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特許6205566金属酸化物又はその前駆体からなる粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205566
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】金属酸化物又はその前駆体からなる粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 19/00 20060101AFI20170925BHJP
   C01G 19/02 20060101ALI20170925BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20170925BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20170925BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20170925BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20170925BHJP
   C01G 15/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C01G19/00 A
   C01G19/02 B
   H01B13/00 501Z
   H01B13/00 503B
   H01B1/20 A
   H01B1/00 F
   H01B1/00 D
   H01B5/00 F
   C01G15/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-125862(P2013-125862)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-829(P2015-829A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】591060980
【氏名又は名称】岡山県
(74)【代理人】
【識別番号】100113181
【弁理士】
【氏名又は名称】中務 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100180600
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 英司
(72)【発明者】
【氏名】川端 浩二
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−123426(JP,A)
【文献】 特開2004−123403(JP,A)
【文献】 特開2012−153588(JP,A)
【文献】 特開2012−051762(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0305025(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G1/00−23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物又はその前駆体からなる粒子の製造方法であって;
アルカリ溶液を第1流路に導入する第1導入工程と、
スズ塩及び/又はインジウム塩を溶解させた金属塩溶液を第2流路に導入する第2導入工程と、
前記第1流路を流れるアルカリ溶液と前記第2流路を流れる金属塩溶液とを合流部で合流させて、100℃を超え173℃以下の混合液を得る混合工程と、
前記合流部及びその下流に配置された反応流路でアルカリ溶液と金属塩溶液とを反応させて粒子を形成させる反応工程とを備え、
前記金属酸化物がスズの酸化物及び/又はインジウムの酸化物であり、
前記粒子の平均粒径が10nm未満であることを特徴とする粒子の製造方法。
【請求項2】
