロロ又はフルオロ、より具体的には水素である式Iの化合物を提供する。
【0102】
更に別の特定の実施形態では、本発明は、R4がC1〜20アルキル、C3〜15シクロアルキル及びヘテロシクリルからなる群から、具体的にはC1〜20アルキル、C3〜10シクロアルキル及びヘテロシクリルからなる群から選択される任意に置換された基である、より具体的にはR4が任意に置換されたC1〜20アルキルである式Iの化合物を提供する。
【0103】
別の特定の実施形態では、R4はC1〜20アルキル、C3〜15シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクリルからなる群から選択される任意に置換された基である、具体的にはR4はC1〜20アルキル、C3〜15シクロアルキル、アリール及びヘテロシクリルからなる群から選択される任意に置換された基である。
【0104】
更なる実施形態では、R4の定義内の任意の置換基は、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、シアノ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ及びアルコキシ、具体的にはC1〜6アルコキシ、C1〜6アルキル、C1〜6アルケニル、C1〜6アルキニル、ジアルキルアミノ及びヘテロシクリル、より具体的にはメチル、メトキシル、エチニル、ジメチルアミノ及びオキソラニルから選択される。
【0105】
別の更なる実施形態では、R4の定義内の任意の置換基は、C1〜6アルコキシ及びヘテロシクリル、具体的にはメトキシル及びオキソラニルから選択される。
【0106】
別の実施形態では、本発明は、R5が水素、メチル及びNH2からなる群から選択される、具体的にはR5が水素である式Iの化合物を提供する。
【0107】
更に別の実施形態では、本発明は、R6が水素、フルオロ又はメチル、具体的には水素である式Iの化合物を提供する。
【0108】
更なる実施形態では、本発明は、kが0又は1、具体的には0である式Iの化合物を提供する。
【0109】
別の更なる実施形態では、本発明は、lが0又は1、具体的には0である式Iの化合物を提供する。
【0110】
更に別の更なる実施形態では、本発明は、mが0又は1である式Iの化合物を提供する。
【0111】
本発明の目的は、以下の制限の1つ又は複数が適用される、本明細書に記載の式Iの化合物を提供することでもある:
Ar1が、
【化12】
である;
Ar1が、
【化13】
である;
Ar2がアリール、具体的にはフェニルである;
Cyが、任意に1つの炭素原子が窒素原子によって置き換えられているC3〜15シクロアルキルである;
Cyが、1つの炭素原子が窒素原子によって置き換えられているC3〜15シクロアルキルである;
Xが直接結合である場合、Cyがその環(複数の場合もあり)内の窒素原子を介して、
【化14】
と連結する、具体的にはCyがその環(複数の場合もあり)内の窒素原子を介して、
【化15】
と連結する;
Cyが窒素原子を含有する場合、Xは直接結合であり、Cyが窒素原子を含有しない場合、Xは--N(C1〜6アルキル)--又は-NH-である;
-Cy-X-が、
【化16】
からなる群から、具体的には
【化17】
からなる群から、より具体的には
【化18】
からなる群から選択される;
R1が水素、ハロゲン、メチル及びメトキシル、具体的には水素、フルオロ、クロロ、メチル及びメトキシルからなる群から選択される;
R1が水素、ハロゲン及びC1〜6アルキル、具体的には水素、フルオロ、クロロ及びメチルからなる群から選択される;
R2が水素である;
R3が水素又はC1〜6アルコキシル、具体的には水素又はC1〜2アルコキシル、より具体的には水素又はエトキシルである;
R3が水素又はハロゲン、具体的には水素、クロロ又はフルオロ、より具体的には水素である;
R4が、C1〜20アルキル、C3〜15シクロアルキル及びヘテロシクリルからなる群から選択される任意に置換された基である、具体的にはR4が任意に置換されたC1〜20アルキルである;
R4が、C1〜20アルキル、C3〜15シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクリルからなる群から選択される任意に置換された基である、具体的にはR4が、C1〜20アルキル、C3〜15シクロアルキル、アリール及びヘテロシクリルからなる群から選択される任意に置換された基である;
R4の定義内の任意の置換基が、C1〜6アルコキシ及びヘテロシクリル、具体的にはメトキシル及びオキソラニルから選択される;
R4の定義内の任意の置換基が、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、シアノ、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ及びアルコキシ、具体的にはC1〜6アルコキシ、C1〜6アルキル、C1〜6アルケニル、C1〜6アルキニル、ジアルキルアミノ及びヘテロシクリル、より具体的にはメチル、メトキシル、エチニル、ジメチルアミノ及びオキソラニルから選択される;
R5が水素、メチル及びNH2からなる群から選択される、具体的にはR5が水素である;
R6が水素、フルオロ又はメチル、具体的には水素である;
kが0又は1、具体的には0である;
lが0又は1、具体的には0である;
mが0又は1である。
【0112】
本発明の化合物は、以下の実施例で提示される反応スキームに従って調製することができるが、これらが本発明の一例に過ぎず、本発明の化合物を有機化学の当業者によって一般に使用される幾つかの標準合成プロセスのいずれによっても調製することができることを当業者であれば理解するであろう。
【0113】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、キナーゼ阻害剤、より具体的にはROCK I及びROCK IIから選択される少なくとも1つのROCKキナーゼの阻害に関するキナーゼ阻害剤、特にソフトROCK阻害剤として有用である。
【0114】
本発明は、特に平滑筋細胞機能、炎症、線維化、過剰な細胞増殖、過剰な血管形成、過敏性、バリア機能障害、神経変性、及びリモデリングに関わる疾患等のROCKが関与する少なくとも1つの疾患又は障害の予防及び/又は治療のためのヒト又は動物用の医薬としての以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を更に提供する。
【0115】
更なる実施形態では、本発明は、眼疾患、気道疾患、耳鼻咽喉疾患、腸疾患、心血管及び他の血管の疾患、炎症性疾患、神経障害及びCNS障害、増殖性疾患、腎疾患、性機能障害、骨疾患、良性前立腺過形成、移植片拒絶反応、痙攣、高血圧、慢性閉塞性膀胱疾患、並びにアレルギーを含む群から選択される少なくとも1つの疾患又は障害の予防及び/又は治療における以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0116】
