(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る一実施形態における無線装置について説明する。
先ず、本実施形態における無線通信装置1とフェンシング領域について説明する。
図1は、本実施形態における無線通信装置1とフェンシング領域の一例を示す図である。
【0017】
図1において、無線通信装置1は、図示しない利用者端末に対して無線LANサービスを提供する無線LANのAPである。無線通信装置1は、第1のフェンシング領域である第1領域と、第1のフェンシング領域に包括される第2のフェンシング領域である第2領域を形成する。
【0018】
第1領域は、後述する第1送信部の配置位置Aを中心とする水平面における円内に形成される。第1領域は、第1送信部から送信される第1の識別情報が利用者端末によって検知できる範囲である。無線通信装置1は、利用者端末が第1のフェンシング領域の外側から第1のフェンシング領域の内側に移動したときに、第1送信部が利用する第1の無線方式において利用者端末との無線通信を開始する。また、無線通信装置1は、利用者端末が第1のフェンシング領域の内側から第1のフェンシング領域の外側に移動したときに、第1の無線方式における利用者端末との無線通信を終了する。
【0019】
一方、第2領域は、第1送信部の配置位置Aと略同一の位置に配置された、後述する第2送信部の配置位置を中心とする水平面における円内に形成される。第2領域は、第2送信部から送信される第2の識別情報が利用者端末によって検知できる範囲である。無線通信装置1は、利用者端末が第2のフェンシング領域の外側から第2のフェンシング領域の内側に移動したときに、第2送信部が利用する第2の無線方式において利用者端末との無線通信を開始する。無線通信装置1は、利用者端末が第2のフェンシング領域の内側から第2のフェンシング領域の外側に移動したときに、第2の無線方式における利用者端末との無線通信を終了する。
【0020】
第2領域は第1領域に包括されているため、利用者端末の第2領域の外側から内側への移動は、第1領域の内側において行われる。すなわち、無線通信装置1は、利用者端末が第1領域の外側にあるか内側にあるかを検出することにより、第1領域における利用者端末の移動方向(外側から内側、又は内側から外側)を検出することができる。さらに、無線通信装置1は、利用者端末が第2領域の外側にあるか内側にあるかを検出することにより、第2領域における利用者端末の移動方向を検出することができる。無線通信装置1は、利用者端末の移動方向を検出することにより、利用者端末の移動に対応したサービスを提供することができる。例えば、無線通信装置1は、第1領域の外側から内側に移動した利用者端末に対するサービス、さらに第2領域の内側に移動した利用者端末に対するサービス、又は第2領域の内側から外側に移動した利用者端末に対するサービス等を提供することができる。なお、無線通信装置1は、第1送信部及び第2送信部が指向性を有する無線送信を行う場合、指向性に応じた移動方向の検出をすることができる。
【0021】
なお、本実施形態においては、無線通信装置1は、利用者端末が第2領域の内側に移動したときには、第1の無線方式による無線通信を終了して第2の無線方式による無線通信を開始し、利用者端末が第2領域の外側に移動したときには、第2の無線方式による無線通信を終了して第1の無線方式による無線通信を再開する場合を説明する。しかし、無線通信装置1は、利用者端末が第2領域の内側に移動したときに、第1の無線方式による無線通信を継続したまま第2の無線方式による無線通信を開始するようにしてもよい。
【0022】
第1送信部の配置位置と第2送信部の配置位置が略同一の位置に配置されるとは、例えば、第1送信部と第2送信部が一つの装置内に配置され、第1送信部と第2送信部が近接して配置されることをいう。また、第1送信部と第2送信部が一つの送信用アンテナを共用するようにしてもよい。
【0023】
第1の識別情報及び第2の識別情報は、例えばSSID(Service Set Identifier)である。第1送信部は、所定の時間間隔で第1の識別情報として第1のSSIDをビーコン(Beacon)フレームに乗せてブロードキャストする。同様に、第2送信部は、所定の時間間隔で第2の識別情報として第2のSSIDをビーコンフレームに乗せてブロードキャストする。利用者端末はビーコンフレームをスキャンして一定時間ビーコンフレームを受信した場合、利用者端末に予め登録されているSSIDが一致するか否かを判断し、SSIDが一致した場合にSSIDに対応した応答を行う。なお、本実施形態では、第1送信部及び第2送信部は、SSIDをブロードキャストする場合を説明したが、第1送信部及び第2送信部は、利用者端末からSSIDを特定したプローブ要求を受信した場合に特定されたSSIDに応じてプローブ応答をしてもよい。