前記混合工程において、100℃を超えるアルカリ溶液を第1流路から合流部に導入する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程において、100℃以下の金属塩溶液を第2流路から合流部に導入する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記反応流路を流れる反応液を加熱して、該反応液の温度を上昇させる工程を、さらに備える請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記反応工程で得られた反応液から粒子を分離する分離工程を備える請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記分離工程で得られた粒子を焼成する工程を備える請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の製造方法によって得られた粒子を含む分散液を基板に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で形成された薄膜を焼成する焼成工程とを備えることを特徴とする導電性薄膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物又はその前駆体からなる粒子の製造方法に関する。また、本発明は、金属酸化物又はその前駆体からなる粒子及びそれを含む分散液に関する。さらにまた、当該粒子を焼成してなる導電性薄膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化スズや酸化インジウムスズ(以下、ITOと称すことがある)などの金属酸化物からなる粒子は優れた電気的特性を有していることが知られている。また、これらの粒子は可視光領域での透明性が高いため、当該粒子を焼結してなる薄膜が形成された基板はフラットパネルディスプレイ、タッチパネル、太陽電池、熱線反射ガラスなどに広く利用されている。
【0003】
基板表面に薄膜を形成する方法としては、金属酸化物からなる粒子を液体中に分散させ、その分散液を基板に塗布した後に熱処理する塗布法が用いられることが多い。このとき、分散液に含まれる粒子の粒径が小さく均一であると、基板に薄く均質に塗布することができるという利点がある。また、形成された薄膜は可視光領域の光透過率が高くなるなどの利点がある。
【0004】
特許文献1には、TEM写真から求めた平均粒子径が10nm以上、100nm以下であり、当該粒子径の標準偏差を平均粒子径で除して求めた変動係数が15%以下であることを特徴とするITO粉末が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載の方法によって得られるITO粒子よりも粒径のより小さい粒子が求められていた。
【0005】
特許文献2には、亜臨界又は超臨界水中の反応場におけるITOナノ粒子の合成法であって、In、Snの金属塩水溶液あるいは水酸化物を原料とすることを特徴とするITOナノ粒子の合成法が記載されている。また、特許文献2の実施例には、SEM及びTEMでの観察結果から、10μmの多面体状の粒子、4μm以下の立方体状粒子、10nm以下の立方体および球状の粒子が得られたことが記載されている。しかしながら、特許文献2に記載の方法によって得られるITO粒子よりも粒径が均一な粒子が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−126746号公報
【特許文献2】特開2010−47448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、金属酸化物又はその前駆体からなる粒径の小さい粒子を製造することができる製造方法を提供するものである。また、そのような粒子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、金属酸化物又はその前駆体からなる粒子の製造方法であって;アルカリ溶液を第1流路に導入する第1導入工程と、スズ塩及び/又はインジウム塩を溶解させた金属塩溶液を第2流路に導入する第2導入工程と、前記第1流路を流れるアルカリ溶液と前記第2流路を流れる金属塩溶液とを合流部で合流させて、100℃を超え173℃以下の混合液を得る混合工程と、前記合流部及びその下流に配置された反応流路でアルカリ溶液と金属塩溶液とを反応させて粒子を形成させる反応工程とを備え、前記金属酸化物がスズの酸化物及び/又はインジウムの酸化物であり、前記粒子の平均粒径が10nm未満であることを特徴とする粒子の製造方法を提供することによって解決される。
【0009】
このとき、前記混合工程において、100℃を超えるアルカリ溶液を第1流路から合流部に導入することが好ましい。前記混合工程において、100℃以下の金属塩溶液を第2流路から合流部に導入することも好ましい。また、前記反応流路を流れる反応液を加熱して、該反応液の温度を上昇させる工程を、さらに備えることも好ましい。