好ましい実施形態では、本発明は、網膜症、視神経症、緑内障、及び加齢性黄斑変性症、網膜色素変性症等の網膜変性疾患、及び炎症性眼疾患を含むが、これらに限定されない眼疾患及び障害の予防及び/又は治療における、及び/又はそれに関連する合併症及び/又は症状の予防、治療及び/又は緩和への以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0117】
別の好ましい実施形態では、本発明は、肺線維症、肺気腫、慢性気管支炎、喘息、線維症、肺炎、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、及び鼻炎、及び呼吸窮迫症候群を含むが、これらに限定されない気道疾患の予防及び/又は治療における、及び/又はそれに関連する合併症及び/又は症状の予防、治療及び/又は緩和への以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0118】
更なる実施形態では、本発明は、肺高血圧及び肺血管収縮を含むが、これらに限定されない心血管及び他の血管の疾患の予防及び/又は治療における、及び/又はそれに関連する合併症及び/又は症状の予防、治療及び/又は緩和への以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0119】
更なる実施形態では、本発明は、副鼻腔問題、聴覚問題、歯痛、扁桃炎、潰瘍、及び鼻炎を含むが、これらに限定されない耳鼻咽喉疾患の予防及び/又は治療における以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0120】
更なる実施形態では、本発明は、過角化症、錯角化症、顆粒層肥厚、表皮肥厚症、異常角化症、海綿状態、及び潰瘍形成を含むが、これらに限定されない皮膚疾患の予防及び/又は治療における以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0121】
更なる実施形態では、本発明は、炎症性腸疾患(IBD)、大腸炎、胃腸炎、腸閉塞、回腸炎、虫垂炎、及びクローン病を含むが、これらに限定されない腸疾患の予防及び/又は治療における以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0122】
また別の実施形態では、本発明は、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患、クローン病、及び潰瘍性大腸炎を含むが、これらに限定されない炎症性疾患の予防及び/又は治療における、及び/又はそれに関連する合併症及び/又は症状及び/又は炎症性応答の予防、治療及び/又は緩和への以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0123】
別の実施形態では、本発明は、神経障害痛を含むが、これに限定されない神経障害及びCNS障害の予防、治療及び/又は管理における以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。本化合物はしたがって、様々な神経障害における神経変性の予防及び神経発生の刺激、及び/又はそれに関連する合併症及び/又は症状の予防、治療及び/又は緩和に好適である。
【0124】
別の実施形態では、本発明は、乳房、結腸、腸、皮膚、頭頸部、神経、子宮、腎臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、又は甲状腺のがん、キャッスルマン病、肉腫、悪性腫瘍、及び黒色腫等(これらに限定されない)の増殖性疾患の予防及び/又は治療における、及び/又はそれに関連する合併症及び/又は症状及び/又は炎症性応答の予防、治療及び/又は緩和への以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0125】
別の実施形態では、本発明は、腎線維症若しくは腎機能障害を含むが、これらに限定されない腎疾患の予防及び/又は治療における、及び/又はそれに関連する合併症及び/又は症状及び/又は炎症性応答の予防、治療及び/又は緩和への以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0126】
別の実施形態では、本発明は、性腺機能低下症、膀胱疾患、高血圧、糖尿病、若しくは骨盤手術後の障害を含むが、これらに限定されない性機能障害の予防及び/又は治療における、及び/又は高血圧、鬱病、若しくは不安神経症の治療に使用される薬物等の或る特定の薬物を用いた治療に関連する性機能障害の治療への以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0127】
別の実施形態では、本発明は、骨粗鬆症及び変形性関節炎を含むが、これらに限定されない骨疾患の予防及び/又は治療における、及び/又はそれに関連する合併症及び/又は症状及び/又は炎症性応答の予防、治療及び/又は緩和への以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0128】
別の実施形態では、本発明は、良性前立腺過形成、移植片拒絶反応、痙攣、慢性閉塞性膀胱疾患、及びアレルギー等の疾患及び障害の予防及び/又は治療における、及び/又はそれに関連する合併症及び/又は症状の予防、治療及び/又は緩和への以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0129】
好ましい実施形態では、本発明は、緑内障、黄斑変性症(加齢性黄斑変性症を含む)、喘息、性機能障害、又はCOPDの予防及び/又は治療における以上で定義された化合物の使用又は該化合物を含む組成物の使用を提供する。
【0130】
治療方法
本発明は、ROCKが関与する少なくとも1つの疾患又は障害を予防及び/又は治療する方法であって、それを必要とする対象に治療的有効量の本発明の化合物又は組成物を投与することを含む、方法を更に提供する。
【0131】
更なる実施形態では、本発明は、眼疾患、気道疾患、耳鼻咽喉疾患、腸疾患、心血管及び他の血管の疾患、炎症性疾患、神経障害及びCNS障害、増殖性疾患、腎疾患、性機能障害、骨疾患、良性前立腺過形成、移植片拒絶反応、痙攣、高血圧、慢性閉塞性膀胱疾患、並びにアレルギーを含む群から選択される少なくとも1つの疾患又は障害を予防及び/又は治療する方法であって、それを必要とする対象に治療的有効量の本発明の化合物又は組成物を投与することを含む、方法を更に提供する。
【0132】
本発明では、下記のROCKの阻害アッセイにおいて、ROCKを10 μM未満、好ましくは1 μM未満、より好ましくは0.1 μM未満のIC50値で阻害する式Iの化合物又はその任意のサブグループが特に選好される。
【0133】
