特許第6205713号(P6205713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205713
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/12 20060101AFI20170925BHJP
   F21S 8/10 20060101ALI20170925BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20170925BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170925BHJP
【FI】
   F21S8/12 140
   F21S8/10 170
   F21W101:10
   F21Y115:10
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-249479(P2012-249479)
(22)【出願日】2012年11月13日
(65)【公開番号】特開2014-99281(P2014-99281A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 和則
【審査官】 安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−228196(JP,A)
【文献】 特開2006−210294(JP,A)
【文献】 特開2011−175818(JP,A)
【文献】 特開2007−294434(JP,A)
【文献】 特開2011−108412(JP,A)
【文献】 特開2007−265994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/12
F21S 8/10
F21W 101/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、半導体型光源と、を備え、
前記レンズは、1個の入射面と、分割段差面により複数個に分割されている出射面と、から構成されていて、
複数個の前記出射面の前記分割段差面は、前記レンズの正面視において、前記半導体型光源が位置する箇所以外の箇所に設けられており、
前記出射面のうち水平方向の中間の部分は、ロービーム配光パターンのカットオフラインを形成する集光配光パターンを出射し、
前記出射面のうち水平方向における車両の内側の部分は、前記集光配光パターンに対して車両の内側に前記ロービーム配光パターンの中拡散配光パターンを出射し、
前記出射面のうち水平方向における車両の外側の部分は、前記集光配光パターンに対して車両の外側に前記ロービーム配光パターンの大拡散配光パターンを出射
複数個の前記出射面のうち、下位の前記出射面は、上位の前記出射面より、光の出射方向側に位置する、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
複数個の前記出射面は、少なくとも、中間の部分と、車両の内側の部分と、車両の外側の部分と、に分割されていて、
中間の前記出射面は、前記集光配光パターンを出射し、
車両の内側の前記出射面は、前記中拡散配光パターンを出射し、
車両の外側の前記出射面は、前記大拡散配光パターンを出射する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
中間の前記出射面および車両の内側の前記出射面および車両の外側の前記出射面は、それぞれ、上側の部分と、中央の部分と、下側の部分と、に分割されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
複数個の前記出射面のうち、中間側の前記出射面は、左右の端側の前記出射面より、光の出射方向と反対側に位置する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体型光源からの光を、レンズに入射させてかつそのレンズから所定の配光パターンとして照射するレンズ直射型の車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2)。以下、従来の車両用灯具について説明する。
【0003】
特許文献1の車両用灯具は、レンズと、光源とを、備え、レンズが、全反射型フレネルレンズの複数の輪帯状プリズムの入射面と、放射状に複数個に分割されている出射面と、から構成されているものである。光源を点灯すると、光源からの光がレンズの入射面からレンズ中に入射し、その入射光がレンズの出射面から出射して、ロービーム用配光パターンとして車両の前方に照射される。
【0004】
特許文献2の車両用灯具は、投影レンズと、光源とを、備え、投影レンズが、光軸を中心に放射状に分割された複数の分割レンズ部から構成されていて、複数の分割レンズ部の出射面が、異なる曲率からなり、複数の分割レンズ部の入射面が、複数の分割レンズの厚みおよび焦点が同一となるように設定されているものである。光源を点灯すると、光源からの光が複数の分割レンズ部の入射面から複数の分割レンズ部中に入射し、その入射光が複数の分割レンズ部の出射面から出射して、所定の配光パターンとして車両の前方に照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−123447号公報
