特許第6205535号(P6205535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205535
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】挿入装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   A61B1/00 612
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-538449(P2017-538449)
(86)(22)【出願日】2016年10月12日
(86)【国際出願番号】JP2016080247
(87)【国際公開番号】WO2017065170
(87)【国際公開日】20170420
【審査請求日】2017年7月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-204733(P2015-204733)
(32)【優先日】2015年10月16日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】山下 隆司
(72)【発明者】
【氏名】名取 靖晃
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇
(72)【発明者】
【氏名】梅本 義孝
(72)【発明者】
【氏名】尾本 恵二朗
(72)【発明者】
【氏名】小野田 文幸
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−328999(JP,A)
【文献】 特開平5−211993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
G02B 23/24 − 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長形状の挿入部と、
前記挿入部の外周面に長手軸周りに回転可能に設けられた回転筐体と、
前記挿入部の内部に設けられ、前記回転筐体を回転させるモータに接続されて該モータの回転を伝達する駆動シャフトと、
前記駆動シャフトの先端側に前記挿入部の軸方向に前記回転筐体に対して移動可能に設けられ、前記挿入部の被覆を介して前記回転筐体に回転を伝達する回転子と、
前記回転子が挿入部に対し軸方向の前進方向又は後退方向に所定量の移動をしたことを検知するセンサと、
前記センサによる検知に応じて、前記モータの正回転、逆回転及び回転停止の状態を制御する制御部と、
を具備する挿入装置。
【請求項2】
前記制御部は、短時間で複数回の前記回転子の移動検知したときには、前記センサによって前記回転子の移動を検知した状態が維持されている場合よりも前記モータを高速で回させるように制御する請求項1記載の挿入装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記センサによって前記回転子のスライドを検知した状態が所定時間以下である場合には前記モータの状態を変化させないように制御する請求項1に記載の挿入装置。
【請求項4】
前記センサは、さらに、前記回転子の前記前進方向又は後退方向の移動量を検知し、
前記制御部は、前記センサによって検知された移動量に応じて前記モータの回転速度を変化させるように制御する請求項1に記載の挿入装置。
【請求項5】
操作者によって操作され、操作されたときに前記モータの回転指令を与える操作部をさらに具備し、
前記制御部は、前記操作部が操作されたときの前記モータの回転速度よりも、前記センサによって前記回転子が挿入部に対し軸方向の前進方向又は後退方向に所定量の移動をしたことが検知された時の前記モータの回転速度を遅くするように制御する請求項1に記載の挿入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転自走式の挿入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内視鏡装置等の挿入装置は、管腔内に挿入される。この種の挿入装置のうち、回転自走式等と呼ばれる挿入装置が知られている。回転自走式の挿入装置では、例えば挿入部の外周面に螺旋形状のフィンが形成されたパワースパイラルチューブ等と呼ばれる回転筐体が設けられている。回転筐体が回転すると、回転筐体に形成されたフィンが管腔内壁に接触して応力を発生させる。この応力により、挿入部は、前進方向又は後退方向に自走する。この種の回転自走式の挿入装置に関する提案は、例えば日本国特開2008−93029号公報においてなされている。