上記阻害はin vitro及び/又はin vivoで達成することができ、in vivoで達成される場合に、好ましくは上記に定義されるように選択的に達成される。
【0134】
「ROCK媒介性病態」又は「ROCK媒介性疾患」という用語は、本明細書中で使用される場合、ROCKが関与することが知られる任意の疾患又は他の有害な病態を意味する。「ROCK媒介性病態」又は「ROCK媒介性疾患」という用語は、ROCK阻害剤を用いた治療によって緩和されるこれらの疾患又は病態も意味する。したがって、本発明の別の実施形態は、ROCKが関与することが知られる1つ又は複数の疾患を治療すること、又はその重症度を軽減することに関する。
【0135】
薬学的使用については、本発明の化合物は、遊離酸若しくは遊離塩基として、及び/又は薬学的に許容可能な酸付加塩及び/又は塩基付加塩(例えば無毒の有機又は無機の酸又は塩基を用いて得られる)の形態で、水和物、溶媒和物、及び/又は複合体の形態で、及び/又はエステルのようなプロドラッグ又はプレドラッグの形態で使用してもよい。「溶媒和物」という用語は、本明細書中で使用される場合、特に指定しない限りは、本発明の化合物により形成され得る、適切な無機溶媒(例えば水和物)、又はアルコール、ケトン、エステル等(これらに限定されない)のような有機溶媒との任意の組合せを含む。そのような塩、水和物、溶媒和物等、及びそれらの調製物は当業者には明らかである。
【0136】
本発明による化合物の薬学的に許容可能な塩、すなわち水溶性、脂溶性、又は分散性の産物の形態としては、例えば無機又は有機の酸から形成される、従来の非毒性塩が挙げられる。かかる酸付加塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩(glucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、及びウンデカン酸塩が挙げられる。概して、薬学的使用については、本発明の化合物は、少なくとも1つの本発明の化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤、又は賦形剤、及び/又はアジュバントと、任意に1つ又は複数の更なる薬学的に活性な化合物とを含む医薬調製物又は医薬組成物として配合することができる。
【0137】
非限定的な例によると、そのような配合物は、経口投与、非経口投与(例えば筋肉注射若しくは皮下注射、又は静脈内注入)、局所投与(眼を含む)、吸入、皮膚パッチ、インプラント、坐薬による投与等に適した形態であってもよい。そのような適切な投与形態(投与の様式に応じて固体、半固体、又は液体であってもよい)、並びにその製造に使用される方法、並びに担体、希釈剤、及び賦形剤は、当業者には明らかである。
【0138】
調製物は、それ自体既知の方法で調製してもよく、通常少なくとも1つの本発明による化合物を、1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体、及び必要に応じて他の薬学的に活性な化合物と、必要であれば無菌状態下で混合することを伴う。ここでもRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版のような標準的なハンドブックを参照する。
【0139】
化合物は、主に使用される具体的な調製物、及び治療又は予防対象の病態に応じて、経口経路、経直腸経路、経眼経路、経皮経路、又は鼻腔内経路を含む様々な経路によって投与することができる(例えば眼疾患の治療用の点眼剤又は肺疾患の治療用の乾燥粉末吸入剤)。少なくとも1つの本発明の化合物は、一般的に「有効量」投与されるが、これは、適切な投与を行った場合、投与された個体において所望の治療効果又は予防効果を達成するために十分な式Iの化合物又は任意のそのサブグループの任意の量を意味する。投与量(複数も可)、投与経路及び更なる治療レジメンは、患者の年齢、性別及び全身状態、並びに治療対象の疾患/症状の性質及び重症度等の因子に応じて、治療を行う臨床医によって決定することができる。
【0140】
本発明の方法に従って、上記医薬組成物は治療中の異なる時間に別々に、又は分けて若しくは単一の混合形態で同時に投与することができる。本発明はそれ故、同時又は交互に全てのそのような治療計画を包含すると理解されるべきであり、「投与する」という用語はそれに従って解釈されるべきである。
【0141】
好ましい実施形態では、本発明の化合物及び組成物は、局部的に、例えば局所適用、又は吸収性適用及び非吸収性適用の両方で使用される。
【0142】
組成物は、本明細書での目的上、動物における疾患の予防及び/又は治療だけでなく、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、魚等の経済的に重要な動物に対する、動物の成長及び/又は体重、及び/又は動物から得られる食肉若しくは他の製品の量及び/又は質を高めることも含む獣医学領域で価値がある。このため、更なる態様では、本発明は、少なくとも1つの本発明の化合物と、少なくとも1つの好適な担体(すなわち動物への使用に好適な担体)とを含有する動物用組成物に関する。本発明は、かかる組成物の調製における本発明の化合物の使用にも関する。そのため、本発明はROCKが関与する疾患又は障害を治療する薬剤の調製への本発明の化合物の使用を提供する。
【0143】
本発明をここで、以下の合成実施例及び生物学的実施例を用いて説明するが、これらは本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0144】
A. 化合物の物理化学的性質
A.1. 化合物の純度
他に指定のない限り、化合物の純度は下記のように確認した:
液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS、HPLC/MS又はUPLC/MS)、C18カラム。
1H NMR
【0145】
A.2. 立体化学
特定の鏡像異性体(又はジアステレオ異性体)を、キラル分割(例えば、光学的に活性な酸又は塩基により形成された塩を使用して、式Iの化合物又はその任意のサブグループの光学的に活性な異性体の分離を容易にし得るジアステレオ異性体塩を形成することができる)、不斉(asymmetric)合成、又は分取キラルクロマトグラフィー(Chiral Technologies Europe(Illkirch, France)製のChiralcel OD-H(トリス-3,5-ジメチルフェニルカルバメート、46×250 mm又は100×250 mm、5 μm)、Chiralcel OJ(トリス-メチルベンゾエート、46×250 mm又は100×250 mm、5 μm)、Chiralpak AD(トリス-3,5-ジメチルフェニルカルバメート、46×250 mm、10 μm)、及びChiralpak AS(トリス-(S)-1-フェニルエチルカルバメート、46×250 mm、10 μm)等の種々のカラムを用いる)等(これらに限定されない)の種々の方法によって得ることができることは当業者に既知である。都合のよい場合には、既知の立体配置を有する市販の材料から出発して立体異性体を得ることができる(かかる化合物は例えばアミノ酸を含む)。
