特許第6205521号(P6205521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6205521
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】制御方法、及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/06 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   H02P7/06 G
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-502738(P2017-502738)
(86)(22)【出願日】2016年8月25日
(86)【国際出願番号】JP2016074811
【審査請求日】2017年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】夏木 亮
(72)【発明者】
【氏名】寺島 宏次
【審査官】 田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−311633(JP,A)
【文献】 特開2011−176935(JP,A)
【文献】 特開2012−222855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 7/00,7/03−7/347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から供給される電力により駆動されるモータと、当該モータを駆動する電力の供給を制御するスイッチ素子とを備えるモータ駆動システムを制御する制御装置が実行する制御方法であって、
前記モータと前記スイッチ素子との間の電圧を検出するモータ電圧検出ステップと、
前記モータ電圧検出ステップによって検出された検出電圧が、第1閾値以上になってからの所定の期間内に、当該検出電圧が、前記第1閾値より大きい第2閾値以上になったか否かに基づいて、前記検出電圧が、前記スイッチ素子の異常によるものか、外力により前記モータの回転軸が回転した起電力によるものかを判定する判定ステップと
を含む制御方法。
【請求項2】
前記判定ステップにおいて、前記検出電圧が前記所定の期間内に前記第2閾値以上になった場合に、前記検出電圧が前記スイッチ素子の異常によるものであると判定し、前記検出電圧が前記所定の期間内に前記第2閾値に達していない場合に、前記検出電圧が外力により前記モータの回転軸が回転した起電力によるものであると判定する
請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記直流電源の電圧を検出する電源電圧検出ステップと、
前記電源電圧検出ステップによって検出された電源電圧に基づいて、前記スイッチ素子が異常であるか否かを判定するための前記第2閾値を設定する閾値設定ステップと
を含む請求項1又は請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記所定の期間は、前記モータの回転軸に最大外力が掛かった際の前記モータの起電力特性に基づいて定められる
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項5】
前記第2閾値及び前記直流電源の電圧より高く、前記直流電源の出力が正常であると判定される第3閾値が定められており、
前記判定ステップにおいて、前記所定の期間内に、前記検出電圧が、前記第2閾値以上、且つ、前記第3閾値以下になった場合に、前記スイッチ素子が異常であると判定する
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項6】
直流電源から供給される電力により駆動されるモータと、当該モータを駆動する電力の供給を制御するスイッチ素子とを備えるモータ駆動システムを制御する制御装置であって、
前記モータと前記スイッチ素子との間の電圧を検出するモータ電圧検出部と、
前記モータ電圧検出部によって検出された検出電圧が、第1閾値以上になってからの所定の期間内に、当該検出電圧が、前記第1閾値より大きい第2閾値以上になったか否かに基づいて、前記検出電圧が、前記スイッチ素子の異常によるものか、外力により前記モータの回転軸が回転した起電力によるものかを判定する判定部と
を備える制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御方法、及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バッテリなどの直流電源から供給される電力により駆動されるモータと、当該モータを駆動する電力の供給を制御するスイッチ素子とを備えるモータ駆動システムが普及している。このようなモータ駆動システムを制御する技術として、スイッチ素子とモータとの間の電圧を検出し、検出した検出電圧に基づいて、スイッチ素子の異常(例えば、短絡故障など)を判定する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−298988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、車両を後退させるためのモータ駆動システムのように、モータの回転軸に車輪などが接続され外力が掛かる場合には、坂道などに停車した後に、重力等によって車輪が回転するとモータに起電力が発生する。そのため、上述した従来技術では、この起電力の発生により検出電圧が変化するため、例えば、車両が坂道などに停車した後に、重力等の外力により車輪が回転した場合と、スイッチ素子の異常である場合とを区別することが困難であった。