(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205606
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】バッテリーパック充電手順選択システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20170925BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20170925BHJP
B60L 11/18 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
H02J7/04 C
H02J7/00 P
B60L11/18 C
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-199286(P2015-199286)
(22)【出願日】2015年10月7日
(65)【公開番号】特開2016-101084(P2016-101084A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2015年10月7日
(31)【優先権主張番号】14/553,305
(32)【優先日】2014年11月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/553,506
(32)【優先日】2014年11月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515301041
【氏名又は名称】アティエヴァ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アルバート、リウ
【審査官】
坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−090360(JP,A)
【文献】
特開2014−207814(JP,A)
【文献】
特開2009−137456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00− 3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
H02J 7/00− 7/12
7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予定出発時間および予定移動距離を含む、ユーザが決定した移動情報のセットを受け入れるユーザインタフェースと、
電気自動車内に取り付けられ、前記電気自動車の電気動力伝達装置に結合されたバッテリーパックと、
前記電気自動車の前記バッテリーパックに結合された充電システムであって、前記充電システムは、前記バッテリーパックを特定の充電速度を用いて特定の充電レベルに充電し、前記特定の充電レベルは、複数の充電レベルの範囲にわたって選択可能であり、前記特定の充電速度は、複数の充電速度の範囲にわたって選択可能である、充電システムと、
前記充電システムおよび前記ユーザインタフェースに結合されたシステムコントローラとを備え、
前記ユーザインタフェースは、当該ユーザインタフェースにより前記ユーザが決定した移動情報が受け入れられる場合にユーザ定義の第1の安全マージンおよびユーザ定義の第2の安全マージンを受け入れ、
前記システムコントローラは、変更出発時間を規定する目的で前記第1の安全マージンを前記予定出発時間に加え、変更移動距離を規定する目的で前記第2の安全マージンを前記予定移動距離に加え、
前記システムコントローラは、前記バッテリーパックの最適充電レベルを決定し、かつ前記充電システムの前記特定の充電レベルを前記最適充電レベルに設定し、
前記システムコントローラは、前記バッテリーパックの最適充電速度を決定し、かつ前記充電システムの前記特定の充電速度を前記最適充電速度に設定し、
前記最適充電レベルは、前記バッテリーパックのバッテリー寿命特性を最大にするとともに、前記電気自動車の前記電気動力伝達装置にエネルギーを供給して、前記変更移動距離を移動するのに十分であり、
前記最適充電速度は、前記バッテリーパックの前記バッテリー寿命特性を最大にするとともに、前記変更出発時間の前に、前記最適充電レベルまでの前記バッテリーパックの充電を完了するのに十分である、バッテリーパック充電システム。
【請求項2】
前記ユーザインタフェースは、(i)内蔵(on−board)の車載インタフェース、(ii)前記電気自動車内に取り付けられた通信ポートを介して、前記システムコントローラに結合された第1のリモートデバイス、および(iii)無線通信リンクを介して、前記システムコントローラに結合された第2のリモートデバイスのうち少なくとも1つを含み、
前記第1のリモートデバイスおよび前記第2のリモートデバイスは、携帯電話、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント、コンピュータシステム、およびネットワークベースのコンピューティングシステムを含む集合から選択される、請求項1に記載のバッテリーパック充電システム。
【請求項3】
前記システムコントローラは、リモートシステムが、前記電気自動車内に取り付けられた通信ポートを介して前記システムコントローラに結合されるか、または通信リンクを介して前記システムコントローラに無線で結合されるときに、前記リモートシステムから移動日程を取得し、
前記システムコントローラは、前記移動日程から前記予定移動距離を決定し、
前記リモートシステムは、携帯電話、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント、コンピュータシステム、およびネットワークベースのコンピューティングシステムを含む集合から選択される、請求項1または2に記載のバッテリーパック充電システム。
【請求項4】
前記バッテリーパックおよび前記システムコントローラに結合された少なくとも1つのセンサであって、前記システムコントローラは、前記少なくとも1つのセンサで前記バッテリーパックのバッテリーパック特性のセットを取得する、少なくとも1つのセンサと、
前記システムコントローラに結合されたメモリであって、前記システムコントローラは前記バッテリーパック特性のセットを前記メモリに格納する、メモリと、を更に備え、
