特許第6205722号(P6205722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6205722ソーナー画像処理装置、ソーナー画像処理方法、ソーナー画像処理プログラムおよび記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205722
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ソーナー画像処理装置、ソーナー画像処理方法、ソーナー画像処理プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G01S 15/89 20060101AFI20170925BHJP
   G01S 7/53 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   G01S15/89 B
   G01S7/53
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-670(P2013-670)
(22)【出願日】2013年1月7日
(65)【公開番号】特開2014-132248(P2014-132248A)
(43)【公開日】2014年7月17日
【審査請求日】2015年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 義行
【審査官】 三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−222677(JP,A)
【文献】 特開2000−227476(JP,A)
【文献】 特開平03−186784(JP,A)
【文献】 特開2001−083236(JP,A)
【文献】 特開平04−005594(JP,A)
【文献】 特開平07−159521(JP,A)
【文献】 特開平10−020045(JP,A)
【文献】 特開2008−128900(JP,A)
【文献】 特開2002−214334(JP,A)
【文献】 米国特許第06438071(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52− 7/64
G01S 15/00−15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる方位ビームの反射波を受信することによって取得したN個のソーナー画像についてそれぞれ、第1閾値よりも大きなレベルを有する画素を第1候補として抽出し、抽出した第1候補のソーナー画像内における連続性を評価することによって第1エコーの座標を認定する画像内評価手段と、
前記N個のソーナー画像についてそれぞれ、前記第1エコー以外の画素の中から第2閾値よりも大きなレベルを有する画素を第2候補として抽出し、抽出した第2候補についてN個のソーナー画像間の連続性を評価することによって第2エコーの座標を認定する画像間評価手段と、
前記N個のソーナー画像についてそれぞれ、前記第1エコーと第2エコー以外の座標のレベルを補正する補正手段と、
前記補正されN個のソーナー画像から、座標ごとに最大レベル値を選択し、選択した最大レベル値を全座標について合成して処理済ソーナー画像として出力する合成出力手段と、
を備えるソーナー画像処理装置。
【請求項2】
前記画像内評価手段は、ソーナー画像内において第1候補がn個以上連続している場合、
その連続領域内の第1候補を第1エコーと認定する、請求項1記載のソーナー画像処理装置。
【請求項3】
前記画像間評価手段は、N個のソーナー画像において、所定の座標についてM(1≦M≦N)個以上の第2候補が抽出されている場合、その座標を第2エコーの座標と認定する、請求項1または2記載のソーナー画像処理装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記第1エコーと第2エコー以外の座標のレベルを、N個のソーナー画像の当該座標のレベルの平均値に置き換えることによって補正する、請求項1乃至3のいずれか1項記載のソーナー画像処理装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記第1エコーと第2エコー以外の座標うち、前記第2閾値よりも大きなレベルを有する座標のレベルを補正する、請求項1乃至4のいずれか1項記載のソーナー画像処理装置。
【請求項6】
前記第1閾値と第2閾値とは同じ値に設定されている、請求項1乃至5のいずれか1項記載のソーナー画像処理装置。
【請求項7】
前記合成出力手段は、二値化処理された処理済ソーナー画像を出力する、請求項1乃至6のいずれか1項記載のソーナー画像処理装置。
