特許第6205571号(P6205571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6205571有機EL表示装置およびその製造方法、並びに電子機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205571
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】有機EL表示装置およびその製造方法、並びに電子機器
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/12 20060101AFI20170925BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170925BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20170925BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20170925BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H05B33/12 B
   H05B33/14 A
   H05B33/12 C
   H05B33/10
   H01L27/32
   G09F9/30 365
【請求項の数】18
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2014-540790(P2014-540790)
(86)(22)【出願日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】JP2013075279
(87)【国際公開番号】WO2014057782
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2015年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-225750(P2012-225750)
(32)【優先日】2012年10月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 利明
(72)【発明者】
【氏名】吉永 禎彦
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−108531(JP,A)
【文献】 特開2012−056865(JP,A)
【文献】 特開2011−187994(JP,A)
【文献】 特開2012−079631(JP,A)
【文献】 特開2008−112875(JP,A)
【文献】 特開2007−157550(JP,A)
【文献】 特開2006−245003(JP,A)
【文献】 特開2003−151775(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/060854(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/12
H05B 33/10
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色光を発光する第1発光層を有する第1有機EL素子と、前記第1の色光よりも短波長の第2の色光を発光する第2発光層を有する第2有機EL素子とを備え、
前記第1発光層は、ホスト材料として前記第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料を含むと共に、ドーパントとして前記第1の色光を発光する低分子材料または高分子材料を含み、
前記第2発光層は、平面視で前記第1発光層と異なる領域に設けられ、他の層との上下いずれかの界面付近に、前記第1発光層のドーパントである前記低分子材料または前記高分子材料を含む
有機EL表示装置。
【請求項2】
前記ホスト材料として前記第1の色光を非発光または非主発光である前記高分子材料は、前記第2の色光を発光する材料である
請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記第1発光層は、前記第1の色光として赤色光を発光する赤色発光層であり、
前記第2発光層は、前記第2の色光として緑色光を発光する緑色発光層である
請求項2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
青色光を発光する青色発光層を有する第3有機EL素子を更に備え、
前記赤色発光層および前記緑色発光層は素子毎に設けられ、
前記青色発光層は、前記第1有機EL素子、前記第2有機EL素子および前記第3有機EL素子に共通の層として設けられている
請求項3に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記赤色発光層と前記青色発光層との間、および前記緑色発光層と前記青色発光層との間には、正孔輸送性を有する接続層が設けられている
請求項4に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記第1発光層は、前記第1の色光として赤色光を発光する赤色発光層であり、
前記第2発光層は、前記第2の色光として青色光を発光する青色発光層である
請求項2に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記第1発光層は、前記第1の色光として緑色光を発光する緑色発光層であり、
前記第2発光層は、前記第2の色光として青色光を発光する青色発光層である
請求項2に記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
前記第1発光層は、前記第1の色光として黄色光を発光する黄色発光層である
請求項2に記載の有機EL表示装置。
【請求項9】
前記ホスト材料として前記第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料は、デンドリマーまたはポリマーである
請求項1乃至8のうちいずれか1つに記載の有機EL表示装置。
【請求項10】
前記第1発光層では、前記ドーパントとして前記第1の色光を発光する前記低分子材料または前記高分子材料の濃度が20重量%以上である
請求項1乃至8のうちいずれか1つに記載の有機EL表示装置。
【請求項11】
前記ホスト材料として前記第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料は増粘剤である
請求項1乃至8のうちいずれか1つに記載の有機EL表示装置。
【請求項12】
第1の色光を発光する第1発光層を有する第1有機EL素子と、前記第1の色光よりも短波長の第2の色光を発光する第2発光層を有する第2有機EL素子とを備えた有機EL表示装置の製造方法であって、
前記第1発光層を形成する際に、ホスト材料として前記第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料を、ドーパントとして前記第1の色光を発光する低分子材料または高分子材料をそれぞれ用い、
前記第2発光層は平面視で前記第1発光層と異なる領域に設けられ、他の層との上下いずれかの界面付近に、前記第1発光層のドーパントである前記低分子材料または前記高分子材料を含む
有機EL表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1発光層および前記第2発光層を、反転オフセット印刷により形成する
請求項12に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記ホスト材料として前記第1の色光を非発光または非主発光である前記高分子材料は、前記第2の色光を発光する材料である
請求項13に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1発光層は、前記第1の色光として赤色光を発光する赤色発光層であり、
前記第2発光層は、前記第2の色光として緑色光を発光する緑色発光層である
請求項14に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記赤色発光層および前記緑色発光層とを形成した後、青色光を発光する青色発光層を蒸着法により形成する工程を更に含む
請求項15に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記ホスト材料として前記第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料は増粘剤である
請求項12または13に記載の有機EL表示装置の製造方法。
【請求項18】
第1の色光を発光する第1発光層を有する第1有機EL素子と、前記第1の色光よりも短波長の第2の色光を発光する第2発光層を有する第2有機EL素子とを備え、
前記第1発光層は、ホスト材料として前記第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料を含むと共に、ドーパントとして前記第1の色光を発光する低分子材料または高分子材料を含み、
前記第2発光層は、平面視で前記第1発光層と異なる領域に設けられ、他の層との上下いずれかの界面付近に、前記第1発光層のドーパントである前記低分子材料または前記高分子材料を含む
