特許第6205549号(P6205549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205549
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20170925BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   A61M25/10 530
   A61M25/00 600
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-560597(P2014-560597)
(86)(22)【出願日】2013年2月7日
(86)【国際出願番号】JP2013052923
(87)【国際公開番号】WO2014122758
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】591140938
【氏名又は名称】テルモ・クリニカルサプライ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089060
【弁理士】
【氏名又は名称】向山 正一
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 達也
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−264118(JP,A)
【文献】 特開2010−201027(JP,A)
【文献】 特開2000−217923(JP,A)
【文献】 特開2012−223426(JP,A)
【文献】 特開2002−291900(JP,A)
【文献】 特開2003−175110(JP,A)
【文献】 特開2012−096120(JP,A)
【文献】 特表2007−518519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のルーメンを有する内管と、前記内管と同軸的に設けられ、前記内管の先端より所定長後退した位置に先端を有し、前記内管の外面との間に第2のルーメンを形成する外管と、先端部が前記内管に固定され、後端部が前記外管の先端部に固定され、内部が前記第2のルーメンと連通する膨張可能なバルーンとを備えるバルーンカテーテルであって、
前記バルーンは、前記先端部より前記後端部側に形成された膨張可能部と、前記膨張可能部と前記後端部間に形成され、後端部方向に所定長延び、かつ実質的に膨張不能かつ前記外管の先端部より可撓性が高い後端側筒状部とを備え、
前記バルーンの前記後端部は、前記後端側筒状部の中心軸に対して斜めである傾斜後端面を備えており、前記外管の前記先端部は、前記外管の中心軸に対して斜めである傾斜先端面を備えており、前記外管の前記先端部と前記バルーンの前記後端部は、前記バルーンカテーテルの軸方向に重なり合う部分を有し、さらに、前記外管の前記先端部と前記バルーンの前記後端部は、前記重なり合う部分に設けられ、前記外管の中心軸に対して傾斜し、かつ気密に形成された帯状の傾斜環状固定部により固定されており、さらに、
前記バルーンカテーテルは、前記バルーンの前記膨張可能部部分における単位撓み当たりの三点曲げ荷重値A1と、前記傾斜環状固定部における単位撓み当たりの三点曲げ荷重値A2が、A1<A2であり、かつ、前記バルーンの前記後端側筒状部の長さが、前記膨張可能部の長さの2.5倍以上であることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記バルーンの前記後端側筒状部は、前記バルーンの前記膨張可能部より肉厚であり、さらに、前記バルーンは、前記膨張可能部の後端側に位置する後端側テーパー部を備え、前記後端側テーパー部は、前記後端側筒状部に向かって徐々に肉厚となる肉厚変化部となっている請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記バルーンは、前記膨張可能部の先端側に位置する先端側テーパー部と、前記先端側テーパー部より先端側に延びる先端側筒状部とを備え、前記先端側テーパー部は、前記先端側筒状部に向かって徐々に肉厚となる肉厚変化部となっている請求項2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記先端側テーパー部の先端側部分および前記後端側テーパー部の後端側部分は、実質的に膨張不能となっている請求項3に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記バルーンの前記後端側筒状部の長さは、前記膨張可能部の長さの3倍以上6倍未満である請求項1ないし4のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記バルーンカテーテルは、前記外管の前記固定部より後端側の部分における単位撓み当たりの三点曲げ荷重値A3は、前記三点曲げ荷重値A2より大きく、かつ、前記三点曲げ荷重値A3と前記三点曲げ荷重値A2の差が、300mN/mm以下である請求項1ないし5のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記バルーンの前記傾斜後端面を有する後端部内に、前記外管の前記傾斜先端面を有する先端部が進入し、前記外管の先端部と前記バルーンの後端部の前記重なり合う部分を形成しており、さらに、前記バルーンの前記傾斜後端面の前記後端側筒状部の前記外管の中心軸に対する傾斜角度Cより、前記外管の前記傾斜先端面の前記外管の中心軸に対する傾斜角度Dが、大きいものとなっている請求項1ないし6のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
前記三点曲げ荷重値A1と前記三点曲げ荷重値A2の差が、50mN/mm以下である請求項1ないし7のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項9】
前記外管の前記先端部は、前記外管の他の部分に比べて変形が容易な易変形性先端部となっている請求項1ないし8のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項10】
前記バルーンカテーテルは、内径が1.1mmのガイディングカテーテル内に挿入可能であり、かつ、前記内管内に、0.53mmのガイドワイヤーを挿入可能である請求項1ないし9のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項11】
前記バルーンカテーテルは、前記内管および前記外管の後端に固定されたハブを備え、前記ハブは、前記第1のルーメンと連通する第1の開口部および前記第2のルーメンと連通する第2の開口部を備えている請求項1ないし10のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテル、特に、血管、胆管などの細径の体腔内に挿入されるバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルは、血管造影、化学療法剤等の薬液注入、塞栓術、経皮冠動脈拡張術(PTCA)、経皮的動脈拡張術(PTA)等に使用されている。