【発明の概要】
【0003】
回転自走式の挿入装置は、通常、挿入部の基端位置に接続された操作部に設けられている手元スイッチの操作又は挿入装置とは別体で設けられたフットスイッチの操作に従って自走するように構成されている。例えば、手元スイッチでは、2つ並べて配置されたスイッチのうちの前進スイッチの押圧で挿入部を前進させる指令が発され、後退スイッチの押圧で挿入部を後退させる指令が発される。また、フットスイッチでは、右側のペダルの踏み込みで挿入部を前進させる指令が発され、左側のペダルの踏み込みで挿入部を後退させる指令が発される。このように、手元スイッチやフットスイッチでは、操作しようとするスイッチと挿入部の移動方向との対応関係を瞬時に把握できずに直感的な操作ができない場合がある。
【0004】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたもので、直感的な操作で挿入装置を前進又は後退させることが可能な挿入装置を提供することを目的とする。
【0005】
前記の目的を達成するために、本発明の一態様の挿入装置は、細長形状の挿入部と、前記挿入部の外周面に長手軸周りに回転可能に設けられた回転筐体と、前記挿入部の内部に設けられ、前記回転筐体を回転させるモータに接続されて該モータの回転を伝達する駆動シャフトと、前記駆動シャフトの先端側に前記挿入部の軸方向に前記回転筐体に対して移動可能に設けられ、前記挿入部の被覆を介して前記回転筐体に回転を伝達する回転子と、前記回転子が挿入部に対し軸方向の前進方向又は後退方向に所定量の移動をしたことを検知するセンサと、前記センサによる検知に応じて、前記モータの正回転、逆回転及び回転停止の状態を制御する制御部とを具備する。
【0006】
本発明によれば、直感的な操作で挿入装置を前進又は後退させることが可能な挿入装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る挿入装置の一例としての内視鏡システムの構成の概略を示す図である。
図2図2は、本発明の一実施形態における可撓管部及びパワースパイラルチューブの構成の一例を示す断面図である。
図3A図3Aは、チューブ保持筒の装着前のパワースパイラルチューブの状態を示す図である。
図3B図3Bは、チューブ保持筒の装着後のパワースパイラルチューブの状態を示す図である。
図4A図4Aは、内視鏡のモータの回転制御のフローチャートである。
図4B図4Bは、内視鏡のモータの回転制御のフローチャートである。
図5A図5Aは、回転筒状部材が突起に当て付いたときの様子を示す図である。
図5B図5Bは、回転筒状部材が支持部材と接触したときの様子を示す図である。
図5C図5Cは、回転筒状部材が支持部材との接触が解除されたときの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る挿入装置の一例としての内視鏡システムの構成の概略を示す図である。この図に示すように、内視鏡システム1は、内視鏡2と、パワースパイラルコントローラ3と、光源装置4と、ビデオプロセッサ5と、外部表示ユニット6と、フットスイッチ7と、モニタ8とを有している。
【0009】
内視鏡2は、回転自走式の内視鏡であって、挿入部10を有している。挿入部10は、細長形状であり、生体内に挿入されるように構成されている。また、内視鏡2は、挿入部10に取り付けられ、内視鏡2の各種操作を行うための操作部11を有している。操作部11は、操作者によって保持される。以下において、挿入部10の先端の側を先端側とし、挿入部10の操作部11が設けられている側を基端側とする。また、以下では、挿入部10の先端側から基端側に沿った方向を長手方向とする。
【0010】