【特許文献2】特開2012−155902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の車両用灯具は、レンズの入射面が全反射型フレネルレンズの複数の輪帯状プリズムから構成されているので、レンズの入射面の構造が複雑である。特許文献2の車両用灯具は、投影レンズが光軸を中心に放射状に分割された複数の分割レンズ部から構成されているので、すなわち、複数の分割レンズ部の入射面および出射面が光軸を中心に放射状に分割されているので、光源からの光のうち最も強い光が複数の入射面および出射面の分割段差面の中心を通過する際に屈折して配光に寄与しない。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、従来の車両用灯具では、レンズの入射面の構造が複雑であり、光源からの光のうち最も強い光が配光に寄与しない、という点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明(請求項1にかかる発明)は、レンズと、半導体型光源と、を備え、レンズが、1個の入射面と、分割段差面により複数個に分割されている出射面と、から構成されていて、複数個の出射面の分割段差面が、レンズの正面視において、半導体型光源が位置する箇所以外の箇所に設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
この発明(請求項2にかかる発明)は、複数個の出射面が、少なくとも、中間の部分と、車両の内側の部分と、車両の外側の部分と、に分割されていて、中間の出射面が、ロービーム配光パターンのカットオフラインを形成する集光配光パターンを出射し、車両の内側の出射面が、ロービーム配光パターンの中拡散配光パターンを出射し、車両の外側の出射面が、ロービーム配光パターンの大拡散配光パターンを出射する、ことを特徴とする。
【0010】
この発明(請求項3にかかる発明)は、中間の出射面および車両の内側の出射面および車両の外側の出射面が、それぞれ、上側の部分と、中央の部分と、下側の部分と、に分割されている、ことを特徴とする。
【0011】
この発明(請求項4にかかる発明)は、複数個の出射面のうち、下位の出射面が、上位の出射面より、光の出射方向側に位置する、ことを特徴とする。
【0012】
この発明(請求項5にかかる発明)は、複数個の出射面のうち、中間側の出射面が、左右の端側の出射面より、光の出射方向と反対側に位置する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明の車両用灯具は、レンズが1個の入射面から構成されているので、レンズの入射面が全反射型フレネルレンズの複数の輪帯状プリズムから構成されている特許文献1の車両用灯具と比較して、レンズの入射面の構造を簡単にすることができ、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0014】
また、この発明の車両用灯具は、複数個の出射面の分割段差面が、レンズの正面視において、半導体型光源が位置する箇所以外の箇所に設けられているので、複数の分割レンズ部の入射面および出射面が光軸を中心に放射状に分割されている特許文献2の車両用灯具と比較して、半導体型光源からの光のうち最も強い光が分割段差面を通過しないので、屈折などの光の損失が無く、そのまま配光に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、この発明にかかる車両用灯具の実施形態を示し、左右両側の車両用灯具を搭載した車両の平面図である。
図2図2は、左側のランプユニットを示す正面図である。
図3図3は、左側のランプユニットを示す平面図(図2におけるIII矢視図)である。
図4図4は、左側のランプユニットを示す側面図(図2におけるIV矢視図)である。
図5図5は、左側のランプユニットを示す斜視図である。
図6図6は、半導体型光源を示す斜視説明図である。
図7図7は、左側のランプユニットからの光路を示す水平断面説明図(図2におけるVIIA−VIIA線断面説明図、図2におけるVIIB−VIIB線断面説明図、図2におけるVIIC−VIIC線断面説明図)である。
図8図8は、左側のランプユニットからの光路を示す垂直断面説明図(図2におけるVIIIA−VIIIA線断面説明図、図2におけるVIIIB−VIIIB線断面説明図、図2におけるVIIIC−VIIIC線断面説明図)である。
図9図9は、左側のランプユニットのレンズの車両の内側(右側)の出射面から照射されるロービーム配光パターンの中拡散配光パターンを示す説明図である。
図10図10は、左側のランプユニットのレンズの中間の出射面から照射されるロービーム配光パターンのカットオフラインを形成する集光配光パターンを示す説明図である。
図11図11は、左側のランプユニットのレンズの車両の外側(左側)の出射面から照射されるロービーム配光パターンの大拡散配光パターンを示す説明図である。
図12図12は、左側のランプユニットの補助レンズから照射されるオーバーヘッドサイン配光パターンを示す説明図である。
図13図13は、左側のランプユニットのレンズから照射されるロービーム配光パターンと左側のランプユニットの補助レンズから照射されるオーバーヘッドサイン配光パターンとを示す説明図である。
図14図14は、左側のランプユニットのレンズの水平な分割段差面からの光路を示す垂直一部断面説明図(図2におけるXIV−XIV線断面説明図)である。
図15図15は、左側のランプユニットのレンズの垂直な分割段差面からの光路を示す水平一部断面説明図(図2におけるXV−XV線断面説明図)である。
