特許第6205462号(P6205462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6205462
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】転倒防止装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 97/00 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   A47B97/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-122435(P2016-122435)
(22)【出願日】2016年6月21日
【審査請求日】2016年11月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 拓仁
(72)【発明者】
【氏名】河野 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】勝呂 雅士
(72)【発明者】
【氏名】安藤 智紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 将吾
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−006330(JP,A)
【文献】 特開平06−078829(JP,A)
【文献】 特開2002−242529(JP,A)
【文献】 特開2005−203237(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0017625(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 97/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の上面と天井との間に取り付けられる転倒防止装置であって、
伸縮して減衰力を発揮するダンパと、
前記ダンパの伸縮に伴って相対的に遠ざかったり近づいたりする第1アセンブリ及び第2アセンブリと、
前記第1アセンブリ及び前記第2アセンブリのいずれか一方に取り付けられた滑車と、
前記第1アセンブリ及び前記第2アセンブリのいずれか他方に一端が取り付けられ、前記滑車に掛け渡された索状物と、
を備えていることを特徴とする転倒防止装置。
【請求項2】
前記第1アセンブリ及び前記第2アセンブリのいずれか他方に取り付けられ、前記索状物を巻き取るウインチを備えていることを特徴とする請求項1記載の転倒防止装置。
【請求項3】
前記ダンパは、シリンダ、及び前記シリンダの一端側から突出したロッドを有しており、
前記第1アセンブリは、前記シリンダ、及び前記シリンダの他端に連結され、前記物品の上面に当接する第1ベース部を有しており、
前記第2アセンブリは、前記ロッド、前記ロッドの先端に連結され、前記天井に当接する第2ベース部、及び前記ロッドに取り付けられたロッドカバーを有しており、
前記滑車は前記第1ベース部に取り付けられており、
前記索状物は前記ロッドカバーに一端が取り付けられていることを特徴とする請求項2記載の転倒防止装置。
【請求項4】
前記ウインチは前記第2ベース部に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の転倒防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転倒防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の転倒防止装置を開示している。この転倒防止装置は伸縮して減衰力を発生するダンパと一対のベース部とを備えている。転倒防止装置は床面上に設置された家具の上面と天井との間に取り付けられている。一対のベース部はダンパの両端部の夫々を回動軸周りに回動自在に軸支している。一方のベース部は家具の上面に当接し、他方のベース部は天井に当接している。このため、この転倒防止装置は、地震等の揺れによって家具が前方に傾くと、各ベース部に対してダンパが回動軸周りに回動して伸縮し、各ベース部が家具の上面と天井とに当接した状態を維持することができる。