挿入部10は、先端部14と、湾曲部15と、可撓管部16とを有する。先端部14は、挿入部10の最先端に形成されており、湾曲しないような構成を有している。先端部14は、その内部に撮像素子を有している。撮像素子は、例えば挿入部10の先端側の被写体像に基づく映像信号を生成する。撮像素子で生成された映像信号は、挿入部10及びユニバーサルコード12を通る図示しない信号線を介して光源装置4に伝送される。湾曲部15は、先端部14の基端側に形成されている部分であり、操作部11に設けられた図示しない操作部材の操作に応じて能動的に湾曲するように構成されている。可撓管部16は、湾曲部15の基端側に形成されている部分であり、外力によって容易に撓むように構成されている。この可撓管部16には、パワースパイラルチューブ17が装着される。パワースパイラルチューブ17は、例えばゴムのような軟性材料により筒形状に形成された回転筐体である。このパワースパイラルチューブ17の外周面には、長手軸に沿って螺旋形状のフィンが設けられている。可撓管部16及びパワースパイラルチューブ17の構成については後でさらに詳しく説明する。
【0011】
操作部11は、操作者が内視鏡2の操作をするための各種の操作部材を含む。例えば、操作部11は、例えば挿入部10の湾曲部15を上下方向に湾曲させるためのUDノブ及び湾曲部15を右左方向に湾曲させるためのRLノブを含む。UDノブ又はRLノブが操作された場合には、これらのUDノブ又はRLノブに連動したワイヤが押し引きされることにより、湾曲部15は湾曲される。また、例えば、操作部11は、挿入部10を前進させる指令を与えるための前進スイッチ及び後退させる指令を与えるための後退スイッチからなる手元スイッチを含む。これらの前進スイッチ又は後退スイッチが押された場合には、挿入部10を前進又は後退させるための指令信号がパワースパイラルコントローラ3に対して出力される。この指令信号に従って操作部11の内部に設けられたモータ18は駆動される。
【0012】
操作部11には、ユニバーサルコード12が接続されており、ユニバーサルコード12の基端側にはコネクタ13が設けられている。さらに、コネクタ13は、例えば光源装置4に対して着脱自在に構成されている。
【0013】
パワースパイラルコントローラ3は、例えばASICによって構成された制御部である。パワースパイラルコントローラ3は、モータ18へ供給する駆動電力を制御することによって、モータ18の正回転、逆回転及び回転停止の状態を制御する。パワースパイラルコントローラ3は、例えばフットスイッチ7の踏み込み量に応じた回転速度でモータ18を回転させるようにモータ18の駆動電力を制御する。また、パワースパイラルコントローラ3は、挿入部10の挿入操作又は抜去操作に応じてモータ18を回転させるようにモータ18の駆動電力を制御する。ここで、挿入操作とは、操作者によって行われる操作であって、挿入部10を押すことによって挿入部を先端方向(前進方向)に移動させる操作である。また、抜去操作とは、操作者によって行われる操作であって、挿入部10を引くことによって挿入部を基端方向(後退方向)に移動させる操作である。なお、挿入部10の挿入操作又は抜去操作は、挿入部10を直接的に押し引きする操作だけでなく、操作部11等を押し引きすることによって挿入部10を間接的に押し引きする操作も含む。
【0014】
光源装置4には、内視鏡2が装着される。この光源装置4は、白色LED等の光源を有しており、照明光を射出する。光源装置4から射出された照明光は、図示しないライトガイドを介して挿入部10の先端まで伝達され、挿入部10の先端から射出される。これにより、被検体内は照明される。また、光源装置4は、コネクタ13を介して入力される各種の信号をパワースパイラルコントローラ3やビデオプロセッサ5に伝送することも行う。
【0015】
ビデオプロセッサ5は、挿入部10の撮像素子で得られた映像信号を処理する。この処理は、階調補正処理等の映像信号をモニタ8で表示可能な形式に変換する処理を含む。
【0016】
図1では、パワースパイラルコントローラ3、光源装置4、ビデオプロセッサ5は、別体のものとして示されている。しかしながら、これらは一体として構成されていてもよい。
【0017】
外部表示ユニット6は、例えばLED表示ユニットであり、モータ18のトルクを表示する。
【0018】
フットスイッチ7は、操作者によって踏み込まれるペダルを有し、ペダルの踏み込み量に応じた指令信号をパワースパイラルコントローラ3に対して発する。例えば、右足用のペダル7aが踏み込まれた場合には、フットスイッチ7は、パワースパイラルチューブ17を前進させるための指令信号を発する。また、左足用のペダル7bが踏み込まれた場合には、フットスイッチ7は、パワースパイラルチューブ17を後退させるための指令信号を発する。
【0019】
モニタ8は、例えば液晶ディスプレイといった一般的な表示素子である。モニタ8は、ビデオプロセッサ5の制御下で各種の映像を表示する。
