特許第6205564号(P6205564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社メトランの特許一覧

<>
  • 特許6205564-呼吸補助装置 図000002
  • 特許6205564-呼吸補助装置 図000003
  • 特許6205564-呼吸補助装置 図000004
  • 特許6205564-呼吸補助装置 図000005
  • 特許6205564-呼吸補助装置 図000006
  • 特許6205564-呼吸補助装置 図000007
  • 特許6205564-呼吸補助装置 図000008
  • 特許6205564-呼吸補助装置 図000009
  • 特許6205564-呼吸補助装置 図000010
  • 特許6205564-呼吸補助装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205564
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】呼吸補助装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/06 20060101AFI20170925BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   A61M16/06 A
   A61M16/00 305A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-25488(P2013-25488)
(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公開番号】特開2014-151104(P2014-151104A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000138060
【氏名又は名称】株式会社メトラン
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】新田 一福
(72)【発明者】
【氏名】塩田 真市
(72)【発明者】
【氏名】東裏 雅司
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/145358(WO,A2)
【文献】 特開昭58−062400(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/051462(WO,A2)
【文献】 特開昭61−098998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の口及び鼻を覆うマスクと、
前記マスクに取り付けられ、該マスクに吸気となる気体を送り出す送風機と、を備え、
前記送風機は、
前記気体を取り込む吸気口、周回するように設けられ前記吸気口から取り込んだ前記気体を流す流路、及び前記流路を流れた前記気体を前記マスクの内側に向けて送り出す吐出口、を有する筐体と、
前記筐体内に配置され前記吸気口から前記気体を取り込む駆動部材と、を備え、
前記流路は、環状の外壁面、環状の底面、環状の内壁面、及び環状の天井面を有することにより、該流路に流れ込む前記気体が、前記外壁面、前記底面、前記内壁面、前記天井面に沿って移動しながら周回するようになっており、
前記吐出口は、前記流路に沿って複数形成され、又は前記流路に沿ったスリットとなるように形成されていることを特徴とする、
呼吸補助装置。
【請求項2】
前記流路は、前記マスクに面するように周回し、
前記吐出口は、流路における前記マスクの側又は内周若しくは外周に形成されていることを特徴とする、
請求項1に記載の呼吸補助装置。
【請求項3】
前記筐体の少なくとも前記吸気口部分を、該吸気口部分との間に隙間を設けるように遮蔽する遮蔽部材を備えることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の呼吸補助装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、前記筐体との間に、前記吸気口までの前記気体の導入路を形成し、
さらに、前記導入路の少なくとも一部に充填される多孔質部材を備えることを特徴とする、
請求項3に記載の呼吸補助装置。
【請求項5】
前記遮蔽部材は、前記多孔質部材が充填されている箇所に繋がるように通気孔が形成されていることを特徴とする、
請求項4に記載の呼吸補助装置。
【請求項6】
前記送風機は、
