特許第6205653号(P6205653)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6205653-過昇温保護回路および画像形成装置 図000008
  • 特許6205653-過昇温保護回路および画像形成装置 図000009
  • 特許6205653-過昇温保護回路および画像形成装置 図000010
  • 特許6205653-過昇温保護回路および画像形成装置 図000011
  • 特許6205653-過昇温保護回路および画像形成装置 図000012
  • 特許6205653-過昇温保護回路および画像形成装置 図000013
  • 特許6205653-過昇温保護回路および画像形成装置 図000014
  • 特許6205653-過昇温保護回路および画像形成装置 図000015
  • 特許6205653-過昇温保護回路および画像形成装置 図000016
  • 特許6205653-過昇温保護回路および画像形成装置 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205653
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】過昇温保護回路および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   G03G15/20 555
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-155796(P2015-155796)
(22)【出願日】2015年8月6日
(65)【公開番号】特開2017-32935(P2017-32935A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】生田 克行
(72)【発明者】
【氏名】玉田 武司
(72)【発明者】
【氏名】笹本 能史
(72)【発明者】
【氏名】江口 博
【審査官】 中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−279636(JP,A)
【文献】 特開平4−342285(JP,A)
【文献】 特開2013−205421(JP,A)
【文献】 特開2009−180992(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0141150(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着手段用の過昇温保護のために、昇温により出力電圧が低下する第一温度センサと、昇温により出力電圧が上昇する第二温度センサとに接続可能な過昇温保護回路であって、
前記第一温度センサおよび前記第二温度センサのそれぞれに割り当てられた基準電圧が個別的に入力可能な複数のチャネルを有し、入力選択信号に基づきいずれか一つのチャネルを選択して、複数の基準電圧の一つを出力する少なくとも一つのマルチプレクサと、
前記第一温度センサの出力電圧が入力可能な第一非反転入力端子と、前記マルチプレクサの出力基準電圧が入力可能な第一反転入力端子と、入力電圧と入力基準電圧との比較結果を出力可能な少なくとも一つの第一比較器と、
前記第二温度センサの出力電圧が入力可能な第一反転入力端子と、前記マルチプレクサの出力基準電圧が入力可能な第一非反転入力端子と、入力電圧と入力基準電圧との比較結果を出力可能な少なくとも一つの第二比較器と、を備え、
前記第一比較器の比較結果も、前記第二比較器の比較結果も、正常時にはHiを示し、過昇温時にはLoを示すことを特徴とする、過昇温保護回路。
【請求項2】
前記少なくとも一つのマルチプレクサが複数のマルチプレクサである場合において、前記複数のマルチプレクサにおける同一チャネルの少なくとも一つには、前記第一温度センサの基準電圧が入力可能で、別の少なくとも一つには、前記第二温度センサの基準電圧が入力可能となっており、
前記複数のマルチプレクサは、共通の選択信号に基づき互いに同一チャネルを選択することを特徴とする、請求項1に記載の過昇温保護回路。
【請求項3】
前記マルチプレクサに入力される基準電圧を生成する分圧回路をさらに備える、請求項1または2に記載の過昇温保護回路。
