(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記菓子生地が、多層に折り畳んで整えたパイ生地であり、適度な間隔を持って前記心棒に対して取り付けられた前記型抜き菓子生地が前記焼成工程により焼成される過程で、前記菓子生地内の層間が膨らんで隣接する前記型抜き菓子生地同士が接触一体となることを特徴とした請求項1に記載の焼き菓子の製造方法。
前記焼成工程において用いられる菓子焼成装置が、熱源が搭載された焼成炉と、回転ドラム軸によって間歇回転可能に支架された向かい合う左右一対の回転ドラムと、前記回転ドラムによって回転可能に支架された向かい合う複数の回転軸と、各々の前記回転軸の間に横架された心棒と、前記心棒が自転運動を行うように制動しつつ前記回転ドラムによる間歇回転により前記回転ドラム軸に対する公転運動を行うように制動する駆動機構とを備えた装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の焼き菓子の製造方法。
【背景技術】
【0002】
美味しい焼き菓子の一つとしてパイ菓子が知られている。パイ生地は、強力粉若しくは強力粉と薄力粉、バターなどの油脂組成物、食塩及び水などを用いたものであり、折りパイ生地と練パイ生地があるが、折りパイ生地は、折りと展延を何度か繰り返すことによって調製されたものとなっており、薄い層が積層した多層構造を有している。
【0003】
パイ菓子の魅力の1つは、その食感にあり、サクッとした食感を示す歯触りの良い菓子となっている。特に、折パイ生地で焼成したパイ菓子は、薄いパイ皮が何重にも積層することで形成されており、噛みしめることにより多層構造のパイ皮が崩れることによりサクッとした独特の食感を得ることができる。
【0004】
パイ生地は、パイ生地の折り(デトランプ)が上下に重ねあわされて層を形成していることから、これをオーブンで焼くと、そのまま上下方向にパイ生地が膨らみ、パイ皮が平行に並んだ状態になる。このように、通常のパイ菓子(特に折りパイ)はパイ皮が平行に積層されている。つまり、バイ菓子の独特の食感は、パイ皮が平行に並んでいるからこそ得られるものである(特許文献1参照)。
従来のパイ生地は、上記のようにパイ生地の折り(デトランプ)が上下に重ねあわされて層を形成しており、それを寝かせた状態でオーブンに入れて焼成すると、そのまま上下方向にパイ生地が膨らんで焼き上がる。
【0005】
ここで、従来のパイ生地は、パイ生地の折りが多層に折り曲げられているためにそのまま寝かせた状態で焼くことが基本である。なぜならばパイ生地は柔らかいため、寝かせずに立てた状態にすると生地が曲がってしまい、形が崩れてしまうおそれがある。パイ生地は焼き上がりがいわゆるサクサクと崩れやすい状態であるため、崩れた形で焼成してゆくと焼成するうちに壊れたり、崩れた形の出来上がりとなり食べにくくなったりする不具合が起こり得る。
【0006】
しかし、パイは食感を楽しむ焼き菓子であるため、パイ生地を寝かせた状態ではなく、その状態を変えて焼成すれば、面白い食感の焼き菓子の製作が可能となる。そこで、従来技術のパイにおいても、パイ生地を寝かせた状態ではなく、その状態を変えて焼成することを目指したものが幾つか知られている。
【0007】
特許文献1(特開平10−150910号公報)に開示されたパイは、通常のパイ生地を寝かせた状態ではなく、
図9に示すように、通常の平面のパイ生地をロール巻きにして棒状に加工するものである。その後、斜めに押圧し、シュー生地を挟み込んで二つ折りにするなどの工夫をした上で焼成する焼き菓子として開示されている。
【0008】
特許文献2(特開平11−346640号公報)に開示されたパイも、通常のパイ生地を寝かせた状態ではなく、
図10に示すように、通常の平面のパイ生地を1重のロール巻きにしてそのまま焼成するものである。シート状のパイ生地には予めスリット状の切り込みが設けられており、焼成時の膨らみを抑え気味にするものとなっている。