前記駆動部材として、前記吸気口に自身の正面が面するように前記筐体内に配置される羽根車を備えると共に、
前記羽根車の背面側に、前記筐体の内周面に沿って周回するスリットを有するように配置されることで、前記羽根車が配置される空間、及び、前記スリットに沿って周回する前記流路に仕切る仕切り部材を備えることを特徴とする、
請求項1〜5のいずれかに記載の呼吸補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時の無呼吸は、睡眠中に気道の筋肉が弛緩して舌根部や軟口蓋が下がり、気道を閉塞することによって生じる。この種の呼吸障害の患者に対しては、気道に陽圧(正圧)を印加する呼吸補助装置が利用される(特許文献1及び非特許文献1参照)。呼吸補助装置は、気道に陽圧を作り出すためのポンプユニットが必要となる。ポンプユニットの動力源には、羽根車(ファン)を回転させて気体を搬送する送風機(ブロア)などが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−115375号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社メトラン、[online]、製品情報>ジャスミン、[平成24年6月29日検索]、インターネット(URL:http://www.metran.co.jp/products/products2/190.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような呼吸補助装置は、快適な睡眠をサポートするものであるので、できる限り静音であることが好ましく、究極は無音であることが好ましい。このため、ノイズの発生源となる送風機の静音化が望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、静音化を実現する呼吸補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、利用者の口及び鼻を覆うマスクと、前記マスクに取り付けられ、該マスクに吸気となる気体を送り出す送風機と、を備え、前記送風機は、前記気体を取り込む吸気口、周回するように設けられ前記吸気口から取り込んだ前記気体を流す流路、及び前記流路を流れた前記気体を前記マスクの内側に向けて送り出す吐出口、を有する筐体と、前記筐体内に配置され前記吸気口から前記気体を取り込む駆動部材と、を備え、前記吐出口は、前記流路に沿って複数形成され、又は前記流路に沿ったスリットとなるように形成されていることを特徴とする、呼吸補助装置である。
【0008】
本発明によれば、複数の吐出口を気体が流れることにより、ノイズが発生する。このノイズによって、駆動部材によって発生する他のノイズをキャンセルすることができる。結果として、静音化を実現できるので、利用する患者への聴覚的な負担を軽減できる。すなわち、利用する患者の安眠を阻害することを防止できる。
【0009】
(2)本発明はまた、前記流路は、前記マスクに面するように周回し、前記吐出口は、流路における前記マスクの側又は内周若しくは外周に形成されていることを特徴とする、上記(1)に記載の呼吸補助装置である。
【0010】
上記発明によれば、マスクと送風機との接続構造を簡素にすることができる。これにより、呼吸補助装置のコンパクト化を実現できる。
【0011】
(3)本発明はまた、前記筐体の少なくとも前記吸気口部分を、該吸気口部分との間に隙間を設けるように遮蔽する遮蔽部材を備えることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の呼吸補助装置である。
【0012】
上記発明によれば、筐体内のノイズが吸気口から漏れることを防止できる。
【0013】
(4)本発明はまた、前記遮蔽部材は、前記筐体との間に、前記吸気口までの前記気体の導入路を形成し、さらに、前記導入路の少なくとも一部に充填される多孔質部材を備えることを特徴とする、上記(3)に記載の呼吸補助装置である。
【0014】
上記発明によれば、筐体内のノイズが吸気口から漏れることを更に防止できる。また、導入路を通過する気体の中から塵埃を濾過することができる。すなわち、吸気口から塵埃を取り込むことを防止できる。
【0015】
(5)本発明はまた、前記遮蔽部材は、前記多孔質部材が充填されている箇所に繋がるように通気孔が形成されていることを特徴とする、上記(4)に記載の呼吸補助装置である。
【0016】
上記発明によれば、気体を取り込む箇所を増やすことができる。これにより、吸気口から取り込む気体の量が、多孔質部材の存在によって低下することを防止できる。
【0017】
