(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板と、前記基板上に形成されたバンクと、前記バンクによって区画された各凹空間に形成された発光層と、を有する有機EL表示装置を製造する過程において、バンクにおける欠陥部が存在する部分を補修するバンク補修方法であって、
バンクにおける欠陥部を検出し、
欠陥部が検出された場合に、当該欠陥部が存在するバンクの両側に隣接する凹空間の各々の中に、
前記凹空間を、前記欠陥部に近接する空間部分からなる第1空間と、前記欠陥部に近接しない空間部分からなる第2空間とに仕切る堰を形成することによってバンクの補修を行い、
前記堰の各々は、その高さが一番低い箇所において、
バンクの高さHに対する当該堰の高さhの比をh/Hとし、当該堰の幅をWμmとするとき、
(h/H)+0.1W≧1.5、0.5≦(h/H)≦2.0、5≦W≦50の条件を満たす、
バンク補修方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<発明に到った経緯>
フラットディスプレイ基板の製造技術において、例えば、特許文献1には、隔壁を形成後、インク塗布前に、隔壁における決壊箇所の周囲の一部を除去し、除去した箇所に溌インク性のポリマーからなる隔壁修正液を塗布して、決壊箇所を修復する技術が開示されている。
【0023】
バンクが部分的に決壊している場合は、このような技術を用いて決壊部分の修復をし、修復後にインクを塗布すれば、異なる色のインクの混合を防止することができると考えられる。
【0024】
しかし、バンクの欠陥部には、決壊だけでなく、異物が付着することによって生じる欠陥部もある。そして、上記従来技術のようにポリマーを塗布する方法では、異物に起因する欠陥部を補修することは難しいと考えられる。例えば、バンクに付着した異物にポリマー液を塗布しようとすると、異物がポリマー液をはじいて、うまく補修できないこともある。
【0025】
また、発明者の考察によると、現状の有機EL表示装置においてもバンクの幅は10μm程度とかなり狭く、今後、画素の高精細化が進むにつれてバンクの幅がさらに狭くなることが予想されることから、バンクの決壊箇所に塗布針を位置合わせして補修するのも、技術的な難しさがある。
【0026】
さらに、特許文献1のような補修方式だと、隔壁の補修部のポリマーが塗布するインクを弾いてしまう場合があり、その場合、隣接する発光層にインクを押し出して混色を発生させてしまう。
【0027】
このような考察のもとに、特に高精細のEL表示装置において、バンクにおける欠陥部が生じた部分を容易に補修することができ、且つ、発光色の不良を抑えることのできる方法を検討した。
【0028】
ここで、バンクに欠陥部が生じたときに生じる主要な課題が、欠陥部自体にあるのではなく、発光層を形成するインクが混色することによって、製造されたパネルを駆動したときに、混色領域において発光色不良が生じることにあることに着目した。
【0029】
そして、バンクの欠陥部自体を補修しなくても、欠陥部の周辺の凹空間の中に堰を設けてインクの混色領域が広がるのを抑えることによって、発光色不良の問題を解決できることを見出した。
【0030】
また発明者は、さらに、堰がインクの混色領域が広がるのを抑える機能を果たす上で好ましい条件について考察し、そのために堰の高さと堰の幅(堰の底部の幅)とが満たすべき条件を見出し、本発明を案出するに到った。
【0031】
<発明の態様>
本発明の一態様にかかるバンク補修方法は、基板と、基板上に形成されたバンクと、バンクによって区画された各凹空間に形成された発光層と、を有する有機EL表示装置を製造する過程において、バンクにおける欠陥部が存在する部分を補修するバンク補修方法であって、バンクにおける欠陥部を検出し、欠陥部が検出された場合に、当該欠陥部が存在するバンクの両側に隣接する凹空間の各々の中に、凹空間を、欠陥部に近接する空間部分からなる第1空間と、欠陥部に近接しない空間部分からなる第2空間とに仕切る堰を形成することによってバンクの補修を行うこととした。
【0032】
そして、堰の各々は、その高さが一番低い箇所において、バンクの高さHに対する当該堰の高さhの比をh/Hとし、当該堰の幅をWμmとするとき、
(h/H)+0.1W≧1.5、0.5≦(h/H)≦2.0、5≦W≦50以下の条件を満たすよう設定した。
【0033】
それによって、凹空間の各々にインクを塗布して発光層を形成するときに、凹空間の中に形成される堰によって、インク層が仕切られるので、インクが混ざり合う範囲が、欠陥部に近接しない第2空間に広がることがない。従って、有機EL表示装置における表示不良を抑えることができる。
【0034】
また、欠陥部の周囲に堰を形成する方法をとっているので、欠陥部が異物に起因する場合でも、比較的容易に堰を形成できる。
【0035】
上記バンク補修方法において、以下のようにしてもよい。
【0036】
基板上に、基板面に沿った一方向に伸長する平面視短冊状のバンクが複数本並列に配列され、堰を形成する際に、欠陥部が存在するバンクの両側に隣接する凹空間の各々に、欠陥部が存在するバンクにおいて欠陥部を一方向に挟む2点のそれぞれから、欠陥部が存在するバンクの隣のバンクに亘る形状の堰を、対で形成する、
さらに、欠陥部が存在するバンク及び隣のバンクのそれぞれにおける各堰の端部が接する部分に、当該部分の上部から突出する突状部を形成する。これによって、堰の上にインク着弾したときにも、隣りの凹空間にインクが入り込んで混色が生じるのが抑えられる。
【0037】
基板上に、基板面に沿った一方向に伸長する平面視短冊状のバンクが複数本並列に配列され、堰を形成する際に、欠陥部が存在するバンクにおいて欠陥部を一方向に挟む2点の一方から欠陥部を迂回して他方に亘る形状の堰を対で形成する。
【0038】
ここで、堰の各々は、上記2点の一方から他方に亘る途中で、欠陥部が存在するバンクに隣接するバンクと接していてもよいし、欠陥部が存在するバンクに隣接するバンクに非接触であってもよい。
【0039】
欠陥部は、バンクにおける異物が存在している部分であってもよいし、バンクにおいて決壊が生じている部分であってもよい。
【0040】
堰の各々において、h/H及びWは、さらに(h/H)+0.1W≧2.0の条件を満たすことが好ましい。
【0041】
本発明の一態様にかかる有機EL表示装置は、基板と、基板上に形成されたバンクと、バンクによって区画された各凹空間に形成された発光層と、を有する有機EL表示装置であって、基板上のバンクの中で欠陥部が存在するバンクの両側に隣接する凹空間の各々の中に、発光層を、欠陥部に近接する部分からなる第1発光層と、欠陥部に近接しない部分からなる第2発光層とに仕切る堰を形成することによってバンクの補修を行うこととした。
【0042】
そして、堰の各々は、その高さが一番低い箇所において、バンクの高さHに対する当該堰の高さhの比をh/Hとし、当該堰の幅をWμmとするとき、
(h/H)+0.1W≧1.5、0.5≦(h/H)≦2.0、5≦W≦50の条件を満たすよう設定した。
【0043】
このような有機EL表示装置によれば、凹空間の各々に発光層を形成するときに、凹空間の中に形成されている堰によってインク層が仕切られるので、発光層で混色が生じる範囲が、欠陥部に近接する第1発光層に限られ、欠陥部に近接しない第2発光層には広がらない。従って、この有機EL表示装置は、表示不良が抑えられ、良好な表示性能を有する。
【0044】
また、欠陥部の周囲に堰を形成しているので、堰の形成も比較的容易にできる。
【0045】
上記有機EL表示装置において、以下のようにしてもよい。