【0146】
必要に応じて、不斉炭素上の4つの基を一連の順位規則にランク付けするカーン-インゴルド-プレローグのシステムを使用して、キラル中心の絶対配置を帰属させた。Cahn; Ingold; Prelog Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1966, 5, 385-415を参照する。
【0147】
B. 化合物の合成
B.1. 中間体
本発明の化合物は、当業者に既知の方法によって、下記に示す合成手順及び実験手順に記載されるとおりに調製することができる。
【0148】
中間体1:イソキノリン-5-イル-ピペリジン-3-イル-アミン塩酸塩
【化19】
H2SO4(1 L)中のイソキノリン(120 g、0.929 mol)の溶液に、KNO3(112.6 g、1.115 mol)を-15℃で(液滴で)添加した。混合物を室温で2時間撹拌した。TLC(石油エーテル:酢酸エチル=2:1)によって完全な変換が示された。混合物を水(3 L)に0℃で添加した。混合物をNH4OHの添加によってpH8に調整し、濾過した。濾過ケーキをメチルtertブチルエーテル(1 L×2)で洗浄し、真空で濃縮して、5-ニトロ-イソキノリン(160 g、94 %)を黄色の固体として得た。
【0149】
EtOH/H2O=4:1(5 L)中の5-ニトロ-イソキノリン(150 g、0.861 mol)の溶液に、NH4Cl(92.2 g、1.723 mol)及びFe(193 g、3.445 mol)を室温で添加した。次いで、混合物を80℃に加熱し、10時間撹拌した。TLC(石油エーテル:酢酸エチル=1:1)によって完全な変換が示された。混合物を室温に冷却し、セライトパッドで濾過した。濾過ケーキをEtOH(2 L×2)で洗浄し、濾液を真空で濃縮した。残渣をEtOAc(500 mL×10)で抽出した。合わせた層をNa2SO4で乾燥させ、濾過した後、真空で濃縮して、5-アミノ-イソキノリン(67 g、54 %)を黄色の固体として得た。
【0150】
CH3COOH(1800 mL)中の5-アミノ-イソキノリン(47 g、0.320 mol)の溶液に、3-アミノ-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(69.6 g、0.376 mol)及びNa2SO4(267 g、1.88 mol)を室温で添加した。混合物を室温で0.5時間撹拌した。次いで、混合物にNaBH(OAc)3(84.6g、0.376 mol)を何回かに分けて(by portions)添加した。混合物を室温で18時間撹拌した。混合物をK2CO3の添加によってpH8に調整し、EtOAc(2 L×3)で抽出した。合わせた層をNa2SO4で乾燥させ、濾過した後、真空で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=5:1)によって精製して、3-(イソキノリン-5-イルアミノ)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(55 g、53%)を黄色の油として得た。
【0151】
EtOAc(1000 mL)中の3-(イソキノリン-5-イルアミノ)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(80 g、0.244mol)の溶液に、HCl-EtOAc(1000 mL)を室温で添加した。混合物を室温で2.5時間撹拌した。TLC(DCM:MeOH=10:1)によって完全な変換が示された。固体を濾過によって回収し、真空下で乾燥させて、表題の化合物(66 g、100 %)を黄色の固体として得た。
【0152】
中間体2:N-(ピロリジン-3-イル)イソキノリン-5-アミン
【化20】
0℃のAcOH(300 mL)中のイソキノリン-5-アミン(15 g、104 mmol)及びtert-ブチル3-オキソピロリジン-1-カルボキシレート(23.12 g、125 mmol、1.2当量)の均質溶液に、AcOH(200 mL)中のNaBH(OAc)3(44.1 g、208 mmol、2当量)の溶液を滴加した。混合物を室温で一晩撹拌し、濃縮乾固した。次いで、残渣を飽和Na2CO3水溶液の添加によってpH10に調整し、DCM(×3)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過した後、真空で濃縮し、期待される化合物を得て、これを更に精製せずに直接次の工程に使用した。
【0153】
ジエチルエーテル(1 L)中の先の化合物(104 mmol)の溶液に、HClガスを1時間吹き込んだ。懸濁液を5時間撹拌し、溶媒を蒸発させた。次いで、残渣を水に溶解し、pHを5M NaOHの添加によってpH>12に調整した。水層をDCM(×3)で抽出し、合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、中間体2(20.5 g、92 %)を褐色の粉末として得た。
【0154】
中間体3:5-(ピペリジン-3-イルアミノ)-インダゾール-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
【化21】
THF(2 L)中の5-ニトロ-インダゾール(200 g、1.2 mol、1.0当量)の溶液に、DMAP(22 g、0.18 mol、0.15当量)及びTEA(248 g、2.4 mol、2.0当量)を添加した。反応混合物を30℃で20分間撹拌した後、Boc2O(320 g、1.5 mol、1.2当量)を反応混合物に一度に添加した。反応混合物を30℃で16時間撹拌し、濃縮し、残渣をDCM(2 L)に溶解した。DCM溶液をHCl水溶液(0.5 M)(1 L×3)及びH2O(1 L×3)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濃縮乾固して、Boc保護5-ニトロ-インダゾール(310 g、96 %)を得た。
【0155】
THF(3 L)中の5-ニトロ-インダゾール-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(300 g、1.1 mol、1.0当量)の溶液に、Pd/C(30 g)を添加した。反応混合物を40℃で16時間、H2の圧力下(50 psi)で撹拌した。TLC(PE:EtOAc=4:1)によって完全な変換が示された。H2の取込みの後、触媒を濾別し、濾液を蒸発させ、粗5-アミノ-インダゾール-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(252 g、95 %)を得て、これを精製せずに直接次の工程に使用した。
