特許第6205517号(P6205517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6205517
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】微細繊維製造装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/04 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   D01D5/04
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-117409(P2017-117409)
(22)【出願日】2017年6月15日
【審査請求日】2017年7月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000223034
【氏名又は名称】株式会社ROKI
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】藤島 聖剛
(72)【発明者】
【氏名】仲辻 真章
(72)【発明者】
【氏名】竹浪 教人
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/013052(WO,A1)
【文献】 特開昭60−86051(JP,A)
【文献】 特開昭49−125632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D1/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のエアを所定の圧力で噴射する第1のノズルと、
前記第1のエアよりも低い圧力で第2のエアを噴射する第2のノズルと、
前記第1及び第2のエアによって紡糸される微細繊維の原料を供給する吐出ノズルと、を備えた微細繊維製造装置であって、
前記第1のノズルは略水平に前記第1のエアを噴射するように配置されると共に、前記吐出ノズルは前記原料を略鉛直方向に供給するように配置され、
前記第2のノズルは、前記第1のノズルと前記吐出ノズルのなす角の間に前記第1のエアに向かって前記第2のエアを噴射するように配置されることを特徴とする微細繊維製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の微細繊維製造装置において、
前記第2のノズルは、前記第1のノズルに対して水平方向から20°から60°傾いて配置されることを特徴とする微細繊維製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の微細繊維製造装置において、
前記吐出ノズルの先端は、前記第2のノズルのノズル口よりも上方に配置されることを特徴とする微細繊維製造装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の微細繊維製造装置において、
前記第1のエアと前記第2のエアから噴射される噴射圧力は流速比で、2〜3:1であることを特徴とする微細繊維製造装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の微細繊維製造装置において、
前記第1のノズル,前記第2のノズル及び前記吐出ノズルの少なくともいずれか一方は、加熱装置を備えることを特徴とする微細繊維製造装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の微細繊維製造装置において、
前記第1のノズル及び前記第2のノズルの少なくともいずれか一方は、ノズル口がフラットノズルで構成されることを特徴とする微細繊維製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細繊維製造装置に係り、特に、より容易に微細繊維を製造することができ、生産性を向上させた微細繊維製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維径が1〜15μm程度の極細繊維は、種々の用途に用いられており、その製造方法も種々の方法が知られている。
【0003】
極細繊維の主な製造方法としては、メルトブローン方式等が知られている。メルトブローン方式は、ノズルからポリマー溶液を吐出するとともに、その周囲から吐出されたポリマー溶液に向けて熱風を送り込むことにより、ポリマー溶液を延伸させて、極細繊維を製造する方式である。
【0004】
具体的には、極細繊維の生産性を向上させるために、特許文献1に記載された発明のように、略直方体の紡糸ダイの一の長手面において、長手方向に配置された複数のノズル孔から熱可塑性重合体を吐出させて極細繊維を得る工程、前記複数のノズル孔の配置方向片側のみに設けられたスリットから熱風を噴出させて、吐出された前記極細繊維を、前記紡糸ダイの下方に吸引させて、前記極細繊維を堆積させる工程を具備する極細繊維不織布の製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6063012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年繊維径が更に細い所謂ナノファイバーと呼ばれる微細繊維を容易に製造することが求められている。