(6)本発明はまた、前記送風機は、前記駆動部材として、前記吸気口に自身の正面が面するように前記筐体内に配置される羽根車を備えると共に、前記羽根車の背面側に、前記筐体の内周面に沿って周回するスリットを有するように配置されることで、前記羽根車が配置される空間、及び、前記スリットに沿って周回する前記流路に仕切る仕切り部材を備えることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の呼吸補助装置である。
【0018】
上記発明によれば、羽根車が配置される空間と、流路と、の二段構造を採用したので、吸気口から吸い込む気体の流れと、吐出口から送り出す気体の流れと、を分離することができる。これにより、吸気口から吸い込む気体の流れと、吐出口から送り出す気体の流れと、が衝突することを防止できる。すなわち、気体の流れが互いに衝突することによるノイズの発生を防止できる。
【0019】
また、羽根車が配置される空間と流路を結ぶスリットを気体が流れることにより、ノイズが発生する。このノイズによって、羽根車の回転に伴って発生する他のノイズをキャンセルすることができる。
【0020】
結果として、静音化を実現できるので、利用する患者への聴覚的な負担を軽減できる。すなわち、利用する患者の安眠を阻害することを防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の上記(1)〜(6)に記載の呼吸補助装置によれば、静音化を実現できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る呼吸補助装置の上面図である。
図2図1に示す呼吸補助装置の正面図である。
図3図1に示す呼吸補助装置の縦断面図である。
図4】羽根車の上面図である。
図5】流路の横断面図である。
図6】筐体の内周面に沿って周回するスリットの幅とノイズキャンセルレベルとの関係を示すグラフであり、横軸にスリットの幅を、縦軸にノイズキャンセルレベルをそれぞれ示す。
図7】比較例に係る送風機の縦断面図である。
図8】実験用に設計変更された送風機の上面図である。
図9図8に示す送風機の縦断面図である。
図10図8に示す送風機の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係る呼吸補助装置について詳細に説明する。
【0024】
まず、図1図6を用いて、本発明の実施形態に係る呼吸補助装置1の構成について説明する。図1は、呼吸補助装置1の上面図である。図2は、呼吸補助装置1の正面図である。図3は、呼吸補助装置1の縦断面図である。図4は、羽根車13の上面図である。図5は、流路22の横断面図である。図6は、筐体11の内周面に沿って周回するスリットdの幅wとノイズキャンセルレベルとの関係を示すグラフであり、横軸にスリットdの幅wを、縦軸にノイズキャンセルレベルをそれぞれ示す。なお、各図において、一部の構成や、断面を示すハッチング等を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、各図において、部材の大きさを適宜誇張して表現する。
【0025】
図1図5に示される呼吸補助装置1は、気道に陽圧を作り出すためのものであり、呼吸障害の患者が利用する。この呼吸補助装置1は、マスク5と、送風機10と、を備えている。
【0026】
マスク5は、患者(利用者)の口及び鼻を覆う器具であり、バンド(図示省略)等によって顔に装着される。このマスク5の略中央には、送風機10を直接接続するための通気口5aが形成されている。
【0027】
送風機10は、マスク5に取り付けられ、当該マスク5に吸気となる気体を送り出す。これにより、送風機10は、気道に陽圧を作り出す。具体的に、送風機10は、筐体11と、整流部材12と、羽根車13と、モーター14と、仕切り部材15と、カバー30と、多孔質部材31と、を備えている。
【0028】
筐体11は、樹脂で成型された送風機10本体であり、外観形状が略円錐台の上部11aと、外観形状が略円柱の下部11bと、この下部11bから下方に延出した円環状の接続部11cと、から構成される。上部11aは、上方に向けて滑らかに湾曲している。そして、上部11aは、上端に円形の吸気口16を有している。下部11bには、羽根車13の回転軸18を支持する軸受として機能するベアリング11dが埋め込まれている。下部11bは、下端に吐出口17を有している。接続部11cは、吐出口17を覆うように下部11bに固定されている。この接続部11cは、マスク5に接続される部分になる。このような筐体11は、吸気口16から空気を取り込み、そして、吐出口17からマスク5の内側に向けて空気を送り出す。なお、空気に限定されず、薬品を混合した空気や、酸素など、その他の気体であってもよい。