【0009】
特許文献3(特開2008−54582号公報)に開示された焼き菓子では、パイ生地をロール巻きにはせずに、
図11に示すように、小片に切り分け、それを焼型の中に入れてオーブンで焼くものである。開示された例によれば、焼型は半球型をしており、その中にパイ生地を半円形の小片に切り分け、焼型の中に上下に重ねるのではなく縦置きに並べ、それを焼成するものとなっている。つまり、パイ生地の配置においては、パイ生地の積層方向が水平方向となっている。
【0010】
【特許文献1】特開平10−150910号公報
【特許文献2】特開平11−346640号公報
【特許文献3】特開2008−54582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記従来のパイ生地を用いた焼き菓子では、次のような問題点があった。
特許文献1のパイ生地を用いた焼き菓子では、パイ生地をロール巻きにした後、さらなる加工を加えて従来にはない形状の焼き菓子となっている。しかし、パイ生地をロール巻きにすると焼成時のパイ生地の膨らみが十分に発揮できない問題がある。パイ生地は層状になっているパイ皮の1枚1枚が焼き上がり、特にバターなどの油脂層が溶けるとともに小麦粉の層が大きく膨らむことにより全体が膨張するものであるが、パイ生地をロール巻きにしてしまうと、内周から外周にかけて各層がつながっているため内周から外周に向けて膨張しづらく、いわゆる硬く焼き締められたハードなパイとなる。それはそれで面白い食感となるが、折りパイ生地の本来目指すやわらかくサクッとした歯触りの食感がなくなってしまう。
【0012】
特許文献2のパイ生地を用いた焼き菓子では、上記の特許文献1に示したロール巻きのパイ焼成に関する問題点を緩和するため、パイ生地を何重にもロール巻きにするのではなく、1重巻きにしたものであるが、やはり、特許文献1と同様、パイ生地をロール巻きにすると焼成時のパイ生地の膨らみが十分に発揮できない問題がある。1重巻きであれ、パイ生地をロール巻きにしてしまうと、内周から外周にかけて各層がつながっているため内周から外周に向けて膨張しづらい。特に、ロール巻きにして寝かせた状態で焼成するため、接地していない上面付近や横付近はある程度の膨らみが期待できるが、接地している底面付近は膨らむことができず、上下において焼き上がりに差が出るという問題が生じやすい。また、ロール巻きの外径方向へ膨らむため、ふっくらと焼き上がってしまうと焼き菓子の出来上がりの大きさのコントロールが難しく、製品として販売時の取り扱いが難しくなってしまう。そのため焼き上がりにおいて膨らみを抑える必要があり、サクッした食感が存分には発揮させられない事情があった。
【0013】
特許文献3のパイ生地を用いた焼き菓子では、パイ生地をロール巻きにはせずに、小片に切り分け、それを焼型の中に入れてオーブンで焼くものである。小片に切り分けた上で焼型に入れるため、焼成時に型崩れすることなく焼成することができるというメリットがある。そのため、パイ生地を平面に寝かせた状態ではなく、例えば、半球型など焼型に沿った形状で焼成することができる。
しかし、焼型に入り込んだ状態で焼結させるため、焼型の中という限られた容積内でしか膨張できないため、パイ生地が持つ膨張範囲が焼型容積に限られ、サクッとした食感が存分に発揮できる訳ではない。また、パイ生地を焼型に入れた状態でオーブンに入れて焼成するため、焼型の開放した表面方向の焼け具合と、焼型内の閉鎖した裏面方向の焼け具合の間で差が生じてしまう問題もある。
【0014】
