(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流体源が、前記ガラスリボンの長い断面軸に向かって直角に配向された、または、前記ガラスリボンの長い断面軸に対して鋭角に配向されかつ前記中心積層領域を避けて前記ガラスリボンのエッジに向かって突き出している、少なくとも1つの流体送出ノズルを含むことを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の種々の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。種々の実施形態の参照は本発明の範囲を限定するものではなく、本発明は本書に添付される請求項の範囲のみによって限定される。さらに、本明細書に明記される任意の例は、請求される発明の多くの考えられる実施形態のうちのいくつかを限定するものではなく、単に明記するものである。
【0007】
いくつかの実施形態において、「流体」は例えば、流動する、すなわちガラスリボンワークピースへと排出されるまでその供給源容器および送出装置の輪郭に従う傾向にある、液体または気体などの物体を称する。いくつかの実施形態において、「流体」は例えば、この流体が適切に向けられて排出されるとガラスリボンワークピースに対して選択的な照明または加熱を提供することができる放射加熱器など、光または熱の放射または供給源を称することもあり得る。
【0008】
本開示の種々の実施形態の説明において採用される、例えば組成物における成分の量、濃度、容積、処理温度、処理時間、収量、流量、圧力、および同様の値、およびその範囲、を修飾する「約」は、例えば、品物、組成物、合成物、濃縮物、または使用配合、を作製するために使用される典型的な測定手順および取扱手順を通じて、これらの手順における不用意なエラーを通じて、方法を実行するために使用される出発材料または成分の、製造、供給源、または純度における違いを通じて、および同様の考慮事項を通じて、生じ得る数量の変動を称する。
【0009】
実施形態における「実質的に成る」は、例えば、本開示の方法、組成、品物、機器、または装置を称し、かつ請求項に記載された構成要素またはステップと、これに加えて、本開示の組成物、品物、装置、または作製および使用方法の基本および新規の性質に著しい影響を与えない、変動可能に選択される、特定の反応物、添加物、成分、作用剤、条件、または類似の構造、材料、またはプロセスなどの、他の構成要素またはステップとを含み得る。本開示の構成要素またはステップの基本の性質に著しい影響を与え得る事柄、または本開示に望ましくない特性を与え得る事柄として、例えば、ガラスリボンのビード領域および窪み領域での温度の無制御または極めて低い制御、および同様の反対の性質またはステップが挙げられる。
【0010】
本書における単数形の使用は、他に規定がなければ、「少なくとも1つ」、すなわち1以上を意味する。
【0011】
通常の当業者が既知の略記を使用することがある(例えば、時間に対する「h」または「hr」、グラムに対する「g」または「gm」、室温に対する「rt」、および類似の略記)。
【0012】
構成要素、成分、添加物、および類似の要素に対して開示される特定の値および好適な値、さらにその範囲は、単に説明のためのものであり、他の定義された値または定義された範囲内の他の値を排除しない。本開示の配合、組成物、機器、装置、および方法は、本書で説明される任意の値を含み得、または本書で説明される値、特定の値、より具体的な値、および好適な値の、任意の組合せを含み得る。
【0013】
積層フュージョンドロー装置(LFDM)におけるガラスリボンの延伸横断厚さプロファイルは、典型的には不均一である。ガラスのビード(エッジ)ゾーンは、品質ゾーンすなわちガラスリボンまたは得られる切断ガラスシートまたはガラスロール製品の中央または中心領域よりも、例えば交互に厚く(少なくとも局所的に)薄く次いで厚くなり得る領域を含む。これにより、温度プロファイルはビード領域内において局所的な最大値および最小値を含むことになる。リボンの長さのほとんどで、ビードの厚い部分はリボンの中心に比べて相対的により高温である。リボンのエッジの温度が相対的に高く、かつ同時に温度勾配が生じることによって、リボンと最終的なガラス製品の両方に望ましくない応力および形状を生じさせ得る。リボンのエッジ領域でガラス温度を特に制御する能力によれば、ガラスまたは積層ガラスリボン(すなわち連続的な延伸材料)、ガラスロール、またはガラスシート(すなわち個々の切断または分離されたリボンの部分)の応力および形状の、より優れた制御が可能になる。ビード領域における熱調整は、例えば、冷却、加熱、またはこれら2つの組合せを含み得る。
【0014】