【0029】
整流部材12は、ガスタービン型のジェットエンジンを模したもので、先端が突出した形状を呈する。この整流部材12は、吸気口16の中心に、当該吸気口16の外側に突出するように設けられる。そして、整流部材12は、例えば3本の連結部材12aによって、吸気口16の縁に連結されて固定されている。また、整流部材12は、ベアリング12bが埋め込まれており、羽根車13の回転軸18を支持する軸受を兼ねる。
【0030】
図3及び図4に示される羽根車13は、自身の正面が吸気口16に面するように筐体11内に配置される。すなわち、羽根車13は、後述する流路22よりも、回転軸18方向における吸気口16側に位置する。これにより、羽根車13は、吸気口16から空気を取り込む駆動部材として機能する。この羽根車13は、回転軸18の周りに配置された複数の羽根19と、これら複数の羽根19の背面側(図3における下側)を覆う被覆部材20と、を備えている。そして、羽根車13は、複数の羽根19の吸気口16側が開放している。すなわち、複数の羽根19の吸気口16側には、被覆部材20のような部材が設けられていない。複数の羽根19は、被覆部材20と一体に成型されている。
【0031】
これら複数の羽根19は、筐体11の内周面に面している。そして、複数の羽根19は、設計通りに作ることが可能であるならば、筐体11の内周面との間の隙間が限りなく0[mm]に近いことが好ましい。ただし、設計誤差を考慮した場合、羽根19と筐体11内周面との衝突を防止する観点から、ある程度の隙間(設計誤差と同じ大きさの隙間:設計誤差が±0.8[mm]であるならば、0.8[mm]の隙間)を空けることが好ましい。被覆部材20は、吸気口16側に突出する傘型を呈する。すなわち、被覆部材20は、吸気口16側に突出する円錐面を有する。これにより、被覆部材20の背面側(図3における下側)には、モーター14などを配置する空間を形成する。羽根車13の回転軸18は、筐体11に埋め込まれたベアリング11dと、整流部材12に埋め込まれたベアリング12bと、によって、両端支持されている。
【0032】
図3に示されるモーター14は、羽根車13(被覆部材20)の背面側(図3における下側)に若干収容されるように設けられている。このモーター14は、羽根車13を回転軸18中心に回転させる動力源となる。回転数は、一般的な10000[rpm]〜20000[rpm]程度であることが好ましい。
【0033】
仕切り部材15は、羽根車13の背面側に、筐体11の内周面に沿って周回する1.0mm以下の幅wのスリットdを有するように配置されることで、羽根車13が配置される空間21、及び、スリットdに沿って周回る流路22に仕切る。スリットdは、ノイズを小さくする観点からすると0.6mm以下であることが好ましく、更にエネルギー損失を少なくする観点からすると、その中でも大きい0.6mmであることがより好ましい。図6に示されるように、スリットdが0.6mmより大きくなるとノイズキャンセルレベルが徐々に低下し、1.0mmより大きくなるとノイズキャンセルレベルが急激に低下するからである。そして、スリットdが狭くなればなる程、エネルギー損失が大きくなるからである。なお、スリットdは、筐体11の内周直径Dの1.5%以下の幅wであることが好ましい。
【0034】
図3及び図5に示される流路22は、モーター14を周回するように同心円環状(断面積一定の円環状)に、かつ、マスク5に面するように配置される。この流路22には、吐出口17が形成されている。本実施形態では、複数の吐出口17が、流路22の底面(図3における下側の面)に互いに間隔を空けて形成されている。吐出口17同士の間隔は、等間隔であることが好ましい。
【0035】
なお、本発明における吐出口は、周回する流路の内周側又は外周側に形成されていてもよい。そして、本発明における吐出口は、流路22に沿ったスリットとなるように形成されていてもよい。また、本発明における吐出口は、流路22に沿ったスリットとなるように形成されると共に、当該スリットにメッシュ(網)が設けられていてもよい。
【0036】
さらに、羽根車13の回転軸18に沿った方向に、当該羽根車13、モーター14、当該流路22の順に配置されるように、モーター14よりもやや下方(図3における下方)に流路22が設けられている。この流路22は、輪切りにした断面形状が真円形状であることが最も好ましく、その次に、羽根車13の半径方向(図3における左右方向)に相対的に長い形状であることが好ましい。本実施形態において流路22は、高さ方向(図3における上下方向)の小型化(薄型化)のため、輪切りにした断面形状として、羽根車13の半径方向に相対的に長い形状(図3において、L>L)を採用している。また、流路22は、輪切りにした断面積が可能な限り大きく設定されていることが好ましい。
