特許第6205697号(P6205697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205697
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   B41J2/175 503
   B41J2/175 119
   B41J2/175 121
   B41J2/175 169
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-218361(P2012-218361)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-69479(P2014-69479A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉置 修一
【審査官】 牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−188734(JP,A)
【文献】 特開平09−317946(JP,A)
【文献】 特開2003−120862(JP,A)
【文献】 特開平03−247462(JP,A)
【文献】 特開2004−142128(JP,A)
【文献】 特開2011−031630(JP,A)
【文献】 特開平10−217496(JP,A)
【文献】 特開2007−105880(JP,A)
【文献】 特開2006−205741(JP,A)
【文献】 特開2007−144776(JP,A)
【文献】 特開2012−051131(JP,A)
【文献】 特開平08−244567(JP,A)
【文献】 特開2005−035410(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0316284(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と、
前記第1筐体に対して回動軸を中心に回動可能であり、前記第1筐体に近接する近接位置と前記近接位置よりも前記第1筐体から離隔する離隔位置とをとることができる第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体との間で液体を移送するために設けられ、各々が可撓性を有し、さらに、各々の一端が前記第1筐体内の所定の部位に固定され他端が前記第2筐体内の所定の部位に固定される、互いに分離した複数のチューブと、
前記第1筐体に設けられ、前記複数のチューブを支持する第1支持部と、
前記第2筐体に設けられ、前記複数のチューブを支持する第2支持部と、
前記第1筐体及び第2筐体に対して相対移動可能であって、前記複数のチューブが前記回動軸と平行な方向に沿って並ぶように、前記第1支持部と前記第2支持部との間において前記複数のチューブを支持する第3支持部と、を備え
前記第3支持部は、前記複数のチューブの湾曲部分の内側を支持するための湾曲した第1ガイド面を含む第1ガイドを有していることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1ガイドは、前記複数のチューブのそれぞれの最小曲率半径以上の曲率半径で湾曲した前記第1ガイド面を有することを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
第1筐体と、
前記第1筐体に対して回動軸を中心に回動可能であり、前記第1筐体に近接する近接位置と前記近接位置よりも前記第1筐体から離隔する離隔位置とをとることができる第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体との間で液体を移送するために設けられ、各々が可撓性を有し、さらに、各々の一端が前記第1筐体内の所定の部位に固定され他端が前記第2筐体内の所定の部位に固定される、互いに分離した複数のチューブと、
前記第1筐体に設けられ、前記複数のチューブを支持する第1支持部と、
前記第2筐体に設けられ、前記複数のチューブを支持する第2支持部と、
前記第1筐体及び第2筐体に対して相対移動可能であって、前記複数のチューブが前記回動軸と平行な方向に沿って並ぶように、前記第1支持部と前記第2支持部との間において前記複数のチューブを支持する第3支持部と、を備え
前記第1支持部は、前記複数のチューブの湾曲部分の内側を支持するための湾曲した第2ガイド面を含む第2ガイドを有していることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
第1筐体と、
前記第1筐体に対して回動軸を中心に回動可能であり、前記第1筐体に近接する近接位置と前記近接位置よりも前記第1筐体から離隔する離隔位置とをとることができる第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体との間で液体を移送するために設けられ、各々が可撓性を有し、さらに、各々の一端が前記第1筐体内の所定の部位に固定され他端が前記第2筐体内の所定の部位に固定される、互いに分離した複数のチューブと、
前記第1筐体に設けられ、前記複数のチューブを支持する第1支持部と、
前記第2筐体に設けられ、前記複数のチューブを支持する第2支持部と、
前記第1筐体及び第2筐体に対して相対移動可能であって、前記複数のチューブが前記回動軸と平行な方向に沿って並ぶように、前記第1支持部と前記第2支持部との間において前記複数のチューブを支持する第3支持部と、を備え
前記第2支持部は、前記複数のチューブの湾曲部分の内側を支持するための湾曲した第3ガイド面を含む第3ガイドを有していることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
複数の液体保持部をさらに備え、
前記複数の液体保持部は、その一部が前記第1筐体に設けられるとともに、前記一部を除いた残り分が前記第2筐体に設けられ、
前記複数のチューブは、
前記各々の一端が前記第1筐体に設けられた前記複数の液体保持部のうちの前記一部に対して固定され、前記各々の他端が前記第2筐体に設けられた前記複数の液体保持部のうちの前記残り分に対して固定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第1及び第2筐体のいずれかに固定されており、前記第3支持部の移動範囲を規制する規制部をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記規制部は、前記第1筐体に取り付けられていることを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記規制部は、所定方向に延在して前記移動範囲を規定するガイド孔を有しており