よって、この転倒防止装置は、ダンパの減衰力により、家具の傾きを抑制して家具の転倒を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−6330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の転倒防止装置は、家具の上面と天井との間に、取り付ける際又は取り外す際には、人の力によりダンパを縮める必要があり、ダンパの種類によっては相当な力を要し、作業性の改善が求められていた。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、転倒防止装置を取り付ける際又は取り外す際の作業性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の転倒防止装置は、物品の上面と天井との間に取り付けられる転倒防止装置である。転倒防止装置は、伸縮して減衰力を発揮するダンパと、ダンパの伸縮に伴って相対的に遠ざかったり近づいたりする第1アセンブリ及び第2アセンブリと、第1アセンブリ及び第2アセンブリのいずれか一方に取り付けられた滑車と、第1アセンブリ及び前記第2アセンブリのいずれか他方に一端が取り付けられ、滑車に掛け渡された索状物と、を備えている。
【0007】
この転倒防止装置は、滑車が動滑車となることから、索状物を引っ張ることにより、従来の場合と比較して少ない力で、ダンパを縮めることができる。よって、転倒防止装置の取り付ける際又は取り外す際の作業性を向上できる。
【0008】
ここで、物品は、家具、書棚、冷蔵庫、ショーケース、サーバーラック、複数の寝台を上下方向に連結したベッド、大型テレビ等、地震等の揺れによって転倒するおそれのあるものが含まれる。
また、索状物とは、ロープ、ケーブル、ベルト、鎖などの柔軟性を持った長尺状のものをいう。
【0009】
本発明の転倒防止装置では、第1アセンブリ及び第2アセンブリのいずれか他方に取り付けられ、索状物を巻き取るウインチを備えていることができる。索状物をウインチで巻き取ることで、より作業性が向上する。
【0010】
本発明の転倒防止装置では、次の態様を採用することができる。ダンパは、シリンダ、及びシリンダの一端側から突出したロッドを有している。第1アセンブリは、シリンダ、及びシリンダの他端に連結され、物品の上面に当接する第1ベース部を有している。第2アセンブリは、ロッド、ロッドの先端に連結され、天井に当接する第2ベース部、及びロッドに取り付けられたロッドカバーを有している。滑車は第1ベース部に取り付けられており、索状物はロッドカバーに一端が取り付けられている。この態様では、ロッドカバーに従来の機能に加え、索状物の取り付け部としての機能を付与することで、ロッドカバーをより有効に用いることができる。
【0011】
本発明の転倒防止装置では、ウインチが第2ベース部に取り付けられている構成にできる。ウインチを、滑車のある第1ベース部に取り付けると、第1ベース部には、滑車及びウインチの取り付けスペースを確保するため、それらの配置等を考慮して複雑な構成としなければならない。本形態のように、ウインチを滑車のない第2ベース部に取り付けることで簡易な構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1の転倒防止装置を家具の上面と天井との間に取り付けた状態を示す側面図である。
図2】実施形態1の転倒防止装置の正面図である。
図3】実施形態1の転倒防止装置の部分断面図である。
図4】実施形態1の転倒防止装置のダンパが縮んだ使用状態を示す側面図である。
図5】実施形態2の転倒防止装置を家具の上面と天井との間に取り付けた状態を示す側面図である。
図6】実施形態2の第2ベース部及びロッドを示す側面図である。
図7】実施形態2の第2ベース部及びロッドを示す部分断面図である。
図8】実施形態3の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の転倒防止装置を具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
<実施形態1>
実施形態1の転倒防止装置1は、図1に示すように、家具Fの上面と天井Cとの間に取り付けられる。家具Fは床面から鉛直方向に伸びた壁面Wに背面を対向させて床面上に設置されている。また、この家具Fは、直方体形状であり、図示しない扉や引き出し等を有し、内部に衣類や装身具等を収納することができる。この家具Fは、転倒防止装置1が取り付けられていない場合、地震等の揺れによって、前方向(図1において右方向)に傾いて転倒するおそれがある。
