(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6205668
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】スピーカ装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20170925BHJP
H04R 1/28 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
H04R1/10 101Z
H04R1/28 310E
H04R1/28
H04R1/10 103
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-41293(P2017-41293)
(22)【出願日】2017年3月6日
【審査請求日】2017年3月30日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517078460
【氏名又は名称】自在設計合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】八田 敦司
【審査官】
大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0126760(US,A1)
【文献】
国際公開第2016/039245(WO,A1)
【文献】
特開2014−225752(JP,A)
【文献】
特開2010−178006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
H04R 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字状に湾曲する支持部材と、前記支持部材の両側にそれぞれ設けられたハウジングと、前記ハウジングの前面に取り付けられたスピーカユニットとを備えるスピーカ装置であって、
前記支持部材は、両側の前記ハウジングの内部同士を連通するように中空状に形成され、端部にドロンコーンが設けられており、
前記ドロンコーンは、前記スピーカユニットの背面側から出力された音波を背面側に受けて振動し、前面側から前記支持部材の内部に音響を出力するように配置され、
前記支持部材は、前面側中央に放音口が形成されているスピーカ装置。
【請求項2】
前記放音口は、長穴状に形成されている請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記放音口は、開口面積を可変可能なシャッタを備える請求項1または2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記支持部材は、伸縮可能且つ変形可能に構成されている請求項1または3のいずれかに記載のスピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置に関し、より詳しくは、使用者が首に掛けて使用することができるスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音響再生装置で再生された音声や音楽を聞くための装置として、ヘッドホンやイヤホンが従来から広く用いられている。ヘッドホンやイヤホンは、携帯型プレーヤーと共に持ち運びが容易なため、移動時や外出時等にも使用することができるが、両耳に装着すると外部の音がほとんど遮断されてしまうため、歩行中や自転車走行中などに事故の危険性が高まるおそれがある。
【0003】
このため、耳には直接装着せずに、使用者が首に掛けた状態で両耳の近傍にスピーカが配置される首掛け用のスピーカが知られている。例えば、特許文献1には、スピーカを備えるケースを首掛け部の両側に取り付けて、ケースの放音口からの音響で形成される音像を、使用者の前面側に定位させるように構成されたネックスピーカ装置が開示されている。ケースの側面にはバスレフ孔が形成されており、低音再生の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−178384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された装置は、ケースからの低音再生がヘルムホルツ共鳴を利用して行われる。ヘルムホルツの共振周波数は、ケースの内容積や、バスレフ孔の形状・大きさ等に基づき求めることができるが、良好な低音再生を行うためにはケースの大きさが過大になるため、実用性の面で問題があった。
【0006】
また、音の再生が専ら2つのケースから行われて音像定位されるため、音の立体感に乏しく、自然な臨場感やサラウンド感が得られ難いという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、簡易な構成で臨場感に優れる音響再生を行うことができるスピーカ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、U字状に湾曲する支持部材と、前記支持部材の両側にそれぞれ設けられたハウジングと、前記ハウジングの前面に取り付けられたスピーカユニットとを備えるスピーカ装置であって、前記支持部材は、両側の前記ハウジングの内部同士を連通するように中空状に形成され、
端部にドロンコーンが設けられており、前記ドロンコーンは、前記スピーカユニットの背面側から出力された音波を背面側に受けて振動し、前面側から
前記支持部材の内部に音響を出力するように配置され、
前記支持部材は、前面側中央に放音口が形成されているスピーカ装置により達成される。
【0009】
このスピーカ装置において、
前記放音口は、長穴状に形成されていることが好ましい。前記放音口は、開口面積を可変可能なシャッタを備えることが好ましい。
【0010】
また、前記支持部材は、伸縮可能且つ変形可能に構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構成で臨場感に優れる音響再生を行うことができるスピーカ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスピーカ装置の平面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係るスピーカ装置の断面図である。
【
図4】本発明の更に他の実施形態に係るスピーカ装置の平面図である。
【
図5】本発明の更に他の実施形態に係るスピーカ装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るスピーカ装置を前面側から見た平面図であり、
図2は、
図1に示すスピーカ装置の断面図である。
図1および
図2に示すように、スピーカ装置1は、支持部材10と、支持部材10の両側にそれぞれ設けられた密閉可能なハウジング20,20と、ハウジング20,20に取り付けられたスピーカユニット30,30と、支持部材10の両端部にそれぞれ設けられたドロンコーン40,40とを備えている。支持部材10およびハウジング20は、例えば、合成樹脂等により形成される。
【0014】