【0011】
さらに、前記反応工程で得られた反応液から粒子を分離する分離工程を備えることが好ましい。前記分離工程で得られた粒子を焼成する工程を備えることも好ましい。
【0012】
上記課題は、上記製造方法によって得られた粒子を含む分散液を基板に塗布する塗布工程と、前記塗布工程で形成された薄膜を焼成する焼成工程とを備えることを特徴とする導電性薄膜の形成方法を提供することによっても解決される。
【0013】
上記課題は、金属酸化物又はその前駆体からなる粒子を含む分散液であって;前記金属酸化物がスズの酸化物及び/又はインジウムの酸化物であり、前記粒子の平均粒径が10nm未満であることを特徴とする分散液を提供することによっても解決される。
【0014】
上記課題は、上記分散液を基板に塗布する塗布工程と、前記塗布工程で形成された薄膜を焼成する焼成工程とを備えることを特徴とする導電性薄膜の形成方法を提供することによっても解決される。
【0015】
上記課題は、金属酸化物又はその前駆体からなる粒子であって;前記金属酸化物がスズの酸化物及び/又はインジウムの酸化物であり、前記粒子の平均粒径が10nm未満であることを特徴とする粒子を提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、金属酸化物又はその前駆体からなる粒径の小さい粒子を製造することができる製造方法を提供することができる。また、そのような粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明で用いられる装置1の一例を示した概略図である。
図2】実施例1の前駆体のTEM画像である。
図3】画像解析によって計算された実施例1の前駆体の粒径分布を示す。
図4】実施例1の金属酸化物のTEM画像である。
図5】実施例1の前駆体のXRDパターンである。
図6】実施例1の金属酸化物のXRDパターンである。
図7】実施例2の前駆体のTEM画像である。
図8】実施例3の前駆体のTEM画像である。
図9】実施例4の前駆体のTEM画像である。
図10】実施例5の前駆体のTEM画像である。
図11】実施例6の前駆体のTEM画像である。
図12】実施例7の金属酸化物のTEM画像である。
図13】比較例1の前駆体のTEM画像である。
図14】実施例8の薄膜のXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の製造方法は、アルカリ溶液を第1流路に導入する第1導入工程と、スズ塩及び/又はインジウム塩を溶解させた金属塩溶液を第2流路に導入する第2導入工程とを備える。
【0019】
第1導入工程で用いられるアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物の溶液、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物の溶液、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩の溶液、アンモニア水などを挙げることができる。中でも、製造後に未反応のアルカリを簡単に除去できる観点から、アルカリ溶液がアンモニア水であることが好ましい。溶媒としては、水及び有機溶媒のいずれも使用できるが、環境面及びコスト面から水が好ましい。また、アルカリ溶液の濃度は好適には0.01〜20mol/Lである。
【0020】
第2導入工程で用いられるスズ塩及びインジウム塩は、いずれも特に限定されないが、水溶性のものであることが好ましい。スズ塩としては、塩化スズなどのハロゲン化スズ、硫酸スズ、硝酸スズなどを挙げることができる。インジウム塩としては、塩化インジウムなどのハロゲン化インジウム、硫酸インジウム、硝酸インジウムなどを挙げることができる。溶媒は、スズ塩及びインジウム塩が溶解するものであればよい。溶媒としては、水及び有機溶媒のいずれも使用できるが、環境面及びコスト面から水が好ましい。また、金属塩溶液中の金属塩の濃度は好適には0.001〜10mol/Lである。
【0021】
第1流路に導入するアルカリ溶液は、第2流路に導入する金属塩溶液に含まれる金属塩に対して、通常0.5当量以上のアルカリを含む。ここで、0.5当量以上のアルカリとは、アルカリ溶液に含まれるアルカリのモル数を、金属塩溶液中の金属塩のモル数に価数を乗じたもので除した値が0.5以上であることをいう。金属酸化物又はその前駆体からなる粒子を高収率で得るためには、2当量以上のアルカリを含むアルカリ溶液が好ましく、4当量以上のアルカリを含むアルカリ溶液がより好ましい。また、第1導入工程及び第2導入工程において、流路に導入するアルカリ溶液の量と金属塩溶液の量の比は、好適には体積比で1/9〜9/1である。