すなわち、上述した従来技術では、検出電圧が、モータの回転軸に加えられた外力による起電力によるものか、スイッチ素子の異常によるものかを区別できずに、スイッチ素子の異常を正確に判定できない場合があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、モータを駆動する電力の供給を制御するスイッチ素子の異常を正確に判定することができる制御方法、及び制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、直流電源から供給される電力により駆動されるモータと、当該モータを駆動する電力の供給を制御するスイッチ素子とを備えるモータ駆動システムを制御する制御装置が実行する制御方法であって、前記モータと前記スイッチ素子との間の電圧を検出するモータ電圧検出ステップと、前記モータ電圧検出ステップによって検出された検出電圧が、第1閾値以上になってからの所定の期間内に、当該検出電圧が、前記第1閾値より大きい第2閾値以上になったか否かに基づいて、前記検出電圧が、前記スイッチ素子の異常によるものか、外力により前記モータの回転軸が回転した起電力によるものかを判定する判定ステップとを含む制御方法である。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記の制御方法において、前記判定ステップにおいて、前記検出電圧が前記所定の期間内に前記第2閾値以上になった場合に、前記検出電圧が前記スイッチ素子の異常によるものであると判定し、前記検出電圧が前記所定の期間内に前記第2閾値に達していない場合に、前記検出電圧が外力により前記モータの回転軸が回転した起電力によるものであると判定するようにしてもよい。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記の制御方法において、前記直流電源の電圧を検出する電源電圧検出ステップと、前記電源電圧検出ステップによって検出された電源電圧に基づいて、前記スイッチ素子が異常であるか否かを判定するための前記第2閾値を設定する閾値設定ステップとを含むようにしてもよい。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の制御方法において、前記所定の期間は、前記モータの回転軸に最大外力が掛かった際の前記モータの起電力特性に基づいて定められるようにしてもよい。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の制御方法において、前記第2閾値及び前記直流電源の電圧より高く、前記直流電源の出力が正常であると判定される第3閾値が定められており、前記判定ステップにおいて、前記所定の期間内に、前記検出電圧が、前記第2閾値以上、且つ、前記第3閾値以下になった場合に、前記スイッチ素子が異常であると判定するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の一態様は、直流電源から供給される電力により駆動されるモータと、当該モータを駆動する電力の供給を制御するスイッチ素子とを備えるモータ駆動システムを制御する制御装置であって、前記モータと前記スイッチ素子との間の電圧を検出するモータ電圧検出部と、前記モータ電圧検出ステップによって検出された検出電圧が、第1閾値以上になってからの所定の期間内に、当該検出電圧が、前記第1閾値より大きい第2閾値以上になったか否かに基づいて、前記検出電圧が、前記スイッチ素子の異常によるものか、外力により前記モータの回転軸が回転した起電力によるものかを判定する判定部とを備える制御装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、直流電源から供給される電力により駆動されるモータと、当該モータを駆動する電力の供給を制御するスイッチ素子とを備えるモータ駆動システムにおいて、制御装置は、モータとスイッチ素子との間の電圧を検出した検出電圧が、第1閾値以上になってからの所定の期間内に、当該検出電圧が、第1閾値より大きい第2閾値以上になったか否かに基づいて、当該検出電圧が、スイッチ素子の異常によるものか、外力によりモータの回転軸が回転した起電力によるものかを判定する。これにより、検出電圧がモータの回転軸に加えられた外力による起電力によるものか、スイッチ素子の異常によるものかを区別できるため、外力によりモータが回転した場合をスイッチ素子の異常であると誤検出することを防止することができ、スイッチ素子の異常を正確に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態によるモータ駆動システムの一例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態における制御装置によるリレースイッチの異常判定処理の一例を説明する図である。
図3】第1の実施形態における制御装置によるリレースイッチの異常判定処理の一例を示すフローチャートである。
図4】第2の実施形態における制御装置によるリレースイッチの異常判定処理の一例を説明する図である。
図5】第2の実施形態における制御装置によるリレースイッチの異常判定処理の一例を示すフローチャートである。
