特許第6205445号(P6205445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205445
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】転倒防止装置、及びその取り付け方法
(51)【国際特許分類】
   A47B 97/00 20060101AFI20170914BHJP
   F16F 9/00 20060101ALI20170914BHJP
   F16F 9/06 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   A47B97/00 D
   F16F9/00 A
   F16F9/06
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-50410(P2016-50410)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-164074(P2017-164074A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年7月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関根 伸一
(72)【発明者】
【氏名】太田 晶久
(72)【発明者】
【氏名】畦 将也
(72)【発明者】
【氏名】豊内 敦士
(72)【発明者】
【氏名】石原 幸子
(72)【発明者】
【氏名】飯田 知佳
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5864068(JP,B1)
【文献】 特開昭60−041906(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3101569(JP,U)
【文献】 特許第2578169(JP,B2)
【文献】 国際公開第2016/031515(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/021487(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0027954(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 97/00
F16F 9/00
F16F 9/06
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液体及び圧縮ガスが封入されたシリンダ並びに前記シリンダ内に摺動自在に収納されたピストンを有し、設置面上に設置された物品の上面と天井との間に取り付けられるダンパを備え、
前記ピストンは、前記ダンパを前記物品の上面と天井との間に取り付ける時には、前記作動液体よりも上方に封入された前記圧縮ガス内に収納されていることを特徴とする転倒防止装置。
【請求項2】
前記ピストンは、前記物品が傾いて前記ダンパが所定長さ収縮したときには、前記作動液体内に移動することを特徴とする請求項1記載の転倒防止装置。
【請求項3】
収縮した状態であり且つ前記ピストンが前記作動液体よりも上方に封入された前記圧縮ガス内に収納された状態の前記ダンパを、前記物品の上面と前記天井との間に取り付ける工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の転倒防止装置の取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転倒防止装置、及びその取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の転倒防止装置を開示している。この転倒防止装置はダンパを備えている。ダンパは床面上に設置された家具の上面と天井との間に取り付けられている。ダンパの両端部には一対のベース部が連結されている。一対のベース部はダンパの両端部の夫々を回動軸周りに回動自在に軸支している。一方のベース部は家具の上面に当接し、他方のベース部は天井に当接している。このため、この転倒防止装置は、地震等の揺れによってダンパの回動方向と平行な方向に家具が傾くと、各ベース部に対してダンパが回動軸周りに回動し、各ベース部が家具の上面と天井とに当接した状態を維持することができる。よって、この転倒防止装置は、ダンパの減衰力を家具に作用させることができ、家具の傾きを抑制して家具の転倒を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−6330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の転倒防止装置は、家具の上面と天井との間に取り付ける際、ダンパの伸長方向に働く圧縮ガスの膨張力に抗して収縮させつつ、所望する取付け姿勢になるように取り付けなければならない。