前記第3支持部は、前記ガイド孔に挿入されて前記ガイド孔に沿って移動可能な突起部を有していることを特徴とする請求項又はに記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記規制部は、前記回動軸の延在方向に平行に延在する支軸を有し、前記第3支持部を、前記支軸中心に回動させることを特徴とする請求項又はに記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記支軸は、前記回動軸と同一線上に配置されることを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記第2筐体に設けられた前記複数の液体保持部のうちの前記残り分が、液体を吐出するための液体吐出ヘッドであり、
前記第1筐体に設けられた前記複数の液体保持部のうちの前記一部が、前記液体吐出ヘッドに供給される液体を貯留する第1タンクであることを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記第2筐体に設けられた前記複数の液体保持部のうちの前記残り分が、液体を貯留する第1タンクであり、
前記第1筐体に設けられた前記複数の液体保持部のうちの前記一部が、前記第1タンクに供給するための液体を貯留する第2タンクであることを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記第2筐体に設けられた前記複数の液体保持部のうちの前記残り分が、液体を吐出するための液体吐出ヘッドから吐出された液体を受け取る液体受け取り部材であり、
前記第1筐体に設けられた前記複数の液体保持部のうちの前記一部が前記液体受け取り部材で受け取られた液体を貯留するための廃液タンクであることを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記第1支持部及び前記第2支持部は、それぞれ、前記複数のチューブが前記回動軸と平行な方向に沿って並ぶように、前記複数のチューブを支持することを特徴とする請求項1〜1のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上部筐体(第2筐体)が本体筐体(第1筐体)に対して回動軸を中心に回動可能に軸支されたプリンタが知られている。このプリンタは、上部筐体と本体筐体との間で液体を移送するために設けられた複数のチューブを有している。各チューブは、本体筐体及び上部筐体のそれぞれに設けられた支持部によって支持されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2010−188734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本体筐体の支持部と上部筐体の支持部との間において、複数のチューブは支持されていない。このような状態で上部筐体を回動させたときに、本体筐体の支持部と上部筐体の支持部との間において、複数のチューブ同士が絡んで、一部のチューブが折れ曲がったり過度に引っ張られたりすることがある。
【0005】
本発明の目的は、第2筐体を回動させた際に、チューブの一部が折れ曲がったり過度に引っ張られたりするのを防止することができる液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る液体吐出装置は、第1筐体と、前記第1筐体に対して回動軸を中心に回動可能であり、前記第1筐体に近接する近接位置と前記近接位置よりも前記第1筐体から離隔する離隔位置とをとることができる第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体との間で液体を移送するために設けられ、各々が可撓性を有し、さらに、各々の一端が前記第1筐体内の所定の部位に固定され他端が前記第2筐体内の所定の部位に固定される、互いに分離した複数のチューブと、前記第1筐体に設けられ、前記複数のチューブを支持する第1支持部と、前記第2筐体に設けられ、前記複数のチューブを支持する第2支持部と、前記第1筐体及び第2筐体に対して相対移動可能であって、前記複数のチューブが前記回動軸と平行な方向に沿って並ぶように、前記第1支持部と前記第2支持部との間において前記複数のチューブを支持する第3支持部とを備え、前記第3支持部は、前記複数のチューブの湾曲部分の内側を支持するための湾曲した第1ガイド面を含む第1ガイドを有している。
本発明の第2観点に係る液体吐出装置は、第1筐体と、前記第1筐体に対して回動軸を中心に回動可能であり、前記第1筐体に近接する近接位置と前記近接位置よりも前記第1筐体から離隔する離隔位置とをとることができる第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体との間で液体を移送するために設けられ、各々が可撓性を有し、さらに、各々の一端が前記第1筐体内の所定の部位に固定され他端が前記第2筐体内の所定の部位に固定される、互いに分離した複数のチューブと、前記第1筐体に設けられ、前記複数のチューブを支持する第1支持部と、前記第2筐体に設けられ、前記複数のチューブを支持する第2支持部と、前記第1筐体及び第2筐体に対して相対移動可能であって、前記複数のチューブが前記回動軸と平行な方向に沿って並ぶように、前記第1支持部と前記第2支持部との間において前記複数のチューブを支持する第3支持部とを備え、前記第1支持部は、前記複数のチューブの湾曲部分の内側を支持するための湾曲した第2ガイド面を含む第2ガイドを有している。