【0015】
実施形態1の転倒防止装置1は、図1図4に示すように、シリンダ3、及びシリンダ3の一端側から突出したロッド5を有するダンパ7と、第1ベース部11と、第2ベース部13と、を備える。第1ベース部11は、家具Fの上面に当接する。第2ベース部13は、天井Cに当接する。第1アセンブリ15は、シリンダ3、及び第1ベース部11を有する。第2アセンブリ17は、ロッド5、及び第2ベース部13を有する。第1アセンブリ15と、第2アセンブリ17とは、ダンパ7が伸縮することで、相対的な位置関係が変化する。第1アセンブリ15には、滑車19が、取り付けられている。第2アセンブリ17には、ロープ21(本発明の索状物に相当)の一端が取り付けられている。ロープ21は、滑車19に掛け渡されて、その他端が、第2アセンブリ17に向けて引き出されている。
【0016】
ダンパ7は、シリンダ3、図示しないロッドガイド、図示しないピストン、ロッド5、及び両端に設けられた2個のジョイント部23,23を有している。シリンダ3は有底筒状である。ロッドガイドはシリンダ3の開口部を封鎖している。ピストンはシリンダ3内に摺動自在に挿入されている。ロッド5は基端部がピストンに連結されている。また、ロッド5はロッドガイドを挿通して先端側がシリンダ3の外部へ突出している。シリンダ3は作動油及び圧縮ガスを封入している。
【0017】
ダンパ7は収縮動作時に発生する減衰力が伸長動作時に発生する減衰力よりも小さい圧効きダンパである。ここで、ダンパ7の伸長動作とは、シリンダ3からロッド5の突出長さ(ダンパ7の全長)が長くなっていく動作を意味する。また、ダンパ7の収縮動作とは、シリンダ3からロッド5の突出長さ(ダンパ7の全長)が短くなっていく動作を意味する。また、ダンパ7はシリンダ3に封入した圧縮ガスのガス圧が伸長方向に働いている。
【0018】
ダンパ7の減衰力が発生するメカニズムは、周知の構造であるため、図示を省略して説明する。シリンダ3は、内部がピストンによって、ロッド5の基端部が収納されているロッド側圧力室と、反ロッド側圧力室とに仕切られている。ピストンは両圧力室間を連通させる絞り弁であるオリフィスが形成されている。オリフィスは、ダンパ7の伸縮動作に伴うロッド側圧力室と反ロッド側圧力室との間の作動油の流れに抵抗を付与して減衰力を発生する減衰力発生部として機能する。また、ピストンは逆止弁を介して両圧力室間を連通する連通路が形成されている。逆止弁は、ロッド側圧力室から反ロッド側圧力室への作動油の流れを許容し、その逆の流れを阻止する。このため、ダンパ7は、伸長動作時、ロッド側圧力室から反ロッド側圧力室への作動油の流路経路が、オリフィスと連通路の経路になる。一方、ダンパ7は、収縮動作時、反ロッド側圧力室からロッド側圧力室への作動油の流路経路がオリフィスのみとなる。このため、ダンパ7は伸長動作時に発生する減衰力が収縮動作時に発生する減衰力よりも小さくなる。
【0019】
第1ベース部11は、図1に示すように、シリンダ3の底部に接続されたジョイント部23と連結されている。第2ベース部13は、図1に示すように、ロッド5の先端部に接続されたジョイント部23と連結されている。
第1ベース部11には、滑車19が取り付けられているが、その他の構造は、第1ベース部11と第2ベース部13では共通している。そのため、第1ベース部11と第2ベース部13の共通部分については、第1ベース部11のみを説明する。
【0020】
家具Fの上面に当接して載置された状態で第1ベース部11を上方から見た平面視において、ベース部本体25は長方形状の外形である(以下、この平面視におけるベース部本体25の外形において長辺が延びている方向を「長辺方向」と言い、短辺が延びている方向を「短辺方向」と言う。)。また、家具Fの上面に当接して載置された状態で第1ベース部11を短辺方向に見た側面視において、ベース部本体25は、下端縁が家具Fの上面に平行に直線状に伸びており、上端縁が下端縁の両側から上方に膨らんだ円弧状の外形である(図1参照)。また、家具Fの上面に当接して載置された状態で第1ベース部11を長辺方向に見た側面視において、ベース部本体25は下端縁よりも上端縁が短い略台形状の外形である(図3参照)。
【0021】