【請求項8】
それぞれ異なる方位ビームの反射波を受信することによって取得したN個のソーナー画像から処理済ソーナー画像を生成するソーナー画像処理方法であって、
前記N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1閾値よりも大きなレベルを有する画素を第1候補として抽出し、抽出した第1候補のソーナー画像内における連続性を評価することによって第1エコーの座標を認定し、
前記N個のソーナー画像についてそれぞれ、前記第1エコー以外の画素の中から第2閾値よりも大きなレベルを有する画素を第2候補として抽出し、抽出した第2候補についてN個のソーナー画像間の連続性を評価することによって第2エコーの座標を認定し、
前記N個のソーナー画像についてそれぞれ、前記第1エコーと第2エコー以外の座標のレベルを補正し、
前記補正されたN個のソーナー画像から、座標ごとに最大レベル値を選択し、選択した最大レベル値を全座標について合成して処理済ソーナー画像として出力する、
ソーナー画像処理方法。
【請求項9】
それぞれ異なる方位ビームの反射波を受信することによって取得したN個のソーナー画像から処理済ソーナー画像を生成するソーナー画像処理装置のコンピュータが実行可能なソーナー画像処理プログラムであって、
前記N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1閾値よりも大きなレベルを有する画素を第1候補として抽出し、抽出した第1候補のソーナー画像内における連続性を評価することによって第1エコーの座標を認定する機能、
前記N個のソーナー画像についてそれぞれ、前記第1エコー以外の画素の中から第2閾値よりも大きなレベルを有する画素を第2候補として抽出し、抽出した第2候補についてN個のソーナー画像間の連続性を評価することによって第2エコーの座標を認定する機能、
前記N個のソーナー画像についてそれぞれ、前記第1エコーと第2エコー以外の座標のレベルを補正する機能、
前記補正されたN個のソーナー画像から、座標ごとに最大レベル値を選択し、選択した最大レベル値を全座標について合成して処理済ソーナー画像として出力する機能、
を前記コンピュータに実行させるためのソーナー画像処理プログラム。
【請求項10】
それぞれ異なる方位ビームの反射波を受信することによって取得したN個のソーナー画像から処理済ソーナー画像を生成するソーナー画像処理装置のコンピュータに、
前記N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1閾値よりも大きなレベルを有する画素を第1候補として抽出し、抽出した第1候補のソーナー画像内における連続性を評価することによって第1エコーの座標を認定する手順、
前記N個のソーナー画像についてそれぞれ、前記第1エコー以外の画素の中から第2閾値よりも大きなレベルを有する画素を第2候補として抽出し、抽出した第2候補についてN個のソーナー画像間の連続性を評価することによって第2エコーの座標を認定する手順、
前記N個のソーナー画像についてそれぞれ、前記第1エコーと第2エコー以外の座標のレベルを補正する手順、
前記補正されたN個のソーナー画像から、座標ごとに最大レベル値を選択し、選択した最大レベル値を全座標について合成して処理済ソーナー画像として出力する手順、
を実行させるためのプログラムを記録した、前記コンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーナー画像処理装置、ソーナー画像処理方法、ソーナー画像処理プログラムおよび記録媒体に関し、特に、複数のソーナー画像を処理することによって水中の目標物を捜索するソーナー画像処理装置、ソーナー画像処理方法、ソーナー画像処理プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
水中の目標物を捜索する技術として、船舶等の移動体に設置されたソーナーから音響ビームを放射し、その音響ビームが目標物によって反射された反射波(エコー)を受信・解析することによって目標物を捜索する技術がある。ソーナーを用いて目標物を捜索する技術は、例えば、特許文献1−3に開示されている。
【0003】
指向性の高い音響ビームを複数放射するサイドスキャン方式のソーナー(サイドスキャンソーナー、合成開口ソーナー等)を用いた海底捜索においては、1捜索あたり複数の周波数や方位の音響ビームを用い、同一エリアに対する複数のソーナー画像に基づいて目標物の有無を判定する。
【0004】