また積層フュージョンの特定の事例では、コアおよびクラッドを構成するガラス間の熱膨張係数(CTE)の差分が大きいことで、リボンが長くなるときにクラッドビード下のコアガラスに著しい引張応力が生じ得る。この引張応力は一時的な応力および残留応力と相互に作用して(これらが同じ平面に生じ得るため)、不安定な状態を引き起こす可能性があり、さらにシートの成形または分離の際に特に危険になって、クラックアウト、すなわちローラ下での軽度の破損や、限界(rubicon)、すなわち無制御の亀裂または破片形成を含めたより深刻な破損に潜在的につながる可能性がある。
【0015】
積層フュージョンドロー装置(LFDM)またはフュージョンドロー装置(FDM)内部でのガラスリボンの延伸横断温度プロファイルは、例えば抵抗巻線および冷却バイオネット(cooling bayonet)などの熱伝達方法を用いて方向づけられ得る。この温度プロファイルの主な対象はリボンの中心近くの品質ゾーンの管理であり、例えば2012年11月16日に出願された、本出願人が所有し譲渡された同時係属の米国特許出願第13/679,263号明細書を参照されたい。ただしこれらの熱伝達方法は、フュージョンシート延伸プロセスでビードの温度を変化させることを意図したものではない。延伸下部(BOD)領域においてガラスリボンは、主に自由対流および放射を通じて自然に冷却させることができる。
【0016】
本出願人が所有し譲渡された米国特許第8,037,716号明細書では、リボンの各サイドのちょうどエッジの位置に相対的に厚い単一のビードを有するガラスリボンのエッジ領域で、温度を制御する方法に言及している。冷却が制御方法として書かれていた。’716特許では、CTEが整合していない異なるガラスを用いた積層フュージョンについては言及していない。ダブルビード、または、リボンエッジ熱制御方法としての能動加熱の使用あるいは能動加熱と冷却との組合せの使用については触れられなかった。
【0017】
他の種類のガラスの製造において冷却を採用している、他の機器が知られている。例えば米国特許出願公開第2006/0015619号明細書では、応力制御のために車両ガラス製品のエッジを冷却するように特別に設計された、冷却リングアセンブリに言及している。米国特許出願公開第2005/0166639号明細書では、エッジの圧縮を増加させるために、外形金型上で支持されている間に、成形されたガラスシート対のエッジを冷却する装置に言及している。この米国特許出願公開第2005/0166639号出願は、空気または他の気体で実施される冷却を用いた自動ガラス製造にも言及している。国際公開第2006/083902号は、窓用ペインガラスのエッジを強化するために、冷気で冷却することにより周縁を急冷するものに言及している。米国特許第4,375,370号明細書は、牽引ロール間の「波打ち(scalloping)」を低減させるために、フラットガラスの製造にエッジ冷却を適用するものにさらに言及している。周縁冷却は、この冷却を用いて強度を増加させる、例えば米国特許出願公開第2005/0122025号明細書のCRTガラスの製造においても触れられていた。
【0018】
国際公開第2007/037871号および米国特許出願公開第2007/0062219号明細書は、製造されるフラットガラスシートのエッジでのS字状の反りのレベルを低減するために、エッジ加熱を用いるものに言及している。このプロセスは、ガラス転移温度範囲(GTTR)付近のビードをエッジローラが局所的に冷却することになり、これが最終的なガラスシートにS字状の反りを生じさせる、フュージョンプロセスおよびフロートプロセスの両方を含む。これら2つの開示は、リボン形状制御またはビード冷却を含まない。国際公開第2008/036227号は、フュージョンドロープロセスにおける設定ゾーンの温度プロファイルの操作を通じてフラットガラスシートの歪みを制御する手順に言及している。設定ゾーンは、粘性ゾーンから弾性ゾーンへとリボンが転移する領域である。本開示は、フュージョンドロー装置におけるリボンの歪みを制御する、特に積層フュージョンドローに特別に配慮した優れた方法を提供する。
【0019】
本開示は、積層ガラスリボンのビード部分の熱制御方法を提供する。この方法は、積層フュージョンドロー装置において、リボンのビードとして知られているエッジ付近のガラスの相対的に厚い部分および薄い部分の、内部の温度を変化させることができる。適切な熱制御が欠けていると、ガラスリボンに比較的大きい局所的な温度勾配が生じることがある。積層フュージョンガラスリボンでは、リボンのエッジ付近に交互に厚い‐薄い‐厚いガラス領域が存在し、これらの領域のいずれかまたは全てを特定の熱制御に使用することができる。この領域に温度勾配が存在していると、リボンの応力および形状が最適化されない可能性がある。温度勾配は必要に応じて、ビード温度を変化させることによって減少させるまたは増幅させることができ、これにより例えば、シートの罫書きおよび分離の改善、罫書き中のリボンの運動レベルの低下、および最終的なガラス製品の応力および形状の操作を含み得る、他の改善を実現させることができる。