特許第6205516号(P6205516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6205516
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】急発進回避装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 26/04 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   B60K26/04
【請求項の数】11
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-96834(P2017-96834)
(22)【出願日】2017年5月15日
【審査請求日】2017年5月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-38820(P2017-38820)
(32)【優先日】2017年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】317000913
【氏名又は名称】目楠 光男
(74)【代理人】
【識別番号】100156959
【弁理士】
【氏名又は名称】原 信海
(72)【発明者】
【氏名】目楠 光男
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−166699(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3185164(JP,U)
【文献】 国際公開第2012/169477(WO,A1)
【文献】 特開2014−177171(JP,A)
【文献】 特開2014−000884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/00−04
B60K 28/00
G05G 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏力が印加されるアクセルペダルと、走行のための動力を発生する駆動部と、前記アクセルペダルに印加された踏力に応じて前記駆動部の動力を制御する制御部とを具備する自動車が急発進することを回避する急発進回避装置において、
前記自動車の適宜位置に固定される基板の一面に、前記アクセルペダルに印加された踏力がその一端側に伝えられる第1アームの他端が、また、前記基板の他面に、その一端側と前記制御部とが接続される第2アームの他端が、それぞれ前記基板の両側縁間で揺動可能に取り付けてあり、
前記第1アームの一端側は前記基板の縁から突出させてあり、この突出部分には、前記基板の他面側へ突出する爪部が第1アームの長手方向へ進退可能に取り付けてあり、
印加された踏力によって、第1アームが基板の一側縁側から他側縁側へ揺動する場合、前記爪部が第2アームの一端部に係合して、当該第2アームを基板の一側縁側から他側縁側へ揺動させ、更に、第1アームが基板の所定位置より他側縁側へ揺動する場合、前記爪部が基板の爪部に対向する縁部に倣って揺動しつつ第1アームの長手方向へ後退して、当該爪部と第2アームの一端部との係合が解除されるように構成してある
ことを特徴とする急発進回避装置。
【請求項2】
前記基板の爪部に対向する縁部は、当該爪部を案内するガイド部になしてあり、
該ガイド部は、前記基板の一側縁側に、所定曲率の円弧になした第1領域と、前記基板の他側縁側に第1領域に続けて、前記曲率より緩い曲率の円弧になした第2領域とを具備しており、
前記爪部には、前記ガイド部に当接して当該ガイド部上を案内される被案内部と、前記第2アームの一端部に係合する第1係合部が設けてあり、
前記第2アームの一端部には前記第1係合部と係合する第2係合部が設けてあり、
前記第1アームには爪部を基板のガイド部へ付勢する第1付勢部材が配設してある
請求項1記載の急発進回避装置。
【請求項3】
前記被案内部は、前記ガイド部上を摺動する摺動部、又はガイド部に転接する転接部で構成されている請求項記載の急発進回避装置。
【請求項4】
前記第1係合部は、基板の一側縁側に位置させた斜辺が円弧状の略帆先形になしてあり、また前記第2係合部は第1係合部と面対称の形状になしてあり、
前記基板には第1アームを基板の一側縁側へ付勢する第2付勢部材が取り付けてあり、
前記第2アームには当該第2アームを基板の一側縁側へ引く引力が与えられるようになっている
請求項2又は3記載の急発進回避装置。
【請求項5】
前記爪部は前記第1アームに摺接する基体を具備しており、
当該基体の第1アームに対向する面の両縁にはそれぞれ第1アームを挟持する壁部が立設してあり、また基体には第1アームの長手方向へ長い長孔が開設してあり、
当該基体は前記長孔を挿通させた留め具によって第1アームに、当該第1アームの長手方向へ進退自在に取り付けられている
請求項2から4のいずれかに記載の急発進回避装置。
【請求項6】
踏力が印加されるアクセルペダルと、走行のための動力を発生する駆動部と、前記アクセルペダルに印加された踏力に応じて前記駆動部の動力を制御する制御部とを具備する自動車が急発進することを回避する急発進回避装置において、
基板の適宜位置に当該基板の一側側から他側側へ帯状の窓部が開設してあり、
基板の一面に、前記アクセルペダルから与えられた踏力によって、前記窓部の一端側から他端側へ前進する第1スライダが配設してあり、基板の他面に、前記制御部と接続され、前記窓部の一端側から他端側へ前進する第2スライダが配設してあり、
前記第2スライダには、前記窓部から基板の一面側へ突出可能な爪部が前記基板に交わる方向へ揺動可能に設けてあり、
前記第1スライダには、前記爪部と係合する係合用凹部が設けてあり、
印加された踏力によって、第1スライダが前記窓部の一端側から他端側へ前進する場合、前記爪部が前記係合用凹部に係合して、第2スライダを窓部の一端側から他端側へ前進させ、更に、第1スライダが前進して、前記基板の窓部の他端に臨む部分が爪部に当接し、前記爪部が後退して当該爪部と前記係合用凹部との係合が解除されるように構成してある
ことを特徴とする急発進回避装置。
【請求項7】
前記基板の一面には、前記第1スライダを案内する一対の第1ガイド部が前記窓部の両側縁部に対向配置してあり、
前記基板の他面には、前記第2スライダを案内する一対の第2ガイド部が前記窓部の両側縁部に対向配置してあり、
前記第1ガイド部及び第2ガイド部の一端には第1スライダ及び第2スライダが当接するストッパが設けてあり、
当該ストッパと第1スライダとの間には当該第1スライダをストッパへ付勢する第1弾性部材が介装してあり、
前記第2スライダには当該第2スライダを前記窓部の一端側へ引く引力が与えられるようになっている
請求項記載の急発進回避装置。
【請求項8】
爪部の前記係合用凹部に対向する部分であって、前記窓部の一端に対応する位置には、係合用凹部に係合する係合部が設けてあり、
前記係合用凹部の前記窓部の一端の端部は、前記係合部が当接する当接部になしてある
請求項6又は7記載の急発進回避装置。
【請求項9】
前記爪部の前記係合用凹部に対向する部分とは反対側の部分には、当該部分とは所定の距離を隔てて天井部が取り付けてあり、
当該天井部と爪部との間には、爪部を第1スライダ側へ付勢する第2弾性部材が介装してある
請求項6から8のいずれかに記載の急発進回避装置。
【請求項10】
前記爪部の前記係合用凹部に対向する部分は湾曲させて、前記基板の窓部の他端に臨む部分及び第1スライダを摺接させる摺接部になしてある請求項6から9のいずれかに記載の急発進回避装置。
【請求項11】
前記爪部の適宜位置には、当該爪部が前記窓部から適宜寸法だけ突出したときに、爪部の揺動を停止させる第2ストッパが設けてある請求項6から10のいずれかに記載の急発進回避装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の急発進を回避する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクセルペダルとブレーキペダルとを備える自動車にあっては、ブレーキペダルを踏操作すべきところ誤ってアクセルペダルを踏操作してしまうことがあり、かかる誤操作によって当該自動車が急発進して、重大事故を誘発することすらあった。そのため、後述する特許文献1には、アクセルとブレーキとを一つのペダルで操作し得るようになした次のようなシステムが開発されている。
【0003】