図16図16は、左側のランプユニットのレンズの水平な分割段差面および垂直な分割段差面から照射される配光パターンであって、コンピュータシミュレーションによる配光パターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施形態(実施例)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。図9図13図16において、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。この明細書において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用灯具を車両に搭載した際の前、後、上、下、左、右である。図中、レンズの断面図においては、光路を明確にするためにハッチングを省略してある。
【0017】
(実施形態の構成の説明)
以下、この実施形態にかかる車両用灯具の構成について説明する。図中、符号1L、1Rは、この実施形態にかかる車両用灯具(たとえば、車両用前照灯、ロービーム用ヘッドランプなど)である。前記車両用灯具1L、1Rは、車両Cの前部の左右両端部に搭載されている。以下、車両Cの左側に搭載される左側の車両用灯具1Lについて説明する。なお、車両Cの右側に搭載される右側の車両用灯具1Rは、左側の車両用灯具1Lとほぼ同様の構成(左右がほぼ逆となる構成)をなすので、説明を省略する。
【0018】
(ランプユニットの説明)
前記車両用灯具1Lは、ランプハウジング(図示せず)と、ランプレンズ(図示せず)と、レンズ2と、半導体型光源3と、ヒートシンク部材4と、図示しないホルダ(取付部材)と、を備えるものである。
【0019】
前記レンズ2および前記半導体型光源3および前記ヒートシンク部材4および前記ホルダは、ランプユニットを構成する。前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズは、灯室(図示せず)を画成する。前記ランプユニット2、3、4は、前記灯室内に配置されていて、かつ、上下方向用光軸調整機構(図示せず)および左右方向用光軸調整機構(図示せず)を介して前記ランプハウジングに取り付けられている。なお、前記灯室内には、前記ランプユニット2、3、4以外のランプユニット、たとえば、フォグランプ、ハイビーム用ヘッドランプ、ローハイ用ヘッドランプ、ターンシグナルランプ、クリアランスランプ、デイタイムランニングランプ、コーナーリングランプなどが配置されている場合がある。
【0020】
(半導体型光源3の説明)
前記半導体型光源3は、図2図8図14図15に示すように、この例では、たとえば、LED、OELまたはOLED(有機EL)などの自発光半導体型光源である。前記半導体型光源3は、発光チップ(LEDチップ)30を封止樹脂部材で封止したパッケージ(LEDパッケージ)から構成されている。前記パッケージは、基板(図示せず)に実装されている。前記基板に取り付けられているコネクタ(図示せず)を介して前記発光チップ30には、電源(バッテリー)からの電流が供給される。前記半導体型光源3は、前記ヒートシンク部材4に取り付けられている。
【0021】
前記発光チップ30は、図6に示すように、平面矩形形状(平面長方形状)をなす。すなわち、4個の正方形のチップをX軸方向(水平方向)に配列してなるものである。なお、2個もしくは3個もしくは5個以上の正方形のチップ、あるいは、1個の長方形のチップ、あるいは、1個の正方形のチップ、を使用しても良い。前記発光チップ30の正面この例では長方形の正面が発光面31をなす。前記発光面31は、前記レンズ2の基準光軸(基準軸)Zの前側に向いている。前記発光チップ30の前記発光面31の中心Oは、前記レンズ2の基準焦点Fもしくはその近傍に位置し、かつ、前記レンズ2の基準光軸Z上もしくはその近傍に位置する。
【0022】
図6において、X、Y、Zは、直交座標(X−Y−Z直交座標系)を構成する。X軸は、前記発光チップ30の前記発光面31の中心Oを通る左右方向の水平軸であって、車両Cの外側、すなわち、この実施形態において、左側が+方向であり、右側が−方向である。また、Y軸は、前記発光チップ30の前記発光面31の中心Oを通る上下方向の鉛直軸であって、この実施形態において、上側が+方向であり、下側が−方向である。さらに、Z軸は、前記発光チップ30の前記発光面31の中心Oを通る法線(垂線)、すなわち、前記X軸および前記Y軸と直交する前後方向の軸(前記レンズ2の基準光軸Z)であって、この実施形態において、前側が+方向であり、後側が−方向である。
【0023】
(レンズ2の説明)
前記レンズ2は、図2図5図7図8図14図15に示すように、1個の入射面20と、複数個この例では9個の出射面、すなわち、第1出射面21、第2出射面22、第3出射面23、第4出射面24、第5出射面25、第6出射面26、第7出射面27、第8出射面28、第9出射面29(以下、「出射面21〜29」と記載する場合がある)と、から構成されている。前記レンズ2は、前記ホルダを介して前記ヒートシンク部材4に、前記半導体型光源3と対向するように、取り付けられている。
【0024】
前記レンズ2の正面視(前記出射面21〜29)の形状は、左右非対称の形状をなしている。このために、前記レンズ2は、左側の前記車両用灯具1Lの専用レンズと、右側の前記車両用灯具1Rの専用レンズと、を使用することとなる。
【0025】
(入射面20の説明)
1個の前記入射面20は、前記半導体型光源3と対向する面であって、この例では2次曲面または複合2次曲面または自由曲面により連続的に形成されている。
【0026】
(出射面21〜29の説明)
前記出射面21〜29は、前記半導体型光源3と対向する面と反対側の面であって、2本の垂直分割段差面2L、2Rおよび2本の水平分割段差面2U、2Dにより、左右に3分割上下に3分割、合計9個に分割されている。