【0022】
第1導入工程及び第2導入工程に引き続き、第1流路を流れるアルカリ溶液と第2流路を流れる金属塩溶液とを合流部で合流させて100℃を超える混合液を得る(混合工程)。そして、合流部及びその下流に配置された反応流路でアルカリ溶液と金属塩溶液とを反応させて粒子を形成させる(形成工程)。本発明の製造方法では、上記混合工程において100℃を超える混合液を得ることが特に重要である。合流部で合流した時点の混合液の温度が100℃以下の場合、粒径が小さく均一な粒子が形成されない。上記混合工程において110℃以上の混合液を得ることが好ましく、130℃以上の混合液を得ることがより好ましい。一方、混合液の温度の上限は特に限定されないが、通常、1000℃以下であり、省エネルギーの観点から500℃以下が好ましい。
【0023】
このように、本発明の製造方法は、アルカリ溶液と金属塩溶液とを予め混合した後に混合液を加熱するのではなく、アルカリ溶液と金属塩溶液とを1つの流路に合流させて100℃を超える混合液を得て反応させるものである。アルカリ溶液と金属塩溶液とが混合した時点の混合液の温度が100℃を超えることで瞬時に粒子が形成され、これによって粒径が小さく均一な粒子を得ることができる。
【0024】
上記混合工程において、100℃以下の金属塩溶液を第2流路から合流部に導入することが好ましい。金属塩溶液の温度が高すぎると金属塩の種類によっては金属塩溶液に沈殿が生じるおそれがある。より好適には80℃以下の金属塩溶液を導入し、さらに好適には50℃以下の金属塩溶液を導入する。
【0025】
また、100℃を超える混合液を得るために、上記混合工程において、100℃を超えるアルカリ溶液を第1流路から合流部に導入することが好ましく、150℃以上のアルカリ溶液を導入することがより好ましく、200℃以上のアルカリ溶液を導入することがさらに好ましい。一方、第1流路から合流部に導入するアルカリ溶液の温度は、通常、1000℃以下であり、省エネルギーの観点から500℃以下が好ましい。
【0026】
本発明の製造方法において、粒子の結晶性を向上させるとともに粒径が均一な粒子を得るために、反応流路を流れる反応液を加熱して、該反応液の温度を上昇させる工程をさらに備えることが好ましい。好適には、反応液の温度を、混合直後の温度から20℃以上上昇させ、より好適には50℃以上上昇させ、さらに好適には100℃以上上昇させる。一方、上昇幅の上限は特に限定されないが、通常500℃以下である。
【0027】
以上説明した工程を経て、金属酸化物又はその前駆体からなる粒子を含む反応液が得られる。そして、反応液から粒子を分離することによって、金属酸化物又はその前駆体からなる粒子を得ることができる。このとき、反応液中に溶解している副生成物や残存原料などを除去することができる。分離方法は、固体と液体を分離する手段であれば特に限定されず、限外ろ過などのろ過法、遠心分離法、凍結乾燥法などの方法を採用することができる。得られた粒子は、必要に応じて水洗や乾燥が施される。反応液から粒子を分離する前に当該反応液を冷却する冷却工程をさらに加えてもかまわない。
【0028】
ここで、本発明における前駆体とは、熱処理を行うことにより目的とする金属酸化物となるもののことである。前駆体は、通常、水酸化物やオキシ水酸化物などである。例えば、インジウムの酸化物の前駆体としては水酸化インジウムやオキシ水酸化インジウムを挙げることができる。当該前駆体は、複数種の前駆体の混合物であってもかまわないし、目的とする金属酸化物が含まれていてもかまわない。
【0029】
また、本発明におけるスズの酸化物及び/又はインジウムの酸化物は、特に限定されず、酸化スズ、ITO、酸化インジウムアンチモン、リンドープ酸化インジウムなどを挙げることができる。中でも、導電性の観点からITOが好ましい。なお、本発明の製造方法において、上記第2導入工程でスズ塩及びインジウム塩を溶解させた金属塩溶液を第2流路に導入すると、ITOを含む金属酸化物又はその前駆体からなる粒子が得られる。また、スズ塩を溶解させた金属塩溶液を第2流路に導入すると、酸化スズを含む金属酸化物又はその前駆体からなる粒子が得られる。
【0030】
本発明の製造方法では、分離して得られた粒子を焼成する工程を、さらに備えることが好ましい。得られた粒子を焼成することで、分離して得られた粒子に含まれる金属酸化物の前駆体が酸化され、金属酸化物の粒子を得ることができる。焼成する際の条件は特に限定されないが、通常、焼成時間は30分〜5時間であり、焼成温度は150〜1000℃である。