以上の問題点に鑑み、本発明は、折り畳んだパイ生地を上下方向に寝かせた状態や焼型内で焼成するのではなく、パイ生地などの菓子生地を空中に携挙して立体的に焼成することにより全方向に均等な焼け具合でふっくらと膨張した焼き具合を確保せしめ、また、パイ生地の持つ膨張性を存分に発揮させてサクッとした食感を確保せしめるとともに、焼き上がりの形・大きさを整えやすい焼き菓子およびその製造方法並びにその焼き菓子焼成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。なお、以下に記載の構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0016】
本発明の焼き菓子は、卵、砂糖、油脂などを含む菓子生地から型抜きをして、心棒の径に対応する径の軸孔があいた中空円板状の型抜き菓子生地を成型する生地成型工程と、前記軸孔に前記心棒を通し入れてゆき、複数個の前記型抜き菓子生地を適度な間隔を持たせて前記心棒に対して取り付ける生地取り付け工程と、菓子焼成装置の回転軸に対して前記心棒を取り付け、前記菓子焼成装置において前記回転軸を回転させながら前記型抜き菓子生地を焼成してゆく焼成工程と、前記菓子焼成装置の焼成工程を終了後、焼成された焼き菓子を前記心棒から取り外す、焼き菓子取り出し工程を経て、焼成されて仕上げられた焼き菓子である。
【0017】
ここで、菓子生地が、多層に折り畳んで整えたパイ生地であり、型抜き菓子生地が適度な間隔を持って前記心棒に対して取り付けられ、前記焼成工程により焼成される過程で、前記菓子生地内の層間が膨らんで隣接する前記型抜き菓子生地同士が接触一体に焼き上がった焼き菓子とすることができる。
つまり、本発明の焼き菓子は、中空で円筒状の複数個の焼き菓子部分同士が、前記中空同士がつながるよう一体につながって形成された焼き菓子であって、前記焼き菓子部分が、多層に折り畳んで整えたパイ生地の焼成物であり、前記パイ生地の層の方向が隣接する前記焼き菓子部分が並べられた方向であり、前記焼き菓子部分のつなぎ目部分において、前記パイ生地内の層間が膨らんで隣接する前記焼き菓子部分同士がつながった状態で一体になっている焼き菓子である。
また、菓子生地が、多層に折り畳んで整えたパイ生地であり、適度な間隔を持って心棒に対して取り付けて焼成することにより、型抜き菓子生地が各々焼成され、独立した菓子として焼き上がった焼き菓子とすることができる。
また、焼き上がって心棒が取り外された焼き菓子の内部の中空部分に対して、クリームやフルーツ等の食材を詰め込むことも可能である。
【0018】
本発明の焼き菓子は、中空円板状に型抜きした型抜き菓子生地を心棒に通し入れてゆき、その心棒を焼成装置の回転軸に対して横架して回転させながら焼成するため、あたかも空中に携挙した状態で回転して立体的に焼成することにより全方向に均等な焼け具合でふっくらと膨張した焼き具合を確保できる。また、心棒に対して型抜き菓子生地を適度な間隔を持たせて取り付けているため、隣接する型抜き菓子生地には適度な間隔が確保されており、その間隔が型抜き菓子生地が膨らむ空間として確保されている。そのため、パイ生地の持つ膨張性を存分に発揮させることができ、サクッとした食感を確保できる。さらに、型抜きしたパイ生地は外径方向(つまり、心棒の外径方向)にはあまり膨張せず、層方向(つまり、心棒の長さ方向)に膨張するため、焼成された焼き菓子は、その長さも型抜きしたパイ生地の心棒における取り付け位置から制御しやすく、長さ・径ともその焼き上がりの形・大きさを整えやすい焼き菓子となっている。
【0019】
次に、本発明の焼き菓子の焼成工程において用いられる菓子焼成装置は、熱源が搭載された焼成炉と、回転ドラム軸によって間歇回転可能に支架された向かい合う左右一対の回転ドラムと、前記回転ドラムによって回転可能に支架された向かい合う複数の回転軸と、各々の前記回転軸の間に横架された心棒と、前記心棒が自転運動を行うように制動しつつ前記回転ドラムによる間歇回転により前記回転ドラム軸に対する公転運動を行うように制動する駆動機構を備えたものである。