有機EL表示装置を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機エレクトロルミネセンス(EL;Electro Luminescence)現象を利用して発光する有機EL表示装置およびその製造方法、インク並びに電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信産業の発達が加速するにつれて、高度な性能を有する表示素子が要求されている。その中で、次世代表示素子として注目されている有機EL素子は自発光型表示素子として視野角が広くてコントラストが優秀なだけでなく応答時間が速いという長所がある。
【0003】
有機EL素子における発光層等を構成する有機膜は、低分子材料と高分子材料に大別されるが、この有機膜の成膜方法としては、低分子材料の場合には真空蒸着法等の乾式法が挙げられる。一方、高分子材料の場合には、スピンコーティング、インクジェット、ノズルコート、凸版印刷、反転オフセット印刷およびレーザー転写等の湿式法(塗布法)が挙げられる。
【0004】
上記湿式法のうち、接触転写方式であるレーザー転写としては、例えば凹凸を有するドナーフィルムを用いた手法が開示されている(特許文献1)。ところが、この転写方式では、ドナーフィルムの凹凸上に有機膜を形成するため、有機膜の膜厚均一性を確保しにくい。
【0005】
一方で、例えば特許文献2に記載されているような反転オフセット印刷は、転写用のブランケットに有機膜を均一な膜厚でコートすることから成膜精度が高く、高精細な印刷が可能であるため注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−216563号公報
【特許文献2】特開2004−186111号公報
【発明の概要】
【0007】
上記のような成膜手法のうち、例えば反転オフセット印刷では、ブランケット上に版を用いて転写用パターンを形成する。このため、互いに異なる色の発光層を画素毎にパターン形成する場合、次のような問題が生じる。即ち、ブランケット表面の版でオフしたエリアに色素が残り、この残存色素が非パターン領域(隣接画素等)に付着する。これによって、混色が生じ、あるいは発光効率が低下して、表示品位が低下してしまう。
【0008】
したがって、互いに波長の異なる色光を発する複数の発光層をパターン形成する際に、混色を抑制して表示品位を向上させることが可能な有機EL表示装置およびその製造方法、並びに電子機器を提供することが望ましい。
【0009】
本開示の一実施の形態の有機EL表示装置は、第1の色光を発光する第1発光層を有する第1有機EL素子と、第1の色光よりも短波長の第2の色光を発光する第2発光層を有する第2有機EL素子とを備え、第1発光層は、ホスト材料として第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料を含むと共に、ドーパントとして第1の色光を発光する低分子材料または高分子材料を含み、第2発光層は、平面視で第1発光層と異なる領域に設けられ、他の層との上下いずれかの界面付近に、第1発光層のドーパントである低分子材料または高分子材料を含むものである。
【0010】
尚、低分子材料とは、例えば重量平均分子量5万以下のモノマーであることが望ましい。
【0011】
本開示の一実施の形態の有機EL表示装置では、第1発光層が、ホスト材料として第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料を含むと共に、ドーパントとして第1の色光を発光する低分子材料または高分子材料を含む。これにより、例えば反転オフセット印刷により第1発光層を形成した場合、第2有機EL素子において、第1および第2の色光の混色が抑制される。
【0012】
本開示の一実施の形態の有機EL表示装置の製造方法は、第1の色光を発光する第1発光層を有する第1有機EL素子と、第1の色光よりも短波長の第2の色光を発光する第2発光層を有する第2有機EL素子とを備えた有機EL表示装置の製造方法であって、第1発光層を形成する際に、ホスト材料として第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料を、ドーパントとして第1の色光を発光する低分子材料または高分子材料を用い、第2発光層は平面視で第1発光層と異なる領域に設けられ、他の層との上下いずれかの界面付近に、第1発光層のドーパントである低分子材料または高分子材料を含むものである。
【0013】
本開示の一実施の形態の有機EL表示装置の製造方法では、第1発光層を形成する際に、ホスト材料として第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料を用いると共に、ドーパントとして第1の色光を発光する低分子材料または高分子材料を用いる。これにより、例えば反転オフセット印刷により第1発光層を形成した場合、第2有機EL素子において、第1および第2の色光の混色が抑制された有機EL表示装置を製造可能となる。
【0014】
本開示の一実施の形態のインクは、第1の色光を発光する第1発光層を有する第1有機EL素子と、第1の色光よりも短波長の第2の色光を発光する第2発光層を有する第2有機EL素子とを備えた有機EL表示装置の、第1発光層を形成する際に用いられ、ホスト材料として第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料を含むと共に、ドーパントとして第1の色光を発光する低分子材料または高分子材料を含むものである。
【0015】
本開示の一実施の形態の電子機器は、上記本開示の一実施の形態の有機EL表示装置を備えたものである。
【0016】
本開示の一実施の形態の有機EL表示装置およびその製造方法並びに電子機器によれば、第1発光層が、ホスト材料として第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料を含むと共に、ドーパントとして第1の色光を発光する低分子材料または高分子材料を含む。これにより、例えば反転オフセット印刷により第1発光層を形成した場合、第2有機EL素子において、第1および第2の色光の混色を抑制することができる。よって、互いに波長の異なる色光を発する複数の発光層をパターン形成する際に、混色を抑制して表示品位を向上させることが可能となる。
【0017】
本開示の一実施の形態のインクによれば、ホスト材料として第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料を含むと共に、ドーパントとして第1の色光を発光する低分子材料または高分子材料を含むことにより、これを用いて第1発光層を形成した場合、第2有機EL素子において、第1および第2の色光の混色を抑制することができる。よって、互いに波長の異なる色光を発する複数の発光層をパターン形成する際に、混色を抑制して表示品位を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の第1の実施の形態に係る有機EL表示装置の全体構成を表す図である。
図2図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
図3図1に示した有機EL表示装置の構成を表す断面図である。
図4図1に示した有機EL表示装置の製造方法を工程順に表す断面図である。
図5A図4に続く工程を表す断面図である。
図5B図5Aに続く工程を表す断面図である。
図6A図5Aに示した工程を説明するための模式図である。
図6B図6Aに続く工程を表す断面図である。
図7A図6Bに続く工程を表す断面図である。
図7B図7Aに続く工程を表す断面図である。
図7C図7Bに続く工程を表す断面図である。
図8A図7Cに続く工程を表す断面図である。
図8B図8Aに続く工程を表す断面図である。
図8C図8Bに続く工程を表す断面図である。
図9】実施例および比較例のG発光強度を表す特性図である。
図10】実施例および比較例のG発光強度を表す特性図である。
図11】Rドーパントの高分子発光材料G1に対する比率と、G発光強度との関係を表す特性図である。
図12】本開示の第2の実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を表す断面図である。
図13A】上記実施の形態の有機EL表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
図13B】上記実施の形態の有機EL表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
図14】上記実施の形態の有機EL表示装置の適用例2の外観を表す斜視図である。
図15A】適用例3の表側から見た外観を表す斜視図である。
図15B】適用例3の裏側から見た外観を表す斜視図である。
図16】適用例4の外観を表す斜視図である。
図17】適用例5の外観を表す斜視図である。
図18A】適用例6の閉じた状態の正面図、左側面図、右側面図、上面図および下面図である。
図18B】適用例6の開いた状態の正面図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して以下の順に詳細に説明する。