また、ダンパを収縮させる際には、ダンパの減衰力となる作動油(作動液体)の抗力が生じる。これらの力に抗して、家具の上方で作業者がダンパを収縮させながら取り付ける作業は困難性を有する。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、物品の上面と天井との間に容易に取り付けることができる転倒防止装置、及びその取り付け方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の転倒防止装置は、ダンパを備えている。ダンパは設置面上に設置された物品の上面と天井との間に取り付けられる。ダンパはシリンダ及びピストンを有している。シリンダには作動液体及び圧縮ガスが封入されている。ピストンはシリンダ内に摺動自在に収納されている。そして、ピストンは、ダンパを物品の上面と天井との間に取り付ける時には、作動液体よりも上方に封入された圧縮ガス内に収納されている。
【0007】
この転倒防止装置は、ピストンが、作動液体及び圧縮ガスが封入されたシリンダ内に摺動自在に収納されている。圧縮ガスは、作動液体よりも上方に封入されている。そして、ダンパを物品の上面と天井の間に取り付ける時には、ピストンは、圧縮ガス内に収納されている。このような構成により、取り付け時には、ダンパは、ピストンが作動液体内にない状態とされる。このため、作動液体による抗力が生じない状態で、ダンパを収縮させることができる。その結果、ピストンが作動液体内に収納された状態よりも容易にダンパを収縮させることができる。
【0008】
したがって、本発明の転倒防止装置は、物品の上面と天井との間に容易に取り付けることができる。
【0009】
本発明の転倒防止装置において、ピストンは、物品が傾いてダンパが所定長さ収縮したときには、作動液体内に移動し得る。この場合、ダンパが所定長さ収縮されるまでは、ピストンは圧縮ガス内に収納されている。このため、取り付けが容易である。そして、物品の傾きが生じ、ダンパが所定長さ収縮すると、ピストンが作動液体内に収納される。これにより、作動液体による減衰力を発生させることができる。その結果、物品の傾きが好適に抑制され、転倒を防止することができる。
【0010】
なお、上記「所定長さ」は特に限定されない。この「所定長さ」を小さく設定すると、ピストンは小さな収縮量で作動液体内に移動するので好ましい。
【0011】
本発明の転倒防止装置の取り付け方法は、ダンパを、物品の上面と天井との間に取り付ける工程を含む。この時、ダンパは、収縮した状態であり且つピストンが作動液体よりも上方に封入された圧縮ガス内に収納された状態である。すなわち、ダンパは、ピストンが作動液体内にない状態で取り付けられる。このようなダンパは、収縮状態にする際には、作動液体による抗力が生じない。このため、ピストンが作動液体内に収納された状態よりも小さな力でダンパを収縮させることができる。
【0012】
したがって、本発明の転倒防止装置の取り付け方法は、物品の上面と天井との間に容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1の転倒防止装置を模式的に示す図である。
図2】実施形態1の転倒防止装置を家具の上面と天井との間に取り付けた状態を示す側面図である。
図3】実施形態1の転倒防止装置のダンパ及び第1ベース部を示す部分断面図である。
図4】実施形態1の転倒防止装置の取り付けた状態における要部を模式的に示す断面図である。
図5】実施形態1の転倒防止装置において、ダンパが収縮してピストンが作動油領域に移動した状態を示す側面図である。
図6】実施形態1の転倒防止装置において、ダンパが収縮してピストンが作動油領域に移動した状態における要部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の転倒防止装置、及びその取り付け方法を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
<実施形態1>
実施形態1の転倒防止装置1は、図1及び図2に示すように、ダンパ10を備えている。ダンパ10は、家具F(本発明に係る物品として例示する。)の上面と天井Cとの間に取り付けられる。ダンパ10の両端には一対のベース部21,22が夫々連結されている。ベース部21,22は、一方のベース部21が家具Fの上面に当接し、他方のベース部22が天井Cに当接する。
【0016】