積層ガラスリボンのビード温度を変化させる方法は、例えばビードの領域、リボンの領域、および所望の厚さプロファイル次第で、加熱するもの、または冷却するもの、あるいは加熱および冷却の両方を行うものを含み得る。ビード温度は、目標とされる性質または利益次第で、例えばフュージョンドロー装置(FDM)領域、延伸下部(BOD)領域、または両領域における、外部加熱または冷却手段により変化させることができる。ビードの冷却が要求される場合、好適な方法として、冷却ガスナイフを提供するノズルなどの対流ガスジェット冷却、真空除去、またはこれらの組合せが挙げられる。ビードの加熱が要求される場合、好適な方法として、流体源が放射熱、加熱気体の熱伝達、またはその両方である場合が挙げられる。
【0020】
いくつかの実施形態において、熱制御のために積層ガラスリボンのビード温度を変化させる方法は、例えば、同時に、
積層リボンの両サイドまたは両エッジの、コアガラスを含む第1および第2のビード(すなわち外側ビード)を冷却するステップ、
積層リボンのクラッドガラスを含む第3および第4のビード部分(すなわち内側ビード)を冷却するステップ、および、
外側ビードと内側ビードとの間に位置するコアガラスを含む、第1および第2のビード窪みを加熱するステップ、
を含み得る。
【0021】
フュージョンドロープロセスにおいてビード温度を制御する能力により、例えば、残留応力の形成、局所的な温度プロファイルの非線形性による任意の一時的な応力、を操作することができ、またコアガラスとクラッドガラスの間のCTE不整合により生じる積層応力を回避することができる。残留応力はある程度、設定ゾーン(すなわち、粘弾性ゾーン)の温度プロファイル次第であり、また一時的な応力は弾性ゾーンの温度次第である。これらの応力が組み合わさって全体の応力状態を与える。延伸の種々の位置でビード温度を変化させると、リボン全体における1以上の応力の制御を実現することができる。
【0022】
残留応力、一時的な応力、またはこの両方が操作されると、例えば、フュージョンドロー装置(FDM)および延伸下部(BOD)の両領域におけるリボン形状の変化、シートの罫書きおよび分離の改善(罫書きおよび分離は両方とも、罫書きに使用される移動アンビル装置機構(TAM)付近のリボン形状に依存する)、罫書きおよび分離中のリボンの運動レベルの低下(これもTAM付近のリボンの形状に依存する)、および残留応力に依存する最終的なガラスシートの形状の制御、などの実用面での利益につながり得る。開示されるビード熱調整プロセスは、ビード付近で、例えば約10000psi(69MPa)以下の破壊限界を下回る一時的な応力を有する積層ガラスリボンを例えば提供することができる。
【0023】
ビードの適切な熱調整により残留圧縮または一時的な圧縮を加えることで、粘弾性ゾーンまたは弾性ゾーンのいずれか(例えば、BOD)において積層応力を操作することにより、コアの引張応力を抑制しかつ潜在的なシートおよびビードの分離問題を最小限に抑えることができる。例えば、コアのみの厚さの約2.5倍の厚さを有する内側ビード付近のクラッドおよびコアガラスの組合せを含む、クラッドガラスおよびコアガラスとして、夫々コーニングのEAGLE XG(登録商標)およびGORILLA(登録商標)を検討する。クラッドビード(すなわち内側ビード)付近のガラスリボンの厚さ比率(コア厚さ/2クラッド厚さに等しい)は、例えば約2.5になり得る。350℃のBOD温度では、コアガラスの引張応力は例えば最大50MPaになり得、このレベルはガラスの破損とプロセスの不安定な状態とを引き起こすのに十分な高さである。内側ビードを、BOD温度を超えてさらに50℃局所的に加熱することにより、引張応力を約30MPsだけ減少させることができ(数式:応力=ヤング率×CTE×差分T=70/GPa×90/ppm/℃×50℃で見積もられる)、応力レベルを、約20MPaなどの管理可能なレベルまで下げることができる。ビードを含む積層シートを考慮すると、シートがリボンから分離または切断されて室温まで冷却される場合、クラッドビードでは非受動的な不良を引き起こす可能性がある120MPa以上の応力が見積もられる。これは、(例えば約150℃の局所加熱を要求する)一時的な熱応力で抑制するのは難しいであろうが、この一時的な熱応力は、本書で開示されたような粘弾性領域における開示されたビード熱調整プロセスによって、残留応力の操作を通じて管理することができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、
図1を参照すると、本開示は積層ガラスリボンワークピースを作製する装置を提供し、このガラスリボンは、
リボンのエッジに平行な、中心積層領域105、すなわち、幅の中央にある直線、
第1のエッジ101、
第2のエッジ102、
