【文献】
”統合ログ管理システム Logstorage - 内部統制報告制度 対応事例”,[online],インフォサイエンス株式会社,2014年 9月27日,[検索日:2016.3.10],URL,http://web.archive.org/web/20140927183330/http://www.logstorage.com/case/case_tosei.html
【文献】
”SOX IT Compliance Software, SOX IT Audits, IT Compliance Reports”,[online],ZOHO Corp.,2014年 9月27日,[検索日:2016.3.10],URL,http://web.archive.org/web/20140927171337/http://www.manageengine.com/products/eventlog/sox-compliance-reports.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
企業内では、法律、法令上のデータ保管義務や賃金の支払いのために労働者の人事、給与、賞与、勤怠情報が管理されている。労働者に対しては、勤務表、賃金台帳、給与明細表、租税公課表、年末調整表、昇給昇格等、法令で義務づけられた情報が印刷物や電子メールで送られるだけであり、労働者が自主的に管理保管する以外に活用しようもない。また、活用できたとしても改ざん、改変が自由にできてしまうのでは、その情報は客観的に信用できないため、有効に活用できなかった。そして会社は、蓄積された情報を法令の定める保管期間を過ぎたら消去、消滅し、退職あるいは転職した人にデータを譲渡することもない。
【0003】
このように、労働者の労務財産に関する大切な情報にもかかわらず、労働者が自由に扱うこともできず、活用もされていない。労働者が過去にどのような業種のどのような業態で働き、さらにはどのような作業や業務にどれだけの時間を就いやし経験してきたかということを証明できないのである。
例えば、飛行機のパイロットは、飛行時間で価値が決まるのに対し一般労働者にはそれがない。また、非正規労働者が正規労働者にステップアップしたいときや転職のときに自分の過去の経歴や経験、強みを知ってもらいたいというのが本音である。例えば、無遅刻無欠勤という勤務モラルの良い実績や研修受講時間、資格取得の実績や努力、上司や同僚、部下の評価、健康診断受信履歴、時間外労働時間や率、休日休暇取得数や取得率等労働に費やした実績は労働者の財産である。労働者の労務財産を第三者が証明するシステムがあればまじめに働いた労働者の支援につながる。
【0004】
現状、再就職に労務財産情報は、活用できておらず、自己申告型の経歴書とならざるを得ない。また、第三者が証明する労働財産情報を有効に活用することができれば、銀行口座やクレジットカード、各種保険の開設や加入契約にも使える。ローンの借入に対しても客観的な評価を示し、審査や与信等の材料とすることができる。さらには、労働財産情報の詳細な情報が示されることで、当該労働者毎に掛金の設定や割引、減額等、労働者のメリットにつながる内容や細かな条件も提案もできるようになる。
【0005】
この点、特許文献1では、勤務先から従業者として給与の支給を受けている融資希望者の個人情報に基づいて返済能力を判断し融資限度額を決定して貸付を行う金融機関の融資方法において、前記融資希望者の勤怠に関する勤怠情報を前記融資希望者の勤務する勤務先より通信ネットワークを介して逐次登録するステップと、前記融資希望者から融資の依頼があった場合、前記勤怠情報および前記融資希望者の給与に関する給与情報に基づいて、その時点で発生する給与額を算出するステップと、前記算出された給与額を通信ネットワークを介して取得するステップと、前記給与額に基づいて前記融資希望者に対する融資限度額を決定するステップとを含むことを特徴とする融資方法が提案されている。