【0024】
なお、
図1における第1領域及び第2領域は、配置位置Aを中心とする水平面における円(同心円)内に形成される場合を示したが、第1領域及び第2領域が形成される形状は水平面における円に限定されるものではない。例えば、第1送信部及び第2送信部が指向性を有する無線送信を行う場合、第1領域及び第2領域は、水平面及び垂直面において無線の指向性に応じた形状において形成される。
【0025】
ところで、無線LANの通信においては、電波強度が強いSSIDとの接続が優先される場合がある。本実施形態において第1領域は第2領域を包括するため、第2領域の内側においても第1のSSIDの電波強度は第2のSSIDの電波強度より強くなる。従って、電波強度による優先度において接続先を決定した場合、第1のSSIDによる通信が継続されて第2のSSIDにおける接続がされない。本実施形態において利用者端末は、第1のSSIDによる無線通信よりも第2のSSIDによる無線通信を優先させる設定がされるものとする。第2のSSIDによる無線通信を優先させる設定をすることにより、電波強度に拘わらず、第2領域の内側に入ったときに第2のSSIDによる無線通信が開始される。
【0026】
次に、本実施形態における無線通信装置1の機能構成例について説明する。
図2は、本実施形態における無線通信装置1の機能構成例を示すブロック図である。
【0027】
図2において、無線通信装置1は、第1送信部111、第1無線制御部112、第2送信部113、第2無線制御部114、コマンド入力部115、コマンド実行部116、無線部117、第1受信部、第2受信部、処理部120、送受信部121の各機能を有する。また、無線通信装置1は、サービス提供装置2と通信可能に接続されている。
【0028】
図2に示す、無線通信装置1の、第1送信部111、第1無線制御部112、第2送信部113、第2無線制御部114、コマンド入力部115、コマンド実行部116、無線部117、第1受信部、第2受信部、処理部120又は送受信部121の各機能は、コンピュータで実行されるプログラム(ソフトウェア)において実現することができる。但し、無線通信装置1の上記機能のいずれか1以上の機能はハードウェアにおいて実現されてもよい。また、
図2において無線通信装置1の上記各機能は、それぞれ1つの機能ブロックとして説明するが、複数の機能を1の機能ブロックで実現するようにしてもよい。同様に、無線通信装置1の上記各機能は、複数の機能ブロックで実現するようにしてもよい。
【0029】
第1送信部111は、第1の無線方式において、第1のSSIDをブロードキャストする。第1無線制御部112は、第1の無線方式の制御をする。第2送信部113は、第2の無線方式において、第2のSSIDをブロードキャストする。第2無線制御部114は、第2の無線方式の制御をする。
【0030】
ここで、第1の無線方式及び第2の無線方式における無線方式とは、例えば、IEEE(アイ・トリプル・イー:The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc)802.11において規格された無線LANの方式である。第1の無線方式と第2の無線方式は、異なる無線LANの規格であっても、同一の規格であってもよい。
第1送信部111と第2送信部とを有することにより、無線通信装置1は、複数のフェンシング領域として例示する第1領域と第2領域を1箇所から形成することが可能となる。本実施形態において1箇所の無線通信装置から複数のフェンシング領域を形成するときの、「1箇所」とは、第1送信部111と第2送信部が略同一の箇所に配置される場合をいう。「1箇所」には、例えば、第1送信部111と第2送信部が同一の無線通信装置(筐体)内に配置する場合を含む。また、「1箇所」には、第1送信部111と第2送信部をそれぞれ別の無線通信装置(筐体)内に配置して、2つの無線通信装置を近接して設置する場合等を含む。従って、例えば2つの無線通信装置を1箇所に集めて第1送信部111と第2送信部を構成した場合は本実施形態に含まれる。
【0031】
第1無線制御部112は、第1送信部111に対して、無線方式、送信するSSID、及び送信出力を伝達する。第1無線制御部112は、第1送信部111に対して、第1の無線方式において、第1のSSIDを、予め設定された第1の送信出力で送信するように制御する。同様に、第2無線制御部114は、第2送信部113に対して、無線方式、送信するSSID、及び送信出力を伝達する。第2無線制御部114は、第2送信部113に対して、第2の無線方式において、第2のSSIDを、予め設定された第2の送信出力で送信するように制御する。
【0032】