【請求項4】
前記マルチプレクサに入力される基準電圧を生成するD/A変換手段をさらに備える、請求項1または2に記載の過昇温保護回路。
【請求項5】
前記マルチプレクサに、前記第一温度センサおよび前記第二温度センサいずれの基準電圧も割り当てられていない空きチャネルが有る場合、前記空きチャネルには、同一マルチプレクサの他チャネルに割り当てられた前記第一温度センサまたは前記第二温度センサ以外の第一温度センサまたは第二温度センサの基準電圧に相当する電圧値が割り当てられる、請求項2〜4のいずれかに記載の過昇温保護回路。
【請求項6】
前記マルチプレクサに、前記第一温度センサおよび前記第二温度センサいずれの基準電圧も割り当てられていない空きチャネルが有る場合において、同一マルチプレクサの他チャネルに前記第一温度センサの基準電圧が割り当てられていれば、前記空きチャネルには定電圧値が割り当てられ、同一マルチプレクサの他チャネルに前記第二温度センサの基準電圧が割り当てられていれば、前記空きチャネルにはグランド電圧値が割り当てられる、請求項2〜5のいずれかに記載の過昇温保護回路。
【請求項7】
前記選択信号を出力可能な制御手段をさらに備える、請求項1〜6のいずれかに記載の過昇温保護回路。
【請求項8】
入力定電圧に基づき前記選択信号を生成する信号生成回路をさらに備える、請求項1〜6のいずれかに記載の過昇温保護回路。
【請求項9】
前記第一比較器の比較結果および前記第二比較器の比較結果が個別的に入力される制御手段であって、入力された比較結果に基づき、前記定着手段の異常を判断する制御手段をさらに備える、請求項1〜8のいずれかに記載の過昇温保護回路。
【請求項10】
前記第一比較器の比較結果および前記第二比較器の比較結果がワイヤードオア接続されて入力されるマイコンであって、入力された比較結果に基づき、前記定着手段の異常を判断する制御手段をさらに備える、請求項1〜8のいずれかに記載の過昇温保護回路。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の過昇温保護回路を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着手段用の過昇温保護回路、およびそれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着手段は、周知の通り、定着ニップを形成する加熱ローラおよび加圧ローラを備える。定着ニップには、未定着トナーを担持した印刷媒体が導入させられる。印刷媒体は、定着ニップを通過中、上記二個のローラにより加熱および加圧され、これによって、印刷媒体にトナーが定着する。
【0003】
また、加熱ローラの過昇温(過熱)を防止するために、定着手段は、加熱ローラの温度を検出し、検出結果を示すアナログ電圧を出力する温度センサをさらに備える。この出力電圧は、画像形成装置の制御回路基板上に実装された過昇温保護回路に入力される。過昇温保護回路にはさらに、加熱ローラの過昇温を定義する基準電圧が入力される。基準電圧は、一般的には、定電圧Vcc電源電圧を抵抗分圧することで得られる。過昇温度保護回路は、入力温度信号と基準電圧とを比較器により比較し、この比較結果に基づき画像形成装置を過昇温から保護している(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−022218号公報
【特許文献2】特開2014−77847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
定着手段には、複数の温度センサが備わることがある。これら複数の温度センサは、必ずしも同じ仕様とは限らない。したがって、複数の温度センサにおいて、例えば出力電圧の温度特性が異なっていれば、各温度センサに適した基準電圧を設定する必要が生じる。また、上記の通り、基準電圧は多くの場合抵抗分圧により生成される。これらの場合、画像形成装置の製造業者は、過昇温保護回路毎に抵抗値の異なる分圧抵抗を準備する必要が生じうる。また、画像形成装置の機種が異なれば、使用される温度センサも異なることもある。したがって、製造業者は、機種ごとに過昇温保護回路を準備する必要も生じうる。以上のことから、過昇温保護回路の基板種類が増えてしまい、製造業者に基板管理のため多大な負担が生じる。