【0027】
すなわち、前記出射面21〜29は、2本の前記垂直分割段差面2L、2Rにより、中間の部分22、25、28と、車両Cの内側(右側)の部分21、24、27と、車両Cの外側(左側)の部分23、26、29と、に3分割されている。また、前記出射面21〜29は、2本の前記水平分割段差面2U、2Dにより、上側の部分21、22、23と、中央の部分24、25、26と、下側の部分27、28、29と、に3分割されている。この結果、前記出射面21〜29は、2本の前記垂直分割段差面2L、2Rおよび2本の前記水平分割段差面2U、2Dにより、左右に3分割上下に3分割、合計9個に分割されている。
【0028】
9個の前記出射面21〜29のうち、下位の前記出射面24、25、26または27、28、29は、図2図4図5図8図14に示すように、上位の前記出射面21、22、23または24、25、26より、光L1〜L9、L50の出射方向側(図中の実線矢印方向側)に位置する。すなわち、前記レンズ2の基準光軸Zに対して前側(前記レンズ2の基準光軸Z方向前方、前記半導体型光源3から離れる方向)に凸である。
【0029】
9個の前記出射面21〜29のうち、中間側の前記出射面22、25、28は、図2図5図7図15に示すように、左右の端側の前記出射面21、24、27および23、26、29より、光L1〜L9、L50の出射方向と反対側(図中の実線矢印方向と反対側)に位置する。すなわち、前記レンズ2の基準光軸Zに対して後側(前記レンズ2の基準光軸Z方向後方、前記半導体型光源3に近づく方向)に凹である。
【0030】
9個の前記出射面21〜29は、この例では自由曲面または複合2次曲面または2次曲面からそれぞれ独立して形成されている。9個の前記出射面21〜29は、図3図7に示すように、前記レンズ2の平面視において、図1の前記車両Cの前部の左右両端部の湾曲傾斜(スラント)に沿って、車両Cの内側(この例では右側)から外側(この例では左側)にかけて、車両Cの前側から後側に湾曲傾斜(スラント)している。
【0031】
中間の3個の前記第2出射面22、前記第5出射面25、前記第8出射面28は、図10(A)、(B)、(C)に示すように、ロービーム配光パターンLPの水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2を形成する集光配光パターンP2、P5、P8を出射する。
【0032】
車両Cの内側(右側)の3個の前記第1出射面21、前記第4出射面24、前記第7出射面27は、図9(A)、(B)、(C)に示すように、前記ロービーム配光パターンLPの中拡散配光パターンP1、P4、P7を出射する。
【0033】
車両Cの外側(左側)の3個の前記第3出射面23、前記第6出射面26、前記第9出射面29は、図11(A)、(B)、(C)に示すように、前記ロービーム配光パターンLPの大拡散配光パターンP3、P6、P9を出射する。
【0034】
(配光パターンP1〜P9の説明)
各前記配光パターンP1〜P9は、前記半導体型光源3からの光を、前記レンズ2の1個の前記入射面20および9個の前記出射面21〜29により、配光制御されている。以下、その詳細について説明する。
【0035】
中央の前記第5出射面25から出射する前記集光配光パターンP5は、図10(B)に示すように、最も集光されていて、スクリーンの上下の垂直線VU−VDに対して左右にほぼ均等に配光されていて、対向車線側(右側)の水平カットオフラインCL1がスクリーンの左右の水平線HL−HRに対して下側に位置し、走行車線側(左側)の斜めカットオフラインCL2がスクリーンの左右の水平線HL−HRを斜めに交差している。
【0036】
上側の前記第2出射面22から出射する前記集光配光パターンP2、および、下側の前記第8出射面28から出射する前記集光配光パターンP8は、図10(A)、(C)に示すように、中央の前記集光配光パターンP5よりも上下左右にやや拡散されている。
【0037】
中央の前記第4出射面24から出射する前記中拡散配光パターンP4は、図9(B)に示すように、スクリーンの上下の垂直線VU−VDに対して大部分が右側に配光されていて、水平カットオフラインCL1がスクリーンの左右の水平線HL−HRに対して下側に位置する。
【0038】
上側の前記第1出射面21から出射する前記中拡散配光パターンP1は、図9(A)に示すように、中央の前記中拡散配光パターンP4よりも上下左右にやや拡散されていて、スクリーンの上下の垂直線VU−VDに対して左右にほぼ均等に配光されていて、スクリーンの左右の水平線HL−HRに対して下側に配光されている。
【0039】
下側の前記第7出射面27から出射する前記中拡散配光パターンP7は、図9(C)に示すように、中央の前記中拡散配光パターンP4よりも上下にやや拡散されていて、中央の前記中拡散配光パターンP4とほぼ同様に、スクリーンの上下の垂直線VU−VDに対して大部分が右側に配光されていて、スクリーンの左右の水平線HL−HRに対して下側に配光されている。
【0040】
中央の前記第6出射面26から出射する前記大拡散配光パターンP6は、図11(B)に示すように、スクリーンの上下の垂直線VU−VDに対して大部分が左側に配光されていて、スクリーンの左右の水平線HL−HRに対して大部分が下側に配光されている。
【0041】
上側の前記第3出射面23から出射する前記大拡散配光パターンP3は、図11(A)に示すように、スクリーンの上下の垂直線VU−VDに対して大部分が左側に配光されていて、スクリーンの左右の水平線HL−HRに対して下側に配光されている。