【0020】
以下、本実施形態における可撓管部16についてさらに説明する。図2は、本実施形態における可撓管部16及びパワースパイラルチューブ17の構成の一例を示す断面図である。本実施形態における可撓管部16には、挿入部10の挿入操作又は抜去操作を検知するための機構が組み込まれている。
【0021】
図2に示すように、パワースパイラルチューブ17の装着位置と対応する位置の可撓管部16にはベース21が形成されている。ベース21は、例えば可撓管部16の被覆20の一部に開けられた開口部に嵌め込み固定されている。また、ベース21の先端部には、例えば金属から形成される支持部材22が設けられている。支持部材22の先端部には、可撓管部16の先端側が連結されている。一方、支持部材22の基端部には、可撓管部16の基端側が連結されている。
【0022】
支持部材22は、概略的には筒状をしており、その一部に空洞部23となる凹みを有している。空洞部23には、駆動ギア24と回転筒状部材26とが配置されている。本実施形態において、空洞部23は、その内部で回転筒状部材26が挿入部10の前進方向及び後退方向に所定量だけスライドできるような程度の空隙を支持部材22との間に有している。また、支持部材22は、それ自身が挿入部10の前進方向及び後退方向に所定量だけスライドできるような程度の力で可撓管部16の内部で規制されている。
【0023】
駆動ギア24は、支持部材22によって支持された駆動シャフト25に取り付けられている。駆動シャフト25にはモータ18が取り付けられている。このような構成により、駆動シャフト25は、モータ18の回転に伴って挿入部10の長手軸と平行な軸周りに回転する。駆動シャフト25の回転に伴って駆動ギア24も挿入部10の長手軸と平行な軸周りに回転する。
【0024】
回転子としての回転筒状部材26は、概略的には筒状をしており、その一部に空洞部27となる凹みを有している。空洞部27には、ローラ28が取り付けられている。ローラ28を含む回転筒状部材26の外周面は、可撓管部16の被覆29で被覆されている。被覆29はローラ28と接しており、また、その先端及び基端は支持部材22に接着されている。また、回転筒状部材26の内周面には内側ギア30が形成されている。このような構成において、回転筒状部材26には支持部材22が挿通され、内側ギア30は、駆動ギア24と噛み合った状態となっている。このような構成により、回転筒状部材26は、駆動ギア24の回転に伴って挿入部10の長手軸と平行な軸周りに回転する。回転筒状部材26の回転は、被覆29を介してパワースパイラルチューブ17に伝達される。ローラ28は、回転筒状部材26の回転を効率よくパワースパイラルチューブ17に伝達するために設けられている。
【0025】
ここで、本実施形態では、回転筒状部材26が挿入部10の前進方向及び後退方向に所定量だけスライド可能なように、回転筒状部材26の先端部及び基端部は自由端になっている。一方、回転筒状部材26の外周面は、回転筒状部材26が回転可能であればある程度の力で規制されていてもよい。
【0026】
さらに本実施形態では、回転筒状部材26の先端側の面と向かい合う支持部材22の面には、センサ31が設けられている。また、回転筒状部材26の基端側の面と向かい合う支持部材22の面には、センサ32が設けられている。センサ31及び32は、回転筒状部材26の所定量のスライドを検知するセンサである。図2のセンサ31及びセンサ32は、例えば切片と電極とによって構成されるマイクロスイッチである。センサ31は、回転筒状部材26が所定量だけ後退して支持部材22と接触したときにオンするように構成されている。また、センサ32は、回転筒状部材26が所定量だけ前進して支持部材22と接触したときにオンするように構成されている。センサ31及び32の出力信号は、ユニバーサルコード12の内部に設けられた信号線を通って光源装置4に伝達され、光源装置4からパワースパイラルコントローラ3に伝達される。
【0027】