【0046】
基板上には、基板面に沿った一方向に伸長する平面視短冊状のバンクが複数本並列に配列され、欠陥部が存在するバンクの両側に隣接する凹空間の各々において発光層を仕切る堰は、欠陥部が存在するバンクにおいて欠陥部を一方向に挟む2点のそれぞれから、欠陥部が存在するバンクの隣のバンクに亘る形状で、対で形成する。
【0047】
さらに、欠陥部が存在するバンク及び隣のバンクのそれぞれにおける各堰の端部が接する部分に、当該部分の上部から突出する突状部を形成する。
【0048】
基板上には、基板面に沿った一方向に伸長する平面視短冊状のバンクが複数本並列に配列され、各凹空間において発光層を仕切る堰を、欠陥部が存在するバンクにおいて欠陥部を一方向に挟む2点一方から欠陥部を迂回し他方に亘る形状で対形成する。
【0049】
ここで、堰の各々は、2点の一方から他方に亘る途中で、欠陥部が存在するバンクに隣接するバンクと接していてもよいし、欠陥部が存在するバンクに隣接するバンクに非接触であってもよい。
【0050】
欠陥部は、バンクにおける異物が存在している部分であってもよいし、バンクにおいて決壊が生じている部分であってもよい。
【0051】
第1発光層には、欠陥部が存在するバンクを挟んで隣接する両方の第2発光層の材料が含有されていてもよい。
【0052】
堰の各々において、h/H及びWは、さらに(h/H)+0.1W≧2.0の条件を満たすことが好ましい。
【0053】
本発明の一態様にかかる有機EL表示装置の製造方法は、基板上にバンクを形成し、バンクにおける欠陥部を検出し、欠陥部が検出された場合に、当該欠陥部が存在するバンクの両側に隣接する凹空間の各々の中に、凹空間を、前記欠陥部に近接する空間部分からなる第1空間と、前記欠陥部に近接しない空間部分からなる第2空間とに仕切る堰を形成し、その後、バンクで区画された凹空間のそれぞれに発光層を形成することとした。
【0054】
そして、堰の各々は、その高さが一番低い箇所において、バンクの高さHに対する当該堰の高さhの比をh/Hとし、当該堰の幅をWμmとするとき、(h/H)+0.1W≧1.5、0.5≦(h/H)≦2.0、5≦W≦50の条件を満たすよう設定した。
【0055】
このような製造方法においても、上記バンク補修方法と同様、凹空間の各々にインクを塗布して発光層を形成するときに、凹空間の中に形成される堰によって、インク層が仕切られるので、インクが混ざり合う範囲が、欠陥部に近接しない第2空間に広がることがない。従って、有機EL表示装置における表示不良を抑えることができる。
【0056】
また、欠陥部の周囲に堰を形成する方法をとっているので、欠陥部が異物に起因する場合でも、比較的容易に堰を形成できる。
【0057】
上記態様の有機EL表示装置の製造方法において、堰の各々を、欠陥部との間に間隙をあけて形成し、発光層を形成するときに、発光層の一部をこの間隙に形成してもよい。
【0058】
また、堰の各々において、h/H及びWは、さらに(h/H)+0.1W≧2.0の条件を満たすことが好ましい。
【0059】
<実施の形態1>
[有機EL表示装置の全体構成]
図1は、実施形態1に係る表示パネル100を有する有機EL表示装置1の構成を示す模式ブロック図である。
【0060】
図1に示すように、有機EL表示装置1は、表示パネル100と、これに接続された駆動制御部101とを有している。表示パネル100は、有機材料の電界発光現象を利用したパネルであり、
図2に示すように、複数の有機EL素子10が基板上にマトリクス状に配列されている。駆動制御部101は、4つの駆動回路102〜105と制御回路106とから構成されている。
【0061】
なお、表示パネル100に対する駆動制御部101の配置などは、これに限られない。
【0062】
[有機EL表示パネルの構成]
図2は、表示パネル100の表示面側から見た概略構成を模式的に示す平面図である。
図3は、表示パネル100を
図2のA−A'線で切断した一部拡大断面図である。表示パネル100は、いわゆるトップエミッション型であって、Z方向側が表示面となっている。
【0063】
表示パネル100の構成について、
図2,3を参照しながら説明する。
【0064】
図3に示すように、表示パネル100は、その主な構成として、下地基板11、画素電極12、ホール注入層13、バンク14、有機発光層15、電子輸送層16、共通電極17、封止層18を備える。そして、赤(R),緑(G),青(B)の何れかの発光色に対応する有機発光層15を有する有機EL素子10をサブピクセルとし、
図2に示すように、サブピクセルがマトリクス状に配設されている。
【0065】
なお、
図2においては、電子輸送層16、共通電極17、封止層18を取り除いた状態を示している。
【0066】
[下地基板]
下地基板11は、基板本体部11a、TFT(薄膜トランジスタ)層11b、層間絶縁層11cを有する。
【0067】
基板本体部11aは、表示パネル100の基材となる部分であり、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル樹脂、アルミナ等の絶縁性材料のいずれかで形成することができる。
【0068】
TFT層11bは、基板本体部11aの表面にサブピクセル毎に設けられており、各々には薄膜トランジスタ素子を含む画素回路が形成されている。
【0069】
層間絶縁層11cは、TFT層11b上に形成されている。層間絶縁層11cは、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等の有機絶縁材料、SiO
2(酸化シリコン)やSiN(窒化シリコン)等の無機絶縁材料からなり、TFT層11bと画素電極12との間の電気的絶縁性を確保すると共に、TFT層11bの上面に段差が存在してもそれを平坦化して、画素電極12を形成する下地面への影響を抑える機能を持つ。
【0070】
[画素電極]
画素電極12は、サブピクセル毎に個別に設けられた画素電極であり、例えば、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)等の光反射性導電材料からなる。本実施形態において、画素電極12は、陽極である。
【0071】
なお、画素電極12の表面にさらに公知の透明導電膜を設けてもよい。透明導電膜の材料としては、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)を用いることができる。透明導電膜は、画素電極12とホール注入層13の間に介在し、各層間の接合性を良好にする機能を有する。
【0072】
[ホール注入層]
ホール注入層13は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。上記の内、酸化金属からなるホール注入層13は、ホールを安定的に、またはホールの生成を補助して、有機発光層15に対しホールを注入および輸送する機能を有する。
【0073】
[バンク]
ホール注入層13の表面には、Y方向に伸長する平面視にて短冊状のバンク14が複数本並列に設けられている。このバンク14は、絶縁性の有機材料(例えばアクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等)からなる。
【0074】
各バンク14の断面は、
図3に示されるように台形であって、バンク14同士の間には、バンク14によって区画された溝空間が形成され、そこに有機発光層15が形成されている。
【0075】
このバンク14は、有機発光層15をウエット法で形成するときに、塗布されたインクがあふれ出ないようにする構造物として機能する。