1.第1の実施の形態(赤色発光層(R低分子材料,高分子発光材料G1),緑色発光層を反転オフセット印刷、青色発光層を真空蒸着法により形成した有機EL表示装置の例)2.第2の実施の形態(赤色発光層(R低分子材料,増粘剤),緑色発光層を反転オフセット印刷、青色発光層を真空蒸着法により形成した有機EL表示装置の例)
3.適用例1〜6(電子機器の例)
【0020】
<第1の実施の形態>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を表すものである。この有機EL表示装置は、有機ELテレビジョン装置などとして用いられるものであり、例えば、基板110の上に、表示領域110Aとして、後述する複数の有機EL素子10R,有機EL素子10G,有機EL素子10Bがマトリクス状に配置されたものである。表示領域110Aの周辺には、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が設けられている。
【0021】
表示領域110A内には画素駆動回路140が設けられている。図2は、画素駆動回路140の一例を表したものである。画素駆動回路140は、後述する下部電極11よりも下層に形成されたアクティブ型の駆動回路である。即ち、この画素駆動回路140は、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、これらトランジスタTr1,Tr2の間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機EL素子10R(または有機EL素子10G,有機EL素子10B)とを有する。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))であり、例えば逆スタガ構造(いわゆるボトムゲート型)またはスタガ構造(トップゲート型)を有している。
【0022】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機EL素子10R,10G,10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0023】
また、表示領域110には、赤色の光を発生する有機EL素子10R(第1有機EL素子)と、緑色の光を発生する有機EL素子10G(第2有機EL素子)と、青色の光を発生する有機EL素子10Bとが、全体としてマトリクス状に配置されている。隣り合う有機EL素子10R,10G,10Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。
【0024】
図3図1に示した有機EL表示装置の断面構成を表したものである。有機EL素子10R,10G,10Bではそれぞれ、基板110(図3には図示せず)の側から、陽極(アノード)としての下部電極11、正孔注入層(HIL)12Bおよび正孔輸送層(HTL)12Aがこの順に積層されている。有機EL素子10Rでは、正孔輸送層12A上に赤色発光層13R(第1発光層)が、有機EL素子10Gでは、正孔輸送層12A上に緑色発光層13G(第2発光層)がそれぞれパターン形成されている。これらの正孔輸送層12A、赤色発光層13Rおよび緑色発光層13Gを覆って、接続層(HCL)14が形成され、この接続層14上に、青色発光層14B、電子輸送層15A、電子注入層15Bおよび陰極(カソード)としての上部電極16がこの順に積層されている。詳細は後述するが、本実施の形態では、赤色発光層13Rおよび緑色発光層13Gが、例えば反転オフセット印刷によりパターン形成され、青色発光層14Bが、例えば真空蒸着法により形成される。即ち、下部電極11および上部電極16間の有機層のうち、赤色発光層13Rおよび緑色発光層13Gが素子領域毎(画素毎)に設けられ、その他の層は各素子領域に共通の層として設けられている。
【0025】
尚、図示はしないが、これらの有機EL素子10R,10G,10Bは、保護層により被覆され、更にこの保護層上に熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂などの接着層を間にしてガラスなどよりなる封止用基板が貼り合わされることにより封止されている。
【0026】
基板110は、その一主面側に有機EL素子10R,10G,10Bが配列形成される支持体であって、公知のものであって良く、例えば、石英、ガラス、金属箔、もしくは樹脂製のフィルムやシートなどが用いられる。この中でも石英やガラスが好ましく、樹脂製の場合には、その材質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるメタクリル樹脂類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル類、もしくはポリカーボネート樹脂などが挙げられるが、透水性や透ガス性を抑える積層構造、表面処理を行うことが必要である。
【0027】
下部電極11は、有機EL素子10R,10G,10Bの各々ごと(画素毎)に設けられている。下部電極11は、例えば、積層方向の厚み(以下、単に厚みと言う)が10nm以上1000nm以下であり、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金が挙げられる。また、下部電極11は、これらの金属元素の単体または合金よりなる金属膜と、インジウムとスズの酸化物(ITO)、InZnO(インジウ亜鉛オキシド)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との合金などの透明導電膜との積層構造を有していてもよい。なお、下部電極11が陽極として使われる場合には、下部電極11は正孔注入性の高い材料により構成されていることが望ましい。但し、アルミニウム(Al)合金のように、表面の酸化皮膜の存在や、仕事関数が大きくないことによる正孔注入障壁が問題となる材料であっても、適切な正孔注入層を設けることによって下部電極11として使用することが可能である。
【0028】
正孔注入層12Bは、各発光層(赤色発光層13R,緑色発光層13G,青色発光層14B)への正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔注入層12Bの構成材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適切なものが選択されればよいが、例えばポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリキノリン、ポリキノキサリンおよびそれらの誘導体、芳香族アミン構造を主鎖または側鎖に含む重合体などの導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、またはカーボンなどが挙げられる。
【0029】
正孔注入層12Bに用いられる材料が高分子材料である場合には、その高分子材料の重量平均分子量(Mw)は1万〜30万の範囲であればよく、特に5000〜20万程度が好ましい。また、2000〜1万程度のオリゴマーを用いてもよいが、Mwが5000未満では正孔輸送層以後の層を形成する際に、正孔注入層が溶解してしまう虞がある。また30万を超えると材料がゲル化し、成膜が困難になる虞がある。
【0030】
正孔注入層12Bの構成材料として使用される典型的な導電性高分子としては、例えばポリアニリン、オリゴアニリンおよびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などのポリジオキシチオフェンが挙げられる。この他、エイチ・シー・スタルク製Nafion(商標)で市販されているポリマー、または商品名Liquion(商標)で溶解形態で市販されているポリマーや、日産化学製エルソース(商標)や、綜研化学製導電性ポリマーベラゾール(商標)などがある。この正孔注入層12Bの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば5nm〜100nmである。
【0031】
正孔輸送層12Aは、各発光層(赤色発光層13R,緑色発光層13G,青色発光層14B)への正孔輸送効率を高めるためのものであるである。正孔輸送層12Aを構成する高分子材料としては、有機溶媒に可溶な発光材料、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレン、ポリアニリン、ポリシランまたはそれらの誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールなどを用いることができる。具体的には、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4'−(N−(4−sec−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB,式(1−1))、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−alt−co−(N,N'−ビス{4−ブチルフェニル}−ベンジジンN,N'−{1,4−ジフェニレン})](式(1−2))、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)](PFO,式(1−3))が好ましいが、この限りではない。
【0032】