図6】第3の実施形態によるモータ駆動システムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による制御装置、及び制御方法について、図面を参照して説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1に示すように、モータ駆動システム1は、直流電源11と、リレースイッチ12と、抵抗(13、15)と、モータ14と、放電スイッチ16と、制御装置20とを備える。本実施形態において、モータ駆動システム1は、一例として、車両(例えば、オートバイなど)をモータ14により後退させるための駆動システムとして説明する。
【0016】
直流電源11は、例えば、バッテリなどの蓄電池であり、モータ14を駆動するための直流電力を供給する。直流電源11は、電源供給線であるノードN1を介して、リレースイッチ12に接続されている。
【0017】
リレースイッチ12(スイッチ素子の一例)は、モータ14を駆動する電力の供給を制御するスイッチであり、直流電源11と、抵抗13との間に接続されている。リレースイッチ12は、制御装置20から出力される制御信号により、オン状態(導通状態)と、オフ状態(非導通状態)とが切り替えられる。
【0018】
抵抗13は、リレースイッチ12とモータ14との間に接続され、リレースイッチ12を介して直流電源11からの直流電力をモータ14に供給する。
【0019】
モータ14は、例えば、直流モータであり、直流電源11から供給される電力により駆動される。モータ14は、ノードN2を介して抵抗13と接続されている。また、モータ14の回転軸(不図示)には、不図示の車輪(例えば、オートバイの車輪)が接続されている。モータ14は、回転軸を回転させることにより、例えば、オートバイを後退させる。また、モータ14は、例えば、オートバイが坂道に停車した後に、重力等によって車輪が回転すると、当該車輪の回転が回転軸に伝わり、起電力を発生し、ノードN2に電圧が印加される。
【0020】
抵抗15は、ノードN2と放電スイッチ16との間に接続され、放電スイッチ16がオン状態になった際に、ノードN2から放電される電流を制限する。
【0021】
放電スイッチ16は、抵抗15の一端と、グランド(基準電位の一例)との間に接続され、抵抗15を介して、ノードN2の電圧をグランドに放電させる。放電スイッチ16は、制御装置20から出力される制御信号により、オン状態と、オフ状態とが切り替えられる。
【0022】
制御装置20は、モータ駆動システム1を制御する。制御装置20は、例えば、リレースイッチ12と、放電スイッチ16とのそれぞれに、制御信号を出力し、各スイッチのオン状態とオフ状態とを切り替える制御を行う。また、制御装置20は、ノードN1の電圧(Vbat)及びノードN2の電圧(Vmot)を検出し、例えば、直流電源11の異常や、リレースイッチ12の異常などを判定する。
また、制御装置20は、電圧検出回路(21、22)と、制御部23とを備える。
【0023】
電圧検出回路21は、ノードN1の電圧であるバッテリ電圧Vbat(直流電源11の電圧)を検出する。電圧検出回路21は、バッテリ電圧Vbatを検出し、例えば、バッテリ電圧Vbatの電圧値を制御部23に出力する。
【0024】
電圧検出回路22は、ノードN2の電圧である電圧Vmot(モータ14とリレースイッチ12との間の電圧)を検出する。電圧検出回路22は、電圧Vmotを検出し、例えば、電圧Vmotの電圧値を制御部23に出力する。
【0025】
制御部23は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、制御装置20を統括的に制御する。制御部23は、例えば、電源電圧検出部231と、閾値設定部232と、モータ電圧検出部233と、判定処理部234と、放電処理部235とを備える。
【0026】
電源電圧検出部231は、直流電源11の電圧を検出する。すなわち、電源電圧検出部231は、電圧検出回路21によって検出されたバッテリ電圧Vbatの電圧値を、電圧検出回路21から取得する。
【0027】
閾値設定部232は、電源電圧検出部231(電圧検出回路21)によって検出された電源電圧(バッテリ電圧Vbat)に基づいて、リレースイッチ12が異常であるか否かを判定するための閾値A(第1閾値)及び閾値B(第2閾値)を設定する。なお、閾値A及び閾値Bの詳細については、図2を参照して後述する。閾値設定部232は、例えば、バッテリ電圧Vbatの所定の割合(所定の係数を積算すること)により、閾値A及び閾値Bを設定するようにしてもよい。
【0028】
モータ電圧検出部233は、モータ14とリレースイッチ12との間の電圧(電圧Vmot)を検出する。すなわち、モータ電圧検出部233は、電圧検出回路22によって検出された電圧Vmotの電圧値を、電圧検出回路22から取得する。
【0029】
判定処理部234(判定部の一例)は、モータ電圧検出部233によって検出された検出電圧(電圧Vmot)と、閾値設定部232によって設定された閾値A及び閾値Bとに基づいて、リレースイッチ12の異常や、モータ14の状態を判定する。判定処理部234は、例えば、外力によりモータ14の回転軸が回転した起電力による電圧Vmotの変化(起電力特性)に基づいて、リレースイッチ12の異常であるか否かを判定する。ここで、リレースイッチ12の異常とは、例えば、リレースイッチ12がオン状態に固定されるスイッチの固着(短絡故障)である。
【0030】
具体的に、判定処理部234は、検出電圧(電圧Vmot)が、閾値A以上になってからの所定の期間(図2の期間TR1を参照)内に、当該検出電圧が、閾値Aより大きい閾値B以上になったか否かに基づいて、検出電圧(電圧Vmot)が、リレースイッチ12の異常によるものか、外力によりモータ14の回転軸が回転した起電力によるものかを判定する。判定処理部234は、例えば、検出電圧(電圧Vmot)が所定の期間(期間TR1)内に閾値B以上になった場合に、検出電圧(電圧Vmot)がリレースイッチ12の異常によるものであると判定する。また、判定処理部234は、例えば、検出電圧(電圧Vmot)が所定の期間(期間TR1)内に閾値Bに達していない場合に、検出電圧(電圧Vmot)が外力によりモータ14の回転軸が回転した起電力によるものであると判定する。