繊維径が20〜200nm程度の微細繊維の製造方法は、例えば、高電圧を印加した針状のノズルに高分子溶液を供給することで、この針状のノズルから線状に流出する高分子溶液に電荷が帯電され、高分子溶液の溶媒の蒸発に伴って帯電電荷間の距離が小さくなって作用するクーロン力が大きくなり、そのクーロン力が線状の高分子溶液の表面張力より勝った時点で線状の高分子溶液が爆発的に延伸される現象が生じ、この現象が一次、二次、三次と繰り返されることで微細繊維が製造されるエレクトロスピニング法が知られているが、針状のノズルを用いた製造方法では、微細繊維の大量生産が難しいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、容易に長繊維の微細繊維を製造することができ、生産性を向上させた微細繊維の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る微細繊維製造装置は、第1のエアを所定の圧力で噴射する第1のノズルと、前記第1のエアよりも低い圧力で第2のエアを噴射する第2のノズルと、前記第1及び第2のエアによって紡糸される微細繊維の原料を供給する吐出ノズルと、を備えた微細繊維製造装置であって、前記第1のノズルは略水平に前記第1のエアを噴射するように配置されると共に、前記吐出ノズルは前記原料を略鉛直方向に供給するように配置され、前記第2のノズルは、前記第1のノズルと前記吐出ノズルのなす角の間に前記第1のエアに向かって前記第2のエアを噴射するように配置されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る微細繊維製造装置において、前記第2のノズルは、前記第1のノズルに対して水平方向から20°から60°傾いて配置されると好適である。
【0010】
また、本発明に係る微細繊維製造装置において、前記吐出ノズルの先端は、前記第2のノズルのノズル口よりも上方に配置されると好適である。
【0011】
また、本発明に係る微細繊維製造装置において、前記第1のエアと前記第2のエアから噴射される噴射圧力は流速比で、2〜3:1であると好適である。
【0012】
また、本発明に係る微細繊維製造装置において、前記第1のノズル,前記第2のノズル及び前記吐出ノズルの少なくともいずれか一方は、加熱装置を備えると好適である。
【0013】
また、本発明に係る微細繊維製造装置において、前記第1のノズル及び前記第2のノズルの少なくともいずれか一方は、ノズル口がフラットノズルで構成されると好適である。
【0014】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る微細繊維製造装置は、第1のエアを所定の圧力で噴射する第1のノズルと、前記第1のエアよりも低い圧力で第2のエアを噴射する第2のノズルと、前記第1及び第2のエアによって紡糸される微細繊維の原料を供給する吐出ノズルと、を備え、前記第1のノズルは略水平に前記第1のエアを噴射するように配置されると共に、前記吐出ノズルは前記原料を略鉛直方向に供給するように配置され、前記第2のノズルは、前記第1のノズルと前記吐出ノズルのなす角の間に前記第1のエアに向かって前記第2のエアを噴射するように配置されるので、第2のエアによって気圧層相当の流れを積極的に形成することができるので、容易に長繊維の微細繊維を製造することができ、微細繊維の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る微細繊維製造装置のノズル部材の構成を説明するための断面図。
図2図1におけるA部拡大図。
図3】低圧エアによって延伸された繊維の拡大図。
図4】高圧エアによって延伸された微細繊維の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、本発明において、微細繊維とは、繊維径が20〜200nm程度の繊維をいう。
【0018】
図1は、本実施形態に係る微細繊維製造装置のノズル部材の構成を説明するための断面図であり、図2は、図1におけるA部拡大図であり、図3は、低圧エアによって延伸された繊維の拡大図であり、図4は、高圧エアによって延伸された微細繊維の拡大図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る微細繊維製造装置1は、第1のノズル11,第2のノズル12及び吐出ノズル13を備えるノズル部材10と、第1のノズル11及び第2のノズル12から噴射された低圧及び高圧エアによるエアの流れによって吐出ノズル13から供給された原料であるポリマー溶液が延伸された微細繊維を捕集する図示しない捕集装置とを備えている。
【0020】
図2に示すように、本実施形態に係る微細繊維製造装置1は、第1のノズル11から噴射された高圧エアによって形成される高速エアの流れFHと、第2のノズル12から噴射された低圧エアによって形成される低速エアの流れFLとが形成され、吐出ノズル13から供給されたポリマー溶液が低速エアの流れFLと高速エアの流れFHとによって2段階に延伸されるように構成されている。
【0021】
図1に示すように、ノズル部材10には、高圧エアの供給源に接続される高圧マニホルド14を介して高圧エアを噴射する第1のノズル11と、低圧エアの供給源に接続される低圧マニホルド15を介して低圧エアを噴射する第2のノズル12とポリマー溶液ストックタンク17からギヤポンプ16を介してポリマー溶液を供給する吐出ノズル13とを備えている。また、ノズル部材10の吐出ノズル13近傍の外周にはヒーターなどの加熱装置30が取り付けられている。なお、本実施形態に係る微細繊維製造装置1に用いられるノズル部材10では、第1のノズル11をフラットノズル、第2のノズル12を直進ノズル、吐出ノズル13をノズルピッチが10mm以上に設定されたコーム状に形成した場合について説明を行う。
【0022】
ここで、第1のノズル11から噴射される高圧エアは、例えば、ノズル径1.0mm×50mmに対し0.2MPaで供給され、第2のノズル12から噴射される低圧エアは、ノズル径1.5mmに対して0.03MPaで供給されると好適であり、高圧エアと低圧エアの流速比は、2〜3:1程度に設定されると好適である。具体的には、低圧エアの流速が200〜300m/secに設定され、高圧エアの流速が600m/sec以上に設定される。
【0023】
このように、第1のノズル11や第2のノズル12が高圧又は低圧マニホルド14、15を介して高圧又は低圧エアを噴射するので、第1のノズル11又は第2のノズル12がフラットノズルで構成された場合であっても均等な圧力のエアを噴射することが可能となる。