正孔輸送層12Aに用いられる材料が高分子材料の重量平均分子量(Mw)は、5万〜30万であることが好ましく、特に10万〜20万であることが好ましい。Mwが5万未満では、発光層を形成するときに、高分子材料中の低分子成分が脱落し、正孔注入層12B,正孔輸送層12Aにドットが生じるため、有機EL素子の初期性能が低下したり、素子の劣化を引き起こすおそれがある。一方、30万を越えると、材料がゲル化するため、成膜が困難になるおそれがある。なお、重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒として、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC;Gel Permiation Chromatography)により、ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた値である。この正孔輸送層12Aの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば10nm〜200nmである。
【0033】
(赤色発光層13R)
赤色発光層13Rは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。赤色発光層13Rの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば10nm〜200nmである。この赤色発光層13Rは、ホスト材料(母材)として、赤色光(第1の色光)を非発光(または非主発光、以下同様)である高分子材料を含むと共に、ドーパントとして、赤色光を発光する低分子材料を含むものである。ここで、低分子材料とは、モノマーまたはこのモノマーを2〜10個結合したオリゴマーとし、5万以下の重量平均分子量を有するものが好ましい。但し、重量平均分子量が上記範囲を超えた低分子材料を必ずしも除外するものではない。
【0034】
赤色発光層13Rにホスト材料として含まれる高分子材料は、例えば赤色光(例えば波長620〜750nm)よりも短波長の(エネルギーの高い)色光を発光する高分子材料である。本実施の形態では、このような高分子材料として、例えば波長500〜550nmの範囲にスペクトルピークを有する色光(緑色光)を発光する高分子材料(高分子発光材料G1)が用いられる。このような構成により、いわゆるダウンコンバージョンによってエネルギーの低い赤色光を発光可能となっている(緑色光を励起光として、緑色光よりも低いエネルギーの赤色光が発光する)。
【0035】
高分子発光材料G1としては、例えばポリフルオレン系高分子誘導体、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体またはシジベンゾフラン誘導体が挙げられる。この高分子発光材料G1は、例えば、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(tris(2-phenylpyridine)iridium)をコアに有するデンドリマー(樹状高分子)、またはそのような樹状構造を有する高分子材料であることが望ましい。デンドリマーの樹木部に、例えばフェニルカルバゾール基、フェニレン基、エチレン基、フルオレン基を含んでもよい。この高分子発光材料G1の発光波長は、側鎖のイリジウム(Ir)錯体の配位子を変更することで変えることができる。
【0036】
このような高分子発光材料G1の一例としては、例えば以下の一般式(1−1)に示したGPP、または一般式(1−2)に示したPNDOFが挙げられる。GPPは、緑色燐光発光材料であるが、ポリビニル主鎖骨格の側鎖に、燐光発光性の基の他にも、正孔輸送性基(例えば、HMTPD)あるいは電子輸送性基(例えば、TBPhB)を有してもよい。
【0037】
【化1】
【0038】
【化2】
【0039】
赤色発光層13Rにドーパントとして含まれる低分子材料(低分子発光材料r1)は、例えば赤色燐光発光性を有する低分子材料である。具体的には、例えば、以下の一般式(2−1)に表されるビス(2−(2'−ベンゾ[4,5a]チエニル)ピリジナト−N,C3')イリジウム(アセチルアセトネート)(BtpIr;bis(2-(2'-benzo[4,5-a]thienyl)pyridinato-N,C3')iridium acetyl-acetate)が挙げられる。
【0040】
【化3】
【0041】
尚、低分子発光材料r1は、この他にも、例えばナイルレッド、DCMあるいはDJCTであってもよい。但し、効率の高い赤色燐光を得るという観点から、上記のようなIr錯体であることが望ましい。また、赤色燐光性を有するものであれば、必ずしも低分子材料に限られず、例えば、以下の一般式(2−2)に表されるRPP、または一般式(2−3)に表されるPPDOFのような高分子材料であってもよい。
【0042】
【化4】
【0043】
【化5】
【0044】
上記のような赤色発光層13R(および緑色発光層13G)は、詳細は後述するが、例えば反転オフセット印刷により形成されるものである。印刷の際には、上記高分子発光材料G1および低分子発光材料r1は、例えばトルエン、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)、ブサイドクメン(1,2,4−トリメチルベンゼン)、ジハイドロベンゾフラン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、1−メチルナフタレン、p−アニシルアルコール、ジメチルナフタレン、3-メチルビフェニル、4−メチルビフェニル、3−イソプロピルビフェニル、モノイソプロピルナフタレンなどの有機溶媒のうちの少なくとも1種類以上を使って溶解される。赤色発光層13Rの反転オフセット印刷の際には、それらの混合溶液、即ち、高分子発光材料G1、低分子発光材料r1および有機溶媒を含むインク(以下、「Rインク」という)が、ブランケット上に例えばスピンコート等によって塗布されて使用される。
【0045】
ここで、ドーパント材料のホスト材料に対するドープ濃度(以下、単にドープ濃度という)は、効率の観点から、10重量%以下であることが望ましい。ドープ濃度が10重量%よりも大きくなると、隣接した3重項励起子が相互作用によって失括することから、十分な効率が得にくいためである。
【0046】
ところが、本実施の形態のRインクでは、ホスト材料が高分子発光材料G1であることから、低分子発光材料r1のドープ濃度が低すぎると、G発光がR発光よりも強くなり、例えばCIE−xy色度図において色度(0.47,0.50)のオレンジ色になってしまう。ここで、実際に測定されたGスペクトル強度から、赤色発光層13Rにおける低分子発光材料r1の濃度は、Rインクの場合の1/5程度に低下する。また、赤色発光層13Rにおける低分子発光材料r1の濃度が4重量%以上であれば、G発光を抑制することができることがわかっている。これらのことから、Rインクにおける低分子発光材料r1の濃度は、20重量%以上であることが望ましい。後述するように、低分子発光材料r1の濃度が30重量%以上である場合には、例えば色度(0.60,0.39)14.2cd/Aの赤色を得ることができる。
【0047】
尚、低分子材料(モノマーまたはオリゴマー)は、低分子化合物が同じ反応または類似の反応を連鎖的に繰り返すことにより生じた高分子量の重合体または縮合体の分子からなる化合物以外のものであって、分子量が実質的に単一であるものを指す。また加熱による分子間の新たな化学結合は生じず、単分子で存在する。このような低分子材料の重量平均分子量(Mw)は5万以下であることが好ましい。
【0048】
また、低分子発光材料r1の代わりに、上述したようなR高分子発光材料を用いる場合は、重量に対するR燐光基数が少ないため、Rインクにおける濃度が、低分子材料を用いる場合よりも高いことが望ましく、例えば30重量%以上であることが望ましい。
【0049】
更に、この赤色発光層13Rには、低分子正孔輸送材、低分子ホスト材あるいはスピロ系材料として、次のような低分子材料が含まれていてもよい。例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマーあるいはオリゴマーが挙げられる。
【0050】
具体的な材料としては、α−ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、ヘキサシアノアザトリフェニレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(F4−TCNQ)、テトラシアノ4、4、4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N、N、N’、N’−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N、N、N’、N’−テトラフェニル−4、4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2、2’−チエニルピロール)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
好ましくは、以下の式(3−1)〜式(3−3)で表わされる低分子材料が用いられるとよい。
【0052】
【化6】
(A1〜A3は芳香族炭化水素基、複素環基またはそれらの誘導体である。)
【0053】
【化7】
