【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、特願2012−244307号公報の
図5より派生した従来の外フランジよりなるインテグラルフランジの改良に関するものである。本出願の
図5、
図6は、従来の外フランジよりなるインテグラルフランジを示したもので、インテグラルフランジとしての軸方向基準位置は既にアダプターハブを構成に持たない分主軸軸受位置に近接した位置を占めている。しかし、依然としてたわみ板33の位置がインテグラルフランジFoと位置を同じくする主軸5端面からDoと軸方向に離れており、他形式の板ばね式フレキシブルカップリングであるダイヤフラム式カップリングと比べ、遜色がある。
図5で、たわみ板33とインテグラルフランジFoとの間にたわみ板フランジは無く、たわみ板用のボルト34の頭部が近接配置を邪魔しているので、ボルト34の頭部形状、インテグラルフランジFoの詳細構成について見直し検討する。又、伝達トルクアップできないか見直しするが、伝達トルクアップするためたわみ板のボルト本数を増やすと、
図6上半分に示すように分割スペーサー側壁のソケット工具装入穴32lの空間が増え(
図6は14本ボルトたわみ板適用の場合)装入穴間の余肉部32kが極めて狭くなり、12本ボルト程度以上では補強するか、又は補強が不要な組合せたわみ板フランジの新たな構成を考え出すかのいずれかとなる。
【0005】
本出願は、特願2014−020946号公報の
図2(a)(b)に示された組合せたわみ板フランジを、ISO 10441及びAPI 671に規定されたインテグラルフランジとして活用する方式について見直し改良したものである。既にインテグラルフランジとしての軸方向基準位置は、ハブを構成に持たない分主軸軸受位置に近接した位置を占めており、径方向の正確な位置決めは、たわみ板の外径と内径とを案内として用いる方式が良いのか、見直し検討する。又、連続した円輪形の薄板金属ディスクカップリングの本発明において、組合せたわみ板フランジは、一方のたわみ板フランジをインテグラルフランジとして使用するものであり、慣性モーメントを削減した組合せたわみ板フランジである他に、伝達トルクアップはできないか見直し検討する。
【0006】
上記段落(0004)(0005)で述べたごとく、インテグラルフランジは形式が異なる2種類があり、駆動側及び被駆動側で互い違いにインテグラルフランジが適用され得るので、いずれの場合についても対応できるよう見直し検討する。
【0007】
上記段落(0004)〜(0006)の伝達トルクアップの検討は、たわみ板フランジへ締結されたたわみ板用のボルト曲げ強度アップの検討だけでなく、直列配置されたたわみ板の強度アップが両立するように検討する必要がある。
【0008】
外フランジよりなるインテグラルフランジ適用の場合、間にたわみ板フランジが配置されない構成であればインテグラルフランジとたわみ板との軸方向位置をさらに近接できないか検討されるべきであったが検討されず、又、組合せたわみ板フランジの一方のたわみ板フランジよりなるインテグラルフランジ適用の場合、従来のたわみ板の内外径を案内とした正確な径方向の位置決めは、適切か見直しされるべきであったが見直しされなかった。
【0009】
機械装置へ組込みされる連続した円輪形の薄板金属ディスクのカップリングは、オーバーハング、振れ回り、ねじり共振等の問題を確実に解決できておらず、機械装置からの振動、騒音等を発生させ得る情況があった。
【0010】
本発明は、この様な従来の問題を解決しようとするもので、改良インテグラルフランジ、それを用いた薄板金属ディスクのカップリング、それを備えた機械装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明の請求項1のインテグラルフランジは、
同軸に配置されトルクを伝達する複数の主軸(3)に、前記主軸(3)と同軸に配置されフランジ(21e)に連結する一体に締結された分割スペーサー(22a)及び中間軸(22i)を介して、一体に形成されたインテグラルフランジ(Fn)であって、
前記フランジ(21e)における、分割スペーサーたわみ板フランジ(22b)と軸方向同一位置に周方向互い違いに配置されたフランジたわみ板フランジ(21f)と、
前記分割スペーサー(22a)における、前記フランジたわみ板フランジ(21f)と軸方向同一位置に周方向互い違いに配置された前記分割スペーサーたわみ板フランジ(22b)と、
前記フランジたわみ板フランジ(21f)における、径方向外側且つ軸方向外側に軸方向厚さを有するフランジチューブ結合部(21j)と、
前記分割スペーサーたわみ板フランジ(22b)における、径方向外側且つ軸方向内側に軸方向厚さを有する分割スペーサーチューブ結合部(22g)と、