本発明の第3観点に係る液体吐出装置は、第1筐体と、前記第1筐体に対して回動軸を中心に回動可能であり、前記第1筐体に近接する近接位置と前記近接位置よりも前記第1筐体から離隔する離隔位置とをとることができる第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体との間で液体を移送するために設けられ、各々が可撓性を有し、さらに、各々の一端が前記第1筐体内の所定の部位に固定され他端が前記第2筐体内の所定の部位に固定される、互いに分離した複数のチューブと、前記第1筐体に設けられ、前記複数のチューブを支持する第1支持部と、前記第2筐体に設けられ、前記複数のチューブを支持する第2支持部と、前記第1筐体及び第2筐体に対して相対移動可能であって、前記複数のチューブが前記回動軸と平行な方向に沿って並ぶように、前記第1支持部と前記第2支持部との間において前記複数のチューブを支持する第3支持部とを備え、前記第2支持部は、前記複数のチューブの湾曲部分の内側を支持するための湾曲した第3ガイド面を含む第3ガイドを有している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、第2筐体を回動させた際に、複数のチューブが回動軸と平行な方向に並ぶため、複数のチューブ同士が絡みにくくなり、一部のチューブが折れ曲がったり過度に引っ張られたりするのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット式プリンタ内部を示す概略側面図である。
図2】(a)は図1の矢印IIAから見たプリンタの内部を示す概略図であり、(b)は図1の矢印IIBから見たプリンタの内部を示す概略図である。
図3】(a)は図1に示す上筐体が閉位置にあるときのプリンタの内部を示す概略図であり、(b)は上筐体が開位置にあるときのプリンタの内部を示す概略図である。
図4】(a)は図1に示す第3支持部の背面図である。(b)は(a)を上方から見た第3支持部の上面図である。
図5】(a)図1に示す上筐体が開位置にあるときの第3支持部の側面図である。(b)図1に示す上筐体が閉位置にあるときの第3支持部の側面図である。
図6図1に示すプリンタの制御構成図である。
図7図1に示すプリンタのメンテナンス作業を行うときのフローチャートである。
図8】(a)は本発明の第2実施形態に係る上筐体が閉位置にあるときのプリンタの内部を示す概略図であり、(b)は上筐体が開位置にあるときのプリンタの内部を示す概略図である。
図9】(a)図8に示す上筐体が開位置にあるときの第3支持部の側面図である。(b)図8に示す上筐体が閉位置にあるときの第3支持部の側面図である。
図10】本発明の変形例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
<第1実施形態>
先ず、図1及び図2を参照し、本発明の第1実施形態に係るインクジェット式プリンタ1の概略構成について説明する。
【0011】
プリンタ1は、共に直方体形状の下筐体(第1筐体)11及び上筐体(第2筐体)12を有している。なお、図1における左側面が正面3となっており、図1における右側面が背面4となっている。上筺体12は下面が開口し、下筺体11は上面が開口している。上筺体12は、下筺体11に対して回動軸13を中心に回動可能に連結されている。上筺体12は、互いの開口面を封止してプリンタ1の内部空間を画定する位置である閉位置(近接位置:図1(a))と、プリンタ1の内部空間を開放させる位置である開位置(離隔位置:図1(b))との間を回動する。上筺体12の下面には、開閉センサ16が固定されている。開閉センサ16は、上筺体12が閉位置にあるときに検出信号を出力し、上筺体12が開位置にあるときに検出信号を出力しない構成となっている。プリンタ1は、上筺体12が閉位置にあるときに、上筺体12が回動するのを規制するロック機構14を有している。ロック機構14は、制御装置1pにより開閉可能となっている(図6参照)。また、上筺体12の上面には、排紙部15が設けられている。排紙部15には、印刷が完了した用紙Pが順に排出される。
【0012】
さらに、プリンタ1の内部空間には、4つのインクカートリッジ装着部41aと、インクカートリッジ(第2タンク)41よりも容量が小さい4つのサブタンク(第1タンク)42と、インクジェットヘッド2と、用紙トレイ20と、用紙搬送機構30と、プラテン9と、廃液タンク47とが配置されている。
【0013】
4つのインクカートリッジ装着部41aには、互いに異なる種類のインク(Y:イエロー、C:シアン、M:マゼンタ、Bk:ブラック)を貯留する4つのインクカートリッジ41がそれぞれ装着される。各インクカートリッジ装着部41aは、下筺体11に固定されている。4つのインクカートリッジ装着部41aは、互いに同じ高さに配置されている。図3に示すように、各インクカートリッジ装着部41aは、インクカートリッジ41が装着されたときに、インクカートリッジ41に挿入される2つのニードル17a、17bを有している。各ニードル17a、17bは、各インクカートリッジ装着部41aにおいて、インクカートリッジ装着部41aに装着されたインクカートリッジ41の背面4側の面41bと対向する位置に配置されている。各ニードル17a、17bは、それぞれ副走査方向に沿って延出している。各インクカートリッジ装着部41aは、各インクカートリッジ装着部41aに装着されたインクカートリッジ41よりも、背面4側に配置されている。また、インクカートリッジ装着部41aは、副走査方向において、サブタンク42よりも背面4側に配置されている。また、4つのインクカートリッジ装着部41aは、主走査方向において、インクジェットヘッドの両外側に2つずつ配置されている。換言すると、4つのインクカートリッジ装着部41aは、主走査方向に関して、インクジェットヘッド2と重ならない範囲である第1範囲R1(図2参照)に2つずつ配置されている。なお、主走査方向に関して、インクジェットヘッドと重なる範囲を第2範囲R2と称する。
【0014】
インクカートリッジ41は、概ね直方体形状を有する。各インクカートリッジ41は、下筺体11に固定されたインクカートリッジ装着部41aに装着されるため、インクカートリッジ装着部41aに装着されたインクカートリッジ41は、下筺体11に保持される。4つのインクカートリッジ41が4つのインクカートリッジ装着部41aにそれぞれ装着されたとき、各インクカートリッジ41は、その長手方向が回動軸13の延在方向(以下、主走査方向)に直交する副走査方向に沿う。インクカートリッジ41は、インクカートリッジ装着部41aに装着されたときに、主走査方向において、インクジェットヘッドの両外側に2つずつ配置されている。換言すると、各インクカートリッジ41は、インクカートリッジ装着部41aに装着されたときに、第1範囲R1に2つずつ配置される。具体的には、下筺体11の底部における主走査方向の図中左側には、イエロー及びシアンのインクカートリッジ41が、図中右側には、マゼンタ、ブラックのインクカートリッジ41が配置される。インクカートリッジ41は、下筺体11の正面から副走査方向に沿って正面3側から背面4側に向かって挿入されることで、インクカートリッジ装着部41aに装着可能となっている。つまり、インクカートリッジ41の挿入方向は、副走査方向となっている。