転倒防止装置1は、図2に示すように、家具Fの上面と天井Cとの間に少なくとも1個以上が取り付けられる。転倒防止装置1は、地震等の揺れが生じて家具Fが傾いた際に、ダンパ10の減衰力を利用して家具Fの転倒を防止する。家具Fは、設置面となる床面(図示せず)から鉛直方向に伸びた壁面Wに背面を対向させて床面上に設置されている。また、この家具Fは、直方体形状をなしており、正面(図2における右側面)に図示しない扉や引き出し等を有し、内部に衣類や装身具等を収納することができる。家具Fは、水平断面形状が左右方向(図2において奥行き方向)に長い長方形状である。この家具Fは、転倒防止装置が取り付けられていない場合、地震等の揺れによって、前方向(図2において右方向)に傾いて転倒するおそれがある。
【0017】
ダンパ10は、シリンダ11、及びピストン14を有している。また、ダンパ10は、ロッドガイド12、ロッド13、及び減衰部15を有している。シリンダ11は有底筒状に形成されている。シリンダ11には作動油(本発明に係る作動液体として例示する。)及び圧縮ガスが封入されている。ロッドガイド12は、シリンダ11の開口部を封鎖している。ロッド13は、ロッドガイド12に摺動自在に挿通されており、その先端側がシリンダ11の外部へ突出している。ピストン14は、シリンダ11内に摺動自在に収納されている。ピストン14は、シリンダ11の内部を、ロッド13の基端部が収納されているロッド側圧力室11Bと、反ロッド側圧力室11Cと、に仕切るように設けられている。ピストン14には、ロッド13の基端部が接続されている。
【0018】
減衰部15は、ロッド側圧力室11Bと反ロッド側圧力室11Cとの間を移動する流体の流れに抵抗を付与する。減衰部15は、オリフィス15Aと逆止弁15Bとを有している。オリフィス15A及び逆止弁15Bは、ロッド側圧力室11B及び反ロッド側圧力室11Cを連通する流路に夫々設けられている。オリフィス15Aは、双方向において流体の流れに抵抗を与える。逆止弁15Bは、ロッド側圧力室11Bから反ロッド側圧力室11Cへの流体の流れを許容し、その逆の流れを阻止する。オリフィス15A及び逆止弁15Bは、夫々ピストン14に配されている。
【0019】
ダンパ10は伸長動作時に発生する減衰力が収縮動作時に発生する減衰力よりも小さい圧効きダンパである。ダンパ10の伸長動作とは、シリンダ11からロッド13の突出長さ及びダンパ10の長さが長くなっていく動作を意味する。また、ダンパ10の収縮動作とは、シリンダ11からロッド13の突出長さ及びダンパ10の長さが短くなっていく動作を意味する。また、ダンパ10は、シリンダ11に封入した圧縮ガスの膨張力が伸張方向に働いている。
【0020】
減衰部15によるダンパ10の減衰力が発生するメカニズムは、以下の通りである。オリフィス15Aは、ダンパ10の伸張及び収縮の両動作に伴うロッド側圧力室11Bと反ロッド側圧力室11Cとの間の作動油の流れに抵抗を付与する。逆止弁15Bは、ロッド側圧力室11Bから反ロッド側圧力室11Cへの作動油の流れは許容するが、その逆の流れは阻止する。このため、ダンパ10は、伸長動作時、ロッド側圧力室11Bから反ロッド側圧力室11Cへの作動油の流路経路が、オリフィス15Aと逆止弁15Bの両方の経路となる。一方、収縮動作時には、反ロッド側圧力室11Cからロッド側圧力室11Bへの作動油の流路経路がオリフィス15Aのみとなる。このため、ダンパ10は伸長動作時に発生する減衰力が収縮動作時に発生する減衰力よりも小さくなる。
【0021】
一対のベース部21,22は、シリンダ11の底部に連結される第1ベース部21と、ロッド13の先端部に連結される第2ベース部22である。第1ベース部21は、家具Fの上面に当接する。第2ベース部22は、天井Cに当接する。第1ベース部21及び第2ベース部22は、ダンパ10に対して回動自在に夫々設けられている。第1ベース部21及び第2ベース部22は略同じ形態及び構造とされている。
【0022】
また、ダンパ10は、両端に設けられた2個のジョイント部18を有している。各ジョイント部18は、図3に示すように、平板状の金具を折り曲げて形成されている。また、各ジョイント部18はシリンダ11の底部とロッド13の先端部に接続されている。各ジョイント部18はダンパ10の軸線に直交する方向に貫通した貫通孔18Aが形成されている。
【0023】
また、第1ベース部21及び第2ベース部22は、ベース部本体23、回動軸部材であるボルト24及びナット25、及びブッシュ26をそれぞれ有している。上述のように、第1ベース部21及び第2ベース部22は略同じ形態及び構造とされているので、以下の説明では第1ベース部21を例示して説明する。
【0024】
図3に示すように、ベース部本体23は空洞である。ベース部本体23は、挿通孔23Aを有している。回動軸部材はこの挿通孔23Aに挿通される。