図18は、特許文献1に開示された自動車運転操作システムの平面図であり、図中、130は使用者の足を受けるための補助ペダルである。補助ペダル130の一端は縦方向に操作するブレーキペダル100に連結してあり、また、補助ペダル100の他端は自動車の床面に当接させてある。ブレーキペダル100から所定距離を隔てた位置には、アクセルレバー150が軸152によってシーソ状に揺動可能に配設してあり、アクセルレバー150の先端の軸151によって進退可能に固定され、図示しないアクセルに連接させたワイヤが接続されるアクセルワイヤアーム160が連結してある。補助ペダル130のアクセルレバー150がわの側部には軸部141を中心に横方向へ回動するアクセルパッド140が配設してあり、補助ペダル130がブレーキペダル100を踏操作していない姿勢のときはアクセルパッド140がアクセルレバー150に当接し、補助ペダル130が当該補助ペダル130を介してブレーキペダル100を踏操作した姿勢のときは両者が離隔するようになっている。
【0004】
運転者は、補助ペダル130上に足を載置し、ブレーキペダル100を踏操作しない状態で、踵を軸にして足を横方向へ回動させ、当該足の側部をアクセルパッド140に当接させて、更に足を横方向へ回動させることによってアクセルパッド140及びこれに係合させたアクセルレバー150を揺動させてアクセルを開になし、自動車のスピードを増大させる。一方、運転者が補助ペダル130を介してブレーキペダル100を踏操作した場合、アクセルパッド140がアクセルレバー150から離隔するため、アクセルが閉される。これによって、アクセルの誤操作が防止され、自動車の急発進を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4249010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなシステムにあっては、アクセルを操作するには足を横方へ回動させなければならないため、通常は縦方向へ踏み込む操作でアクセルを操作している運転者が横方向への回動操作を実施することに対して心理的な障壁となっていた。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、アクセル操作を変更することなく自動車の急発進を回避することができる急発進回避装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る急発進回避装置の要旨は、踏力が印加されるアクセルペダルと、走行のための動力を発生する駆動部と、前記アクセルペダルに印加された踏力に応じて前記駆動部の動力を制御する制御部とを具備する自動車が急発進することを回避する急発進回避装置において、基板の一面に、予め定められた移動領域内を進退可能に移動する第1移動体が配設してあり、前記基板の他面に、前記移動領域に応じた移動領域内を進退可能に移動する第2移動体が配設してあり、前記第1移動体は、前記アクセルペダルから与えられた踏力によって前進し、前記踏力が除去されると後退するようになしてあり、前記第2移動体は、第1移動体と係合した状態で対応する前記移動領域の所定位置まで前進して、前記踏力を前記制御部へ伝え、該所定位置を超えると、第1移動体と第2移動体との係合が解除されるようになしてあることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る急発進回避装置にあっては、踏力が印加されるアクセルペダルと、走行のための動力を発生する駆動部と、前記アクセルペダルに印加された踏力に応じて前記駆動部の動力を制御する制御部とを具備する自動車が急発進することを次のような構成で回避する。
【0010】
すなわち、基板の一面に、予め定められた移動領域内を進退可能に移動する第1移動体が配設してあり、この基板の他面に、前記移動領域と同じ領域又は前記基板を挟んで前記移動領域と表裏をなす領域等、前記移動領域に応じた移動領域内を進退可能に移動する第2移動体が配設してある。前述した第1移動体は、自動車のアクセルペダルから与えられた踏力によって前進し、前記踏力が除去されると後退するようになしてある。
【0011】
一方、前述した第2移動体は、第1移動体と係合した状態で対応する前記移動領域の所定位置まで前進して、前記踏力を前記制御部へ伝える一方、その所定位置を超えると、第1移動体と第2移動体との係合が解除される。
【0012】
一般的に、運転者の足によって自動車のアクセルペダルが最大限に至るまで踏み込まれ、運転者が踏み込んだ足をアクセルペダルから離すことができないときに自動車の急発進が生じる。このような踏力がアクセルペダルに印加されると、第1移動体が前記移動領域の所定位置を超えて更に前進するが、そのとき、前述したように第1移動体と第2移動体との係合が解除されるため、第1移動体から第2移動体へ踏力が伝えられず、制御部への踏力の伝達が遮断される。これによって、アクセルペダルの操作を変更することなく、自動車の急発進を回避することができる。
【0013】
また、本発明に係る急発進回避装置は、前記第1移動体及び第2移動体は、前記基板に揺動可能に設けてあることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る急発進回避装置にあっては、前述した第1移動体及び第2移動体は、基板に揺動可能に設けてあり、第1移動体及び第2移動体の揺動領域内で両者が係合し、また当該係合の解除が実施される。第1移動体及び第2移動体の揺動は、基板の両面に立設した軸に第1移動体及び第2移動体をそれぞれ、対応する軸回りに回動可能に取り付ければよい。これによって、第1移動体及び第2移動体の係合及び係合解除を比較的簡単な構成で実施することができる。
【0015】
更に、本発明に係る急発進回避装置は、前記第1移動体及び第2移動体は前記基板に、当該基板上を直線状に進退可能に設けてあることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る急発進回避装置にあっては、前述した第1移動体及び第2移動体は基板に、当該基板上を直線状に進退可能に設けてあり、第1移動体及び第2移動体の進退領域内で両者が係合し、また当該係合の解除が実施される。これによって、急発進回避装置を可及的にコンパクトに構成することができ、狭い空間にも急発進回避装置を配設することができる。
【0017】
すなわち、(1)本発明に係る急発進回避装置は、踏力が印加されるアクセルペダルと、走行のための動力を発生する駆動部と、前記アクセルペダルに印加された踏力に応じて前記駆動部の動力を制御する制御部とを具備する自動車が急発進することを回避する急発進回避装置において、前記自動車の適宜位置に固定される基板の一面に、前記アクセルペダルに印加された踏力がその一端側に伝えられる第1アームの他端が、また、前記基板の他面に、その一端側と前記制御部とが接続される第2アームの他端が、それぞれ前記基板の両側縁間で揺動可能に取り付けてあり、前記第1アームの一端側は前記基板の縁から突出させてあり、この突出部分には、前記基板の他面側へ突出する爪部が第1アームの長手方向へ進退可能に取り付けてあり、印加された踏力によって、第1アームが基板の一側縁側から他側縁側へ揺動する場合、前記爪部が第2アームの一端部に係合して、当該第2アームを基板の一側縁側から他側縁側へ揺動させ、更に、第1アームが基板の所定位置より他側縁側へ揺動する場合、前記爪部が基板の爪部に対向する縁部に倣って揺動しつつ第1アームの長手方向へ後退して、当該爪部と第2アームの一端部との係合が解除されるように構成してあることを特徴とする。
【0018】
本発明の急発進回避装置にあっては、自動車の適宜位置に固定され、両側縁を有する適宜形状の基板を具備し、この基板の一面に、自動車のアクセルペダルに印加された踏力がその一端側に伝えられる第1アームの他端が、基板の両側縁間で揺動可能に取り付けてある。また、基板の他面に、第2アームの他端が前記基板の両側縁間で揺動可能に取り付けてあり、第2アームの一端側は例えばワイヤによって自動車の制御部と接続されるようになっている。
【0019】
第1アームの一端側は基板の縁から突出させてあり、この突出部分には、基板の他面側、即ち第2アーム側へ突出する爪部が、第1アームの長手方向へ進退可能に取り付けてある。そして、自動車のアクセルペダルに印加された踏力によって、第1アームが基板の一側縁側から他側縁側へ揺動する場合、第1アームに取り付けられた爪部が第2アームの一端部に係合して、当該第2アームを基板の一側縁側から他側縁側へ揺動させる。これによって、第1アームに伝えられた踏力が第2アームに伝えられる。前述したように第2アームの一端側は例えばワイヤによって自動車の制御部と接続されるようになっており、第2アームに伝えられた踏力は自動車の制御部に伝えられ、当該制御部によって踏力に応じて駆動部の動力が制御される。
【0020】
一方、第1アームが基板の所定位置より更に他側縁側へ揺動する場合、爪部が基板の爪部に対向する縁部に倣って揺動しつつ第1アームの長手方向へ後退して、当該爪部と第2アームの一端部との係合が解除されるように構成してある。
【0021】
前述したように、自動車の急発進が生じるときには、運転者の足によって自動車のアクセルペダルが最大限に至るまで踏み込まれている。このような踏力がアクセルペダルに印加されると、第1アームが基板の所定位置を超えて更に基板の他側縁近傍まで揺動するが、そのとき、前述したように爪部と第2アームの一端部との係合が解除されるため、第1アームから第2アームに踏力が伝えられない。これによって、アクセルペダルの操作を変更することなく、自動車の急発進を回避することができる。