【0006】
それ故に、本発明の目的は、基板管理の負担軽減が可能な過昇温保護回路および画像形成装置を提供することである。
【0007】
本発明の一局面は、定着手段用の過昇温保護のために、昇温により出力電圧が低下する第一温度センサと、昇温により出力電圧が上昇する第二温度センサとに接続可能な過昇温保護回路であって、前記第一温度センサおよび前記第二温度センサのそれぞれに割り当てられた基準電圧が個別的に入力可能な複数のチャネルを有し、入力選択信号に基づきいずれか一つのチャネルを選択して、複数の基準電圧の一つを出力する少なくとも一つのマルチプレクサと、前記第一温度センサの出力電圧が入力可能な第一非反転入力端子と、前記マルチプレクサの出力基準電圧が入力可能な第一反転入力端子と、入力電圧と入力基準電圧との比較結果を出力可能な少なくとも一つの第一比較器と、前記第二温度センサの出力電圧が入力可能な第一反転入力端子と、前記マルチプレクサの出力基準電圧が入力可能な第一非反転入力端子と、入力電圧と入力基準電圧との比較結果を出力可能な少なくとも一つの第二比較器と、を備え、前記第一比較器の比較結果も、前記第二比較器の比較結果も、正常時にはHiを示し、過昇温時にはLoを示すことを特徴とする。
【0008】
本発明の他の局面は、前記過昇温保護回路を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0009】
上記各局面によれば、基板管理の負担軽減が可能な過昇温保護回路および画像形成装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】画像形成装置の全体構成を示す図である。
図2】定着制御装置の構成を示す図である。
図3】第一温度センサと第二温度センサそれぞれの出力電圧の温度特性を模式的に示す図である。
図4】機種毎に準備された保護回路11の基板を例示する図である。
図5】本実施形態に係る保護回路の構成を示す図である。
図6図5の保護回路で用いられる分圧回路の構成例を示す図である。
図7】第一変形例に係るD/A変換手段を示す図である。
図8】第二変形例に係る信号生成回路を示す図である。
図9】第三変形例に係る保護回路の構成を示す図である。
図10】第四変形例に係る保護回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《第一欄:画像形成装置の全体構成・印刷動作》
図1において、画像形成装置1は、例えば、複写機、プリンタまたはファクシミリ、もしくは、これらの機能を備えた複合機であって、画像をシート状の印刷媒体M(例えば用紙)に印刷する。そのために、画像形成装置1は、大略的に、給紙部3と、レジストローラ対4と、画像形成手段5と、定着手段6と、制御手段7と、を備える。以下、画像形成装置1の印刷動作時の各構成の動作について説明する。
【0012】
給紙部3には、未使用の印刷媒体Mが積載される。給紙部3は、印刷媒体Mを一枚ずつ、図1中に破線で示す搬送経路FPに送り出す。レジストローラ対4は、搬送経路FP上であって、給紙部3の下流側に設けられる。レジストローラ対4は、給紙部3から送り出された印刷媒体Mを一旦停止させた後、所定のタイミングで二次転写領域に送り出す。
【0013】
画像形成手段5は、例えば、周知の電子写真方式およびタンデム方式により、トナー画像を中間転写ベルト上に生成する。かかるトナー画像は、中間転写ベルトにより担持され、二次転写領域に向けて搬送される。
【0014】
二次転写領域には、レジストローラ対4から印刷媒体Mが送り込まれ、また、画像形成手段5からトナー画像が搬送されてくる。二次転写領域において、トナー画像は中間転写ベルトから印刷媒体Mに転写される。
【0015】
定着手段6において、加熱ローラ61および加圧ローラ63は当接してニップを形成する。また、加熱ローラ61は、筒状の芯金内にヒータ62を内蔵する。ヒータ62は、例えばハロゲンヒータであって、電源回路8(後述)から供給される交流電流により点灯する。加圧ローラ63は、制御手段7の制御下で回転する。加熱ローラ61は加圧ローラ63の回転に従動して回転する。印刷媒体Mがニップに送り込まれると、印刷媒体Mは、両ローラ61,63により加圧され、また、加熱ローラ61により加熱される。その結果、印刷媒体Mにトナーが定着する。その後、印刷媒体Mは排紙トレイに向けて送り出される。