【0031】
ここで、外力によりモータ14の回転軸が回転した起電力とは、例えば、オートバイが、前輪を坂道の上に向けて停止した後に、オートバイの自重(重力)により、オートバイが坂道を後退し、モータ14の回転軸が回転して発生した起電力である。なお、判定処理部234による判定処理の詳細については、図2及び図3を参照して後述する。
【0032】
放電処理部235は、判定処理部234によって、検出電圧(電圧Vmot)が、外力によりモータ14の回転軸が回転した起電力によるものであると判定された場合に、モータ14とリレースイッチ12との間の電圧(電圧Vmot)を、放電スイッチ16によってグランド(基準電位)に放電させる。すなわち、放電処理部235は、例えば、オートバイの自重(重力)により、オートバイが坂道を後退した場合に、放電スイッチ16をオン状態に制御し、抵抗15を介して、電圧Vmot(モータ14の回転軸が回転した起電力)を放電する。
【0033】
次に、図面を参照して、本実施形態による制御装置20の動作について説明する。
まず、図2を参照して、本実施形態における制御装置20によるリレースイッチ12の異常判定処理の詳細について説明する。
【0034】
図2に示すグラフは、リレースイッチ12が固着した場合と、外力によりモータ14の回転軸が回転した場合との電圧Vmotの変化を示している。このグラフにおいて、縦軸は、電圧Vmotを示し、横軸は、時間を示している。なお、このグラフにおいて、制御装置20は、リレースイッチ12及び放電スイッチ16をオフ状態に制御しているものとする。
【0035】
また、図2のグラフにおいて、波形W1は、リレースイッチ12がオン状態に固着した場合の電圧Vmotの変化を示している。また、波形W1は、リレースイッチ12は正常な状態において、外力によりモータ14の回転軸が回転した場合の電圧Vmotの変化を示している。
【0036】
時刻T1において、例えば、オートバイが坂道で前輪を坂道の上に向けて停車した後に、オートバイのギアがバック(後退)に設定され、制御装置20は、リレースイッチ12及び放電スイッチ16をオフ状態にする。この状態において、リレースイッチ12がオン状態に固着している場合には、波形W1に示すように、リレースイッチ12を介して、直流電源11の電圧がノードN2に供給され、電圧Vmotが、閾値Bより大きくなる。この場合、制御装置20の判定処理部234は、リレースイッチ12が異常である(リレースイッチ12が固着している)と判定する。
【0037】
また、時刻T1において、リレースイッチ12が固着していない場合には、波形W2に示すように、電圧Vmotは、閾値A未満の電圧である。
また、例えば、オートバイが坂道を自重により後退すると、波形W1又は波形W2に示すように、外力によりモータ14の回転軸が回転した起電力により、電圧Vmotは、徐々に上昇する。
【0038】
時刻T2の波形W2において、電圧Vmotが、閾値Aに達すると、判定処理部234は、所定の期間TR1の計時を開始する。所定の期間TR1に達する時刻T3の波形W2において、電圧Vmotは、閾値B未満である。この電圧Vmotの変化特性(起電力特性)を利用して、判定処理部234は、所定の期間TR1に達する時刻T3になるまでに、電圧Vmotが閾値B以上になった場合に、リレースイッチ12が異常である(リレースイッチ12が固着している)と判定する。
【0039】
また、判定処理部234は、所定の期間TR1に達した時刻T3において、電圧Vmotが閾値B未満である場合に、リレースイッチ12が正常であり、電圧Vmotの変化が、外力によりモータ14の回転軸が回転した起電力によるものであると判定する。
【0040】
ここで、所定の期間TR1は、電圧Vmotが閾値A以上になってからの期間であり、例えば、モータ14の回転軸に最大外力が掛かった際のモータ14の起電力特性に基づいて定められる。所定の期間TR1は、例えば、坂道の最大傾斜を想定して、電圧Vmotが閾値Aから閾値Bに達するまでの時間(期間)に基づいて設定される。すなわち、所定の期間TR1は、電圧Vmotが閾値Aから閾値Bに達するまでの時間(期間)よりも短く設定される。
【0041】
また、図2において、判定領域R1は、閾値A未満の領域であり、例えば、モータ14の駆動を停止している領域を示す休止領域である。
また、判定領域R2は、閾値A以上、閾値B未満の領域であり、例えば、外力によりモータ14の回転軸が回転した領域を示す判定領域(坂道後退の判定領域)である。
また、判定領域R3は、閾値B以上の領域であり、リレースイッチ12がオン状態に固着した領域を示す固着領域である。
なお、図2に示すように、閾値A及び閾値Bは、バッテリ電圧Vbatよりも低い電圧である。
【0042】
次に、図3を参照して、本実施形態における制御装置20によるリレースイッチ12の異常判定処理の動作について説明する。
なお、図3に示す処理において、制御装置20は、初期状態として、リレースイッチ12及び放電スイッチ16をオフ状態に制御しているものとする。また、制御装置20は、初期状態において、リレースイッチ12の固着の判定を未確定にしているものとする。
【0043】