前記システムコントローラは、(i)前記バッテリーパックの前記最適充電レベルを、前記バッテリー寿命特性と、前記バッテリーパック特性のセットと、前記変更移動距離とに基づいて決定すること、および(ii)前記最適充電速度を、前記バッテリー寿命特性と、前記バッテリーパック特性のセットと、前記変更出発時間とに基づいて決定すること、の少なくとも1つを行う請求項1から3の何れか一項に記載のバッテリーパック充電システム。
【請求項5】
前記電気自動車および前記システムコントローラに結合された少なくとも1つのセンサを更に備え、
前記システムコントローラは、前記少なくとも1つのセンサで複数の運転者行動エピソードを収集して、前記複数の運転者行動エピソードをメモリに格納し、
前記システムコントローラは、前記バッテリーパックの前記最適充電レベルを、前記バッテリー寿命特性と、前記変更移動距離と、前記複数の運転者行動エピソードとに基づいて決定する、請求項1から3の何れか一項に記載のバッテリーパック充電システム。
【請求項6】
前記システムコントローラに結合された、少なくとも1つの周囲環境センサを更に備え、
前記システムコントローラは、前記少なくとも1つの周囲環境センサで周囲環境をモニタし、
前記システムコントローラは、前記バッテリーパックの前記最適充電レベルを、前記バッテリー寿命特性と、前記変更移動距離と、前記周囲環境とに基づいて決定する、請求項1から3の何れか一項に記載のバッテリーパック充電システム。
【請求項7】
前記システムコントローラは、前記ユーザインタフェースを介して確認要求を発行し、
前記システムコントローラは、前記確認要求に対する肯定応答が、前記ユーザインタフェースを介して受信されると、前記バッテリーパックを前記特定の充電レベルに、前記特定の充電速度を用いて自動的に充電し、
前記システムコントローラは、前記確認要求に対する否定応答が、前記ユーザインタフェースを介して受信されると、前記バッテリーパックを前記特定の充電レベルに、前記特定の充電速度を用いて充電しない、請求項1から6の何れか一項に記載のバッテリーパック充電システム。
【請求項8】
電気自動車の電気動力伝達装置に結合されたバッテリーパックの充電パラメータのセットを最適化する方法であって、
ユーザが決定した移動情報のセットを受け入れる段階であって、前記ユーザが決定した移動情報のセットは、予定出発時間および予定移動距離を含み、前記ユーザが決定した移動情報のセットは、前記電気自動車のシステムコントローラによって受け入れられる段階と、
前記システムコントローラにより前記ユーザが決定した移動情報が受け入れられる場合に前記システムコントローラによってユーザから第1および第2の安全マージンを含む安全マージンのセットを受け入れる段階と、
変更出発時間を規定する目的で、前記システムコントローラによって前記第1の安全マージンを前記予定出発時間に加える段階と、
変更移動距離を規定する目的で、前記システムコントローラによって前記第2の安全マージンを前記予定移動距離に加える段階と、
前記バッテリーパックの最適充電レベルを決定する段階であって、前記最適充電レベルは、前記バッテリーパックのバッテリー寿命特性を最大にするとともに、前記電気自動車の前記電気動力伝達装置にエネルギーを供給して、前記変更移動距離を移動するのに十分であり、前記最適充電レベルを決定する前記段階は、前記システムコントローラによって実行される段階と、
前記バッテリーパックの最適充電速度を決定する段階であって、前記最適充電速度は、前記バッテリーパックの前記バッテリー寿命特性を最大にするとともに、前記変更出発時間の前に、前記バッテリーパックの前記最適充電レベルまでの充電を完了するのに十分であり、前記最適充電速度を決定する前記段階は、前記システムコントローラによって実行される段階と、
前記電気自動車の前記バッテリーパックを前記最適充電レベルに充電する段階であって、前記充電する段階は、前記最適充電速度において実行される段階と、を備える方法。
【請求項9】
前記予定移動距離は、ユーザの日程に対応する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記バッテリーパックの前記最適充電レベルを決定する前記段階は、バッテリーパック特性のセットと、前記変更移動距離と、前記バッテリー寿命特性とに基づいている、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記バッテリーパックの性能特性のセットを特定する目的で、前記システムコントローラによって実行される、前記バッテリーパックをモニタする段階と、
前記バッテリーパックの前記性能特性のセットを記録する段階と、
バッテリーパック特性のセットを決定する目的で、前記性能特性のセットを考慮して、バッテリーパック特性の基本水準セットを変更する段階と、を更に備え、
前記システムコントローラは、前記バッテリーパック特性のセットを決定する目的で、前記バッテリーパック特性の基本水準セットを変更する前記段階を実行する、請求項8から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記電気自動車のユーザの運転スタイルを特定する段階を更に備え、
前記バッテリーパックの前記最適充電レベルを決定する前記段階は、バッテリーパック特性のセットと、前記運転スタイルと、前記変更移動距離と、前記バッテリー寿命特性とに基づいている、請求項8から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
周辺環境条件のセットを特定する段階を更に備え、
前記バッテリーパックの前記最適充電レベルを決定する前記段階は、バッテリーパック特性のセットと、前記周辺環境条件のセットと、前記変更移動距離と、前記バッテリー寿命特性とに基づいている、請求項8から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記システムコントローラによって決定された前記最適充電レベルは、前記電気自動車の前記電気動力伝達装置にエネルギーを供給して、前記変更移動距離を移動し、かつ次の充電サイクルまで少なくとも最低限の充電状態(SOC)を維持するのに十分である、請求項8から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記バッテリーパックを充電する前記段階を実行する前に、確認要求を発行する段階を更に備え、
前記システムコントローラは、前記確認要求に対する肯定応答が受信されると、前記バッテリーパックを充電する前記段階を自動的に実行し、