回動軸部材は、ベース部本体23の挿通孔23A一方から挿入されたボルト24と、このボルト24の軸部24Aにねじ込まれたナット25とから構成されている。ボルト24の中心軸が各ベース部21,22におけるダンパ10の回動軸になる。
【0025】
ブッシュ26は、図3に示すように、略円筒状である。ブッシュ26は弾性体である。ブッシュ26の長さは、ベース部本体23に取り付けられたときに、その両端面とベース部本体23との間に僅かに隙間が生じる長さとされている。ブッシュ26は中央部の外周面を一周した凹部26Aが形成されている。この凹部26Aの外径がダンパ10のジョイント部18に形成された貫通孔18Aの内径に略等しい。ブッシュ26は凹部26Aの両端から立ち上がった部分の外径がダンパ10のジョイント部18に形成された貫通孔18Aの内径よりも大きい。また、ブッシュ26は両端部の外周面26Bが外方向に縮径している。このため、ブッシュ26はダンパ10のジョイント部18に形成された貫通孔18Aに弾性変形させながら挿入される。そして、ブッシュ26は、貫通孔18Aに凹部26Aが嵌まり込んで、ダンパ10のジョイント部18に取り付けられる。
【0026】
ブッシュ26は中央部の内径がボルト24の軸部24Aの外径よりも僅かに大きい。また、ブッシュ26は両端部の内周面26Cが外方向に拡径している。このため、このブッシュ26はボルト24の軸部24A周りに回動自在である。また、このブッシュ26は、拡径した両端部の内周面26Cがボルト24の軸部24Aの外周面に当接する範囲で、ボルト24の軸部24Aに対して傾くことができる。つまり、ブッシュ26をジョイント部18に取り付けたダンパ10は、ボルト24の軸部24A周りに回動自在であり、回動方向に交差する方向に揺動自在である。さらに、ブッシュ26が弾性変形することによって、ダンパ10は回動方向に交差する方向に、より大きく揺動することができる。
【0027】
転倒防止装置1のピストン14は、ダンパ10を家具Fの上面と天井Cとの間に取り付ける時には、作動油よりも上方に封入された圧縮ガス内に収納されている。すなわち、転倒防止装置1は、取り付けられる時には、図2及び図4に示すように、ピストン14がシリンダ11内の圧縮ガス領域16に位置している。また、転倒防止装置1は、家具Fが傾いてダンパ10が所定長さs収縮したときには、ピストン14が作動油内に移動する。すなわち、転倒防止装置1は、地震の揺れ等により家具Fが傾いてダンパ10が所定長さs収縮したときには、図5及び図6に示すように、ピストン14がシリンダ11内の圧縮ガス領域16から作動油領域17内に移動する。
【0028】
このような構成を有する転倒防止装置1は、次に示すようにして家具Fの上面と天井Cとの間に取り付けられる。
【0029】
最初に、ダンパ10を収縮させる。ダンパ10を収縮させた時、ピストン14は作動油よりも上方に封入された圧縮ガス内に収納された状態である。この状態で、ダンパ10を家具Fの上面と天井Cとの間に取り付ける。具体的には、ダンパ10の下端部に連結された第1ベース部21を家具Fの上面に当接させて載置する。ダンパ10は、鉛直方向に対して15°〜20°の傾斜角度になるように取り付ける。そして、ダンパ10の傾斜角度を維持しつつダンパ10を伸張させ、第2ベース部22を天井Cに当接させる。なお、ベース部21,22の位置調整は、ダンパ10の回動方向と家具Fの傾く方向とが略平行になるように行う。取り付けの間、ピストン14は、作動油領域17内には移動せず、圧縮ガス領域16内のみで摺動する。このため、ピストンが作動油内に収納された状態よりも小さな負荷でダンパ10を収縮させることができる。
【0030】
また、取り付け後には、圧縮ガスの膨張力によりロッド13が突出してダンパ10が伸張し、家具Fの上面と天井Cとの間で突っ張る力が作用している。これにより、調整済みのダンパ10の角度や各ベース部21,22の位置が好適に保持される。また、上述のように、ダンパ10の収縮動作がピストン14の圧縮ガス領域16内での摺動により行われることから、このダンパ10の伸張動作においても、ピストン14の摺動は圧縮ガス領域16内で行われる。したがって、取り付け後の転倒防止装置1では、ピストン14は、圧縮ガス領域16内に位置する。
【0031】
次に、転倒防止装置1の動作について説明する。
転倒防止装置1は、ダンパ10が所定長さs収縮すると、圧縮ガス領域16から作動油領域17へ、ピストン14が移動するように取り付けられている。地震等による家具Fの揺れにより、ダンパ10が所定長さs以上に収縮した場合には、転倒防止装置1は、シリンダ11内のピストン14が圧縮ガス領域16から作動油領域17に移動する。これにより、ダンパ10では、作動油による減衰力が生じる。このため、家具Fの揺れが効果的に減衰される。一方、家具Fの揺れが比較的小さく、ダンパ10の収縮量が所定長さs以下である場合には、転倒防止装置1は、シリンダ11内のピストン14が圧縮ガス領域16内のみで摺動する。