バルーンカテーテルとしては、本件出願人が提案する特許文献1(特開2005−103120)がある。
特許文献1のバルーンカテーテル1は、インナーチューブ9とアウターチューブ21とを備えた二重管構造のカテーテル本体3を備える。カテーテル本体の先端部にバルーン7が取り付けられ、その内部に、インナーチューブとアウターチューブとの間に形成された注入液通路23がアウターチューブの先端開口22を介して連通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−103120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のようなバルーンカテーテルは、最近では、より細く、かつ湾曲した血管への挿入が求められるようになってきている。
そこで、本発明の目的は、第1のルーメンを有する内管と、内管と同軸的に設けられ、内管の先端より所定長後退した位置に先端を有し、内管の外面との間に第2のルーメンを形成する外管と、内部が第2のルーメンと連通するバルーンとを備えるバルーンカテーテルであってカテーテルの先端から外管の先端部までの領域におけるキンク発生が少なく、良好な屈曲部通過性を持ち、体腔内への挿入操作性に優れたバルーンカテーテルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
第1のルーメンを有する内管と、前記内管と同軸的に設けられ、前記内管の先端より所定長後退した位置に先端を有し、前記内管の外面との間に第2のルーメンを形成する外管と、先端部が前記内管に固定され、後端部が前記外管の先端部に固定され、内部が前記第2のルーメンと連通する膨張可能なバルーンとを備えるバルーンカテーテルであって、前記バルーンは、前記先端部より前記後端部側に形成された膨張可能部と、前記膨張可能部と前記後端部間に形成され、後端部方向に所定長延び、かつ実質的に膨張不能かつ前記外管の先端部より可撓性が高い後端側筒状部とを備え、前記バルーンの前記後端部は、前記後端側筒状部の中心軸に対して斜めである傾斜後端面を備えており、前記外管の前記先端部は、前記外管の中心軸に対して斜めである傾斜先端面を備えており、前記外管の前記先端部と前記バルーンの前記後端部は、前記バルーンカテーテルの軸方向に重なり合う部分を有し、さらに、前記外管の前記先端部と前記バルーンの前記後端部は、前記重なり合う部分に設けられ、前記外管の中心軸に対して傾斜し、かつ気密に形成された帯状の傾斜環状固定部により固定されており、さらに、前記バルーンカテーテルは、前記バルーンの前記膨張可能部部分における単位撓み当たりの三点曲げ荷重値A1と、前記傾斜環状固定部における単位撓み当たりの三点曲げ荷重値A2が、A1<A2であり、かつ、前記バルーンの前記後端側筒状部の長さが、前記膨張可能部の長さの2.5倍以上であるバルーンカテーテル。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本発明のバルーンカテーテルの一実施例の部分省略外観図である。
図2図2は、図1に示したバルーンカテーテルの先端部の拡大外観図である。
図3図3は、バルーンを膨張させた状態における図1に示したバルーンカテーテルの先端部の拡大縦断面図である。
図4図4は、図1に示したバルーンカテーテルの後端部の拡大縦断面図である。
図5図5は、本発明のバルーンカテーテルのバルーン後端部と外管先端部の固着部を説明するための説明図である。
図6図6は、本発明のバルーンカテーテルのバルーン後端部と外管先端部の固着部を説明するための説明図である。
図7図7は、本発明のバルーンカテーテルのバルーン後端部と外管先端部の固着部を説明するための説明図である。
図8図8は、本発明の他の実施例のバルーンカテーテルのバルーン後端部と外管先端部との固着部付近の拡大外観図である。
図9図9は、図8の縦断面図である。
図10図10は、本発明の他の実施例のバルーンカテーテルのバルーン後端部と外管先端部との固着部付近の拡大外観図である。
図11図11は、図10の縦断面図である。
図12図12は、本発明の他の実施例のバルーンカテーテルのバルーン後端部と外管先端部との固着部付近の拡大断面図である。
図13図13は、本発明の他の実施例のバルーンカテーテルのバルーン後端部と外管先端部との固着部付近の拡大断面図である。
図14図14は、本発明の他の実施例のバルーンカテーテルのバルーン後端部と外管先端部との固着部付近の拡大断面図である。
図15図15は、本発明における単位撓み当たりの三点曲げ荷重の測定方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のバルーンカテーテルを図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明のバルーンカテーテル1は、第1のルーメン11を有する内管3と、内管3と同軸的に設けられ、内管3の先端より所定長後退した位置に先端を有し、内管3の外面との間に第2のルーメン12を形成する外管2と、先端部42が内管3に固定され、後端部44が外管2に固定され、内部が第2のルーメン12と連通する膨張可能なバルーン4とを備える。
【0008】
そして、バルーン4は、先端部(先端側筒状部)42より後端部側に形成された膨張可能部41と、膨張可能部41と後端部44間に形成され、後端部方向に所定長延び、かつ実質的に膨張不能な後端側筒状部(スリーブ)43とを備える。
そして、バルーンカテーテル1は、バルーンの膨張可能部部分における単位撓み当たりの三点曲げ荷重値A1と、バルーンの後端側筒状部の後端部と外管の先端部との固定部における単位撓み当たりの三点曲げ荷重値A2が、A1<A2となっている。さらに、バルーン4の実質的に膨張不能な後端側筒状部43の長さBが、膨張可能部Cの長さの2.5倍以上となっている。
【0009】
なお、三点曲げ荷重値A1の測定部位は、バルーン4の膨張可能部41かつ内管3のマーカーを持たない部位である。膨張可能部41の中央部に位置する部位に、マーカーが設けられていない場合には、中央部を測定部位とすることが好ましい。
また、本発明において、単位撓み当たりの三点曲げ荷重値とは、図15に示すように、支台M上にて、一定の距離(L)を持った支点X−X間で、試験サンプルYを支え、その中央に金属性の加圧棒Z(外径1.5mm)で垂直方向に一定距離動かして試験サンプルYに荷重を加えたときの荷重値である。本発明では、支点間距離を10mm、試験機:RTC−1210A(株式会社オリエンテック製)、加圧棒垂直方向移動距離2.0mm、加圧棒テストスピード5.0mm/min.)とし、1.0mm押し込み時の荷重を記録した。そして、本発明では、単位撓み当たりの三点曲げ荷重をカテーテルの剛性を簡単に表す指標として用いている。