前記フランジたわみ板フランジ(21f)及び前記分割スペーサーたわみ板フランジ(22b)を、前記フランジたわみ板フランジ(21f)及び前記分割スペーサーたわみ板フランジ(22b)の軸方向外側から連結するたわみ板(23n)及び複数のクランプワッシャー(26)と、
前記たわみ板(23n)及び前記複数のクランプワッシャー(26)を前記フランジたわみ板フランジ(21f)と前記分割スペーサーたわみ板フランジ(22b)とに締め付ける複数のたわみ板用のボルト(24)及び複数の回り止めナット(27)と、
前記フランジたわみ板フランジ(21f)と前記たわみ板(23n)との間に介在させる複数のクランプワッシャー(26c)と、
前記分割スペーサーたわみ板フランジ(22b)と前記たわみ板(23n)との間に介在させる複数のクランプワッシャー(26d)とを備え、
前記たわみ板(23n)は、軸方向内側へ周方向互い違いに配置された前記各複数のクランプワッシャー(26c)及びクランプワッシャー(26d)と、軸方向外側へ周方向に配置された前記複数のクランプワッシャー(26)と、径方向同一ピッチ円直径上に挟まれ位置するものであり、
前記クランプワッシャー(26c)は、前記フランジたわみ板フランジ(21f)との間に境界面を設けることなく、前記フランジたわみ板フランジ(21f)と連続して一体に構成され、
前記クランプワッシャー(26d)は、前記分割スペーサーたわみ板フランジ(22b)との間に境界面を設けることなく、前記分割スペーサーたわみ板フランジ(22b)と連続して一体に構成され、
前記インテグラルフランジ(Fn)は、前記複数のたわみ板用のボルト(24)の頭部を収納する段付穴(21d)を設け、前記フランジチューブ結合部(21j)の径方向外側且つ軸方向外側のフランジ外フランジ(21k)を軸方向外側より締結することを特徴とする。係る構成によれば、たわみ板用のボルト24の頭部はインテグラルフランジFnの段付穴21dへ収納され、たわみ板23nとインテグラルフランジFnとは、軸方向に近付けた配置ができ、オーバーハングによる軸受負担を減じる。
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明の請求項2のインテグラルフランジは、
同軸に配置されトルクを伝達する複数の主軸(1)に、前記主軸(1)と同軸に配置され一体に締結された分割スペーサー(12a)及び中間軸(12i)を介して、一体に形成されたインテグラルフランジ(Fc)であって、
前記インテグラルフランジ(Fc)における、分割スペーサーたわみ板フランジ(12b)と軸方向同一位置に径方向互い違いに配置された前記インテグラルフランジ(Fc)と、
前記分割スペーサー(12a)における、前記インテグラルフランジ(Fc)と軸方向同一位置に径方向互い違いに配置された前記分割スペーサーたわみ板フランジ(12b)と、
前記インテグラルフランジ(Fc)における、径方向内側且つ軸方向外側に一体の前記主軸(1)と、
前記分割スペーサーたわみ板フランジ(12b)における、径方向外側且つ軸方向内側に配置された分割スペーサーチューブ(12e)と、
前記インテグラルフランジ(Fc)及び前記分割スペーサーたわみ板フランジ(12b)を、前記インテグラルフランジ(Fc)及び前記分割スペーサーたわみ板フランジ(12b)の軸方向内側から連結するたわみ板(13n)及び複数のクランプワッシャー(16)と、
前記たわみ板(13n)及び前記複数のクランプワッシャー(16)を前記インテグラルフランジ(Fc)と前記分割スペーサーたわみ板フランジ(12b)とに締め付ける複数のたわみ板用のボルト(14)及び複数の座付き回り止めナット(17)と、
前記インテグラルフランジ(Fc)と前記たわみ板(13n)との間に介在させる複数のクランプワッシャー(16c)と、
前記分割スペーサーたわみ板フランジ(12b)と前記たわみ板(13n)との間に介在させる複数のクランプワッシャー(16d)とを備え、
前記たわみ板(13n)は、軸方向外側に径方向互い違いに配置された前記各複数のクランプワッシャー(16c)及びクランプワッシャー(16d)と、軸方向内側へ周方向に配置された前記複数のクランプワッシャー(16)と、径方向同一ピッチ円直径上に挟まれ位置するものであり、
前記クランプワッシャー(16c)は、前記インテグラルフランジ(Fc)との間に境界面を設けることなく、前記インテグラルフランジ(Fc)と連続して一体に構成され、
前記クランプワッシャー(16d)は、前記分割スペーサーたわみ板フランジ(12b)との間に境界面を設けることなく、前記分割スペーサーたわみ板フランジ(12b)と連続して一体に構成され、
前記インテグラルフランジ(Fc)は、前記たわみ板(13n)と、前記複数のクランプワッシャー(16c)とが連結することを特徴とする。係るたわみ板13n腕の張力を活用する構成によれば、分割スペーサーたわみ板フランジ12bは、嵌合部での組立ガタを排除してインテグラルフランジFcへ正確に径方向位置決めされ、運転中の遠心力による隙間発生はなく、又隙間発生による振れ回り力の発生もない。