【0032】
以上説明したように、実施形態1の転倒防止装置1は、ダンパ10を備えている。ダンパ10は設置面上に設置された家具Fの上面と天井Cとの間に取り付けられる。ダンパ10はシリンダ11及びピストン14を有している。シリンダ11には作動油及び圧縮ガスが封入されている。ピストン14は、シリンダ11内に摺動自在に収納されている。そして、ピストン14は、ダンパ10を家具Fの上面と天井Cとの間に取り付ける時には、作動油よりも上方に封入された圧縮ガス内に収納されている。
【0033】
この転倒防止装置1は、ピストン14が、作動油及び圧縮ガスが封入されたシリンダ11内に摺動自在に収納されている。作動油は、圧縮ガスよりも下方に封入されている。そして、ダンパ10を家具Fの上面と天井Cの間に取り付ける時には、ピストン14は、圧縮ガス内に収納されている。このような構成により、取り付け時には、ダンパ10は、ピストン14が作動油内にない状態とされる。このため、作動油による抗力が生じない状態で、ダンパ10を収縮させることができる。その結果、ピストン14が作動油内に収納された状態よりも小さな力でダンパ10を収縮させることができる。
【0034】
したがって、実施形態1の転倒防止装置1は、家具Fの上面と天井との間に容易に取り付けることができる。
【0035】
また、実施例1の転倒防止装置1では、ピストン14は、家具Fが傾いてダンパ10が所定長さ収縮したときには、作動油内に移動する。換言すると、ダンパ10が所定長さs収縮されるまでは、ピストン14は圧縮ガス内に収納されている。そして、物品の傾きが生じ、ダンパ10が所定長さs収縮すると、ピストン14が作動油内に収納される。これにより、作動油による減衰力が発生する。その結果、家具Fの傾きが好適に抑制され、転倒を防止することができる。
【0036】
実施形態1の転倒防止装置1の取り付け方法は、ダンパ10を、家具Fの上面と天井Cとの間に取り付ける工程を含む。この時、ダンパ10は、収縮した状態であり且つピストン14が圧縮ガス内に収納された状態である。すなわち、ダンパ10は、ピストン14が作動油内にない状態で取り付けられる。このようなダンパ10を収縮状態にする際には、作動油による抗力が生じない。このため、ピストン14が作動油内に収納された状態よりも小さな力でダンパ10を収縮させることができる。
【0037】
したがって、実施形態1の転倒防止装置1の取り付け方法は、家具Fの上面と天井Cとの間に転倒防止装置1を容易に取り付けることができる。
【0038】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態1に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1では、転倒防止装置を家具に対して取り付けたが、これに限定されず、例えば、複数の寝台を上下方向に連結したベッド、大型テレビ、冷蔵庫、書棚、ショーケース、サーバーラック等、地震等の揺れによって転倒するおそれのある他の物品に対して取り付けてもよい。
(2)実施形態1では、転倒防止装置を壁面に背面を対向させて床面上に載置された家具に対して取り付けたが、壁面に隣接させずに床面上に載置された家具等に対して取り付けてもよい。
(3)実施形態1では、圧効きダンパを利用したが、これに限定されず、例えば、両効きダンパ、伸効きダンパであってもよい。これらを用いる場合、ベース部を物品や天井に固定する、取り付け位置や取り付け個数、ダンパの傾斜角度、傾斜方向に注意するなど、ダンパの種類に応じて適切に取り付ける必要がある。
(4)実施形態1では、圧縮ガスの膨張力でダンパを伸張させたが、これに限定されず、例えば、圧縮コイルばね等の他の手段又はそれらの組み合わせ等により付勢力を更に付与してダンパを伸張させるようにしてもよい。
(5)実施形態1では、シリンダ内に封入する作動液体として作動油を採用したが、これに限定されず、所定の減衰力を発生させるものであれば、他の液体を採用してもよい。
【符号の説明】
【0039】
C…天井、F…家具(物品)、W…壁面、1…転倒防止装置、10…ダンパ、11…シリンダ、11B…ロッド側圧力室、11C…反ロッド側圧力室、12…ロッドガイド、13…ロッド、14…ピストン、15…減衰部(15A…オリフィス、15B…逆止弁)、16…圧縮ガス領域、17…作動油(作動液体)領域、18…ジョイント部、18A…貫通孔、21,22…ベース部(21…第1ベース部、22…第2ベース部)、23…ベース部本体、23A…挿通孔、24…ボルト、24A…軸部、25…ナット、26…ブッシュ、26A…凹部、26B…外周面、26C…内周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6