図3に示すように、制御装置20の判定処理部234は、まず、リレースイッチ12の固着が確定であるか否かを判定する(ステップS101)。判定処理部234は、例えば、記憶部(不図示)の判定フラグなどにより、リレースイッチ12の固着が確定であるか否かを判定する。判定処理部234は、リレースイッチ12の固着が確定である場合(ステップS101:YES)に、処理をステップS102に進める。また、判定処理部234は、リレースイッチ12の固着が確定でない場合(ステップS101:NO)に、処理をステップS103に進める。
【0044】
ステップS102において、判定処理部234は、車両後退をストップ(停止)及び要修理を促すためのアラーム(警告)を送信する。すなわち、判定処理部234は、リレースイッチ12が異常(スイッチの固着)であると判定し、オートバイの後退を停止させ、リレースイッチ12の要修理を促す警告を、制御装置20の外部に送信する。制御装置20は、例えば、警告ランプ及び警告ブザーなどにより、例えば、オートバイの利用者などに警告を出力する。ステップS102の処理後に、判定処理部234は、処理をステップS101に戻す。
【0045】
また、ステップS103において、制御装置20の電源電圧検出部231は、バッテリ電圧Vbatを検出する。すなわち、電源電圧検出部231は、電圧検出回路21によって検出されたバッテリ電圧Vbatの電圧値を、電圧検出回路21から取得する。
【0046】
次に、制御装置20の閾値設定部232は、バッテリ電圧Vbatにより閾値A及び閾値Bを算出する(ステップS104)。すなわち、閾値設定部232は、
電源電圧検出部231(電圧検出回路21)によって検出された電源電圧(バッテリ電圧Vbat)に基づいて、リレースイッチ12が異常であるか否かを判定するための閾値A及び閾値Bを、例えば、図2に示すように算出して、当該閾値A及び閾値Bを設定する。
【0047】
次に、制御装置20のモータ電圧検出部233は、電圧Vmotを検出する(ステップS105)。すなわち、モータ電圧検出部233は、電圧検出回路22によって検出されたモータ14とリレースイッチ12との間の電圧(電圧Vmot)の電圧値を、電圧検出回路22から取得する。
【0048】
次に、判定処理部234は、リレースイッチ12の固着の判定を未確定にする(ステップS106)。すなわち、判定処理部234は、例えば、記憶部(不図示)の判定フラグを、一旦、リレースイッチ12の固着が確定していない状態に設定する。
【0049】
次に、判定処理部234は、電圧Vmotが閾値A以上(Vmot≧閾値A)であるか否かを判定する(ステップS107)。すなわち、判定処理部234は、図2に示す判定領域R1(閾値A未満)であるか否かを判定する。判定処理部234は、電圧Vmotが閾値A以上である場合(ステップS107:YES)に、処理をステップS108に進める。また、判定処理部234は、電圧Vmotが閾値A未満である場合(ステップS107:NO)に、処理をステップS114に進める。
【0050】
ステップS108において、判定処理部234は、タイマを加算する。すなわち、判定処理部234は、不図示のタイマを加算して計時する。
次に、判定処理部234は、期間TR1を経過したか否かを判定する(ステップS109)。判定処理部234は、例えば、上述したタイマの値が、期間TR1に対応する値に達したか否かを判定する。判定処理部234は、期間TR1を経過したと判定した場合(ステップS109:YES)に、処理をステップS113に進める。また、判定処理部234は、期間TR1を経過していないと判定した場合(ステップS109:NO)に、処理をステップS110に進める。
【0051】
ステップS110において、判定処理部234は、電圧Vmotが閾値B以上(Vmot≧閾値B)であるか否かを判定する。判定処理部234は、例えば、図2に示す判定領域R2(閾値A以上、閾値B未満)であるか否かを判定する。判定処理部234は、電圧Vmotが閾値B以上である場合(ステップS110:YES)に、処理をステップS111に進める。また、判定処理部234は、電圧Vmotが閾値B未満である場合(ステップS110:NO)に、判定領域R2であると判定し、処理をステップS101に戻す。
【0052】
ステップS111において、判定処理部234は、リレースイッチ12の固着を確定にする。すなわち、判定処理部234は、検出電圧(電圧Vmot)が所定の期間(期間TR1)内に閾値B以上になった(図2の判定領域R3である)と判定し、リレースイッチ12が異常(リレースイッチ12の固着)であると判定する。判定処理部234は、例えば、記憶部(不図示)の判定フラグを、リレースイッチ12の固着が確定している状態に設定する。
【0053】
次に、判定処理部234は、タイマをクリアする(ステップS112)。なお、タイマをクリアするとは、例えば、タイマに初期値を設定することを意味する。ステップS112の処理後に、判定処理部234は、処理をステップS101に戻す。この場合、ステップS101において、判定処理部234は、リレースイッチ12の固着が確定であると判定し、ステップS102において、車両後退をストップ(停止)及び要修理を促すためのアラーム(警告)を送信する。
【0054】
また、ステップS113において、制御装置20の制御部23は、モータ駆動停止処理を実行する。この場合、判定処理部234は、所定の期間TR1に達した際に、電圧Vmotが閾値B未満(図2の判定領域R2)であるため、リレースイッチ12が正常であり、電圧Vmotの変化が、外力によりモータ14の回転軸が回転した起電力によるものであると判定する。そして、制御部23は、モータ14の駆動を停止するモータ駆動停止処理を実行する。例えば、制御部23の放電処理部235は、モータ駆動停止処理として、放電スイッチ16をオン状態に制御し、放電スイッチ16によって、抵抗15を介して電圧Vmotをグランド(基準電位)に放電させる。ステップS113の処理後に、制御部23は、処理をステップS101に戻す。