【0037】
図3に示されるカバー30は、筐体11の少なくとも吸気口16部分を、当該吸気口16部分との間に隙間を設けるように遮蔽する遮蔽部材として機能する。本実施形態において、カバー30は、筐体11よりも一段階大きい器型を呈し、筐体11を吸気口16側(図3における上側)から遮蔽する。このカバー30は、例えば6本の連結部材30aによって、筐体11の下部11bに連結されて固定されている。これにより、カバー30は、接続部11c側(図3における下側)に、空気を取り込む円環状の導入口32を形成する。また、カバー30は、筐体11との間に、導入口32から吸気口16までの空気の導入路33を形成する。多孔質部材31は、連続気泡のスポンジ等であり、導入路33の少なくとも一部に充填されている。この多孔質部材31は、導入口32から取り込まれる空気の中から塵埃を濾過する。そして、カバー30には、多孔質部材31が充填されている箇所に繋がるように複数の通気孔34が形成されている。
【0038】
次に、図3及び図5を用いて、送風機10における空気の流れを説明する。
【0039】
図3に示されるように、羽根車13の回転により、当該羽根車13が配置される空間21内の空気が、外周方向(図3における左右方向)に移動する。これにより、羽根車13が配置される空間21の内周寄り(図3における中央寄り)の気圧が低くなる。これに伴って、吸気口16から筐体11内の空間21に空気が吸い込まれる。すなわち、吸気口16から筐体11内のスリットdに向けた気流が生じる。
【0040】
そして、吸気口16から筐体11内の空間21に空気が吸い込まれることで、導入路33の気圧が低くなる。これに伴って、導入口32及び複数の通気孔34から吸気口16に向けた気流が生じる。
【0041】
また、羽根車13が配置される空間21内の空気が、外周方向(図3における左右方向)に移動することで、当該空間21の外周寄り(図3における左右寄り)の気圧が高くなる。これに伴って、羽根車13が配置される空間21内の空気が、スリットdから流路22に向けて移動する。すなわち、羽根車13が配置される空間21から流路22に向けた気流が生じる。
【0042】
さらに、スリットdから流路22に向けて移動した空気は、当該流路22の壁面、底面、天井面に沿って移動する。また、スリットdから流路22に向けて移動した空気は、羽根車13の回転によって、当該羽根車13の回転方向(右回り)に回転する力が作用している。このため、図5に示されるように、スリットdから流路22に向けて移動した空気は、流路22内を右回りに回転する。そして、流路22内の空気は、吐出口17からマスク5の内側に向けて送り出される。
【0043】
次に、実験1〜実験4を順に説明する。
【0044】
実験1及び実験2では、図7に示されるマスタとなる送風機110による比較実験を行った。送風機110は、上記実施形態に係る送風機10と同様、呼吸障害の患者が利用する呼吸補助装置に必要となるポンプユニットの動力源であり、気道に陽圧を作り出すために送風する。
【0045】
この送風機110は、上記実施形態に係る送風機10を実験用に設計変更した送風機50(図8図10参照)とは異なり、整流部材を備えていない。そして、送風機110は、羽根と筐体内周面との間の隙間が1.9[mm]に設定されている。また、送風機110は、羽根車が配置される空間と、吐出口に繋がる流路と、が連続する一段構造を採用している。すなわち、送風機110は、実験用の送風機50のスリットdに相当する構成は備えていない。さらに、送風機110は、流路の輪切り断面積が吐出口に向けて徐々に広くなるスクロール形状(渦巻き形状)を呈している。そして、送風機110は、羽根車の回転軸に沿った方向に、当該羽根車、流路、モーターの順に配置されている。なお、送風機110は、株式会社メトラン(埼玉県川口市)が販売する持続的自動気道陽圧ユニット(商品名:ジャスミン)に採用されているものである。
【0046】
実験3では、実験用の送風機50とその変形形態に係る送風機との比較を行った。実験4では、実験用の送風機50と他社製品との比較実験を行った。
【0047】
ここで、実験用の送風機50の構成について説明する。図8は、送風機50の上面図である。図9は、送風機50の縦断面図である。図10は、送風機50の流路62の横断面図である。
【0048】