第1ベース部11の家具Fの上面に当接する部分には、滑り止め部27が形成されている。滑り止め部27は、その外形が、第1ベース部11の外形より僅かに大きい相似形(長方形状)である。滑り止め部27は摩擦係数が高い材質で構成され、略平板である。滑り止め部27は、家具Fの上面に当接する面が平坦とされている。
【0022】
第1ベース部11には、図2及び図3に示すように、ジョイント部23を連結するためのボルト29の軸部29Bを受ける一対の受け部39,39が形成されている。これら受け部39,39は、その間にダンパ7のジョイント部23及び後述するブッシュ41が嵌まり込む空間が形成されている。一対の受け部39,39の内壁面同士の間隔(空間の短辺方向の長さ)はブッシュ41の長さよりも僅かに大きい。また、一対の受け部39,39には略中央にボルト29の軸部29Bが挿通する挿通孔39Aが短辺方向に貫通している。挿通孔39Aの内径は、ボルト29の頭部29Aよりは小さくされている。
【0023】
挿通孔39Aの一方から挿入されたボルト29と、このボルト29の軸部29Bにねじ込まれたナット45によって回動軸部材が構成され、ボルト29の中心軸が第1ベース部11におけるダンパ7の回動軸になる。
【0024】
ブッシュ41は、略円筒状である。ブッシュ41は弾性体である。ブッシュ41の長さは、一対の受け部39,39同士の間隔よりも僅かに小さい。ブッシュ41は中央部の外周面を一周した凹部41Aが形成されている。この凹部41Aの外径がダンパ7のジョイント部23に形成された貫通孔23Aの内径に略等しい。ブッシュ41は両端部の外周面41Bが外方向に縮径している。このため、ブッシュ41はダンパ7のジョイント部23に形成された貫通孔23Aに弾性変形させながら挿入される。そして、ブッシュ41は、貫通孔23Aに凹部41Aが嵌まり込んで、ダンパ7のジョイント部23に取り付けられる。
【0025】
ブッシュ41は中央部の内径がボルト29の軸部29Bの外径よりも僅かに大きい。また、ブッシュ41は両端部の内周面41Cが外方向に拡径している。このため、このブッシュ41はボルト29の軸部29B周りに回動自在である。また、このブッシュ41は、拡径した両端部の内周面41Cがボルト29の軸部29Bの外周面に当接する範囲で、ボルト29の軸部29Bに対して傾くことができる。つまり、ブッシュ41をジョイント部23に取り付けたダンパ7は、ボルト29の軸部29B周りに回動自在であり、回動方向に交差する方向に揺動自在である。さらに、ブッシュ41が弾性変形することによって、ダンパ7は回動方向に交差する方向に、より大きく揺動することができる。
【0026】
ジョイント部23は、図3に示すように、上部に平坦な面23Bが形成され、この面23Bにシリンダ3の底部が取り付けられている。ジョイント部23は、上部の平坦な面23Bから、下方に曲がりながら下り、略垂直状になった中間部に形成された貫通孔23Aにブッシュ41が取り付けられている。ジョイント部23は、中間部の貫通孔23Aよりも下方で2回屈曲して、略垂直状をなした下部23Cが形成されている。ジョイント部23の下部23Cに滑車19が取り付けられている。下部23Cの上下方向の長さは、滑車19の直径よりもやや大きくされ、下部23Cの略中央に軸49が設けられている。軸49は、ボルト29の軸部29Bと略平行に設けられている。軸49に滑車19が回転自在に取り付けられている。滑車19は、第1ベース部11のボルト29よりも下側の空間に収まる直径とされている。滑車19は、円盤外周に沿って2つのフランジ19A,19Aとその間に溝を設けてロープ21が逸脱しない構造とされている。
【0027】
ロッド5の周りには、図1及び図2に示すように、その付属物として、円筒状のロッドカバー31が備え付けられている。ロッドカバー31により、ロッド5への埃等の付着を抑制している。また、ロッドカバー31により、ロッド5が傷つくことを防止している。ロッドカバー31の上端は、皿状の上壁部33が備えられており、上壁部33は、ロッド5の先端部のジョイント部23に固定されている。一方、ロッドカバー31の下端は、開放されている。なお、ロッドカバー31は、第2アセンブリ17の1つの構成要素とされている。
【0028】
ロッドカバー31の後側で下端寄りの位置には、ロープ21の一端が取り付けられている。そして、ロープ21は、第1ベース部11の滑車19に掛け渡されて、その他端が、第2ベース部13に向けて引き出されている。ロープ21の他端は、略J字状の鉤部35が取り付けられている。