また、特許文献2では、現金支払機に通信手段を介して接続され、労働者に関する情報を管理する労働者情報データベースと、前記労働者が関与する企業に関する情報を管理する企業情報データベースと、現金支払機から入力された労働者を特定するための労働者情報と出金希望金額を受信する現金支払機入力情報受信手段と、前記現金支払機に、所定の金額を出金させるための出金額情報を送信する出金額情報送信手段とを備えた給与支払い管理サーバであって、前記現金支払機入力情報受信手段により受信した労働者情報を用いて前記労働者情報データベースから未出金の残給与情報を読み出し、当該残給与と前記出金希望金額とを比較する金額比較手段と、前記金額比較手段により、前記出金希望金額が前記残給与以下と判定された場合に、当該出金希望金額を前記出金額情報として決定し、前記出金額情報送信手段に受け渡す出金額決定手段とを備える一方、さらに、前記労働者の与信を判定する与信判定手段を有し、前記金額比較手段により、前記出金希望金額が前記残給与よりも大きいと判定された場合には、前記与信判定手段によって前記労働者の与信を判定し、前記出金額決定手段は、前記出金希望金額と残給与との差額を、前記与信判定手段により求められた借入枠の範囲で、前記残給与に付加し、この付加した金額を前記出金額情報として決定し、前記出金額情報送信手段に受け渡す構成であることを特徴とする給与支払い管理サーバが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、労働者に固有な労務財産情報は一身専属的な情報であり、労働者が特定の企業を離れて他の企業に転職したり、企業を退職したりした場合にも、有効に利用され得る重要な情報である。また、企業内で管理される人事労務情報には、労務財産情報とは別に、組織情報やプロジェクト情報等、厳格な管理が要求される情報あるいは機密情報を多く含んでおり、これらの情報の漏洩は確実に防がなければならない。
【0008】
そこで、本発明は、企業内において管理される人事労務情報のうち、労働者に固有な労務財産情報と、他の企業の機密情報等とを分離し、労働者に固有な労務財産情報を個別に取り出して別個に管理すると共に、労働者が自分の労務財産情報を自分のために活用したり、企業の人事労務に関する負担を削減したりすることのできるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る労務財産情報管理装置は、労働者の人事及び労務に関する人事労務情報を構成する情報のうち、労働者固有の労務財産情報を個別に管理する装置であって、上記人事労務情報を記憶する人事労務情報記憶手段と、上記労務財産情報を記憶する労務財産情報記憶手段と、上記人事労務情報と上記労務財産情報の関連付けを設定する設定処理手段と、上記人事労務情報と上記労務財産情報の関連付け情報を記憶する関連付け情報記憶手段と、上記関連付け情報に応じて、上記労務財産情報を、互いに関連付けられた上記人事労務情報を構成する情報として上記人事労務情報記憶手段に登録する登録処理手段と、上記人事労務情報記憶手段又は上記労務財産情報記憶手段を参照して、上記人事労務情報又は上記労務財産情報の更新情報を更新登録する更新処理手段と、上記人事労務情報又は上記労務財産情報の一方の情報の更新に応じ、上記関連付け情報記憶手段を参照して、互いに関連付けられている上記労務財産情報又は上記人事労務情報の他方の情報に対し、更新を反映する反映処理手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記労働者が利用する労働者端末と、ネットワークを介して通信可能に構成され、上記労働者端末から、上記労務財産情報について、上記労務財産情報の保持者たる労働者に対して発行された固有の認証情報に基づき、上記労務財産情報記憶手段へのアクセスを認証する認証処理手段、をさらに有するものとしてもよい。
【0011】
また、上記労働者端末から、上記労務財産情報記憶手段に記憶されている労務財産情報に対する編集を受け付ける編集受付手段、をさらに有するものとしてもよい。
【0012】
また、上記労務財産情報記憶手段に記憶されている労務財産情報のうち、所定の情報について、上記労働者による編集が制限されているものとしてもよい。
【0013】
また、上記労務財産情報記憶手段に記憶されている労務財産情報について、上記労働者によって編集が行われた際、当該編集の履歴を記録する履歴記録手段、をさらに有するものとしてもよい。
【0014】
また、要契約商品について、上記労務財産情報に対応した審査条件を記憶した審査契約情報記憶手段と、所定の要契約商品に対する上記労働者による申し込みに基づき、上記労務財産情報及び上記審査契約情報記憶手段を参照して、当該所定の要契約商品の提供可否に係る審査を実行する審査処理手段と、上記労働者端末から、上記審査の結果に基づいた上記所定の要契約商品に対する契約承認を受信する契約承認受信手段と、をさらに有し、上記更新手段は、上記労務財産情報記憶手段を参照して、上記労務財産情報を構成する情報の一つとして、上記契約承認によって契約が完了した要契約商品の情報を更新登録するものとしてもよい。
【0015】
ここで、要契約商品とは、銀行口座の開設、クレジットカード、ローン等、審査を経た契約を要する商品のことを意味する。