【0055】
また、ステップS114において、判定処理部234は、タイマをクリアする。すなわち、判定処理部234は、電圧Vmotが図2に示す判定領域R1であると判定し、タイマをクリアする。
次に、制御部23は、モータ駆動処理を実行する(ステップS115)。すなわち、制御部23は、モータ14の駆動を制御するモータ駆動処理を実行する。ステップS115の処理後に、制御部23は、処理をステップS101に戻す。
【0056】
上述した図3に示す処理において、ステップS105の処理がモータ電圧検出ステップに対応し、ステップS106からステップS111までの処理が、判定ステップに対応する。また、ステップS103の処理が、電源電圧検出ステップに対応し、ステップS104の処理が、閾値設定ステップに対応する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態による制御方法は、直流電源11から供給される電力により駆動されるモータ14と、当該モータ14を駆動する電力の供給を制御するリレースイッチ12(スイッチ素子)とを備えるモータ駆動システム1を制御する制御装置20が実行する制御方法である。本実施形態による制御方法は、モータ電圧検出ステップと、判定ステップとを含む。モータ電圧検出ステップにおいて、モータ電圧検出部233が、モータ14とリレースイッチ12との間の電圧(電圧Vmot)を検出する。そして、判定ステップにおいて、判定処理部234は、モータ電圧検出ステップによって検出された検出電圧(電圧Vmot)が、閾値A以上(第1閾値以上)になってからの所定の期間TR1内に、当該検出電圧(電圧Vmot)が、閾値Aより大きい閾値B以上(第2閾値以上)になったか否かに基づいて、検出電圧(電圧Vmot)が、リレースイッチ12の異常によるものか、外力によりモータ14の回転軸が回転した起電力によるものかを判定する。
【0058】
これにより、本実施形態による制御方法では、検出電圧(電圧Vmot)がモータ14の回転軸に加えられた外力による起電力によるものか、リレースイッチ12の異常(例えば、スイッチ素子の固着)によるものかを区別できる。そのため、本実施形態による制御方法では、外力によりモータ14が回転した場合をリレースイッチ12の異常であると誤検出することを低減させることができ、リレースイッチ12の異常を正確に判定できる。
【0059】
また、本実施形態では、判定ステップにおいて、判定処理部234は、検出電圧が所定の期間TR1内に閾値B以上になった場合に、検出電圧(電圧Vmot)がリレースイッチ12の異常によるものであると判定する。また、判定ステップにおいて、判定処理部234は、検出電圧(電圧Vmot)が所定の期間TR1内に閾値Bに達していない場合に、検出電圧(電圧Vmot)が外力によりモータ14の回転軸が回転した起電力によるものであると判定する。
【0060】
これにより、本実施形態による制御方法は、簡易な手法により、リレースイッチ12の異常(例えば、スイッチの固着)を正確に判定できる。なお、本実施形態による制御方法では、所定の期間TR1待ってから、リレースイッチ12の異常を判定するため、例えば、リレースイッチ12の固着の状態により、検出電圧(電圧Vmot)がすぐに閾値B以上にならない場合であっても、リレースイッチ12の異常(例えば、スイッチの固着)を正確に判定することができる。
【0061】
また、本実施形態による制御方法は、電源電圧検出ステップと、閾値設定ステップとを含む。電源電圧検出ステップにおいて、電源電圧検出部231は、直流電源11の電圧を検出する。閾値設定ステップにおいて、閾値設定部232は、電源電圧検出ステップによって検出された電源電圧(バッテリ電圧Vbat)に基づいて、リレースイッチ12が異常であるか否かを判定するための閾値Bを設定する。
これにより、本実施形態による制御方法は、直流電源11の電圧に対応して、閾値Bを適切に設定することができる。よって、本実施形態による制御方法は、直流電源11の電圧の変化に対応して、リレースイッチ12の異常(例えば、スイッチの固着)を正確に判定することができる。
【0062】
また、本実施形態では、所定の期間TR1は、モータ14の回転軸に最大外力(例えば、坂道の最大傾斜による外力)が掛かった際のモータ14の起電力特性に基づいて定められる。
これにより、本実施形態による制御方法は、所定の期間TR1を、モータ14の起電力特性に応じて適切に設定することができる。
【0063】
また、本実施形態による制御装置20は、直流電源11から供給される電力により駆動されるモータ14と、当該モータ14を駆動する電力の供給を制御するリレースイッチ12とを備えるモータ駆動システム1を制御する制御装置である。本実施形態による制御装置20は、モータ電圧検出部233と、判定処理部234(判定部)とを備える。モータ電圧検出部233は、モータ14とリレースイッチ12との間の電圧(電圧Vmot)を検出する。そして、判定処理部234は、モータ電圧検出部233によって検出された検出電圧(電圧Vmot)が、閾値A以上(第1閾値以上)になってからの所定の期間TR1内に、当該検出電圧(電圧Vmot)が、閾値A(第1閾値)より大きい閾値B以上(第2閾値以上)になったか否かに基づいて、検出電圧(電圧Vmot)が、リレースイッチ12の異常によるものか、外力によりモータ14の回転軸が回転した起電力によるものかを判定する。
これにより、本実施形態による制御装置20は、上述した本実施形態による制御方法と同様に、外力によりモータ14が回転した場合をリレースイッチ12の異常であると誤検出することを低減させることができ、リレースイッチ12の異常を正確に判定することができる。