【0010】
この実施例のバルーンカテーテル1は、外管2と、内管3と、バルーン4と、分岐ハブ5とにより形成されている。
内管3は、先端が開口した第1のルーメン11を有するチューブ体である。第1のルーメン11は、ガイドワイヤーの挿通、薬液等の注入などに使用される。そして、この実施例のバルーンカテーテル1では、内管3の第1のルーメン11は、分岐ハブ5に設けられた第1の開口部54と連通している。
内管3としては、外径が、0.6〜1.7mmであることが好ましく、特に好ましくは、0.6〜0.7mmであり、内径が、0.4〜1.4mmであることが好ましく、特に好ましくは、0.4〜0.5mmである。
そして、内管3は、外管2の内部に挿通され、その先端部が外管2より突出している。この内管3の外面と外管2の内面間により第2のルーメン(バルーン膨張用ルーメン)12が形成されており、十分な容積を有している。
【0011】
そして、内管3には、先端部(先端31より若干後端側、バルーン4の先端部42付近)に造影マーカー32が固定されている。造影マーカーは、X線不透過材料(例えば、金、白金、タングステン若しくはそれらの合金、あるいは銀−パラジウム合金、白金−イリジウム合金等)により形成することが好ましい。このようにすることにより、バルーンカテーテル1の先端部をX線造影により確認することができる。また、内管3には、剛性付与体35を設けてもよい。剛性付与体としては、金属線もしくは合成樹脂線により形成されたブレードが好ましい。そして、内管3に剛性付与体を設ける場合には、図3に示すように、先端部を除く全体に設けることが望ましい。具体的には、造影マーカー32より後端まで設けることが好ましい。
【0012】
また、この実施例のものでは、図1に示すように、内管3は、先端側より、柔軟な第1柔軟領域3aと、第1領域3aと連続し、柔軟であるが第1柔軟領域3aより硬度が高い第2柔軟領域3bと、第2柔軟領域3bと連続し、第2柔軟領域3bより硬度が高い第3領域3cを有している。特に、この実施例では、最も柔軟な第1柔軟領域3aは、図1に示すように、内管3の先端より、後端方向に延び、第1柔軟領域3aの後端は、後述する外管2とバルーン4の後端側筒状部との帯状の傾斜環状固定部6を越え、所定長後端側に位置するものとなっている。第1領域3aの長さとしては、100〜350mmが好ましく、特に、200〜300mmが好ましい。
【0013】
また、第1領域3aにおける単位撓み当たりの三点曲げ荷重は、20〜75mN/mmであることが好ましい。また、第1柔軟領域3aと連続する第2柔軟領域3bの長さとしては、100〜350mmが好ましく、特に、200〜300mmが好ましい。また、第2領域3bにおける単位撓み当たりの三点曲げ荷重は、65〜105mN/mmであることが好ましく、第1柔軟領域より、10〜85mN/mm三点曲げ荷重が高いことが好ましい。また、第2柔軟領域3bと連続する第3領域3cの長さとしては、500〜1500mmが好ましく、特に、800〜1200mmが好ましい。また、第3領域3cにおける単位撓み当たりの三点曲げ荷重は、95〜320mN/mmであることが好ましく、第2領域3bより、30〜250mN/mm三点曲げ荷重が高いことが好ましい。
また、内管2は、外管の固定部付近となる部分が、内管の他の部分に比べて変形が容易な易変形性部分となっているものであってもよい。このような易変形部は、例えば、内管の外管の固定部付近となる部分のみ剛性付与体を設けないものとすること、内管の外管の固定部付近となる部分のみ肉薄のものとすることにより形成することができる。
【0014】
外管2は、内部に内管3を挿通し、先端が内管3の先端より所定長後退した部分(所定長後端側)に位置するチューブ体である。第2のルーメン12は、その先端が後述するバルーン4の後端部と連通し、第2のルーメン12の後端は分岐ハブ5に設けられた、バルーンを膨張させるための流体(例えば、バルーン膨張用液体、具体的は、血管造影剤)を注入するためのインジェクションポート53の第2の開口部55と連通している。
外管2としては、外径が、0.8〜2.0mmであることが好ましく、特に好ましくは、0.8〜1.0mmであり、内径が、0.7〜1.9mmであることが好ましく、特に好ましくは、0.7〜0.8mmである。
外管の先端部は、外管の他の部分に比べて変形が容易な易変形性先端部となっていることが好ましい。この実施例では、外管2は、先端部に外管2の中心軸に対して斜めである傾斜先端面21を備えており、先端が柔軟なものとなっている。なお、図13および図14に示す実施例のように、外管2の先端部を肉薄先端部とすること、また、スリットを形成することなどにより、先端を柔軟なものとしてもよい。
【0015】
外管2および内管3の形成材料としては、ある程度の硬度とある程度の可撓性を有する材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、さらには、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ポリウレタン、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類が使用される。
また、外管2にも、剛性付与体を設けてもよい。剛性付与体としては、金属線もしくは合成樹脂線により形成されたブレードが好ましい。
【0016】
そして、バルーン4の後端側筒状部43は、バルーン4の膨張可能部41より肉厚なものとなっている。なお、この実施例のバルーン4は、膨張可能部41の後端側に位置する(言い換えれば、膨張可能部41の後端部により構成された)後端側テーパー部72を備える。後端側テーパー部72は、後端側筒状部43に向かって徐々に肉厚となる肉厚変化部となっている。また、バルーン4は、膨張可能部41の先端側に位置する(言い換えれば、膨張可能部41の先端部により構成された)先端側テーパー部73と、先端側テーパー部73より先端側に延びる先端側筒状部42とを備えている。先端側テーパー部73は、先端側筒状部42に向かって徐々に肉厚となる肉厚変化部となっている。そして、先端側テーパー部73の先端側部分および後端側テーパー部72の後端側部分は、実質的に膨張不能となっている。
なお、本発明における膨張可能部の長さCは、上記先端側テーパー部73および後端側テーパー部72を含むものである。
さらに、この実施例では、バルーン4の膨張可能部41は、塑性変形により形成されている。また、先端側筒状部42は、膨張可能部41より小径かつ肉厚であり、実質的に膨張不能である。後端側筒状部43は、膨張可能部41の後端側に形成され、膨張可能部41より小径かつ肉厚であり、実質的に膨張不能である。なお、膨張可能部41は、内圧を負荷することにより、弾性変形により伸張可能である。さらに、バルーン4は、軸方向に延びるしわ71を有する縮径形態に形状付けされていることが好ましい。なお、膨張可能部41は、周方向に延びるしわは持たないものとなっている。