上記の菓子焼成装置を用いれば、中空円板状に型抜きした型抜き菓子生地を心棒に通し入れてゆき、その心棒を回転軸に横架し、自転運動と間歇的に行われる回転ドラムに沿った公転運動を行うことにより、あたかも空中に携挙した状態で回転して立体的に焼成することにより全方向に均等な焼け具合でふっくらと膨張した焼き具合を確保できる。
【0020】
また、上記の菓子焼成装置において、型抜き菓子生地を心棒に対して取り付ける際に、心棒の径に対応する径の軸孔があいた中空円板状の型抜き菓子生地を通し入れてゆくので、複数個の型抜き菓子生地を適度な間隔を持たせて取り付けることとなり、パイ生地の層方向、つまり、心棒の長さ方向に対しては存分に膨張することができる。
【0021】
次に、本発明の焼き菓子の製造方法は、卵、砂糖、油脂などを含む菓子生地から型抜きをして、心棒の径に対応する径の軸孔があいた中空円板状の型抜き菓子生地を成型する生地成型工程と、前記軸孔に前記心棒を通し入れてゆき、複数個の前記型抜き菓子生地を適度な間隔を持たせて前記心棒に対して取り付ける生地取り付け工程と、菓子焼成装置の回転軸に対して前記心棒を取り付け、前記菓子焼成装置において前記回転軸を回転させながら前記型抜き菓子生地を焼成してゆく焼成工程と、前記菓子焼成装置の焼成工程を終了後、焼成された焼き菓子を前記心棒から取り外す、焼き菓子取り出し工程を備えたことを特徴とする焼き菓子の製造方法である。
なお、焼成工程における焼成炉内の温度であるが、例えば、320度から380度の間とする。また、焼成工程の焼成時間であるが、8分から20分の間とする。一例としては、焼成温度を350度付近、焼成時間を15分程度で焼き上げる。
従来の平釜オーブンで焼成する場合、焼成温度を200度から220度、焼成時間を30分程度であることを考えると、本発明の焼き菓子焼成装置による焼き菓子の製造方法では、焼成時間が短時間になるメリットが得られる。
【0022】
菓子生地が、多層に折り畳んで整えたパイ生地であれば、適度な間隔を持って前記心棒に対して取り付けることにより、焼成工程の過程で、菓子生地内の層間が膨らんで隣接する前記型抜き菓子生地同士が接触して一体となって焼き上げることができる。また、心棒に対して取り付ける間隔を少し広くとり、型抜き菓子生地が焼成で膨らんでも一体に接触しないように焼成することにより、型抜き菓子生地が各々焼成され、独立した菓子として焼き上げることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の焼き菓子およびその製造方法並びにその焼き菓子焼成装置によれば、菓子生地を空中に携挙して立体的に焼成することにより全方向に均等な焼け具合でふっくらと膨張した焼き具合を確保せしめ、また、パイ生地の持つ膨張性を存分に発揮させてサクッとした食感を確保せしめるとともに、焼き上がりの形・大きさを整えやすいという効果が得られる。
【実施例1】
【0025】
実施例1にかかる本発明の焼き菓子焼成装置100の構成例について説明する。
図1は本発明の焼き菓子焼成装置100の基本的な構造をきわめて簡単に示す図である。
本発明の焼き菓子焼成装置100の構成は、基本構造として例えば、
図1に示すように、心棒110、焼成炉120、熱源130、回転ドラム140、回転軸150、駆動機構160を備えている。これらは基本構造の一例であり、それら構成要素の仕組みや働きが改良されて異なるものであっても、また、これら構成要素とは異なる他の構成要素が加わった焼き菓子焼成装置であっても、本発明の焼き菓子焼成装置の基本構成を備えていればその技術的範囲に含まれるものである。
【0026】
心棒110は、後述する回転軸150に横架する部材であり、後述するように菓子生地を支える支軸となる部材である。心棒110は、後述するように木製の場合もあり、その形があたかも麺棒に似ているため、麺棒と称することもある。