【0015】
4つのサブタンク42は、それぞれ概ね直方体形状を有している。各サブタンク42は、上筺体12に固定されている。図3に示すように、サブタンク42の上面には、インクカートリッジ41から供給されたインクが流れ込むインク流入口42aが形成されている。また、サブタンク42の内部には、内部に貯留されたインクの液面高さを検出する液面センサ42bが配置されている。インク流入口42aは、サブタンク42の上面に係る回動軸13から最も離れた位置に形成されている。上筺体12が開位置に位置するとき、インク流入口42aは、サブタンク42に貯留されたインクの最高液面よりも鉛直方向に関する上方に位置する。サブタンク42に貯留されたインクの最高液面とは、サブタンク42に貯留されたインクが最大量のときのインクの液面である。
【0016】
4つのサブタンク42のインク流入口42aと、対応するインクカートリッジ装着部41aとがチューブ43aを介して接続されている。さらに、チューブ43aと、対応するインクカートリッジ41とが、ニードル17aを介して接続されている。
【0017】
各サブタンク42の上面には、大気連通口42cが形成されている。大気連通口42cにはバルブ42dが設けられている。バルブ42dが開放されると、大気連通口42cを介してサブタンク42内が大気と連通する。バルブ42dが閉塞されると、サブタンク42内が大気から遮断される。各サブタンク42の側面には、インク流出口42eが形成されている。インク流出口42eは、サブタンク42の側面の下端部に形成されている。インク流出口42eと、対応するインクカートリッジ装着部41aとがチューブ43bを介して接続されている。さらに、チューブ43bと、対応するインクカートリッジとが、ニードル17bを介して接続されている。なお、図3においては、上記構成を1つのサブタンク42のみについて示しているが、他のサブタンク42についても同様である。
【0018】
図1及び図2に示すように、4つのサブタンク42は、主走査方向に関してインクジェットヘッド2の両外側に2つずつ配置されている。換言すると、4つのサブタンク42は、第1範囲R1に2つずつ配置されている。各サブタンク42は、対応するインクカートリッジ装着部41aに装着されたインクカートリッジ41と鉛直方向において重なる位置に配置されている。具体的には、上筺体12の主走査方向の図中左側においては、背面4側から順にイエロー及びシアンのサブタンク42が、図中右側においては、背面4側から順にマゼンタ、ブラックのサブタンク42が配置されている。上筺体12が閉位置に位置するとき、4つのサブタンク42が、互いに同じ高さに配置されている。つまり、上筺体12が閉位置に位置するとき、4つのサブタンク42の下端部の鉛直方向に関する位置は同じである。なお、図1においては、マゼンタおよびブラックのサブタンク42の図示を省略している。
【0019】
各サブタンク42は、各サブタンク42の液面とインクジェットヘッド2の吐出面とが所定の水頭差の範囲内となるように、各サブタンク42の液面がインクジェットヘッド2の吐出面よりも下方に位置するように、配置されている。このため、サブタンク42は、上筺体12の下面から突出している。そして、上筺体12が閉位置に位置するとき、サブタンク42の下端部は、上筺体12の下端部よりもさらに鉛直方向において下方に突出し、プラテン9(後述)及び回動軸13より鉛直方向に関する下方に位置している。なお、下筺体11には、上筺体12が閉位置に位置するときにサブタンク42の突出した部分が挿入される空間領域が確保されている。この空間領域は、例えば、下筺体11に凹領域12aを設けることによって確保される。
【0020】
チューブ43aの途中部位にはポンプ43が取り付けられている。ポンプ43は、下筺体11に固定されている。ポンプ43は、対応するインクカートリッジ装着部41aよりも背面4側(インクカートリッジ41の挿入方向の下流側)に配置されている。ポンプ43は、副走査方向において、インクカートリッジ41及びインクカートリッジ装着部41aと重なる位置に配置されている。必要に応じてポンプ43が駆動されることで、対応するインクカートリッジ装着部41aに装着されたインクカートリッジ41からチューブ43aを介してサブタンク42にインクが供給される。
【0021】
このように、チューブ43aは、上筐体12と下筐体11との間でインクを移送する。各第1範囲R1について、配置された2つのインクカートリッジ装着部41aと2つのサブタンク42とを接続する2つのチューブ43aが水平方向(回動軸13の延在方向)に沿って配列されている。この2つのチューブ43aは、水平方向に配列された状態で、下筐体11に固定された1つの第1支持部61に支持されており、上筐体12に固定された1つの第2支持部62に支持されている。第1支持部61は、回動軸13の下方に配置されており、第2支持部62は、回動軸13の上方に配置されている。さらに、2つのチューブ43aは、第1支持部61と第2支持部62との間において、水平方向に配列された状態で1つの第3支持部63に支持されている。第3支持部63は、回動軸13と同軸で揺動自在に固定されており、上筐体12及び下筐体11に対して相対移動可能となっている(図4参照)。第3支持部63の詳細については後述する。
【0022】
チューブ43bの途中部位には、バルブ43cが取り付けられている。バルブ43cが開放されると、サブタンク42内と、対応するインクカートリッジ41とが連通する。バルブ43cが閉塞されると、サブタンク42内が、対応するインクカートリッジから遮断される。バルブ42d及びバルブ43cが開放されると、サブタンク42と対応するインクカートリッジ41との水頭差によって、サブタンク42内のインクが、対応するインクカートリッジ41に戻される。チューブ43aは、第1〜第3支持部61〜63に支持されていないが、第1〜第3支持部61〜63に支持されていてもよい。
【0023】