【0017】
また、バルーン4の膨張可能部41は、注入される液体により、膨張し、血管内壁に密着可能である。具体的には、膨張可能部41は、バルーン膨張用液体の注入により、形状付けられた縮径形態より成形形態に復元し、さらに、伸張(膨張)可能である。このため、血管内壁に確実に密着し、かつ内壁に損傷を与えないものとなっている。特に、この実施例では、膨張可能部41は、ガラス転移点以上かつ軟化点未満の温度条件下にて、延伸することにより形成されている。そして、塑性変形している形態(成形形態)までは、抵抗なく膨張し、その後膨張は、注入されるバルーン膨張用液体の圧力に従って、弾性変形により膨張(伸張)し、圧力の低下により、弾性変形による膨張前の形態に復元する。
【0018】
また、膨張可能部41は、肉厚が、先端側筒状部42および後端側筒状部43より肉薄のものとなっている。そして、上述した先端側筒状部42および後端側筒状部43は、各筒状部の半径方向には、実質的に延伸されていない。そして、膨張可能部41の先端側筒状部側端部(先端側テーパー部)73および後端側筒状部側端部(後端側テーパー部)72は、膨張可能部41に向かって徐々に肉薄となる肉厚変化部となっている。さらに、膨張可能部41の先端側筒状部側端部73,後端側筒状部側端部72は、膨張可能部41の内側に倒れた形態に形状付けされていることが好ましい。このようにすることにより、膨張可能部41の立ち上がり部が、血管内での進行時、ガイディングカテーテルへの挿入時、収納時に障害となることを防止し、カテーテルの挿入操作が良好となる。
【0019】
膨張可能部41は、後述するように、形成材料である合成樹脂のガラス転移点以上かつ軟化点以下にて部分的に負荷された内圧による塑性変形により形成されていることが好ましい。さらに、膨張可能部41は、塑性変形により形成された形態より縮径した状態に形状付けされていることが好ましい。膨張可能部の形状付けは、熱収縮チューブを用いた圧迫と加熱によるヒートセットにより行うことが好ましい。このようにすることにより、膨張可能部41に、良好かつ確実に、軸方向に延びるしわ71を有する縮径形態に形状付けすることができる。
また、上記のヒートセットは、合成樹脂の軟化点付近もしくは軟化点から10度以下以内での加熱により行われていることが好ましい。このようにすることにより、膨張可能部の塑性変形に影響を与えることなく、確実に、軸方向に延びるしわを有する縮径形態に形状付けされる。
【0020】
先端側筒状部42は、ほぼ同一外径にて延びる短い筒状部であり、膨張可能部41より肉厚なものとなっている。後端側筒状部43は、ほぼ同一外径にて延び、かつ、先端側筒状部42より軸方向に長い長さを有するものとなっており、かつ、膨張可能部41より肉厚なものとなっている。また、先端側筒状部42は、後端側筒状部43より外径が小径のものとなっており、内管3の先端部に固定されている。
また、先端側筒状部42の最先端は、造影マーカー32の後端に位置するもしくは後端に到達することなく近接することが好ましい。また、先端側筒状部42は、造影マーカー32を被覆しないことが好ましい。内管3への先端側筒状部42の固定は、熱シールにより行うことが好ましい。
また、後端側筒状部43は、液体が注入されても、実質的に膨張しないものとなっている。また、後端側筒状部43は、その内面と内管3の内面間とによりバルーン膨張用ルーメン12の一部を形成している。バルーン4の後端側にこのような所定長軸方向に延びる後端側筒状部43を設けることにより、当該部分は、外管4に比べて可撓性が高いため、変形しやすく、ロープロファイル化(生体内挿入時の細径化)が可能となり、より細径の体腔(例えば、血管)への挿入が容易となる。
【0021】
バルーン4の形成材料としては、弾性を有する熱可塑性合成樹脂が用いられる。具体的には、例えば、ポリウレタンおよびウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、軟質ポリ塩化ビニル、ポリアミドおよびアミド系エラストマー(例えば、ポリアミドエラストマー)、フッ素樹脂エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの合成樹脂エラストマーが好適である。特に、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(例えば、芳香族ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、脂肪族ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどが好ましい。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの例としては、芳香族及び脂肪族熱可塑性エラストマーポリウレタンが挙げられる。
【0022】
さらに、バルーン4の形成材料としては、ガラス転移点が、0℃以下のものが好ましく、特に、−10℃以下のものが好ましい。軟化点(ビカット軟化点)が、70℃以上のもの好ましく、特に、80℃から130℃のものが好ましい。また、バルーン4は、外管4より、可撓性、柔軟性が高いものとなっている。特に、バルーン4は、内管3および外管4より、可撓性および柔軟性が高いものが好ましい。
そして、この実施例のバルーン4では、先端側筒状部42の膨張可能部側端部および後端側筒状部43の膨張可能部側端部74は、小径となっている。さらに、後端側筒状部43は、先端側筒状部の軸方向長より長く後端部方向に延びるものとなっていることが好ましい。このようにすることにより、バルーンの全長が長くなり、カテーテルの先端側部分に、長いロープロファイル部分を形成することができる。
【0023】
特に、この実施例のバルーン4は、図2および図3に示すように、後端側筒状部43は、後端部方向に所定長延びる膨張不能な筒状部(言い換えれば、スリーブ)を有するものとなっている。そして、後端側筒状部43は、筒状部の中心軸に対して斜めである傾斜後端面45を備える。バルーン4の後端側筒状部43と後述する外管4の先端部とは、外管4の中心軸に対して傾斜し、かつ気密に形成された帯状の傾斜環状固定部6により固定されている。
バルーン4としては、膨張可能部41の外径(成形形態復元時の外径)が、0.9〜2.1mmであることが好ましく、特に、0.9〜1.0mmであることが好ましく、また、膨張時外径(拡径可能外径)は、3.0〜15.0mmであることが好ましく、特に、4.0〜8.0mmであることが好ましい。また、膨張可能部41の先端側および後端側テーパー部を含む長さは、3.5〜14.5mmであることが好ましく、特に好ましくは、4.0〜6.0mmである。また、先端側および後端側テーパー部を含まない膨張可能部41の成形形態復元時の長さは、2.5〜13.5mmであることが好ましく、特に好ましくは、3.0〜5.0mmである。また、膨張可能部の半径方向延伸度は、300〜900%であることが好ましく、軸方向延伸度は、200〜350%であることが好ましい。