心棒110は、回転ドラム140の間に抜き差し交換自在に差し込み横架され、この構成例では、全体的に放射対称分布型、つまり円周軌跡に沿っておいて所定間隔で配置され、この構成例では6本の心棒110が配置された例となっている。もちろん、心棒110の個数や太さは限定されず、また、心棒110の長さは回転ドラム140間の距離によって決まってくる。
心棒110の構成は、限定されないが、例えば、
図1(b)に示すように、芯材111と表面棒材112の2つの部材を備えたものとなっている。表面棒材112は中空の棒材であり、例えば木製やテフロン加工した金属製である。その表面棒材112の中空の孔の中に芯材111を差し入れて両側において端部を外部に突出させた形にセットしたものである。芯材111は例えば金属製である。金属製の部分は鉄製、ステンレス製、鉄をテフロン加工したものなど用途やコストに応じてさまざまな素材があり得る。
【0027】
芯材111は、その端部の形状が、後述する回転軸150間に心棒110を横架する際に回転ドラム140の取り付け箇所において従動スプロケットに対して嵌め付けて固定するものとなっている。
芯材111の素材は限定されないが、例えば、構造的強度が大きくかつ耐熱性にも優れたステンレス鋼などが好ましい。
【0028】
表面棒材112は、菓子生地210に直接触れて支持する部材であり、円筒形でありその内部が中空となっている。この中空部分に芯材111を通し入れることにより芯材111と合体するものとなっている。
表面棒材112の素材は、例えば木材である。木材は自然由来のものであるが、菓子生地との相性も良く、また、焼き菓子を焼成後に取り出す際にも扱いやすいという利点を持っている。
【0029】
焼成炉120は内部がオーブンとなった筐体であり、耐熱性に優れた金属やセラミック素材により形成されており、内部に熱源130を備えている。
【0030】
熱源130はバウムクーヘンを焼成するために十分なカロリーを供給できるものであれば特に限定されないが、例えば、焼きムラができにくく安定した熱源として、ガス燃焼機器や電気発熱機器などがある。
【0031】
回転ドラム140は、回転ドラム軸141によって間歇回転可能に支架され、向かい合う左右一対のものとなっている。回転ドラム140の素材は特に限定されないが、例えば、耐熱性の高いステンレス鋼などで良い。
回転ドラム軸141は後述する駆動機構160により回転力が与えられ、回転するものとなっている。
【0032】
回転軸150は、回転ドラム140上に設けられており、後述する駆動機構160により回転力が与えられ、回転するものとなっている。つまり、回転ドラム140によって回転可能に支架された向かい合う複数の回転軸となっている。
【0033】
駆動機構160は、心棒110が回転軸150にて自転運動を行うように制動しつつ、また、回転ドラム140による間歇回転により回転ドラム軸141の回りの公転運動を行うように制動する駆動機構となっている。
駆動機構160の制動による心棒110の自転運動と回転ドラム軸141に対する公転運動の関係は限定されないが、例えば、回転ドラム軸141に対する公転運動の方向に対して同一方向に自転運動するものでも良く、逆方向へ自転運動するものでも良い。
【0034】
図2は、回転軸150の自転の様子と、駆動機構160の制動による回転ドラム140に横架されている心棒110の公転軌跡を簡単に示した図である。
図2は左側の回転ドラム140に対する心棒110の横架位置を内側から見た様子を簡単に図示したものとなっている。つまり、心棒110A〜100Fは麺棒の心棒110の断面が見えているように描かれている。
【0035】
この自転運動と公転運動を繰り返すことにより所定時間、均一にオーブン内において熱を受けることができる仕組みとなっている。
焼き菓子が所定の時間にわたりオーブンされるまで、このサイクルを繰り返しながら焼き菓子が焼成されてゆく。
【0036】