【0076】
[有機発光層]
有機発光層15は、キャリア(正孔と電子)が再結合して発光する部位であって、R,G,Bのいずれかの色に対応する有機材料を含む。
【0077】
この有機発光層15は、上記のバンク14によって区画されたY方向に伸長する溝状の凹空間(
図6の溝空間20)に形成されている。
【0078】
そして、互いに色の異なる有機発光層15は、バンク14を挟んで配置されている。
【0079】
有機発光層15の材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体等の蛍光物質等が挙げられる。
【0080】
[電子輸送層]
電子輸送層16は、共通電極17から注入された電子を有機発光層15へ輸送する機能を有し、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などで形成されている。
【0081】
[共通電極]
共通電極17は、例えば、ITO、IZO等の導電性を有する光透過性材料で形成され全てのサブピクセルに亘って設けられている。
【0082】
本実施形態において、共通電極17は陰極である。
【0083】
[封止層18]
封止層18は、ホール注入層13、有機発光層15、電子輸送層16、共通電極17を水分及び酸素から保護するために設けられている。
【0084】
なお、図示はしないが、封止層18の上に、ブラックマトリクス、カラーフィルター等が形成されていてもよい。
【0085】
[表示パネルの製造方法]
図4は、表示パネル100の製造過程を示す模式工程図である。
【0086】
図5は、表示パネル100の製造工程の一部を模式的に示す断面図である。
【0087】
表示パネル100の製造方法について、
図4の工程図に基づいて、
図3、5を参照しながら説明する。
【0088】
まず、基板本体部11a上にTFT層11bを形成する(ステップS1)。
【0089】
続いて、TFT層11bの上に、絶縁性に優れる有機材料を用いてフォトレジスト法で層間絶縁層11cを形成して下地基板11を得る(ステップS2)。層間絶縁層11cの厚みは例えば約4μmである。なお、
図3の断面図および
図4の工程図には現れないが、層間絶縁層11cを形成するときに、コンタクトホール2(
図2参照)を形成する。
【0090】
次に、下地基板11上に、真空蒸着法またはスパッタ法によって、厚み400[nm]程度の金属材料からなる画素電極12を、サブピクセル毎に形成する(ステップS3)。
【0091】
続いて、スパッタ法などで酸化タングステンを、下地基板11および画素電極12上に一様に成膜することによって、ホール注入層13を形成する(ステップS4)。
【0092】
次に、バンク14を形成する(ステップS5)。このバンク14は、以下のようにフォトリソグラフィー法で形成することができる。
【0093】
まずバンク材料として、ネガ型感光性樹脂組成物を用意し、このバンク材料を、
図5(a)に示すように、ホール注入層13上に一様に塗布する。
【0094】
図5(b)に示すように、そのバンク材料層上に、形成しようとするバンク14のパターンに合わせた開口を有するマスクを重ねて、マスクの上から露光する。
【0095】
その後、余分なバンク材料をアルカリ現像液で洗い出すことによって、バンク材料をパターニングして、バンクパターンを形成する。
図5(c)に示すように未焼成のバンク14aがパターン形成される。そして隣接するバンク14a同士の間に、溝空間20が形成されている。
【0096】
次に、このパターン形成された未焼成バンク14aにおける欠陥部の発生を調べて(ステップS6)、欠陥部があればその補修を行う。
【0097】
このバンク補修については、後で詳しく説明するが、検出した欠陥部の近傍において、バンク14aの同士の間の溝空間20に補修材を塗布し乾燥することによって行う(ステップS7)。
図5(d)には、バンク14a間の溝空間20に補修材が塗布され、未焼成の堰5aが形成された状態を示している。
【0098】
その後、未焼成のバンク14aと未焼成の堰5aとを、同時に加熱焼成することによって、バンク14及び堰5が出来上がり、欠陥部の3の補修が完了する(ステップS8)。この同時焼成は、例えば、未焼成のバンク14a及び堰5aを、150℃〜210℃の温度で60分間加熱することによって行う。
【0099】
図5(e)は、この焼成によって、バンク14が形成されると共に堰5が形成された状態、すなわち、補修されたバンク14が形成された状態を示している。
【0100】
このように製造されたバンク14において、さらに、次の工程で塗布するインクに対するバンク14の接触角を調節してもよい。あるいは、バンク14の表面に撥水性を付与するために、所定のアルカリ性溶液や水、有機溶媒等によって表面処理したり、プラズマ処理を施してもよい。
【0101】
続いて、
図5(f)に示すように、バンク14同士の間の溝空間20に、発光層形成用のインクを塗布する。このインクは、有機発光層15を構成する有機材料と溶媒を混合したものであって、各溝空間20内にインクジェット法を用いて塗布する。
【0102】
そして、塗布されたインク層15aに含まれる溶媒を蒸発させて乾燥し、必要に応じて加熱焼成することによって、
図5(g)に示すように、各溝空間20内に有機発光層15が形成される(ステップS9)。
【0103】
次に、有機発光層15およびバンク14の上に、電子輸送層16を構成する材料を真空蒸着法で成膜して、電子輸送層16を形成する(ステップS10)。
【0104】
そして、ITO、IZO等の材料を、スパッタ法等で成膜して、共通電極17を形成する(ステップS11)。
【0105】
そして、共通電極17の表面に、SiN、SiON等の光透過性材料をスパッタ法あるいはCVD法等で成膜して、封止層18を形成する(ステップS12)。
【0106】
以上の工程を経て表示パネル100が完成する。
【0107】
[バンクの欠陥部を検出し補修する方法]
上記製造方法で説明したように、正確には、未焼成のバンク14a、未焼成の堰5aを形成した後、これら未焼成のバンク14aや堰5aを加熱焼成して硬化させることによって、最終的なバンク14や堰5が形成される。しかし、未焼成のバンク14aや未焼成の堰5aは、ある程度固体化して安定なバンク形状、堰形状となっているので、本明細書では、未焼成のバンク14aや未焼成の堰5aについても、単にバンク14a、堰5aと記載して説明する。
【0108】
[欠陥部3]
まず、バンク14aに存在する欠陥部3について説明する。
【0109】
この欠陥部3は、バンク14aに存在する異物、またはバンク14aの一部が欠損した部分である。
【0110】
異物は、例えば、製造装置に由来する金属片、空気中に存在する塵・埃の類である。そして、塵・埃は、繊維片であることが多い。
【0111】
図6(a)に示す例では、1本のバンク14aの上に、異物が付着して欠陥部3となっている。
【0112】
このようにバンク14a上に異物があると、
図5(f)に示すようにバンク14を挟んで隣接する溝空間20にインクを塗布してドーム状に盛ったインク層15aが形成されると、インク層15aが異物に接触して、発光色の異なるインク(例えば赤色インクと緑色インク)が混ざってしまうことがある。
【0113】
図7(a)に示す例では、1本のバンク14aの中に異物が入り込み、その異物がバンク14の壁面を隣の溝空間まで貫通して欠陥部3となっている。
【0114】
図7(b)に示す例では、1本のバンク14aの下に異物が入り込んで、その異物が隣の溝空間まで貫通して欠陥部3となっている。
【0115】