【0022】
)本発明に係る急発進回避装置は、前記基板の爪部に対向する縁部は、当該爪部を案内するガイド部になしてあり、該ガイド部は、前記基板の一側縁側に、所定曲率の円弧になした第1領域と、前記基板の他側縁側に第1領域に続けて、前記曲率より緩い曲率の円弧になした第2領域とを具備しており、前記爪部には、前記ガイド部に当接して当該ガイド部上を案内される被案内部と、前記第2アームの一端部に係合する第1係合部が設けてあり、前記第2アームの一端部には前記第1係合部と係合する第2係合部が設けてあり、前記第1アームには爪部を基板のガイド部へ付勢する第1付勢部材が配設してあることを特徴とする。
【0023】
本発明の急発進回避装置にあっては、基板の爪部に対向する縁部は、爪部を案内するガイド部になしてある。このガイド部は、基板の一側縁側に、所定曲率の円弧になした第1領域と、基板の他側縁側に第1領域に続けて、第1領域の曲率より緩い曲率の円弧になした第2領域とを具備している。また、爪部には、ガイド部に当接してガイド部上を案内される被案内部と、第2アームの一端部に係合する第1係合部が設けてある。また、第2アームの一端部には前記第1係合部と係合する第2係合部が設けてある。一方、第1アームには爪部を基板のガイド部へ付勢する第1付勢部材が配設してある。
【0024】
前述したように自動車のアクセルペダルに印加された踏力によって、第1アームが基板の一側縁側から他側縁側へ揺動するが、爪部は被案内部によって基板のガイド部上を第1領域から第2領域へ案内されて行く。このとき、ガイド部の第2領域の曲率は第2領域の曲率より緩くしてあるため、爪部は第1アームの長手方向へ前記第1付勢部材による付勢に抗して漸次後退して行く。一方、自動車のアクセルペダルに印加される踏力が弱くなると、それに応じて第1アームが基板の一側縁側へ揺動し、爪部は被案内部によって基板のガイド部上を第2領域から第1領域へ案内されて行き、前述した如く後退した爪部は第1付勢部材による付勢によって復帰する。このようにして、第1アームが基板の所定位置を超えるまでは、爪部が第1アームの長手方向へ進退して爪部の第1係合部と第2アームの第2係合部との係合が維持され、第1アームに印加される踏力が第2アームに伝えられる。
【0025】
一方、第1アームが基板の所定位置を超えると、爪部の第1係合部が第2アームの第2係合部から離隔する位置まで爪部が後退し、爪部と第2アームの一端部との係合が解除される。
【0026】
このように、アクセルペダルに過大な踏力が印加された場合、当該踏力が制御部に伝えられることを機械的に遮断することができ、従って自動車の急発進を確実に回避することができる。一方、本発明に係る急発進回避装置は比較的簡単な構造であるため、製造コストを抑制することができ、また、故障が発生し難く、メンテナンスも容易である。
【0027】
)本発明に係る急発進回避装置は、前記被案内部は、前記ガイド部上を摺動する摺動部、又はガイド部に転接する転接部で構成されていることを特徴とする。
【0028】
本発明の急発進回避装置にあっては、爪部に設けられた被案内部は、基板のガイド部上を摺動する摺動部、又はガイド部に転接する転接部で構成されている。前者の場合は製造コストを可及的に廉価にすることができ、一方、後者の場合は被案内部の摩耗を防止することができる。
【0029】
)本発明に係る急発進回避装置は、前記第1係合部は、基板の一側縁側に位置させた斜辺が円弧状の略帆先形になしてあり、また前記第2係合部は第1係合部と面対称の形状になしてあり、前記基板には第1アームを基板の一側縁側へ付勢する第2付勢部材が取り付けてあり、前記第2アームには当該第2アームを基板の一側縁側へ引く引力が与えられるようになっていることを特徴とする。
【0030】
本発明の急発進回避装置にあっては、爪部に設けられた第1係合部は、基板の一側縁側に位置させた斜辺が円弧状の略帆先形に成形してあり、また第2アームに設けられた第2係合部は第1係合部と面対称の形状に成形してある。つまり、第1係合部の略帆先形を構成する鉛直部分と、第2係合部の略帆先形を構成する鉛直部分とが対向するようになっている。第1アームが基板の一側縁から他側縁へ揺動する場合、第1係合部の前記鉛直部分が第2係合部の前記鉛直部分に当接し、これによって第1係合部が第2係合部に係合する。一方、前述したように爪部が後退する際は、第1係合部の前記鉛直部分が第2係合部の前記鉛直部分上を摺動して、第1係合部と第2係合部との係合が漸次解除されていくが、第1係合部と第2係合部とは両鉛直部分を構成する面で係合しているため、第1係合部が第2係合部から離隔するまで、十分に係合している。
【0031】
自動車の制御部にはねじりコイルバネ等が配設してあり、制御部と第2アームとを接続させた場合、第2アームには当該第2アームを基板の一側縁側へ引く引力が与えられるようになっている。従って、前述したようにして第1係合部と第2係合部との係合が解除された場合、前記引力によって第2アームは基板の一側縁側へ引かれ、制御部は踏力が与えられない状態、すなわち駆動部を駆動させない状態になされる。このように、自動車の急発進を回避すべく、第1係合部と第2係合部との係合が解除された場合、制御部は駆動部を駆動させない状態になされるため、自動車の急発進が確実に回避される。
【0032】
一方、基板には第1アームを基板の一側縁側へ付勢する第2付勢部材が取り付けてある。自動車の急発進が回避され、運転者が踏み込んだ足をアクセルペダルから離すことができると、第2付勢部材からの付勢によって、第1アームが基板の一側縁側へ揺動して第1係合部の一端面と第2係合部の一端面とが当接するが、前述したように第1係合部の端面及び第2係合部の端面は円弧状になしてあるため、爪部がガイド部から離隔する方向へ後退しつつ、第1係合部は第2係合部の端面上を摺動して、第1係合部が第2係合部を越えて基板の一端縁側へ揺動する。これによって、第1アーム及び第2アームは元の状態に復帰し、第1係合部と第2係合部とが互いに係合し得るようになり、アクセルペダルに印加される踏力が第1アーム及びこれに係合した第2アームを介して制御部へ伝えられ得るようになる。
【0033】
)本発明に係る急発進回避装置は、前記爪部は前記第1アームに摺接する基体を具備しており、当該基体の第1アームに対向する面の両縁にはそれぞれ第1アームを挟持する壁部が立設してあり、また基体には第1アームの長手方向へ長い長孔が開設してあり、当該基体は前記長孔を挿通させた留め具によって第1アームに、当該第1アームの長手方向へ進退自在に取り付けられていることを特徴とする。
【0034】
本発明の急発進回避装置にあっては、爪部は前述した第1アームに摺接する基体を具備しており、この基体の第1アームに対向する面の両縁にはそれぞれ第1アームを挟持する壁部が立設してある。これによって、前述した如く爪部が進退する際、基体は第1アームによって案内されるため、ガタを生じることなく安定して進退動作を行うことができる。また、基体には第1アームの長手方向へ長い長孔が開設してあり、基体は長孔を挿通させた留め具によって第1アームに、当該第1アームの長手方向へ進退自在に取り付けられている。このように、基体は第1アームに簡単な構造で進退自在に取り付けられており、製造コストを抑制し、また、故障が発生し難く、メンテナンスも容易である。
【0035】
)本発明に係る急発進回避装置は、踏力が印加されるアクセルペダルと、走行のための動力を発生する駆動部と、前記アクセルペダルに印加された踏力に応じて前記駆動部の動力を制御する制御部とを具備する自動車が急発進することを回避する急発進回避装置において、基板の適宜位置に当該基板の一側側から他側側へ帯状の窓部が開設してあり、基板の一面に、前記アクセルペダルから与えられた踏力によって、前記窓部の一端側から他端側へ前進する第1スライダが配設してあり、基板の他面に、前記制御部と接続され、前記窓部の一端側から他端側へ前進する第2スライダが配設してあり、前記第2スライダには、前記窓部から基板の一面側へ突出可能な爪部が前記基板に交わる方向へ揺動可能に設けてあり、前記第1スライダには、前記爪部と係合する係合用凹部が設けてあり、印加された踏力によって、第1スライダが前記窓部の一端側から他端側へ前進する場合、前記爪部が前記係合用凹部に係合して、第2スライダを窓部の一端側から他端側へ前進させ、更に、第1スライダが前進して、前記基板の窓部の他端に臨む部分が爪部に当接し、前記爪部が後退して当該爪部と前記係合用凹部との係合が解除されるように構成してあることを特徴とする。
【0036】
本発明の急発進回避装置にあっては、基板の適宜位置に当該基板の一側側から他側側へ帯状の窓部が開設してある。かかる基板の一面に、アクセルペダルから与えられた踏力によって、前記窓部の一端側から他端側へ前進する第1スライダが配設してあり、また、前記基板の他面に、制御部と接続され、前記窓部の一端側から他端側へ前進する第2スライダが配設してある。