サイドスキャン方式のソーナーにおいては、複数の周波数や方位の音響ビームを用いてソーナー画像を取得することから、音響ビームの各種パラメータの違いにより、スパイクノイズやスペックルノイズが各ソーナー画像中にランダムに発生する。また、目標物が比較的大きな平面で構成される物体であった場合、目標物によるエコーの反射特性により目標物のエコーは所定方位の音響ビームに対するソーナー画像にしか現れないことがある。
【0005】
ここで、複数のソーナー画像に基づいて目標物の有無を判定する一般的な方法としては、複数枚のソーナー画像において、各座標のレベルを平均して1枚の合成画像を生成して判定する方法(レベル平均法)、各座標について複数枚のソーナー画像から最大レベル値を抽出して1枚の合成画像を生成して判定する方法(最大値抽出法)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−210512号公報
【特許文献2】特開2007−333473号公報
【特許文献3】特開2000−227476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
サイドスキャン方式のソーナーに対してレベル平均法を適用する場合、ノイズを高精度に抽出して低減できる一方、所定方位の音響ビームに対するソーナー画像にしか現れない目標物のエコーのレベルは小さくなり、エコーのSN比が低下する。
【0008】
また、最大値抽出法を適用する場合、所定方位の音響ビームに対するソーナー画像にしか現れない目標物のエコーについては精度良く抽出できる一方、一部のソーナー画像のみに現れたノイズについても高いレベルのままエコーとして抽出されてしまう。
【0009】
本発明の目的は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、SN比が低下することなく、一部のソーナー画像にしか現れない目標物と、ノイズとの分離が困難な目標物と、を精度良く捜索できるソーナー画像処理装置、ソーナー画像処理方法、ソーナー画像処理プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係るソーナー画像処理装置は、N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1閾値よりも大きなレベルを有する画素を第1候補として抽出し、抽出した第1候補のソーナー画像内における連続性を評価することによって第1エコーの座標を認定する画像内評価手段と、N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1エコー以外の画素の中から第2閾値よりも大きなレベルを有する画素を第2候補として抽出し、抽出した第2候補についてN個のソーナー画像間の連続性を評価することによって第2エコーの座標を認定する画像間評価手段と、N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1エコーと第2エコー以外の座標のレベルを補正する補正手段と、補正されN個のソーナー画像から、座標ごとに最大レベル値を選択し、選択した最大レベル値を全座標について合成して処理済ソーナー画像として出力する合成出力手段と、を備える。
【0011】
上記目的を達成するために本発明に係るソーナー画像処理方法は、N個のソーナー画像から処理済ソーナー画像を生成するソーナー画像処理方法であって、N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1閾値よりも大きなレベルを有する画素を第1候補として抽出し、抽出した第1候補のソーナー画像内における連続性を評価することによって第1エコーの座標を認定し、N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1エコー以外の画素の中から第2閾値よりも大きなレベルを有する画素を第2候補として抽出し、抽出した第2候補についてN個のソーナー画像間の連続性を評価することによって第2エコーの座標を認定し、N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1エコーと第2エコー以外の座標のレベルを補正し、補正されたN個のソーナー画像から、座標ごとに最大レベル値を選択し、選択した最大レベル値を全座標について合成して処理済ソーナー画像として出力する。
【0012】