インクジェットヘッド2は、概ね直方体形状を有している。インクジェットヘッド2は、副走査方向において、上筺体12の略中央に保持されている。インクジェットヘッド2は、その下面に、インク滴が吐出される複数の吐出口8が形成された吐出面を有している。インクジェットヘッド2の吐出面は、鉛直方向において、上筺体12の下端とほぼ同じ位置に配置されている。インクジェットヘッド2の吐出面には、主走査方向に沿って複数の吐出口8が等間隔に配列された複数の吐出口列を有している。インクジェットヘッド2の上面には、4つのインク供給口21が形成されている。また、インクジェットヘッド2の主走査方向に関する両側には、サブタンク42が2つずつ配置されている。主走査方向に関して吐出面に対する一方側に配置されたインク供給口21と、主走査方向に関するインクジェットヘッド2の一方側に配置されたサブタンク42とがチューブ43aを介して接続されている。主走査方向に関して吐出面に対する他方側に配置されたインク供給口21と、主走査方向に関するインクジェットヘッド2の他方側に配置されたサブタンク42とがチューブ43aを介して接続されている。
【0024】
インクジェットヘッド2の内部には、互いに異なるインク供給口21と連通していると共に回動軸13の延在方向(以下、主走査方向)に延びた4つのインク流路(不図示)が形成されている。各インク流路には、複数の吐出口8が圧力室(不図示)を介して連通している。アクチュエータ(不図示)が圧力室に圧力を付与することで、吐出口8からインク滴が吐出される。
【0025】
また、インクジェットヘッド2の吐出面には、主走査方向に関して千鳥状に配置された複数の吐出ブロック80が区画されている。各吐出ブロック80には、対応するインクカートリッジ41、言い替えればインクの種類(Y、C、M、Bk)毎に、吐出口8が主走査方向に等間隔で配列された吐出口列(吐出口群)が形成されている。すなわち、吐出口列の数とサブタンク42の数は共に4であって同じである。4つの吐出口列は、対応するインクの種類に関して、背面側からY,M,C,Bkの順に並んでいる。
【0026】
用紙トレイ20は、積層された複数の用紙Pを保持可能であり、主走査方向に関する両側からインクカートリッジ41に挟まれるように、下筺体11の底面に着脱自在に配置されている。なお、用紙トレイ20は、下筺体11の正面から副走査方向に沿って着脱できるようになっている。用紙トレイ20は、鉛直方向において、インクジェットヘッド2と重なる位置に配置されている。換言すると、用紙トレイ20は、第2範囲R2に配置されている。
【0027】
プラテン9は、用紙を支持するための板部材であり、上筺体12が閉位置にあるとき、インクジェットヘッド2の吐出面と対向するように下筺体11に固定されている。上筺体12が開位置にあるとき、インクジェットヘッド2の吐出面は、上筺体12が閉位置にあるときよりもプラテン9から離隔する。プラテン9の主走査方向及び副走査方向の大きさは、吐出面よりも若干大きい。プラテン9は、鉛直方向において、インクジェットヘッド2と重なる位置に配置されている。換言すると、プラテン9は第2範囲R2に配置されている。
【0028】
用紙搬送機構30は、用紙トレイ20からインクジェットヘッド2とプラテン9との間を通過して排紙部15まで至る用紙Pの搬送経路を構成するものである。用紙搬送機構30は、ピックアップローラ31と、ニップローラ32a〜32eと、ガイド33a〜33dとを含んでいる。ピックアップローラ31は、用紙トレイ20に積層されている用紙Pを上方から1枚ずつ送出する。ニップローラ32a〜32eは、搬送経路に沿って配置されており、用紙Pに搬送力を付与する。ガイド33a〜33dは、搬送経路においてピックアップローラ31及びニップローラ32a〜32eの間にそれぞれ配置されており、ニップローラ32a〜32eによって搬送力が付与された用紙Pが次のニップローラ32a〜32eに到達するまで当該用紙Pをガイドする。用紙搬送機構30によって搬送された用紙Pは、インクジェットヘッド2とプラテン9との間を通過する際に、インクジェットヘッド2の吐出口8から吐出されたインク滴によって画像が印刷される。画像が印刷された用紙Pは、用紙搬送機構30によってさらに搬送され、排紙部15に排出される。ピックアップローラ31、ニップローラ32a〜32d、及び、ガイド33a〜33cは、下筺体11に固定されている。ニップローラ32e及びガイド33dは上筺体12に固定されている。
【0029】
廃液タンク47は、概ね直方体形状を有している。インクジェットヘッド2の吐出口8から排出された廃インクを貯留する。廃インクは、インクジェットヘッド2の吐出口8の目詰まりなどを防止するメンテナンス作業(例えば、吐出口8から大量のインクを排出させるパージ動作など)により発生する。廃液タンク47は、第1範囲R1に配置されている。廃液タンク47は、インクカートリッジ41(Y)及びインクカートリッジ41(C)の上方に配置されており鉛直方向においてインクカートリッジ41と重なる。廃液タンク47は、副走査方向において、上筺体12が閉位置にあるときのサブタンク42(すなわち、凹領域12a)と重なる位置に配置されており、上筺体12が閉位置に位置しているときのサブタンク42よりも正面3側に配置されている。これにより、廃液タンク47を容易に交換することができる。また、廃液タンク47が、副走査方向において凹領域12aと重なる位置に配置されることで、凹領域12a近傍の領域を有効活用することができる。
【0030】
このように、全体構成としては、上筺体12が閉位置に位置するとき、主走査方向に関してインクジェットヘッド2と重ならない第1範囲R1内において、サブタンク42及びインクカートリッジ41が上方から順に平面視で互いに重なるように配置されている。主走査方向に関してインクジェットヘッド2と重なる第2範囲R2内において、インクジェットヘッド2、プラテン9及び用紙トレイ20が上方から順に平面視で互いに重なるように配置されている。これにより、各部材を効率よく収容することができる。
【0031】
図3に示すように、搬送経路において用紙Pがジャムしたときなど、メンテナンス作業においてプリンタ1の内部を開放させる必要があるときは、ユーザは上筺体12を閉位置から開位置に回動させる。これにより、ヘッド1とプラテン9との間の空間が開放され、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0032】