(Zは含窒素炭化水素基あるいはその誘導体である。L1は2価の芳香族環基が1ないし4個結合した基、具体的には1〜4個の芳香族環が連結した2価の基、またはその誘導体である。A4およびA5は、芳香族炭化水素基あるいは芳香族複素環基、またはその誘導体である。但し、A4およびA5は互いに結合して環状構造を形成してもよい。)
【0054】
【化8】
(L2は2価の芳香族環基が2ないし6個結合した基である。具体的には2〜6個の芳香族環が連結した2価の基、またはその誘導体である。A6〜A9は、芳香族炭化水素基あるいは複素環基、またはその誘導体が1〜10個結合した基である。)
【0055】
更に、赤色発光層13Rには、G消光材として、緑色発光性高分子のT1準位と赤色発光性高分子のT1準位との間に、T1準位をもつホール輸送性の低分子材料が添加されていてもよい。このような低分子材料としては、例えば以下の一般式(4−1)〜(4−16)に示したようなアミン系低分子材料が挙げられる。
【0056】
【化9】
【0057】
(緑色発光層13G)
緑色発光層13Gは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、緑色光を発生するものである。緑色発光層13Gの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば10nm〜200nmである。この緑色発光層13Rは、緑色光を発光する高分子発光材料または低分子発光材料あるいはその両方を含むものである。緑色発光層13Gにおいて用いられる高分子発光材料としては、上述の高分子発光材料G1として挙げたものと同様のものが挙げられる。例えばポリフルオレン系高分子誘導体、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体またはシジベンゾフラン誘導体が挙げられる。ポリマーとして架橋されていることが望ましいが、分子量5千以上のデンドリマーまたはそのような樹状構造を有する高分子材料であってもよい。また、緑色発光層13Gにおける高分子発光材料の発光波長は、側鎖のイリジウム(Ir)錯体の配位子を変更することで変えることができる。
【0058】
この緑色発光層13Gについても、上記赤色発光層13Rと同様、上述の式(3−1)〜(3−3)で表されるような低分子材料が含まれていてもよいが、G消光材としてのアミン系低分子材料については含まれていないことが望ましい。
【0059】
緑色発光層13Gの上下の他の層との界面付近(ここでは正孔輸送層12Aとの界面付近)には、シロキサン等を含む薄膜層13aが形成されると共に、赤色発光層13Rに含まれる低分子発光材料r1が付着している。これらの薄膜層13aおよび低分子発光材料r1は、後述する反転オフセット印刷の際に有機EL素子10Gの素子領域に形成されるもの(反転オフセット印刷の痕跡)である。
【0060】
(接続層14)
接続層14は、例えば真空蒸着法を用いて形成するため、低分子材料(特にモノマー)により構成されていることが好ましい。オリゴマーまたは高分子材料のような重合された分子は蒸着中分解が起こる虞があるためである。なお、接続層14では、分子量の異なる2種以上の低分子材料が混合して用いられていてもよいし、それらが積層されていてもよい。尚、この接続層14の厚みは1nm以上であることが望ましく、これにより青色発光層14Bの特性を向上させることができる。
【0061】
(青色発光層14B)
青色発光層14Bは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、青色光を発生するものである。本実施形態においては、この青色発光層14Bがアントラセン化合物をホスト材料として、青色もしくは緑色の蛍光性色素のゲスト材料がドーピングされており、青色もしくは緑色の発光光を発生する。ホスト材料としては、以下の一般式(5)に示すアントラセン誘導体をホスト材料として用いることが好ましい。
【0062】
【化10】
【0063】
但し、上記一般式(5)中において、R1〜R6はそれぞれ独立に、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のカルボニルエステル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルキル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルケニル基、炭素数20以下の置換あるいは無置換のアルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数30以下の置換あるいは無置換のシリル基,炭素数30以下の置換あるいは無置換のアリール基、炭素数30以下の置換あるいは無置換の複素環基、もしくは炭素数30以下の置換あるいは無置換のアミノ基を示す。
【0064】
アリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フルオレニル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、1−クリセニル基、6−クリセニル基、2−フルオランテニル基、3−フルオランテニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基等が挙げられる。
【0065】
複素環基としては、例えば、ヘテロ原子としてO、N、Sを含有する5員または6員環の芳香族複素環基、炭素数2〜20の縮合多環芳香複素環基が挙げられる。また、芳香族複素環基及び縮合多環芳香複素環基としては、例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、キノキサリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾチアゾール基が挙げられる。代表的なものとしては,例えば、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、などが挙げられる。
【0066】
アミノ基は、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アラルキルアミノ基等のいずれでもよい。これらは、総炭素数1〜6の脂肪族及び/又は1〜4環の芳香族炭素環を有することが好ましい。このような基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスビフェニリルアミノ基、ジナフチルアミノ基が挙げられる。
【0067】
尚、上記置換基の2種以上は縮合環を形成していても良く、さらに置換基を有していてもよい。
【0068】
青色発光層14Bに含まれる発光性ゲスト材料としては、発光効率が高い材料、例えば、低分子蛍光もしくは燐光色素、さらには金属錯体等の有機発光材料が用いられる。ここで、青色の発光性ゲスト材料とは、発光の波長範囲が約400nm〜490nmの範囲にピークを有する化合物を示す。このよう化合物として、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体、スチリルアミン誘導体、ビス(アジニル)メテンホウ素錯体などの有機物質が用いられる。なかでも、アミノナフタレン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノクリセン誘導体、アミノピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、ビス(アジニル)メテンホウ素錯体から選択されることが好ましい。具体的には、例えば、4,4’−ビス[2−{4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものが挙げられる。
【0069】
電子輸送層15Aは、赤色発光層13R,緑色発光層13G,青色発光層14Bへの電子輸送効率を高めるためのものであり、青色発光層14Bの全面に共通層として設けられている。電子輸送層15Aの材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、フラーレン、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq3 )、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、C60、アクリジン、スチルベン、1,10−フェナントロリンまたはそれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。
【0070】
電子注入層15Bは、電子注入効率を高めるためのものであり、電子輸送層15Aの全面に共通層として設けられている。電子注入層15Bの材料としては、例えばリチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(Li2O)や、セシウム(Cs)の複合酸化物である炭酸セシウム(Cs2CO3 )、さらにはこれらの酸化物及び複合酸化物の混合物を用いることができる。また、電子注入層15Bは、このような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、さらにはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属、さらにはこれらの金属の酸化物及び複合酸化物、フッ化物等を、単体でまたはこれらの金属および酸化物及び複合酸化物、フッ化の混合物や合金として安定性を高めて使用してもよい。