上記目的を達成するために本発明に係るソーナー画像処理プログラムは、N個のソーナー画像から処理済ソーナー画像を生成するソーナー画像処理装置のコンピュータが実行可能なソーナー画像処理プログラムであって、N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1閾値よりも大きなレベルを有する画素を第1候補として抽出し、抽出した第1候補のソーナー画像内における連続性を評価することによって第1エコーの座標を認定する機能、N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1エコー以外の画素の中から第2閾値よりも大きなレベルを有する画素を第2候補として抽出し、抽出した第2候補についてN個のソーナー画像間の連続性を評価することによって第2エコーの座標を認定する機能、N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1エコーと第2エコー以外の座標のレベルを補正する機能、補正されたN個のソーナー画像から、座標ごとに最大レベル値を選択し、選択した最大レベル値を全座標について合成して処理済ソーナー画像として出力する機能、をコンピュータに実行させる。
【0013】
上記目的を達成するために本発明に係る記録媒体は、N個のソーナー画像から処理済ソーナー画像を生成するソーナー画像処理装置のコンピュータが読み取り可能な記録媒体であって、このコンピュータに、N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1閾値よりも大きなレベルを有する画素を第1候補として抽出し、抽出した第1候補のソーナー画像内における連続性を評価することによって第1エコーの座標を認定する手順、N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1エコー以外の画素の中から第2閾値よりも大きなレベルを有する画素を第2候補として抽出し、抽出した第2候補についてN個のソーナー画像間の連続性を評価することによって第2エコーの座標を認定する手順、N個のソーナー画像についてそれぞれ、第1エコーと第2エコー以外の座標のレベルを補正する手順、補正されたN個のソーナー画像から、座標ごとに最大レベル値を選択し、選択した最大レベル値を全座標について合成して処理済ソーナー画像として出力する手順、を実行させるためのプログラムが記録されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るソーナー画像処理装置、ソーナー画像処理方法、ソーナー画像処理プログラムおよび記録媒体は、SN比が低下することなく、一部のソーナー画像にしか現れない目標物と、ノイズとの分離が困難な目標物と、を精度良く捜索できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】複数の方位ビームを用いたサイドスキャンソーナーによって海底を捜索する場合の、(a)3つの方位ビームと目標物との関係を示す図、(b)3つの方位ビームから取得したソーナー画像。
図2】本発明の第1の実施形態に係るソーナー画像処理装置10のブロック構成図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係るソーナー画像処理装置100のブロック構成図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るソーナー画像処理装置100の動作フロー図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るソーナー画像処理装置100の空間の連続性の判定時の動作フロー図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係るソーナー画像処理装置100の画像間の連続性の判定時の動作フロー図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係るソーナー画像処理装置100のソーナー画像の合成時の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るソーナー画像処理装置について説明する。本実施形態に係るソーナー画像処理装置は、サイドスキャン方式のソーナーに適用され、N個の海底ソーナー画像に所定の処理を施して合成し、1つの海底ソーナー画像を出力する。
【0017】
サイドスキャン方式のソーナーを適用する場合、発明が解決しようとする課題にも記載したように、目標物が比較的大きな平面で構成される物体である場合、目標エコーの反射方位特性により、ある1方位のビームでしか目標エコーが得られないことがある。
【0018】
この時の目標エコーの状態を図1に示す。図1(a)は、3つの方位ビーム(斜め前、真横、斜め後ろ)を形成するサイドスキャンソーナーと、ソーナーが設置された船舶等の移動体の進行方向(白抜き矢印)に対してある角度をもって位置する円筒状の大型目標と、球状の小型目標と、の位置関係を示した図、図1(b)は、3つの方位ビームの反射波を受信することによって取得したソーナー画像である。