前記システムコントローラは、前記確認要求に対する否定応答が受信されると、前記バッテリーパックを前記充電する段階を実行しない、請求項8から14の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に電気自動車に関し、より具体的にはバッテリー寿命を最適化するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶えず上昇する燃料価格と地球温暖化の悲惨な結果の両方に駆り立てられたカスタマーの要求に応えて、自動車業界は超低排ガス、高効率の自動車の必要性を徐々に受け入れ始めている。業界内には、より効率的な内燃エンジンを設計してこれらの目的を達成しようと試みるところもあれば、ハイブリッドや全電気式の動力伝達装置を車両のラインアップに組み込もうとしているところもある。しかしながら、カスタマーの期待を満たすためには、自動車業界は、より環境にやさしい動力伝達装置を実現するだけでなく、妥当なレベルの性能、航続可能距離(range)、信頼性、コストを維持しながら、それを実現しなければならない。
【0003】
低排ガス、高効率の自動車を実現する最も一般的なアプローチは、内燃エンジンが1または複数の電気モータと組み合わされたハイブリッド動力伝達装置を用いることによる。一般に、ハイブリッド動力伝達装置には、並列ハイブリッド、直列並列ハイブリッド、および直列ハイブリッドの3つのタイプがある。並列ハイブリッド動力伝達装置において、車両を推進するのに必要とされる動力は、内燃エンジンまたは電気モータによって、個々に提供されるか、一緒に提供されるか、どちらか一方であり得る。直列並列ハイブリッド動力伝達装置において、推進力は、遊星ギアセットなどのパワースプリッタを用いて、内燃エンジンおよび電気モータの両方によって提供される。直列ハイブリッド動力伝達装置において、推進力は電気モータによって供給されるだけであり、発電機に結合された内燃エンジンは、必要に応じてバッテリーを充電するのに用いられるだけである。
【0004】
ハイブリッド車は、改善した燃費効率とより低い自動車排ガスを提供するが、内燃エンジンが含まれることに起因して、そのような動力源固有の限界の多くに依然として悩まされている。例えば、従来の車両に比べてレベルが低下しているとはいえ、車両を運転する間にも依然として有害な汚染物質を排出する。加えて、内燃エンジンおよびバッテリーパックを伴った電気モータの両方を含むことに起因して、ハイブリッド車の動力伝達装置は、一般的にはるかに複雑であり、結果としてコストと重量が増すことになる。従って、いくつかの車両製造業者は、1つの電気モータまたは複数の電気モータを利用するだけの車両を設計し、それにより、動力伝達装置の複雑性を大幅に減らしながら、1つの汚染源を除去している。
【0005】
全電気式自動車に用いられる電気動力伝達装置は、信頼性が高いことがわかっているが、一般的な電気自動車の限定された航続距離(range)に関連して多くの人々が感じる懸念は、特にそのような自動車の性能および信頼性を考えれば、懸念がなければ予想されるだろう自動車販売台数より少ない販売台数につながっている。航続可能距離(range)の懸念は、比較的複雑な、バッテリー寿命と充電速度との間の関係(
図1に示される)、およびバッテリー寿命と保管中に維持される充電レベルとの間の関係(
図2に示される)によって更に悪化している。一般的な自動車の所有者/購入者はこうした関係を聞いたことがあるかもしれないが、十分に理解するには至っていない。充電速度および充電状態(SOC)がバッテリー寿命にもたらす影響を十分に理解していない結果として、車両が運転者に充電パラメータの設定を許容していても、一般的な自動車所有者は、これらのパラメータを最適化するのが難しいと感じる。従って、必要なものは、充電パラメータを最適化する処理を簡略化するシステムである。それにより、バッテリー寿命を最大化するとともに、なお運転者の必要と期待を満たすべく、必要なときに十分なレベルに自動車のバッテリーが充電されていることを保証する。本発明は、そのようなシステムを提供する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、(i)予定出発時間および予定移動距離を含む、ユーザが決定した移動情報のセットを受け入れるように構成されたユーザインタフェースと、(ii)電気自動車内に取り付けられ、電気自動車の電気動力伝達装置に結合されたバッテリーパックと、(iii)電気自動車のバッテリーパックに結合され、複数の充電速度の範囲にわたって選択可能な特定の充電速度を用いて、複数の充電レベルの範囲にわたって選択可能な特定の充電レベルに、バッテリーパックを充電するように構成された充電システムと、(iv)充電システムおよびユーザインタフェースに結合され、(a)バッテリーパックのバッテリー寿命特性を最大化するとともに、車両の電気動力伝達装置にエネルギーを供給して予定移動距離を移動するのに十分である、バッテリーパックの最適充電レベルを決定し、充電システムの特定の充電レベルを最適充電レベルに設定するよう構成され、かつ(b)バッテリーパックのバッテリー寿命特性を最大化するとともに、予定出発時間の前に、最適充電レベルまでのバッテリーパックの充電を完了するのに十分である、バッテリーパックの最適充電速度を決定し、充電システムの特定の充電速度を最適充電速度に設定するように構成されたシステムコントローラと、を備えるバッテリーパック充電システムを提供する。ユーザインタフェースは、EV内に取り付けられ得る(すなわち、内蔵(on−board)、車載インタフェース)、および/または、ユーザインタフェースは、車載通信ポートを介してシステムコントローラに結合するリモートデバイス(例えば、携帯電話、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント、コンピュータシステムなど)を含み得る、および/または、ユーザインタフェースは、無線通信リンクを介してシステムコントローラに結合するリモートデバイス(例えば、携帯電話、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント、コンピュータシステムなど)を含み得る。
【0007】