【0024】
バルーン4の実質的に膨張不能な後端側筒状部43の長さBは、膨張可能部41の長さの2.5倍以上となっている。特に、後端側筒状部43の長さBは、膨張可能部41の長さの3倍以上6倍未満であることが好ましい。後端側筒状部43の長さBは、具体的には、10〜60mmであることが好ましい。特に、好ましくは、15〜45mmであり、特に好ましくは、20〜30mmである。
また、後端側筒状部43の外径は、0.9〜2.1mmであることが好ましく、特に好ましくは、0.9〜1.0mmであり、長さは10〜60mmであることが好ましく、特に好ましくは、15〜30mmである。また、先端側筒状部42の外径は、0.7〜1.9mmであることが好ましく、特に好ましくは、0.8〜0.9mmであり、長さは1.0〜3.0mmであることが好ましく、特に好ましくは、1.5〜2.5mmである。また、後端側筒状部43,先端側筒状部42の肉厚は、0.07〜0.20mmであることが好ましく、特に好ましくは、0.08〜0.15mmである。
また、バルーン4の膨張可能部41は、先端側筒状部42および後端側筒状部43より肉薄となっている。膨張可能部41の肉厚は、後端側筒状部43、先端側筒状部42より、0.03〜0.18mm肉薄であることが好ましく、特に0.04〜0.11mm肉薄であることが好ましい。そして、この実施例のカテーテル1では、バルーン4は、軸方向に伸張された状態にてシャフト部に固定されている。このため、図2に示すように、バルーン4は、軸方向に若干延びた状態となっており、縮径形態に形状付けされた膨張可能部がより細径なものとなっている。
【0025】
そして、本発明のバルーンカテーテル1では、バルーンの膨張可能部部分(図2および図3のP1、この例では、マーカーが位置しない膨張可能部の中央部)における単位撓み当たりの三点曲げ荷重値A1と、バルーンの後端側筒状部の後端部と外管の先端部との固定部(図2および図3のP2)における単位撓み当たりの三点曲げ荷重値A2が、A1<A2でありかつバルーン4の実質的に膨張不能な後端側筒状部43の長さBは、膨張可能部41の長さの2.5倍以上であることの両者を備えている。
このため、カテーテルのバルーンの全体および外管との固定部を含む先端部領域において、先端側から後端側に向かって段階的に可撓性が低く、言い換えれば、段階的に硬くなるものとなっている。よって、先端部分(可撓性変化領域)におけるキンクの発生が少ない。さらに、可撓性が変化する先端部分(可撓性変化領域)の中央部分であるバルーン4の後端側筒状部43が、ある程度の長さを有するため、この部分(バルーンの筒状部)における屈曲変形性が良好となる。これにより、本発明のバルーンカーテルは、体腔内への挿入操作性に優れたものとなっている。
また、三点曲げ荷重値A1(図2および図3のP1)と三点曲げ荷重値A2(図2および図3のP2)の差が、50mN/mm以下であることが好ましい。このようにすることにより、可撓性が変化する先端部分(可撓性変化領域)における可撓性(硬度)差が少ないものとなり、血管の湾曲部の通過性が高いものとなる。
【0026】
そして、三点曲げ荷重値A1(図2および図3のP1)は、50mN/mm以下であることが好ましい。特に、50mN/mm以下であることが好ましい。また、三点曲げ荷重値A2(図2および図3のP2)は、100mN/mm以下であることが好ましい。また、図2および図3のP1と図2および図3のP2間に位置するバルーン4の後端側筒状部43における三点曲げ荷重値は、A1より大きくかつA3より小さいことが好ましい。このようなものであれば、よりキンク発生が少なく、かつ、血管の湾曲部の通過性が高いものとなる。
また、外管2の固定部6より後端側の部分における単位撓み当たりの三点曲げ荷重値A3(図2および図3のP3)は、三点曲げ荷重値A2(図2および図3のP2)より大きいことが好ましい。さらに、三点曲げ荷重値A3(図2および図3のP3)と三点曲げ荷重値A2(図2および図3のP2)の差が、300mN/mm以下であることが好ましい。このようなものとすることにより、カテーテルの先端から外管の先端部分までの先端部領域において、先端側から後端側に向かって段階的に可撓性が低く、言いかえれば、段階的に硬くなるものとなる。これにより、外管の先端部を含む先端部領域におけるキンクの発生が少ないものとなる。さらに、外管2の固定部6より後端側の部分は、ある程度の硬さを有するため、カテーテルの基部にて与えた押し込み力の伝達性も良好なものとなる。
【0027】
そして、三点曲げ荷重値A3(図2および図3のP3)は、350mN/mm以下であることが好ましい。また、A2とA3の差は、300mN/mm以下であることが好ましい。
そして、本発明のバルーンカテーテルは、内径が1.1mmのガイディングカテーテル内に挿入可能であることが好ましく、特に0.95mmのガイディングカテーテル内に挿入可能であることが好ましい。本発明のバルーンカテーテルは、上述したように三点曲げ荷重値A2が、A1<A2でありかつA1とA2の差が、50mN/mm以下であることの両者を備えている。このため、細径のバルーンカテーテルとしても十分な挿入操作性を備える。また、カテーテルをこのような細径のものとすることにより、より細径の体腔内(血管内)への挿入が可能となる、さらに、本発明のバルーンカテーテルは、内管内に、外径が0.36mmのガイドワイヤーを挿入可能であることが好ましく、特に0.53mmのガイドワイヤーを挿入可能であることが好ましい。このようにすることにより、ある程度の太さを持ち、十分な誘導機能を発揮しうるガイドワイヤーを使用することが可能となり、体腔(血管)内への挿入が容易となる。
【0028】
そして、この実施例のバルーンカテーテルでは、バルーン4の後端部44と外管2の先端部とを接合する固定部6は、傾斜環状固定部(言い換えれば、傾斜環状接合部)となっている。そして、三点曲げ荷重値A2(図2および図3のP2)は、傾斜環状固定部における硬度である。言い換えれば、環状固定部の中央部分を加圧棒により垂直方向に荷重を加えたときの荷重値である。
図5ないし図7を用いて、この実施例のバルーンカテーテルにおけるバルーン4の後端部44と外管2の先端部とを接合する傾斜環状固定部6について説明する。
上述したように、外管2の先端部は、外管2の中心軸に対して斜めである傾斜先端面21を備え、バルーン4は、後端部44に後端側筒状部43の中心軸に対して斜めである傾斜後端面45を備えている。そして、外管2の先端部とバルーン4の後端部44は、バルーンカテーテルの軸方向に重なり合う部分を有している。さらに、この外管2の先端部とバルーン4の後端部44の重なり合う部分に設けられ、外管2の中心軸に対して傾斜し、かつ気密に形成された帯状の傾斜環状固定部6を備えている。外管2とバルーン4は、この傾斜環状固定部6により固定されている。バルーン4の後端側筒状部43および後端部44は、外管2の先端部より、可撓性、柔軟性が高いものであるので、傾斜環状固定部6の形成部位は、後端側から先端側に向かって可撓性、柔軟性が高いものとなる。したがって、外管2の先端部付近での急激な物性変化点が形成されず、キンクの発生を防止するとともに、良好な変形性を有している。