【0042】
下側の前記第9出射面29から出射する前記大拡散配光パターンP9は、図11(C)に示すように、中央の前記大拡散配光パターンP6よりも上下にやや拡散されていて、中央の前記大拡散配光パターンP6とほぼ同様に、スクリーンの上下の垂直線VU−VDに対して大部分が左側に配光されていて、スクリーンの左右の水平線HL−HRに対して大部分が下側に配光されている。
【0043】
(分割段差面2L、2R、2U、2Dの説明)
9個の前記出射面21〜29の前記分割段差面2L、2R、2U、2Dは、図2に示すように、前記レンズ2の正面視において、前記半導体型光源3が位置する箇所(図2中において、破線で示す箇所)以外の箇所に設けられている。前記分割段差面2L、2R、2U、2Dは、傾斜している。
【0044】
すなわち、2本の前記水平分割段差面2U、2Dは、図2図4図5図8図14に示すように、上位の前記出射面21、22、23または24、25、26から下位の前記出射面24、25、26または27、28、29にかけて、車両Cの後側から前側に傾斜している。この結果、2本の前記水平分割段差面2U、2Dから出射する出射光L50は、図14に示すように、上から下にかけて車両Cの後側から前側に傾斜している2本の前記水平分割段差面2U、2Dにより配光制御されて、光軸(前記基準光軸Zに対して平行な軸)Z2に対して下向きに屈折して出射する。なお、図14においては、上側の前記水平分割段差面2Uから出射する出射光L50が図示されているだけであるが、下側の前記水平分割段差面2Dから出射する出射光L50も同様に下向きに屈折して出射する。
【0045】
2本の前記垂直分割段差面2L、2Rは、図2図5図7図15に示すように、中間側の前記出射面22、25、28から右端側の前記出射面21、24、27および左端側の前記出射面23、26、29にかけて、車両Cの後側から前側に傾斜している。この結果、2本の前記垂直分割段差面2L、2Rから出射する出射光L50は、図15に示すように、中間から左右にかけて車両Cの後側から前側に傾斜している2本の前記垂直分割段差面2L、2Rにより配光制御されて、光軸(前記基準光軸Zに対して平行な軸)Z2に対して外側に屈折して出射する。すなわち、右側の前記垂直分割段差面2Rから出射する出射光L50は、右側に屈折して出射し、左側の前記垂直分割段差面2Lから出射する出射光L50は、左側に屈折して出射する。
【0046】
前記分割段差面2L、2R、2U、2Dの傾斜は、前記レンズ2の成形金型(図示せず)の抜き傾斜とほぼ合致する。すなわち、前記分割段差面2L、2R、2U、2Dは、図3図4に示すように、車両Cの前後方向に対して若干傾斜している。なお、図7図8図14図15においては、光路を明確にするために、前記分割段差面2L、2R、2U、2Dは、車両Cの前後方向に対して大きく傾斜させて図示してある。
【0047】
(ヒートシンク部材4の説明)
前記ヒートシンク部材4は、前記半導体型光源3で発生する熱を外部に放射させるものである。前記ヒートシンク部材4は、たとえば、熱伝導性なお導電性をも有するアルミダイカストや樹脂部材からなる。前記ヒートシンク部材4は、垂直板部と、前記垂直板部の一面(後側の面、背面)に一体に設けた複数枚の垂直板形状のフィン部と、から構成されている。
【0048】
前記ヒートシンク部材4の前記垂直板部の他面(前側の面、正面)の固定面には、前記半導体型光源3が取り付けられている。前記ヒートシンク部材4には、前記レンズ2が前記ホルダを介して前記半導体型光源3と対向するように取り付けられている。
【0049】
(補助レンズ部5の説明)
前記レンズ2の下辺には、補助レンズ部5が一体に設けられている。前記補助レンズ部5は、入射面50と、全反射面51と、出射面52と、から構成されている。前記補助レンズ部5は、前記半導体型光源3からの光を前記入射面50から入射して、その入射光を前記全反射面51で全反射させ、その全反射光を前記出射面52から出射させ、その出射光L10により、図12図13に示すオーバーヘッドサイン配光パターンP10として照射する。
【0050】
前記補助レンズ部5により形成される前記オーバーヘッドサイン配光パターンP10は、前記レンズ2により形成される前記ロービーム配光パターンLPの主配光パターンに対する補助配光パターンである。
【0051】
(実施形態の作用の説明)
この実施形態にかかる車両用灯具1L、1Rは、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0052】
半導体型光源3を点灯する。すると、半導体型光源3からの光の大部分は、レンズ2の1個の入射面20からレンズ2中に入射する。その入射光は、レンズ2の9個の出射面21〜29から外部にそれぞれ出射する。その出射光L1〜L9は、9個の配光パターンP1〜P9として車両Cの前方に照射される。
【0053】
すなわち、右側の上側の第1出射面21からは、出射光L1(図7(A)、図8(A)参照)が出射されて図9(A)に示す中拡散配光パターンP1として車両Cの前方に照射される。中間の上側の第2出射面22からは、出射光L2(図7(A)、図8(B)参照)が出射されて図10(A) に示す水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2を有する集光配光パターンP2として車両Cの前方に照射される。左側の上側の第3出射面23からは、出射光L3(図7(A)、図8(C)参照)が出射されて図11(A) に示す大拡散配光パターンP3として車両Cの前方に照射される。
【0054】