第1のエッジを始点とし中心積層領域105に向かって延在する、第1のビード部分120a、すなわち、コアビードまたは外側ビード、
第2のエッジを始点とし中心積層領域に向かって延在する、第2のビード部分120b、すなわち、コアビードまたは外側ビード、
第1のエッジから離れた位置を始点とし中心積層領域105に向かって延在する、第3のビード部分110a、すなわち、クラッドビードまたは内側ビード、
第2のエッジから離れた位置を始点とし中心積層領域105に向かって延在する、第4のビード部分110b、すなわち、クラッドビードまたは内側ビード、
第1のビード部分120aと第3のビード部分110aとの間に位置する、第1の随意的なビード窪み領域115a、および、
第2のビード部分120bと第4のビード部分110bとの間に位置する、第2の随意的なビード窪み領域115b、
を含み、
第1のビード部分および第2のビード部分は、積層リボン100の両エッジのコアガラスを含み、
第3のビード部分および第4のビード部分は、積層ガラスリボンのクラッドガラスを含み、
第1および第2の随意的なビード窪み領域は、コアガラスを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、この装置は、
積層延伸領域内においてビード熱調整領域を含んでもよく、このビード熱調整領域は、
積層ガラスリボンの第1、第2、第3、または第4のビード部分、およびその組合せ、および随意的にはビード窪み領域、のうちの少なくとも1つの近くに流体を選択的に適用するように配向された、例えばジェット、ノズル、または同様の指向機構または調整機構などの関連する導管、制御弁、および分注要素を有する、例えば加圧ガスなどの流体源を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、流体源は、積層延伸領域内の、粘弾性領域(設定ゾーンともいう)、弾性領域、またはこれらの組合せ、に位置していてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、流体源は例えば、冷却源を提供する第1のノズルと加熱源を提供する第2のノズルでもよく、あるいは代わりに、加熱源を提供する第1のノズルと冷却源を提供する第2のノズルでもよい。
【0028】
いくつかの実施形態において、流体源は例えば、第1および第2のビードと、第3および第4のビードすなわち厚い内側ビードとに向けられた、例えば冷却気体または冷凍気体などの冷流体または真空の供給源、および、第1および第2の随意的なビード窪みに、すなわち外側ビードと内側ビードとの間のより薄い領域(115a、115b)に向けられた、例えば加熱気体などの加熱流体の供給源、とすることができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、この装置の作用は残留応力を変化させることができ、例えば得られる積層ガラスシートの応力を減少させることができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、流体源は例えば、リボンの長い断面軸に向かって直角に配向された、または、リボンの長い断面軸に対して鋭角に配向されかつリボンの中心を避けてリボンのエッジに向かって突き出している、リボンの一方のサイドの単一のノズル、リボンの両サイドの一対のノズル、またはリボンの両サイドの複数のノズル対などの、少なくとも1つの気体ノズルでもよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、流体源は例えば、リボンの長い断面軸に向かって直角に配向された、またはリボンの長い断面軸に対して鋭角に配向されかつリボンの中心積層領域を避けてリボンのエッジに向かって突き出している、あるいはこれらを組み合わせた、複数の気体ノズルでもよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、流体源は例えば、冷却気体または真空、加熱気体、冷却液体、加熱液体、光ビームまたは放射加熱器などの放射源、またはこれらを組み合わせたものでもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、本開示は上述した積層フュージョン装置におけるビード熱調整方法を提供し、この方法は、
装置のビード熱調整領域において、
流体源からの第1の流体を、第1、第2、第3、および第4のビード部分、すなわちより厚い内側ビード、より厚い外側ビード、またはその両方、のうちの少なくとも1つへと向け、随意的には流体源からの第1の流体を第1および第2のビード部分へと向けるステップ、および、
同時に、第2の流体源からの第2の流体を、第1および第2の随意的なビード窪み部分、すなわち外側ビードと内側ビードとの間のより薄い断面領域(115)へと向けるステップ、
を含む。
【0034】