【0029】
図1に示すように、ロッドカバー31の前側で下端寄りの位置には、鉤部35を引っかけるための穴部37が形成されている。穴部37は、鉤部35の屈曲した先端を挿入可能な大きさとされている。ロープ21の長さは、ダンパ7を所定長さに圧縮して、図4に示すように、穴部37に鉤部35を引っかけるために必要な長さとされ、ダンパ7の伸長寸法及び収縮寸法に応じて適宜選択される。
【0030】
ここで、本実施形態の転倒防止装置1の使用方法について説明する。図1に示すように、ダンパ7が所定長さにされた状態で、第1ベース部11は、家具Fの上面に当接し、第2ベース部13は、天井Cに当接している。転倒防止装置1は、家具Fの上面より上の高い位置に取り付けられるから、作業しにくい。とりわけ、転倒防止装置1が既に取り付けられた状態では、ダンパ7はシリンダ3に封入した圧縮ガスのガス圧が伸長方向に効いており、転倒防止装置1が天井Cと家具Fとの間で外れにくくなっている。この状態で、ダンパ7を縮めて転倒防止装置1を外すことは容易ではない。
【0031】
本実施形態の転倒防止装置1では、この設置状態から、ロープ21を上方に引っ張ると、滑車19は動滑車として作用し、ダンパ7が圧縮されて、第2ベース部13が第1ベース部11に近づいていく。そして、ダンパ7が所定長さになったところで、鉤部35を穴部37に引っかける。すると、容易に、転倒防止装置1を外すことができる。
【0032】
本実施形態の転倒防止装置1では、滑車19が動滑車となることから、従来の場合と比較して少ない力(半分の力)で、ダンパ7を縮めることができる。よって、転倒防止装置1の取り外し時の作業性を向上できる。また、ダンパ7が所定長さになったところで、鉤部35を穴部37に引っかけることで、ダンパ7の圧縮状態を維持することができる。
また、本実施形態の転倒防止装置1では、ロープ21を引っ張るという単純な動作でダンパ7を縮めることができるから、作業性が高い。
【0033】
また、転倒防止装置1を取り付ける際にも、ダンパ7を縮める必要がある。この場合にも、ロープ21を上方に引っ張ると、滑車19は動滑車として作用し、ダンパ7が圧縮されて、第2ベース部13が第1ベース部11に近づいていくから、従来の場合と比較して少ない力(半分の力)で、ダンパ7を縮めることができ、作業性が高い。転倒防止装置1を取り付ける際には、鉤部35を穴部37に引っかけて、ダンパ7を圧縮状態で維持して、家具Fの上面まで運んでいき、ここで、鉤部35を穴部37から外して、ダンパ7を伸長すればよいから、作業がスムーズに進行する。
【0034】
なお、本実施形態1では、ロッドカバー31に、ロープ21の一端が取り付けられているとともに、ロッドカバー31に、鉤部35を引っかけるための穴部37を形成しているから、ロッドカバー31を単にロッド5の保護部材として使用するよりも、ロッドカバー31をより有効に活用できる。
【0035】
本実施形態の転倒防止装置1では、滑車19が第1ベース部11内に内蔵されているから、外観がすっきりする。
【0036】
ここで、実施形態1の作用効果を特許請求の範囲の構成と対応づけて説明する。転倒防止装置1は、家具Fの上面と天井Cとの間に取り付けられる転倒防止装置である。転倒防止装置1は、ダンパ7と、ダンパ7の伸縮に伴って相対的に遠ざかったり近づいたりする第1アセンブリ15及び第2アセンブリ17と、第1アセンブリ15及び第2アセンブリ17のいずれか一方に取り付けられた滑車19と、第1アセンブリ15及び第2アセンブリ17のいずれか他方に一端が取り付けられ、滑車19に掛け渡されたロープ21と、を備えている。
【0037】
この転倒防止装置1は、上述のように、滑車19が動滑車となることから、ロープ21を引っ張ることにより、従来の場合と比較して少ない力で、ダンパ7を縮めることができる。よって、転倒防止装置1の取り付ける際又は取り外す際の作業性を向上できる。
【0038】
実施形態1の転倒防止装置では、次の態様を採用している。すなわち、ダンパ7は、シリンダ3、及びシリンダ3の一端側から突出したロッド5を有している。第1アセンブリ15は、シリンダ3、及びシリンダ3の他端に連結され、家具Fの上面に当接する第1ベース部11を有している。第2アセンブリ17は、ロッド5、ロッド5の先端に連結され、天井Cに当接する第2ベース部13、及びロッド5に取り付けられたロッドカバー31を有している。滑車19は第1ベース部11に取り付けられており、ロープ21はロッドカバー31に一端が取り付けられている。この態様では、ロッドカバー31に従来の機能に加え、ロープ21の取り付け部としての機能を付与することで、ロッドカバー31をより有効に用いることができる。