【0156】
DCE(800 mL)中の1-ベンジル-ピペリジン-3-オンヒドロクロリド(116g、0.52 mol、1.2当量)及びTEA(43.5 g、0.43 mol、1.0当量)の混合物を、30℃で1時間撹拌した。次いで、5-アミノ-インダゾール-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(100 g、0.43mol、1.0当量)及びCH3COOH(25.8 g、0.43 mol、1.0当量)を添加し、反応混合物を30分間撹拌した。NaBH(OAc)3(273 g、1.29 mol、3.0当量)を一度に添加し、混合物を30℃で16時間撹拌した。LC-MSによって完全な変換が示された。反応混合物をDCM(1 L)で希釈し、有機層を飽和NaHCO3(800 mL×3)及びH2O(500 mL×3)で洗浄して、Na2SO4で乾燥させ、真空で濃縮した。粗生成物を、DCM:MeOH=60:1を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、5-(1-ベンジル-ピペリジン-3-イルアミノ)-インダゾール-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(131 g、75 %)を得た。
【0157】
CH3OH(1.5 L)中の先の化合物(120 g、0.3 mol、1.0当量)の溶液にPd/C(12 g)を添加し、反応混合物をH2の圧力下(50 psi)で40℃にて16時間撹拌した。TLC(DCM:MeOH=10:1)によって完全な変換が示された。H2の取込みの後、触媒を濾別し、濾液を蒸発させ、中間体3(90 g、95 %)を得て、これを精製せずに直接次の工程に使用した。
【0158】
中間体4:N-(1-(3-ニトロベンジル)ピロリジン-3-イル)イソキノリン-5-アミン
【化22】
MeOH(100 mL)中の中間体2(8.3 g、39 mmol)及び3-ニトロベンズアルデヒド(5.9 g、39 mmol)の混合物を室温で30分間撹拌した。次いで、NaBH(OAc)3(16.3 g、78 mmol)を何回かに分けて添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。次いで、MeOHを真空下での蒸発により除去し、残渣を水に溶解させ、EtOAc(100 mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaHCO3で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製して、中間体4(7 g、51 %)を得た。
【0159】
中間体5:1-N-(イソキノリン-5-イル)-4-N-(3-ニトロベンジル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン
【化23】
MeOH(500 mL)中のtert-ブチルN-(4-アミノシクロヘキシル)カルバメート(25 g、117 mmol、1.0当量)及び3-ニトロベンズアルデヒド(18 g、117mmol、1.0当量)の溶液に、NaBH(OAc)3(50 g、234 mmol、2.0当量)を何回かに分けて添加した。次いで、得られた混合物を30℃で一晩撹拌した。LC-MSによって完全な変換が示された。溶媒を真空下で除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM:MeOH=15:1)によって精製して、tert-ブチルN-(4-[(3-ニトロベンジル)アミノ]シクロヘキシル)カルバメート(33 g、83 %)を黄色固体として得た。
【0160】
tert-ブチルN-(4-[(3-ニトロベンジル)アミノ]シクロヘキシル)カルバメート(30.0 g、86.1 mmol、1.0当量)を300mLのTFA:DCM(1:10)に溶解し、得られた溶液を30℃で一晩撹拌した。次いで反応混合物を真空で濃縮して、粗1-N-(3-ニトロベンジル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン(32 g、TFA塩)を白色固体として得た。
【0161】
トルエン(500 mL)中の1-N-(3-ニトロベンジル)シクロヘキサン-1,4-ジアミンTFA塩(32 g、69.6 mmol、1.2当量)の溶液に、5-ブロモイソキノリン(12 g、58.0mmol、1.0当量)、BINAP(3.6 g、5.8 mmol、0.1当量)、NaOtBu(33 g、347.8 mmol、6.0当量)及びPd2(dba)3(5.3 g、5.8 mmol、0.1当量)を添加した。反応混合物を3回の真空-N2サイクルに供した後、80℃で一晩撹拌した。LC-MSによって完全な変換が示された。トルエンを減圧下で除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM:MeOH=15:1)によって精製して、中間体5(15 g、71 %)を黄色固体として得た。
【0162】
中間体6:N-{1-(3-ニトロベンジル)ピペリジン-4-イル}イソキノリン-5-アミン
【化24】
MeOH(500 mL)中のtert-ブチルN-(ピペリジン-4-イル)カルバメート(25 g、125 mmol、1.0当量)及び3-ニトロベンズアルデヒド(19 g、125mmol、1.0当量)の混合物に、NaBH(OAc)3(53 g、250 mmol、2.0当量)及び酢酸(1 mL)を添加した。次いで、得られた混合物を30℃で一晩撹拌した。LC-MSによって完全な変換が示された。溶媒を真空下で除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM:MeOH=15:1)によって精製して、tert-ブチルN-{1-(3-ニトロベンジル)ピペリジン-4-イル}カルバメート(32 g、76%)を白色固体として得た。
【0163】
tert-ブチルN-{1-(3-ニトロベンジル)ピペリジン-4-イル}カルバメート(30.0 g、89.5 mmol、1.0当量)を300 mLのTFA:DCM(1:10)に溶解し、得られた溶液を30℃で一晩撹拌した。次いで反応混合物を真空で濃縮して、粗1-(3-ニトロベンジル)ピペリジン-4-アミン(33 g、TFA塩)を白色固体として得た。
【0164】
トルエン(500 mL)中の1-(3-ニトロベンジル)ピペリジン-4-アミン(33 g、69.6 mmol、1.2当量)の溶液に、5-ブロモイソキノリン(12 g、58.0 mmol、1.0当量)、BINAP(3.6 g、5.8 mmol、0.1当量)、NaOtBu(33 g、347.8 mmol、6.0当量)及びPd2(dba)3(5.3 g、5.8 mmol、0.1当量)を添加した。反応混合物を3回の真空-N2サイクルに供した後、80℃で一晩撹拌した。LC-MSによって完全な変換が示された。トルエンを減圧下で除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(DCM:MeOH=15:1)によって精製して、中間体6(15 g、71 %)を黄色固体として得た。