いくつかの実施形態においてビード熱調整は、厚さを「通じて平均化された」残留応力を有する積層ガラスシートを提供することができ、すなわちクラッドおよびコアは、−1,000psi(−6.89MPa)から約+1,000psi(+6.89MPa)までの、またはこれ未満の、残留とみなすことができる非常に大きい応力を有し得る(ここで1000psi=6.89MPa)。多くのガラスシート製品において、リボンの品質エリアには、例えば約250psi(1.72MPa)未満の厚さを通じて平均化された絶対応力が存在し得る。残留応力はガラスシート内に残る固有の応力であり、これに対し一時的な応力は過渡のものであって、ガラスシートが熱平衡に近づくと減少する。開示されるビード熱調整方法は、品質エリアにおける厚さを通じて平均化された残留応力が、例えば、中間の値および範囲を含めて、−1,000psi(−6.89MPa)から約+1,000psi(+6.89MPa)まで、−500psi(−3.45MPa)から約+500psi(+3.45MPa)まで、−250psi(−1.72MPa)から約+250psi(+1.72MPa)まで、−100psi(−0.68MPa)から約+100psi(+0.68MPa)まで、またはこれら未満の、積層ガラスリボンまたはシートを提供することができる。残留応力は好適には、例えば−50psi(−0.34MPa)から約+50psi(+0.34MPa)まで、またはこれ未満であり、より好適にはゼロに近いもの、またはゼロである。
【0035】
いくつかの実施形態において、第1および第2の随意的なビード窪み部分へと向けられた流体源は、例えば、各随意的なビード窪み部分における温度変化または温度勾配を局所化する、すなわち局所的に保つ、強制空気対流加熱器でもよい。
【0036】
いくつかの実施形態において温度変化または温度勾配は、中間の値および範囲を含めて、例えば5から約150℃、および好適には25から約100℃の温度変化または温度勾配の範囲内で最小限に抑えまたは維持され得る。いくつかの実施形態において流体は、例えば気体、真空、またはこれらを組み合わせたものでもよく、また気体は、例えば空気でもよいし、あるいは窒素、アルゴン、ヘリウム、または類似の気体または混合気体などの空気以外のものでもよい。ヘリウムは高い熱伝導率を有し、冷却を高めるには優れた選択である。
【0037】
いくつかの実施形態において気体は、水蒸気、液体水、非水液体、またはこれらの組合せ、のうちの少なくとも1つと組み合わせてもよいし、またはこれらのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、第1の流体は例えば、相対的に厚い第1、第2、第3、または第4のビード部分のうちの、少なくとも1つに向けられた冷却気体でもよく、また第2の流体は例えば、相対的に薄い随意的なビード窪み領域のうちの少なくとも1つに向けられた第2の加熱気体でもよい。
【0039】
二重アイソパイプのフュージョン積層プロセスにおいて、リボンは、従来の単一アイソパイプのフュージョンドロープロセスでの1つのビードに対し、2つのビードを含んでいる。各エッジまたは端部に2つのビードを含む2ビードリボンが
図1に示されている。リボンの中心の品質ゾーン105は最も幅広の部分であり(正確な縮尺ではない)、相対的に狭いが厚い内側ビード領域110、相対的に薄い随意的なビード間領域すなわち「ビード窪み」115a、115b、および相対的に厚い外側ビード領域120a、120bに囲まれている。各領域の相対的な厚さおよび長さは正確な縮尺ではなく、理解のために誇張されたものである。相対的に厚い内側ビード領域の厚さは、相対的に厚い外側ビード領域に相当するものでもよいし、または外側ビード領域よりも薄くてもよく、あるいは外側ビード領域よりも厚くてもよい。
【0040】
内側ビード110および外側ビード120は、例えば、リボンの品質ゾーン105(販売可能なガラス)に比べて相対的に厚いガラスと、ビードに比べて相対的に薄くてもよくかつビード窪み領域115と称される、介在するガラスとによって特徴付けることができる。内側ビードおよび外側ビードは、積層ガラスのクラッド部分およびコア部分との関係を参照して、内側ビードをクラッドビード、外側ビードをコアビードとさらに称することがある。いくつかの実施形態において、ビード窪みは例えば、品質ゾーンの厚さと同じ厚さでもよいし、あるいは品質ゾーンの厚さよりも薄くてもよい。延伸横断(ATD)方向において見られる厚さ変動の例が
図2にグラフで示されている。
図1に示したビード領域は、
図2において同じ参照番号で示されている。
【0041】
ガラスの厚さの違いが存在している場合、積層ガラスは異なる領域に別々にエネルギーを伝達することができる。ガラスの厚さの変動は、例えば周囲への局所的対流および放射によって、これらの領域におけるリボン温度の変動につながり得る。より厚い領域はより多くの熱を保持し、近接する相対的に薄い領域よりも相対的に高温になる傾向がある。この影響は、