このように、バンク14aの中や下に異物が存在する場合でも、異物とバンク材料との密着性が悪い場合には、隙間が生じてインクの流通路ができたり、異物が繊維片の場合はインクを吸収するので、異物自体がインクの流通路となる。従って、異物を挟んで隣り合う溝空間に形成されたインク層15aの間で混色が生じる原因となる。
【0116】
図5(c)に示す例では、バンク14aの一部が決壊して欠陥部3となっている。このようなバンク14aにおける決壊は、例えば、
図5(b)に示すバンク材料層に対する露光の工程で、露光が不十分で重合が十分になされたかった箇所が、次の現像工程で洗い流されることによって発生する。このように決壊が生じた場合も、その決壊を介して隣り合う溝空間に形成されたインク層15aの間で混色が生じる。
【0117】
蛍光体層に混色領域が生じたパネルを用いて表示パネル100を製造すると、混色領域は、本来の発光色とは異なった発光色で発光する。一般に、異なる発光色の蛍光体が混合された場合、波長の長い蛍光体の発光色が優勢になる。
【0118】
例えば
図11(b)に示すような赤色インクと緑色インクが混合されて生じた混色領域は、赤色で発光することになる。従って、緑色で発光すべき領域の中で、混色領域となった領域では、赤色で発光することになるので、この混色領域が広がると発光色不良の原因となる。
【0119】
以上説明したように、バンク14aにおいて異物や決壊が生じている箇所は、発光色が異なるインクの混色が生じて、発光色不良の原因となるので、この箇所を欠陥部3としている。
【0120】
なお、
図7(a),(b)のようにバンク14aの下あるいは中に異物が入り込むと、その箇所では、バンク14が上に膨らんでバンク高さが高くなり、一方、
図7(c)のようにバンク14aが決壊した箇所では、バンク14の高さが低くなる。
【0121】
[欠陥部3の検出]
バンク14aにおける欠陥部3の検出は、例えば、下地基板11上に形成したバンク14aの表面画像を撮影し、その表面画像のパターン検査によって行う。
【0122】
図10は、バンク欠陥部の検出と、その補修に用いる補修装置の一例を示す概略構成図である。
【0123】
この補修装置200においては、ベース201上に、上記の下地基板11を載置するテーブル202と、撮像素子211及びディスペンサ212が取り付けられたヘッド部210とを有している。そして、テーブル202は、コントローラ230の指示に基づいてY方向に移動でき、ヘッド部210は、コントローラ230の指示によって、X方向及びZ方向に移動できるようになっている。
【0124】
従って、ヘッド部210に取り付けられている撮像素子211及びディスペンサ212は、コントローラ230の指示によって、テーブル202上に載置された下地基板11の上方で、下地基板11に対して、X方向、Y方向、Z方向に相対移動することができる。
【0125】
この補修装置200を用いて、下地基板11の上面に沿って撮像素子211を移動させながら、下地基板11の上面の画像データを取得し、コントローラ230の記憶部231に記憶する。
【0126】
コントローラ230は、その画像データにおいて、各バンク14aにおける部分同士を次々に比較して、相違点を検出することによって、欠陥部3の検出を行う。そして、欠陥部3が検出された場合、検出された欠陥部3の座標データ(X方向の座標値及びY方向の座標値)を、記憶部231に記憶する。
【0127】
なお、このような検出工程において、下地基板11上に形成されるバンク14aの中で、いくつかのバンク14aに欠陥部3が検出される可能性もあれば、すべてのバンク14aにおいて欠陥部3がゼロである可能性もある。
【0128】
そして、いずれかのバンク14aで欠陥部3が検出された場合には、その補修を行う。
【0129】
[欠陥部を有するバンクの補修方法]
次に、補修装置200におけるテーブル202に載置されている下地基板11の上に、ディスペンサ21から堰形成用の補修材を、欠陥部3の周囲を囲むように塗布して、堰5を形成することによって、バンク14aの補修を行う。
【0130】
ここでは、
図6(b)に示すように、欠陥部3を有するバンク14aの両側に隣接する各溝空間20の中に、欠陥部3をY方向に挟んだ2つの点A1、A2から、欠陥部3が存在するバンク14aの隣のバンク14aに亘る形状で堰5を対形成する。すなわち、欠陥部3の周囲を取り囲む溝空間20の中に、X方向に仕切る合計4つの堰5が井桁状に形成する。
【0131】
補修装置200が備えるディスペンサ212は、ニードル式のディスペンサであって、その先端部分に補修材を収納するタンク214が取り付けられ、タンク214内を貫通するようにニードル213が上下に移動することによって、ニードル213に付着させた補修材をマイクロリットル単位で塗布できるようになっている。
【0132】
このディスペンサ212におけるニードル213の駆動は、コントローラ230からの制御信号に基づいてなされる。
【0133】
補修材としては、光や熱を加えることによって硬化する樹脂の組成物を用いることができる。
【0134】
樹脂としては、例えば、(メタ)アクロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基などのエチレン性の二重結合を有する硬化性の樹脂が挙げられる。
【0135】
また、樹脂に対して架橋する架橋剤、例えば、エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物を添加してもよい。
【0136】
また、この樹脂構造の中に、フッ素が導入されているフッ化ポリマーを用いてもよい。補修材の樹脂にフッ素が導入されることによって、形成される堰5に溌インク性を付与することができる。あるいは、樹脂に各種溌インク剤を添加してもよい。撥インク剤の添加量は0.01〜10wt%とする。撥インク剤の添加量をこの範囲にすることで、樹脂組成物の貯蔵安定性が良好で、且つ形成される堰5の撥インク性も良好となる。
【0137】
なお、補修材として、バンク14aを形成するバンク材料と同じものを用いてもよい。ただしバンク材料の場合は、アルカリ現像液に可溶の酸成分が含まれているが、堰を形成する補修材には、アルカリ現像液に可溶の酸成分は含有しないことが好ましい。これは、堰14aを形成するときには現像は行われず、酸成分が堰5に残存すると堰5の耐溶剤性が低下するためである。
【0138】
上記補修材を構成する樹脂の組成物に、必要に応じて、溶剤、光重合開始剤を適宜添加してもよい。
【0139】
溶剤は、樹脂および光重合開始剤に対する溶解性を有するものであり、且つリペア時に乾燥しにくい溶剤(例えば沸点が150〜250℃程度の溶剤)を1種以上、より好ましくは2種以上用いる事が望ましい。
【0140】
光重合開始剤としては、市販の各種光重合開始剤を用いることができる。
【0141】
補修材の塗布時において、補修材の固形分は、例えば20〜90wt%に調整し、粘度は例えば10〜50cP(センチポイズ)/25℃に調整する。
【0142】
光重合開始剤の添加量は、焼成時における露光量に応じて調整するが、例えば全固形分に対して0.1〜50wt%、好ましくは5wt%〜30wt%である。
【0143】
堰5aの形成は、溝空間20内において、堰5を形成しようとするラインに沿って設定された複数の位置に、ディスペンサ212から補修材を塗布することによって行う。
【0144】
補修装置200のコントローラ230においては、上記のようにバンク14aの画像データ、欠陥部3の座標データが保存されているので、このデータに基づいて、欠陥部3の周辺に設定された位置に正確に塗布することが出来る。
【0145】