コマンド入力部115は、第1の無線方式、第1のSSID、第1の送信出力、第2の無線方式、第2のSSID及び第2の送信出力を設定するコマンドを入力可能にする。コマンド入力部115は、例えば、タッチパネルを有する入力デバイスであってもよい。コマンド入力部115は、入力されたコマンドをコマンド実行部116に出力する。
【0033】
コマンド実行部116は、コマンド入力部115から入力されたコマンドを取得する。コマンド実行部116は、コマンド入力部115から入力されたコマンドにおいて設定される第1の無線方式、第1のSSID、第1の送信出力、第2の無線方式、第2のSSID及び第2の送信出力の設定を無線部117に対して出力する。また、コマンド実行部116は、送受信部121から取得した利用者端末から送信された情報を無線部117に対して出力する。また、コマンド実行部116は、無線部117から取得した第1送信部111から出力する情報を第1無線制御部112に出力する。また、コマンド実行部116は、無線部117から取得した第2送信部113から出力する情報を第2無線制御部114に出力する。
【0034】
無線部117は、コマンド入力部115から入力されたコマンドにおいて設定される第1の無線方式、第1のSSID、第1の送信出力、第2の無線方式、第2のSSID及び第2の送信出力の設定を無線部117の設定をコマンド実行部116から取得する。無線部117は、取得した第1の無線方式、第1のSSID、第1の送信出力、第2の無線方式、第2のSSID及び第2の送信出力の設定を無線部117の記憶部に記憶する。無線部117の記憶部には、例えば、フラッシュメモリー等の記憶媒体を用いることができる。なお、本実施形態においては、第1の無線方式、第1のSSID、第1の送信出力、第2の無線方式、第2のSSID及び第2の送信出力の設定を無線部117において記憶する場合を説明するが、第1の無線方式、第1のSSID、第1の送信出力、第2の無線方式、第2のSSID及び第2の送信出力の設定の記憶は、例えばコマンド実行部116等他の構成において行うようにしてもよい。
【0035】
無線部117は、第1の無線方式に基づく無線通信及び第2の無線方式に基づく無線通信に係る機能全般を制御する。無線部117は、送受信部121から取得した利用者端末から送信された情報をコマンド実行部から取得する。無線部117は、第1の無線方式に基づき、取得した利用者端末から送信された情報に応じて、第1無線制御部112に対して、コマンド実行部116を介してコマンドを出力する。同様に、無線部117は、第2の無線方式に基づき、取得した利用者端末から送信された情報に応じて、第2無線制御部に対して、コマンド実行部116を介してコマンドを出力する。例えば、無線部117は、利用者端末から送信された認証要求に対して応答信号を送信するためのコマンドをコマンド実行部116を介して第1無線制御部12又は第2無線制御部114に出力する。また、無線部117は、利用者端末とのデータフレーム送受信を行う際に、データフレームの送受信を制御するコマンドを、コマンド実行部116を介して第1無線制御部12又は第2無線制御部114に出力する。
【0036】
第1受信部118は、第1の無線方式において利用者端末から送信された情報を受信する。第1受信部118は、受信した利用者端末から送信された情報を処理部120に出力する。第2受信部119は、第2の無線方式において利用者端末から送信された無線情報を受信する。第2受信部119は、受信した利用者端末から送信された情報を処理部120に出力する。
【0037】
処理部120は、第1受信部118から出力された利用者端末から送信された情報を取得するとともに、第2受信部119から出力された利用者端末から送信された情報を取得する。利用者端末から送信された情報には、利用者端末を識別する識別情報が含まれる。利用者端末を識別する識別情報は、例えば、利用者端末の契約者固有IDである。契約者固有IDとは、利用者端末の製造番号、利用者端末の個体を識別する情報、利用者のID、ネットワーク契約のID等である。処理部120は、取得した識別情報に基づき、利用者端末が第1領域にあるか、及び第2領域にあるかを判断することができる。ここで、利用者端末が第1領域にあるか又は第2領域にあるかの情報を領域情報という。処理部120は、取得した識別情報と領域情報を、送受信部121を介してサービス提供装置2に出力する。
【0038】
送受信部121は、処理部120から取得された利用者端末から送信された情報を、コマンド実行部116又はサービス提供装置2に出力する。例えば、送受信部121は、利用者端末から取得した情報が認証要求等の無線通信の通信方法に関する情報である場合、取得した情報をコマンド実行部116に出力する。一方、送受信部121は、利用者端末から取得した情報が上述のような利用者端末の識別情報や領域情報である場合、取得した情報をサービス提供装置2に出力する。また、送受信部121は、サービス提供装置2から取得した情報をコマンド実行部116に対して出力する。サービス提供装置2から取得する情報は、例えば、利用者端末に対して送信する情報である。