【0071】
上部電極16は、例えば、厚みが2nm以上15nm以下であり、金属導電膜により構成されている。具体的には、Al,Mg,CaまたはNaの合金が挙げられる。中でも、マグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)は、薄膜での導電性と吸収の小ささとを兼ね備えているので好ましい。Mg−Ag合金におけるマグネシウムと銀との比率は特に限定されないが、膜厚比でMg:Ag=20:1〜1:1の範囲であることが望ましい。また、上部電極16の材料は、AlとLiとの合金(Al−Li合金)でもよい。
【0072】
更に、上部電極16は、アルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体、フタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層でもよい。この場合には、さらに第3層としてMgAgのような光透過性を有する層を別途有していてもよい。なお、上部電極16は、有機EL素子10R,10G,10Bの共通電極として用いられる。
【0073】
尚、この上部電極16上に形成される保護層(図示せず)は、例えば厚みが2〜3μmであり、絶縁性材料または導電性材料のいずれにより構成されていてもよい。絶縁性材料としては、無機アモルファス性の絶縁性材料、例えばアモルファスシリコン(α−Si),アモルファス炭化シリコン(α−SiC),アモルファス窒化シリコン(α−Si1-xx)、アモルファスカーボン(α−C)などが好ましい。このような無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを構成しないため透水性が低く、良好な保護膜となる。また、封止用基板は、有機EL素子10R,10G,10Bで発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されており、この封止用基板に、例えば、カラーフィルタおよび遮光膜(いずれも図示せず)が設けられている。これにより、有機EL素子10R,10G,10Bで発生した各色光を取り出すと共に、外光の反射光等を吸収して、コントラストを改善することができる。
【0074】
この有機EL表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0075】
図4図5Bは、上記のような有機EL表示装置の製造方法を工程順に表したものである。まず、図示はしないが、上述した材料よりなる基板110の上に、駆動トランジスタTr1を含む画素駆動回路140を形成し、例えば感光性樹脂よりなる平坦化絶縁膜(図示せず)を設ける。この後、下部電極11を有機EL素子10R,10G,10Bの素子領域10r1,10g1,10b1の各々ごとに形成する。続いて、基板110の下部電極11を形成した側の表面を酸素プラズマ処理し、その表面に付着した有機物等の汚染物を除去して濡れ性を向上させる。
【0076】
次に、図4に示したように、下部電極11上に、正孔注入層12B(例えば、日産化学製エルソース、ND1501)を、例えばスピンコートにより塗布し、ホットプレート用いて、大気中にて220℃の温度で1時間加熱することにより、熱硬化させる。続いて、正孔輸送層12A(TFB)を、例えばスピンコートにより塗布し、ホットプレート用いて、窒素中にて180℃の温度で1時間加熱することにより、熱硬化させる。
【0077】
次に、正孔輸送層12A上に、反転オフセット印刷により、赤色発光層13Rおよび緑色発光層13Gをパターン形成する。赤色発光層13Rおよび緑色発光層13Gの形成順序は、特に限定されないが、本実施の形態では、1色目に赤色発光層13Rを形成し、2色目に緑色発光層13Gを形成する場合を例に挙げる。
【0078】
まず、図5Aに示したように、正孔輸送層12A上の素子領域10r1に、赤色発光層13R(高分子発光材料G1,低分子発光材料r1)を、反転オフセット印刷により、形成する。図6A図8Cに、反転オフセット印刷の具体的手順について模式的に示す。
【0079】
具体的には、シリコン(例えばフジクラゴム(STD700))よりなるブランケット60を用意し、このブランケット60の表面を膨潤させる。例えば、シロキサン等の正孔輸送性材料を含む溶液を、例えばスピンコート法により、ブランケット60上の全面にわたって塗布する。これにより、ブランケット60の表層が膨潤した状態となり、ブランケット60の表面を適度な湿度に保つことができ、後の転写工程において良好な膜形成が可能となる。続いて、図6Aに示したように、ブランケット60の全面にわたって、上述したRインク(例えば30重量%の低分子発光材料r1(BtpIr)を高分子発光材料G1に添加し、キシレンで溶解したもの)を滴下する。この後(例えば1分後)、図6Bに示したように、例えば3000rpm2秒回転させ、スピンコートした。
【0080】
次いで、ブランケット60上に赤色発光層13Rの印刷パターン層(印刷パターン層13r1)を形成する。具体的には、まず、図7Aに示したように、素子領域10r1に対応して凹部を有する凹版61と、ブランケット60のインクD1rの層とを向かい合わせて配置し、図7Bに示したように、凹版61をブランケット60上のインクD1rの層に押し付け、ローラー等で加圧する。この後、図7Cに示したように、ブランケット60を凹版61から剥離することにより、インクD1rの層のうちの不要部分(D1r')は、凹版61の凸部分に転写され、ブランケット60上から除去(オフ)される。これにより、ブランケット60上には、素子領域10r1に対応する赤色発光層13Rの印刷パターン13r1が形成される。尚、図中ではライン状パターンで示したが、TFT画素配列と矛盾なければパターンの形状はライン状に限定されるものでは無い。
【0081】
続いて、ブランケット60上の赤色発光層13Rの印刷パターン層13r1を基板110側へ転写する。具体的には、まず、図8Aに示したように、正孔注入層12Bおよび正孔輸送層12Aを形成済みの基板110と、ブランケット60とを向かい合わせて配置する。この際、詳細には、図8Aの右図に示したように、転写前のブランケット60の表面には、印刷パターン層13r1を除く領域に、凹版61によってオフしきれなかった残渣部Xrが生じる。この残渣部Xrは、例えば正孔輸送性材料(シロキサン等)と低分子発光材料r1とを含んでおり、印刷パターン層13r1と共に転写されることによって、他の素子領域(例えば、素子領域10g1)に転写されることとなる。
【0082】
この後、基板110と印刷パターン層13r1とをアライメントし、図8Bに示したように、基板110上に、ブランケット60の印刷パターン層13r1を押し付ける。次いで、ブランケット60を基板110から剥離することにより、基板110上に赤色発光層13Rがパターン形成される(図8C)。また、この際、図8Cには図示はしないが、ブランケット60上に形成された残渣部Xrも同時に基板110へ転写される。
【0083】
次に、図5Bに示したように、上記赤色発光層13Rの場合と同様にして、素子領域10g1に緑色発光層13Gを、反転オフセット印刷により形成する。尚、この際に用いるインクとしては、例えば、上述したトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(tris(2-phenylpyridine)iridium)をコアに有するデンドリマー型の高分子材料をキシレンで溶解したものを用いることができる。
【0084】
この後、赤色発光層13Rおよび緑色発光層13Gを転写形成した後の基板110を、例えば窒素雰囲気中130℃で30分間、ホットプレートを用いて加熱し、熱硬化する。
【0085】
次に、これらの赤色発光層13Rおよび緑色発光層13G上に、例えば真空蒸着法により、上述した材料等よりなる接続層14、青色発光層14B、電子輸送層15Aをそれぞれ成膜する。青色発光層14Bとしては、例えばADN(9,10−ジ(2-ナフチル)アントラセン)と青色ドーパントとを重量比で95:5の割合で共蒸着する。電子輸送層15Aとしては、例えばAlq3(8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)を真空蒸着法により、15nmの厚みで成膜する。電子注入層15Bとしては、例えばLiFを0.3nmの厚みで成膜する。
【0086】
次いで、電子注入層15B上に、上部電極16を、例えば真空蒸着法またはスパッタ法により成膜する。上部電極16としては、例えばアルミニウムを150nm蒸着する。この後、例えば蒸着法やCVD法により上述したような材料からなる保護層を形成し、次いで、カラーフィルタ等が設けられた封止用基板を、接着層を間にして保護層の上に貼り合わせる。以上により、図3に示した有機EL表示装置を形成することができる。
【0087】
本実施の形態の有機EL表示装置では、赤色発光層13Rが、ホスト材料として、赤色光を非発光である高分子材料(高分子発光材料G1)を含むと共に、ドーパントとして、赤色光を発光する低分子材料(低分子発光材料r1)を含む。これにより、有機EL素子10Rでは、いわゆるダウンコンバージョンにより、赤色の発光が得られる。
【0088】