【0029】
特に、この実施例のバルーンカテーテル1では、バルーン4の後端部44は、拡径部(言い換えれば、傾斜拡径部、傾斜膨張可能部)となっており、その後端面45が、後端側筒状部43(外管2)の中心軸に対して、所定角度傾斜した傾斜後端面となっている。また、拡径した後端部44内に、外管2の先端部が進入し、この進入部分が、外管2の先端部とバルーン4の後端部44の重なり合う部分を形成している。また、外管2は、バルーン4の後端側筒状部43とほぼ同じ外径となっており、バルーン4の後端部44が膨出した状態となっている。
そして、この実施例のバルーンカテーテル1では、図6に示すように、バルーン4の傾斜後端面45と外管2の傾斜先端面21は、ほぼ平行もしくは外管の中心軸に対する傾斜角度の相違が、44度以下、好ましくは20度以下となっている。図6に示すもののように、バルーン4の傾斜後端面45の後端側筒状部43(外管2)の中心軸に対する傾斜角度Cより、外管2の傾斜先端面21の外管2の中心軸に対する傾斜角度Dが、大きいことが好ましい。そして、バルーン4の傾斜後端面45の後端側筒状部43(外管2)の中心軸に対する傾斜角度Cは、20度〜30度が好ましく、特に、22度〜28度が好ましい。また、外管2の傾斜先端面21の外管2の中心軸に対する傾斜角度Dは、30度〜45度が好ましく、特に、35度〜43度が好ましい。
【0030】
そして、バルーン4の拡径した後端部44内に進入した外管2の先端部は、バルーン4に気密に固着されており、帯状の傾斜環状固定部6を形成している。傾斜環状固定部6は、環状固着部61を有している。環状固着部61は、傾斜環状固定部6の外管2の先端部の外面と接触するバルーン4の後端部44の内面の全体に形成されている。なお、後述するように、両者間の気密性に影響を与えない非固着部を有していてもよい。
環状固着部61は、ほぼ同じ幅もしく後端に向かって徐々に幅が広くなっていることが好ましい。この実施例のバルーンカテーテル1では、図6に示すように、環状固着部61は、後端に向かって徐々に幅が広くなっている。
【0031】
また、図6に示すバルーンカテーテル1では、外管2の傾斜先端面21の先端22とバルーン4の傾斜後端面45の先端46とを結ぶ仮想線は、外管2の中心軸とほぼ平行となっている。つまり、バルーン4の傾斜後端面45の先端46の先端方向のほぼ前方に外管2の傾斜先端面21の先端22が位置している。同様に、外管2の傾斜先端面21の後端23とバルーン4の傾斜後端面46の後端47とを結ぶ仮想線は、外管2の中心軸とほぼ平行となっている。つまり、バルーン4の傾斜後端面45の後端47の先端方向のほぼ前方に外管2の傾斜先端面21の後端23が位置している。このため、環状固着部61には、幅が狭い部分が形成されない。
【0032】
さらに、この実施例では、バルーン4の傾斜後端面45の先端46は、外管2の傾斜先端面21の後端23より、先端側に位置している。このため、傾斜環状固定部6は、継続的に物性が変化するものとなっている。バルーン4の後端側筒状部43および後端部44は、外管2の先端部より、可撓性、柔軟性が高いものであるので、傾斜環状固定部6の形成部位は、後端側から先端側に向かって可撓性、柔軟性が徐々に高いものとなる。特に、この実施例の傾斜環状固定部6では、後端側より、バルーン4の後端部が外管2の先端部を被包する部分が増加し、外管2の傾斜先端面21の後端23を越えると、バルーン4の後端部44は、軸方向に直交する断面の断面積の増加は継続するものの外管2の先端部の軸方向に直交する断面の断面積は減少する。そして、バルーン4の後端部44の傾斜面45の先端46において、後端部44の断面が、環状となり、その前方にて、さらに、外管2の先端部は、断面積が減少し、先端22にて終端している。つまり、この実施例のものでは、傾斜環状固定部6はその全体において、外管2の中心軸に直交する切断面において、バルーン4の後端部44と外管2の先端部が、ともに環状である部分を持たないものとなっている。
【0033】
そして、図6における外管2の先端22とバルーン4の傾斜後端面45の先端46間の距離Oは、0.5〜2.0mmであることが好ましく、特に、0.6〜1.5mmであることが好ましい。また、外管2の傾斜先端面21の後端23とバルーン4の傾斜後端面45の後端47間の距離Nは、0.5〜4.0mmであることが好ましく、特に、0.6〜1.0mmであることが好ましい。また、傾斜環状固定部6の軸方向長L(言い換えれば、外管2の先端22とバルーン4の傾斜後端面45の後端47間の距離L)は、2.0〜8.0mmであることが好ましく、特に、2.3〜3.5mmであることが好ましい。また、外管2の傾斜先端面21の後端23とバルーン4の傾斜後端面45の先端46間の距離Mは、0.6〜2.5mmであることが好ましく、特に、0.8〜1.5mmであることが好ましい。
なお、外管2の傾斜先端面21の後端23とバルーン4の傾斜後端面45の先端46間の距離Mは0、すなわち、図7に示す実施例のように、外管2の傾斜先端面21の後端23とバルーン4の傾斜後端面45の先端46が、外管2の軸方向の同じ位置に位置するものであってもよい。外管2の傾斜先端面21の後端23は、バルーン4の傾斜後端面45の先端46より、先端側に位置しないことが好ましい。
【0034】
また、傾斜環状固定部6は、例えば、図7に示すように、バルーン4の後端部44内に、外管2の先端部を挿入した後、重なっている部分及びその前後約2mmに熱収縮チューブを被嵌し、熱収縮チューブの上から熱型7により、外面より加熱することにより、両者を融着することにより、形成される。そして、外管2の傾斜先端面の外縁は、溶融によりエッジのない丸みを帯びたものとなっている。また、この融着工程において、図7に示すように、外管2の傾斜先端面21の先端部が、直接加熱されないよう行ってもよい。このようにすることにより、外管2の先端にバルーン4の後端部との非融着部76もしくは弱融着部を形成することができる。このような弱融着部を形成することにより、言い換えれば、外管2が存在しない部分(重なっていない部分)のバルーン4の後端部が、熱収縮チューブにより加熱圧縮されることがなく、シール部に薄肉部が形成されることを防止する。
【0035】
また、バルーン4の後端部と外管2の先端部との接合形態は、上述したものに限定されるものではなく、図8および図9に示す実施例のバルーンカテーテル10が備えるタイプのものであってもよい。