【0039】
サービス提供装置2は、利用者端末にサービスを提供する装置である。サービス提供装置2は、無線通信装置1と通信可能に接続されている。サービス提供装置2は、例えば、クラウド環境にあるサーバである。サービス提供装置2は、ネットワークで接続された1又は複数のサーバによって構成されてもよい。
【0040】
サービス提供装置2は、利用者端末の情報に関するデータベースを有する。サービス提供装置2が有するデータベースには、利用者端末の識別情報に紐付いた利用者に関する情報を記憶しておくことができる。利用者に関する情報とは、例えば、利用者端末(利用者端末を保持した利用者)が第1領域又は第2領域に入った日時の履歴、特定のWebサイトにおける利用者の商品購入履歴等である。
【0041】
サービス提供装置2は、送受信部121を介して、第1領域又は第2領域に入った利用者端末の識別情報を取得する。サービス提供装置2は、取得した識別情報に基づき、利用者端末に送信する情報を送受信部121及びコマンド実行部116を介して第1無線制御部112又は第2無線制御部114に出力する。サービス提供装置2は、利用者端末に送信する情報をデータベースに記憶された利用者端末の情報に基づき選択するようにしてもよい。
【0042】
例えば、利用者端末が、第1領域の外側から第1領域の内側に入った場合、サービス提供装置2は、データベースに記憶された利用者端末の情報に基づき、第1領域にある利用者端末に対して、第1領域に対応したサービスを提供する。第1領域に対応したサービスとは、例えば、第1領域にある利用者端末に対して、第1領域への過去の訪問回数に応じた特典に関する情報を第1無線制御部112から無線送信するサービスである。また、サービス提供装置2は、第1無線制御部112から第2領域への移動を促す情報を無線送信してもよい。
【0043】
また、例えば、利用者端末が、第2領域の外側から第2領域の内側に入った場合、サービス提供装置2は、データベースに記憶された利用者端末の情報に基づき、第2領域にある利用者端末に対して、第2領域に対応したサービスを提供する。第2領域に対応したサービスとは、例えば、第2領域にある利用者端末に対して、特定の商品の購入を促す情報を無線送信するサービスである。
【0044】
サービス提供装置2は、利用者端末が第1領域又は第2領域にあるときに、データベースに記憶された利用者端末の情報に基づき、図示しないデジタルサイネージから所定の表示を出力したりスピーカから所定の音声を出力したりするようにしてもよい。
【0045】
次に、本実施形態における無線部117の機能構成を説明する。
図3は、本実施形態における無線部117の機能構成の一例を示す図である。
【0046】
図3において、無線部117は、制御部1170、無線方式記憶部1171、送信出力記憶部1172及び識別設定記憶部1173の各機能を有する。
【0047】
図3に示す、無線部117の、制御部1170、無線方式記憶部1171、送信出力記憶部1172及び識別設定記憶部1173の各機能は、コンピュータで実行されるプログラム(ソフトウェア)において実現することができる。但し、無線部117の上記機能のいずれか1以上の機能はハードウェアにおいて実現されてもよい。また、
図3において無線部117の上記各機能は、それぞれ1つの機能ブロックとして説明するが、複数の機能を1の機能ブロックで実現するようにしてもよい。同様に、無線部117の上記各機能は、複数の機能ブロックで実現するようにしてもよい。
【0048】
制御部1170は、無線部117における上述した動作を制御する。すなわち、制御部117は、コマンド入力部115から入力されたコマンドにおいて設定される第1の無線方式、第1のSSID、第1の送信出力、第2の無線方式、第2のSSID及び第2の送信出力の設定を無線部117の設定をコマンド実行部116から取得して、第1の無線方式及び第2の無線方式を無線方式記憶部1171に記憶し、第1の送信出力及び第2の送信出力を送信出力記憶部1172に記憶し、さらに第1のSSID及び第2のSSIDを識別設定記憶部1173に記憶する。また、制御部1170は、記憶された第1の無線方式、第1のSSID及び第1の送信出力に基づき、第1の無線通信を制御し、記憶された第2の無線方式、第2のSSID及び第2の送信出力に基づき、第2の無線通信を制御する。
【0049】