【0165】
中間体7〜13:
中間体4の合成に用いた実験プロトコルを、最低限の変更を伴って中間体7〜13の合成に用いた。中間体7〜13は中間体1〜3を適切な市販の試薬と反応させることにより得ることができる。
【0166】
【表1】
Intermediate:中間体
IUPAC name:名
化合物名:
N-(1-(3-ニトロベンジル)ピペリジン-3-イル)イソキノリン-5-アミン
N-(1-(3-ニトロ-4-メチルベンジル)ピロリジン-3-イル)イソキノリン-5-アミン
N-(1-(3-ニトロ-4-フルオロベンジル)ピロリジン-3-イル)イソキノリン-5-アミン
N-(1-(3-ニトロ-4-クロロベンジル)ピロリジン-3-イル)イソキノリン-5-アミン
N-(1-(3-ニトロ-4-メトキシベンジル)ピロリジン-3-イル)イソキノリン-5-アミン
5-(N-(3-ニトロベンジル)ピペリジン-3-イルアミノ)-インダゾール-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
5-(N-(3-ニトロ-4-メチルベンジル)ピペリジン-3-イルアミノ)-インダゾール-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
【0167】
中間体14:N-(1-(3-アミノベンジル)ピロリジン-3-イル)イソキノリン-5-アミン
【化25】
EtOH(100 mL)中の中間体4(5.2 g、15 mmol)及びFe(4.2 g、75 mmol)の混合物に、飽和NH4Cl(90 mL)を添加した。混合物を80℃で一晩撹拌し、濾過して、真空で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーによって精製して、中間体14(4 g、88 %)を得た。
【0168】
中間体15:5-(N-(3-アミノ-4-メチルベンジル)ピペリジン-3-イルアミノ)-インダゾール-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
【化26】
MeOH(50 mL)中の中間体13(1.68 g、3.61 mmol、1.0当量)の溶液に、Pd/C(0.192 g、0.180 mmol、0.05当量)及びギ酸アンモニウム(3.41 g、54.1 mmol、15.0当量)を少量ずつ添加した。混合物を50℃で30分間撹拌した後、セライトで濾過し、MeOHで洗浄し、濃縮した。得られた緑色残渣をEtOAcに溶解し、得られた溶液を飽和NaHCO3、飽和NH4Cl(5×)及びブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮して、中間体15(1.17 g、69 %)を緑色結晶粉末として得て、これを更に精製せずに直接次の工程に使用した。
【0169】
中間体16:5-(N-(3-アミノベンジル)ピペリジン-3-イルアミノ)-インダゾール-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
【化27】
中間体16を中間体15について記載された手順に従って中間体12から得た。
【0170】
中間体17〜23:
中間体14の合成に用いた実験プロトコルを、中間体5〜13に存在するニトロ基の還元に合わせて最低限の変更を伴って用いた。それにより、中間体17〜23が得られた。
【0171】
【表2】
化合物名:
中間体17:N-(1-(3-アミノベンジル)ピペリジン-3-イル)イソキノリン-5-アミン
中間体18:N-(1-(3-アミノ-4-メチルベンジル)ピロリジン-3-イル)イソキノリン-5-アミン
中間体19:N-(1-(3-アミノ-4-フルオロベンジル)ピロリジン-3-イル)イソキノリン-5-アミン
中間体20:N-(1-(3-アミノ-4-クロロベンジル)ピロリジン-3-イル)イソキノリン-5-アミン
中間体21:N-(1-(3-アミノ-4-メトキシベンジル)ピロリジン-3-イル)イソキノリン-5-アミン
中間体22:1-N-(イソキノリン-5-イル)-4-N-(3-アミノベンジル)シクロヘキサン-1,4-ジアミン
中間体23:N-{1-(3-アミノベンジル)ピペリジン-4-イル}イソキノリン-5-アミン
【0172】
B.2. 本発明の化合物:
B.2.1. メチルエステル:
化合物1:メチル3-((3-((3-(イソキノリン-5-イルアミノ)ピロリジン-1-イル)メチル)フェニル)カルバモイル)ベンゾエート
【化28】
DCM(15 mL)中の中間体14(1 g、3.14 mmol)及び3-(メトキシカルボニル)安息香酸(0.594 g、3.30 mmol、1.05当量)の懸濁液に、0℃にて2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスフィナン2,4,6-トリオキシド(5.61 ml、9.42 mmol、3当量)及びN,N-ジメチルピリジン-4-アミン(1.535 g、12.56mmol、4当量)を添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、EtOAcで希釈して、飽和NaHCO3及びブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空で濃縮した。残渣を水/ACN(100/0→0/100)で溶出する逆相フラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題の化合物(1 g、66 %)を白色粉末として得た。
【0173】
化合物2:メチル4-((3-((3-(イソキノリン-5-イルアミノ)ピロリジン-1-イル)メチル)フェニル)カルバモイル)ベンゾエート
【化29】
DCM(22 mL)中の中間体14(1.5 g、4.71 mmol)及び4-(メトキシカルボニル)安息香酸(0.891 g、4.95 mmol、1.05当量)の懸濁液に、0℃にて2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスフィナン2,4,6-トリオキシド(EtOAc中50%、8.41 ml、14.13 mmol、3当量)及びN,N-ジメチルピリジン-4-アミン(2.302 g、18.84 mmol、4当量)を添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、EtOAcで希釈して、飽和NaHCO3及びブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空で濃縮した。残渣を水/ACN(100/0→0/100)で溶出する逆相フラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題の化合物(1.54 g、68 %)を白色粉末として得た。