図4及び図5をさらに参照しつつ、第3支持部63の詳細を説明する。図4及び図5に示すように、第3支持部63は、2つのチューブ43aを回動軸13の延在方向に沿って配列された状態で支持するものであり、ブロック65と、2つの把持部68と、ガイド67とを有している。ブロック65は、直方体形状を有している。ブロック65における主走査方向の両端部からは、一対の円柱状の軸65aが突出している。一対の軸65aは、本発明の規制部の支軸の一例である。2つの把持部68は、それぞれがチューブ43aの外周面を把持することができるようにC字状に湾曲しており、把持するチューブ43aが互いに平行になるようにブロック65の一面に並んで固定されている。ガイド67は、ブロック65の把持部68が固定されている面に対してチューブ43aの延在方向(軸65aに直交する方向)に隣接する2つの面に固定されている。換言すると、ガイド67は、ブロック65の上面及び下面からされている。ガイド67は、2つの把持部68が把持している2つのチューブ43aの湾曲部分の内側を支持するように湾曲したガイド面67aを有している。ガイド面67aは、チューブ43aの最小曲率半径以上の曲率半径で湾曲している。チューブ43aの最小曲率半径とは、可撓性を有するチューブ43aを湾曲させたときに、折り曲がらずに湾曲できる限界の曲率半径をいう。最小曲率半径は、チューブの材質によって決定される。また、ガイド面67aによって規定される円弧の中心角(中点Oを基準とする中心角)が90度以上となっている。より好ましくは、当該中心角が180度以上である。この場合には、ガイド面67aによって支持されたチューブ43aが、ガイド面67aから外れた部分で折れ曲がるのをより確実に抑制することができる。
【0033】
回動軸13の各第1範囲R1と対向する中央付近のそれぞれに、フレーム(規制部の一部)69が固定されている。フレーム69は、U字形状を有する板部材であり、互いに対向する面に孔69aが形成されている。フレーム69の互いに対向する面を接続する面が回動軸13に固定されている。このとき、一対の孔69aが回動軸13の軸線上に配置されている。そして、ブロック65の一対の軸65aが、フレーム69の一対の孔69aに係合している。これにより、軸65aが回動軸13と同一直線上に配置され、第3支持部63は、フレーム69に軸65aを中心に回動自在に支持されつつ、移動範囲を規制される。
【0034】
次に、プリンタ1を制御する制御装置1pについて説明する。図6に示すように、制御装置1pは、印刷制御部71と、インク量判断部74と、ポンプ制御部72と、ロック制御部73と、バルブ制御部75とを有している。印刷制御部71は、用紙Pに所望の画像が印刷されるように、インクジェットヘッド2及び用紙搬送機構30の動作を制御する。インク量判断部74は、サブタンク42の液面センサ42bの検知結果に基づいて、サブタンク42に貯留されているインク量を判断する。ポンプ制御部72は、ポンプ43の駆動を制御する。具体的には、ポンプ制御部72は、ロック解除スイッチ51が押された際に、インク量判断部74が判断したインク量が所定量未満のときは、インクカートリッジ41からサブタンク42にインクが供給されるようにポンプ43を駆動させる。サブタンク42に貯留されているインク量が所定値となったとき、ポンプ制御部72は、ポンプ43の駆動を停止する。ロック制御部73は、ロック解除スイッチ51の状態やインク量判断部74の判断結果に基づいて、ロック機構14を制御する。バルブ制御部75は、バルブ42d、43cの開閉を制御する。
【0035】
ユーザが任意にメンテナンス作業を行う場合のプリンタ1の動作について、図7を参照しつつ説明する。通常は、ロック機構14が閉(上筐体12の回転規制状態)となっているため、ユーザが任意にメンテナンス作業を行う場合、ユーザは上筺体12を開位置に移動させるための意思表示としてロック解除スイッチ51を押す。ロック解除スイッチ51が押されると、インク量判断部74は、サブタンク42が所定量のインクを貯留しているか否か(インク貯留量が所定量、所定量未満のいずれであるか)を判断する(S101)。サブタンク42が所定量のインクを貯留していない(インク貯留量が所定量未満)とインク量判断部74が判断したとき(S101:NO)、所定量のインクを貯留しているとインク量判断部74が判断するまで(S101:YES)、ポンプ制御部72は、ポンプ43を駆動してサブタンク42にインクを供給する(S102)。
【0036】
サブタンク42が所定量のインクを貯留しているとインク量判断部74が判断すると(S101:YES)、ポンプ制御部72は、ポンプ43を停止させる(S103)。ロック制御部73は、ロック機構14を開(上筐体12の回動許可状態)にする(S104)。その後、ユーザが上筺体12を開位置にしてメンテナンス作業を行った後、上筺体12を再び閉位置に戻したことを開閉センサ16が検知したら(S105)、ロック制御部73は、ロック機構14を閉にし(S106)、図7のフローチャートを終了する。
【0037】
このようなメンテナンス動作の際、上筐体12が閉位置から開位置の範囲で回動するに伴って、第2支持部62が第1支持部61に対して相対移動する。上筐体12が閉位置から開位置に回動すると、第2支持部62が第1支持部材61から離れる。つまり、第1支持部61と第2支持部62との間の距離が広がる。このため、第1支持部61と第2支持部62とによって支持されたチューブ43aは、第2支持部62の移動に伴って、引っ張られるように変形する。つまり、上筐体12が閉位置から開位置に回動すると、チューブ43aはその撓みが少なくなるように変形する。このとき、第2支持部62と第1支持部61との間でチューブ43aを支持する第3支持部63は、チューブ43aの変形に伴って、軸65aを中心に回動する。2つのチューブ43aが、水平方向、すなわち、回動軸13と平行な方向に配列された状態を維持しながら、第1支持部61と第3支持部63との間、及び、第2支持部62と第3支持部63との間でスムーズに湾曲するように、第3支持部63が回動する。具体的には、上筺体12が閉位置から開位置に回動するとき、第2支持部62が回動軸13を中心に上方に向かって回動するに伴って、第3支持部63は回動軸13を中心に図5(b)中時計回りに回動する。逆に、上筺体12が開位置から閉位置に回動するとき、第2支持部62が回動軸13を中心に下方に向かって回動するに伴って、第3支持部63は回動軸13を中心に図5(a)中反時計回りに回動する。上筐体12が閉位置をとるとき、チューブ43aの曲率半径は小さくなるが、チューブ43aの湾曲部分の内側が第3支持部63のガイド面67aに支持されるため、チューブ43aが折れ曲がるのを抑制することができる。