【0031】
本発明の製造方法を実施するための製造装置は特に限定されない。製造装置としては、アルカリ溶液を導入する第1流路と、金属塩溶液を導入する第2流路と、これらの流路とを合流部で合流させた反応流路とで構成された装置を好適に用いることができる。
【0032】
第1流路、第2流路及び反応流路には耐熱、耐圧性の管を用いることができる。これらの流路の内径は特に限定されないが、アルカリ溶液と金属塩溶液とを狭い空間で瞬時に反応させることにより粒径が小さく均一な粒子が得られるので、流路の内径は20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。生産性を考慮すれば0.5mm以上であることが好ましい。また、第1流路及び第2流路を1つの反応流路に接続する合流部の形態としては、T字やY字の形態を採用することができる。
【0033】
また、上記製造装置において、第1流路及び第2流路の入口には溶液を導入するためのポンプが備わっていることが好ましく、反応流路の出口には流路内の圧力を調節するための圧力調整装置が備わっていることが好ましい。さらに、流路の入口と出口の間には、流路を加熱するための加熱装置と、流路を冷却するための冷却装置とが適宜備わっていることが好ましい。
【0034】
ポンプはプランジャーポンプなどを用いることができる。圧力調整装置としてはオリフィスやバルブなどを用いることができる。そして、ポンプによって溶液を流路に導入し、圧力調整装置によって流路の出口を絞ることにより、流路内を加圧状態にすることができる。
【0035】
加熱装置は流路を所定の温度に加熱することができる装置であれば特に限定されず、電熱式、熱風式、直火式の加熱装置を用いることができる。加熱装置によって第1流路を加熱することで100℃を超える混合液を得ることができる。また、反応流路を加熱することで、反応液の温度を、混合直後の温度からさらに上昇させることができる。
【0036】
冷却装置は流路を所定の温度に冷却することができる装置であれば特に限定されず、水冷式、空冷式の冷却装置を用いることができる。冷却装置によって反応液を所定の温度まで冷却することで反応液を安全に回収することができる。
【0037】
また、得られた反応液から粒子を分離するためには、ろ過装置、凍結乾燥装置、遠心分離装置などを用いればよい。分離して得られた粒子の焼成には、一般的に使用される焼成炉を用いて行うことができる。
【0038】
上記製造方法によって、粒径の小さい金属酸化物又はその前駆体からなる粒子を製造することができる。本発明において、得られる粒子の平均粒径が10nm未満であることが好適である。平均粒径が10nm未満であることで、上記粒子を焼結してなる薄膜を基板表面に形成したときに薄く均質な薄膜が得られる。得られる薄膜の可視光領域の光透過率も向上する。ここで、粒子の平均粒径とは一次粒子の平均粒径のことである。平均粒径の算出方法は、まず粒子の透過型電子顕微鏡写真から複数個の一次粒子を選択し、選択した粒子の形状を、画像解析ソフトウエアを用いて長軸径を平均することによって算出する方法である。なお、金属酸化物又はその前駆体からなる粒子であって、前記金属酸化物がスズの酸化物及び/又はインジウムの酸化物であり、前記粒子の平均粒径が10nm未満である粒子は、これまで製造することができず、それ自体新しいものである。同様に、以下で説明する分散液も新しいものである。
【0039】
上記製造方法によって、アルカリ溶液と金属塩溶液とを混合して得られた分散液はそのまま塗布などの工程に用いることもできるし、一旦分散媒を除き、粒子を再度分散媒に分散させて分散液を得ることもできる。このとき、分散媒は特に限定されず、水や有機溶媒を分散媒として用いることができる。環境面及びコスト面から水が好ましい。
【0040】
本発明の好適な実施形態は、上記粒子を含む分散液を基板に塗布する塗布工程と、塗布工程で形成された薄膜を焼成する焼成工程とを備える導電性薄膜の形成方法である。分散液を塗布する基板はガラスを挙げることができる。塗布方法は特に限定されず、スピンコート法、スプレー法、ディップ法などの薄膜形成方法を採用するができる。焼成方法も特に限定されず、一般的に使用される焼成炉を用いて行うことができる。焼成する際の条件は特に限定されないが、通常、焼成時間は30分〜5時間であり、焼成温度は150〜1000℃である。また、得られる薄膜の表面抵抗率は10Ω/□以下であることが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0042】