【0064】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態による制御装置20、及び制御方法について説明する。
【0065】
本実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、リレースイッチ12の異常の判定において、電圧Vmotの上限値(閾値C)を設定する点と、閾値A及び閾値Bを直流電源11の電圧(バッテリ電圧Vbat)によらずに、固定にした点が、第1の実施形態と異なる。
なお、本実施形態によるモータ駆動システム1及び制御装置20の構成は、基本的に、第1の実施形態と同様であるが、電圧検出回路21、電源電圧検出部231、及び閾値設定部232を備えなくでもよい。
【0066】
図4に示すグラフは、基本的には、上述した図2に示すグラフと同様であるが、閾値Cが設定されている点が異なる。
【0067】
閾値C(第3閾値)には、閾値B(第2閾値)及び直流電源11の電圧(バッテリ電圧Vbat)より高く、直流電源11の出力が正常であると判定される電圧が定められている。閾値Cは、例えば、直流電源11(バッテリ)の出力電圧の上限値に、マージン分の所定の電圧を加算した電圧値である。
【0068】
なお、本実施形態では、判定処理部234は、所定の期間TR1内に、検出電圧(電圧Vmot)が、閾値B以上、且つ、閾値C以下になった場合に、リレースイッチ12が異常であると判定する。また、判定処理部234は、検出電圧(電圧Vmot)が、閾値Cより大きい場合には、例えば、直流電源11が異常であると判定してもよい。
【0069】
次に、図5を参照して、本実施形態における制御装置20によるリレースイッチ12の異常判定処理の動作について説明する。
なお、図5に示す処理において、制御装置20は、初期状態として、リレースイッチ12及び放電スイッチ16をオフ状態に制御しているものとする。
【0070】
図5に示すように、制御装置20のモータ電圧検出部233は、まず、電圧Vmotを検出する(ステップS201)。すなわち、モータ電圧検出部233は、電圧検出回路22によって検出されたモータ14とリレースイッチ12との間の電圧(電圧Vmot)の電圧値を、電圧検出回路22から取得する。
【0071】
次に、制御装置20の判定処理部234は、リレースイッチ12の固着であるか否かを判定する(ステップS202)。判定処理部234は、例えば、モータ電圧検出部233によって検出された検出電圧(電圧Vmot)が、閾値B以上、且つ、閾値C以下(閾値B≦Vmot≦閾値C)であるか否かを判定する。判定処理部234は、電圧Vmotが、閾値B以上、且つ、閾値C以下である場合(ステップS202:YES)に、処理をステップS203に進める。また、判定処理部234は、電圧Vmotが、閾値B未満、又は、閾値Cより大きい場合(ステップS202:NO)に、処理をステップS204に進める。
【0072】
ステップS203において、判定処理部234は、車両後退をストップ(停止)及び要修理を促すためのアラーム(警告)を送信する。すなわち、判定処理部234は、リレースイッチ12が異常(スイッチの固着)であると判定し、オートバイの後退を停止させる。そして、判定処理部234は、リレースイッチ12の要修理を促す警告を、制御装置20の外部に送信する。制御装置20は、例えば、警告ランプ及び警告ブザーなどにより、例えば、オートバイの利用者などに警告を出力する。ステップS203の処理後に、判定処理部234は、処理をステップS201に戻す。
【0073】
また、ステップS204からステップS212までの処理は、上述した図3に示すステップS107からステップS115までの処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0074】
なお、上述した図5に示す処理において、ステップS201の処理がモータ電圧検出ステップに対応し、ステップS202、ステップS204からステップS208までの処理が、判定ステップに対応する。
【0075】
以上説明したように、本実施形態において、閾値B(第2閾値)及び直流電源11の電圧(電圧Vbat)より高く、直流電源11の出力が正常であると判定される閾値C(第3閾値)が定められている。そして、判定ステップにおいて、判定処理部234は、所定の期間TR1内に、検出電圧(電圧Vmot)が、閾値B以上、且つ、閾値C以下(第3閾値以下)になった場合に、リレースイッチ12が異常であると判定する。
【0076】
これにより、本実施形態による制御方法及び制御装置20は、第1の実施形態と同様に、外力によりモータ14が回転した場合をリレースイッチ12の異常であると誤検出することを低減させることができ、リレースイッチ12の異常を正確に判定することができる。また、本実施形態による制御方法及び制御装置20は、閾値Cを用いることにより、リレースイッチ12の異常と、直流電源11の出力電圧の異常とを区別することができる。
【0077】
[第3の実施形態]
次に、図6を参照して、第3の実施形態によるモータ駆動システム1a、制御装置20、及び制御方法について説明する。
上述した第1及び第2の実施形態において、モータ駆動システム1は、モータ14が直流モータである場合の一例を説明したが、本実施形態によるモータ駆動システム1aは、交流モータに適用した場合の一例について説明する。
図6に示すように、モータ駆動システム1aは、直流電源11と、リレースイッチ12と、抵抗15と、モータ14aと、放電スイッチ16と、インバータ部17と、制御装置20とを備える。
【0078】
なお、この図において、上述した図1と同一の構成には、同一の符号を付与して、その説明を省略する。