一態様において、システムコントローラは、変更出発時間を規定すべく第1の安全マージンを予定出発時間に加え、変更移動距離を規定すべく第2安全マージンを予定移動距離に加えるように構成され得て、最適充電レベルは、電気動力伝達装置にエネルギーを供給するのに十分であり、その結果、車両は変更移動距離を移動することが可能であり、最適充電速度は、変更出発時間の前にバッテリーパックの充電を完了するのに十分である。第1および第2の安全マージンは、ユーザ定義され得るか、または車両の製造業者によって事前設定され得る。
【0008】
別の態様において、システムコントローラは、リモートシステム(例えば、携帯電話、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント、コンピュータシステム、ネットワークベースのコンピューティングシステムなど)から、リモートシステムが、電気自動車内に取り付けられた通信ポートを介してシステムコントローラに結合されている、または通信リンクを介してシステムコントローラに無線で結合されているときに、移動日程を取得するように構成され得る。システムコントローラは、移動日程から予定移動距離を決定するように構成され得る。
【0009】
別の態様において、システムは、バッテリーパックに結合された少なくとも1つのセンサ含み得て、システムコントローラは、少なくとも1つのセンサを用いてバッテリーパック特性のセットを取得し、バッテリーパック特性のセットを、システムコントローラに結合されたメモリに格納するように構成される。さらに、システムコントローラは、(i)バッテリー寿命特性、バッテリーパック特性のセット、および予定移動距離に基づく最適充電レベル、および(ii)バッテリー寿命特性、バッテリーパック特性のセットおよび予定出発時間に基づく最適充電速度、を決定するように構成され得る。
【0010】
別の態様において、システムは、車両およびシステムコントローラに結合された少なくとも1つのセンサを含み得て、システムコントローラは、(i)複数の運転者行動エピソードを少なくとも1つのセンサで収集する、(ii)複数の運転者行動エピソードをメモリに格納する、かつ(iii)バッテリー寿命特性、複数の運転者行動エピソード、および予定移動距離に基づいて最適充電レベルを決定するように構成される。
【0011】
別の態様において、システムは、システムコントローラに結合された少なくとも1つの周囲環境センサを含み得て、システムコントローラは、(i)少なくとも1つの周囲環境センサで周囲環境をモニタする、かつ(ii)バッテリー寿命特性、周囲環境、および予定移動距離に基づいて最適充電レベルを決定するように構成される。
【0012】
別の態様において、システムコントローラは、ユーザインタフェースを介して確認要求を発行するように構成され得て、システムコントローラは、確認要求に対する肯定応答を受信すると、バッテリーパックを特定の充電速度を用いて特定の充電レベルに自動的に充電するように構成され、システムコントローラは、確認要求に対する否定応答を受信すると、バッテリーパックを特定の充電速度を用いて特定の充電レベルに充電しない。
【0013】
また、本発明は、車両の電気動力伝達装置に結合されたバッテリーパックの充電パラメータを最適化する方法を提供し、当該方法は、(i)予定出発時間および予定移動距離を含み、車両システムコントローラによって受け入れられる、ユーザが決定した移動情報のセットを受け入れる段階と、(ii)最適充電レベルは、バッテリー寿命特性を最大化するとともに、予定移動距離を移動する車両に十分なエネルギーを供給し、システムコントローラによって実行される、バッテリーパックの最適充電レベルを決定する段階と、(iii)最適充電速度は、バッテリー寿命特性を最大化するとともに、予定出発時間の前に最適充電レベルまでのバッテリーパックの充電を完了するのに十分であり、システムコントローラによって実行される、バッテリーパックの最適充電速度を決定する段階と、(iv)最適充電速度で実行される、車両のバッテリーパックを最適充電レベルに充電する段階と、を備える。
【0014】
一態様において、方法は、変更出発時間(例えば、予定出発時間より早い出発時間)を規定すべく、第1の安全マージンを予定出発時間に加える段階と、変更移動距離(例えば、予定移動距離より大きい移動距離)を規定すべく、第2の安全マージンを予定移動距離に加える段階と、を有してよく、第1および第2の安全マージンは、システムコントローラによって加えられ、システムコントローラによって決定される最適充電レベルは、変更移動距離を移動する車両の電気動力伝達装置にエネルギーを供給するのに十分であり、システムコントローラによって決定される最適充電速度は、変更出発時間の前にバッテリーパックの充電を完了するのに十分である。ユーザ定義安全マージンのセットは、システムコントローラによって受け入れられてよく、ユーザ定義安全マージンは、第1および第2の安全マージンを含む。安全マージンのセットは、ユーザまたは車両製造業者のどちらか一方から、システムコントローラによって受け入れられてよく、安全マージンは、第1および第2の安全マージンを含む。
【0015】
別の態様において、予定移動距離は、ユーザの日程(例えば、複数の特定された場所)に対応する。次に方法は、ユーザの日程に基づいて総移動距離を計算する段階を有し得て、最適充電レベルは、バッテリー寿命特性を最大化するとともに、総移動距離を移動する車両に十分なエネルギーを供給する。
【0016】
別の態様において、最適充電レベルは、バッテリーパック特性のセット、ならびに予定移動距離およびバッテリー寿命特性に基づく。
【0017】
別の態様において、方法は、(i)性能特性のセットを特定する目的で、バッテリーパックをモニタする段階と、(ii)性能特性のセットを記録する段階と、(iii)最適充電レベルを決定するシステムコントローラによって用いられるバッテリーパック特性のセットを決定すべく、性能特性のセットを考慮して、バッテリーパック特性の基本水準セットを変更する段階と、を有し得る。
【0018】
別の態様において、方法は、車両ユーザの運転スタイルを特定し、その後、最適充電レベルをユーザの運転スタイル、ならびにバッテリーパック特性のセット、予定移動距離およびバッテリー寿命特性を基に決める段階を有し得る。
【0019】
別の態様において、方法は、周辺環境条件のセットを特定し、その後、最適充電レベルを周辺環境条件、ならびにバッテリーパック特性のセット、予定移動距離およびバッテリー寿命特性を基に決める段階を有し得る。
【0020】
別の態様において、システムコントローラによって決定される最適充電レベルは、車両にエネルギーを供給して予定移動距離を移動するのに十分であるとともに、次の充電サイクルまで少なくとも最低限の充電状態(SOC)を維持する。