【0174】
化合物3:メチル3-((5-((3-((1H-インダゾール-5-イル)アミノ)ピペリジン-1-イル)メチル)-2-メチルフェニル)カルバモイル)ベンゾエートジヒドロクロリド
【化30】
DCM(1.5 mL)中の中間体15(100 mg、0.230 mmol、1.0当量)及び3-(メトキシカルボニル)安息香酸(41 mg、0.230 mmol、1.0当量)の溶液に、0℃にて2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスフィナン2,4,6-トリオキシド(0.410 mL、0.689 mmol、3.0当量)を添加した。0℃で5分間撹拌した後、DMAP(112 mg、0.918 mmol、4.0当量)を添加し、溶液を0℃で1時間撹拌した後、室温へとゆっくりと加温して、一晩撹拌した。溶液をEtOAcで希釈し、飽和NaHCO3、飽和NH4Cl(×2)及びブラインで洗浄した後、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。残渣をDCMに溶解し、DCM:MeOH=98:2で溶出するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、Boc化合物3を得た。
【0175】
DCM(5 mL)中のBoc化合物3の溶液にHClガスを5分間吹き込んだ。得られた混合物を1時間撹拌し、真空で濃縮した。残渣をACN/H2O(0.1 % TFA)(0/100→30/70)で溶出する逆相フラッシュクロマトグラフィーによって精製して、化合物3(76 mg、58 %)をベージュ色の粉末として得た。
【0176】
下記の本発明の化合物を、化合物1〜3を得るのに用いたものと類似の手順に従って適切な中間体を市販の試薬と反応させることにより合成することができる。
【0177】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
Compound:化合物
Structure:構造
【0178】
B.2.2. 付加的なエステル:
B.2.2.1:カルボン酸中間体:
中間体24:3-((3-((3-(イソキノリン-5-イルアミノ)ピロリジン-1-イル)メチル)フェニル)カルバモイル)安息香酸
【化31】
THF(12 mL)中の化合物1(1 g、2.081 mmol)の溶液に、水(6.00 mL)中のLiOH(0.150g、6.24 mmol、3当量)の溶液を添加した。次いで、反応混合物を室温で2時間撹拌し、THFを真空下での蒸留により除去した。得られた水層を飽和NH4Clの添加により酸性化し、沈殿物を濾過によって回収し、水で洗浄して、中間体24(835 mg、86 %)を黄色粉末として得た。
【0179】
中間体25:4-((3-((3-(イソキノリン-5-イルアミノ)ピロリジン-1-イル)メチル)フェニル)カルバモイル)安息香酸
【化32】
THF(18 mL)中の化合物2(1.54 g、3.20 mmol)の溶液に、水(9.00 mL)中のLiOH(0.230g、9.61 mmol、3当量)の溶液を添加した。次いで、反応混合物を室温で2時間撹拌し、THFを真空下での蒸留により除去した。得られた水層を飽和NH4Clの添加により酸性化し、沈殿物を濾過によって回収し、水で洗浄して、中間体25(1.1 g、74 %)を黄色粉末として得た。
【0180】
更なるカルボン酸中間体を、同様の手順に従って化合物1〜20に存在するメチルエステルの鹸化によって合成することができる。インダゾール誘導体については、インダゾールの脱保護の前に鹸化反応を行うことが望ましい。代替的には、化合物3、12、13、14、15又は20等の本発明の化合物に存在するインダゾール構造を鹸化の前に再び保護することができる。対応する手順は当業者には明らかである。
【0181】
B 2.2.2. エステル形成の基本手順:
プロトコルA(イソキノリン誘導体):DCM(1mL)中のカルボン酸中間体(100 mg、1.0当量)及びR-OH(10当量)の懸濁液に、0℃にて、2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスフィナン2,4,6-トリオキシド(EtOAc中50%、3当量)及びN,N-ジメチルピリジン-4-アミン(4当量)を添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、EtOAcで希釈して、飽和NaHCO3及びブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空で濃縮した。残渣を水/ACN(100/0→0/100)で溶出する逆相フラッシュクロマトグラフィーによって精製して、期待される化合物を得た。
【0182】
プロトコルB(インダゾール誘導体):DCM(1mL)中のカルボン酸中間体(100 mg、1.0当量)及びR-OH(10当量)の懸濁液に、0℃にて、2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスフィナン2,4,6-トリオキシド(EtOAc中50%、3当量)及びN,N-ジメチルピリジン-4-アミン(4当量)を添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、EtOAcで希釈して、飽和NaHCO3及びブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空で濃縮した。残渣をDCM中のTFAの溶液(1:4)4 mLに溶解し、反応混合物を30℃で4時間撹拌した。次いで、溶媒を蒸発させ、残渣を水/ACN(100/0→0/100)で溶出する逆相フラッシュクロマトグラフィーによって精製して、期待される化合物を得た。
【0183】
B 2.2.3. 本発明の更なる化合物
下記の本発明の化合物を上記の基本手順(B 2.2.1及びB 2.2.2)に従って合成した。
【0184】
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
Compound:化合物
Structure:構造
【0185】
C. in vitro及びin vivoでのアッセイ
C.1. ROCKの阻害活性のスクリーニング
C.1.1. キナーゼ阻害(ROCK I及びROCK II)