【0039】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係る転倒防止装置について、図5〜7を参照しつつ説明する。なお、実施形態2に係る転倒防止装置において、上記実施形態1の転倒防止装置と略同じ構成部位には同符号を付けて、構造、作用及び効果の説明は省略する。実施形態2では、次の点が、実施形態1と相違している。
すなわち、実施形態2に係る転倒防止装置では、第2ベース部113内に、滑車19に掛け渡されるロープ21を巻き取るウインチ51が組み込まれている。
【0040】
第2ベース部113には、ジョイント部123を連結するためのボルト29の軸部29Bを受ける一対の受け部139,139が形成されている。これら受け部139,139は、その間にダンパ7のジョイント部123及びブッシュ41が嵌まり込む空間が形成されている。また、一対の受け部139,139には略中央にボルト29の軸部29Bが挿通する挿通孔139Aが短辺方向に貫通している。挿通孔139Aの内径は、ボルト29の頭部29Aよりは小さくされている。
【0041】
挿通孔139Aの一方から挿入されたボルト29と、このボルト29の軸部29Bにねじ込まれたナット45によって回動軸部材が構成され、ボルト29の中心軸が第2ベース部113におけるダンパ7の回動軸になる。
【0042】
第2ベース部113内には、ジョイント部123の上部123Aが入り込んでいる。この上部123Aにウインチ51が取り付けられている。
ジョイント部123は、下部に平坦な面123Bが形成され、この面123Bにロッド5の先端部が取り付けられている。ジョイント部123は、下部の平坦な面123Bから、上方に曲がりながら上り、略垂直状になった中間部に形成された貫通孔123Cに、ブッシュ41が取り付けられ、ブッシュ41にボルト29の軸部29Bが挿入されている。
【0043】
ジョイント部123は、中間部の貫通孔123Cよりも上方で2回屈曲して、略垂直状をなした先端部123Aが形成されている。ジョイント部123の上部123Aにウインチ51が取り付けられている。
【0044】
ウインチ51は、両側が僅かに膨らんだ円柱状の巻き取り部53の両側に2つの円板55A,55Bを有するドラム57を備えている。ドラム57の中心には、ドラムシャフト59が固定され、このドラムシャフト59の一端59Aがジョイント部123の上部123Aに回転自在に取り付けられている。ドラム57は、一方の円板55Aを、ジョイント部123の上部123Aに対向させた状態で取り付けられている。他方の円板55Bの外側では、ドラムシャフト59にラチェット歯車61が固定されている。ラチェット歯車61の歯部63に係合する逆止爪65が、ジョイント部123の上部123Aから側方に突出した突出部123Dに揺動自在に取り付けられている。ドラムシャフト59の他端59Bは、四角柱状をなし、第2ベース部113の外壁部113Aを突き抜けて外部に露出している。ドラムシャフト59の他端59Bには、四角柱状の他端59Bと係合可能な係合部63Aを有した回転ハンドル63が着脱可能に取り付けられる。
【0045】
逆止爪65は、図示しないばねによって前端部65Aがラチェット歯車61に付勢され、このラチェット歯車61の歯部63と逆止爪65との協働によって、ドラムシャフト59は、定常状態で一方向にしか回転できないようになっている。従って、作業者が回転ハンドル63から手を離した場合でも、ラチェット歯車61に係合する逆止爪65によって、ドラム57の逆方向の回転が阻止され、一端巻き取ったロープ21が戻されて、ダンパ7が途中で伸びるような事態が回避される。なお、ダンパ7を縮められた状態から戻す場合には、ラチェット歯車61から逆止爪65の前端部65Aを外して、ダンパ7を元の長さに復帰させる。
【0046】
ここで、実施形態2の作用効果を特許請求の範囲の構成と対応づけて説明する。
実施形態2の転倒防止装置では、第1アセンブリ15及び第2アセンブリ17のいずれか他方(第2アセンブリ17)に取り付けられ、ロープ21を巻き取るウインチ51を備えている。ロープ21をウインチ51で巻き取ることで、より簡便にダンパ7を縮めることができ、作業性が向上する。