【0016】
また、上記所定の要契約商品は所定の掛け金が定められた保険であって、上記労務財産情報記憶手段に更新登録された保険の情報が反映された上記人事労務情報記憶手段を参照して、上記保険の内容に従い、上記労働者の給与から上記掛け金を天引きする処理を実行する給与天引処理手段、をさらに有するものとしてもよい。
【0017】
また、本発明の別の観点に係る労務財産情報管理方法は、労働者の人事及び労務に関する人事労務情報を構成する情報のうち、労働者固有の労務財産情報を労務財産情報として個別に管理する方法であって、上記人事労務情報を記憶する人事労務情報記憶手段と、上記労務財産情報を記憶する労務財産情報記憶手段と、上記人事労務情報と上記労務財産情報の関連付け情報を記憶する関連付け情報記憶手段と、を有するコンピュータにより、上記人事労務情報と上記労務財産情報の関連付けを設定する処理と、上記関連付け情報に応じて、上記労務財産情報を、互いに関連付けられた上記人事労務情報を構成する労務財産情報として上記人事労務情報記憶手段に登録する処理と、上記人事労務情報記憶手段又は上記労務財産情報記憶手段を参照して、上記人事労務情報又は上記労務財産情報の更新情報を更新登録する処理と、上記人事労務情報又は上記労務財産情報の一方の情報の更新に応じ、上記関連付け情報記憶手段を参照して、互いに関連付けられている上記労務財産情報又は上記人事労務情報の他方の情報に対し、更新を反映する処理と、を実行することを特徴とする。
【0018】
また、本発明のさらに別の観点に係るコンピュータプログラムは、労働者の人事及び労務に関する人事労務情報を構成する情報のうち、労働者固有の労務財産情報を労務財産情報として個別に管理するためのプログラムであって、上記人事労務情報を記憶する人事労務情報記憶手段と、上記労務財産情報を記憶する労務財産情報記憶手段と、上記人事労務情報と上記労務財産情報の関連付け情報を記憶する関連付け情報記憶手段と、を有するコンピュータに対し、上記人事労務情報と上記労務財産情報の関連付けを設定する処理と、上記関連付け情報に応じて、上記労務財産情報を、互いに関連付けられた上記人事労務情報を構成する労務財産情報として上記人事労務情報記憶手段に登録する処理と、上記人事労務情報記憶手段又は上記労務財産情報記憶手段を参照して、上記人事労務情報又は上記労務財産情報の更新情報を更新登録する処理と、上記人事労務情報又は上記労務財産情報の一方の情報の更新に応じ、上記関連付け情報記憶手段を参照して、互いに関連付けられている上記労務財産情報又は上記人事労務情報の他方の情報に対し、更新を反映する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、企業内において管理される人事労務情報の内、労働者に固有な労務財産情報を他の情報から分離して別途に管理されるため、企業内の重要情報が外部に漏えいすることを防ぎつつ、労働者が当該労務財産情報を活用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る労務財産情報管理装置について、図を参照して説明する。
まず、
図1(a)を参照して、本実施形態に係る労務財産情報管理装置によって労務財産情報を活用するシステムの概要を説明する。
企業Aの人事労務情報と企業Bの人事労務情報は夫々、第三者が運用、管理する労務財産情報管理装置の人事労務情報DB−Aあるいは人事労務情報DB−Bに蓄積される。一方、労働者各々に固有の労務財産情報は、労務財産情報管理装置の労務財産情報DBに蓄積される。
【0022】
なお、本発明の実施においてはこのような形態に限らず、
図1(b)に示されるように、企業Aあるいは企業Bの人事労務情報が夫々、企業Aあるいは企業Bが運用、管理する人事労務情報DB−Aあるいは人事労務情報DB−Bに蓄積され、労務財産情報管理装置が当該人事労務情報DB−Aあるいは人事労務情報DB−Bとデータの送受信可能に構成されていてもよい。
【0023】
人事労務情報DBに記憶さている人事労務情報には、労働者に固有の労務財産情報が含まれているが、当該労務財産情報は人事労務情報DBとは別個の労務財産情報DBにおいても管理されている。
例えば、ある労働者Aが企業Aの労働者であった場合、当該労働者Aについての情報は、人事労務情報DB−Aに人事労務情報の一部として登録されている一方、労務財産情報DBに労務財産情報としても登録されている。労働者Aが企業Aの労働者である限り、当該労働者Aについて、人事労務情報DB−Aに登録されている労務財産情報と労務財産情報DBに登録されている労務財産情報は基本的に同じ情報であり、いずれかが更新された場合には他方にもその更新が反映されるようになっている。