【0016】
制御手段7において、マイコンは、ROM等の不揮発性メモリに格納されたプログラムを、メインメモリを作業領域として使いながら実行する。制御手段7は、様々な制御を行うが、その一つにヒータ62の通電制御がある。
【0017】
《第二欄:定着温度監視装置のブロック構成》
加熱ローラ61の温度(即ち、定着温度)を監視すべく、画像形成装置1には、定着温度監視装置2が備わっている。定着温度監視装置2は、図2に示すように、定着手段6および制御手段7に加え、電源回路8と、リレー制御回路9と、ヒータ点灯回路10と、過昇温保護回路(以下、単に「保護回路」という)11と、を備えている。
【0018】
電源回路8は、リレー81と、ヒータ駆動回路82とを含む。リレー81は、電源ライン上に設けられ、制御手段7からリレー制御回路9を介して入力されるリレー制御信号に基づき、ヒータ62への交流電圧の供給をオン/オフする。ヒータ駆動回路82は、例えばトライアックからなり、制御手段7からヒータ点灯回路10を介して入力されるリモート信号により、リレー81を介して入力された交流電圧をオンオフして、ヒータ62に印加する。これにより、ヒータ62は点灯し、加熱ローラ61を加熱する。
【0019】
ところで、定着手段6は、図1に示す構成に加え、少なくとも一つの温度検知手段64を含む。温度検知手段64は、例えば、定電圧源(図示せず)にプルアップ抵抗を介して接続されたサーミスタであって、第一温度センサ641の一例であるサーミスタを含む。第一温度センサ641は、図3上段に示すように、周囲温度の上昇(即ち、昇温)により出力電圧が低下するという出力電圧の温度特性(以下、第一温度特性という)を有する。温度検知手段64は、加熱ローラ61の近傍に設けられて、加熱ローラ61の温度(即ち、定着温度)を検出し、検出結果を示すアナログ電圧を制御手段7と保護回路11とに出力する。制御手段7は、温度検知手段64の出力電圧に基づき、定着温度を目標温度とすべくリモート信号を生成し、ヒータ点灯回路10に出力する。
【0020】
また、温度検知手段64は、第一温度センサ641に代えて、図2の楕円内に示すように、例えば赤外線センサのような非接触温度センサ(以下、NCセンサという)やサーモパイルを、第二温度センサ642の一例として含んでいても構わない。これらは、図3下段に示すように、昇温により出力電圧が上昇するという出力電圧の温度特性(以下、第二温度特性という)を有する。
【0021】
また、温度検知手段64は、第一温度センサ641および第二温度センサ642の組み合わせを含んでいても構わない。
【0022】
保護回路11は、加熱ローラ61の温度が、予め定められた監視温度を超えないように監視するために、複数の比較器111と、論理和回路112と、を有する。各比較器111には、温度検知手段64からの出力電圧と、加熱ローラ61の上限温度(約240〜250℃)を定義する基準電圧とが入力される。基準電圧は、一般的には、定電圧Vccを抵抗分圧して得られる。各比較器111は、入力電圧と入力基準電圧とを比較して、比較結果を論理和回路112に出力する。論理和回路112は、各比較器111から出力された比較結果に基づき論理演算を行って、リレー制御回路9およびヒータ点灯回路10のそれぞれに通電を停止させる信号(以下、通電停止信号という)を出力する。保護回路11の構成・動作については後で詳説される。リレー制御回路9は、通電停止信号に応答して、リレー81の接点を開放し、これによって、ヒータ62への交流電圧の供給をオフする。また、ヒータ点灯回路10は、通電停止信号に応答して、ヒータ駆動回路82へのリモート信号の供給を遮断する。
【0023】
《第三欄:技術的課題の詳細》
温度検知手段64には、第一温度センサ641や第二温度センサ642が含まれると説明したが、例えば複数の機種間で、同じ温度特性の温度センサが使用されるとは限らない。例えば、図4に示すように、機種A,B,Cという三種の画像形成装置1に、第一温度センサ641a,第一温度センサ641b,第二温度センサ642cが使用されるとする。さらに、第一温度センサ641a向けの基準電圧が0.194Vで、第一温度センサ641bの基準電圧が0.231Vで、第二温度センサ642cの基準電圧が2.9Vであるとする。この場合、画像形成装置1の製造業者は、機種ごとに異なる分圧回路114a〜114cを準備する必要がある。つまり、保護回路11の基板が複数種類できてしまう。これは、製造業者に基板管理の負荷を強いるため、望ましくない。そこで、本件発明者は、図5に示す保護回路11を想到するに至った。