この実施例のバルーンカテーテル10では、外管2の先端部は、傾斜小径部25となっており、その先端に傾斜先端面21が形成されている。また、バルーン4の後端部44の外径は、外管2の傾斜小径部より後端側の外管本体部の外径とほぼ同じものとなっている。そして、外管2の傾斜小径部が、バルーン4の傾斜後端部44内に挿入され、固定されることにより、傾斜環状固定部6aが形成されている。そして、このバルーンカテーテル10では、バルーン4の後端部44部分が、傾斜膨張可能部となっているが、それより後端側は、外管2の後端部までほぼ同一外径で延びるものとなっている。また、バルーン4の後端部と外管2の先端部との接合形態は、図10および図11に示す実施例のバルーンカテーテル20が備えるタイプのものであってもよい。
【0036】
この実施例のバルーンカテーテル20では、バルーン4の後端部は、傾斜拡径部となっておらず、後端側筒状部43がそのまま延長し、斜めに終端することにより形成されている。そして、外管2の先端部は、傾斜小径部25とそれに続く、肉厚部24を備えている。そして、傾斜小径部25の先端に傾斜先端面21が形成されている。また、外管2の傾斜小径部より後端側の外管本体部の外径は、バルーン4の後端側筒状部43および後端部の外径とほぼ同じものとなっている。そして、外管2の傾斜小径部25が、バルーン4の傾斜後端部内に挿入され、固定されることにより、傾斜環状固定部6bが形成されている。そして、このバルーンカテーテル20では、バルーン4の膨張可能部41より後端側は、外管2の後端部までほぼ同一外径で延びるものとなっている。そして、このカテーテル20においても、外面に露出するバルーン4と外管2の接合端に段差を持たないものとなっている。
なお、図12に示すバルーンカテーテル30のように、外管2は、全体の内径が、傾斜小径部25の内径にて、後端部まで延びるものであってもよい。この実施例のバルーンカテーテル30においても、外管2の傾斜先端部が、バルーン4の傾斜後端部内に挿入され、固定されることにより、傾斜環状固定部6cが形成されている。
【0037】
また、バルーン4の後端部と外管2の先端部との接合形態は、上述したものに限定されるものではなく、図13に示す実施例のバルーンカテーテル60が備えるタイプのものであってもよい。
この実施例のバルーンカテーテル60では、外管2の先端部は、肉薄小径部27となっており、かつ、上述した実施例のような傾斜部とはなっていない。この実施例においても、外管の先端部は、外管の他の部分に比べて変形が容易な易変形性先端部となっている。
また、バルーン4の後端部44の内径は、外管2の肉薄小径部27の外径とほぼ同じものとなっている。そして、外管2の肉薄小径部27が、バルーン4の後端部44内に挿入され、固定されることにより、環状固定部6fが形成されている。そして、このバルーンカテーテル60では、バルーン4の後端部44部分が、拡径部となっており、外管2の肉薄小径部27を被覆している。また、バルーン4の後端部44の外径は、外管2の肉薄小径部27より後端側部分の外径とほぼ同じものとなっている。そして、カテーテル60の外面に露出するバルーン4の後端と外管2の接合端間に段差および隙間を持たないものとなっている。
【0038】
また、バルーン4の後端部と外管2の先端部との接合形態は、図14に示す実施例のバルーンカテーテル70が備えるタイプのものであってもよい。
この実施例のバルーンカテーテル70では、上述したバルーンカテーテル60と同様に、外管2の先端部は、肉薄小径部27となっており、かつ、上述した実施例のような傾斜部とはなっていない。この実施例においても、外管の先端部は、外管の他の部分に比べて変形が容易な易変形性先端部となっている。
また、バルーン4の後端部44は、上述したバルーンカテーテル60と異なり、拡径部となっていない。このため、バルーン4の後端側筒状部43は、全体がほぼ同じ内径および外径にて延びるものとなっている。そして、外管2の先端部の肉薄小径部27の外径は、バルーン4の後端側筒状部43の内径とほぼ同じものとなっている。
そして、外管2の肉薄小径部27が、バルーン4の後端部44内に挿入され、固定されることにより、環状固定部6gが形成されている。そして、カテーテル70の外面に露出するバルーン4と外管2の接合端に段差を持たないものとなっている。
【0039】
分岐ハブ5は、図4に示すように、第1のルーメン11と連通する第1の開口部54を有し、内管3の後端部に固着された内管ハブ52と、第2のルーメン12と連通しインジェクションポート53を形成する第2の開口部55を有し、外管2の後端部に固着された外管ハブ51とを備え、外管ハブ51と内管ハブ52は、固着されている。外管ハブ51と内管ハブ52の固定は、外管2の後端部に取り付けられた外管ハブ51の後端から内管3をその先端から挿入し接合することにより行われている。また、この分岐ハブ5では、外管2の後端部および分岐ハブ5の先端部を被包する折曲がり防止用チューブ56が設けられている。インジェクションポート53は、外管ハブ51の側壁より延びる分岐ポート53aと、インジェクションポートハブ53bと、分岐ポート53aとインジェクションポートハブ53bとを接続する接続チューブ53cにより形成されている。分岐ハブの形成材料としては、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂が好適に使用できる。また、接続チューブとしては、可撓性もしくは軟質の合成樹脂チューブが使用される。
【0040】
なお、バルーンカテーテルの構造は、上記のようなものに限定されるものではなく、バルーンカテーテルの中間部分(傾斜環状固定部6より後端側)にガイドワイヤールーメンと連通するガイドワイヤー挿入口を有するものであってもよい。
そして、本発明のバルーンカテーテルは、血管閉塞機能付薬剤投与用カテーテルに応用されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、PTCAカテーテル、バルーン膨張型ステントデリバリーシステムなどに応用することができる。
【0041】
図1ないし図6に示すような構造を有するバルーンカテーテルを複数種類作製し、図2および図3のP1,P2,P3における単位撓み当たりの三点曲げ荷重値を測定した。測定は、図15に示すような一定の距離(L)を持った支点X−X間で、試験サンプルYを支え、その中央に金属性の加圧棒Z(外径1.5mm)で垂直方向に一定距離動かして試験サンプルYに荷重を加えたときの荷重値である。支点間距離を10mm、試験機:RTC−1210A(株式会社オリエンテック製)、加圧棒垂直方向移動距離2.0mm、加圧棒テストスピード5.0mm/min)とし、1.0mm押し込み時の荷重を記録した。
【0042】
(実験例1)
実験例1のバルーンカテーテルでは、バルーンの膨張可能部の長さCを6mm、膨張不能な後端側筒状部の長さBを30mmとした。A:Bは、1:5.0であった。また、実験例1のバルーンカテーテルでは、三点曲げ荷重値A1が37mN/mm、A2が60mN/mm、A3が88mN/mmであった。また、A2−A1は、23mN/mmであった。
(実験例2)
実験例2のバルーンカテーテルでは、バルーンの膨張可能部の長さCを6.0mm、膨張不能な後端側筒状部の長さBを20mmとした。A:Bは、1:3.3であった。また、実験例2バルーンカテーテルでは、三点曲げ荷重値A1が37mN/mm、A2が60mN/mm、A3が88mN/mmであった。また、A2−A1は、23mN/mmであった。