支持部材10は、中空の筒状体の両側をU字状に湾曲させた形状を有しており、両端部がハウジング20,20に接続されることにより、両側のハウジング20,20の内部同士が支持部材10を介して連通されている。支持部材10の前面側中央には、長穴状の放音口12が形成されている。放音口12は、両端がガイドレール14a,14aに支持されて支持部材10の外周面に沿って摺動するスライド式のシャッタ14により、開口面積を可変できるように構成されている。支持部材10は、使用者の首に掛けることが可能な構成であることが好ましいが、必ずしも首に掛ける用途に限定されるものではなく、例えば、襟にピン、ボタン、フック等で留めるような構造であってもよい。
【0015】
スピーカユニット30は、有線または無線で入力されたオーディオ信号に基づき振動板を振動させて音響を発生させる公知の構成であり、ハウジング20の前面側に取り付けられて、ハウジング20の前方および内部のそれぞれに、互いに逆位相の音波を出力する。
【0016】
ドロンコーン40は、スピーカユニット30から駆動系を除外したものと同様の構成を備えており、振動板の周囲にゴムリングが装着された固有の共振周波数を有する構成を備えている。ドロンコーン40は、ハウジング20の内部が密閉空間となるように支持部材10の端部に配置されており、スピーカユニット30からハウジング20内に出力された音波を背面側に受けて、この音波に共振周波数の周波数成分が含まれていると共振し、固有の共振周波数を有する音響をドロンコーン40の前面側から支持部材10の内部に出力する。
【0017】
上記の構成を備えるスピーカ装置1は、使用者が支持部材10を首に掛けると、支持部材10の放音口12およびスピーカユニット30,30が前方斜め上方を向いた状態で、ハウジング20,20が使用者の鎖骨付近に配置される。この状態で、スピーカユニット30,30を駆動してオーディオ信号を入力すると、スピーカユニット30,30の前面からステレオ方式の音響が出力される。
【0018】
また、スピーカユニット30,30の背面から出力される音響によって、ドロンコーン40,40は、固有の共振周波数の音波を支持部材10の内部に出力する。こうして、支持部材10の放音口12から使用者の後頭部付近に、ドロンコーン40,40の共振周波数に応じた低音が出力される。両側のドロンコーン40,40の共振周波数は、本実施形態では同じ値に設定しているが、互いに相違してもよい。放音口12から出力される音響の音量調節は、シャッタ14の操作により放音口12の開口面積を調節して行うことができる。
【0019】
このように、本実施形態のスピーカ装置1によれば、従来の首掛け用スピーカと同様に、スピーカユニット30,30の前面から出力される音響によって、使用者の両耳近傍から前方側に音像定位されると共に、ドロンコーン40,40から出力される低音が、使用者の頭の後方から出力されて、スピーカユニット30,30の前面側への音響出力を補うことができる。したがって、簡易で省電力な構成にも拘わらず、臨場感に優れる音響再生を行うことができ、例えば、映画鑑賞や音楽鑑賞等に好適に使用することができる。本実施形態のスピーカ装置1が採用するドロンコーン方式は、バスレフ方式と比較して小型化し易く、任意の共振周波数を容易に得ることができる。また、ウーハーのようなアクティブ素子が不要であるため、低コスト化を図ることができる。
【0020】
また、従来の首掛け用スピーカと同様に、スピーカユニット30,30が使用者の前方に配置されることで、スピーカ装置1の重心位置も使用者の前方に位置するため、安定した使用感が得られると共に、両耳を塞がないために歩行時や自転車走行時にも安全に使用することができる。
【0021】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態においては、支持部材10に形成される放音口12を単一のものとしているが、放音口12を支持部材10の長手方向に沿って複数形成してもよい。あるいは、支持部材20に放音口12を全く形成しない構成にすることも可能であり、使用者が、ドロンコーン40,40からの音波の出力を、主として支持部材20の振動により体感するように構成してもよい。
【0022】
また、ドロンコーン40,40の配置は、必ずしも本実施形態のように支持部材10の端部である必要はなく、例えば
図3に示されているように、支持部材10の両側内部にそれぞれ配置した構成であってもよい。
図3に示すスピーカ装置1の放音口12は、支持部材10の側壁におけるドロンコーン40,40の間に形成される。
【0023】
また、
図4に示すように、放音口12を支持部材10の内部から覆うようにドロンコーン40を配置してもよい。この構成によれば、ハウジング20,20の内部空間に加えて支持部材10の中空部を含むスピーカ装置1の内部全体を密閉空間とすることができ、放音口12に対応してドロンコーン40を配置することで、このドロンコーン40の前面から放音口12を介して支持部材10の外部に低音の音響を出力することができる。この構成によれば、ドロンコーン40が単一であってもよいので、更なる低コスト化を図ることができる。支持部材10の断面開口面積は、密閉空間における空気の良好なバネ性が得られるようになるべく小さいことが好ましく、支持部材10自体の共振周波数も考慮して適宜設定すればよい。
【0024】
また、
図5に示すように、放音口12を複数(
図5では2つとしているが、3つ以上も可)形成し、
図4に示す構成と同様に、ドロンコーン40を各放音口12に対応して配置してもよい。この構成においては、各放音口12に対応して配置するドロンコーン40の固有の共振周波数を互いに相違するものとしてもよく、これによって、支持部材10から出力される音響の低音帯域を拡げて、臨場感をより高めることができる。各放音口12には、
図1に示すシャット14と同様の構成を取り付けて、開口面積を個別に調整可能にしてもよい。
【0025】
上記各実施形態のスピーカ装置1は、支持部材10の形状が予めU字状に成形されたものであるが、支持部材10の一部または全部を蛇腹状にする等して、支持部材10を伸縮可能かつ変形可能に構成してもよい。この構成によれば、上記各実施形態のスピーカ装置1と同様に首掛け用として使用できる他、支持部材10を直線状に延ばして据置用のスピーカ装置として使用することもできる。
【符号の説明】
【0026】
1 スピーカ装置
10 支持部材
12 放音口
14 シャッタ
20 ハウジング
30 スピーカユニット
40 ドロンコーン
【要約】
【課題】 簡易な構成で臨場感に優れる音響再生を行うことができるスピーカ装置を提供する。
【解決手段】 U字状に湾曲する支持部材10と、支持部材10の両側にそれぞれ設けられたハウジング20,20と、ハウジング20,20の前面に取り付けられたスピーカユニットとを備えるスピーカ装置であって、支持部材10は、両側のハウジング20,20の内部同士を連通するように中空状に形成され、端部にドロンコーン40,40が設けられており、ドロンコーン40,40は、前記スピーカユニットの背面側から出力された音波を背面側に受けて振動し、前面側から音響を出力するように配置されている。
【選択図】
図2