図9(a)は、この画像において欠陥部3の周辺に設定された塗布位置を示す図である。
【0146】
当図に示すように、欠陥部3を有するバンク14aの両側に隣接する溝空間20の中に、欠陥部3の中央部を基準Oとして、Y方向に距離a1離れた点A1を通ってX方向に伸長する堰形成ラインと、Y方向と反対の方向に距離a2離れた点A2を通ってX方向に伸長する堰形成ラインに沿って、それぞれ塗布点P1,P2,P3,P4を設定する。
【0147】
ここで、距離a1と距離a2は同じであっても、異なっていてもよいが、点A1と点A2とで欠陥部3の全体が挟み込まれ、且つあまり大き過ぎないように、適度な長さに設定する。
【0148】
図9(b)は、下地基板11において、点A1を通る堰形成ラインに沿った断面を模式的に示す図である。
【0149】
補修装置200は、このように設定した塗布点P1,P2,P3,P4において、順次、ニードル213で補修材を塗布することによって堰5aを形成する。
【0150】
図10(a)〜(g)は、塗布点P1,P2…に、補修材を順次塗布することによって、堰5aが形成される様子を示す図である。
【0151】
まず
図10(a),(b)に示すように、ニードル213、タンク214を塗布点P1に位置させて、ニードル213を下方に移動してニードル213に補修材を付着させて、ニードル213を塗布点P1に近づけることによって補修材を塗布点P1に塗布する。
【0152】
補修材は、塗布されるまでは流動性を有するが、塗布後は山形状が維持され、
図10(c)に示すように、塗布点P1に補修材の山が形成される。
【0153】
続いて、
図10(d)に示すように、ニードル213をタンク241内に引き上げて、ニードル213、タンク214を、塗布点P2に移動させる。そして、ニードル213を下方に移動して、補修材を付着させたニードル213を塗布点P2に近づけることによって補修材を塗布点P2に塗布する。
【0154】
それによって
図10(e)に示すように、塗布点P2に形成される補修材の山は、塗布点P1に形成されている補修材の山と繋がる。
【0155】
続いて、
図10(f)に示すように、ニードル213を引き上げて、塗布点P3に移動させる。そして、同様にして、塗布点3に補修材の山を形成して、塗布点P2に補修材の山とつなげる。
【0156】
このようにして、欠陥部3を有するバンク14a上の点A1から、隣のバンク14aに亘る形状で、補修材の山が連なることになる。そして、この塗布された補修材の山を、乾燥し、必要に応じて露光することによって堰5aが形成される。
【0157】
また、その後の同時焼成工程において、塗布された補修材が硬化するので、より安定した物性を有する堰5が形成される。
【0158】
図6(b)に示すように、欠陥部3を有するバンク14の両側にある溝空間20の各々には、堰5が対で設けられており、この堰5によって溝空間20は、欠陥部3に近接する空間部分からなる第1空間SAと、欠陥部3に近接しない空間部分からなる2つの第2空間SBとに仕切られている。そして、欠陥部3は、2つの第1空間SAによって囲まれている。
【0159】
このように、バンク14の欠陥部3が補修した上で、次のステップS9の発光層形成工程で、各溝空間20に有機発光層15を形成すると、第1空間SA、第2空間SBにも、インクが塗布され、有機発光層15が形成される。従って、発光層が形成された後のパネルにおいては、第1空間SAに形成された有機発光層15と、第2空間SBに形成された有機発光層15とが、堰5によって仕切られた状態となる。
【0160】
[上記バンク補修方法による効果]
図11(a)は、実施の形態にかかるパネルにおいて、欠陥部3を有するバンク14の周囲に堰5が形成された後、そのバンク14に隣接する一方の溝空間20に、赤色のインクが塗布されてインク層15a(R)、他方の溝空間20に緑色のインクが塗布されてインク層15a(G)が形成された状態を示す平面図である。また、
図11(b)は、堰5を形成しない比較例において、同様にバンク14を挟んで隣接する溝空間20にインク層15a(R)とインク層15a(G)が形成された状態を示す平面図である。
【0161】
図11(b)に示すように、欠陥部3を有するバンク14の周囲に堰5が形成されていないと、赤色インクと緑色インクが、欠陥部3を介して混ざり合ってできる混色領域は、各インク層15a内で広がる。この混色領域は、Y方向に長く伸びることがあり、その長さが1cm程度になることもある。
【0162】
表示パネル100が製造されたときに、この混色領域は、本来の発光色とは異なった発光色で発光する。上記のように、赤色インクと緑色インクが混合された混色領域は、赤色で発光することになる。従って、緑色で発光すべき領域の中で、混色領域となった領域では、赤色で発光することになり、発光色不良の原因となる。
【0163】
これに対して、本実施の形態では、上記のように、欠陥部3を有するバンク14の周囲に堰5が対で形成され、溝空間20が、堰5の対に挟まれた欠陥部3に近接する第1空間SAと、堰5の対の外側にある欠陥部3に近接しない2つの第2空間SBとに仕切られている。それによって、以下のように混色領域は制限される。
【0164】
図12(a)は、
図11(a)におけるC-C線の断面図であって、堰5が形成された溝空間20にインクが塗布されてインク層15a(G)が形成されたところを、Y方向に切断した断面を表している。
【0165】
バンク14間の各溝空間20に、発光層形成用のインクが塗布されると、
図12(a)に示すように、1対の堰5で挟まれた第1空間SAと、1対の堰5よりも外側にある2つの第2空間SBには、それぞれインク層15a(G)が形成される。
【0166】
ここで、
図11(a)に示すように、赤色インクと緑色インクが、欠陥部3を介して混ざり合って、第1空間SAが、赤色インクと緑色インクの両方を含有する混色領域となることはあるが、第1空間SAに形成されたインク層15aと、1対の堰5よりも外側の第2空間SBに形成されたインク層15aとは、堰5によって隔てられているので、相互に混ざり合わない。
【0167】
従って、第1空間SAには混色領域ができることがあっても、その混色領域は堰5を超えて第2空間SBが広がることがない。
【0168】
このように本実施の形態においては、欠陥部3によって生じる混色領域の範囲が、欠陥部3に近接する狭い第1空間SAに制限されるので、混色範囲の広がりを抑制する効果が得られ、表示パネル100における発光色不良を低減できることになる。
【0169】
なお、ラインバンクにおいては、インクの混色が生じると混色範囲が広がって発光色不良が生じやすいので、特にラインバンクに対しては、堰5を形成する補修によって得られる効果も大きい。しかし、変形例のところで後述するように、ラインバンクに限らず、ピクセルバンクにおいても、堰5を形成することによって効果を得ることができる。
【0170】
ところで、欠陥部3によるインクの混色を防止する方法としては、欠陥部3自体を、同様の補修材で覆って補修することも考えられる。しかし、その方法でインクの混色を確実になくすには、欠陥部3を構成する異物全体を補修材で覆ったり、欠陥部3を構成する決壊を補修材で補修するといったことが必要となる。そして、ディスペンサなどを使ってこの補修を行うには、ディスペンサの塗布針を細かく位置制御しながら塗布することが必要となる。また、異物が存在する場合は、その異物によって補修材がはじかれてうまく補修できない場合も多くあり、塗布するのに技術的な難しさが伴う。
【0171】