次に、上記の焼き菓子焼成装置100を用いた焼き菓子200の製造工程を説明する。
焼き菓子の製造工程は、生地型抜き工程、生地取り付け工程、焼成工程、焼き菓子取り出し工程の各工程を備えたものとなっている。
【0037】
図3は、本発明の焼き菓子の製造工程における生地型抜き工程を説明する図である。
まず、
図3(a)に示すように、平面状に延ばされた焼き菓子生地210を用意する。ここでは、例えば、卵、砂糖、油脂などを含む菓子生地が多層に折り畳んで整えられたパイ生地とする。
【0038】
次に、
図3(b)に示すように、生地型抜き工程は、この焼き菓子生地210に対して型抜き器などによって型抜きを行い、心棒110の径に対応する径の軸孔221があいた中空円板状の型抜き菓子生地220を成型する。
このように、多数の中空円板状の型抜き菓子生地220を成型して得ておく。
【0039】
次に、
図4は、本発明の焼き菓子の製造工程における生地取り付け工程を説明する図である。
図4(a)に示すように、中空円板状の型抜き菓子生地220を用意し、これらの中空円板状の型抜き菓子生地220を、心棒110に対して適度な間隔をあけて取り付けて行く。
ここで、中空円板状の型抜き菓子生地220には心棒110の表面棒材112の外径に合致する軸孔221が設けられており、表面棒材112に対して型抜き菓子生地220がしっかりと嵌まり込んで安定した状態にて支持される。
ここで、型抜き菓子生地220の心棒110へ取り付ける間隔を調整することにより、後述する焼き上がりにおいて、型抜き菓子生地が膨張して隣接する型抜き菓子生地同士が接触して一体化したものとして焼き上げることや、型抜き菓子生地が膨張しても隣接する型抜き菓子生地同士が接触せずに各々焼成され、独立した菓子として焼き上げることができる。
【0040】
このように、型抜き菓子生地220を心棒110に取り付けることにより、心棒110ごと焼成装置100の回転軸150に取り付ければ、焼成装置100のオーブンである焼成炉120内において空中に携挙された状態を創出することができる。
図4(b)に示すように、菓子焼成装置100の回転軸150に対して心棒110を取り付ける。これで焼成前の準備が完了する。
【0041】
図5は、本発明の焼き菓子の製造工程における焼成工程を説明する図である。
焼成工程では焼成炉内の熱源により焼成炉内の温度を所定温度に制御し、型抜き菓子生地220を所定時間にわたり焼成する。焼成温度としては、焼き締め方などにより温度を変えれば良いが、例えば、320度から380度の間に調整する。一例としては350度付近に制御する。焼成時間としては、焼成路内の設定温度、材料の配合、焼き締め方などによって時間を調整すれば良いが、例えば、8分から20分の間に調整する。一例としては15分程度に制御する。
ここで、焼成工程において、型抜き菓子生地220を均一に焼き締める工夫を説明する。
均一に焼き締める工夫としては、心棒110に対する自転運動と公転運動を組み合わせた焼成がある。
駆動機構160を用いて、心棒110が回転軸150にて自転運動を行うように制動しつつ、また、回転ドラム140による間歇回転により回転ドラム軸141の回りの公転運動を行うように制動する。
【0042】
まず、自転としては、駆動装置160の駆動力により回転軸150を回転させることにより心棒110を自転させる。
図5(a)に示すように、各位置にある心棒110A〜100Fは自転している。
次に、
図5(b)に示すように、所定時間が来ると、次のストロークに向けて、心棒110は自転しながら次の位置に向けて公転する。
公転は所定角度回転して再び停止するようになっており、回転ドラム140が駆動機構160の駆動により回転し、所定角度回転(公転)した後に再び停止する。この例では回転ドラム軸141に対して60度回転(公転)して停止する。
つまり、
図6(a)において最下位点にあった心棒110Aが、