ROCKに対するオンターゲット活性を、以下の試薬を用いた生化学アッセイにおいて測定した:塩基反応バッファー;20 mM Hepes(pH7.5)、10mM MgCl2、1 mM EGTA、0.02% Brij35、0.02 mg/ml BSA、0.1 mM Na3VO4、2 mM DTT、1 % DMSO。必須補因子を各キナーゼ反応に個々に添加した。反応手順は初めに、新たに調製した反応バッファー中でのペプチド基質の調製を含む。次いで、必須補因子を基質溶液に添加した。次いで、ROCK(最終濃度1 nM)を基質溶液に加えた。穏やかに混合した後、試験化合物のDMSO溶液を酵素に添加した。次いで、基質ミックス33P-ATP(最終比活性0.01 μCI/μl)を反応混合物に加えて、反応を開始した。キナーゼ反応混合物を室温で120分間インキュベートした。次いで、反応混合物をP81イオン交換紙(Whatman #3698-915)にスポットした。フィルターを0.1%リン酸で十分に洗浄した。次いで、放射測定(radiometric count)を行い、IC50値を続いて決定した。
【0186】
(上記のプロトコルに従って)得られたIC50値は以下のように表す:「+++」は0.1 μM未満のIC50を意味し、「++」は0.1 μM〜1 μMのIC50を意味し、「+」は1 μM〜10 μMのIC50を意味し、「ND」は「未確定」を意味する。
【0187】
【表5】
Cpds:化合物番号
【0188】
C.1.2. ミオシン軽鎖リン酸化アッセイ
ラット平滑筋細胞株A7r5を使用する。ROCKの内因性発現は、T18/S19での調節ミオシン軽鎖の構成的リン酸化をもたらす。A7r5細胞を、マルチウェル(multiwell)細胞培養プレート中の10 %FCSを添加したDMEMにプレーティングした。一晩の血清飢餓の後、細胞を無血清培地中で化合物とともにインキュベートした。
【0189】
MLC-T18/S19リン酸化の定量化を、96ウェルプレートにおいてホスホ(phospho)-MLC-T18/S19特異抗体及び二次検出抗体を用いたELISAによって評価する(isassessed)。相対的MLCリン酸化を、非処理細胞(陽性対照、1.0)及び100 μMのY-27632で処理した細胞(陰性対照、0.0)に対して測定している。EC50値を、可変ヒルスロープ(variable hillslope)を適合させた非線形回帰曲線を用いるGraphPad Prism 5.01ソフトウェアを用いて決定した。
【0190】
(上記のプロトコルに従って)得られたEC50値は以下のように表す:「+++」は0.3 μM未満のEC50を意味し、「++」は0.3 μM〜1 μMのEC50を意味し、「+」は1 μM〜10 μMのEC50を意味し、「-」はEC50>10μMを意味する。
【0191】
【表6】
Cpds:化合物番号
Fasudil:ファスジル
【0192】
このデータに加えて、化合物32、及びカルボン酸エステルヒドロラーゼによるエステル加水分解から生じる化合物14の予測代謝産物であるMet1の濃度応答曲線を図1に提示する。項目C2において実証されるように、かかる加水分解は血漿中で容易に起こる。図1では、機能的に活性な化合物である化合物32と、その代謝産物Met1との間の活性の大きな違い(20倍超のEC50値の違い)が更に例示され、それにより化合物32のソフト特性が更に実証される。
【化33】
Compund:化合物
【0193】
C.2. 薬理学的特性評価
C.2.1. ヒト(動物)の血漿/全血における安定性アッセイ
化合物を、ヒト又は動物(ラット、マウス又はウサギ)のヒト血漿又は全血中1 μMの濃度でインキュベートする。サンプルを一定の時点で取り、化合物の残留物をタンパク質沈殿後のLC-MS/MSによって決定する。半減期は分単位で表される。
【0194】
【表7】
Cpd:化合物番号
t1/2 humman plasma:ヒト血漿
t1/2 human whole blood:ヒト全血
【0195】
C.2.2. ウサギ房水における安定性アッセイ
化合物をウサギ房水(AH)中1 μMの濃度でインキュベートする。サンプルを一定の時点で取り、化合物の残留物をタンパク質沈殿後のLC-MS/MSによって決定する。
半減期は分単位で表される。
【0196】
【表8】
Cpd:化合物番号
【0197】
C3. 構造的に関連する化合物との比較
構造的に類似した従来技術で既知のROCK阻害剤、例えば国際公開第2008/077057号、国際公開第2010/065782号、国際公開第2009/158587号、米国特許出願公開第2009/0325960号、米国特許出願公開第2009/0325959号、Iwakubo et al. (Bioorg. Med. Chem., 2007, 15, 350-364 & Bioorg.Med. Chem., 2007, 15, 1022-1033)及び国際公開第2001/56988号に記載のもの等と比較すると、本発明の化合物は、体循環に入った時点で予測可能な機能的に不活性な化合物へと非常に急速に変換されるが、標的器官で良好な安定性を保持するという点で異なる。上述の文献は、本発明の化合物と構造的に類似したROCK阻害剤を開示しているが、これらの文献のいずれにおいても、ソフトROCK阻害剤の設計、発見又は潜在的利点は論考されていない。特に、血漿、全血、又は考え得る標的器官における開示のROCK阻害剤の安定性に関する情報は提示されていない。
【0198】
国際公開第2012/015760号は、「これらのプロドラッグは、一般に、親化合物のエステルまたはアミド誘導体である。これらのプロドラッグは、通常、ROCKの弱い阻害剤であるが、その親化合物は、優れた活性を有する。点眼すると、これらのプロドラッグのエステルまたはアミド基は、アルコール、アミン又は酸に速やかに加水分解され、プロドラッグは活性ベース化合物に変換される。ROCK阻害剤のプロドラッグは、標的部位へのより高濃度の活性種の送達等のいくつかの利点を提供する」と明確に述べている要約書から明らかなように、Rhoキナーゼ阻害剤のプロドラッグ形態であるエステル含有イソキノリン及びインダゾール誘導体を開示している。国際公開第2012/015760号に開示される化合物の薬理学的プロファイル(プロドラッグ;標的器官において安定性が低い低活性化合物;加水分解時に機能的に活性な化合物が生じる)が、定義によると本発明の化合物により示される薬理学的プロファイル(ソフトドラッグ、標的器官において良好な安定性を有するが、体循環では安定性に乏しい高活性化合物;加水分解時に機能的に不活性な化合物が生じる)と反対のものであることは驚くべきことである。
【0199】
加えて、国際公開第2008/077057号、国際公開第2010/065782号、国際公開第2009/158587号、米国特許出願公開第2009/0325960号、又は米国特許出願公開第2009/0325959号において言及されており、ROCK1及び/又はROCK2に対する良好な阻害能力(すなわち1.060、1.147、1.187、1.200、1.224、1.225、2.071)を示すエステル含有インダゾール又はイソキノリン誘導体は、国際公開第2012/015760号として後に記載されていることから、ソフトドラッグプロファイルではなく、プロドラッグプロファイルを示すと予測されることに留意する。
図1