これに対して、本実施の形態のように欠陥部3を有するバンク14の周囲に堰5を形成する補修方法によれば、欠陥部3に補修材を直接塗布するのではなく、その周囲を囲むように補修材を塗布するので、異物によって補修材がはじかれることがなく、比較的容易に塗布を行うことができる。
【0172】
また、溝空間20内において、仮に発光層が形成されない領域が生じると、表示パネル100製造後において、その領域では、ホール注入層13と共通電極17との電流リークが大きくなるので、その箇所が欠陥となることもあり得るが、本実施形態ではそのような電流リークは生じがない。
【0173】
すなわち、本実施形態では、溝空間20内に堰5を形成するときに、欠陥部3から距離a1,a2を開けて堰5を形成している。従って、
図8(b)に示すように、堰5で挟まれた領域にも、混色領域であるがインク層15aが存在する。従って、表示パネル100において、この領域でホール注入層13と共通電極17とがショートしたり、電流リークが生じることもない。
【0174】
[欠陥部3と堰5との間隔、堰5の高さ、幅について]
欠陥部3と堰5とのY方向の間隔は、点A1と点A2との距離(a1+a2)に依存する。
【0175】
この点A1と点A2との距離(a1+a2)については、欠陥部3を挟み込めるだけの距離は必要である。
【0176】
また、欠陥部3と堰5との隙間が狭すぎると、堰5で挟まれた領域内に、インクが着弾しても、はじかれてしまうなどの理由で、発光層が形成されないことがある。従って、点A1と点A2間の距離として、堰5で挟まれた領域内にインクが塗布されるのに十分なだけの距離を確保することが好ましい。
【0177】
一方、発光色不良を低減する効果を得る上では、点A1と点A2との距離は、できるだけ小さく設定することが好ましく、その点で、サブピクセルのY方向の長さ以下に設定することが好ましい。
【0178】
堰5の高さ(溝空間20の底面からの高さ)について考察する。
【0179】
ステップS9の有機発光層15を形成する工程で、堰5で仕切られている第1空間SAと第2空間SBに、それぞれインクが塗布されてインク層15aが形成される。
【0180】
そして、上記
図12(a)に示されるように、第1空間SAのインク層15aと第2空間SBのインク層15aとは、堰5によって分離された状態となる。
【0181】
ここで、堰5の高さが低すぎると、インク層15aを分離する機能が損なわれて、第1空間SAのインク層15aと、第2空間SBのインク層15aとが混合され、その結果、混色領域が第2空間SBまで広がることになる。例えば
図12(a)の例で、堰5の高さが低すぎると、第1空間SAに存在する赤が混ざった緑のインク層15aが、第2空間SBに存在する緑色のインク層15a(G)と混ざって、赤と緑の混色領域が第2空間SBに広がることになる。
【0182】
従って、堰5の高さは、この第1空間SAのインク層15aと第2空間SBのインク層15aとを分離する機能を果たすことができるだけの高さに設定することが好ましい。
【0183】
一方、堰5を高くし過ぎると、その上に形成する電子輸送層16、共通電極17など段切れが生じやすくなる。
【0184】
このように考察に基づくと、堰5の高さは、バンク14の高さに対して50%以上、200%以下とし、バンク14の高さと同程度とすることが好ましい。ここで、バンク14の高さは、溝空間20の底面からバンク14の上面まで高さである。
【0185】
堰5の幅、すなわち堰形成ラインと直交する方向(Y方向)の幅については、この幅が大きすぎると、表示パネル100を見たときにその堰5自体が目立つ可能性もあるので、50μm以下に抑えることが好ましい。
【0186】
なお、堰5は、
図12(b)に示すように断面が台形状であって、底部から上部にかけてその幅は狭くなっているが、本明細書において堰5の幅は、堰5の底部の幅を指す。すなわち、
図12(b)に示す堰5の底部の幅W(μm)が50μm以下であることが好ましい。
【0187】
さらに、インク層15a(G)とインク層15a(混色)とが混ざり合わないようにするために、バンクの高さHに対する堰5の高さhの比(h/H)及び堰5の幅W(μm)がどのように条件を満たせばよいかについて、以下のように考察及び実験を行った。
【0188】
図12(b)に示すようにインク層15a(G)と、インク層15a(混色)とが、堰5を挟んで対峙している。
【0189】
ここで、バンクの高さHに対する堰5の高さhの比(h/H)が小さい場合、あるいは堰5の幅Wが小さい場合は、堰5を挟んで対峙するインク層15a同士が混ざり合いやすくなることが予測される。
【0190】
さらに、比(h/H)として好ましい範囲、並びに幅Wとして好ましい範囲は、それぞれ単独で決まるのでなく、相互に関連があるとみられる。例えば、比(h/H)が大きいときは、幅Wが小さくても、対峙するインク層同士は混ざりにくく、幅Wが大きいときは、比(h/H)が小さくても、対峙するインク層同士は混ざりにくいと予測される。
【0191】
また、上述した堰5の形成方法では、補修材をX方向に沿って並ぶ各点で山形に塗布したものを連ねて形成されるので、
図13に示すように、1つの堰5においても、X方向の位置によって高さや幅は異なるので、堰5を挟んで対峙する2つのインク層15aが混ざり合うときには、最も高さが低い箇所で混ざり合う可能性が高い。
【0192】
従って、1つの堰5の中でも部分ごとに高さが一定でないときは、上記の堰5の高さh及び幅Wとして、1つの堰5の中で最も高さが低い箇所での高さ及び幅を用いることが妥当である。
【0193】
すなわち、
図13に示すように、X方向に伸びる堰5の中で、高さが最も低いX方向位置で、堰5をY方向に切断したときの断面の高さ及び幅を、高さh及び幅Wとすることが妥当である。
【0194】
[実験]
以上の考察に基づいて、バンクの高さHに対する堰5の高さhの比(h/H)及び堰5の幅Wと、混色抑制効果との関係を調べる実験を行った。
【0195】
上述した製造方法に基づいて、実験用に、下地基板上にバンク14を形成したものを準備し、そのバンク14同士の間の溝空間20に、隣合うバンク間に亘る堰5を形成した。
【0196】
ここで、堰5を形成するときに用いる補修材は、ネガ型感光性樹脂組成物であって、基本的な組成は同じであるが、撥インク剤などの添加量や、塗布時における溶剤の配合割合を調整することによって、堰5の高さh及び幅Wを様々な値に変えて、実験用の堰形成基板を作製した。
【0197】
作製された実験用の堰形成基板は、堰5の幅Wが、5μm、10μm、15μm、20μmの各値をとり、堰5の高さhとバンク14の高さHとの比(h/W)が、0.5、1.0、1.5の各値を取るものである。
【0198】
バンク14については、すべての実験用の堰形成基板に共通であって、バンク高さは1μmである。
【0199】
このように作製した実験用の各堰形成基板について、堰5が形成された溝空間20の中に、発光色が互いに異なる色の蛍光体層形成用のインクを塗布した。インク塗布量は、溝空間20に蛍光体層を形成するのに適した一定量である。
【0200】
このとき、溝空間20には、
図12(b)と同様に、堰5を挟んで対峙するドーム型の形状のインク層が形成される。
【0201】
堰5を挟んで対峙するインク層の形状、並びに、対峙するインク層同士の間で混色が生じたか否かを観察した。
【0202】
図14の図表において、各堰形成基板において形成されたインク層の状態を、◎(二重丸)、○(一重丸)、×(バツ)で示している。
【0203】
◎(二重丸)は、堰5を挟んで対峙するインク層が堰5によって間隔をあけて分離され、混色のリスクがないと判断されたことを示す。
【0204】