一方、このような赤色発光層13Rを例えば反転オフセット印刷により形成した場合、ブランケット上の残渣に起因して、他画素への混色が問題となる。しかしながら、本実施の形態では、赤色発光層13Rを形成する際に用いるインクD1rにおいて、赤色光を発光する低分子材料r1よりも、緑色光を発光する高分子発光材料G1の濃度が高い。これにより、有機EL素子10Gでは、上記のような色素の残渣(残渣部Xr)が転写されてしまった場合にも、赤色発光性の高分子材料からなるインクを用いた場合に比べて、赤色の色素の付着量が低減され、赤色光の影響が緩和される。しかも、ダウンコンバージョンを利用することにより、高分子発光材料G1をホスト材料として用いることができ、インクD1rにおいて反転オフセット印刷に必要とされる粘度を保ちつつ、緑色発光層13Gへの影響を抑制することができる。
【0089】
従って、本実施の形態では、反転オフセット印刷により赤色発光層13Rを形成した場合にも、緑色発光層13Gにおける赤色の混色が抑制される。よって、有機EL表示装置において、互いに波長の異なる色光を発する複数の発光層をパターン形成する際に、混色を抑制して表示品位を向上させることが可能となる。
【0090】
(実施例1)
ここで、実施例1として、上述した有機EL素子10R,10Gを形成し、有機EL素子10Gのxy色度および発光強度を測定したところ、緑色発光層13Gにおける赤色光の混色は見られず、xy色度(0.31,0.64)効率30cd/Aを得ることができた。また、図9に示したように、波長600nmのスペクトル強度が0.015であり、スペクトルにサブピークは見られなかった。また、赤色発光層13Rでは、(0.60,0.39)14cd/Aの赤色を得ることができた。尚、赤色発光層13Rを形成する際に用いるインクとしては、高分子発光材料G1に対する濃度が30重量%の低分子発光材料r1(BtpIr)を、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(tris(2-phenylpyridine)iridium)をコアに有するデンドリマー型の高分子材料に添加し、キシレンで溶解したものを用いた。また、緑色発光層13Gを形成する際に用いるインクとしては、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(tris(2-phenylpyridine)iridium)をコアに有するデンドリマー型の高分子材料をキシレンで溶解したものを用いた。
【0091】
(比較例)
上記実施例1の比較例として、Rインクとして、高分子発光材料(RPP)をキシレンで溶解したものを用いて、反転オフセット印刷を行ったところ、緑色発光層における赤色の混色が見られ、xy色度(0.33,0.62)効率29cd/Aであった。また、図9に示したように、波長600nmにおけるスペクトル強度が0.02であり、サブピークが観察された。また、この赤色発光層では、(0.62,0.34)15cd/Aであった。
【0092】
(実施例2)
また、Rインクとして、上記実施例1と同様の高分子発光材料G1に、20重量%の赤色高分子燐光ドーパント(RPP)を添加し、キシレンで溶解したものを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、有機EL素子10Gのxy色度および発光強度を測定した。その結果、緑色発光層13Gにおける赤色光の混色は見られず、xy色度(0.31,0.64)効率30cd/Aを得ることができた。また、図10に示したように、波長600nmのスペクトル強度が0.015であり、スペクトルにサブピークはほぼ見られなかった。また、赤色発光層13Rでは、(0.60,0.39)13cd/Aの赤色を得ることができた。尚、図10には、実施例1および比較例の結果も示している。また、R低分子ドーパントを用いた上記実施例1では、R高分子ドーパントを用いた実施例2に比べ、波長600nm付近でのスペクトル強度が低減されていることがわかる。これは、RPPのようなバイポーラ型のR高分子材料よりも、R低分子材料が正孔輸送層12Aとの界面付近に存在する方が、赤色光に対する再結合率を低くできるためである。従って、実施例1では、実施例2よりも更に赤色光の混色を抑制することができる。
【0093】
(実施例3)
また、Rインクとして、上記実施例1と同様の高分子発光材料G1に、27重量%の赤色低分子燐光ドーパント(BtpIr)と、上記一般式(4−2)で表される化合物とを添加し、キシレンで溶解したものを用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして、有機EL素子10Gのxy色度および発光強度を測定した。その結果、緑色発光層13Gにおける赤色光の混色は見られず、xy色度(0.31,0.64)効率30cd/Aを得ることができた。また、波長600nmのスペクトル強度が0.015であり、スペクトルにサブピークは見られなかった。また、赤色発光層13Rでは、(0.61,0.37)14cd/Aの赤色を得ることができた。
【0094】
(実施例4)
他方、高分子発光材料G1と低分子発光材料r1とを含むRインクにおける好適なRドーパント濃度(低分子発光材料r1の高分子発光材料G1に対する混合比率)は、その用途によって異なる。例えば、スピンコート法により成膜する場合と、本実施の形態のように反転オフセット印刷により成膜する場合とでは、Rドーパント濃度の好適範囲が異なる。ここで、実施例4−1として、スピンコート用のRインク(便宜上、RインクI1とする)を調整し、このRインクI1を用いて成膜した赤色発光層におけるG光のピーク強度を測定した。この際、RインクI1のRドーパント濃度を、1%,2%,10%と変化させた。また、実施例4−2として、反転オフセット印刷用のRインク(便宜上、RインクI2)を調整し、このRインクI2を用いて成膜した赤色発光層におけるG光のピーク強度を測定した。この際、RインクI2のRドーパント濃度を10%,27%,30%と変化させた。それらの結果の一部を、図11に示す。尚、図中括弧内に記載した比率は、RインクI1,I2における高分子発光材料G1(実施例1と同様の高分子材料)と低分子発光材料r1(BtpIr)との各体積比(G1:r1)を示す。この結果、まず、スピンコート用のRインクI1を用いた実施例4−1では、Rドーパント濃度が1%のときピーク強度が0.06となり、Rドーパント濃度が2%のときピーク強度が0.03となった。これらの結果から、Rドーパント濃度が約3%以上であれば、G発光をほぼ0(ゼロ)まで抑制できることがわかった。実際、Rドーパント濃度10%のときには、ピーク強度は0であることが確認された。一方、反転オフセット印刷用のRインクI2を用いた実施例4−2では、Rドーパント濃度が10%であっても、ピーク強度が約0.03となったことから、G発光の影響を低減するためには、Rドーパント濃度が、その倍の20%以上であることが望ましいと言える。実際、図11には図示していないが、Rドーパント濃度が27%のときピーク強度が約0.01となり、Rドーパント濃度が30%のときピーク強度が0となることが確認された。以上のことから、形成手法によってRインクにおける好適なRドーパント濃度が異なり、反転オフセット印刷用途では、スピンコート用途よりもRドーパント濃度を高めることが望ましい。また、本実施の形態では、各色発光層を、主に反転オフセット印刷によって形成する場合を例示しているが、Rドーパント濃度を適切に設定することにより、他の手法、例えばスピンコート法等の塗布法により形成することも可能である。即ち、本実施の形態において説明したRインク(本開示における「インク」)は、反転オフセット印刷に限らず、他の成膜手法にも使用可能である。
【0095】
尚、上記第1の実施の形態では、赤色発光層13Rにおいて、緑色光を発光する高分子発光材料G1をホスト材料としたが、ダウンコンバージョンが生じる組み合わせであれば、これらに限定されるものではない。例えば、赤色発光層13Rが、高分子発光材料G1お代わりに、以下の一般式(6)で表される青色発光の高分子材料(PADOF)をホスト材料として含んでいてもよい。また、緑色発光層13Gが、ホスト材料として、一般式(6)で表される青色発光の高分子材料を含むと共に、ドーパントとして、以下の一般式(7)により表される緑色発光の低分子材料を含んでいてもよい。この場合にも、緑色発光層13Gを反転オフセット印刷により形成する場合に、緑色の色素が有機EL素子10Bの素子領域に付着することによる青色発光層への緑色光の混色を抑制することができる。更には、赤色発光層13Rの代わりに黄色発光層を設けた構成であってもよい。この黄色発光層は、例えば以下の一般式(8)で表される黄色発光の低分子材料、ビス(2−フェニルベンゾチオゾラト−N,C2)イリジウム(アセチルアセトネート)(Bis(2-phenylbenzothiozolato-N,C2)Iridium(acetylacetonate);Bt2Ir(acac))をドーパントとして含む。
【0096】
【化11】
【0097】
【化12】
【0098】
【化13】
【0099】