【0024】
《第四欄:保護回路の構成例》
図5の例では、保護回路11は、一基板で、三機種A〜Cの画像形成装置1に備わる三種六個の温度センサ641,642からのアナログ電圧と、対応する基準電圧とを比較し、定着温度が上限温度を超えている場合には、前述の通電停止信号を、図2に示すリレー制御回路9およびヒータ点灯回路10に出力する。
【0025】
第四欄の説明では、機種Aには、一個の第一温度センサ(サーミスタ)641eと、二個の第二温度センサ(サーモパイル)642h,642fとが使用される。機種Bには、一個の第二温度センサ(サーモパイル)642fと、二個の第一温度センサ(サーミスタ)641d,641eとが使用される。機種Cには、二個の第一温度センサ(サーミスタ)641d,641fと、一個の第二温度センサ(NCセンサ)642gが使用される。上記三種六個の温度センサ641,642が保護回路11の基板には接続可能になっている。
【0026】
保護回路11には、三個のマルチプレクサ(以下、MUXと記す)、即ち、第一MUX113a,第二MUX113b,第三MUX113cが備わる。各MUX113a〜113cは、例えば四個の入力チャネルCH1〜CH4を有する。本説明では、各MUX113a〜113cの同一チャネルに、同一機種で使用される三個の基準電圧が一意に(固有的に)割り当てられる。例えば、機種Aに関しては、第一温度センサ641eの基準電圧0.194VがMUX113aのチャネルCH2に、第二温度センサ642hの基準電圧2.8VがMUX113bのチャネルCH2に、第二温度センサ642fの基準電圧2.8VがMUX113cのチャネルCH2に割り当てられる。他の機種B,Cについては、下表1を参照されたい。
【0027】
【表1】
【0028】
上記から明らかなように、各チャネルCH1には、いずれの機種向けの基準電圧も割り当てられない。したがって、これらチャネルCH1にはいかなる電圧値も割り当てずに、空きチャネルのままにしておいても良いが、本説明では、MUX113a,113bのチャネルCH1には0Vが割り当てられ、MUX113cのチャネルCH1には3.3Vが割り当てられる。これにより、詳細は後述するが、機種の誤設定をいち早く判断可能にしている。
【0029】
各基準電圧を生成するために、本説明では、図6に示すような九個の分圧回路114d〜114lが保護回路11には備わっている。なお、図6では、都合上、分圧回路114d,114lのみが示される。分圧回路114dは、抵抗分圧回路であって、複数の抵抗器により、入力定電圧Vccを分圧して、対応する基準電圧(例えば、第二温度センサ642g用の2.957V)を生成する。他の分圧回路114e〜114kが生成する基準電圧に関しては、下表2を参照されたい。
【0030】
【表2】
【0031】
再度図5を参照する。本説明では、MUX113a,MUX113bのチャネルCH1はグランドに接続される。MUX113cのチャネルCH1には定電圧Vccが入力される。即ち、MUX113a,MUX113bの空きチャネルCH1には、同一マルチプレクサMUX113a,113bの他チャネルCH2〜CH4に第一温度センサ641の基準電圧が割り当てられていれば、空きチャネルCH1には定電圧Vccが割り当てられる。逆に、同一マルチプレクサMUX113a,113bの他チャネルCH2〜CH4に第二温度センサ642の基準電圧が割り当てられていれば、空きチャネルCH1にはグランド電圧値が割り当てられる。
【0032】
また、MUX113cのチャネルCH1には、定電圧Vccの代わりに、MUX113cの他チャネルCH2〜CH4に割り当てられていない温度センサ641,642(例えば、第二温度センサ642gの基準電圧2.957V)に相当(あるいは近似する)電圧値が割り当てられても良い。
【0033】