【0037】
この第2スライダには、基板に開設された窓部から基板の一面側へ突出可能な爪部が、基板に交わる方向へ揺動可能に設けてある。一方、第1スライダには、前記爪部と係合する係合用凹部が設けてあり、アクセルペダルに印加された踏力によって、第1スライダが前記窓部の一端側から他端側へ前進する場合、前記爪部が前記係合用凹部に係合して、第2スライダを窓部の一端側から他端側へ前進させる。このようにして、アクセルペダルに印加された踏力が第1スライダ及びこれに係合した第2スライダを介して自動車の制御部に与えられ、当該制御部によって踏力に応じて駆動部の動力が制御される。
【0038】
一方、更に第1スライダが前進した場合、基板の窓部の他端に臨む部分が窓部から突出した第2スライダの爪部に当接し、当該爪部が後退して爪部と第1スライダの係合用凹部との係合が解除される。
【0039】
前述したように、自動車の急発進が生じるときには、運転者の足によって自動車のアクセルペダルが最大限に至るまで踏み込まれている。このような踏力がアクセルペダルに印加されると、第1スライダが基板に開設した窓部の所定位置を超えて更に窓部の他端まで前進するが、そのとき、前述したように第2スライダの爪部と第1スライダの係合用凹部との係合が解除されるため、第1スライダから第2スライダへ踏力が伝えられず、制御部への踏力の伝達が遮断される。これによって、アクセルペダルの操作を変更することなく、自動車の急発進を回避することができる。
【0040】
)本発明に係る急発進回避装置は、前記基板の一面には、前記第1スライダを案内する一対の第1ガイド部が前記窓部の両側縁部に対向配置してあり、前記基板の他面には、前記第2スライダを案内する一対の第2ガイド部が前記窓部の両側縁部に対向配置してあり、前記第1ガイド部及び第2ガイド部の一端には第1スライダ及び第2スライダが当接するストッパが設けてあり、当該ストッパと第1スライダとの間には当該第1スライダをストッパへ付勢する第1弾性部材が介装してあり、前記第2スライダには当該第2スライダを前記窓部の一端側へ引く引力が与えられるようになっていることを特徴とする。
【0041】
本発明の急発進回避装置にあっては、前述した基板の一面には、第1スライダを案内する一対の第1ガイド部が前記窓部の両側縁部に対向配置してあり、第1スライダは第1ガイド部に挟持されて窓部を臨む状態で進退する。また、基板の他面には、第2スライダを案内する一対の第2ガイド部が前記窓部の両側縁部に対向配置してあり、前同様、第2スライダは第2ガイド部に挟持されて窓部を臨む状態で進退する。前述したように、第2スライダに設けられた爪部が窓部から基板の一面側へ突出しており、第1スライダに設けられた係合用凹部に係合している。
【0042】
ここで、第1ガイド部及び第2ガイド部の一端には第1スライダ及び第2スライダが当接するストッパが設けてあり、このストッパと第1スライダとの間には第1スライダをストッパへ付勢する第1弾性部材が介装してある。従って、第1スライダに踏力が与えられていない場合、第1スライダは第1弾性部材によって、第1ガイド部の一端、即ち窓部の一端側に位置するようになっている。なお、第2スライダには前同様、自動車の制御部側へ向かう引力が与えられるようになっており、第1スライダに踏力が与えられていない場合、第2スライダは第2ガイド部の一端、即ち窓部の一端側に位置するようになっている。
【0043】
そして、印加された踏力が第1スライダに与えられると、第1スライダ及びこれに係合した第2スライダが共に窓部の他端側へ前進し、第1スライダに与えられる踏力が減少すると、前記第1弾性部材及び前記引力によって、第1スライダ及び第2スライダは窓部の一端側へ後退する。このように第1スライダ及び第2スライダは第1スライダに与えられる踏力の大きさに応じて進退し、これが第2スライダを介して制御部に与えられるため、自動車の速度を加減制御することができる。
【0044】
一方、前述したように第2スライダには自動車の制御部側へ向かう引力が与えられるようになっているため、第1スライダと第2スライダとの係合が解除された場合、第2スライダは窓部の一端側へ後退し、制御部に与えられる踏力は漸次零まで減少して行く。これによって、自動車に急ブレーキが作用せず、従って後続車による追突事故を防止することができる。
【0045】
)本発明に係る急発進回避装置は、爪部の前記係合用凹部に対向する部分であって、前記窓部の一端に対応する位置には、係合用凹部に係合する係合部が設けてあり、前記係合用凹部の前記窓部の一端の端部は、前記係合部が当接する当接部になしてあることを特徴とする。
【0046】
本発明の急発進回避装置にあっては、第2スライダに具備された爪部の前記係合用凹部に対向する部分であって、前記窓部の一端に対応する位置には、係合用凹部に係合する係合部が設けてある。また、第1スライダに設けた係合用凹部の前記窓部の一端の端部は、前記係合部が当接する当接部になしてあり、係合用凹部の当接部に爪部に設けられた係合部が当接することによって、第2スライダの爪部と第1スライダの係合用凹部とが相互に係合する。
【0047】
このとき、当接部が、第1スライダに具備された係合用凹部の前記窓部の一端の端部に設けてあり、これに対応して係合部が、第2スライダに具備された爪部の前記係合用凹部に対向する部分であって、前記窓部の一端に対応する位置に設けてあるため、与えられた踏力によって第1スライダが窓部の他端側へ移動する際には、当接部に係合部が当接した状態が維持されて、第2スライドを確実に窓部の他端側へ移動させることができる。一方、当接部とこれに当接した係合部との位置から窓部の他端までの距離を可及的に長くすることができ、これによって、窓部の一端から他端までの長さ寸法を可及的に短くすることができるため、基板をコンパクトにすることができ、従って急発進回避装置の外寸が小さい。
【0048】
)本発明に係る急発進回避装置は、前記爪部の前記係合用凹部に対向する部分とは反対側の部分には、当該部分とは所定の距離を隔てて天井部が取り付けてあり、当該天井部と爪部との間には、爪部を第1スライダ側へ付勢する第2弾性部材が介装してあることを特徴とする。
【0049】
本発明の急発進回避装置にあっては、前述した爪部の係合用凹部に対向する部分とは反対側の部分には、当該部分とは所定の距離を隔てて天井部が取り付けてあり、この天井部と爪部との間には、爪部を第1スライダ側へ付勢する第2弾性部材が介装してある。この第2弾性部材によって第2スライダの爪部が窓部から基板の一面側へ突出するように付勢される。
【0050】
前述したように、運転者の足によって自動車のアクセルペダルが最大限に至るまで踏み込まれると、第1スライダが基板に開設した窓部の所定位置を超えて更に窓部の他端まで前進し、基板の窓部に他端に臨む部分が第2スライダの爪部と第1スライダの係合用凹部との間に進入して行く。このとき、第2弾性部材が収縮して爪部が後退し、爪部と第1スライダの係合用凹部との係合が解除されて、第2スライダが後退するため、第2弾性部材の付勢によって爪部が突出する。一方、アクセルペダルに印加された踏力が除去されると、第1スライダが後退するため、第1スライダが第2スライダと対向する位置に達すると、第1スライダに当接した爪部が退入し、第1スライダの係合用凹部が爪部の位置に達すると、第2弾性部材の付勢によって爪部が突出して、爪部と係合用凹部が再び係合する。
【0051】
10)本発明に係る急発進回避装置は、前記爪部の前記係合用凹部に対向する部分は湾曲させて、前記基板の窓部の他端に臨む部分及び第1スライダを摺接させる摺接部になしてあることを特徴とする。
【0052】
本発明の急発進回避装置にあっては、第2スライダの爪部の第1スライダの係合用凹部に対向する部分は湾曲させて、基板の窓部の他端に臨む部分及び第1スライダを摺接させる摺接部になしてある。基板の窓部の他端に臨む部分が爪部に当接して爪部が退入する場合は、第2スライダの爪部と第1スライダの係合用凹部との係合が解除され、第1スライダが爪部に当接して爪部が退入する場合は、第2スライダの爪部と第1スライダの係合用凹部とが再び係合するが、このような爪部の基板の前記部分及び第1スライダが当接される部分が湾曲させて、それらを摺接させる摺接部になしてあるため、爪部を徐々に揺動させることができ、第2スライダの爪部と第1スライダの係合用凹部との係合を徐々に解除することができ、また、第2スライダの爪部と第1スライダの係合用凹部との再係合を円滑に実施することができる。
【0053】
11)本発明に係る急発進回避装置は、前記爪部の適宜位置には、当該爪部が前記窓部から適宜寸法だけ突出したときに、爪部の揺動を停止させる第2ストッパが設けてあることを特徴とする。
【0054】
本発明の急発進回避装置にあっては、前述した爪部の適宜位置には、当該爪部が前記窓部から適宜寸法だけ突出したときに、爪部の揺動を停止させる第2ストッパが設けてあり、これによって、爪部と係合用凹部との係合及び係合の解除が確実に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明に係る急発進回避装置を示す正面図である。