【0024】
ここで、労働者Aが企業Aから企業Bに転職しようとする場合、労働者Aは、労務財産情報DBに記憶されている自らの労務財産情報を企業Bに提示することができる。さらに、労働者Aが実際に企業Bの労働者となったときは、労務財産情報DBに記憶されている労働者Aの労務財産情報の全部もしくは一部が、企業Bの人事労務情報DB−Bに人事労務情報の一部として登録される。
【0025】
これにより、労働者Aが企業Aの労働者であったときの情報を転職の際の客観的情報として活用したり、労働者Aの労務財産情報を企業Bの人事労務情報DB−Bに人事労務情報の一部として取り込み、企業Bの人事配置やプロジェクトにおける配属等に活かしたりすることができる。
【0026】
このようなシステムを実現するため、
図2により、第一の実施形態に係る労務財産情報管理装置1の構成を示す。
労務財産情報管理装置1は、労働者が勤める企業内に設置されているタイムレコーダ21と企業内端末22、及び労働者が利用する労働者端末3とインターネット等のネットワークNWを介して通信可能に構成されている。
【0027】
労務財産情報管理装置1は、労働者の人事及び労務に関する人事労務情報と、当該人事労務情報に含まれる労働者固有の情報を労務財産情報として管理する装置であり、本実施形態では、企業や企業に勤める労働者とは異なる第三者の管理者によって管理されている。
この労務財産情報管理装置1は、いわゆるサーバコンピュータ等によって実現され、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブといったハードウェア資源、CPUが実行するコンピュータプログラム等のソフトウェア資源により、認証処理部11、設定処理部12、登録処理部13、集計処理部14、更新処理部15、反映処理部16、編集受付部17、履歴記録部18、通信処理部19、人事労務情報DB1A、労務財産情報DB1B、関連付け情報DB1C、及び未集計情報DB1Dからなる機能ブロックを構成する。
【0028】
人事労務情報DB1Aは、企業ごとに、労働者の人事及び労務に関する人事労務情報を記憶する記憶部である。
人事労務情報には例えば、
図3に示されるように、企業ごとに、労働者個人ごとの人事評価や勤怠管理といった人事労務情報が記憶される。ここで、この人事労務情報には、当該人事労務情報を構成する情報の一つとして、労働者ごとの労務財産情報が含まれている。
【0029】
一方、労務財産情報DB1Bは、労働者に固有な労務財産情報を記憶する記憶部である。
労務財産情報には例えば、
図4に示されるように、労働者の個人属性に関する情報、等級や役職情報、給与や手当情報、公租公課、社会保険や年金等の公的支払額や控除額等の情報が含まれる。
【0030】
この労務財産情報は、労働者が固有の認証情報に基づいてアクセス可能な情報であるが、労務財産情報を構成する項目ごとに、当該労働者による編集の可否が予め設定可能となっている。例えば、労務財産情報のうち、勤務実績や給与実績、研修受講実績、資格取得実績等、労働者個人の職務遂行能力を評価するのに重要な項目については編集が制限され、現住所や家族構成、扶養家族情報等の個人の生活に関する情報だけは編集可能となっていれば、労働者に対する評価の客観性を保ちつつ、現在の状況に応じたものとすることができる。
また、労務財産情報について、労働者が項目ごとの情報を公開するか否かについても設定できるようになっている。なお、他の例においては、当該労働者による労務財産情報の編集や改変は一切認められてないようにしてもよい。
【0031】
ここで、人事労務情報には、人事労務情報を構成する情報の一つとして労働者の労務財産情報が含まれており、当該労務財産情報は、労働者ごとに人事労務情報から抽出して構成することができる。そして、この労務財産情報は、労務財産情報DB1Bに記憶されている労務財産情報と同じ情報である。他方、人事労務情報を構成する情報のうち、労務財産情報以外の情報は、人事労務情報DB1A内にのみ止まり、所定の権限を有する者しか扱えないようになっている。
【0032】
関連付け情報DB1Cは、人事労務情報と労務財産情報の関連付け情報を記憶する記憶部である。例えば、ある労働者Aが企業Aの労働者である場合、当該企業Aの人事労務情報と、労働者Aの労務財産情報とが互いに関連付けられており、人事労務情報又は労務財産情報の一方の情報が更新され、他方の更新が必要になった場合等において、当該他方の情報を特定して更新することができる。
【0033】
