(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205594
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】浮遊生物の飼育用水槽
(51)【国際特許分類】
A01K 63/00 20170101AFI20170925BHJP
A01K 63/04 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
A01K63/00 A
A01K63/04 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-84755(P2013-84755)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-204695(P2014-204695A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】502065240
【氏名又は名称】株式会社プラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】間下 泰夫
【審査官】
坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−57383(JP,A)
【文献】
実公昭49−45596(JP,Y1)
【文献】
特開平2−186928(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0227673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 63/00 − 63/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の水槽本体を仕切板で仕切って前面側の水槽部と背面側の濾過部を形成し、前記水槽部内に断面が略円形の水槽を設けた浮遊生物の飼育用水槽であって、
前記水槽部内には、その前面側と背面側とに水槽形成用の合成樹脂製のパネル部材の両側縁をガイドさせて略円形に弾性変形させるガイドレールと、パネル部材の両端部を係止させる第1および第2の係止部とが設けられていて、前記した断面が略円形の水槽は、ガイドレールに両側縁をガイドさせてその両端部を第1および第2の係止部に係止させたパネル部材により形成されたものであることを特徴とする浮遊生物の飼育用水槽。
【請求項2】
第1の係止部の上方部には、濾過部から循環される濾過水の供給パイプと濾過水の分散板が設置されている請求項1に記載の浮遊生物の飼育用水槽。
【請求項3】
パネル部材の供給パイプの下方部に位置する部分には、吸込み孔が設けられている請求項2に記載の浮遊生物の飼育用水槽。
【請求項4】
水槽本体が、鑑賞用の窓部を形成したカバー体で覆われている請求項1〜3のいずれかに記載の浮遊生物の飼育用水槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラゲ等の浮遊生物の飼育用水槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、クラゲ類やある種の甲殻類、魚類等の浮遊生物は、遊泳力が弱く、海水の流れに漂って浮遊する生物である。そのため、浮遊生物は水槽などの人工的な環境で長期間飼育するには、浮遊生物の生活環境に適した水流を作ってやる必要があり、一般家庭で飼育することは難しいと言われていた。
【0003】
そこで、浮遊生物の浮遊に適した緩い水流を作り出せる家庭用水槽として、例えば、特許文献1〜特許文献3に示されるように、水槽の側底面や背面を曲面や多角面にすることで浮遊生物に適した水流を作り出すように工夫した水槽が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜特許文献3に示されるような曲面状や多角面状の側底面等は、例えば、アクリル樹脂等からなる筒状パイプをいったん生産し、その後、切断加工を加えて作ったり、板状体を生産後、曲げ加工や貼り合わせ加工等を施して作ったりするため、製造工程が複雑で水槽の価格が非常に高くなるというのが現実であった。そして、これが一般家庭への普及を妨げる大きな要因となっていた。
また、前記のように製作された水槽は曲面状の側底面を水槽本体に固定した一体型の構造であり、手の届きにくい箇所があって清掃作業等がやりにくいという問題や、部分的に破損等が生じた場合も水槽本体全体を買い換える必要があり、費用負担が大きいという問題があった。更には、一体型の構造で排水孔の位置や形状が一定のために決まったパターンの水流しか作り出すことができず、水流調整を行って様々な浮遊生物を飼育することはできないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−234250号公報