図6(b)に示すように、最下点の位置から移動してやや上方に移動し、心棒110Fが新たに最下位点の位置に達する。
この自転と公転を繰り返しながら、心棒110に取り付けられた中空円板状の型抜き菓子生地220が焼成されてゆく。
【0043】
ここで、型抜き菓子生地220の焼成に伴う膨張について説明する。
上記したように、型抜き菓子生地220の心棒110へ取り付ける間隔を調整することにより、焼き上がりにおいて、型抜き菓子生地220を一体に焼き締めた焼き菓子とするか、型抜き菓子生地220をそれぞれ独立した形で焼き締めた焼き菓子とするかを選ぶことができる。
まず、焼き上がりにおいて一体に焼き締めた焼き菓子とする例を説明する。
図7は、一体に焼き締められる場合の型抜き菓子生地220の焼成に伴う膨張を簡単に説明する図、および焼成後の焼き菓子200を心棒110から取り出す様子を簡単に示す図である。
型抜き菓子生地220は、
図7(a)に示すように、心棒110において適度な間隔をあけて取り付けられている。ここで焼成工程において焼成が進んでいくと、多層構造になっている菓子生地は、バターなどの油脂層が溶けるとともに小麦粉の層が大きく膨らむことにより層方向について膨張をしてゆく。ここでは、層方向は横方向であるため、
図7(b)に示すように、横方向に膨張して行く。型抜き菓子生地220は適度な間隔をあけて取り付けられているので横方向には余裕を持って膨張してゆく。
型抜き菓子生地220の間隔が適度な間隔であれば、
図7(c)に示すように、焼成工程の間に隣接する型抜き菓子生地220同士が接触して一体となる。焼き上がりの時点では隣接する型抜き菓子生地220同士が一体となっている。
次に、焼き上がりにおいて型抜き菓子生地220をそれぞれ独立した形で焼き締めた焼き菓子とする例を説明する。
図8は、型抜き菓子生地220がそれぞれ独立した形で焼き締められる場合の型抜き菓子生地220の焼成に伴う膨張を簡単に説明する図、および焼成後の焼き菓子200を心棒110から取り出す様子を簡単に示す図である。
型抜き菓子生地220は、
図8(a)に示すように、心棒110において適度な間隔をあけて取り付けられる。ここで焼成工程において焼成が進んでいくと、多層構造になっている菓子生地は、バターなどの油脂層が溶けるとともに小麦粉の層が大きく膨らむことにより層方向について膨張をしてゆく。
図7と同様、層方向は横方向であるため、
図8(b)に示すように横方向に膨張して行き、型抜き菓子生地220は適度な間隔をあけて取り付けられているので横方向には余裕を持って膨張してゆく。
ここで、型抜き菓子生地220の間隔が広く確保されており、膨張しても隣接する型抜き菓子生地220同士が接触せずに一体化しないものであれば、
図8(c)に示すように、各々が独立した状態で焼成上がる。
【0044】
焼き菓子取り出し工程は、焼成された焼き菓子200を取り出す工程である。
図7(d)または
図8(d)に示すように、心棒110ごと焼成された焼き菓子200を回転軸150から取り外し、さらに、焼き菓子200を心棒110の表面棒材120から抜き出す。
【0045】
以上の手順により各工程を通じて焼き菓子を製造することができる。
なお、焼き菓子200を焼成した後、デコレーションやトッピングなどの菓子の製造・調整を行うことは可能であることは言うまでもない。
【0046】
例えば、焼き菓子200を冷ませて乾燥させた後、表面に溶かしバターを塗ったり、シュガーコーティングやチョコレートコーティングを施したりすることも可能であるし、本発明の焼き菓子200において中空の孔が開いているところにクリームやフルーツなどの具材を挿入することも可能である。
【0047】
以上、本発明の焼き菓子およびその製造方法並びにその焼き菓子焼成装置の構成例における好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。