なお、ここでは、送風機50の特徴部分のみを説明し、送風機10と同様の構成についての説明は省略する。
【0049】
図8図10に示される送風機50は、筐体11に代えて筐体51を備えている。また、送風機50は、カバー30及び多孔質部材31を備えていない。
【0050】
筐体51は、上部11aと、下部51bと、この下部51bから側方に延出した吐出管51cと、から構成される。下部51bは、吐出口17を有していない。吐出管51cは、先端に吐出口57を有している。
【0051】
仕切り部材15は、空間21、及び、スリッドdに沿って周回して吐出口57に繋がる流路62に仕切る。流路62は、モーター14を周回するように同心円環状に配置され、吐出管51cに繋がる。この流路62には、吐出口17は形成されていない。
【0052】
[実験1]まず、整流部材によるノイズ低減を調べた実験1を説明する。この実験1では、マスタとなる送風機110と、当該送風機110に整流部材を取り付けたものと、の騒音レベル[dB]を比較した。その結果、整流部材を取り付けることで、騒音レベルが1.7[dB]〜2.5[dB]程度低減した。約750[Hz]以上の中高域で音響パワー[dB]が低減した。
【0053】
[実験2]そして、羽根と筐体内周面との隙間によるノイズへの影響を調べた実験2を説明する。この実験2では、マスタとなる送風機110と、当該送風機110に整流部材を取り付けると共に羽根と筐体内周面との隙間を0.8[mm]に狭くしたものと、の騒音レベル[dB]を比較した。その結果、整流部材を取り付けると共に羽根と筐体内周面との隙間を0.8[mm]に狭くすることで、騒音レベルが3.8[dB]〜4.2[dB]程度低減した。整流部材を取り付けると共に羽根と筐体内周面との隙間を0.8[mm]に狭くすることで、特に、約3200[Hz]以下の中低域で音響パワー[dB]が低減した。実験1を考慮すると、羽根と筐体内周面との隙間を0.8[mm]に狭くすることで、中低域で音響パワー[dB]が低減することが分かる。
【0054】
[実験3]また、筐体内周面に沿って周回するスリットによるノイズへの影響を調べた実験3を説明する。この実験3では、実験用の送風機50と、当該送風機50における仕切り部材15と筐体51内周面とのスリットdの幅wを1.5[mm]又は2.0[mm]に変更したものと、の騒音レベル[dB]を比較した。すなわち、スリットdが1.0[mm]、1.5[mm]、2.0[mm]のそれぞれの場合の騒音レベル[dB]を比較した。その結果、仕切り部材15と筐体51内周面とのスリットdの幅wを1.0[mm]に狭くすることで、1.5[mm]や2.0[mm]の場合と比較して、騒音レベルが0.9[dB]〜3.2[dB]程度低減した。一方、当該スリットdの幅wを1.5[mm]や2.0[mm]とした場合には、互いの間で騒音レベルに大きな変化はなかった。仕切り部材15と筐体51内周面とのスリットdの幅wを1.0[mm]に狭くすることで、略全域で音響パワー[dB]が低減した。
【0055】
[実験4]さらに、他社製品との騒音レベルを比較した実験4を説明する。この実験4では、実験用の送風機50と、本出願時に世界最高水準の低騒音を実現しているレスメドリミテッド社(オーストラリア)、レスメド株式会社(東京都文京区)が販売する持続的自動気道陽圧ユニット(商品名:S9Elite)に採用されている送風機(特許第4497809号参照)と、の騒音レベル[dB]を比較した。なお、このレスメドリミテッド社の送風機は、吸気管を介してマスクに接続されるものであり、マスクに直接接続されるものではない。実験の結果、実験の送風機50は、世界最高水準の低騒音を実現している上記他社製品と比較して、騒音レベルが1.4[dB]〜3.0[dB]程度低くなった。実験用の送風機50は、世界最高水準の低騒音を実現している上記他社製品と比較して、約750[Hz]以上約6400[Hz]以下の中域で音響パワー[dB]が低減した。
【0056】
このように、呼吸補助装置1によれば、複数の吐出口17を気体が流れることにより、ノイズが発生する。このノイズによって、羽根車13等によって発生する他のノイズをキャンセルすることができる。結果として、静音化を実現できるので、利用する患者への聴覚的な負担を軽減できる。すなわち、利用する患者の安眠を阻害することを防止できる。
【0057】
そして、吐出口17が、流路22におけるマスク5の側に形成されているので、マスク5と送風機10との接続構造を簡素にすることができる。これにより、呼吸補助装置1のコンパクト化を実現できる。
【0058】
また、吸気口16部分を覆う遮蔽部材30を備えているので、筐体11内のノイズが吸気口16から漏れることを防止できる。