【0021】
充電する段階は自動的に実行されるが、代替的に、方法は、充電する段階を実行する前に確認要求を発行する段階を有し得て、システムコントローラは、確認要求に対する肯定応答が受信されると、自動的に充電する段階を実行し、システムコントローラは、確認要求に対する否定応答が受信されると、充電する段階を自動的に実行しない。
【0022】
明細書および複数の図面の複数の残余の部分を参照することにより、本発明の本質および複数の利点を更に理解することが、実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
添付の複数の図面は、単に本発明の範囲を説明することを意図したものであり、これを限定するものではなく、また原寸に合わせたものと考えられるべきではないことが理解されるべきである。加えて、複数の異なる図での同一の参照符号は、同一の構成要素または類似した機能性を有する構成要素を指すことが、理解されるべきである。
【0024】
【
図1】充電速度とバッテリー寿命との間の関係を示す。
【0025】
【
図2】様々な充電レベルでバッテリーを保存した場合の、バッテリー寿命への影響を示す。
【0026】
【
図3】本発明の少なくとも1つの実施形態において利用される主なEVシステムに関する、システムレベルの概略図を提供する。
【0027】
【
図4】好ましい実施形態に係る、本発明の基本的方法を示す。
【0028】
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書に用いられるように、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈でそうでないことが明確に示されない限り、複数形を含むことが意図されている。本明細書に用いられるように、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」および/または「含む(including)」という用語は、述べられた複数の特徴、工程段階、操作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1または複数の他の特徴、工程段階、操作、要素、構成要素、および/またはこれらの集合の存在または追加を妨げない。本明細書に用いられるように、「および/または」という用語および「/」という記号は、関連して列挙される項目のうち1または複数のありとあらゆる組合せを含むことを意味する。加えて、第1、第2などの用語が本明細書に用いられ、様々な段階、計算、または構成要素を説明し得るが、これらの段階、計算、または構成要素は、これらの用語によって限定されるべきではなく、むしろこれらの用語は、1つの段階、計算、または構成要素を他のものと区別する目的で用いられるだけである。例えば、本開示の範囲を逸脱することなく、第1の計算があれば第2の計算と称することができ、また同様に、第1の段階があれば第2の段階と称することができ、また同様に第1の構成要素があれば第2の構成要素と称することができる。
【0030】
以下の説明において、「バッテリー」、「セル」、および「バッテリーセル」という用語が互換的に用いられ得て、様々な異なるバッテリー構成および化学組成のうち何れかを指し得る。代表的なバッテリーの化学組成は、リチウムイオン、リチウムイオンポリマ、ニッケル水素(nickel metal hydride)、ニッケルカドミウム、ニッケル水素(nickel hydrogen)、ニッケル亜鉛、および銀亜鉛を含むが、これらに限定されるものではない。本明細書に用いられるように、「バッテリーパック」という用語は、所望の電圧および容量を実現すべく、電気的に相互接続された1または複数のバッテリーの組立品を指し、バッテリー組立品は、典型的には収容器の中に含まれている。「電気自動車」および「EV」という用語は、互換的に用いられ得て、全電気式自動車、PHEVとも称されるプラグインハイブリッド車、またはHEVとも称されるハイブリッド車を指し得る。ハイブリッド車は、電気駆動システムを含む複数の推進源を利用する。
【0031】
図3は、本発明に係る、EV300およびバッテリー寿命最適化システムに用いられる主な複数のシステムの上位レベルの図である。電気自動車300は、全電気式自動車、または内燃エンジン(ICE)および電気駆動システムの両方を利用するハイブリッド車であってよい。
図3に示されるシステム構成は、1つの可能な構成にすぎず、本発明の機能を依然として維持するとともに他の複数の構成が用いられ得ることが、理解されるべきである。加えて、
図3に示される複数の構成要素のうち1または複数は、単一のデバイス、および/または回路基板、および/または集積回路にまとめてグループ化されることが可能である。
【0032】
車両300は、本明細書で車両管理システムとも称され、中央処理装置(CPU)を備える車両システムコントローラ301を有する。システムコントローラ301は、メモリ303も有し、メモリ303は、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、RAM、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ、または任意の他のタイプのメモリもしくは複数のメモリタイプの組合せを含む。ユーザインタフェース305は、車両管理システム301に結合される。インタフェース305は、運転者または搭乗者が、車両管理システムと情報を送受することを可能にし、例えば、ナビゲーションシステムにデータを入力する、冷暖房換気(HVAC)システムを変更する、車両のエンタテイメントシステム(例えば、ラジオ、CD/DVDプレイヤーなど)を操作する、車両設定(例えば、シートポジション、照明コントロールなど)を調整する、および/または、別のやり方で車両300の機能を変更することを可能にする。少なくともいくつかの実施形態において、インタフェース305は、車両管理システムが運転者および/または搭乗者に、ナビゲーションマップまたは運転指示、ならびに様々な車両システムのうち何れかの動作性能(例えば、バッテリーパック充電レベル、ハイブリッド車のエンジン用の燃料レベル、選択したギア、音量や選択した曲の情報などの現在のエンタテイメントシステム設定、外部照明設定、現在の車速、キャビン温度および/または送風設定などの現在のHVAC設定など)などの情報を提供する手段も有する。インタフェース305は、運転者に車両状況(例えば、バッテリー充電レベル低下)を知らせる、および/または動作システムの機能不良(バッテリーシステムが適切に充電されていない、充電ケーブルが適切に接続されていない、タイヤの空気圧が低い、照明が正しく作動しないなど)を伝えることにも用いられ得る。インタフェース305は、例えば、タッチスクリーンディスプレイ、または、押しボタンスイッチ、静電スイッチ、スライドまたはトグルスイッチ、ゲージ、ディスプレイスクリーン、可視および/または可聴警告インジケータなどのユーザインタフェースの組合せといった単一のインタフェースを含み得る。ユーザインタフェース305がグラフィックディスプレイを有する場合、コントローラ301は、グラフィック処理装置(GPU)も有し得て、GPUは、CPUと同一のチップセットから分離しているか、そこに含まれているか、どちらか一方であることが、理解されるであろう。