実施例1
[前駆体及び金属酸化物の製造]
(装置)
図1に示した装置1を用いて、金属酸化物の前駆体からなる粒子の製造を行った。装置1において、原料容器50に入れられたアンモニア水は、ポンプ30によって流路F1に導入され、電気炉10内で加熱され流路F2に導入される。一方、原料容器60に入れられた金属塩溶液は、ポンプ40によって流路F3に導入される。そして、流路F3を流れる金属塩溶液と流路F2を流れる加熱されたアンモニア水は、合流部70で合流し流路F4に導入される。流路F4に導入された混合液は、電気炉10内で加熱されて流路F5に導入される。流路F5に導入された混合液は、15℃に調節された水槽20で冷却された後、流路F6に導入され排出口Outから排出され回収容器90で回収される。
【0043】
流路は内径が1mmのSUSチューブである。排出口Outには背圧弁80が設けてあり、流路内の圧力を調節できるようになっている。また、アンモニア水が流路F1に導入されて排出口Outから排出されるまでの時間は3分である。
【0044】
装置1には、図1のT1及びT2で示した箇所に温度計が設置されている。T1の箇所では、金属塩溶液と混合される直前のアンモニア水の温度が測定できるようになっている。また、T2の箇所では、アンモニア水と金属塩溶液とを合流部70で合流させた直後の混合液の温度が測定できるようになっている。
【0045】
次に、装置1を用いた、前駆体及び金属酸化物の製造工程について説明する。
【0046】
(原料の準備)
(1)三塩化インジウム四水和物と四塩化スズ五水和物とを1Lの蒸留水に溶解させてインジウム塩とスズ塩とを含む金属塩溶液を調製した。当該金属塩溶液中のインジウム塩の濃度は9mmol/Lであり、スズ塩の濃度は1mmol/Lである。
(2)濃度が28重量%のアンモニア水を蒸留水で希釈して、濃度が0.5重量%のアンモニア水を1L調製した。
【0047】
(混合・反応工程)
(1)アンモニア水1Lを原料容器50に入れ、金属塩溶液1Lを原料容器60に入れた。
(2)背圧弁80を操作して、流路内の圧力が0.3MPaになるように調節した。
(3)プランジャーポンプ30を起動させ、原料容器50内のアンモニア水を流路F1に流速5mL/minで導入した。そして、電気炉10を起動させ炉内の温度を300℃に設定し、炉内の流路を流れるアンモニア水を加熱した。
(4)プランジャーポンプ40を起動させ、原料容器60内の金属塩溶液を流路F3に流速5mL/minで導入し、当該金属塩溶液と加熱されたアンモニア水とを合流部70で合流させた。混合する直前のアンモニア水の温度T1は296.8℃であり、金属塩溶液の温度は室温であり、合流部で合流させた直後の混合液の温度T2は165.9℃であった。電気炉の設定温度Ts、温度T1及び温度T2を表1にまとめて示す。
(3)背圧弁80を通り排出口Outから排出された反応液を回収容器90で回収した。
【0048】
(分離工程)
得られた反応液を限外ろ過膜でろ過をし、アンモニア水や未反応のインジウム塩及びスズ塩を除去した。そして、ろ過膜上の粒子を蒸留水で5回洗浄した後、粒子を採取した。得られた粒子を蒸留水に分散させて前駆体からなる粒子を含む分散液を得た。得られた分散液を凍結乾燥し前駆体からなる粒子を得た。金属塩の仕込み量から算出した粒子の収率は57.5%であった。
【0049】
(焼成工程)
得られた前駆体からなる粒子を300℃で30分間熱処理を行い、金属酸化物の粒子を得た。
【0050】
[TEM観察]
透過型電子顕微鏡装置(TEM)を用いて、前駆体の電子顕微鏡写真(TEM画像)の撮影を行った。図2は前駆体のTEM画像である。得られたTEM画像から、前駆体の平均粒径(一次粒径)を求めたところ、平均粒径は6.79nmであった。平均粒径は得られたTEM画像において、明暗が明瞭で粒子の輪郭を判別できる粒子を100個選択し、粒子の長軸径を画像解析ソフトウエアを用いて計測し平均することによって求めた。図3に、画像解析によって計算された粒径分布を示す。透過型電子顕微鏡装置は、日本電子株式会社製の「JEM−2100」を用いた。
【0051】
金属酸化物についても透過型電子顕微鏡装置(TEM)を用いて、TEM画像の撮影を行った。図4は金属酸化物の電子顕微鏡写真(TEM画像)である。同様に、得られたTEM画像から金属酸化物の平均粒径を求めたところ、平均粒径は6.90nmであり、標準偏差は1.43nmであった。
【0052】
[X線回折法による分析]