また、本実施形態におけるパワースパイラルチューブ17の内周面には、突起33及び突起34が形成されている。突起33は、支持部材22が挿入部10の前進方向に所定量だけ移動した際に被覆29と当接することによって回転筒状部材26の前進方向への移動を規制する。突起34は、支持部材22が挿入部10の後退方向に所定量だけ移動した際に被覆29と当接することによって回転筒状部材26の後退方向への移動を規制する。なお、突起33及び突起34は、例えばパワースパイラルチューブ17と一体で構成される。突起33及び突起34は、パワースパイラルチューブ17と別の部材で構成されていてもよい。また、図2では、突起33及び突起34は、1つずつのみ示されている。これに対し、パワースパイラルチューブ17の周方向に沿って複数の突起33及び突起34が形成されていてもよい。
【0028】
チューブ保持筒35は、パワースパイラルチューブ17が可撓管部16から外れないように保持する。このチューブ保持筒35は、パワースパイラルチューブ17の長手方向に沿ってスライド可能に構成されている。操作者は、可撓管部16にパワースパイラルチューブ17を装着する際には、まず、図3Aに示すように突起34が押圧されない位置までチューブ保持筒35をスライドさせる。突起34は、チューブ保持筒35からの押圧力を受けていないときには、図3Aに示すように、持ち上がるように構成されている。このための構造としては、例えばゴムによって突起34の部分に弾性を付与しておく構造が考えられる。この他、機械的に突起34を持ち上げるような構造であってもよい。図3Aの状態であれば、パワースパイラルチューブ17が可撓管部16に装着される際に、突起34は可撓管部16の被覆29に突き当たらない。図2に示す位置にパワースパイラルチューブ17を装着した後、操作者は、チューブ保持筒35を突起34の位置までスライドさせる。このとき、突起34は、チューブ保持筒35からの押圧力を受けて、図3Bに示す位置に配置される。この状態でパワースパイラルチューブ17は保持される。ここで、パワースパイラルチューブ17は、可撓管部16から外れないように構成されていてもよい。この場合、突起34の構造は、図3A及び図3Bで示したような構造でなくてよい。
【0029】
以下、本実施形態の内視鏡システム1の動作を説明する。図4A及び図4Bは、内視鏡2のモータ18の回転制御のフローチャートである。図4A及び図4Bの処理は、パワースパイラルコントローラ3によって行われる。
【0030】
例えば、内視鏡システム1の電源がオンされると、図4A及び図4Bの処理が開始される。ステップS1において、パワースパイラルコントローラ3は、操作部11又はフットスイッチ7の操作によってパワースパイラルチューブ17を前進又は後退させるための指令信号が入力されたか否かを判定する。ステップS1において指令信号が入力されたと判定された場合には、処理はステップS2に移行する。ステップS1において指令信号が入力されていないと判定された場合には、処理はステップS5に移行する。
【0031】
ステップS2において、パワースパイラルコントローラ3は、挿入部10を前進させるか否かを判定する。ステップS2においては、操作部11又はフットスイッチ7から入力された指令信号がパワースパイラルチューブ17の前進指令の信号である場合には挿入部10を前進させると判定され、操作部11又はフットスイッチ7から入力された指令信号がパワースパイラルチューブ17の後退指令の信号である場合には挿入部10を後退させると判定される。ステップS2において、挿入部10を前進させると判定された場合には、処理はステップS3に移行する。ステップS2において、挿入部10を後退させると判定された場合には、処理はステップS4に移行する。
【0032】
ステップS3において、パワースパイラルコントローラ3は、操作部11又はフットスイッチ7によって指令された速度でモータ18を正回転させるための駆動電力をモータ18に供給する。モータ18の正回転により、パワースパイラルチューブ17も正回転する。パワースパイラルチューブ17の正回転により、挿入部10には前進方向の推進力が発生する。
【0033】
ステップS4において、パワースパイラルコントローラ3は、操作部11又はフットスイッチ7によって指令された速度でモータ18を逆回転させるための駆動電力をモータ18に供給する。モータ18の逆回転により、パワースパイラルチューブ17も逆回転する。パワースパイラルチューブ17の逆回転により、挿入部10には後退方向の推進力が発生する。
【0034】
ステップS5において、パワースパイラルコントローラ3は、センサ31及び32の出力から、回転筒状部材26と支持部材22との接触が検知されたか否かを判定する。ステップS5において、回転筒状部材26と支持部材22との接触が検知されたと判定された場合には、処理はステップS6に移行する。ステップS5において、回転筒状部材26と支持部材22との接触が検知されていないと判定された場合には、処理はステップS14に移行する。