【0033】
車両300は、1または複数のモータを含む推進源307を有し、加えて、(例えば、ハイブリッド車では)内燃エンジンを有し得る。車両の推進源307は、フロント側の車軸/車輪、リア側の車軸/車輪、またはその両方に機械的に結合され得て、かつ様々な変速機のタイプ(例えば、単一速度、多段速度)と差動器のタイプ(例えば、オープン、ロック、リミテッドスリップ)とのうち何れかを利用し得る。
【0034】
エネルギーは、バッテリーパック309によって、推進源307のモータに供給される。1または数百または数千の再充電可能なバッテリーを備えるバッテリーパック309は、好ましくは、電力を要する様々な車両システム(例えば、照明、エンタテイメントシステム、ナビゲーションシステムなど)に必要なエネルギーを供給する目的にも用いられる。典型的には、駆動モータに供給されたエネルギーが、適切な状態である(例えば、適切な電圧、電流、波形など)ことを保証する動力コントロールシステム311(すなわち、インバータおよびモータのコントローラ)を介して、バッテリーパック309が、推進源307内のモータに結合される。
【0035】
バッテリーパック309は、充電システム313によって充電される。外部充電システムも車両300に用いられることがあるが、好ましくは、充電システム313は、図に示されるように車両300に統合される。充電システム313は、地域の送電網などの外部電源315に、典型的には電源コード317を用いることで、電気的に接続されるように構成される。少なくとも1つの構成において、充電システム313は、例えば、車両300がその上に駐車する誘導充電パッドを用いて、外部電源315に無線で接続される。バッテリーパック309は、回生ブレーキシステムなどの内蔵(on−board)充電システムを、少なくとも部分的に用いても、充電され得る。
【0036】
車両300は、加熱サブシステム321および冷却サブシステム323の両方を含む、温度管理システム319を有する。温度管理システム319は、搭乗者キャビン325を所望の温度範囲に維持する目的、ならびにバッテリーパック309内の複数のバッテリーが、当該バッテリーの所望の動作、充電、および/または保存温度範囲内に維持されることを保証する目的に用いられ得る。システム319が、バッテリーパック309の温度をコントロールする目的に用いられるとき、システムは、バッテリーパック全体にわたって暖気または冷気を循環させて、当該暖気または冷気を利用し得る。代替的に、冷媒循環システムは、バッテリーパックに熱的に結合され得て、冷媒は、必要に応じてヒータ321によって加熱される、またはクーラ323によって冷やされる。
【0037】
少なくとも1つの好ましい実施形態において、車両300は全地球測位システム(GPS)327を有し、それにより、車両の場所を特定することが可能になる。GPS327は、単独で動作するシステムであってよく、好ましくはナビゲーションシステム329内に統合されてもよい。
【0038】
車両管理システム301に結合されるのは、通信リンク331である。通信リンク331は、無線で、外部データソース(例えば、製造業者、ディーラ、サービスセンタ、ウェブベースのアプリケーション、リモートホームベースのシステム、サードパーティのソースなど)から構成のアップデートを取得とする目的に、または外部データベース333、例えば、自動車の製造業者または他のサードパーティによって維持されるデータベースにアクセスする目的に用いられ得る。通信リンク331は、システムコントローラ101と、例えば、ユーザのスマートフォン、タブレット、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ホームコンピュータ、ワークコンピュータ、ネットワークベースのコンピューティングシステムなどの、ユーザデバイスまたはシステムとの間に通信リンクを提供する目的にも用いられ得る。リンク331は、様々な異なるテクノロジー(例えば、GSM(登録商標)、EDGE、UMTS、CDMA、DECT、WiFi、WiMAXなど)のうち何れかを用い得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、通信リンク331は、USB、Thunderbolt、または他のポートなどの内蔵(on−board)ポート337も有し得る。ポート337は、システムコントローラ301と、ユーザデバイスまたはシステム339(例えば、スマートフォン、タブレット、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ホームコンピュータ、ワークコンピュータ、ネットワークベースのコンピューティングシステムなど)との間の通信を、有線通信リンクを介して可能にする。
【0040】
図4は、本発明の少なくとも1つの実施形態に係る、本発明の基本的方法を示す。最初に、次の充電サイクル後に実行される全移動の移動情報を、ユーザが入力する(段階401)。段階401の間に入力される情報は、インタフェース305を用いて入力され得る。代替的に、この情報は、ポート337を介してコントローラ301に結合されたデバイス339を用いて入力され得る。代替的に、この情報は、無線通信リンク331を介してコントローラ301に結合されたデバイス335を用いて入力され得る。
【0041】