○(一重丸)は、堰5を挟んで対峙するインク層同士で混色は発生していないが、インク層の一部が堰5の上に乗り上げて、混色のリスクがあると判断さたことを示す。
【0205】
×(バツ)は、堰5を挟んで対峙するインク層同士で混色は発生したことを示す。
【0206】
図14の図表において、h/H=−0.1W+2.0で表される直線A上及びその直線Aの右側の領域(図中、ハッチング領域)では◎の結果が得られている。また。h/H=−0.1W+1.5で表される直線B上では○の結果が得られ、直線Bよりも左下の領域は×の結果が得られている。
【0207】
この結果から、h/Hが0.5以上2.0以下であって、堰5の幅Wが20μm以下のときには、堰5によるインク層の混色防止機能を果たす上で、(h/H)+0.1W≧1.5の条件を満たすことが好ましく、(h/H)+0.1W≧2.0の条件を満たすことがさらに好ましいことがわかる。
【0208】
(h/H)が0.5以上2.0以下で、堰5の幅Wμmが20μmを超える場合については、実験は行っていないが、当然◎(二重丸)の結果が得られるはずである。
【0209】
以上の考察から、堰5が、その機能を果たす上で、
0.5≦(h/H)≦2.0、及び(h/H)+0.1W≧1.5の条件を満たすことが好ましく、また堰5が見た目に目立たないために、5≦W≦50であることが好ましいことがわかる。
【0210】
また、さらに(h/H)+0.1W≧2.0の条件も満たすことが、より好ましいこともわかる。
【0211】
<実施の形態2>
実施の形態2にかかる表示パネル100の構成、並びにその製造方法は、実施の形態1で説明した構成、並びに製造方法と同様である。
【0212】
また、欠陥部3が存在するバンク14aの両側に隣接する各溝空間20に、堰5aを形成する点も同様であるが、形成する堰5aの形状が異なっている。
【0213】
図15(a)は、実施の形態2にかかる堰5aの形状を示す斜視図、(b)は、溝空間に堰5を形成した後、インク層を形成した平面図である。
【0214】
本実施形態にかかる堰5aは、
図15(b)に示すように、X-Y面を平面視するとき、欠陥部3をY方向に挟む2点(点A1及び点A2)の一方(点A1)から欠陥部3を迂回して他方(点A2)に亘る形状に形成されている。また、点A1から点A2に到る途中の点A3で、欠陥部3が存在するバンク14の隣のバンク14に接している。
【0215】
堰5aの形成方法は、実施の形態1において
図10(a)〜(f)を参照しながら説明した方法同様であって、点A1から点A3を経由して点A2に到る堰形成ラインに沿って設定した複数の塗布点に、補修材を順次塗布することによって、堰5aを形成することができる。
【0216】
このようにして欠陥部3を有するバンク14の両側に隣接する各溝空間20に形成される堰5aによって、
図15(a)に示すように、各溝空間20は、欠陥部3に近接する空間部分からなる第1空間SAと、欠陥部3に近接しない空間部分からなる2つの第2空間SBとに仕切られる。そして、欠陥部3は2つの第1空間SAによって囲まれる。
【0217】
従って、実施の形態1と同様に混色範囲を抑制する効果が得られる。
【0218】
すなわち、
図15(b)に示すように、バンク14同士の間の溝空間20に、発光層形成用のインクが塗布されるときに、赤色インクと緑色インクが、欠陥部3を介して混ざり合って、混色領域ができても、その混色領域は堰5を超えて第2空間SBに広がることがない。そして、欠陥部3によって生じる混色領域の範囲は、欠陥部3に近接する狭い第1空間SAに制限されるので、表示パネル100における発光色不良を低減できることになる。
【0219】
また、欠陥部3の周囲を囲むように補修材を塗布することによって堰5aを形成するので、補修が容易である点について、また、表示パネル100製造後に、堰5で挟まれた第1領域において電流リークが生じない点についても、実施の形態1と同様である。
【0220】
一方、実施の形態1の堰5と比べると、本実施形態の堰5においては、第1空間SAが占める面積がより小さくなっているので、表示パネル100における発光色不良をさらに抑えることができる。
【0221】
また、本実施形態においても、発光層形成用のインクが塗布されるときに、
図12(b)に示すように、堰5を挟んでインク層15aが対峙する各堰5が対峙するので、インク層15aが混色しないように仕切る機能を果たす上で、堰5の高さと幅が満たすべき条件は、実施の形態1と同様である。
【0222】
従って、各堰5は、高さが一番低い箇所において、バンクの高さHに対する当該堰の高さhの比をh/Hとし、当該堰の幅をWμmとするとき、0.5≦(h/H)≦2.0、(h/H)+0.1W≧1.5、5≦W≦50の条件を満たすことが好ましい。
【0223】
また、さらに、(h/H)+0.1W≧2.0の条件を満たすことがより好ましい。
【0224】
<実施の形態3>
実施の形態3にかかる表示パネル100の構成、並びにその製造方法も、実施の形態1で説明した構成、並びに製造方法と同様である。
【0225】
また、バンク14aにおける欠陥部3を補修するときに、欠陥部3が存在するバンク14aに隣接する各溝空間20に、堰5aを形成する点も同様であるが、形成する堰5aの形状が異なっている。
【0226】
図16(a)は、実施の形態3にかかる堰5aの形状を示す斜視図、(b)は、溝空間20に、堰5を形成した後、インク層15aを形成した平面図である。
【0227】
本実施形態にかかる堰5aも、実施の形態2と同様に、
図16(a)に示すように、X-Y面を平面視するとき、欠陥部3をY方向に挟む2点A1,A2の一方から欠陥部3を迂回して他方に亘って形成されているが、欠陥部3が存在するバンク14の隣のバンク14とは非接触である点が実施の形態2と異なっている。すなわち、本実施形態において、各堰5aが欠陥部3の中央からX方向に離間する最大距離bが、溝空間20の幅(X方向幅)よりも小さく設定されている。
【0228】
この堰5aの形成方法も、実施の形態1において
図11(a)〜(f)を参照しながら説明した方法と同様であって、点A1から点A2に到る堰形成ラインに沿って設定した複数の塗布点に、補修材を順次塗布することによって、堰5aを形成することができる。
【0229】
このように、欠陥部3を有するバンク14の両側に隣接する各溝空間に堰5aを形成することによって、
図16(a)に示すように、各溝空間20は、欠陥部3に近接する空間部分からなる第1空間SAと、欠陥部3に近接しない空間部分からなる第2空間SBとに仕切られるので、実施の形態1と同様に混色範囲を抑える効果を奏する。
【0230】
すなわち、
図16(b)に示すように、バンク14間の溝空間20に、発光層形成用のインクが塗布されるときに、赤色インクと緑色インクが、欠陥部3を介して混ざり合って、混色領域ができても、その混色領域は堰5を超えないので、第2空間SBに広がらない。
【0231】
また、欠陥部3の周囲を囲むように補修材を塗布することによって堰5aを形成するので、補修が容易である点について、また、表示パネル100製造後において、堰5で挟まれた領域における電流リークが生じない点についても同様である。
【0232】
一方、本実施の形態では、上記実施の形態1,2と比べて、堰5によって仕切られた欠陥部3に近接する第1空間SAが占める面積がさらに小さくなっているので、表示パネル100における発光色不良をさらに抑えることができる。
【0233】
本実施形態の堰5においても、各堰5が対峙するインク層が混色しないように仕切る機能を果たす上で、堰の高さと幅が満たすべき条件は、実施の形態1と同様である。
【0234】
従って、各堰5は、高さが一番低い箇所において、バンクの高さHに対する当該堰の高さhの比をh/Hとし、当該堰の幅をWμmとするとき、