【特許文献2】特開平11−46622号公報
【特許文献3】特開2010−57383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決して、浮遊生物の浮遊に適した水流を作り出せる水槽を安価に生産することができ、また、従来の一体式構造と異なり着脱式のパネル部材を利用することにより修理や清掃作業等のメンテナンスを簡単に行うことができ、更には、水流調整が可能で様々な浮遊生物を飼育することができる浮遊生物の飼育用水槽を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の浮遊生物の飼育用水槽は、箱状の水槽本体を仕切板で仕切って前面側の水槽部と背面側の濾過部を形成し、前記水槽部内に断面が略円形の水槽を設けた浮遊生物の飼育用水槽であって、
前記水槽
部内には、その前面側と背面側とに水槽形成用の合成樹脂製のパネル部材の両側縁をガイドさせて略円形に弾性変形させるガイドレールと、パネル部材の両端部を係止させる第1および第2の係止部とが設けられていて、前記した断面が略円形の水槽は、ガイドレールに両側縁をガイドさせてその両端部を第1および第2の係止部に係止させたパネル部材により形成されたものであることを特徴とするものである。
【0008】
【0009】
また、第1の係止部の上方部には、濾過部から循環される濾過水の供給パイプと濾過水の分散板が設置されているものが好ましく、これを
請求項2に係る発明とする。
【0010】
また、パネル部材の供給パイプの下方部に位置する部分には、吸込み孔が設けられているものが好ましく、これを
請求項3に係る発明とする。
【0011】
更に、水槽本体が鑑賞用の窓部を形成したカバー体で覆われているものとすることができ、これを
請求項4に係る発明とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、箱状の水槽本体を仕切板で仕切って前面側の水槽部と背面側の濾過部を形成し、前記水槽部内に断面が略円形の水槽を設けた浮遊生物の飼育用水槽であって、
前記水槽
部内には、その前面側と背面側とに水槽形成用の合成樹脂製のパネル部材の両側縁をガイドさせて略円形に弾性変形させるガイドレールと、パネル部材の両端部を係止させる第1および第2の係止部とが設けられていて、前記した断面が略円形の水槽は、ガイドレールに両側縁をガイドさせてその両端部を第1および第2の係止部に係止させたパネル部材により形成されたものとしたので、従来の一体式構造と異なり着脱式のパネル部材を利用することにより、簡単にパネル部材の着脱を行うことができ修理や清掃作業等のメンテナンスを簡単に行うことが可能となる。
【0013】
また、前記パネル部材を所定位置に簡単かつ確実にセットすることができ、また取り外しも容易に行うことができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、第1の係止部の上方部には、濾過部から循環される濾過水の供給パイプと濾過水の分散板が設置されているものとしたので、水槽に向けて濾過水を均等かつ緩やかに供給することができ、浮遊生物の浮遊に適した水流を容易に作り出すことができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、パネル部材の供給パイプの下方部に位置する部分には、吸込み孔が設けられているものとしたので、吸込み孔における急激な吸引作用が緩和され、浮遊生物が吸込み孔に吸引されることを防止することができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、水槽本体が、鑑賞用の窓部を形成したカバー体で覆われているものとしたので、優れた意匠効果を奏し、インテリアとしてのデザイン効果を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】パネル部材を差し込む工程を示す正面図である。
【
図7】カバー体との組合せを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1はクラゲの飼育用水槽の一例を示す斜視図、
図2は正面図、
図3は平面図である。図において、1は透明性の高いアクリル樹脂やガラス等からなり、上部を開口した箱状の水槽本体、2は仕切板で、この仕切板2により前面側の水槽部3と背面側の濾過部4が形成されている。なお、上部の開口には蓋体や照明器具(図示せず)が載置される。