【0019】
図1(b)において、球状の小型目標からの反射波は反射方位特性を持たない、3つの方位の音響ビームのいずれでも点状のエコーとして検出される。一方、大きな音響反射面を呈する円筒状の大型目標からの反射波は強い反射方位特性を持つため、斜め前方向の音響ビームでしかエコーが検出されない。ここで、円筒状の大型目標のエコーは大きな音響反射面を示すように斜め前方向のソーナー画像内に大きな領域で現れる。さらに、ノイズは各ソーナー画像において点状にランダムに現れる。
【0020】
従って、この3つの画像に背景技術で説明したレベル平均法を適用すると、球状の小型目標とノイズとを分離できる一方、円筒状の大型目標のエコーレベルは低下する。また、最大値抽出法を適用すると、円筒状の大型目標は高いレベルで捜索できる一方、球状の小型目標とノイズとを分離することができない。
【0021】
そこで、本実施形態では、複数のソーナー画像に対して画像内の連続性と画像間の連続性とを評価することにより、大型目標のエコーレベルを維持したまま、小型目標とノイズとを分離する。本実施形態に係るソーナー画像処理装置のブロック構成図を図2に示す。図2において、ソーナー画像処理装置10は、画像内評価手段20、画像間評価手段30、補正手段40および合成出力手段50を備える。
【0022】
画像内評価手段20は、第1閾値を保持し、読み込んだN個(Nは1以上の整数)のソーナー画像1、2、…、Nについてそれぞれ、画素ごとに画素のレベルと第1閾値とを比較し、第1閾値よりも大きなレベルを有する画素を第1候補として抽出する。画像内評価手段20は、抽出した第1候補の画像内の連続性を評価し、ソーナー画像1、2、…、Nごとに第1エコーの座標を取得する。
【0023】
具体的には、画像内評価手段20は、評価対象の第1候補に隣接する画素のレベルが第1候補として抽出されているか否か確認し、第1候補として抽出されている場合はそれらの画素を連続するエコー領域と判定する。同様にして隣接する画素について連続性を判定していき、一つのエコー領域を抽出する。そして、画像内評価手段20は、抽出したエコー領域を構成する画素の数が所定の数以上である場合、当該エコー領域に含まれている画素を第1エコーの座標として認定する。
【0024】
画像間評価手段30は、第2閾値を保持し、読み込んだN個のソーナー画像1、2、…、Nについてそれぞれ、画像内評価手段20が認定した第1エコー以外の画素のレベルと第2閾値とを比較し、第2閾値よりも大きなレベルを有する画素を第2候補として抽出する。画像間評価手段30はさらに、抽出した第2候補についてN個のソーナー画像間の連続性を評価する。
【0025】
ここで、画像間の連続性とは、必ずしも前後の画像での連続性を必要とするものではなく、N個の画像間において第2候補が全体として連続していれば良い。本実施形態に係る画像間評価手段30は、N個のソーナー画像について、インデックスごとに第2候補の個数をカウントし、第2候補がM個(Mは1以上N以下の整数)以上抽出されたインデックスは画像間の連続性を有すると判定し、そのインデックスを第2エコーの座標と認定する。
【0026】
補正手段40は、N個のソーナー画像1、2、…、Nについてそれぞれ、第1エコーまたは第2エコーと認定した画素のレベルをそのまま維持すると共に、それ以外の画素の座標をノイズ座標と認定し、ノイズ座標のレベルを補正することにより、N個の補正画像を生成する。例えば、補正手段40は、N個のソーナー画像のノイズ座標ごとにN個の画素のレベルの平均値を算出し、ノイズ座標のレベルを算出した平均値に置き換えることによってノイズ座標のレベルを補正する。
【0027】
合成出力手段50は、補正手段40から出力されたN個の補正画像について、座標ごとにN個のうちの最大レベル値を選択する。そして、合成出力手段50は、選択した最大レベル値を全座標について合成し、処理済ソーナー画像として出力する。
【0028】
上記のように構成されたソーナー画像処理装置10は、N個のソーナー画像1、2、…、Nについてそれぞれ画像内の連続性を評価することにより第1エコーの座標を特定すると共に、N個のソーナー画像1、2、…、N間において画像間の連続性を評価することにより第2エコーの座標を特定する。そして、ソーナー画像処理装置10は、第1エコーまたは第2エコーと認定した画素のレベルをそのまま維持する一方、それ以外の画素の座標をノイズ座標と認定して、ノイズ座標のレベルを補正する。
【0029】