0.5≦(h/H)≦2.0、(h/H)+0.1W≧1.5、5≦W≦50の条件を満たすことが好ましい。
【0235】
また、さらに(h/H)+0.1W≧2.0の条件を満たすことがより好ましい。
【0236】
<実施の形態4>
実施の形態4にかかる表示パネル100の構成、並びにその製造方法も、実施の形態1で説明した構成、並びに製造方法と同様である。
【0237】
図17(a)は、実施の形態4にかかる堰5aの形状を示す斜視図、(b)は、溝空間に堰5を形成した後、蛍光体インクを塗布する様子を示す断面図である。
【0238】
欠陥部3が存在するバンク14aを補修する工程で、
図17(a)に示すように、欠陥部3が存在するバンク14aの両側に隣接する各溝空間20に形成する堰5aの形状も実施の形態1と同じである。一方、本実施形態では、さらに、バンク14aにおける堰5aの端部が接する部分に、そのバンク14aの上部から突出する突状部6aを形成する点が異なっている。
【0239】
この突状部6aは、上記の堰5aを形成するのに用いた補修材を、上記のニードル式ディスペンサでバンク14aの上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0240】
形成された突状部6aは、同時焼成工程(
図4のステップS8)において、バンク14a及び堰5a共に硬化され、安定な突状部6となる。
【0241】
このように突状部6を形成することによって、ステップS9の有機発光層15を形成する工程において、溝空間20に塗布するインクが、バンク14を超えて、隣りの溝空間20に入り込むのを抑える効果が得られる。
【0242】
すなわち、インクを塗布するとき、
図17(b)に矢印で示すように、堰5の真上にインクが着弾すると、着弾したインクが堰5の頂部で弾かれて、堰5の頂部を伝ってX方向に流れ、バンク14を超えて隣りの溝空間20へと向かう。しかし、堰5の端部に突状部6が存在するので、隣りの溝空間20に向かうインクは、この突状部6に当たる。従って、インクが隣りの溝空間20に入り込むのが抑えられる。
【0243】
本実施形態の堰5においても、各堰5が対峙するインク層が混色しないように仕切る機能を果たす上で、堰の高さと幅が満たすべき条件は、実施の形態1と同様である。
【0244】
<変形例>
1.上記実施の形態1〜4において、
図6(b)、
図11、
図15、
図16に示したパネルは、いずれも欠陥部3が存在するバンク14を基準にして、その両側の溝空間20に堰5が線対称の形状で形成されているが、この両側の溝空間20に形成される堰5は対称でなくてもよい。
【0245】
例えば、実施の形態1にかかる
図6(b)、
図11においては、2つの堰5が同じ点A1を通るラインに沿ってX方向に伸び、残り2つの堰は同じ点A2を通るラインに沿ってX方向に伸びているが、各堰が別々のラインに沿ってX方向に伸びていてもよい。
【0246】
また、実施の形態2にかかる
図15(a),(b)、実施の形態3にかかる
図16(a),(b)においても、2つの堰5は、同じ点A1から同じ点A2に到っているが、別々の点から別々の点に到っていてもよい。
【0247】
また、実施の形態3にかかる
図16(b)において、2つの堰5は、欠陥部3の中央からX方向に離間する最大距離bが同じであるが、2つの堰5においてこの最大距離bが互いに異なっていてもよい。
【0248】
2.上記実施の形態1〜4では、ラインバンクについて、欠陥部を補修する場合を説明したが、ピクセルバンクについても同様に実施することができる。
【0249】
図18(a)〜(d)は、ピクセルバンクを有する表示パネルにおいて、そのピクセルバンクに生じる欠陥部を補修する例を示す図である。
【0250】
図18(a)〜(d)に示すピクセルバンクは、Y方向に伸長する複数のバンク14(第1バンク)に加えて、X方向に伸長する複数のバンク24(第2バンク)を備えている。そして、これらのバンク14及びバンク24で囲まれた矩形領域に有機EL素子10が形成されている。
【0251】
そして、いずれの場合も、Y方向に伸長するバンク14の中で、欠陥部3が存在するバンクの両側に隣接する凹空間20の各々の中に堰5が形成され、その堰5は、凹空間20を、欠陥部3に近接する空間と、欠陥部3に近接しない空間とに仕切っている。
【0252】
(a)では、実施の形態1と同様に、欠陥部3が存在するバンク14の両側の各凹空間20に、点A1及び点A2の各々から、対向するバンク14に亘る形態で、堰5が対で形成されている。
【0253】
この場合も、インクを塗布するときに欠陥部3に起因して混色が形成されても、混色が広がる範囲は、対となる堰5同士の間に限られるので、発光色不良を抑える効果が得られる。
【0254】
(b)では、実施の形態2と同様に、欠陥部3が存在するバンク14の両側の各凹空間20に、点A1から欠陥部3を迂回して点A2に亘る形態で堰5が形成されている。
【0255】
この場合も、インクを塗布したときに欠陥部3に起因して混色が形成されても、混色が広がる範囲は、堰5で囲まれた範囲に限られるので、発光色不良を抑える効果が得られる。
【0256】
また図示はしないが、ピクセルバンクに対して、実施の形態3の堰5を適用することもでき、同様に発光色不良を抑える効果が得られる。
【0257】
(c)では、バンク14における欠陥部3の位置が比較的バンク24に近い位置である。そして、欠陥部3が存在するバンク14の両側の各凹空間20に、点A1から欠陥部3を迂回して当該バンク24に亘る形態で堰5が形成されている。
【0258】
この場合も、インクを塗布したときに欠陥部3に起因して混色が形成されても、混色が広がる範囲は、2つの堰5とバンク24とで囲まれた範囲に限られるので、発光色不良を抑える効果が得られる。
【0259】
(d)では、欠陥部3の位置が、バンク14とバンク24とが交差する位置であって、欠陥部3は4つの凹空間20にまたがっている。
【0260】
そして、この4つの凹空間20には、各々に堰5が形成されている。
【0261】
すなわち、2つの堰5は点A1から欠陥部3を迂回して当該バンク24に亘る形態で堰5が形成され、残り2つの堰5は点A2から欠陥部3を迂回して当該バンク24に亘る形態で堰5が形成されている。
【0262】
この場合、インクを塗布したときに欠陥部3に起因して4つの凹空間20の間で混色が生じる可能性があるが、混色が形成されても、混色が広がる範囲は、4つの堰5で囲まれた範囲に限られるので、発光色不良を抑える効果が得られる。
【0263】
以上
図18(a)〜(d)に示したピクセルバンクに対して形成した堰5においても、各堰5が対峙するインク層が混色しないように仕切る機能を果たす上で、堰5の高さと幅が満たすべき条件は、実施の形態1と同様である。
【0264】
従って、各堰5は、高さが一番低い箇所において、バンクの高さHに対する当該堰の高さhの比をh/Hとし、当該堰の幅をWμmとするとき、
0.5≦(h/H)≦2.0、(h/H)+0.1W≧1.5、5≦W≦50の条件を満たすことが好ましい。
【0265】
また、さらに(h/H)+0.1W≧2.0の条件を満たすことがより好ましい。
【0266】
なお、バンク14の高さとバンク24の高さが異なる場合には、高い方のバンク高さを、バンクの高さHとみなせばよい。例えばバンク14の高さがバンク24の高さより高い場合は、バンク14の高さが高さHとみなす。
【0267】
3.上記実施の形態では、トップエミッション型有機ELパネルを例にとって説明したが、ボトムエミッション型有機ELパネルにおいても適用可能である。