段階401において、ユーザは、出発時間および移動距離を入力する。出発時間は、次の充電サイクルが完了した後に、自動車が必要とされる最初の時間を表す。例えば、ユーザは、自動車を夜間に充電し、その後翌朝の午前8時に、その日の活動のために出発することを意図し得る。いくつかのシナリオにおいて、出発時間は、翌日ではなく数日後になり得る。例えば、ユーザは、金曜日に仕事から戻った後に自動車を充電し、その後次の月曜日まで自動車を使用するつもりはないことを意図し得る。従って、出発時間は、好ましくは、時間および日の両方を含むことが、理解されるであろう。しかしながら、いくつかの構成において、システムは、ユーザが翌日以外の日を入力しない限り、移動が翌日の指定の時間に実行されると仮定して、事前設定され得る。
【0042】
段階401において入力される移動距離は、次の充電サイクルが完了した後で、次に続く充電サイクルが開始される前に、ユーザが移動することを意図する総距離を表す。従って、この段階で入力される移動距離は、ユーザが、その日の間に充電する(例えば、仕事をしている間に充電する)ことを意図すると仮定して、1日の一部に対する距離であってよい。代替的に当該距離は、ユーザが毎晩帰宅すると定期的に充電すると仮定して、丸1日に対してであってよい。代替的に当該距離は、ユーザが車両を少なくとも1日に1回充電しない場合、数日の期間に対してであってよい。
【0043】
好ましい構成において、ユーザは、予定移動距離をマイルまたはキロメータ単位で入力する。代替の構成において、ユーザは、移動日程をシステムコントローラ301に入力する。次に、コントローラは、当該日程に基づいて、予想移動距離を決定する。例えば、ユーザは、第1の立ち寄り先として学校の所在地(location)を、第2の立ち寄り先として勤務先を、第3の立ち寄り先としてレストランを、第4の立ち寄り先として勤務先を(例えば、昼食後に仕事に戻る)、第5の立ち寄り先として学校を、第6の立ち寄り先として食料品店を、最終目的地として帰宅先を入力し得る。車両の現在地に基づいて、システムコントローラ301は、この日程の総移動距離を計算することが可能である。この構成の変形において、日程を規定する手段として一連の所在地(location)を入力する代わりに、ユーザは、一連の目的地名称、または日程内の各立ち寄り先についてのユーザの知識に応じて、目的地名称と所在地(location)の組合せを入力し得る。従って、例えば、ユーザは、第1の立ち寄り先の名称としてレッドウッド高校、または第1の立ち寄り先の所在地(location)としてカリフォルニア州ラークスパー、ドハティドライブ395のどちらか一方を入力し得る。少なくとも1つの実施形態において、メモリ303に含まれる、または外部データベース333に含まれる、またはリンク331を介してシステムコントローラに無線接続されたリモートデバイス335(例えば、ユーザのスマートフォン)に格納されたデータベースに含まれる、または通信ポート337に接続されたリモートデバイス339(例えば、ユーザのスマートフォン)に格納されたデータベースに含まれる、住所録から選択することによって、ユーザは、所在地(location)および/または所在地(location)の名称を入力することが可能である。
【0044】
一度、出発時間および移動距離が、システムコントローラ301に入力されると、好ましくは、システムコントローラは、出発時間に安全マージンを加え(段階403)、かつ移動距離に安全マージンを加える(段階405)。安全マージンを加えることで、ユーザが、例えば、交通混雑または予定外の日程を加えたことに起因して、予定より早く出発することを決定した場合、または、移動に予定より多くの充電を使う場合でも、自動車は充電され、使用の準備が整っていることが保証される。段階403において用いられる出発時間の安全マージンは、以下に示されるように段階401において入力され得るが、段階407においてシステムに入力される。この安全マージンは、例えば車両の製造業者、またはサードパーティ、またはエンドユーザによって、一度入力され得る。代替的に、出発時間の安全マージンは入力され、その後、車両の製造業者、またはサードパーティ、またはエンドユーザによって変更されるまで、その設定にとどまる。代替的に、出発時間の安全マージンは、段階401において移動情報が入力されると同時に、ユーザによって入力され得る。好ましくは、出発時間の安全マージンは、分単位で与えられる。従って、例えば、ユーザが、午前8時というユーザ出発時間を入力し、出発時間の安全マージンが30分に事前設定されている場合、次にシステムは、午前7時30分までに自動車が出発の準備を整えたこと、すなわち、充電されていることを保証することになる。
【0045】
段階403において用いられる移動距離の安全マージンは、以下に示されるように段階401において入力され得るが、段階409においてシステムに入力される。安全マージンは、例えば車両の製造業者、またはサードパーティ、またはエンドユーザによって、一度入力され得る。代替的に、移動距離の安全マージンは入力され、その後、車両の製造業者、またはサードパーティ、またはエンドユーザによって変更されるまで、その設定にとどまる。代替的に、移動距離の安全マージンは、段階401において移動情報が入力されると同時に、ユーザによって入力され得る。好ましくは、移動距離の安全マージンは、マイルまたはキロメータ単位で与えられ、例えば、段階401の間に50マイル(80キロメータ)という移動距離が入力され、事前設定された安全マージンが10マイル(16キロメータ)である場合、次にコントローラは、自動車が60マイル(96キロメータ)(すなわち、入力された距離に安全マージンを加えた値)を移動するのに十分なレベルに充電されていることを保証することになる。代替的に、移動距離の安全マージンは、パーセント単位で提供され、従って、予定移動距離との差異を自動的に調整し得る。安全マージンが、パーセントとして、例えば10パーセントと与えられた場合、50マイル(80キロメータ)という移動距離を入力した上記の例では、次にコントローラは、自動車が55マイル(88キロメータ)(すなわち、入力された距離に当該距離の10パーセントを加えた値)を移動するのに十分な充電を保証することになる。
【0046】