図3に示されている種々の延伸下降位置でのコンピュータモデルシミュレーションによる延伸横断(ATD)温度プロファイルにおいて見ることができ、ここでは外側ビード120に対応するリボンのちょうどエッジの位置で、局所的温度極大を示している。この温度極大特性の若干内側の局所的温度極小は、相対的に薄いビード窪み領域115に対応する。リボン延伸部の低い位置では、内側ビード110に対応する第2の温度極大も存在する。両方の極大は、局所的な対流効果および放射効果の抑制と、フュージョンドロー装置の上方部分において選択される特定のパワー設定とに起因して、フュージョンドロー装置においてより高く現れることはないであろう。プロファイルすなわち高度は、延伸部の高く上がった位置で(例えば、300、310、320、および330)より高いリボン温度を有し、また延伸部の低く下がった位置で(例えば、340)より低い温度を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、ガラスリボンの相対的に厚いビード部分110および120を冷却して、相対的により平坦な温度プロファイルを提供することができる。いくつかの実施形態では、冷却を内側ビードだけに向けてもよいし、外側ビードだけに向けてもよいし、あるいは両方に向けてもよい。いくつかの実施形態において冷却は、FDMの上部から、ガラスシートがリボンから分離されるBODの下部へと、延伸部を下降して連続的に起こり得る。いくつかの実施形態において冷却は、FDMおよびBODの両方の、またはFDMのみの、あるいはBODのみの、離散した位置で起こり得る。冷却の位置によって、影響される属性が決定され得る。例えば、FDMの高い位置(設定ゾーン付近)での冷却は、残留応力および近接する一時的な応力と、リボンおよび最終的なガラスシートの応力および形状とに影響し得、またFDMの低い位置またはBODでの冷却は、大部分は一時的な応力に影響し、結果的に延伸部の低い位置でのリボン形状に影響し得る。しかしさらなる利点として、例えば、設定ゾーンでの運動の低減および応力の変化も挙げることができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、厚い内側ビード領域と外側ビード領域との間の、存在する場合には窪みとなる相対的に薄い領域を加熱すると、相対的により平坦な温度プロファイルをもたらすことができる。熱制御のターゲット領域は、品質ゾーンに近くかつ品質ゾーンを含む可能性のある、内側ビードの若干内側であることもあり得る。いくつかの実施形態において加熱は、FDMの上部から、ガラスシートがリボンから分離される延伸部の下部(BOD)へと、延伸部を下降して連続的に起こり得る。さらに、または代わりに、加熱は、FDMおよびBODの両方の、またはFDMのみの、あるいはBODのみの、離散した位置で起こり得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、冷却および加熱の好適な方法は、ターゲット領域内の温度変化または温度勾配を局所化するまたは最小限に抑えるように向けられたジェットを含む、強制気体または空気対流によるものである。影響を受けるエリアのサイズは、例えば、ジェットのオリフィスサイズの選択、ジェットとガラスとの間の距離、気体ジェットの流量、または気体ジェットでの気体の角分散によって操作され得る。気体ジェットのオリフィスは、例えば、エアナイフまたはエアカーテンなどにおいて円形または長方形でもよい。いくつかの実施形態において、加熱は例えば、平行放射プロセスにより実施することができる。
【0045】
本開示の実施形態のいくつかの例の図を、
図4から10に示す。本開示の他の実施形態は、例えば、様々なノズルの数の変更または置換え、種々の異なる延伸横断(ATD)位置、種々の複数の延伸下降(DTD)位置、種々のノズルに対する種々の異なる気体流量、放射加熱、および同様の改変および変形を含み得る。
【0046】
図4Aおよび4Bは夫々、あるビード熱調整装置の2つの変形を示している。
図4Aは、外側ビード120に向けられた3つの個別のノズル410を含む。
図4Bは、内側ビード110に向けられた3つの個別のノズル410を含む。供給される気体などの流体405の温度は、局所ビード温度よりも高温でもよいし、あるいは低温でもよい。延伸方向は矢印400によって示されている。ガラスリボンの右側または右半分の、熱制御装置に関連する一部分のみが
図4から10に示されている。
【0047】
図5Aおよび5Bは、あるビード熱調整装置の2つの変形を示している。
図5Aのビード熱調整装置は、流体源405が供給されるリボンエッジ領域(1つのエッジが図示されている)に位置付けられた、合わせて6つのノズル410を有し、このとき共通の気体マニホールドを使用して3つの個別のノズルは外側ビード120に向けられかつ3つのノズルは内側ビード110に向けられる。