未集計情報DB1Dは、タイムレコーダ21から得られる勤怠情報等の生データであって、集計処理部14による集計処理がなされる前の未集計情報を蓄積するデータベースである。
通常、タイムレコーダ21から得られる生データは、そのままでは人事労務情報を構成せず、予め定められた勤務規則や経理の運用に則って、あるいは集計に必要な期間を経てから集計処理が行われ、集計処理を経ることによって初めて確定した人事労務情報となる。この例では、ライムレコーダ21から得られる勤怠情報や、企業内端末22から入力されたデータ等のうちの生データが一旦、未集計情報DB1Dに蓄積され、集計処理部14によって集計された後、当該集計処理を経た情報が人事労務情報として人事労務情報DB1Aに登録される。
【0034】
認証処理部11は、データベースに登録されている情報にアクセスする者の権限を認証する。本実施形態では、労働者は、労務財産情報DB1Bに格納されている自己の労務財産情報についてのみ、予め発行された認証用IDやパスワード等によって認証を受けることでアクセスが認められる。
また、人事労務情報DB1Aに格納されている人事労務情報に対しては、企業内において所定の権限を付与された者が、予め発行された認証用IDやパスワード等を用いて企業内端末22あるいは労働者端末3からアクセスすることができる。
【0035】
設定処理部12は、関連付け情報DB1Cを参照して、人事労務情報と労務財産情報の関連付けを設定する処理を実行する。例えば、ある企業Aで雇用されていた労働者Aが新たに企業Bに雇用された場合において、当該労働者Aが労務財産情報DB1Bに労務財産情報を持っており、当該労働者Aの任意により労働者Aの労務財産情報が企業Bに提供されると、当該労働者Aの労務財産情報が企業Bの人事労務情報に関連付けられる。また、この関連付けに応じて、労働者Aの労務財産情報が、企業Bの人事労務情報にその一部として取り込まれる。
【0036】
登録処理部13は、関連付け情報DB1Cの関連付け情報に基づき、人事労務情報のうち、労働者に固有の情報からなる労務財産情報を労務財産情報DB1Bに登録したり、労務財産情報を人事労務情報の一部として人事労務情報DB1Aに登録したりする。
【0037】
集計処理部15は、未集計情報DB1Dに蓄積されている未集計情報について、所定の勤務規則や経理の運用に則って、あるいは所定の期間の集計に必要な期間を待って、当該未集計情報を確定した人事労務情報とする処理を実行する。例えば、タイムレコーダ21によって得られた労働者の勤務時間について、1カ月当たりの規定勤務時間に則り、月末まで待ってから、当該規定勤務時間を超えた分を残業時間として算出したりする。
【0038】
更新処理部15は、人事労務情報DB1A又は労務財産情報DB1Bを参照して、人事労務情報又は労務財産情報の更新情報を更新登録する。この更新処理部15は例えば、タイムレコーダ21から得られ、集計処理部14による集計を経た労働者の出退勤に関する情報といった労働者の人事及び労務に関する人事労務情報を人事労務情報DB1Aに登録したり、労働者の労務財産情報を労務財産情報DB1Bに登録したりする。
【0039】
反映処理部16は、更新処理部15による人事労務情報又は労務財産情報の一方の情報の更新に応じ、関連付け情報DB1Cを参照して、互いに関連付けられている労務財産情報又は人事労務情報の他方の情報に対し、更新を反映する処理を実行する。これにより、人事労務情報DB1Aに記憶されている人事労務情報を構成する労務財産情報と、労務財産情報DB1Bに記憶されている労務財産情報とが一致するようになっている。
【0040】
編集受付部17は、労働者端末3からのアクセスに基づき、労務財産情報DB1Bに記憶されている労務財産情報の編集を受け付ける。ここで、労務財産情報DB1Bに記憶されている労務財産情報は、所定の項目ごとに編集の可否が設定されており、編集が認められている項目に対する編集要求についてはこれを受け付けるが、編集が認められていない項目に対する編集要求はこれを受け付けない。
【0041】
履歴記録部18は、労務財産情報DB1Bに記憶されている労務財産情報について、労働者による編集が行われた際、当該編集の履歴を記録する。編集の履歴は、労務財産情報を参照した際に表示されるようになっており、労務財産情報のうちのどの情報が、労働者によって編集された情報であって、どの情報が編集されていない情報であるかを把握することができる。なお、情報が編集された際に、編集前の情報と編集後の情報の双方を記録として残すこともできる。
【0042】