【0013】
上記課題を解決するためになされた本発明の請求項3のインテグラルフランジは、
インテグラルフランジにおいて、駆動側に請求項1記載のインテグラルフランジ(Fn)を備え、被駆動側に請求項2記載のインテグラルフランジ(Fc)を備えた、又は駆動側に請求項2記載のインテグラルフランジ(Fc)を備え、被駆動側に請求項1記載のインテグラルフランジ(Fn)を備えたことを特徴とする。係る構成によれば、装置メーカーによって要求が異なるインテグラルフランジの種類に対し、統一した対処ができるようになった。
【0014】
上記課題を解決するためになされた本発明の請求項4のインテグラルフランジは、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のインテグラルフランジにおいて、前記座付き回り止めナット(27、17)の座面(27c、17c)と、前記たわみ板用のボルト(24、14)の頭部座面(24c、14c)との間に挟まれる積層間における、前記クランプワッシャー(26c、26d、16c、16d)と、前記たわみ板(23n、13n)とを用いたインテグラルフランジであって、
前記たわみ板用のボルト(24、14)の径をd、前記たわみ板(23n、13n)の厚さをTnとすると、
0.45d≦Tn≦0.56dであるn本ボルト(nはたわみ板のボルト本数であって6、8、10、12、14のいずれか)のたわみ板を用いたことを特徴とする。係る構成によれば、インテグラルフランジに用いられるたわみ板フランジのたわみ板用ボルト穴回りのたわみ板を含む円筒部積層構造は、たわみ板用のボルト曲げ強度、たわみ板の引張り強度が共に強化され、確実な伝達トルクアップができる。
【0015】
上記課題を解決するためなされた本発明請求項5薄板金属ディスクのカップリングは、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のインテグラルフランジを用いたことを特徴とする。係るインテグラルフランジに連続した円輪形の薄板金属ディスクを用いたカップリングは、オーバーハング、振れ回り、ねじり共振等の問題についてより確実に解決できる。
【0016】
上記課題を解決するためになされた本発明の請求項6の機械装置は、
請求項5に記載の薄板金属ディスクのカップリングを備えたことを特徴とする。係る薄板金属ディスクのカップリングを備えた機械装置は、機械装置からの振動発生、機械装置からの騒音発生をより確実に回避できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明請求項1によれば、たわみ板用のボルト24の頭部はインテグラルフランジFnの段付穴21dへ収納され、たわみ板23nはインテグラルフランジFnへ軸方向に近付け配置されるので、オーバーハングによる中間軸部質量の各軸受へのモーメント負荷は大幅に減じられる。又、各たわみ板フランジ外径の屈曲部を持つ構成は従来の伝達トルク重視用途で問題があった分割スペーサーの側壁を廃止させ、クランプワッシャー26c及び26dの一体構成によりたわみ板用ボルトの曲げ強度がアップされ、14本ボルトたわみ板適用までの伝達トルクアップの基礎ができた。
【0018】
本発明請求項2によれば、周方向互い違い各n/2ヶ所のたわみ板外径及びたわみ板内径を案内径として用いた従来の組立は廃止され、たわみ板の腕の張力を活用した組立により正確な径方向位置決めが行われ且つ維持され、従来の運転中の遠心力によるたわみ板内径と案内径との隙間発生はなくなり、振れ回り力は低減された。クランプワッシャー16c及び16dの一体の構成によりたわみ板用ボルトの曲げ強度がアップされ、14本ボルトたわみ板適用までの伝達トルクアップの基礎ができた。
【0019】
本発明請求項3によれば、駆動側と被駆動側との異なる種類のインテグラルフランジの互い違い適用は、中央部での統一された中間軸適用が可能となり、従来の各装置メーカーで異なる要求への対処に比べ各段に容易な対処となった。
【0020】
本発明請求項4によれば、従来の別体クランプワッシャーの構成は改良され一体となり、たわみ板用のボルト穴回りのたわみ板の厚さ増を含む円筒部積層構造は新たな積層構成となり強度アップされ、さらに本発明に伴うたわみ板分担応力についての制約事項なしの効果が加わり、伝達トルクは82%以上アップされる。
【0021】
本発明請求項5によれば、連続した円輪形の薄板金属ディスクを用いたカップリングは、オーバーハングによる主軸軸受へのモーメント負荷を大幅に減じ、正確な径方向位置決めにより振れ回り力を減じ、ねじり共振回避が確実にできる。
【0022】
本発明請求項6によれば、連続した円輪形の薄板金属ディスクのカップリングを備えた機械装置は、機械装置から発生する振動、騒音をより確実に回避することができる。