このように、第3支持部63が、上筐体12の回動に伴う第2支持部62の移動に伴って、軸65aを中心に回動できるように構成されている。これにより、上筐体12の回動に伴って第2支持部62が移動したときに、第1支持部61と第2支持部62との間のチューブ43aが過度に引っ張られたり、過度に撓んだりすることが抑制できる。つまり、第3支持部63の移動範囲が、軸65aによって規制されているため、上筐体12の回動に伴ってチューブ43aが変形するときには、チューブ43aの変形に伴って第3支持部63が回動することで、チューブ43aの変形による負荷がチューブ43aに与えられるのを抑制することができる。仮に、第3支持部63が回動しない構成とした場合には、上筐体12の回動に伴って第2支持部62が移動しても、第3支持部63が回動しないため、第2支持部62と第3支持部63との間のチューブ43aが過度に引っ張られて、チューブ43aが折れ曲がる虞がある。一方、第3支持部63が自由に移動できる構成とした場合には、外力が生じたときに第3支持部63が移動することにより、チューブ43aが折れ曲がる虞がある。
【0038】
以上のように、本実施形態によるプリンタ1によると、上筐体12を回動させた際に、2つのチューブ43aが回動軸13と平行な方向に並ぶため、2つのチューブ43a同士が絡みにくくなり、一部のチューブ43aが折れ曲がったり過度に引っ張られたりするのを抑制することができる。
【0039】
また、第3支持部63が、2つの把持部68が把持している2つのチューブ43aの湾曲部分の内側を支持するように湾曲したガイド面67aを有しているため、一部のチューブ43aが折れ曲がって閉塞するのをさらに抑制することができる。
【0040】
さらに、ガイド面67aは、チューブ43aの最小曲率半径以上の曲率半径で湾曲しているため、一部のチューブが折れ曲がって閉塞するのを確実に防止することができる。つまり、ガイド面67aに支持されているチューブ43aの曲率半径は、チューブ43aの最小曲率半径以上となるため、チューブ43aが折れ曲がるのを確実に防止することができる。
【0041】
第3支持部63の移動範囲が、フレーム69により規制されているため、第3支持部63に外力が加わっても第3支持部63が移動範囲を超えて移動することがない。これにより、一部のチューブ43aが折れ曲がって閉塞するのをより確実に抑制することができる。
【0042】
また、このフレーム69の孔69aが、回動軸13と同一の軸を中心に第3支持部63を回動させるため、上筐体12が回動する際に、チューブ43aの変位量を少なくすることができる。これにより、一部のチューブ43aが折れ曲がって閉塞するのをより確実に抑制することができる。
【0043】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について図8及び図9を参照して説明する。なお、第1実施形態と同一の部材及び機能部については、第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
第1実施形態と同様に、各第1範囲R1について、配置された2つのインクカートリッジ装着部41aと2つのサブタンク42とを接続する2つのチューブ43aが回動軸13に沿って配列されている。この2つのチューブ43aは、下筐体11に固定された1つの第1支持部161に支持されており、上筐体12に固定された1つの第2支持部162に支持されている。
【0045】
図8に示すように、第1支持部161は、回動軸13の下方に配置されており、2つのチューブ43aの湾曲部分の内側を支持するための湾曲したガイド面161bを含むガイド161aを有している。第2支持部162は、回動軸13の上方に配置されており、2つのチューブ43aの湾曲部分の内側を支持するための湾曲したガイド面162bを含むガイド162aを有している。さらに、2つのチューブ43aは、第1支持部161と第2支持部162との間において、1つの第3支持部63に支持されている。第3支持部63は、下筐体11に固定されたフレーム169に支持されている。
【0046】
図9(a)及び図9(b)に示すように、フレーム169は、U字形状を有する板部材であり、互いに対向する面にガイド孔169aが形成されている。ガイド孔169aは、図9(b)中右斜め上から左斜め下に向かう一方向に延在した長孔となっている。なお、長孔の形状は一例であり、例えば、長孔が湾曲していてもよいが、長孔の形状は、好適には、上筐体12が閉位置と開位置との間を移動するときに、第3支持部63が移動する軌跡の方向と一致させることが好ましい。ブロック65の一対の軸65aが、フレーム169の一対のガイド孔169aに係合している。これにより、第3支持部63の移動範囲が、ガイド孔169aにおける軸65aの移動範囲に規制される。上筐体12が開位置にあるときは、図9(b)に示すように、軸65aはガイド孔169aの上端部に位置する。上筐体12が閉状態にあるときは、図9(c)に示すように、軸65aはガイド孔169aの下端部に位置する。
【0047】
メンテナンス動作の際、上筐体12が閉位置から開位置の範囲で回動するに伴って、第2支持部162が第1支持部161に対して相対移動する。上筐体12が閉位置から開位置に回動すると、第2支持部162が第1支持部161から離れる。つまり、第1支持部161と第2支持部162との間の距離が広がる。このため、第1支持部161と第2支持部162とによって支持されたチューブ43aは、第2支持部162の移動に伴って、引っ張られるように変形する。つまり、上筐体12が閉位置から開位置に回動すると、チューブ43aはその撓みが少なくなるように変形する。このとき、第2支持部162と第1支持部161との間でチューブ43aを支持する第3支持部63は、チューブ43aの変形に伴って、軸54aがガイド孔169aに沿って移動するよう移動する。2つのチューブ43aが、水平方向、すなわち、回動軸13と平行な方向に配列された状態を維持しながら、第1支持部161と第3支持部63との間、及び、第2支持部162と第3支持部63との間でスムーズに湾曲するように、第3支持部63がガイド孔169aの範囲で移動する。具体的には、上筺体12が閉位置から開位置に回動するとき、第2支持部62が回動軸13を中心に上方に向かって回動するに伴って、第3支持部63は、軸65aがガイド孔169aの上方に向かうように移動する。