右側の中央の第4出射面24からは、出射光L4(図7(B)、図8(A)参照)が出射されて図9(B)に示す水平カットオフラインCL1を有する中拡散配光パターンP4として車両Cの前方に照射される。中間の中央の第5出射面25からは、出射光L5(図7(B)、図8(B)参照)が出射されて図10(B)に示す水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2を有する最も集光された集光配光パターンP5として車両Cの前方に照射される。左側の中央の第6出射面26からは、出射光L6(図7(B)、図8(C)参照)が出射されて図11(B)に示す大拡散配光パターンP6として車両Cの前方に照射される。
【0055】
右側の下側の第7出射面27からは、出射光L7(図7(C)、図8(A)参照)が出射されて図9(C)に示す中拡散配光パターンP7として車両Cの前方に照射される。中間の下側の第8出射面28からは、出射光L8(図7(C)、図8(B)参照)が出射されて図10(C)に示す水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2を有する集光配光パターンP8として車両Cの前方に照射される。左側の下側の第9出射面29からは、出射光L9(図7(C)、図8(C)参照)が出射されて図11(C)に示す大拡散配光パターンP9として車両Cの前方に照射される。
【0056】
ここで、中間の3個の出射面、すなわち、第2出射面22、第5出射面25、第8出射面28は、図10(A)、(B)、(C)に示すように、ロービーム配光パターンLPの水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2を形成する集光配光パターンP2、P5、P8を出射する。
【0057】
車両Cの内側(右側)の3個の出射面、すなわち、第1出射面21、第4出射面24、第7出射面27は、図9(A)、(B)、(C)に示すように、ロービーム配光パターンLPの中拡散配光パターンP1、P4、P7を出射する。この第1出射面21、第4出射面24、第7出射面27からの出射光L1、L4、L7は、図3に示すように、光軸(基準光軸Zに対して平行な軸)Z1に対して外側(車両Cの内側、右側)に小さい角度θ2(約25°)で振り分けられている。
【0058】
車両Cの外側(左側)の3個の出射面、すなわち、第3出射面23、第6出射面26、第9出射面29は、図11(A)、(B)、(C)に示すように、ロービーム配光パターンLPの大拡散配光パターンP3、P6、P9を出射する。この第3出射面23、第6出射面26、第9出射面29からの出射光L3、L6、L9は、図3に示すように、光軸(基準光軸Zに対して平行な軸)Z1に対して外側(車両Cの外側、左側)に大きい角度θ1(約65°)で振り分けられている。
【0059】
前記の9個の配光パターンP1〜P9が重畳されることにより、図13に示すロービーム配光パターンLPが形成される。なお、図13に示すロービーム配光パターンLPは、左側の車両用灯具1Lから照射されるものであって、スクリーンの上下の垂直線VU−VDに対して左側にやや偏っている。たとえば、スクリーンの上下の垂直線VU−VDから左側に約60°右側に約40°である。
【0060】
右側の車両用灯具1Rから照射されるロービーム配光パターンは、図示されていないが、図13に示すロービーム配光パターンLPと比較して、水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2が変わらず、スクリーンの上下の垂直線VU−VDに対して右側にやや偏っている。たとえば、スクリーンの上下の垂直線VU−VDから左側に約40°右側に約60°である。
【0061】
左側の車両用灯具1Lから照射される図13に示すロービーム配光パターンLPと、右側の車両用灯具1Rから照射される図示されていないロービーム配光パターンとが重畳されることにより、左右両端がスクリーンの上下の垂直線VU−VDから左右両側に約60°である理想のロービーム配光パターン(図示せず)が得られる。
【0062】
一方、半導体型光源3からの光の一部は、補助レンズ部5の入射面50から補助レンズ部5中に入射する。その入射光は、補助レンズ部5の全反射面51で全反射する。その全反射光は、補助レンズ部5の出射面52から外部に出射する。その出射光L10は、図12図13に示すオーバーヘッドサイン配光パターンP10として車両Cの前上方に照射される。
【0063】
ここで、レンズ2中に入射した入射光がレンズ2の分割段差面2U、2D、2L、2Rからこの分割段差面2U、2D、2L、2Rにより配光制御されて外部に出射する。すなわち、2本の水平分割段差面2U、2Dから外部に出射する出射光L50は、図14に示すように、2本の水平分割段差面2U、2Dにより配光制御されて、光軸(基準光軸Zに対して平行な軸)Z2に対して下向きに屈折して出射する。また、2本の垂直分割段差面2L、2Rから出射する出射光L50は、図15に示すように、2本の垂直分割段差面2L、2Rにより配光制御されて、光軸(基準光軸Zに対して平行な軸)Z2に対して外側に屈折して出射する。
【0064】
この結果、分割段差面2U、2D、2L、2Rから外部に出射する出射光L50により形成される配光(以下、「段差面からの配光」と称する)P0は、図16に示す配光となる。すなわち、上縁がスクリーンの左右の水平線HL−HRよりも下方に位置し、中央部分が下方に拡散され、左右両端部分が左右に拡散されている。特に、この段差面からの配光P0の上縁の中央部(スクリーンの上下の垂直線VU−VDと左右の水平線HL−HRとが交差する部分に対応する中央部)は、左右の水平線HL−HRよりも下方に位置する。