通信処理部19は、タイムレコード21、企業内端末22、及び労働者端末3とネットワークNWを介して各種のデータの送受信処理を実行する機能部である。
【0043】
タイムレコーダ21は、労働者の出退勤の時刻を記録、管理する装置である。例えば、労働者が出勤あるいは退勤した際に、生体認証や社員証として交付されているICカードを読み取って出勤時刻あるいは退勤時刻を記録する。当該出退勤の時刻は、ネットワークNWを介して労務財産情報管理装置1に対して送信され、集計処理部14による集計を経てから、確定した人事労務情報として人事労務情報DB1Aに記憶される。
【0044】
企業内端末22は、企業が認証管理している端末であって、所謂パーソナルコンピュータやスマートフォン、携帯電話、ウェアラブル端末等によって実現される。この企業内端末22は所定の権限を有する者や労働者の認証によって利用できる機能が制限されているが、各々の権限レベルに応じて、人事労務情報DB1Aや労務財産情報DB1Bに記憶されている情報にアクセスすることができる。
【0045】
労働者端末3は、労働者が利用する端末であって、所謂パーソナルコンピュータ等によって実現される。労働者端末3は労働者によって利用され、労働者はこの労働者端末3によって労務財産情報DB1Bに記憶されている情報にアクセスする。
【0046】
次に、本実施形態に係る労務財産情報管理装置1による一連の処理の流れについて、
図6から
図9を参照して説明する。
まず、
図6により、人事労務情報と労務財産情報の関連付けの処理について説明する。
この処理は例えば、ある労働者がある企業に就職した場合等において、既に労務財産情報DBに有している労務財産情報を活用するときに行われる。
【0047】
設定処理部12は、管理者等からの指示情報を受け付けて、相互に関連付けるべき人事労務情報と労務財産情報の関連付けを設定し(S101)、当該関連付け情報は関連付け情報DB1Cに記憶される(S102)。
さらに登録処理部13は、関連付け情報DB1Cに記憶された関連付け情報に応じて、労務財産情報を、互いに関連付けられた人事労務情報を構成する情報として人事労務情報DB1Aに登録する(S103)。
【0048】
これにより、労務財産情報と人事労務情報の関連付けが行われると共に、労務財産情報が人事労務情報に反映され、企業は労務財産情報を人事労務情報の一つとして活用することができるようになる。
【0049】
続いて、
図7及び
図8により、人事労務情報又は労務財産情報が更新された場合の処理について説明する。
図7に示されるように、企業内端末22やタイムレコーダ21から労働者の出退勤情報等の生データが供給されると(S201)、これを受信した労務財産情報管理装置1では当該未集計の生データが未集計情報DB1Dに蓄積される。未集計情報DB1Dに蓄積された未集計情報は、適時のタイミングで集計処理部14による集計処理を経て、確定した人事労務情報となる(S202)。
集計結果としての人事労務情報は、人事労務情報DB1Aに更新登録される(S203)。なお、このように更新登録される情報としては他に、企業内端末22や労働者端末3から送られてくる作業開始、終了時刻、報告書、申請、承認、作業報告、研修受講報告、資格取得情報、Webテスト、Webアンケート、社内SNSに関する情報、勤怠管理、給与計算、人事評価システムで処理、集計された集計結果等がある。なお、生データ以外の確定した人事労務情報は、未集計情報DB1Dに登録されることなく、そのまま人事労務情報DB1Aに登録されるようになっていてもよい。
【0050】
これに応じて労務財産情報管理装置1では、反映処理部16によって常時、あるいは所定のタイミングで、人事労務情報DB1Aに登録された更新情報を、労務財産情報DB1Bに記憶されている労務財産情報の更新情報として、労務財産情報DB1Bに反映する(S204)。
【0051】
一方、企業の人事労務情報を更新することもできるが、労働者個人の労務財産情報の更新も可能であって、労務財産情報DB1Bに新たな更新情報が登録されると、人事労務情報DB1Aにも新たな情報が遅滞なく更新されるようになっており、
図8に示されるように、労務財産情報DBが更新された場合も同様の処理が実行される。即ち、労働者による労務財産情報の編集や改変があった場合、例えば結婚や出産、転居等で個人情報の一部が変更になった場合に、労務財産情報DB1Bにこれらの新たな情報が更新登録される(S211)。
【0052】
これに応じて労務財産情報管理装置1では、反映処理部16によって常時、あるいは所定のタイミングで、労務財産情報DB1Bに登録された更新情報を、人事労務情報DB1Aに記憶されている人事労務情報の更新情報として、人事労務情報DB1Aに反映する(S212)。