上記各MUX113a〜113cには、制御手段7から出力された選択信号S1,S2が入力される。ここで、選択信号S1,S2のそれぞれは、二値信号であって、Hi,Loの組み合わせにより、機種A〜Cのいずれか一つを特定する(下表3を参照)。
【0034】
【表3】
【0035】
以上のような選択信号S1,S2の組みは、各機種A〜Cの工場出荷前に適切に設定される。各MUX113a〜113cは、共通の選択信号S1,S2が示す値に従って、チャネルCH1〜C4のいずれかを選択し、選択したチャネルに割り当てられた基準電圧を出力する。ここで、MUX113a〜113cの同一チャネルは同一機種に割り当てられているため、各MUX113a〜113cの出力基準電圧は特定の一つの機種のものとなる。
【0036】
保護回路11にはさらに、合計九個の比較器111d〜111lが備わっている。本保護回路11では、比較器111e〜111g,111i,111jが第一比較器の例である。残りの比較器111d,111h,111k,111lは第二比較器の例である。本説明では、第二比較器111dの非反転入力端子(+端子)には、MUX113aの出力基準電圧が、その反転入力端子(−端子)には、第二温度センサ642gの出力電圧が入力可能になっている。比較器111dは、入力基準電圧と入力電圧とを比較し、入力電圧の方が大きい場合(即ち過昇温時)にはLoで、そうでない場合にはHiの二値信号(即ち、比較結果)を出力する。また、第一比較器111eの非反転入力端子には、第一温度センサ641dの出力電圧が、その反転入力端子には、MUX113bの出力基準電圧が入力可能となっている。比較器111eは、入力基準電圧と入力電圧とを比較し、入力電圧の方が小さい場合(即ち過昇温時)にはLoで、そうでない場合には、Hiの二値信号を出力する。他の比較器111f〜111lの入出力信号については、下表4を参照されたい。
【0037】
【表4】
【0038】
上記の通り、本保護回路11では、第二温度特性を持つNCセンサやサーモパイルのような第二温度センサ642の出力電圧は、反転入力端子(−端子)に入力される。また、第一温度特性を持つサーミスタのような第一温度センサ641の出力電圧は、非反転入力端子(+端子)に入力される。よって、定着温度が過昇温でない時、対応する比較器111からは、Hiの二値信号が出力される。それに対し、過昇温となっている時、保護回路11による過昇温プロテクトが作動し、対応する比較器111からはLoの二値信号が出力される。
【0039】
保護回路11にはさらに、論理和回路112が備わる。論理和回路112は、比較器111d〜111lのいずれか一つ以上からLoが出力された場合に、通電停止信号を、図2に示すリレー制御回路9およびヒータ点灯回路10に出力する。
【0040】
なお、各温度センサ641,642の出力電圧は制御手段7にも入力される。制御手段7は、各温度センサ641,642の出力電圧に基づき定着温度を目標温度とすべく、ヒータ62への給電を制御する。
【0041】
《第五欄:本保護回路の作用・効果》
以上説明した通り、本保護回路11は、複数種の画像形成装置1に備わる第一温度センサ641と第二温度センサ642とに接続可能に構成されている。より具体的には、本保護回路11では、第二温度特性を持つNCセンサやサーモパイルのような第二温度センサ642の出力電圧は、第二比較器111d等の反転入力端子(−端子)に入力される。また、第一温度特性を持つサーミスタのような第一温度センサ641の出力電圧は、第一比較器111e等の非反転入力端子(+端子)に入力される。
【0042】
また、保護回路11には、各MUX113a〜113cの同一チャネルに、同一機種で使用される三個の基準電圧が一意に(固有的に)割り当てられる。上記各MUX113a〜113cは、入力選択信号S1,S2に従って、複数機種のうち、本保護回路11が実装される機種で使用される基準電圧を出力可能となっている。第二温度特性を持つNCセンサやサーモパイルのような第二温度センサ642向けの基準電圧は、この第二温度センサ642の出力電圧が入力される第二比較器111d等の非反転入力端子(+端子)に入力される。また、第一温度特性を持つサーミスタのような第一温度センサ641の基準電圧は、この第一温度センサ641の出力電圧が入力される第一比較器111e等の反転入力端子(−端子)に入力される。
【0043】