無線方式記憶部1171は、コマンド入力部115から入力されるコマンドに基づき設定される、第1の無線方式と第2の無線方式を記憶する。第1の無線方式と第2の無線方式は任意の無線方式において設定される。例えば、無線方式記憶部1171は、第1の無線方式として、周波数が5GHzであるIEEE802.11aの通信方式を記憶することができる。また、無線方式記憶部1171は、第2の無線方式として、周波数が2.4GHzであるIEEE802.11gの通信方式を記憶することができる。第1の無線方式と第2の無線方式は、異なる無線方式であっても、同一の無線方式であってもよい。
【0050】
送信出力記憶部1172は、コマンド入力部115から入力されるコマンドに基づき設定される、第1送信部111から出力される無線電波の第1の送信出力と、第2送信部113から出力される無線電波の第2の送信出力を記憶する。第1の送信出力及び第2の送信出力における送信出力は、例えば、0〜100%の間で設定される。
図1で説明した第1領域の大きさ(無線通信装置1からの距離)は、第1の送信出力によって決定することができる。すなわち、第1の送信出力が大きくなると第1のSSIDを検知できる第1領域(フェンシング領域)が拡大する。同様に、第2領域の大きさは、第2の送信出力によって決定することができる。本実施形態では、第1の送信出力及び第2の送信出力は、第1領域が第2領域を包括するように設定される。
【0051】
識別設定記憶部1173は、コマンド入力部115から入力されるコマンドに基づき設定される、第1の無線方式における第1のSSIDと第2の無線方式における第2のSSIDを記憶する。SSIDは、例えば最大32文字までの英数で設定される。SSIDには、48ビットの物理アドレスを用いてもよい。第1無線制御部112は、無線部117からコマンド実行部116を介して取得した第1のSSIDを第1送信部からブロードキャストする。なお、無線部117は、利用者端末から識別設定記憶部1173に記憶した第1のSSID又は第2のSSIDに対するプローブ要求を受信した場合、プローブ応答を送信するように第1無線制御部112又は第2無線制御部114に対してコマンドを送信するようにしてもよい。
【0052】
なお、無線部117には、第1の無線方式及び第2の無線方式における他の設定を記憶するようにしてもよい。例えば、無線部117に、第1の無線方式及び第2の無線方式におけるセキュリティの設定を記憶するようにしてもよい。
また、本実施形態では、無線部117が、無線方式記憶部1171、送信出力記憶部1172及び識別設定記憶部1173を有する場合を説明したが、無線方式記憶部、送信出力記憶部又は識別設定記憶部のいずれか1以上の構成は、コマンド実行部116等の他の構成が有するようにしてもよい。
【0053】
次に、本実施形態における無線通信装置1の動作を説明する。
図4は、本実施形態における無線通信装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0054】
図4において、無線通信装置1は、利用者端末から第1のSSIDに対応した応答を受信したか否かを判断する(ステップS11)。第1送信部111は、第1領域の範囲に対して第1のSSIDを送信し、第1受信部118は、第1のSSIDに対応した応答を受信する。第1のSSIDに対応した応答を受信したか否かを判断は、例えば、処理部120において実行することができる。利用者端末から第1のSSIDに対応した応答を受信していないと判断した場合(ステップS11:NO)、無線通信装置1は、
図4に示すフローチャートの処理を終了する。
【0055】
一方、利用者端末から第1のSSIDに対応した応答を受信したと判断した場合(ステップS11:YES)、無線通信装置1は、利用者端末から第2のSSIDに対応した応答を受信したか否かを判断する(ステップS12)。第2送信部113は、第2領域の範囲に対して第2のSSIDを送信し、第2受信部119は、第2のSSIDに対応した応答を受信する。第2のSSIDに対応した応答を受信したか否かを判断は、例えば、処理部120において実行することができる。
【0056】
利用者端末から第2のSSIDに対応した応答を受信しないと判断した場合(ステップS12:NO)、無線通信装置1は、利用者端末に対して第1領域に対応したサービスを提供する(ステップS14)。ステップS12において利用者端末から第2のSSIDに対応した応答を受信しない場合とは、利用者端末が第1領域の内側であって第2領域の外側にあることを示す。無線通信装置1は、利用者端末から取得した識別情報をサービス提供装置2に送信し、識別情報に基づき選択された第1領域に対応したサービスをサービス提供装置2から取得して利用者端末に送信することできる。
【0057】