【0019】
前記水槽部3内には、断面が略円形の水槽5が設けられており、一方、前記濾過部4には一般的な縦型の濾過装置11がセットされている。また、前記仕切板2の右下端部には、水槽部3と濾過部4を連通させる連通孔2aが成形されている。この連通孔2aを通じて濾過装置11へ導入された水は、濾過処理後は配水管11a、流量調整弁11bを経て、後述する供給パイプ9から再び水槽部3内に循環供給される構造となっている。
【0020】
前記の断面が略円形の水槽5は、従来は、アクリル樹脂製の筒状パイプを切断加工したり、板状体を曲げ加工や貼り合わせ加工等して作ったものが普通であり、しかも、その円形の水槽は水槽本体1に接着剤等により固定された構造のものであった。
これに対し、本発明では、断面が略円形の水槽5は、厚みが0.5〜2.5mm程度と薄くて弾力性のある合成樹脂からなり、幅が10〜20cm、長さが60〜100cm程度の帯状で着脱式のパネル部材6を水槽部3内に差し込み、円弧状曲面に弾性変形させて形成した構造となっている。なお、パネル部材6の厚み、幅、長さ等は形成する水槽5の大きさに応じて設計するものであり、上記の範囲に限定されないことは勿論である。
【0021】
次に、前記パネル部材6の固定について説明する。
図示のものでは、水槽本体の内側、即ち、水槽本体1の前面の内側と、仕切板2の水槽側には一対の円弧状のガイドレール7、7が設けられており、
図4に示すように、パネル部材6を差し込んでいくとガイドレール7、7に沿って円弧状に弾性変形され、自動的に円弧状曲面を形成する構造となっている。
図5に示されるように、パネル部材6の差込み先端部6aは、水槽本体1の側面上部の内側に設けた鉤状の第1の係止部8aに係止され固定され、一方、差込み後端部6bは、
図6に示されるように、他方の側面上部の近傍(図示のものでは、ガイドレール7の始点)に設けた第2の係止部8bに係止されて固定される。
このような構造により、パネル部材6をガイドレール7、7に沿って差し込むだけで、誰でも簡単に断面が略円形の水槽5を形成することができ、しかも、常に同位置に同形状の水槽5を形成できることとなる。
【0022】
また、前記第1の係止部8aの上方部には、濾過部4から循環される濾過水の供給パイプ9と濾過水の分散板10が設置されており、水槽5に向けて濾過水を均等かつ緩やかに供給することができるように構成されている。なお、この分散板10の傾斜角度については、浮遊生物の浮遊に適した水流を作り出すように、垂直方向に対し10から45度の範囲で傾斜させてある。
【0023】
前記パネル部材6には、水槽内の水を槽外へ排出するための吸込み孔6cが多数個設けられている。図示のものでは、この吸込み孔6cは、供給パイプ9の下方部に位置する部分に設けられており、吸込み孔6cにおける急激な吸引作用を緩和して、浮遊生物が吸込み孔6cに吸引されることを防止するように構成されている。
なお、前記吸込み孔6cの大きさや個数、あるいは設置位置については、浮遊生物の種類に対応させて最適に設計したものを選択することができる。
【0024】
また、
図7に示すように、水槽本体1を鑑賞用の窓部21を形成したカバー体20で覆うこともできる。カバー体20は任意の色に着色されており、この場合は、背面部にある濾過装置等が隠蔽さて優れた意匠効果を奏し、また、窓部21から水槽内を覗くことであたかもミニ水族館のような感覚を与え、インテリアとしてのデザイン効果を一層向上させることができる。
【0025】
以上の構造からなる本発明の浮遊生物の飼育用水槽では、パネル部材6を差し込むだけで自動的に仕切板2に沿って円弧状に弾性変形し、円弧状曲面の水槽5を完成させることができる。従って、従来の一体型の水槽に比べると、簡単で安価に生産することが可能となる。また、パネル部材6の着脱が自在であるため、修理や清掃作業等のメンテナンスを簡単に行うことが可能となる。更には、パネル部材6に設けた吸込み孔6cの大きさ、個数、設置位置等を任意に設計されたものに交換したり、濾過装置11の流量調整弁11bの操作によって水流調整を簡単に行うことができるので、様々な浮遊生物の生態系に合わせて水の流れを調整でき、浮遊生物を最適環境で飼育することができる等、種々の利点を有する。
【符号の説明】
【0026】
1
水槽本体
2 仕切板
2a 連通孔
3 水槽部
4 濾過部
5 水槽
6 パネル部材
6a 差込み先端部
6b 差込み後端部
6c 吸込み孔
7 ガイドレール
8a 第1の係止部
8b 第2の係止部
9 供給パイプ
10 分散板
11 濾過装置
11a 配水管
11b 流量調整弁
20 カバー体
21 窓部