図5Bのビード熱調整装置は、ガラスの厚さが相対的に薄いビード窪み領域115に向けられた、3つの個別のノズルを含む。相対的に薄いガラスビード窪み領域は、例えば、中間の値および範囲を含め、約0.25mmから1mm、約0.3mmから0.8mmになり得る。相対的に厚いガラスビード領域は、例えば、中間の値および範囲を含め、約1.0mmから3.0mm、および約1.3mmから1.5mmになり得る。
【0048】
供給される気体405の温度は、局所ビード温度よりも高温でもよいし、あるいは低温でもよい。延伸方向400および他の特徴は、
図4Aおよび4Bに示したものと同様である。ガラスリボンの片側または半分の、熱制御装置に関連する一部分のみが図示されている。気体、液体で飽和した気体、または液体などの流体は、局所ガラス温度よりも高温でもよいし、あるいは低温でもよい。
図4および5の夫々におけるノズルの数は、2から約10ノズルなど、2以上でもよい。
【0049】
いくつかの実施形態において、代替のビード熱調整装置が
図6に示されている。この代替の構成は、内側および外側ビードと随意的なビード窪み領域の同時調整を実現する。任意の組合せの、別々に送出、加熱、または冷却された、気体などの流体(例えば、405a、405b、405c)を使用することができる。好適な実施形態は、例えば、冷却気体を提供しかつ厚いビード(110、120)に向けられる、1以上のノズルを含む、第1の気体源と、相対的に薄いビード窪み領域115に向けられた加熱気体を提供する、1以上のノズルを含む、第2の気体源を使用するものを含み得る。ガラスリボンの片側または半分の、熱制御装置に関連する一部分のみが図示されている。いくつかの実施形態において好適な熱制御方法は、粘弾性ゾーンにおいて、厚いビード部分を冷却しかつ薄い部分を加熱するステップを含む。いくつかの実施形態において、弾性ゾーン例えば延伸下部における好適な熱制御方法は、クラッドとコアとの間のCTEの差が著しい場合に内側ビード部分を加熱するステップを含む。延伸下部においてクラッドビードを加熱すると、コアにおける積層の引張応力を相殺することができる一時的な圧縮応力を生みだすことができる。クラッドガラスのCTEよりも高いCTEを有するコアガラスを含む積層フュージョンの特定の事例において、好適な実施形態は、加熱気体を内側ビードに向けて、CTEの差分に起因してコア内に生じる引張応力を相殺することができる。
【0050】
図7は
図4の代替の構成を示したものである。ここでは、ガス「ナイフ」700などの加熱または冷却流体の形式で、調整気体405マニホールドなどの第1の流体の連続供給を外側ビード領域120に向けることで、「ナイフ」領域700全体に沿って均一な気体の流れを送出することができる。いくつかの実施形態においてナイフは、随意的なビード窪み領域115を含めたビード領域(110、120)のいずれかまたは全てに向けることができる。ガラスリボンの右側または半分の、熱制御装置に関連する一部分のみが図示されている。
【0051】
図8は、積層ガラスリボンの一部分の断面を示したものであり、外側ビード120に向けられた一対の対向する冷却または加熱用気体ノズル410を含む、流体源405を備えた構成を示している。これらの気体ノズル(例えば、ジェット)は、リボンに直角に配向されている。
【0052】
図9は、
図8と同様外側ビード120に向けられるが、ガラスリボン100の相対的に薄い近接する随意的な窪み領域115への熱的影響を最小限に抑えるために、直角に突き出す代わりにリボンから離れた位置から鋭角に突き出して向けられた、冷却または加熱用気体ノズル410などの流体源405を備えた別の構成の一部分を、ガラスリボンまたは積層ガラスリボンの断面と共に示している。ノズルの対が中心積層領域を避けて鋭角で配向され、相対的に薄い近接する随意的な窪みガラス領域115への熱的影響を最小限に抑える。ガラスリボンの右側または半分の、熱制御装置に関連する一部分のみが図示されている。
【0053】
図10は、代わりに、またはさらに、相対的に薄い随意的なビード窪み領域115の熱調整を行うが、近接する相対的に厚い内側ビード領域110および外側ビード領域120への影響を最小限に抑える別の構成例を示している。例えば真空源1015に連通している吸引ノズル1010を、例えば薄い窪み領域115の近くかつビード領域間に位置付けて窪み処理ノズル410に近づけ、調整気体を、この調整気体が所望の領域に影響を与えた後に取り除いてもよい。この構成を、代わりに、またはさらに、ビードのいずれにも適用することができる。この実施形態を、代わりに、またはさらに、隣接するビードのいずれの調整にも適用することができる。ガラスリボンの右側または半分の、熱制御装置に関連する一部分のみが図示されている。
【0054】