この場合、反射特性によって所定の方位の音響ビームでしか現れない第1エコーについてもレベルが低下することなく高精度に抽出することができると共に、ノイズを小型の第2エコーと高精度に分離して補正することができる。従って、本実施形態に係るソーナー画像処理装置10は、SN比が低下することなく、一部のソーナー画像にしか現れない第1エコーと、ノイズとの分離が困難な第2エコーと、を精度良く捜索できる。
【0030】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態に係るソーナー画像処理装置のブロック構成図を図3に示す。図3において、本実施形態に係る画像ソーナー画像処理装置100は、N個(Nは1以上の整数)の空間連続性判定部200−1、200−2、…、200−N、レベル平滑化部300および合成出力部400を備える。
【0031】
N個の空間連続性判定部200−1、200−2、…、200−Nはそれぞれ、第1の閾値を保持し、対応付けられているソーナー画像D1を送受波器から読み込み、読み込んだソーナー画像D1を画素ごとにi×j個の画素に分割し、各画素ijのレベルを保持している第1の閾値と比較する。以下、画素の“i、j”を画素のインデックスと記載する。画素のインデックスは、ソーナー画像D1の座標と対応する。
【0032】
N個の空間連続性判定部200はそれぞれ、読み込んだソーナー画像D1において第1の閾値よりも大きなレベルを有する画素ijを大型エコー候補として抽出する。第1の閾値を小さく設定することにより、より多くの大型エコー候補が抽出される。そして、空間連続性判定部200は、抽出した大型エコー候補について空間の連続性を評価し、大型エコー候補が複数画素にまたがって連続的に存在している場合に大型目標のエコーであると判定する。
【0033】
具体的には、空間連続性判定部200は、対象の大型エコー候補に隣接する画素を参照し、参照した画素のレベルが第1の閾値より大きい場合は連続するエコーの領域と判断し、さらに参照した画素に隣接する画素についても連続性を判定していく。そして、空間連続性判定部200は、ひとかたまりのエコー領域を抽出し、抽出したひとかたまりのエコー領域に含まれる画素の数が予め設定した目標サイズn(nは1以上の整数)より大きい場合、抽出したひとかたまりのエコー領域を大型目標のエコーと認定する。
【0034】
N個の空間連続性判定部200はそれぞれ、大型目標のエコーと認定した領域内の画素ijのインデックスをエコー座標D3として出力すると共に、第1の閾値との比較結果を集約することによって生成した二値化画像D2を出力する。ここで、N個の空間連続性判定部200が請求項の画像内評価手段に相当する。
【0035】
レベル平滑化部300は、第2の閾値を保持し、N個の空間連続性判定部200から出力されたソーナー画像D1からエコー座標D3(大型目標のエコーに対応する画素ij)を取り除き、残った画素のレベルと第2の閾値とを比較する。レベル平滑化部300は、エコー座標D3以外で第2の閾値よりも大きいレベルを有する画素を小型エコー候補とする。すなわち、レベル平滑化部300は、大型目標のエコーおよび小型目標のエコーと認定された以外の画素であって、レベルが第2の閾値よりも大きい画素をノイズ画素と認定する。
【0036】
レベル平滑化部300はさらに、小型エコー候補について画像間の連続性を評価し、N個のソーナー画像D1において小型エコー候補がM個以上抽出されたインデックスを小型目標のエコーの座標と認定し、小型エコー候補がM個未満のインデックスに対応するインデックスをノイズ画素の座標と認定する。すなわち、画像間の連続性とは、必ずしも前後の画像での連続性を必要とするものではなく、N個の画像間において第2候補が全体として連続していれば良い。第2の閾値を小さく設定することにより、より多くの画素に対して小型目標のエコーかノイズかの判定が行われる。
【0037】
レベル平滑化部300は、ノイズ画素と認定したインデックスにおけるN個の画素のレベルの平均値を算出し、ノイズ画素のレベルを算出した平均値に置き換える。なお、ノイズ画素と認定した画素の中で第2の閾値よりも大きいレベルを有する画素のレベルのみ、平均値に置き換えることでも良い。レベル平滑化部300は、N個のソーナー画像D1についてそれぞれノイズ画素のレベルを平滑化し、平滑化ソーナー画像D4として出力する。
【0038】
ここで、Mは予め設定する処理パラメータであり、1以上N以下の整数である。MとしてNに近い値を設定することにより、平均値が小さくなり、平滑化の効果が大きくなる。また、第1の閾値および第2の閾値は、処理負荷や、特定したいエコーの種類や反射方位特性等によって適宜設定することができ、第1の閾値と第2の閾値とを同じ値に設定することでも良いし、異なる値に設定することでも良い。レベル平滑化部300が、請求項の画像間評価手段および補正手段に相当する。
【0039】