【0053】
これらの処理により、人事労務情報DB1Aに記憶されている人事労務情報を構成する労務財産情報と、これに対応する労務財産情報DB1Bに記憶されている労働者個人の労務財産情報が互いに同じ情報となるようになっている。したがって例えば、労働者が税控除対象や福利厚生費経常対象の各種保険等に加入し、これを労務財産情報として登録した場合、自動的に当該情報が人事労務情報の方に反映されるため、企業は当該保険の情報を把握して、会社の会計システムの税控除や福利厚生経費と自動連携したり、給与手当項目に自動付与したりするなど、適切な人事労務を行うことができる。
【0054】
続いて、労働者から、労務財産情報DB1Bに記憶されている労務財産情報の編集を受け付ける場合の処理について、
図9を参照して説明する。
労働者は、労働者端末3によって労務財産情報管理装置1にアクセスし(S301)、所定のIDやパスワード等によってアクセス権限の認証処理を経る(S302)。
【0055】
労働者が労務財産情報DB1Bに記憶されている労務財産情報を参照して、所定の項目について編集要求を送信すると(S303)、編集受付部17は当該編集要求に係る項目について編集が認められるか否か、編集の可否に係る設定を参照して、可否を判断する(S304)。
その結果、編集が認められていない項目に対する編集要求であった場合には、その旨を労働者端末3に返信するなどして、処理を終了する(S305)。
【0056】
一方、編集が認められている項目に対する編集要求であった場合には、更新処理部15により、労働者端末3から受け付けた編集内容が労務財産情報DB1Bに更新登録される(S306)。
これに応じて履歴記録部18は、当該編集に係る編集履歴を労務財産情報DB1Bに記録する(S307)。
【0057】
以上の本実施形態により、企業内において管理される人事労務情報のうち、労働者に固有な労務財産情報が他の情報から分離して別途に管理されるため、企業内の重要情報が外部に漏えいすること防ぎつつ、労働者が当該労務財産情報を活用することができる。特に、労働者が企業を退職したり、転職したりする場合にあっても、企業内において人事労務情報の一部として蓄積されていた労務財産情報を客観的評価資料として活用することができる。さらに、労務財産情報は所定の項目あるいは内容について労働者による編集が制限されており、また、編集が制限されていない項目あるいは内容については編集の履歴が記録されるため、労務財産情報の客観性が担保されている。
【0058】
次、本発明の第二の実施形態に係る労務財産情報管理装置について説明する。
図10に示されるように、本実施形態に係る労務財産情報管理装置4は、労働者ごとに個別に対応した保険、銀行口座、クレジットカード、ローン等の契約を要する商品(以下、「要契約商品」と称する。)の審査、契約書作成を可能とし、これを労働者に提供するものであり、タイムレコーダ21、企業内端末22、及び労働者端末3とネットワークNWを介して通信可能に構成されている。
なお、タイムレコーダ21、企業内端末22、及び労働者端末3は、上述した第一の実施形態において説明した端末等と同様の構成からなるものである。
【0059】
労務財産情報管理装置4は、労働者の人事及び労務に関する人事労務情報と、当該人事労務情報に含まれる労働者固有の情報を労務財産情報として管理する装置であり、本実施形態では、企業や企業に勤める労働者とは異なる第三者の管理者によって管理されている。
【0060】
この労務財産情報管理装置4は、いわゆるサーバコンピュータ等によって実現され、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブといったハードウェア資源、CPUが実行するコンピュータプログラム等のソフトウェア資源により、上述した第一の実施形態に係る労務財産情報管理装置1が備えた認証処理部11、設定処理部12、登録処理部13、集計処理部14、更新処理部15、反映処理部16、編集受付部17、履歴記録部18、通信処理部19、人事労務情報DB1A、労務財産情報DB1B、関連付け情報DB1C、及び未集計情報DB1Dに加え、審査契約書作成部41、給与天引処理部42、審査契約情報DB4Aからなる機能ブロックを構成する。
【0061】
なお、認証処理部11、設定処理部12、登録処理部13、集計処理部14、更新処理部15、反映処理部16、編集受付部17、履歴記録部18、通信処理部19、人事労務情報DB1A、労務財産情報1B、関連付け情報1C、及び未集計情報DB1Dは上述した第一の実施形態において説明した機能部と同様の構成からなるものである。