図2】本発明に係る急発進回避装置を示す背面図である。
図3】本発明に係る急発進回避装置を示す右側面図である。
図4】本発明に係る急発進回避装置を示す左側面図である。
図5図1に示した第1アーム及び爪部のV−V線による断面図である。
図6】本発明に係る急発進回避装置の使用様態を説明する説明図である。
図7】本発明に係る急発進回避装置の動作を説明する説明図である。
図8】本発明に係る急発進回避装置の動作を説明する説明図である。
図9】本発明を実施するための第2の形態に係る急発進回避装置の正面図である。
図10図9に示した急発進回避装置のX−X線による部分断面図である。
図11】本発明を実施するための第3の形態に係る急発進回避装置の正面図である。
図12】本発明を実施するための第3の形態に係る急発進回避装置の背面図である。
図13図11に示した急発進回避装置の分解斜視図である。
図14図11に示した急発進回避装置のXIV−XIV線による断面図である。
図15】第2スライダを示す斜視図である。
図16】本発明に係る急発進回避装置の動作を説明する説明図である。
図17】本発明に係る急発進回避装置の動作を説明する説明図である。
図18】特許文献1に開示された自動車運転操作システムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明に係る急発進回避装置を図面に基づいて詳述する。
なお、本実施の形態で説明する急発進回避装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含むことはいうまでもない。
【0057】
(発明を実施するための第1の形態)
図1図4は本発明に係る急発進回避装置を示す正面図、背面図、右側面図及び左側面図であり、図中、4は基板である。基板4は例えばステンレス材といった所要の強度及び所要の耐環境性を有する略長方形状の板材を立設してなり、基板4の上縁は概略円弧状に成形して後述する爪部3を案内するガイド部40になしてある。この基板4の下縁側には例えばL字状に成形してなる固定用脚47,47が取り付けてあり、両固定用脚47,47を用いて基板4を自動車の所要位置に固定し得るようになっている。
【0058】
基板4の固定用脚47,47側であって幅方向の略中央の位置には、当該基板4を貫通する貫通孔が開設してあり、この貫通孔には支持軸45がその両端を基板4の両側へ突出させる様態で挿通させてある。支持軸45の一端側には、その一端側に爪部3を支持する第1アーム(第1移動体)1の他端側が支持軸45回りに揺動可能に取り付けてあり、支持軸45の他端側には、その一端部が前記爪部3と係合して第1アーム1と共に支持軸45回りに揺動可能になした第2アーム(第2移動体)2の他端側が取り付けてある。後述するように第1アーム1には自動車のアクセルペダルに印加された踏力が伝えられるようになっており、第2アーム2は第1アーム1に伝えられた踏力を、フューエルインジェクタ及び/又はスロットルバルブ、或はそれらを制御する基盤というような自動車の駆動部の出力を制御する制御部へ伝え得るようになっている。
【0059】
基板4はこれら第1アーム1と第2アーム2との間に配置されており、基板4の両面であって基板4の一側縁近傍の適宜位置にはそれぞれ、対応する第1アーム1又は第2アーム2が当接してその揺動を停止させるストッパ43,44が取り付けてある。後述するように、使用者がアクセルペダルに踏力を印加していない場合、第1アーム1及び第2アーム2は対応するストッパ43,44にそれぞれ当接している。
【0060】
第2アーム2の一端面は円弧状に成形してあり、支持軸45から第2アーム2の一端面までの長さ寸法は、基板4のストッパ44が設けられた一側縁に対向する側縁から基板4の他側縁に対向する側縁に向かって漸次短くなっている。これによって、第2アーム2の一端面であって基板4の一側縁に対向する側縁は、正面視においてその先端が先鋭な先鋭部22aになっており、この先鋭部22aを含む第2アーム2の先端部分が第1アーム1と係合する第2係合部22になっている。この第2係合部22は帆先の斜辺を円弧状に成形した形状をしている。
【0061】
基板4の上縁であるガイド部40には、前記ストッパ43,44側の第1領域41と、この第1領域41に連続し、ストッパ43,44から離隔した第2領域42とが形成してある。ガイド部40の第1領域41は、第2アーム2の先端から支持軸45までの間の寸法と略同じ寸法を半径とする円弧になしてあり、この第1領域41内にある第2アーム2は前記先鋭部22aが基板4のガイド部40の位置に倣って揺動するようになっている。一方、ガイド部40の第2領域42は、第1領域41の曲率より緩い曲率の円弧になしてあり、これによって第2領域42内にある第2アーム2は基板4の他側縁側へ向かうに連れて、前記先鋭部22aが基板4のガイド部40の位置から漸次退行するように揺動する。
【0062】
第2アーム2の長手方向の中途位置であって第2アーム2の一端近傍の位置には短寸の第2連結用軸25が第2アーム2に直交する姿勢で立設してあり、該第2連結用軸25には第1アーム1から伝えられた踏力を自動車の前記制御部へ出力するための出力アーム6の一端部が、第2連結用軸25回りに回動自在に連結してある。
【0063】
一方、前述した第1アーム1の長手方向の中途位置であって前記第2連結用軸25の位置に対応する位置には短寸の第1連結用軸15が第1アーム1に直交する姿勢で立設してあり、該第1連結用軸15には自動車のアクセルペダルに印加された踏力が入力される入力アーム5の一端部が、第1連結用軸15回りに回動自在に連結してある。
【0064】
第1アーム1の一端側は基板4のガイド部40から適宜寸法だけ突出させて爪部3を案内する案内部10になしてあり、また、第1アーム1の一端に基板4のガイド部40上へ延出する庇部11を設けて第1アーム1の一端部は倒立L字状になしてある。この庇部11と基板4のガイド部40との間に爪部3が介装してある。庇部11の爪部3に対向する天井面11aと爪部3との間には、爪部3に天井面11aから離隔する方向への力を付勢するコイル状の第1バネ部材(第1付勢部材)14が介装してある。
【0065】
図5図1に示した第1アーム1及び爪部3のV−V線による断面図であり、図1図5を用いて爪部3について更に詳述する。
【0066】
図1図5に示したように、爪部3は第1アーム1の幅寸法より大きい幅寸法になした直方形状の基体30を具備しており、基体30の一端には、前記基板4のガイド部40に対向する部分と、前記第2アーム2に対向する部分とが形成されている。
【0067】
基体30一端の前者部分はガイド部40と逆向きの円弧状に成形してあり、基板4のガイド部40に当接され、当該ガイド部40上を摺動する摺動部32になしてある。この摺動部32はガイド部40上を案内されるため被案内部として機能している。一方、基体30の一端の後者部分には、前記第2アーム2の第2係合部22と面対称の形状になしてあり、第2係合部22に係合し得る第1係合部31が設けてある。
【0068】
基体30の略中央には基体30の長手方向へ長い長孔36が開設してある。長孔36には第1アーム1に一端を固定した取付部材12が挿通させてあり、基体30は取付部材12が長孔36の一端から他端までの間を移動し得るように進退自在になっている。この取付部材12は例えばネジで構成してあり、取付部材12の頭部によって第1アーム1から基体30が外れないようになっている。
【0069】
一方、基体30の第1アーム1に対向する部分には、第1アーム1を摺動自在に挟持する壁部33,33が第1アーム1の外寸と略同じ内寸になるように立設してある。両壁部33,33は基体30の他端を超えて前述した庇部11まで延設して脚部34,34になしてあり、両脚部34,34によって庇部11が摺動自在に挟持されている。なお、前述した第1バネ部材14は、基体30の他端面、即ち両脚部34,34の底部と庇部11との間に介装してある。
【0070】
前述したように基体30が進退する場合、両壁部33,33第1アーム1の案内部10の両側面上を摺動するとともに、両脚部34,34が第1アーム1の庇部11の両側面上を摺動するため、基体30は安定して進退動作する。このとき、後述する如く基体30が後退動作されると、基体30に設けられた第1係合部31が第2アーム2の第2係合部22から離隔して、第1係合部31と第2係合部22との係合が解除されるようになっている。
【0071】
なお、本実施の形態では、爪部3を基体30、摺動部(被案内部)32、第1係合部31、長孔36、壁部33,33、及び脚部34,34等で構成したが、本発明はこれに限らず、摺動部32及び第1係合部31を進退させるとともに、摺動部32を基板4のガイド部40に当接させつつ、第1係合部31と第2アーム2の第2係合部22とが相互に係合・係合解除し得るような構成であればよい。
【0072】