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態と同一の構成要素については同一符号を付してその説明は省略する。本開示の第2の実施の形態に係る有機EL表示装置の構成は図示しないが、第1の実施の形態と同様に、例えば基板110の上に複数の有機EL素子10R,10G,10Bがマトリクス状に配置された表示領域が形成されている。表示領域内には画素駆動回路が設けられている。図12は第2の実施の形態における有機EL装置の断面構成を表したものである。上記第1の実施の形態では、赤色発光層13Rにおいて、赤色光を非発光である高分子材料として、緑色光を発光する高分子発光材料G1を例示したが、赤色発光層13Rに用いられるホスト材料としての高分子材料は、いわゆる増粘剤であってもよい。増粘材としては、例えば以下の一般式(9−1)〜(9−3)により表される高分子材料が挙げられる。このように、赤色発光層13R(あるいは緑色発光層13G)に用いられる高分子材料は、燐光性を有していないものであってもよい。
【0100】
【化14】
【0101】
【化15】
【0102】
【化16】
【0103】
<適用例>
以下、上記実施の形態で説明した有機EL表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態の有機EL表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0104】
図13Aおよび図13Bは、スマートフォンの外観を表している。このスマートフォンは、例えば、表示部110(有機EL表示装置)および非表示部(筐体)120と、操作部130とを備えている。操作部130は、図13Aに示したように非表示部120の前面に設けられていてもよいし、図13Bに示したように上面に設けられていてもよい。
【0105】
図14は、テレビジョン装置の外観構成を表している。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル210およびフィルターガラス220を含む映像表示画面部200(表示装置1)を備えている。
【0106】
図15Aおよび図15Bは、デジタルスチルカメラの外観構成を表しており、それぞれ前面および後面を示している。このデジタルスチルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部310と、表示部320(有機EL表示装置)と、メニュースイッチ330と、シャッターボタン340とを備えている。
【0107】
図16は、ノート型のパーソナルコンピュータの外観構成を表している。このパーソナルコンピュータは、例えば、本体410と、文字等の入力操作用のキーボード420と、画像を表示する表示部430(有機EL表示装置)とを備えている。
【0108】
図17は、ビデオカメラの外観構成を表している。このビデオカメラは、例えば、本体部510と、その本体部510の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ520と、撮影時のスタート/ストップスイッチ530と、表示部540(有機EL表示装置)とを備えている。
【0109】
図18Aおよび図18Bは、携帯電話機の外観構成を表している。この携帯電話機は、例えば、上側筐体610と下側筐体620とが連結部(ヒンジ部)630により連結されたものであり、ディスプレイ640(表示装置1)と、サブディスプレイ650と、ピクチャーライト660と、カメラ670とを備えている。
【0110】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、本開示のインクとして、反転オフセット印刷において使用されるインクを例に挙げて説明したが、これに限定されず、ある色の画素(上記例ではG画素)に他の色のインク(上記例ではRインク)が付着し得る、他の様々な手法(塗布法または印刷法)に適用可能である。同様に、本開示の有機EL表示装置、有機EL表示装置の製造方法および電子機器においても、第1発光層は反転オフセット印刷により形成されたものに限定されるものではない。
【0111】
また、上記実施の形態および実施例において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
【0112】
更に、上記実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本開示はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。更にまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
【0113】
尚、本開示は、以下のような構成であってもよい。
(1)
第1の色光を発光する第1発光層を有する第1有機EL素子と、前記第1の色光よりも短波長の第2の色光を発光する第2発光層を有する第2有機EL素子とを備え、
前記第1発光層は、ホスト材料として前記第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料を含むと共に、ドーパントとして前記第1の色光を発光する低分子材料または高分子材料を含む
有機EL表示装置。
(2)
前記高分子材料は、前記第2の色光を発光する材料である
上記(1)に記載の有機EL表示装置。
(3)
前記第1発光層は、前記第1の色光として赤色光を発光する赤色発光層であり、
前記第2発光層は、前記第2の色光として緑色光を発光する緑色発光層である
上記(2)に記載の有機EL表示装置。
(4)
青色光を発光する青色発光層を有する第3有機EL素子を更に備え、
前記赤色発光層および前記緑色発光層は素子毎に設けられ、
前記青色発光層は、前記第1有機EL素子、前記第2有機EL素子および前記第3有機EL素子に共通の層として設けられている
上記(3)に記載の有機EL表示装置。
(5)
前記赤色発光層と前記青色発光層との間、および前記緑色発光層と前記青色発光層との間には、正孔輸送性を有する接続層が設けられている
上記(4)に記載の有機EL表示装置。
(6)
前記第1発光層は、前記第1の色光として赤色光を発光する赤色発光層であり、
前記第2発光層は、前記第2の色光として青色光を発光する青色発光層である
上記(2)に記載の有機EL表示装置。
(7)
前記第1発光層は、前記第1の色光として緑色光を発光する緑色発光層であり、
前記第2発光層は、前記第2の色光として青色光を発光する青色発光層である
上記(2)に記載の有機EL表示装置。
(8)
前記第1発光層は、前記第1の色光として黄色光を発光する黄色発光層である
上記(2)に記載の有機EL表示装置。
(9)
前記高分子材料は、デンドリマーまたはポリマーである
上記(1)〜(8)のいずれかに記載の有機EL表示装置。
(10)
前記第2発光層は、他の層との上下いずれかの界面付近に、前記第1発光層のドーパントである前記低分子材料を含む
上記(1)〜(9)のいずれかに記載の有機EL表示装置。
(11)
前記高分子材料は増粘剤である
上記(1)〜(10)のいずれかに記載の有機EL表示装置。
(12)
第1の色光を発光する第1発光層を有する第1有機EL素子と、前記第1の色光よりも短波長の第2の色光を発光する第2発光層を有する第2有機EL素子とを備えた有機EL表示装置の製造方法であって、
前記第1発光層を形成する際に、ホスト材料として前記第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料を、ドーパントとして前記第1の色光を発光する低分子材料または高分子材料をそれぞれ用いる
有機EL表示装置の製造方法。
(13)
前記第1発光層および前記第2発光層を、反転オフセット印刷により形成する
上記(12)に記載の有機EL表示装置の製造方法。
(14)
前記高分子材料は、前記第2の色光を発光する材料である
上記(13)に記載の有機EL表示装置の製造方法。
(15)
前記第1発光層は、前記第1の色光として赤色光を発光する赤色発光層であり、
前記第2発光層は、前記第2の色光として緑色光を発光する緑色発光層である
上記(14)に記載の有機EL表示装置の製造方法。
(16)
前記赤色発光層および前記緑色発光層とを形成した後、青色光を発光する青色発光層を蒸着法により形成する工程を更に含む
上記(15)に記載の有機EL表示装置の製造方法。
(17)
前記高分子材料は増粘剤である
上記(12)〜(16)のいずれかに記載の有機EL表示装置の製造方法。
(18)
第1の色光を発光する第1発光層を有する第1有機EL素子と、前記第1の色光よりも短波長の第2の色光を発光する第2発光層を有する第2有機EL素子とを備えた有機EL表示装置の、前記第1発光層を形成する際に用いられ、
ホスト材料として前記第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料を含むと共に、ドーパントとして前記第1の色光を発光する低分子材料または高分子材料を含む
インク。
(19)
第1の色光を発光する第1発光層を有する第1有機EL素子と、前記第1の色光よりも短波長の第2の色光を発光する第2発光層を有する第2有機EL素子とを備え、
前記第1発光層は、ホスト材料として前記第1の色光を非発光または非主発光である高分子材料を含むと共に、ドーパントとして前記第1の色光を発光する低分子材料または高分子材料を含む
有機EL表示装置を備えた電子機器。
【0114】
本出願は、日本国特許庁において2012年10月11日に出願された日本特許出願番号第2012−225750号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0115】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18A
図18B