段階411において、システムコントローラ301は、車両300が段階401において入力され、段階405において加えられた安全マージン分だけ増加した移動距離を満たす目的で、バッテリーパック309に必要とされる、適切な充電レベル、すなわち、充電状態(SOC)を決定する。充電レベルを正確に決定する目的で、システムコントローラは、段階413においてシステムに入力されるバッテリーパック特性を用いる。一般に、主なバッテリーパック特性は、エネルギー(例えば、キロワット時)および直流抵抗である。いくつかの実施形態において、パックの特性だけでなく、自動車の特性(例えば、空気力学および車両重量)も考慮する変換効率が、用いられ得る。予想される複数の走行条件も、変換効率に影響を与えるので、含まれ得る。(例えば、速度、計画日程中の道路標高の変化、温度など)。1つの実施形態において、複数のバッテリーパック特性は、車両の製造業者によって、例えば参照テーブルの形態で入力され、問題のバッテリーパックに基づいている。好ましくは、バッテリーパック特性のセットは、今までの充電サイクル、バッテリーパックの使用年数などに基づいて、パックの複数の特性を変更する目的で、コントローラ301によって用いられ得る、事前設定された劣化要因を含む。好ましい実施形態において、ダイナミックバッテリーモデルが、複数のバッテリーパック特性を与える目的で、用いられる。ダイナミックバッテリーモデルは、車両の製造業者によって入力されるバッテリーパック特性の基本水準セットを用い得るが、当該バッテリーパック特性は、問題の実際のバッテリーパックに対してコントローラ301によって取得された実際のバッテリーパック性能データ(例えば、測定された電圧、電流、SOC、今までの充電サイクル、今までのSOC充電レベルなど)に基づいて、コントローラ301によって頻繁に(または定期的に)変更される。システムコントローラによって利用される複数のバッテリーパック特性が、製造業者によって入力されたモデルに基づくか、問題の実際のバッテリーパックから測定された複数の性能特性に基づくかに関わらず、好ましくは、複数のバッテリーパック特性は、段階415において入力される測定された複数の環境条件(例えば、センサ341を用いた周辺温度測定)、および予想される運転スタイルに基づいて変更される(段階417)。段階417において入力される運転スタイル情報は、モニタされた運転スタイル、例えば速度センサ343によってモニタされた平均速度、または同一の移動計画にわたって速度センサ343によってモニタされた平均速度に基づき得る、または初期データ入力段階401の間にユーザが選択して入力する予定運転スタイル(例えば、慎重、普通、積極的)に基づき得る。
【0047】
最低限でも、段階411においてシステムコントローラ301によって決定された充電レベルは、段階401において入力された移動距離に、段階405において加えられた安全マージンを加算した距離を満たすのに必要とされるものである。しかしながら、段階411において決定された充電レベルは、システムコントローラ301が、より高い充電レベルの方がバッテリーパックの寿命に適していると決定する場合、この最低限のレベルより大きくなり得ることが、理解されるべきである。例えば、多くのバッテリー/バッテリーの化学組成は、過度に低いレベルまで使い切ると損傷を受けやすいので、システムコントローラ301は、自動車が計画日程から帰ってくると、バッテリーパック309の残存充電レベルが、事前設定された最低限のSOCより大きいことを保証するように構成され得る。好ましくは、事前設定される最低限のSOCは、製造業者によって事前設定されるが、システムは、この事前設定される最低限のSOCを別のソース(例えば、サードパーティ)から受け取るように構成され得る。
【0048】
段階411においてコントローラ301によって、所望の充電レベルが設定された後、次にコントローラは、バッテリーパック充電の間に用いられる所望の充電速度を決定する(段階419)。段階419の間に、コントローラ301は、(i)段階411において決定された所望の充電レベル、(ii)段階401の間に入力された安全マージンを加えた予定出発時間、(iii)段階421においてシステムに入力される充電システムの能力、を計算に入れる。予定出発時間に加えて、充電にどれだけの時間が使用できるかを計算する目的で、コントローラ301は、内蔵時計345を用いて現在の時間を特定する(段階423)。バッテリーパック309に対して、最良の充電速度を正確に決定する目的で、少なくとも1つの実施形態において、単に充電速度を最小にするのではなく、複数のバッテリーパック特性がシステムに入力される(段階425)。上述したように、バッテリーパック特性は、車両の製造業者によって入力され得る。しかしながら、好ましくは、システムが、車両の製造業者によって入力されたバッテリーパック特性の基本水準セットを用いる場合、コントローラ301は、問題のバッテリーパックに対してコントローラ301によって取得され、モニタされたバッテリーパック性能データに基づいて、これら特性を変更する。
【0049】
バッテリー寿命を最大にするとともに、ユーザのニーズ(例えば、航続距離(range)および出発時間)を満たす目的で、一度、コントローラ301が、段階411において所望の上限(upper)充電レベル(SOC)と、段階419において充電速度との両方を最適化すると、次にコントローラは、充電システム313の上限(upper)充電レベルおよび充電速度を設定する(段階427)。好ましい実施形態において、コントローラ301は、段階411および419において決定された、充電レベルおよび充電速度の設定を用いて、バッテリーパック309を自動的に充電する(段階429)。
図5に示される代替の実施形態において、上限(upper)充電レベル(段階411)および充電速度(段階419)を最適化した後、ユーザは、これらの最適設定を受け入れるか否かの選択肢を与えられる(段階501)。ユーザが、最適設定を受け入れることを決定すると(段階503)、次に、これらの設定を用いて、充電が自動的に実行される(段階429)。ユーザが、最適設定を変更することを決定すると(段階505)、次に、ユーザは、変更した設定を入力し(段階507)、システムは、変更した設定を用いて、バッテリーパックを充電する(段階509)。
【0050】
複数のシステムおよび方法が、本発明の複数の詳細の理解を助けるものとして、一般的な複数の用語で説明されている。複数の例において、周知の複数の構造、材料、および/または操作は、本発明の複数の態様を不明瞭にすることを回避する目的で、具体的に示されてもなく、詳細に説明されてもいない。他の複数の例において、本発明の十分な理解を提供する目的で、具体的な複数の詳細が与えられている。当業者は、本発明が、例えば、特定のシステム、または装置、または状況、または材料、または構成要素に適応する目的で、これらの趣旨または本質的な複数の特性から逸脱することなく、他の特定の複数の形態で具現化され得ることを、認識するであろう。従って、本開示および本明細書の説明は、本発明の範囲を説明することを意図しており、本発明の範囲を限定するものではない。