実施形態2の転倒防止装置では、ウインチ51が第2ベース部13に取り付けられている。ウインチ51を、滑車19のある第1ベース部11に取り付けると、第1ベース部11には、滑車19及びウインチ51の取り付けスペースを確保するため、それらの配置等を考慮して複雑な構成としなければならない。実施形態2のように、ウインチ51を滑車19のない第2ベース部13に取り付けることで簡易な構成を採用することができる。
【0047】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係る転倒防止装置について、図8を参照しつつ説明する。なお、実施形態3に係る転倒防止装置において、上記実施形態1の転倒防止装置と略同じ構成部位には同符号を付けて、構造、作用及び効果の説明は省略する。実施形態3では、次の点が、実施形態1と相違している。
すなわち、実施形態3に係る転倒防止装置では、第1ベース部211内の滑車が複数個の小型の滑車19A,19B,19Cとされている点が実施形態1と異なる。この実施形態3においても、複数個の滑車19A,19B,19Cがまとまって、1つの動滑車の役割を果たし、ダンパ7を圧縮する際に要する力を半減させる。よって、従来の場合と比較して少ない力(半分の力)で、ダンパ7を縮めることができ、作業性が高い。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上述の実施形態1〜3では、転倒防止装置を家具Fに対して取り付けたが、地震等の揺れによって転倒するおそれのある、書棚、冷蔵庫等の物品に対して取り付けてもよい。
(2)上述の実施形態1〜3では、第1アセンブリ15に、滑車19,19A,19B,19Cが取り付けられている態様を示したが、第2アセンブリ17に滑車を備えてもよい。
(3)上述の実施形態1〜3では、ロッドカバー31に、ロープ21の一端が取り付けられている態様を示したが、ロープ21の一端は、第2アセンブリ17の構成部材に取り付けられていればよく、第2ベース部13に取り付けられていてもよい。
(4)上述の実施形態1〜3では、ロッド5にはがロッドカバー31が付属している態様を示したが、ロッドカバー31がなくてもよい。この場合には、ロープ21は第2ベース部13に一端が取り付けられる。
(5)上述の実施形態では、圧効きダンパ7を利用したが、収縮動作時に所定の減衰力を発揮するものであれば、両効きダンパであってもよい。
【0049】
(6)上述の実施形態1〜3では、シリンダ3内に作動油及び圧縮ガスを封入したダンパ7を利用したが、収縮動作時に所定の減衰力を発生させるものであれば、他の液体を封入した液体圧ダンパであっても、他の形式のダンパであってもよい。
(7)上述の実施形態1〜3では、シリンダ3内に圧縮ガスを封入して伸張方向に圧縮ガスの膨張力が働くようにしたが、他の方式で伸張方向に働く力を発生させてもよい。
【0050】
(8)上述の実施形態1〜3では、索状物としてロープ21を例にして説明したが、索状物は、ロープに限らず、ケーブル、ベルト、鎖などの柔軟性を持った長尺状のものであればよい。
(9)上述の実施形態2では、ウインチ51は手動としたが、動力駆動であってもよい。
(10)上述の実施形態1〜3では、シリンダ3は作動油及び圧縮ガスを封入しているとしたが、圧縮ガスの代わりにコイルバネを収容してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…転倒防止装置、3…シリンダ、5…ロッド、7…ダンパ、11…第1ベース部、13…第2ベース部、15…第1アセンブリ、17…第2アセンブリ、19…滑車、21…ロープ(索状物)、C…天井、F…家具(物品)
【要約】
【課題】転倒防止装置を取り付ける際又は取り外す際の作業性を向上させる。
【解決手段】転倒防止装置1は、家具Fの上面と天井Cとの間に取り付けられる。転倒防止装置1は、ダンパ7と、ダンパ7の伸縮に伴って相対的に遠ざかったり近づいたりする第1アセンブリ15及び第2アセンブリ17と、第1アセンブリ15及び第2アセンブリ17のいずれか一方に取り付けられた滑車19と、第1アセンブリ15及び第2アセンブリ17のいずれか他方に一端が取り付けられ、滑車19に掛け渡されたロープ21と、を備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8