【0035】
ステップS5は、操作者による挿入部10の挿入操作又は抜去操作を判定するための処理である。以下、ステップS5の判定の詳細について詳しく説明する。例えば、操作者によって挿入部10の挿入操作がなされた場合を考える。挿入操作では、挿入部10を押す方向の力が加えられる。操作者によって押す方向の力が加えられたとしても、パワースパイラルチューブ17は体腔からの摩擦抵抗も受けるのですぐには動かない。一方、操作者による押す方向の力は、被覆29等を伝達して支持部材22及び回転筒状部材26にも伝えられる。前述したように、支持部材22及び回転筒状部材26は、挿入部10の前進方向又は後退方向にスライド可能なように構成されている。このため、支持部材22及び回転筒状部材26は、操作者によって加えられた前進方向の力に従って前進方向に移動する。これにより、回転筒状部材26と突起33及び34との相対位置が変化する。
【0036】
挿入部10の挿入操作が続けられると、回転筒状部材26は、図5Aに示すように、被覆29を介して突起33に当て付く。この状態でさらに挿入部10の挿入操作が続けられると、回転筒状部材26は静止したままで支持部材22のみが移動する。このため、図5Bに示すように、回転筒状部材26は、支持部材22と接触する。このとき、センサ32からパワースパイラルコントローラ3に対して信号が出力される。この信号により、操作者によって挿入部10の挿入操作がされたことがパワースパイラルコントローラ3において認識される。
【0037】
図5Bの状態から逆方向の外力が加えられた場合には、図5Cに示すように、突起33及び34、回転筒状部材26、支持部材22の位置関係は元に戻る。このとき、センサ32からパワースパイラルコントローラ3への信号の出力は停止される。これにより、操作者によって挿入部10の挿入操作が解除されたことがパワースパイラルコントローラ3において認識される。
【0038】
さらに、操作者によって挿入部10の抜去操作がなされた場合には、挿入部10を引く方向の力が加えられる。この場合、例えばマイクロスイッチであるセンサ31からパワースパイラルコントローラ3に対して信号が出力される。この信号により、操作者によって挿入部10の抜去操作がされたことがパワースパイラルコントローラ3において認識される。
【0039】
ステップS6において、パワースパイラルコントローラ3は、回転筒状部材26と支持部材22との2回目の接触が検知されたか否かを判定する。2回目の接触の検知とは、1回目の接触の後、接触が解除され、その後にもう一度の同方向の接触が検知された状態である。すなわち、接触が解除されていない場合には、2回目の接触は検知されていないと判定される。ステップS6において、回転筒状部材26と支持部材22との2回目の接触が検知されていないと判定された場合には、処理はステップS7に移行する。ステップS6において、回転筒状部材26と支持部材22との2回目の接触が検知されたと判定された場合には、処理はステップS11に移行する。
【0040】
ステップS7において、パワースパイラルコントローラ3は、回転筒状部材26と支持部材22との接触が検知されてから所定の短時間(例えば1秒)が経過したか否かを判定する。ステップS7において、所定の短時間が経過していないと判定された場合には、処理はステップS5に戻る。ステップS7において、所定の短時間が経過したと判定された場合には、処理はステップS8に移行する。
【0041】
ステップS8において、パワースパイラルコントローラ3は、挿入部10を前進させるか否かを判定する。ステップS8においては、操作者による挿入操作が検知された場合には挿入部10を前進させると判定され、操作者による抜去操作が検知された場合には挿入部10を後退させると判定される。ステップS8において、挿入部10を前進させると判定された場合には、処理はステップS9に移行する。ステップS8において、挿入部10を後退させると判定された場合には、処理はステップS10に移行する。
【0042】
ステップS9において、パワースパイラルコントローラ3は、例えば所定の速度でモータ18を正回転させるための駆動電力をモータ18に供給する。これにより、挿入部10には前進方向の推進力が発生して操作者による挿入操作が支援される。ステップS9の後、処理はステップS14に移行する。