このように、本保護回路11は、単一の回路基板にて、複数種の画像形成装置1に実装可能で、実装された画像形成装置1に適切な過昇温保護を実現できる。よって、画像形成装置1の製造業者の基板管理にかかる負荷を軽減することができる。
【0044】
また、付加的な技術的効果として、下記が挙げられる。保護回路11によれば、各MUX113a〜113cには必ず、下表5に示すように、第一温度特性を持つ第一温度センサ641と、第二温度特性を持つ第二温度センサ642とが割り当てられている。なお、表5では、第二温度センサ642にはグレーにて網掛けが付されている。例えば、MUX113aに関しては、チャネルCH4にGNDが、チャネルCH3に第一温度センサ641eが、チャネルCH2には第一温度センサ641dが、チャネルCH1には第二温度センサ642gが割り当てられている。他のMUX113b,113cに関しては、下表5を参照されたい。本保護回路11では、マイコンの故障等でプログラムが暴走した場合や、束線の地絡又は断線等のエラーがあった場合に、選択信号S1,S2が所望の論理にならず、その結果、保護回路11に、実際の機種とは異なり誤った機種が設定され、誤った基準電圧が設定されることがある。しかし、上記のような割り当てによれば、いち早く、保護回路11は通電停止信号を図2に示すリレー制御回路9およびヒータ点灯回路10に出力することが出来る。
【0045】
【表5】
【0046】
具体例を挙げると、MUX113aの場合、保護回路11は機種Aに実装されているにもかかわらず、機種Cと誤った機種に設定された場合について検討する。この場合、保護回路11は、本来的には、第一温度センサ641eの出力電圧を0.194Vの基準電圧で比較しなければならないが、誤設定により、第二温度センサ642g用の基準電圧(2.957V)で比較することになってしまう。しかし、第一温度センサ641eの出力電圧を2.957Vの基準電圧で比較すると、かなり温度が低い状態で比較器111jはLoの比較結果を出力し、その結果、保護回路11は、機種Aの電源スイッチ投入直後に通電停止信号をリレー制御回路9等に出力することができる。
【0047】
また、前述の通り、本保護回路11では、各MUX113a〜113cの同一チャネルに、同一機種で使用される第一温度センサ641と第二温度センサ642が少なくとも一つずつ割り当てられる(前表1を参照)。この割り当てによれば、いち早く、保護回路11は通電停止信号を図2に示すリレー制御回路9およびヒータ点灯回路10に出力できる場合がある。例えば、保護回路11は機種Aに実装されているにもかかわらず、機種Bと誤った機種に設定された場合について検討する。この場合、比較器111jは、誤設定にも関わらず、いち早くLoの比較結果を出力できないが、比較器111lがいち早くLoの比較結果を出力できるため、その結果、保護回路11は、機種Aの電源スイッチ投入直後に通電停止信号をリレー制御回路9等に出力することができる。
【0048】
また、本保護回路11のように、MUX113a〜113cに空きチャネルが出来る場合には、上表5に示すように、空きチャネルに、定電圧Vccまたは0V(グランド電圧値)が割り当てられる。他にも、MUX113cのチャネルCH1には、定電圧Vccの代わりに、MUX113cの他チャネルCH2〜CH4に割り当てられていない温度センサ641,642(例えば、第二温度センサ642gの基準電圧2.957V)に相当(あるいは近似する)電圧値が割り当てられても良い。これによって、上記の同様の理由で、機種設定に誤りが生じても、保護回路11は、機種Aの電源スイッチ投入直後に通電停止信号をリレー制御回路9等に出力することができる。
【0049】
ここで、下表6は、本保護回路11が機種の誤設定時に電源投入直後に通電停止信号を出力可能かを示す表である。より具体的には、本保護回路11が実際に実装された機種と、誤設定された機種との組み合わせ毎に、比較器111d〜111lの比較結果と、通電停止信号の出力有無を示す表である。下表6に示すように、機種の誤設定があった場合には、比較器111d〜111lの少なくとも一つが電源投入直後にLoの比較結果を出力し、それに応答して、保護回路11から通電停止信号が出力されていることが分かる。このように、本保護回路11によれば、基板共通化により生じる誤設定という問題も解消可能な高い安全性を有する保護回路11を提供することもできる。