【0065】
(実施形態の効果の説明)
この実施形態にかかる車両用灯具1L、1Rは、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0066】
この実施形態にかかる車両用灯具1L、1Rは、レンズ2が1個の入射面20から構成されているので、レンズの入射面が全反射型フレネルレンズの複数の輪帯状プリズムから構成されている特許文献1の車両用灯具と比較して、レンズ2の入射面20の構造を簡単にすることができ、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0067】
この実施形態にかかる車両用灯具1L、1Rは、9個の出射面21〜29の分割段差面2U、2D、2L、2Rが、レンズ2の正面視において、半導体型光源3が位置する箇所以外の箇所に設けられているので、複数の分割レンズ部の入射面および出射面が光軸を中心に放射状に分割されている特許文献2の車両用灯具と比較して、半導体型光源3からの光のうち最も強い光が分割段差面2U、2D、2L、2Rを通過しないので、屈折などの光の損失が無く、そのまま配光に寄与することができる。
【0068】
この実施形態にかかる車両用灯具1L、1Rは、中間の3個の出射面すなわち第2出射面22、第5出射面25、第8出射面28が、図10(A)、(B)、(C)に示すように、ロービーム配光パターンLPの水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2を形成する集光配光パターンP2、P5、P8を出射する。すなわち、中間の3個の出射面すなわち第2出射面22、第5出射面25、第8出射面28は、車両Cの内側(右側)の3個の出射面すなわち第1出射面21、第4出射面24、第7出射面27、および、車両Cの外側(左側)の3個の出射面すなわち第3出射面23、第6出射面26、第9出射面29と比較して、半導体型光源3の近くに位置する。このために、第2出射面22、第5出射面25、第8出射面28により形成される集光配光パターンP2、P5、P8の分光作用が、第1出射面21、第4出射面24、第7出射面27により形成される中拡散配光パターンP1、P4、P7の分光作用、および、第3出射面23、第6出射面26、第9出射面29により形成される大拡散配光パターンP3、P6、P9の分光作用よりも低く抑制することができる。
【0069】
この実施形態にかかる車両用灯具1L、1Rは、車両Cの内側(右側)の3個の出射面すなわち第1出射面21、第4出射面24、第7出射面27が、図9(A)、(B)、(C)に示すように、ロービーム配光パターンLPの中拡散配光パターンP1、P4、P7を出射する。このために、図3に示すように、第1出射面21、第4出射面24、第7出射面27からの出射光L1、L4、L7を、光軸(基準光軸Zに対して平行な軸)Z1に対して外側(車両Cの内側、右側)に小さい角度θ2(約25°)で振り分けることができる。これにより、車両用灯具1L、1Rよりも車両Cの内側に他の車両構造物が配置されていても、その車両構造物を避けて、第1出射面21、第4出射面24、第7出射面27から出射光L1、L4、L7を出射させることができ、配光の損失を無くすことができる。
【0070】
この実施形態にかかる車両用灯具1L、1Rは、車両Cの外側(左側)の3個の出射面すなわち第3出射面23、第6出射面26、第9出射面29が、図11(A)、(B)、(C)に示すように、ロービーム配光パターンLPの大拡散配光パターンP3、P6、P9を出射する。このために、図3に示すように、第3出射面23、第6出射面26、第9出射面29からの出射光L3、L6、L9を、光軸(基準光軸Zに対して平行な軸)Z1に対して外側(車両Cの外側、左側)に大きい角度θ1(約65°)で振り分けることができる。これにより、車両Cの前部の左右両端部が内側から外側にかけて、前側から後側に湾曲傾斜(スラント)している場合において、第3出射面23、第6出射面26、第9出射面29から出射光L3、L6、L9を、他の車両構造物に遮られずに、外側に大きい角度で振り分けることができる。
【0071】
このように、この実施形態にかかる車両用灯具1L、1Rは、車両Cの内側(右側)の3個の出射面すなわち第1出射面21、第4出射面24、第7出射面27からの出射光L1、L4、L7により形成されるロービーム配光パターンLPの中拡散配光パターンP1、P4、P7と、車両Cの外側(左側)の3個の出射面すなわち第3出射面23、第6出射面26、第9出射面29からの出射光L3、L6、L9により形成されるロービーム配光パターンLPの大拡散配光パターンP3、P6、P9と、により、左右両端が左右両外側に広がった理想のロービーム配光パターン(左右両端がスクリーンの上下の垂直線VU−VDから左右両側に約60°である理想のロービーム配光パターン)が得られる。
【0072】
この実施形態にかかる車両用灯具1L、1Rは、レンズ2の出射面21〜29が、2本の垂直分割段差面2L、2Rおよび2本の水平分割段差面2U、2Dにより、左右に3分割上下に3分割、合計9個に分割されている。このために、9個の出射面21〜29から出射される出射光L1〜L9により形成される配光パターンP1〜P9において、配光分布、配光制御、配光設計が行い易い。
【0073】