【0043】
(実験例3)
実験例3のバルーンカテーテルでは、バルーンの膨張可能部の長さCを6mm、膨張不能な後端側筒状部の長さBを15mmとした。A:Bは、1:2.5であった。また、実験例3バルーンカテーテルでは、三点曲げ荷重値A1が37mN/mm、A3が88mN/mmであった。また、A2は、測定不能であった。
(実験例4)
実験例4のバルーンカテーテルでは、バルーンの膨張可能部の長さCを6.0mm、膨張不能な後端側筒状部の長さBを10mmとした。A:Bは、1:1.8であった。また、実験例4バルーンカテーテルでは、三点曲げ荷重値A1が37mN/mm、A2が60mN/mm、A3が88mN/mmであった。また、A2−A1は、23mN/mmであった。
【0044】
(実験)
U字状(カーブ直径4mm)に曲げた外径0.35mmのSUS製針金を準備した。そして、上記の各実験例のバルーンカテーテルを先端側より挿入し、バルーンカテーテルの最先端部より、150mm基端側となる部分を保持して、バルーン部分および接合部部分がU字部分を完全に通過するかを確認した。その結果、実験例1および実験例2のものでは、バルーン部分および接合部部分は良好にU字部分を完全に通過したが、実験例4のものでは、バルーン部分および接合部部分はU字部分を通過できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のバルーンカテーテルは、以下のものである。
(1) 第1のルーメンを有する内管と、前記内管と同軸的に設けられ、前記内管の先端より所定長後退した位置に先端を有し、前記内管の外面との間に第2のルーメンを形成する外管と、先端部が前記内管に固定され、後端部が前記外管の先端部に固定され、内部が前記第2のルーメンと連通する膨張可能なバルーンとを備えるバルーンカテーテルであって、前記バルーンは、前記先端部より前記後端部側に形成された膨張可能部と、前記膨張可能部と前記後端部間に形成され、後端部方向に所定長延び、かつ実質的に膨張不能かつ前記外管の先端部より可撓性が高い後端側筒状部とを備え、前記バルーンの前記後端部は、前記後端側筒状部の中心軸に対して斜めである傾斜後端面を備えており、前記外管の前記先端部は、前記外管の中心軸に対して斜めである傾斜先端面を備えており、前記外管の前記先端部と前記バルーンの前記後端部は、前記バルーンカテーテルの軸方向に重なり合う部分を有し、さらに、前記外管の前記先端部と前記バルーンの前記後端部は、前記重なり合う部分に設けられ、前記外管の中心軸に対して傾斜し、かつ気密に形成された帯状の傾斜環状固定部により固定されており、さらに、前記バルーンカテーテルは、前記バルーンの前記膨張可能部部分における単位撓み当たりの三点曲げ荷重値A1と、前記傾斜環状固定部における単位撓み当たりの三点曲げ荷重値A2が、A1<A2であり、かつ、前記バルーンの前記後端側筒状部の長さが、前記膨張可能部の長さの2.5倍以上であるバルーンカテーテル。
本発明のバルーンカテーテルは、上記構成を有することにより、カテーテルの先端から外管の先端までの領域(先端側領域)における可撓性の差が少なく、かつ、後部側に向かって段階的に可撓性が低くなるため、先端側領域内でのキンク発生が少ない。さらに、バルーンの膨張可能部とバルーンの後端でありかつ外管の先端との固定部間が、ある程度の距離を有するものとなっているので、この部分(バルーンの筒状部)における屈曲変形性が良好となる。よって、本発明のバルーンカーテルは、体腔内への挿入操作性に優れたものとなっている。
【0046】
そして、本発明の実施態様は、以下のものであってもよい。
(2) 前記バルーンの前記後端側筒状部は、前記バルーンの前記膨張可能部より肉厚であり、さらに、前記バルーンは、前記膨張可能部の後端側に位置する後端側テーパー部を備え、前記後端側テーパー部は、前記後端側筒状部に向かって徐々に肉厚となる肉厚変化部となっている上記(1)に記載のバルーンカテーテル。
(3) 前記バルーンは、前記膨張可能部の先端側に位置する先端側テーパー部と、前記先端側テーパー部より先端側に延びる先端側筒状部とを備え、前記先端側テーパー部は、前記先端側筒状部に向かって徐々に肉厚となる肉厚変化部となっている上記(2)に記載のバルーンカテーテル。
【0047】
(4) 前記先端側テーパー部の先端側部分および前記後端側テーパー部の後端側部分は、実質的に膨張不能となっている上記(3)に記載のバルーンカテーテル。
(5) 前記バルーンの前記後端側筒状部の長さは、前記膨張可能部の長さの3倍以上6倍未満である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
(6) 前記バルーンカテーテルは、前記外管の前記固定部より後端側の部分における単位撓み当たりの三点曲げ荷重値A3は、前記三点曲げ荷重値A2より大きく、かつ、前記三点曲げ荷重値A3と前記三点曲げ荷重値A2の差が、300mN/mm以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【0048】
(7) 前記バルーンの前記傾斜後端面を有する後端部内に、前記外管の前記傾斜先端面を有する先端部が進入し、前記外管の先端部と前記バルーンの後端部の前記重なり合う部分を形成しており、さらに、前記バルーンの前記傾斜後端面の前記後端側筒状部の前記外管の中心軸に対する傾斜角度Cより、前記外管の前記傾斜先端面の前記外管の中心軸に対する傾斜角度Dが、大きいものとなっている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
(8) 前記三点曲げ荷重値A1と前記三点曲げ荷重値A2の差が、50mN/mm以下である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【0049】
(9) 前記外管の前記先端部は、前記外管の他の部分に比べて変形が容易な易変形性先端部となっている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
(10) 前記バルーンカテーテルは、内径が1.1mmのガイディングカテーテル内に挿入可能であり、かつ、前記内管内に、0.53mmのガイドワイヤーを挿入可能である上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
(11) 前記バルーンカテーテルは、前記内管および前記外管の後端に固定されたハブを備え、前記ハブは、前記第1のルーメンと連通する第1の開口部および前記第2のルーメンと連通する第2の開口部を備えている上記(1)ないし(10)のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
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