一方、図2に示したように、前述した第1アーム1と基板4の他側縁側の適宜位置との間には例えばねじりコイルバネといった第2バネ部材7が介装してあり、第2バネ部材(第2付勢部材)7によって第1アーム1はストッパ44側へ付勢されるようになっている。これによって、入力アーム5に外力が伝えられていない場合、第1アーム1はストッパ44に当接される。
【0073】
次に、このような急発進回避装置の動作について説明する。
図6は本発明に係る急発進回避装置の使用様態を説明する説明図である。なお、図6中、図1図4に示した部分に対応する部分には同じ番号が付してある。
【0074】
図6に示したように、急発進回避装置の基板4は自動車のエンジンルーム内の適宜位置に立設固定してある。第1アーム1に取り付けた入力アーム5とアクセルペダル60との間は第1ワイヤ91で連結してあり、また、第2アーム2に取り付けた出力アーム6と自動車の駆動部の出力を制御する制御部70との間は第2ワイヤ92で連結してある。第2ワイヤ92には制御部70側への引力が印加されるようになっており、これによって第2アーム2は、アクセルペダル60に踏力が印加されていないときは対応するストッパ44に当接されるようになっている。なお、制御部70において、第2ワイヤ92に制御部70側への引力を印加するように構成されていない場合にあっては、例えば第2ワイヤ92にコイルバネを外嵌させ、該コイルバネによって制御部70側への引力を印加するようになせばよい。
【0075】
そして、急発進回避装置は、次のようにして第1係合部31と第2係合部22とが相互に係合・係合解除することによって、アクセルペダル60に印加された踏力を制御部70へ伝える一方、自動車の急発進を回避する。
【0076】
図7及び図8は、本発明に係る急発進回避装置の動作を説明する説明図である。両図中、図1図4に示した部分に対応する部分には同じ番号が付してある。
【0077】
図7(a)に示したように、自動車が停止している場合、第1アーム1及び第2アーム2は対応するストッパ43,44に当接している。運転者によって徐々にアクセルペダル60(図6参照)に踏力が加えられると、第2バネ部材7からの付勢に抗して、第1ワイヤ91を介して当該踏力が入力アーム5に伝えられ、第1アーム1が前記踏力の大きさに応じてストッパ43から離隔する方向へ揺動する。このとき、第1アーム1に取り付けられた爪部3の摺動部32(図5参照)が基板4のガイド部40に設けられた第1領域41上を摺動する。
【0078】
図7(b)に示したように、ガイド部40の第1領域41内にあっては、第1アーム1の揺動に伴って、爪部3に設けられた第1係合部31が第2アーム2に設けられた第2係合部22に係合し、第2アーム2及び出力アーム6も前述した制御部70(図6参照)からの引力に抗してストッパ44から離隔する方向へ揺動し、出力アーム6に連結された第2ワイヤ92を介して制御部70(図6参照)に前記踏力が伝えられる。これによって、自動車の駆動部の出力が上昇して、自動車が発進し又は発進後の自動車の速度が増加する、通常運転が実施される。
【0079】
前述したように、ガイド部40の第1領域41は、第2アーム2の一端から支持軸45までの間の寸法と略同じ寸法を半径とする円弧になしてあるため、爪部3の第1係合部31と第2アーム2の第2係合部22との相対位置に変化は生じず、従って第1係合部31と第2係合部22とは相互にしっかり係合している。これによって、第1領域41にあっては、第1アーム1とともに第2アーム2が揺動し、第1アーム1に伝えられた前記踏力はそのまま第2アーム2に伝えられる。
【0080】
図7(c)に示したように、アクセルペダル60(図6参照)に更に踏力が加えられると、第1アーム1が更にストッパ43から離隔する方向へ揺動して、爪部3の摺動部32(図5参照)が基板4のガイド部40に設けられた第2領域42上を摺動する。前述したようにガイド部40の第2領域42は、第1領域41の曲率より緩い曲率の円弧になしてあり、第2領域42内にある第2アーム2は基板4の他側縁側へ向かうに連れて、第2係合部22を構成する先鋭部22aが基板4のガイド部40の位置から漸次退行するように揺動する。これに対して、爪部3はその摺動部32がガイド部40上を摺動するため、爪部3の基体30が第1アーム1の案内部10及び庇部11に案内されて庇部11へ漸次接近し、これに伴って第1バネ部材14が収縮して行く。
【0081】
このように、ガイド部40の第2領域42にあっては、爪部3に設けられた第1係合部31の先端とガイド部40の相対位置は同じであるが、第2係合部22を構成する先鋭部22aが基板4のガイド部40の位置から漸次退行するため、第1係合部31と第2係合部22との係合は漸次解除されていくものの、第1係合部31が第2係合部22に係合している限り、第1アーム1に伝えられた踏力は第2アーム2に伝えられる。これによって、自動車は所定の速度まで加速することができる。
【0082】
一方、アクセルペダル60(図6参照)の踏力が除去されると、前述した第2バネ部材7からの付勢によって第1アーム1が基板4の一側縁側へ揺動し、また、制御部70からの引力によって第2アーム2も基板4の一側縁側へ揺動するため、自動車は減速する。このように、第1係合部31が第2係合部22に係合している限り、アクセルペダル60に印加される踏力が第2アーム2を介して制御部70に伝えられるため、アクセルペダル60に印加される踏力の大きさに応じて自動車を加減速させることができる。
【0083】
これに対して、運転者の足によってアクセルペダル60(図6参照)が最大限に至るまで踏み込まれ、運転者が踏み込んだ足をアクセルペダル60から離すことができないときに自動車の急発進が生じる。
【0084】
このような踏力がアクセルペダル60に印加されると、第1アーム1が基板4の他側縁近傍まで揺動するが、前述したようにガイド部40の第2領域42において、第1係合部31と第2係合部22との係合が解除されて、第1アーム1から第2アーム2に前記踏力が伝えられず、一方、図8(d)に示したように、前述した引力によって第2アーム2が基板4の一側縁側に設けたストッパ43に当接するまで揺動するため、制御部70及び駆動部が自動車の停止状態と同じ状態になる。これによって、自動車が急発進することが確実に回避される。また、このように第2アーム2が基板4の一側縁側に設けたストッパ43に当接するまで揺動することによって、駆動部の出力を自動車の停止状態と同じ状態まで低下させるため、当該自動車に急ブレーキが作用せず、従って後続車による追突事故を防止することもできる。
【0085】
そして、運転者が踏み込んだ足をアクセルペダル60から離すことができると、第2バネ部材7からの付勢によって、図8(e)に示したように、第1アーム1が基板4の一側縁側へ揺動して第1係合部31の一端面と第2係合部22の一端面とが当接するが、前述したように第1係合部31の端面及び第2係合部22の端面はガイド部40の第1領域41の経方向の面に対して対称な円弧状になしてあるため、爪部3の基体30が基板4のガイド部40から離隔する方向へ後退しつつ、第1係合部31は第2係合部22の端面上を摺動して、第1係合部31が第2係合部22を乗り越えて基板4の一端縁側へ揺動し、対応するストッパ44に当接する。これによって、図8(f)に示したように、第1アーム1及び第2アーム2は、図7(a)に示した元の状態に復帰し、第1係合部31と第2係合部22とが再び係合し得るようになり、アクセルペダル60に印加される踏力が第1アーム1及び第2アーム2を介して制御部70へ伝えられ得るようになる。
【0086】
このように本発明に係る急発進回避装置にあっては、アクセルペダル60の操作を変更することなく、自動車の急発進を回避することができる。また、アクセルペダル60に過大な踏力が印加された場合、当該踏力が制御部70に伝えられることを機械的に遮断することができ、従って自動車の急発進を確実に回避することができる。一方、本発明に係る急発進回避装置は比較的簡単な構造であるため、製造コストを抑制することができ、また、故障が発生し難く、メンテナンスも容易である。
【0087】
(発明を実施するための第2の形態)
図9は本発明を実施するための第2の形態に係る急発進回避装置の正面図であり、耐久性を向上させてある。また、図10図9に示した急発進回避装置のX−X線による部分断面図である。なお、両図面中、図1図5に示した部分に対応する部分は同じ番号を付してその説明を省略する。
【0088】
図9及び図10に示したように、爪部3には被案内部として前述した摺動部32(図5参照)に替えて、基板4のガイド部40に転接する転接部32aが設けてある。転接部32aは、例えば図10に示したように環状のベアリングを用いて構成することができるが、それ以外にも車、ローラ、ボール等を適用してもよい。
【0089】
このように被案内部として転接部32aを爪部3に設けた場合、第1アーム1の揺動に伴って爪部3の転接部32aが基板4のガイド部40上を転接するため、被案内部及びガイド部40の双方に摩耗が生じ難く、従って両部品の耐久性が向上する。
【0090】