【0062】
審査契約情報DB4Aは、保険、銀行口座の開設、クレジットカード、ローンといった要契約商品を労働者に提供するにあたり、各要契約商品を提供する保険会社、金融会社、あるいは信販会社といった会社が定める審査条件や、提供内容に関する情報と共に、実際に締結された契約に関する情報を記憶する記憶部である。
審査条件や提供内容は、労働者に労務財産情報に対応したものとなっており、労働者の労務財産情報に基づいて、提供可否や提供内容を決定できるようになっている。
【0063】
審査契約書作成部41は、労働者が申し込んだ所定の要契約商品について、審査契約情報DB4Aに記憶されている審査契約情報と、労務財産情報DB1Bに記憶されている労務財産情報を照らし合わせ、労務財産情報中の健康状態や勤務モラル等に対する評価に基づき、当該労務財産情報に係る労働者に対して当該要契約商品が提供可能かどうかの審査、さらには提供可能な内容の決定に係る処理を実行する。また、審査の後、労働者によって所定の要契約商品について契約の締結を承認する契約承認がなされた場合、労働者に対して提案した要契約商品の内容と労働者の労務財産情報に基づき、契約書を作成する。
【0064】
給与天引処理部42は、人事労務情報DB1Aを参照して、所定の掛け金や商品代金を給与から天引きする処理を実行し、これにより労働者の給与が算出される。なお、給与天引処理部42はさらに、算出した労働者の給与について、振込口座等の所定の情報に基づき、労働者の銀行口座等への振込処理を行ってもよい。
【0065】
次に、
図11を参照して、労働者に応じた要契約商品が労働者に提供されるまでの処理の流れを説明する。なお、この例では、要契約商品が保険である場合を例にとって説明する。
労働者は、労働者用に設けられた所定のWebページ等から、保険の契約の申し込みを送信する(S401)。
【0066】
労働者から保険の契約申込を受け付けた労務財産情報管理装置4は、審査契約処理部41により、当該商品の提供可否について審査を実行する(S402)。
この処理は、労務財産情報DB1Bに記憶されている労働者の労務財産情報のうちの所定の情報と、審査契約情報DB4Aに記憶されている審査契約情報に基づいて実行される。具体的には、労働者が申し込んだ保険を提供する会社が定めている審査契約情報に従い、労務財産情報を点数化したり、条件の合致を判断したりして、商品の提供が可能かどうか、さらには掛け金等の商品の内容を決定する。
【0067】
労働者が申し込んだ商品の提供が可能かどうか、さらにはどのような内容になるかといった審査結果が労働者端末3に送信されると(S403)、労働者の任意によって、商品についての契約承認が送信される(S404)。
【0068】
労務財産情報管理装置4が労働者端末3から契約承認を受信すると、これによって契約が完了し、審査契約処理部41は、労働者に対して提案した保険の内容と労働者の労務財産情報に基づいた契約書を作成し(S405)、これを労働者端末3に送信する(S406)。
【0069】
また、承認された保険の内容は、更新処理部15によって、労務財産情報DB1Bに更新登録される(S407)。さらに、反映処理部16によって、関連付け情報に基づき、当該更新登録された保険情報が人事労務情報DB1Aに反映される(S408)。
【0070】
保険情報が人事労務情報DB1Aに登録されると、給与天引処理部42は、労働者の給与が算出される際、当該保険情報に基づき、保険情報において定められた所定の掛け金を給与から天引きする処理を実行する(S409)。
【0071】
なお、本例において、労働者が申し込んだ要契約商品の提案にあたっては、当該要契約商品を提供可能な複数の会社による要契約商品について審査を実行すると共に、その審査結果及び商品内容を一覧にして労働者に提案するようにし、労働者が任意に選択した要契約商品を労働者に提供するようにしてもよい。
また、実際に労働者が契約した契約の内容は、契約の一方当事者である保険会社等に別途、通知されるなど、契約の取り交わしあるいは成立に必要な手続等は適宜、行われる。
【0072】
以上の本実施形態により、労務財産情報に含まれる労働者の勤怠情報や労働時間、給与実績といった情報に基づいて、要契約商品の提供可否を判断したり、提供内容を細かく設定したりすることができるまた、労働者が開設したり、加入契約したりする商品やサービスに所得税控除対象のものがあったりして、会社が全額もしくは一部負担するものがあった場合でも、労務財産管理装置4においてこれらの情報が把握可能となっており、会社の経理処理業務の負担を激減させることができる。