【0050】
【表6】
【0051】
《第六欄:第一変形例》
上述では、各基準電圧は、図6に例示する分圧回路114d〜114lにより生成されていた。これは、各基準電圧を専用のハードウェア構成である分圧回路114d〜114lで生成することで、保護回路11の過昇温プロテクトの安全性・信頼性の向上を図っている。しかし、分圧回路114d〜114lに限らず、図7に示すように、制御手段7のマイコンに内蔵されるD/A変換手段71a〜71iにより、対応する基準電圧が生成されても構わない。なお、図7には、都合上、D/A変換手段71a,71iのみが示されている。
【0052】
《第七欄:第二変形例》
上述では、選択信号S1,S2は制御手段7により生成されて各MUX113a〜113cに入力されていた(図5を参照)。しかし、これに限らず、選択信号S1,S2は、過昇温プロテクトの安全性等の向上を図る観点で、専用のハードウェア構成である信号生成回路115であって、定着温度監視装置2に備わる信号生成回路115により生成されても構わない。信号生成回路115は、図8に例示するように、プルアップ回路115a,115bを含み、それぞれのスイッチSWをマニュアル設定することで、前表3に例示するような選択信号S1,S2を生成可能となっている。なお、各スイッチSWは、ショートバー、ディップスイッチまたはジャンパーピン等で実現可能である。
【0053】
《第八欄:第三変形例》
上述では、過昇温プロテクトの安全性等の向上を図る観点で、各比較器111d〜111lの比較結果は論理和回路112に入力されていた。しかし、これに限らず、図9に例示するように、各比較器111d〜111lの比較結果は、制御手段7のマイコンに備わるポートにパラレルに入力され、制御手段7は、プログラムにより、入力比較結果の論理和を演算して、通電停止信号を生成しても構わない。この場合、後述の第四変形例とは異なり、各比較器111d〜111lは、保護回路11が画像形成装置1に実装された時、いずれかの温度センサ641,642と一対一の関係で接続されることになるため、マイコンは、入力比較結果に基づき、どの温度センサ641,642で過昇温となっているかを特定し易くなる。これによって、画像形成装置1のメンテナンス性を向上させることが可能となる。
【0054】
《第九欄:第四変形例》
第八欄以外にも、図10に例示するように、各比較器111d〜111lの比較結果は、ワイヤードオア接続されて、制御手段7のマイコンに備わる単一のポートに入力され、制御手段7は、プログラムにより、入力比較結果に基づき、通電停止信号を生成しても構わない。この場合、前述の第三変形例とは異なり、使用するポート数が一つで済むため、マイコンの回路規模を低減させることができる。これにより、画像形成装置1の低コスト化することが出来る。
【0055】
なお、図8図9の例では、各温度センサ641,642の出力電圧と、各比較器111d〜111lの比較結果を同一のマイコンに入力させているが、別個のマイコンに入力させても構わない。
【0056】
また、多数の温度センサ641,642が定着手段6に備わる場合には、第三変形例および第四変形例を組み合わせて、画像形成装置1に実装しても構わない。
【0057】
《第十欄:付記》
上記実施形態および各種変形例において、温度センサ641,642の総数、比較器111の総数、MUX113の総数等に関しては、画像形成装置1や定着手段6の仕様に応じて適宜適切に選ばれる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る過昇温保護回路および画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリおよびこれら機能を備えた複合機に好適である。
【符号の説明】
【0059】
1 画像形成装置
6 定着手段
641 第一温度センサ
642 第二温度センサ
7 制御手段
71a〜71l D/A変換手段
11 過昇温保護回路
113a〜113c マルチプレクサ
111e〜111g,111i,111j 第一比較器
111d,111h,111k,111l 第二比較器
114d〜114l 分圧回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10