一方、利用者端末から第2のSSIDに対応した応答を受信したと判断した場合(ステップS12:YES)、無線通信装置1は、利用者端末に対して第2領域に対応したサービスを提供する(ステップS13)。ステップS12において利用者端末から第2のSSIDに対応した応答を受信した場合とは、利用者端末が第1領域に包括される第2領域の内側にあることを示す。無線通信装置1は、利用者端末から取得した識別情報をサービス提供装置2に送信し、識別情報に基づき選択された第2領域に対応したサービスをサービス提供装置2から取得して利用者端末に送信することできる。
【0058】
無線通信装置1は、ステップS13の処理を実行した後、又はステップS14の処理を実行した後、
図4に示すフローチャートの処理を終了する。
【0059】
なお、無線通信装置1は、利用者端末の移動方向を検出することができる。例えば、利用者端末が第2領域の外側であって第1領域の内側にある場合、利用者端末が第1領域の外側から移動したのか、第2領域に内側から移動したのかの移動の方向を検出することができる。無線通信装置1は、検出した利用者端末の移動方向に応じて、提供するサービスを異なるものとしてもよい。例えば、利用者端末が第1領域の外側から移動した場合、無線通信装置1は、利用者端末に対して、「いらっしゃいませ」等のメッセージを送信する等の第2領域への移動を促すサービスを提供してもよい。一方、利用者端末が第2領域の内側から移動した場合、無線通信装置1は、利用者端末に対して、「またのお越しをお待ちしております」等のメッセージを送信して第2領域への再訪を促すサービスを提供してもよい。無線通信装置1は、利用者端末の移動方向に応じたサービスを提供することができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の無線通信装置は、第1送信部と、第2送信部と、第1受信部と、第2受信部とを有することにより、複数のフェンシング領域を1箇所の無線通信装置から形成する、無線通信装置を提供することができる。
【0061】
なお、本実施形態において、無線通信装置1は、第1の識別情報を無線で送信して、第1の識別情報を利用者端末によって検知可能な第1の領域を形成する第1送信部と、第2の識別情報を無線で送信して、第2の識別情報を利用者端末によって検知可能な、第1の領域に包括される第2の領域を形成する第2送信部とを備える場合を説明したが、第1送信部と第2送信部とは、別々の装置で構成されるようにしてもよい。すなわち、本実施形態における、無線通信装置は、第1送信部を有する第1の無線通信装置と第2送信部を有する第2の無線通信装置を備えた無線通信システムにおいて実現されてもよい。無線通信装置が第1の無線通信装置と第2の無線通信装置を備える場合、
図2を用いて説明した、コマンド入力部115、コマンド実行部116、無線部117、処理部120又は送受信部121等の機能は、第1の無線通信装置と第2の無線通信装置のいずれか一方に備わるようにすることができる。
【0062】
また、本実施形態においては、無線通信装置1は、第1領域と第2領域の2つのフェンシング領域を形成する場合を説明したが、無線通信装置1は、3つ以上のフェンシング領域を形成するものであってもよい。例えば、無線通信装置1は、第2領域に包括された第3領域を形成し、第3領域において利用者端末に所定のサービスを提供するようにしてもよい。無線通信装置1は、形成するフェンシング領域の数に応じて、送信部、無線制御部及び受信部を備えることにより、任意の数のフェンシング領域を形成することができる。
【0063】
また、無線通信装置1は、形成するフェンシング領域を、曜日、時間等の所定の条件において変更するようにしてもよい。例えば、無線通信装置1は、平日においては第1領域と第2領域を形成し、休日等においては第1領域と上記第3領域を形成するようにしてもよい。
【0064】
また、本実施形態において第1送信部は、第1の領域を第1の識別情報の送信位置を中心に形成し、第2送信部は、第2の領域を、第1の識別情報の送信位置と略同一の位置を中心に形成する場合を説明したが、第1領域が第2領域を包括するものであれば、第1の識別情報の送信位置と第2の識別情報の送信位置は略同一でなくてもよい。例えば、第1の領域又は第2の領域の大きさに対して、第1の識別情報の送信位置と第2の識別情報の送信位置の距離が十分小さい場合、第1領域が第2領域を包括するようにすることができる。
【0065】
また、本実施形態において、識別設定記憶部1173は、第1の識別情報の設定と第2の識別情報の設定とを記憶する場合を説明したが、第1の識別情報の設定と第2の識別情報の設定とを別の記憶部にそれぞれ記憶するようにしてもよい。同様に、送信出力記憶部1172は、第1の識別情報の送信出力の設定と、第2の識別情報の送信出力の設定とを記憶する場合を説明したが、第1の識別情報の送信出力の設定と第2の識別情報の送信出力の設定とを別の記憶部にそれぞれ記憶するようにしてもよい。