【0043】
ステップS10において、パワースパイラルコントローラ3は、例えば所定の速度でモータ18を逆回転させるための駆動電力をモータ18に供給する。これにより、挿入部10には後退方向の推進力が発生して操作者による挿入操作が支援される。ステップS10の後、処理はステップS14に移行する。
【0044】
ステップS11において、パワースパイラルコントローラ3は、挿入部10を前進させるか否かを判定する。ステップS11においては、操作者による2回の挿入操作が検知された場合には挿入部10を前進させると判定され、操作者による2回の抜去操作が検知された場合には挿入部10を後退させると判定される。ステップS11において、挿入部10を前進させると判定された場合には、処理はステップS12に移行する。ステップS11において、挿入部10を後退させると判定された場合には、処理はステップS13に移行する。
【0045】
ステップS12において、パワースパイラルコントローラ3は、ステップS9よりも高速でモータ18を正回転させるための駆動電力をモータ18に供給する。ステップS12の処理は、2回連続の挿入操作が検知された場合の処理である。この場合は、操作者の挿入部10を前進させようとする意図がより強いとしてモータ18の回転速度を速くすることで、挿入部10がより早くに挿入されるようにする。ステップS12の後、処理はステップS14に移行する。
【0046】
ステップS13において、パワースパイラルコントローラ3は、ステップS10よりも高速でモータ18を逆回転させるための駆動電力をモータ18に供給する。ステップS13の処理は、2回連続の抜去操作が検知された場合の処理である。この場合は、操作者の挿入部10を後退させようとする意図がより強いとしてモータ18の回転速度を速くすることで、挿入部10がより早くに後退されるようにする。ステップS13の後、処理はステップS14に移行する。
【0047】
ステップS14において、パワースパイラルコントローラ3は、現在、トルクリミット状態であるか否かを判定する。トルクリミット状態とは、モータ18のトルクが規定値以上の状態である。トルクリミット状態であることは、例えばモータ電流が規定値以上であることを判定することで判定される。ステップS14において、現在、トルクリミット状態であると判定された場合には、処理はステップS15に移行する。ステップS14において、現在、トルクリミット状態でないと判定された場合には、処理はステップS16に移行する。
【0048】
ステップS15において、パワースパイラルコントローラ3は、モータ18への電力供給を停止する。これにより、パワースパイラルチューブ17の回転によって体腔に不要なトルクが加わることが抑制される。ステップS15の後、処理はステップS16に移行する。
【0049】
ステップS16において、パワースパイラルコントローラ3は、内視鏡システム1の電源がオフされたか否かを判定する。ステップS16において内視鏡システム1の電源がオフされていないと判定されたとき、処理はステップS1に戻る。ステップS16において内視鏡システム1の電源がオフされたと判定されたとき、図4A及び図4Bの処理は終了される。
【0050】
以上説明したように本実施形態によれば、操作部11やフットスイッチ7の操作がなくとも、挿入部10の挿入操作が検知された場合には挿入部10を前進させるようにモータ18が駆動され、挿入部10の抜去操作が検知された場合には挿入部10を後退させるようにモータ18が駆動される。このように、本実施形態では、操作者による挿入部10の押し引きの操作だけで、押し引きの方向と同じ方向の推進力が挿入部10に発生する。このため、操作者は、直感的に、かつ、誤操作なく、挿入部10の挿入操作又は抜去操作をすることが可能である。
【0051】
また、本実施形態では、回転筒状部材26と支持部材22との接触が検知されている状態が維持されているときにはモータ18は所定の回転速度になるように制御され、短時間で2回の同方向の接触が検知された場合にはモータ18は高速回転するように制御される。このように、本実施形態では、操作者の意図を検知してより早くに挿入又は抜去が行われるように支援することが可能である。ここで、前述した実施形態では、短時間で2回の同方向への挿入部10の移動操作が検知された場合にはモータ18は高速回転するように制御される。この回数は、2回に限定されるものではない。例えば、所定時間内の移動操作の回数が多くなるほどにモータ18の回転速度を速くするような制御がなされてもよい。