この実施形態にかかる車両用灯具1L、1Rは、9個の出射面21〜29のうち、下位の出射面24、25、26または27、28、29が上位の出射面21、22、23または24、25、26より、光L1〜L9、L50の出射方向側に位置する。すなわち、レンズ2の基準光軸Zに対して前側(レンズ2の基準光軸Z方向前方、半導体型光源3から離れる方向)に凸である。このために、2本の水平分割段差面2U、2Dが、上位の出射面21、22、23または24、25、26から下位の出射面24、25、26または27、28、29にかけて、上から下に傾斜している。この結果、2本の水平分割段差面2U、2Dから出射する出射光L50が、図14に示すように、上から下に傾斜している2本の水平分割段差面2U、2Dにより配光制御されて、光軸(基準光軸Zに対して平行な軸)Z2に対して下向きに屈折して出射する。
【0074】
この実施形態にかかる車両用灯具1L、1Rは、9個の出射面21〜29のうち、中間側の出射面22、25、28が左右の端側の出射面21、24、27および23、26、29より、光L1〜L9、L50の出射方向と反対側に位置する。すなわち、レンズ2の基準光軸Zに対して後側(レンズ2の基準光軸Z方向後方、半導体型光源3に近づく方向)に凹である。このために、2本の垂直分割段差面2L、2Rが、中間側の出射面22、25、28から右端側の出射面21、24、27にかけて左側から右側に傾斜していて、中間側の出射面22、25、28から左端側の出射面23、26、29にかけて、右側から左側に傾斜している。この結果、2本の垂直分割段差面2L、2Rから出射する出射光L50が、図15に示すように、左側から右側にまた右側から左側に傾斜している2本の垂直分割段差面2L、2Rにより配光制御されて、光軸(基準光軸Zに対して平行な軸)Z2に対して外側に屈折して出射する。すなわち、右側の垂直分割段差面2Rから出射する出射光L50は、右側に屈折して出射し、左側の垂直分割段差面2Lから出射する出射光L50は、左側に屈折して出射する。
【0075】
このように、この実施形態にかかる車両用灯具1L、1Rは、2本の水平分割段差面2U、2Dから外部に出射する出射光L50が、図14に示すように、光軸(基準光軸Zに対して平行な軸)Z2に対して下向きに屈折して出射し、また、2本の垂直分割段差面2L、2Rから出射する出射光L50が、図15に示すように、光軸(基準光軸Zに対して平行な軸)Z2に対して外側に屈折して出射する。この結果、分割段差面2U、2D、2L、2Rから外部に出射する出射光L50により形成される段差面からの配光P0は、ロービーム配光パターンLPの水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2に対して下方にかつ外側にそれぞれ配光される。すなわち、図16に示すように、段差面からの配光P0の上縁の中央部は、左右の水平線HL−HRよりも下方に位置する。これにより、ロービーム配光パターンLPの水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2に対して上方に配光される光の増加を抑制することができ、もしくは、上方に配光される光を無くすことができる。
【0076】
(実施形態以外の例の説明)
この実施形態においては、車両用前照灯、ロービーム用ヘッドランプについて説明するものである。ところが、この発明においては、車両用前照灯、ロービーム用ヘッドランプ以外の車両用灯具たとえばフォグランプ、ハイビーム用ヘッドランプなどであっても良い。
【0077】
また、この実施形態においては、レンズ2の出射面21〜29が9個の場合について説明するものである。ところが、この発明においては、レンズ2の出射面は、2個〜8個、10個以上であっても良い。この場合において、出射面の個数が多くなると、配光制御が行い易くなるが、その反面、半導体型光源3からの光の損失が多くなる。また、出射面の個数が少なくなると、半導体型光源3からの光の損失を少なく抑制することができるが、その反面、配光制御が難しくなる。このために、半導体型光源3からの光の損失と配光制御との兼ね合いで、出射面の個数を調整する。
【0078】
さらに、この実施形態においては、レンズ2の正面視(出射面21〜29)の形状が左右非対称の形状をなしている。ところが、この発明においては、レンズの正面視の形状を左右対称の形状とし、レンズを左側の車両用灯具1Lと右側の車両用灯具1Rとの共用レンズとしても良い。
【0079】
さらにまた、この実施形態においては、レンズ2の下辺に補助レンズ部5を設けて、オーバーヘッドサイン配光パターンP10を形成するものである。ところが、この発明においては、レンズ2の周辺に補助レンズ部を設けて、オーバーヘッドサイン配光パターンP10以外の補助配光パターンを形成するようにしても良い。また、複数個の補助レンズ部を設けて、複数個の補助配光パターンを形成しても良い。さらに、補助レンズ部を設けず、補助配光パターンを形成しなくても良い。
【符号の説明】
【0080】
1L、1R 車両用灯具
2 レンズ
20 入射面
21、22、23、24、25、26、27、28、29 出射面
2L、2R 垂直分割段差面
2U、2D 水平分割段差面
3 半導体型光源
30 発光チップ
31 発光面
4 ヒートシンク部材
5 補助レンズ部5
50 入射面
51 全反射面
52 出射面
C 車両
CL1 水平カットオフライン
CL2 斜めカットオフライン
F 基準焦点
HL−HR スクリーンの左右の水平線
O 中心
P1、P4、P7 中拡散配光パターン
P2、P5、P8 集光配光パターン
P3、P6、P9 大拡散配光パターン
P10 オーバーヘッドサイン配光パターン
LP ロービーム配光パターン
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
X X軸
Y Y軸
Z 基準光軸(Z軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16