逆に、上筺体12が開位置から閉位置に回動するとき、第2支持部62が回動軸13を中心に下方に向かって回動するに伴って、第3支持部63は、軸65aがガイド孔169aの上方に向かうように移動する。上筐体12が閉位置をとるとき、チューブ43aの曲率半径は小さくなるが、チューブ43aの湾曲部分の内側が第1支持部161のガイド面161b、第2支持部162のガイド面162b及び第3支持部63のガイド面67aにそれぞれ支持されるため、チューブ43aが折れ曲がるのを抑制することができる。このように、第3支持部163が、上筐体12の回動に伴う第2支持部162の移動に伴って、ガイド孔169a沿って移動できるように構成されている。これにより、上筐体12の回動に伴って第2支持部162が移動したときに、第1支持部161と第2支持部162との間のチューブ43aが過度に引っ張られたり、過度に撓んだりすることが抑制できる。つまり、第3支持部163の移動範囲が、ガイド孔169aによって規制されているため、上筐体12の回動に伴ってチューブ43aが変形するときには、チューブ43aの変形に伴って第3支持部163が移動することで、チューブ43aの変形による負荷がチューブ43aに与えられるのを抑制することができる。仮に、第3支持部163が移動しない構成とした場合には、上筐体12の回動に伴って第2支持部162が移動しても、第3支持部163が回動しないため、第2支持部162と第3支持部163との間のチューブ43aが過度に引っ張られて、チューブ43aが折れ曲がる虞がある。一方、第3支持部163が自由に移動できる構成とした場合には、外力が生じたときに第3支持部163が移動することにより、チューブ43aが折れ曲がる虞がある。
【0048】
以上のように、本実施形態によるプリンタによると、上筐体12を回動させた際に、2つのチューブ43aが回動軸13と平行な方向に並ぶため、2つのチューブ43a同士が絡みにくくなり、一部のチューブ43aが折れ曲がったり過度に引っ張られたりするのを抑制することができる。
【0049】
また、フレーム169が回動しない下筐体11に固定されているため、ガイド孔169aにおける移動範囲の設定が容易となる。
【0050】
さらに、一方向に延在しているガイド孔169aにより、第3支持部63の移動範囲を規定するため、簡単な構成でチューブ43aが他の部材に干渉するのを低減することができる。
【0051】
加えて、第1支持部161は、2つのチューブ43aの湾曲部分の内側を支持するための湾曲したガイド面161bを含むガイド161aを有しており、第2支持部162は、2つのチューブ43aの湾曲部分の内側を支持するための湾曲したガイド面162bを含むガイド162aを有しているため、一部のチューブ43aが折れ曲がって閉塞するのをより確実に抑制することができる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、サブタンク42とインクカートリッジ装着部41aとを接続するチューブ43aを第1〜第3支持部61〜63で支持する構成であるが、下筐体11と上筐体12との間で液体を移送させる複数のチューブであれば、接続部材は任意のものであってよい。例えば、図10(a)に示すように、上筐体12に固定されたインクジェットヘッド2と、下筐体11に固定されたインクカートリッジ装着部41aとを直接接続する2つのチューブ43aが、第1〜第3支持部61〜63で支持される構成であってもよい。または、図10(b)に示すように、メンテナンス時などにインクジェットヘッド2から吐出されたインクを受け取る上筐体12に固定された受け取り部材347と、下筐体11に固定された廃液タンク47とを接続する2つのチューブ43aが、第1〜第3支持部61〜63で支持される構成であってもよい。なお、図10(a)及び図10(b)の変形例では第3支持部63が第1実施形態で説明したのと同じく回動軸13と同一線上の中心軸を基準に回動する支軸を有するものであるが、これら変形例において第3支持部が第2実施形態で説明したのと同じタイプの下筐体11に固定されたものであってもよい。
【0053】
また、上述の実施形態においては、第3支持部63が、チューブ43aの湾曲部分の内側を支持するように湾曲したガイド67を有する構成であるが、ガイド67を有さない構成であってもよい。
【0054】
さらに、上述の実施形態において、ガイド面67aは、チューブ43aの最小曲率半径以上の曲率半径で湾曲する構成であるが、チューブ43aの最小曲率半径未満の曲率半径で湾曲していてもよい。
【0055】
さらに、上述の実施形態においては、第3支持部63の移動範囲がフレーム69により規制される構成であるが、第3支持部63が固定されていない構成であってもよいし、上筐体12に固定される構成であってもよい。
【0056】
また、上述の実施形態においては、フレーム69の孔69aが、回動軸13と同一の軸を中心に第3支持部63を回動させる構成であるが、回動軸13とは異なる軸を中心に第3支持部63を回動させる構成であってもよい。この場合、異なる軸は回動軸13と平行であることが好ましいが、平行でなくてもよい。
【0057】
加えて、上述の実施形態においては、第3支持部63が2つのチューブ43aを支持する構成であるが、プリンタの構成により、3つ以上のチューブを支持する構成であってもよい。液体保持部は、実施形態において例示したヘッド、タンク(インクカートリッジ、サブタンク、廃液タンク)、液体受け取り部材に限定されず、それ以外のものであってもよい。
【0058】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。ヘッドは、インク以外の任意の液体を吐出してよい。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な任意の媒体であってよい。
【符号の説明】
【0059】
1 プリンタ
2 インクジェットヘッド
11 下筐体
12 上筐体
14 ロック機構
30 用紙搬送機構
41 インクカートリッジ
41a インクカートリッジ装着部
42 サブタンク
43 ポンプ
43a チューブ
61、161 第1支持部
62、162 第2支持部
63 第3支持部
65 ブロック
65a 軸
67 ガイド
67a ガイド面
68 把持部
69、169 フレーム
69a 孔
161a、162a ガイド
161b、162b ガイド面
169 ガイド孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10