【0052】
[変形例]
前述した実施形態では、センサ31及び32は、マイクロスイッチであるとしている。センサ31及び32は、回転子としての回転筒状部材26の所定量の移動を検知できるものであればマイクロスイッチでなくてもよい。例えば、センサ31及び32は、リニアエンコーダであってもよい。この他、センサ31及び32は、回転筒状部材26と支持部材22との接触力の押圧力を検知するひずみゲージや圧力センサであってもよい。
【0053】
ここで、センサ31及び32がリニアエンコーダやひずみゲージ等のように回転筒状部材26の移動量を検知できるセンサである場合、センサによって検知される移動量の大きさに応じてモータ18の回転速度を変化させるような制御がなされてもよい。例えば、センサによって検知される移動量が大きくなるほど、モータ18の回転速度を速くするような制御がなされてもよい。
【0054】
また、前述した実施形態では、短時間で2回の同方向への挿入部10の移動操作が検知された場合にはモータ18は高速回転するように制御される。これとは逆に短時間(例えば0.1秒)で挿入部10の移動操作が解除された場合には挿入部10の移動操作がなされていないとの判定がなされるようにパワースパイラルコントローラ3が構成されていてもよい。この場合、例えば、挿入部10に加えられた振動等によって短時間だけ接触が生じることにより、操作者の意図とは反してモータ18の駆動が開始されてしまうことが防止される。なお、短時間で2回の同方向の挿入部10の移動操作が検知された場合にモータ18を高速駆動させる制御と短時間で挿入部10の移動操作が解除された場合に挿入部10の移動操作がなされていないと判定される制御とは組み合わせて用いられてもよい。
【0055】
また、本実施形態の内視鏡システム1は操作部11の手元スイッチ及びフットスイッチ7を有しているが、操作部11の手元スイッチ及びフットスイッチ7はなくてもよい。一方で、本実施形態による挿入部10の挿入操作又は抜去操作の検知に応じてモータ18が駆動される制御は、操作部11の手元スイッチの操作又はフットスイッチ7の操作によってモータ18が駆動される制御と組み合わせて使用されてもよい。例えば、挿入部10の挿入操作又は抜去操作の検知に応じてモータ18が駆動される制御と操作部11の手元スイッチの操作又はフットスイッチ7の操作によってモータ18が駆動される制御との何れを使用するかがスイッチによって切り替えられるように構成されてもよい。また、挿入部10の挿入操作又は抜去操作が検知された場合と操作部11の手元スイッチの操作又はフットスイッチ7の操作が検知された場合とでモータ18の回転速度が異なるように制御されてもよい。例えば、挿入部10の挿入操作又は抜去操作が検知された場合の回転速度を操作部11の手元スイッチの操作又はフットスイッチ7の操作が検知された場合とでモータ18の回転速度よりも遅くしておくことができる。この場合、体腔内の目的の位置付近まで挿入部10を挿入する際には、操作者は、モータ18の回転速度が速い手元スイッチ又はフットスイッチ7を操作する。そして、目的の位置付近では、操作者は、直感的な操作が可能で、かつ、モータ18の回転速度が遅い挿入部10の押し引き操作をする。このようにして、目的の位置まで素早く、かつ、正確に挿入部10を挿入することが可能である。
【0056】
さらに、本実施形態における挿入装置は、回転自走式の内視鏡を含む内視鏡システムを例にしている。本実施形態における挿入装置は、必ずしも回転自走式の内視鏡を含む内視鏡システムでなくてもよい。
【0057】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0058】
また、前述した実施形態による各処理は、コンピュータとしてのCPU等に実行させることができるプログラムとして記憶させておくこともできる。この他、メモリカード、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の外部記憶装置の記憶媒体に格納して配布することができる。そして、CPU等は、この外部記憶装置の記憶媒体に記憶されたプログラムを読み込み、この読み込んだプログラムによって動作が制御されることにより、前述した処理を実行することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C