【0066】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信方法であって、第1送信ステップにおいて、第1の領域を、第1の識別情報の送信位置を中心に形成し、第2送信ステップにおいて、第2の領域を、第1の識別情報の送信位置と略同一の位置を中心に形成する。
【0067】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信方法であって、第1の識別情報の設定と、第2の識別情報の設定とを記憶する識別設定記憶ステップをさらに含み、第1送信ステップにおいて、記憶された第1の識別情報の設定に基づき第1の識別情報を送信し、第2送信ステップにおいて、記憶された第2の識別情報の設定に基づき第2の識別情報を送信する。
【0068】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信方法であって、第1の識別情報の送信出力の設定と、第2の識別情報の送信出力の設定とを記憶する送信出力記憶ステップをさらに含み、第1送信ステップにおいて、記憶された第1の識別情報の送信出力の設定に基づき第1の識別情報を送信し、第2送信ステップにおいて、記憶された第2の識別情報の送信出力の設定に基づき第2の識別情報を送信する。
【0069】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信方法であって、第1送信ステップにおいて、第1の領域を、第1の識別情報の送信位置を中心に形成し、第2送信ステップにおいて、第2の領域を、第1の識別情報の送信位置と略同一の位置を中心に形成する。
【0070】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信方法であって、第1の識別情報の設定と、第2の識別情報の設定とを記憶する識別設定記憶ステップをさらに含み、第1送信ステップにおいて、記憶された第1の識別情報の設定に基づき第1の識別情報を送信し、第2送信ステップにおいて、記憶された第2の識別情報の設定に基づき第2の識別情報を送信する。
【0071】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信方法であって、第1の識別情報の送信出力の設定と、第2の識別情報の送信出力の設定とを記憶する送信出力記憶ステップをさらに含み、第1送信ステップにおいて、記憶された第1の識別情報の送信出力の設定に基づき第1の識別情報を送信し、第2送信ステップにおいて、記憶された第2の識別情報の送信出力の設定に基づき第2の識別情報を送信する。
【0072】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信プログラムであって、第1の識別情報の送信出力の設定と、第2の識別情報の送信出力の設定とを記憶する送信出力記憶処理をさらにコンピュータに実行させて、第1送信処理において、記憶された第1の識別情報の送信出力の設定に基づき第1の識別情報を送信し、第2送信処理において、記憶された第2の識別情報の送信出力の設定に基づき第2の識別情報を送信する。
【0073】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信プログラムであって、第1送信処理において、第1の領域を、第1の識別情報の送信位置を中心に形成し、第2送信処理において、第2の領域を、第1の識別情報の送信位置と略同一の位置を中心に形成する。
【0074】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信プログラムであって、第1の識別情報の設定と、第2の識別情報の設定とを記憶する識別設定記憶処理をさらにコンピュータに実行させて、第1送信処理において、記憶された第1の識別情報の設定に基づき第1の識別情報を送信し、第2送信処理において、記憶された第2の識別情報の設定に基づき第2の識別情報を送信する。
【0075】
また、本発明の一態様は、上記の無線通信プログラムであって、第1の識別情報の送信出力の設定と、第2の識別情報の送信出力の設定とを記憶する送信出力記憶処理をさらにコンピュータに実行させて、第1送信処理において、記憶された第1の識別情報の送信出力の設定に基づき第1の識別情報を送信し、第2送信処理において、記憶された第2の識別情報の送信出力の設定に基づき第2の識別情報を送信する。
【0076】
上述した実施形態における無線通信装置1の各機能は、コンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0077】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。