(発明を実施するための第3の形態)
図11及び図12は本発明を実施するための第3の形態に係る急発進回避装置の正面図及び背面図であり、リニア状に動作することによってその全体をコンパクトになしてある。また、図13は、図11に示した急発進回避装置の分解斜視図、図14図11に示した急発進回避装置のXIV−XIV線による断面図である。なお、これら各図中、図1に示した部分に対応する部分には同じ番号が付してある。
【0091】
図11図14に示したように、本急発進回避装置は適宜形状(図11に示した場合にあっては横長長方形)の基板4aを具備している。基板4aの適宜位置には、当該基板4aの長手方向へ長い帯状の窓部40aが基板4aの長辺と平行に開設してある。この基板4aの正面側であって前記窓部40aの両側縁部にはそれぞれ、スライドレール状の対をなす第1ガイド部41a,41aが基板4aの長辺と平行に取り付けてあり、同様に、基板4aの背面側であって前記窓部40aの両側縁部にはそれぞれ、スライドレール状の対をなす第2ガイド部42a,42aが基板4aの長辺と平行に取り付けてある。第1ガイド部41a,41a及び第2ガイド部42a,42aの長さ寸法は前記窓部40aの長さより長くしてあり、窓部40aは第1ガイド部41a,41a及び第2ガイド部42a,42aの長手方向の中途位置に配されている。
【0092】
第1ガイド部41a,41a内には、該第1ガイド部41a,41aにてその長手方向へ案内される直方体状の第1スライダ(第1移動体)1aが進退自在に嵌合してある。この第1スライダ1aの前記基板4aの一側側の端部には、第1ワイヤ91の一端が固定されており、該第1ワイヤ91の他端は図6に示したアクセルペダル60に連結されるようになっている。また、第2ガイド部42a,42a内には、該第2ガイド部42a,42aにてその長手方向へ案内される直方体状の第2スライダ(第2移動体)2aが進退自在に嵌合してある。この第2スライダ2aの前記基板4aの他側側の端部には、第2ワイヤ92の一端が固定されており、該第2ワイヤ92の他端は図6に示した制御部70に連結されるようになっている。
【0093】
図14に示したように第1スライダ1a及び第2スライダ2aは、基板4aの両面に前記窓部40aを挟んで対峙するようになっており、窓部40a内の領域では第1スライダ1a及び第2スライダ2aは互いに対向する部分で相互に係合し、アクセルペダル60に印加された踏力によって第1ワイヤ91に引力が与えられた場合、第1スライダ1a及びこれに係合した第2スライダ2aが基板4aの一側側へ摺動し、第2ワイヤ92をして前記引力を制御部70に与え得るようになっている。
【0094】
一方、第1ガイド部41a,41a及び第2ガイド部42a,42aの基板4aの他端側の端部には、第1スライダ1a及び第2スライダ2aを当接させるストッパ43aが配設してある。第1スライダ1aの正面であって前記第1ガイド部41a,41の間隙に対向する部分の適宜の位置と、前記ストッパ43aとの間にはバネといった第1弾性部材18aが架設してあり、前述した如き第1ワイヤ91からの引力が与えられていない場合、第1スライダ1aは第1弾性部材18aによってストッパ43aに当接されるようになっている。また、前同様、第2ワイヤ92には、前記制御部70から当該制御部70側へ向かう引力が与えられるようになっており、これによって第2スライダ2aはアクセルペダル60に踏力が印加されていない場合、前記ストッパ43aに当接されるようになっている。
【0095】
図11及び図13に示したように、第1スライダ1aは直方体状の第1基体10aを具備しており、前述したように第1基体10aの前記第2スライダ2aに対向する部分とは反対側である正面であって、基板4aの一側がわ、即ち第1基体10aの一端側の適宜位置に第1弾性部材18aの一端が固定してある。この第1基体10aの背面であって長手方向の略中央の位置には、前記第2スライダ2aの後述する第2爪部3aが係合する係合用凹部12aが設けてある。係合用凹部12aは背面視が略長方形であり、側面視がレ字状になしてある。具体的には、係合用凹部12aの第1基体10aの他端側の端面は第1基体10aの背面に対して略直角になして前記第2爪部3aが当接する当接部121aになしてあり、係合用凹部12aの底面は第1基体10aの一他端側へ向かうにつれてその深さが漸次浅くなるテーパ状になしてある。
【0096】
図15は前述した第2スライダ2aを示す斜視図であり、(a)は第2爪部3aが突出した状態を、また(b)は第2爪部3aが退後した状態をそれぞれ示している。図13から図15を用いて第2スライダ2aの構造を詳述する。
【0097】
図13から図15に示したように、第2スライダ2aは第2基体20aを具備している。第2基体20aの両側部には板状の側壁部23a,23aが第2基体20aの幅方向へ互いに距離を隔てて平行に配設してあり、第2基体20aの両端部に当該第2基体20aの長手方向へ互いに距離を隔てて配された第1ブロック21a及び第2ブロック22aが両側壁部23a,23aによって挟持固定されている。第1ブロック21a及び第2ブロック22aの第1スライダ1aに対向する裏面は、側壁部23a,23aと略面一にしてあり、一方、第1ブロック21a及び第2ブロック22aの正面側は側壁部23a,23aから突出させてある。
【0098】
第1ブロック21a及び第2ブロック22aの幅寸法は、前述した第2ガイド部42a,42aの間の寸法より僅かに狭くしてあり、これによって第1ブロック21a及び第2ブロック22aは、第2ガイド部42a,42aの間から突出するようになっている(図12参照)。第1ブロック21aと第2ブロック22aとの間には天井部24aが架設してあり、また、第2基体20aの他端側に配設された第2ブロック22aに前述した第2ワイヤ92(図12参照)の一端が固定されている。
【0099】
第2基体20aの両側壁部23a,23aの間であって、第1ブロック21aと第2ブロック22aとの間隙の部分は開口部25aになっており、該開口部25aには第2爪部3aが揺動可能に挿入されている。
【0100】
第2爪部3aは略長方形の厚板を横長になるように平伏させた形状をなしており、第2爪部3aの前述した第1スライダ1aに対向する側である裏面は、第2爪部3aの一側近傍から他側近傍に亘って湾曲させて、基板4a及び第1基体1aを摺接させる摺接部30aになしてある。一方、かかる摺接部30aと第2爪部3aの前記第2基体20aの一端側の側面との角部38aには第2爪部3aを貫通する貫通孔が開設してあり、前述した両側壁部23a,23aの対応する部分にもそれぞれ貫通孔が開設してある。これら貫通孔には軸33aが挿通してあり、これによって第2爪部3aは軸33a回りに揺動可能になっている。
【0101】
また、前記摺接部30aと第2爪部3aの前記第2基体20aの他端側の側面との角部は、前述した係合用凹部12aの当接部121aに当接させて、第2爪部3aと係合用凹部12aとを係合させる係合部31aになしてある。一方、第2爪部3aの前述した天井部24aに対向する部分には固定用穴35aが開設してあり、第2爪部3aと天井部24aとの間に介装させた第2弾性部材36aの一端が前記固定用穴35aに嵌合固定させてある。そして、第2爪部3aは第2弾性部材36aからの付勢によって、係合部31aが開口部25aから突出するようになっている。
【0102】
ところで、第2爪部3aには、第2爪部3aの前記第2基体20aの他端側の側面から所定寸法だけ延設して第2ストッパ37aが形成してあり、前述した第2ブロック22aには第2基体20aの開口部25a内へ突出させた突出部221aが設けてある。そして、前述した如く第2弾性部材36aからの付勢によって、第2爪部3aが揺動した場合、第2ストッパ37aが突出部221aに当接して、第2爪部3aの係合部31aが開口部25aから適宜寸法だけ突出した状態で、第2爪部3aの揺動を停止し得るようになっている。
【0103】
次に、このような急発進回避装置によって自動車の急発進を防止する方法について説明する。
【0104】
図16及び図17は、本発明に係る急発進回避装置の動作を説明する説明図である。両図中、図11図14に示した部分に対応する部分には同じ番号が付してある。
【0105】
前述したように、自動車が停止してアクセルペダル60(図6参照)に踏力が加えられていない場合、第1スライダ1a及び第2スライダ2aはストッパ43aに当接している(図11及び図12参照)。そして、第2弾性部材36aからの付勢によって、第2スライダ2aの第2爪部3aを構成する係合部31aが第2基体20aの開口部25aから適宜寸法だけ突出した状態になっており、この係合部31aが第1スライダ1aの係合用凹部12aに進入して、当該係合用凹部12aの当接部121aに当接し、第2スライダ2aの第2爪部3aと第1スライダ1aの係合用凹部12aとが相互に係合している。このとき、第2スライダ2aの係合部31aと第1スライダ1aの当接部121aとの結合は、基板4aに開設された窓部40a内であって、基板4aの一側がわの端部(なお、以後にあっては単に窓部40aの一端部という。)近傍に位置している。