X線回折装置(XRD)を用いて、前駆体及び金属酸化物それぞれについて、XRDパターンを測定した。図5に前駆体のXRDパターンを示し、図6に金属酸化物のXRDパターンをそれぞれ示す。X線回折装置は、株式会社リガク社製の「RINT−2500」を用いた。
【0053】
図5に示すように、前駆体はインジウムのオキシ水酸化物(InOOH)とインジウムスズの酸化物(InSnO)に帰属される回折ピークが観測された。また、図6に示すように、金属酸化物はインジウムスズの酸化物(InSnO)に帰属される回折ピークが観測された。
【0054】
実施例2
電気炉10の設定温度Tsを200℃に変更した以外は実施例1と同様にして前駆体を製造した。電気炉の設定温度Ts、温度T1、温度T2及び収率を表1にまとめて示す。また、実施例1と同様にして、得られた前駆体についてTEM観察を行った。図7に電子顕微鏡写真(TEM画像)を示し、表1に平均粒径を示す。
【0055】
実施例3
電気炉10の設定温度Tsを250℃に変更した以外は実施例1と同様にして前駆体を製造した。電気炉10の設定温度Ts、温度T1、温度T2及び収率を表1にまとめて示す。また、実施例1と同様にして、得られた前駆体についてTEM画像の撮影を行い、平均粒径を求めた。図8にTEM画像を示し、表1に平均粒径を示す。
【0056】
実施例4
電気炉10の設定温度Tsを350℃に変更した以外は実施例1と同様にして前駆体を製造した。電気炉10の設定温度Ts、温度T1、温度T2及び収率を表1にまとめて示す。また、実施例1と同様にして、得られた前駆体についてTEM画像の撮影を行い、平均粒径を求めた。図9にTEM画像を示し、表1に平均粒径を示す。
【0057】
実施例5
電気炉10の設定温度Tsを400℃に変更した以外は実施例1と同様にして前駆体を製造した。電気炉10の設定温度Ts、温度T1、温度T2及び収率を表1にまとめて示す。また、実施例1と同様にして、得られた前駆体についてTEM画像の撮影を行い、平均粒径を求めた。図10にTEM画像を示し、表1に平均粒径を示す。
【0058】
実施例6
電気炉10の設定温度Tsを450℃に変更した以外は実施例1と同様にして前駆体を製造した。電気炉10の設定温度Ts、温度T1、温度T2及び収率を表1にまとめて示す。また、実施例1と同様にして、得られた前駆体についてTEM画像の撮影を行い、平均粒径を求めた。図11にTEM画像を示し、表1に平均粒径を示す。
【0059】
実施例7
インジウム塩及びスズ塩を含む金属塩溶液の代わりに、四塩化スズ五水和物を1Lの水に溶解させたスズ塩を含む金属塩溶液を原料容器50に入れた。当該金属塩溶液中のスズ塩の濃度は5mmol/Lである。そして、実施例1と同様の混合・反応工程を行って酸化スズを得た。電気炉10の設定温度Ts、温度T1及び温度T2を表1にまとめて示す。また、実施例1と同様にして、得られた酸化スズについてTEM観察の撮影を行った。図12にTEM画像を示し、表1に平均粒径を示す。
【0060】
比較例1
電気炉10の設定温度Tsを150℃に変更した以外は実施例1と同様にして前駆体を製造した。電気炉10の設定温度Ts、温度T1、温度T2及び収率を表1にまとめて示す。また、実施例1と同様にして、得られた前駆体についてTEM観察の撮影を行った。図13にTEM画像を示す。得られたTEM画像において、粒子同士が重なりあって粒子の輪郭を判別することができず、個々が独立した粒子を選別することができなかったため、平均粒径を求めることができなかった。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例8
実施例1で得られた前駆体を水に分散させた分散液を調製した。この分散液をガラス基板表面にスピンコートによって塗布した後に、500℃で90分間焼成して、基板表面に薄膜を形成した。
【0063】
X線回折装置(XRD)を用いて、薄膜のXRDパターンを測定した。図14に薄膜のXRDパターンを示す。図14に示すように、全ての回折ピークはインジウムスズの酸化物(InSnO)に帰属され、基板表面にITO薄膜が形成されていることが確認された。また、得られた薄膜の表面抵抗率を4探針法によって測定したところ、表面抵抗率は10Ω/□桁であり、基板表面に導電性薄膜が形成されたことが確認された。
【符号の説明】
【0064】
1 装置
10 電気炉
20 水槽
30、40 プランジャーポンプ
50、60 原料容器
70 合流部
80 背圧弁
90 回収容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14