【0059】
さらに、導入路33の少なくとも一部に充填される多孔質部材31を備えているので、筐体11内のノイズが吸気口16から漏れることを更に防止できる。また、導入路33を通過する空気の中から塵埃を濾過することができる。すなわち、吸気口16から塵埃を取り込むことを防止できる。
【0060】
そして、遮蔽部材30には、多孔質部材31が充填されている箇所に通気孔34が形成されているので、空気を取り込む箇所を増やすことができる。これにより、吸気口16から取り込む空気の量が、多孔質部材31の存在によって低下することを防止できる。
【0061】
また、送風機10において、羽根車13が配置される空間21と、吐出口17に繋がる流路22と、の二段構造を採用したので、吸気口16から吸い込む空気の流れと、吐出口17から送り出す空気の流れと、を分離することができる。これにより、吸気口16から吸い込む空気の流れと、吐出口17から送り出す空気の流れと、が衝突することが防止できる。すなわち、空気の流れが互いに衝突することによるノイズの発生を防止できる。
【0062】
さらに、羽根車13が配置される空間21と流路22を結ぶスリットdを空気が流れることにより、ノイズが発生する。このノイズによって、羽根車13の回転に伴って発生する他のノイズをキャンセルすることができる。
【0063】
そして、羽根車13が配置される空間21から流路22に流れ込んだ空気は、流路22の側面、底面、天井面に沿って滑らかに移動する。これにより、乱流の発生が防止される。ひいては、ノイズの発生が防止される。
【0064】
また、流路22がモーター14を周回するように配置されているので、羽根車13の回転軸18方向の小型化を実現できる。
【0065】
さらに、整流部材12が吸気口16の外側に突出するように設けられているので、整流部材を備えていない場合や、整流部材が吸気口16の外側に突出せず内側に収まっている場合と比較して、吸気口16付近における空気の衝突を防止できる。例えば、整流部材を備えていない場合、吸気口16から吸い込まれた空気は、羽根車13やその回転軸18に衝突することになるが、上記送風機10では、そのような衝突は生じない。また、整流部材が吸気口16の外側に突出せず内側に収まっている場合、整流部材によって筐体11内が急激に狭くなって、筐体11内に吸い込まれた空気が衝突するが、上記の送風機10では、そのような衝突は生じない。これにより、ノイズの発生を防止できる。
【0066】
そして、整流部材12が羽根車13の回転軸18の一端を支持するので、羽根車13の振動を防止できる。ひいては、ノイズの発生を防止できる。また、整流部材12が羽根車13の回転軸18の一端を支持する機能を兼ねているので、部品点数を減らすことができ、軽量化、小型化を実現できる。これにより、泊まりがけの旅行や出張などに気軽に持ち運ぶことができる。
【0067】
また、羽根車13において、複数の羽根19の吸気口16側が開放しているので、複数の羽根19の吸気口16側を覆う被覆部材を備えている場合と比較して、軽量化、小型化を実現できる。これにより、泊まりがけの旅行や出張などに気軽に持ち運ぶことができる。
【0068】
さらに、被覆部材20が吸気口16側に突出する円錐面を有するので、吸気口16から筐体11内に吸い込まれた空気を、滑らかに被覆部材20に沿って流すことができる。これにより、吸気口16から筐体11内に吸い込まれた空気が被覆部材20に衝突することが防止できる。ひいては、ノイズの発生を防止できる。
【0069】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0070】
すなわち、上記実施形態において、各構成の位置、大きさ(寸法)、形状、材質、向き、数量は適宜変更できる。
【0071】
あるいは、上記実施形態において、吸気口16から空気を取り込む駆動部材として羽根車13を備える場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、駆動部材として、マイクロポンプ等を備えるようにしてもよい。マイクロポンプは、圧電素子が固定されたダイヤフラムを採用するポンプであり、その詳細は、特許第4934750号等を参照されたい。
【符号の説明】
【0072】
1 呼吸補助装置
5 マスク
10 送風機
11 筐体
13 羽根車(駆動部材)
15 仕切り部材
16 吸気口
17 吐出口
21 空間
22 流路
30 カバー(遮蔽部材)
31 多孔質部材
33 導入路
34 通気孔
d スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10