【0106】
図16(a)に示したように、運転者によって徐々にアクセルペダル60(図6参照)に踏力が加えられると、第1弾性部材18aからの付勢に抗して、第1ワイヤ91を介して当該踏力が第1スライダ1aに伝えられ、第1スライダ1aが前記踏力の大きさに応じて第1ガイド部41a,41a内を前記ストッパ43aから離隔する方向へ前進し、第1スライダ1aの係合用凹部12aと相互に係合した第2爪部3aを有する第2スライダ2aもストッパ43aから離隔する方向へ前進する。
【0107】
このとき、第2スライダ2aの係合部31aと第1スライダ1aの当接部121aとの結合位置も窓部40aの一端部から他端部へ移動し、これによって基板4aの窓部40aの他端部に臨む部分が第1スライダ1aと第2スライダ2aとの間に漸次進入して行く。しかしながら、第2スライダ2aの係合部31aと第1スライダ1aの当接部121aとの結合位置が基板4aの窓部40aの一端近傍から、前述した基板4aの前記部分に達する直前までの領域である第1領域内にあっては、第1スライダ1aの前進に伴って、第1スライダ1aの係合用凹部12aと第2スライダ2aの第2爪部3aに設けられた係合部31aとが係合し続けるため、第2スライダ2aも前述した制御部70(図6参照)からの引力に抗してストッパ43aから離隔する方向へ前進し、第2スライダ2aに連結された第2ワイヤ92を介して制御部70(図6参照)に前記踏力が伝えられる。これによって、自動車の駆動部の出力が上昇して、自動車が発進し又は発進後の自動車の速度が増加する、通常運転が実施される。
【0108】
次に、図16(b)に示したように、アクセルペダル60(図6参照)に更に踏力が加えられると、第1スライダ1a及び第2スライダ2aが更に前記ストッパ43aから離隔する方向へ前進して行くが、前述した第1領域内であるため、第2スライダ2aの係合部31aと第1スライダ1aの当接部121aとの結合は維持され、前同様、アクセルペダル60(図6参照)への踏力に応じて第2スライダ2aが前進し、第2ワイヤ92を介して制御部70(図6参照)に伝えられる。これによって、自動車は所定の速度まで加速することができる。
【0109】
このとき、基板4aの窓部40aの他端部に臨む部分が第1スライダ1aと第2スライダ2aとの間に進入して行き、その縁部が第2スライダ2aの第2爪部3aに設けられた摺接部30aに当接し、第1スライダ1a及び第2スライダ2aが更に前進するに従って、基板4aの前記部分の縁部が摺接部30a上を摺動して、第2爪部3aを押し上げつつ第1スライダ1aと第2スライダ2aとの間に更に進入する。これによって、第2爪部3aは前述した軸33a回りに第1スライダ1aから離隔する方向へ漸次揺動するが、前述した第1領域内にあっては、第2爪部3aの係合部31aは第1スライダ1aの当接部121aから離隔せずに、第1スライダ1aの係合用凹部12aの当接部121aと第2スライダ2aの第2爪部3aに設けられた係合部31aとの係合が維持される。
【0110】
一方、アクセルペダル60(図6参照)の踏力が除去されると、前述した第1弾性部材18aからの付勢によって第1スライダ1aが前記ストッパ43a側へ後退し、また、制御部70からの引力によって第2スライダ2aも前記ストッパ43a側へ後退するため、自動車は減速する。このように、第1スライダ1aと第2スライダ2aとが係合している限り、アクセルペダル60に印加される踏力が第2スライダ2aを介して制御部70に伝えられるため、アクセルペダル60に印加される踏力の大きさに応じて自動車を加減速させることができる。
【0111】
一方、前述したように運転者の足によってアクセルペダル60(図6参照)が最大限に至るまで一気に踏み込まれ、運転者が踏み込んだ足をアクセルペダル60から離すことができないときに自動車の急発進が生じる。
【0112】
このような踏力がアクセルペダル60に印加されると、第2スライダ2aの係合部31aと第1スライダ1aの当接部121aとの結合位置が、基板4aの窓部40aの他端部からそれを超える領域である第2領域まで前進するが、これによって基板4aの前記窓部40aの他端部に臨む部分が、第2スライダ2aの係合部31aと第1スライダ1aの当接部121aとの結合部分の間に進入して、両者の結合が解除されるため、第1スライダ1aから第2スライダ2aに前記踏力が伝えられなくなる。一方、図16(c)に示したように、前述した引力によって第2スライダ2aが、第2ガイド部42a,42aの基板4aの他端側の端部に配設されたストッパ43aに当接するまで後退するため、制御部70及び駆動部が自動車の停止状態と同じ状態になる。これによって、自動車が急発進することが確実に回避される。また、このように第2スライダ2aが前記ストッパ43aに当接するまで揺動することによって、駆動部の出力を自動車の停止状態と同じ状態まで低下させるため、当該自動車に急ブレーキが作用せず、従って後続車による追突事故を防止することもできる。
【0113】
そして、運転者が踏み込んだ足をアクセルペダル60から離すことができると、第1弾性部材18aからの付勢によって、図17(d)に示したように、第1スライダ1aが第1ガイド部41a,41aの基板4aの他端側へ後退して、第1スライダ1aの第1基体10aの背面が第2スライダ2aの第2基体20aの背面に当接しようとするが、前述したように第2スライダ2aを構成する第2爪部3aの前記角部38aに第1基体1aの背面が摺接し、第1スライダ1aが円滑に後退する。更に、第1スライダ1aが後退すると、第1基体10aの端部が第2スライダ2aを構成する第2爪部3aの摺接部30aに当接し、当該摺接部30a上を摺動して、第2弾性部材36aからの付勢に抗して第2爪部3aを押し上げて行く。そして、図17(e)に示したように、第1スライダ1a及び第2スライダ2aは、図14に示した元の状態に復帰し、第1基体10aの係合用凹部12aの当接部121aと第2基体20aに設けられた第2爪部3aの係合部31aとが再び係合し、アクセルペダル60に印加される踏力が第1スライダ1a及び第2スライダ2aを介して制御部70へ伝えられ得るようになる。
【0114】
本急発進回避装置にあっては、前同様、アクセルペダル60の操作を変更することなく、自動車の急発進を回避することができる。また、アクセルペダル60に過大な踏力が印加された場合、当該踏力が制御部70に伝えられることを機械的に遮断することができ、従って自動車の急発進を確実に回避することができる。このとき、当該自動車に急ブレーキが作用せず、従って後続車による追突事故を防止することもできる。一方、本発明に係る急発進回避装置は比較的簡単な構造であるため、製造コストを抑制することができ、また、故障が発生し難く、メンテナンスも容易である。更に、本急発進回避装置にあっては、基板4aの両面にそれぞれ配設した直線状の第1ガイド部41a,41a及び直線状の第2ガイド部42a,42a内を第1スライダ1a及び第2スライダ2aが進退するリニア機構になしてあるため、急発進回避装置がよりコンパクトであり、狭い空間であっても本急発進回避装置を配設することができる。
【0115】
なお、本実施の形態では第1弾性部材18a及び第2弾性部材36aをバネで構成した場合を示したが、本発明はこれに限らずゴムといった弾性体を用いることもできる。
【符号の説明】
【0116】
1 第1アーム(第1移動体)
1a 第1スライダ(第1移動体)
2 第2アーム(第2移動体)
2a 第2スライダ(第2移動体)
3 爪部
3a 第2爪部
4 基板
4a 基板
5 入力アーム
6 出力アーム
7 第2バネ部材(第2付勢部材)
12a 係合用凹部
14 第1バネ部材(第1付勢部材)
22 第2係合部
30 基体
31 第1係合部
31a 係合部
32 摺動部(被案内部)
32a 転接部(被案内部)
33a 軸
41 第1領域
42 第2領域
43 ストッパ
43a ストッパ
44 ストッパ
45 支持軸
【要約】
【課題】 アクセル操作を変更することなく自動車の急発進を回避することができる急発進回避装置を提供する。
【解決手段】 基板4の一面に、アクセルペダルに印加された踏力がその一端側に伝えられる第1アーム1の他端が、また、基板4の他面に、その一端側と制御部とが接続される第2アーム2の他端が、それぞれ基板4の両側縁間で揺動可能に取り付けてある。第1アーム1の一端側の基板4の縁から突出させた部分には、爪部3が第1アーム1の長手方向へ進退可能に取り付けてある。そして、前記踏力によって、第1アーム1が基板4の一側縁側から他側縁側へ揺動する場合、爪部3が第2アーム2の一端部に係合して、当該第2アーム2を基板4の一側縁側から他側縁側へ揺動させる。更に、第1アーム1が基板4の所定位置より他側縁側へ揺動する場合、爪部3が後退して爪部3と第2アーム2の一端部との係合が解除される。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18