【0024】
なお、本実施形態に係る微細繊維製造装置1に用いられるポリマー溶液はポリマーを溶媒で溶解させたものが適宜用いられるが、用いられるポリマーとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンやポリウレタンなどが用いられる。また、ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等が用いられ、ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11等が用いられ、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンなどが用いられる。
【0025】
また、溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジベンジンアルコール、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトン、ヘキサフルオロアセトン、フェノール、ギ酸、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、安息香酸メチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、クロロホルム、臭化メチル、臭化エチル、臭化プロピル、酢酸、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンなどが用いられる。
【0026】
また、ポリマー溶液はギヤポンプ16を介して供給されるので、脈動などが発生することなく連続して安定的にポリマー溶液を供給することが可能となる。また、ポリマー溶液の供給は、ギヤポンプ16を介する場合に限られず、種々の供給方法を適用することが可能である。例えば、ポリマー溶液を加圧エアによる押し出しによって供給するように構成しても構わない。
【0027】
さらに、ノズル部材10には、加熱装置30が取り付けられているので、製造現場の気温が低下した場合等にポリマー溶液の温度を上げることができるので、ポリマー溶液の粘度を安定させることができる。なお、加熱装置30は、電熱線等を用いても構わないし、温水等を用いても構わない。
【0028】
ここで、第1のノズル11は、略水平方向に高圧エアを噴射するように配置され、吐出ノズル13はポリマー溶液を鉛直下方に供給するように鉛直方向下側に向いて配置されている。このように、第1のノズル11と吐出ノズル13とは、互いに概略直角になるように配置されている。また、第2のノズル12は、第1のノズル11と吐出ノズル13のなす角の間に配置され、低圧エアを第1のノズル11が噴射した高圧エアに向かって噴射するように配置されている。なお、第2のノズル12は、第1のノズル11に対して20〜60°傾いて配置されると好適であり、より好ましくは、40°程度に配置されると好適である。ここで、第2のノズル12が20°よりも小さい角度で配置されると、微細繊維に粒子が発生すると共に捕集具合が悪化し、60°よりも大きい角度に配置されると吐出ノズル13から供給されたポリマー溶液が高速エアの流れFHを抜けてしまい検証できない結果となった。
【0029】
また、図2に示すように、吐出ノズル13の先端は、第2のノズル12のノズル口よりも上方に配置されており、第2のノズル12から噴射される低圧エアの流れFLにポリマー溶液をのせるように配置されている。また、図示しない位置調整機構を用いて、このように吐出ノズル13から供給されるポリマー溶液が第2のノズル12から噴射された緩やかな気流に乗るように適宜調整可能に構成されている。
【0030】
このように構成された本実施形態に係る微細繊維製造装置1は、吐出ノズル13から供給されたポリマー溶液が、低圧エアによって、ポリマー溶液の1次爆発を起こし図3に示すように平均繊維径が500nmまで延伸され、高圧エアによって、図4に示すように平均繊維径が100nmまで延伸され、バラツキの少ないナノレベルの微細繊維を製造することが可能となることが確認できた。また、本実施形態に係る微細繊維製造装置1は、各種ノズルが一体となったノズル部材10を用いているので、より安定的に繊維生成が可能となり、生産性をより向上させることができる。
【0031】
以上説明した本実施形態に係る微細繊維製造装置において、第1のノズル11及び第2のノズル12によって高速エアの流れ及び低速エアの流れを用いて3段階にポリマー溶液を延伸させる場合について説明をおこなったが、延伸の回数はこれに限定されず例えば、複数のノズルを用いて3段階以上行っても構わない。また、延伸に用いるポリマー溶液は、溶媒方式を用いた場合について説明を行ったが、ポリマー溶液は溶融方式を用いても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0032】
1 微細繊維製造装置, 10 ノズル部材, 11 第1のノズル, 12 第2のノズル, 13 吐出ノズル, 14 高圧マニホルド, 15 低圧マニホルド, 16 ギヤポンプ, 17 溶液タンク, 30 加熱装置。
【要約】
【課題】容易に長繊維の微細繊維を製造することができ、生産性を向上させた微細繊維の製造装置を提供する。
【解決手段】第1のエアを所定の圧力で噴射する第1のノズルと、前記第1のエアよりも低い圧力で第2のエアを噴射する第2のノズルと、前記第1及び第2のエアによって紡糸される微細繊維の原料を供給する吐出ノズルと、を備えた微細繊維製造装置であって、前記第1のノズルは略水平に前記第1のエアを噴射するように配置されると共に、前記吐出ノズルは前記原料を略鉛直方向に供給するように配置され、前記第2のノズルは、前記第1のノズルと前記吐出ノズルのなす角の間に前記第1のエアに向かって前記第2のエアを噴射するように配置される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4