図11は、ビード熱調整装置および方法のフュージョンドロー装置(FDM)における実装を示している。フュージョンドロー装置(FDM)の牽引装置1110におけるビード熱調整方法の1つの実装が
図11に示されており、これは、1以上の熱調整管405の導入を可能にする、すなわち冷却、加熱、真空、またはこれらを組み合わせたものを可能にする、アクセスポート(1111、1112)を備えている。いくつかの実施形態では標準的なFDM牽引装置の鉄骨設計を変更して、その端壁および側壁内に、ビード調整にとって十分に大きくかつ望ましい位置に置かれた機械加工されたスロットを備えてもよい。
【0055】
図12は背景として、従来技術のダブルフュージョン装置およびプロセスの例示的な側面図を示し、ここでは上方アイソパイプ1113からのクラッドガラス流1120が、下方アイソパイプ1130からのコアガラス流1140上へと間隙1150を渡って流れている。
図12はさらに、要望に応じて変化させることができる、クラッドのダムからダムまでの寸法1160、コア流またはコアガラスシートの幅寸法の一貫性の維持または弱化の防止が可能な、随意的なエッジロールまたはエッジローラ対(ER)1170、および、積層厚さの一貫性を維持し、さらに積層プロセスの速さを調整することができる、随意的な牽引ロールまたは牽引ローラ対(PR)1180すなわち引っ張りローラ、を示している。
【0056】
LCDガラス、特にコーニング社のコードEagle(登録商標)2000LCDガラスでの代表的な値として、ガラス転移温度域(GTTR)の上限は典型的には約850℃以下であり、GTTRの下限は典型的には約650℃以上であり、例えばGTTRの下限は約700℃以上でもよい。エッジローラはGTTRを超える位置でリボンに接触してもよく、一方図示の牽引ロールはGTTR内で位置付けられている。牽引ロールは、所望であればGTTRを下回る位置に位置付けることも可能である(本出願人が所有するAniolek他へのコーニング米国特許第8,037,716号明細書参照)。エッジローラの温度はガラスの温度未満でもよく、例えばエッジローラを水または空気で冷却してもよい。このより低い温度の結果、エッジローラは局所的にガラスの温度を低下させる。この冷却がリボンの弱化を低減し、すなわち局所的な冷却が、(例えば牽引ロールの動作を通じて)延伸中に起こるリボン幅の減少を、制御する助けとなる。牽引ロールもまた、これが接触するガラスよりも一般に低温であるが、牽引ロールは延伸部のさらに下方に位置しているため、温度差はエッジローラの位置よりも小さくなり得る。
【0057】
図12にさらに示されているように、この装置はフュージョンプロセスで使用することができ、あるいは積層フュージョンドローのために変形でき、またこの装置を、ガラスが曝される気温が制御されるフュージョンドロー装置(FDM)の第1のセクションと、ガラスが周囲温度に曝される第2の延伸下部(BOD)セクションとに分割することができる。BODは、個々のシートをリボンから罫書きラインに沿って分離させることができるセクションを含む。
【0058】
図13は、リボン15の説明に使用される代表的な命名を示すものである。フュージョンドローにおいて、リボンは、外側エッジ19a、19b、中心線17、および、エッジ19aおよび19bから中心線に向かって内側に延在するビード部分21a、21bを含み得る。ビード部分の最も厚い部分はライン23aおよび23bに沿って生じ得、またビード部分の内側限界はライン25aおよび25bに沿うとみなされる。このとき最終的なリボンの厚さは最初に1.05×t
center超に増大し、ここでt
centerは中心線に沿ったリボンの最終的な厚さである。厚さ1.05×t
centerは、高品質または高品質に近い厚さであると考えられることに留意されたい。さらに、国際公開第2007/014066号で論じられているように、最終的な厚さはGTTRを超える、延伸部内の高い位置で生じることも留意されたい。その後厚さは、ガラスが冷えるにつれて熱膨張係数(CTE)に基づいて若干減少する。しかしながら本開示では、このCTEに基づいた縮小は10分の数パーセント未満であるため無視され得る。図示のビード部分21aおよび21bは対称であるが、実際のビード部分は異なる幅を有していてもよく、またその最も厚い部分の位置は2つのビードで異なっていてもよく、例えばいずれの最も厚い部分もビード部分の中心である必要はない。より一般的には、
図12および13は正確な縮尺ではなく、相対的なサイズを示すことを意図したものではないことに留意されたい。積層フュージョンドローでは、リボンはさらに、
図1の断面図に示されているように、内側ビード部分と、随意的な第1のビード窪みおよび随意的な第2のビード窪みとを有し得る。
【0059】
本開示を種々の特定の実施形態および技術を参照して説明した。しかしながら、本開示の範囲内で、多くの変形および改変が考えられることを理解されたい。