本実施形態によるモータ駆動システム1aは、抵抗13の代わりにインバータ部17を備え、モータ14の代わりにモータ14aを備える点が、第1の実施形態と異なる。
【0079】
モータ14aは、例えば、3相交流モータであり、直流電源11から供給される電力により駆動される。
インバータ部17は、直流電源11からリレースイッチ12を介して、直流電源11から供給される直流電力を、3相交流信号に変換して、モータ14aに供給する。
【0080】
なお、モータ14aは、例えば、外力によりモータ14aの回転軸が回転した場合に、起電力を発生し、インバータ部17を介して、直流電圧がノードN2に印加される。
また、本実施形態による制御装置20の動作、及び制御方法は、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0081】
以上説明したように、本実施形態では、モータ駆動システム1aは、3相交流モータであるモータ14aを備えるが、制御装置20は、第1の実施形態と同様に、外力によりモータ14aが回転した場合をリレースイッチ12の異常であると誤検出することを低減させることができる。
【0082】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の各実施形態において、直流電源11は、バッテリなどの蓄電池であり例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、車両が備えるエンジンの回転により直流電力を発電するダイナモであってもよいし、他の直流電力を供給する手段であってもよい。
【0083】
また、上記の各実施形態において、モータ駆動システム1(1a)は、車両としてオートバイをモータ14(14a)により後退させるための駆動システムを一例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、車両は、オートバイに限定されるものではなく、自動車や電動カートなどの他の車両であってもよい。また、モータ駆動システム1(1a)は、外力によりモータ14(14a)の回転軸が回転して起電力が発生する構成であれば、車両の後退に限らず、他の駆動システムであってもよい。
【0084】
また、上記の各実施形態において、オートバイをモータ14(14a)により後退させるための駆動システムを一例として、オートバイが坂道に停車している場合に、リレースイッチ12におけるオン状態の固着を検出する例を説明したが、坂道に停車している場合に限定されるものではない。例えば、オートバイが平地に停車していて、人力によりオートバイをバックさせるような場合であってもよい。
【0085】
また、上述したように、モータは、第1、及び第2の実施形態のように、モータ14のような直流モータであってもよいし、モータ14aのような交流モータであってもよい。
【0086】
また、上記の各実施形態において、スイッチ素子の一例として、機械的にオン状態とオフ状態とを切り替えるリレースイッチ12を適用する例を説明したが、FET(Field effect transistor;電界効果トランジスタ)などの半導体スイッチであってもよく、他のスイッチ素子であってもよい。
【0087】
また、上記の各実施形態において、実施形態の一部の適用を除外してもよいし、各実施形態の一部を組み合わせて実施してもよい。例えば、上記の第2の実施形態において、閾値C(第3閾値)を適用する例を説明したが、第1の実施形態において、同様に、閾値Cを適用してもよい。また、上記の第2の実施形態において、閾値Cを適用しない形態であってもよい。
【0088】
また、上記の第1及び第2の実施形態において、リレースイッチ12と、モータ14との間に抵抗13を配置する例を説明したが、これに限定されるものではなく、当該抵抗13を備えない形態であってもよい。
また、上記の各実施形態において、モータ駆動システム1(1a)は、抵抗15及び放電スイッチ16を備える例を説明したが、抵抗15及び放電スイッチ16を備えない形態であってもよい。
【0089】
なお、上述の制御装置20は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した制御装置20の処理過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0090】
また、上述した制御装置20が備える機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1、1a モータ駆動システム
11 直流電源
12 リレースイッチ
13、15 抵抗
14、14a モータ
16 放電スイッチ
17 インバータ部
20 制御装置
21、22 電圧検出回路
23 制御部
231 電源電圧検出部
232 閾値設定部
233 モータ電圧検出部
234 判定処理部
235 放電処理部
【要約】
制御方法は、直流電源から供給される電力により駆動されるモータと、当該モータを駆動する電力の供給を制御するスイッチ素子とを備えるモータ駆動システムを制御する制御装置が実行する制御方法であって、モータとスイッチ素子との間の電圧を検出するモータ電圧検出ステップと、モータ電圧検出ステップによって検出された検出電圧が、第1閾値以上になってからの所定の期間内に、当該検出電圧が、第1閾値より大きい第2閾値以上になったか否かに基づいて、検出電圧が、スイッチ素子の異常によるものか、外力によりモータの回転軸が回転した起電力によるものかを判定する判定ステップとを含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6