合成出力部400は、レベル平滑化部300から出力されたN個の平滑化ソーナー画像D4について、インデックスごとにN個の画素ijのレベルから最大レベル値を抽出する。合成出力部400は、インデックスごとに抽出した最大レベル値を、そのインデックスに対応する座標のレベルとして決定し、全座標について決定したレベルを合成した合成画像D5を出力する。
【0040】
上記のように構成されたソーナー画像処理装置100の動作フローについて説明する。ソーナー画像処理装置100の全体の動作フローを図4に示す。また、図4の個々の動作の詳細動作フローを図5乃至図7に示す。
【0041】
図4において、N個の空間連続性判定部200−1、200−2、…、200−Nはそれぞれ、読み込んだソーナー画像D1を画素ijごとに第1の閾値と比較することによって二値化画像D2を生成・出力すると共に、第1の閾値より大きなレベルを有する画素の空間の連続性を判定することによって大型目標のエコーの画素ijか否か判定し、大型目標のエコーの画素ijと認定した画素の座標をエコー座標D3として出力する(S100)。
【0042】
詳細には、図5に示すように、N個の空間連続性判定部200−1、200−2、…、200−Nはそれぞれ、対応付けられているソーナー画像D1を送受波器から読み込み(S101)、読み込んだソーナー画像D1を画素ごとにi×j個の画素ijに分割する(S102)。N個の空間連続性判定部200はそれぞれ、画素ijのレベルをそれぞれ保持している第1の閾値と比較し、第1の閾値より大きなレベルを有する画素を大型エコー候補として抽出する(S103)。空間連続性判定部200はさらに、抽出した大型エコー候補に対して空間の連続性を判定する(S104)。
【0043】
空間連続性判定部200は、対象の大型エコー候補が互いに隣接しているひとかたまりのエコー領域を抽出し、抽出したひとかたまりのエコー領域に含まれる画素の数が予め設定した目標サイズnより大きい場合(S104のYES)、そのエコー領域を大型目標のエコーと認定し、大型目標のエコーの座標をエコー座標D3として出力する(S105)。N個の空間連続性判定部200はそれぞれ、N個のソーナー画像D1の全ての画素ijについてS103〜S105の処理を行った後(S106のYES)、第1の閾値との比較結果を集約することによって二値化画像D2を生成して出力する(S107)。
【0044】
N個の空間連続性判定部200が対応するソーナー画像D1内において個々に大型目標のエコーを抽出することにより、N個のソーナー画像D1のうちの幾つかにしか現れない大型目標のエコーも抽出される。
【0045】
次に、図4において、レベル平滑化部300は、ソーナー画像D1、エコー座標D3および第2の閾値に基づいて、小型エコー候補を抽出し、抽出した小型エコー候補に対して画像間の連続性を評価することによってノイズ座標を特定し、特定したノイズ座標のレベルを平滑化する(S200)。
【0046】
詳細には、図6に示すように、レベル平滑化部300は、N個のソーナー画像D1、二値化画像D2およびエコー座標D3を読み込む(S201、S202、S203)。レベル平滑化部300は、読み込んだソーナー画像D1からエコー座標D3(大型目標のエコーの画素ij)を取り除き(S204)、大型目標のエコーの画素ij以外の画素であって、第2の閾値より大きなレベルを有する画素を小型エコー候補として抽出する(S205のYES)。
【0047】
レベル平滑化部300はさらに、抽出した小型エコー候補の画像間の連続性を評価し(S206)、N個のソーナー画像D1において小型エコー候補がM個以上抽出されたインデックスを小型目標のエコーの座標と認定し(S207)、小型エコー候補がM個未満のインデックスに対応するインデックスをノイズ画素の座標と認定する(S208)。
【0048】
レベル平滑化部300は、全ての小型エコー候補について小型目標のエコーかノイズか決定した後(S209のYES)、N個のソーナー画像D1において、エコー座標D3(大型目標のエコーの画素ij)のレベルおよび小型目標のエコーと認定した座標のレベルはそのまま保持すると共にノイズ座標と認定した座標のレベルを平滑化することによりN個の画像を生成し、N個の平滑化ソーナー画像D4として出力する(S210)。
【0049】
これにより、小型目標のエコーと認定された点エコーのレベルをそのまま維持したまま、点状のノイズ座標のレベルが抑圧される。なお、本実施形態では、全ての小型エコー候補について小型目標のエコーかノイズか決定した後にノイズ座標のレベルを平滑化したが、ノイズ座標と認定した時にノイズ座標のレベルを平滑化することもできる。
【0050】
さらに、図4において、合成出力部400はN個の平滑化ソーナー画像D4について、インデックスごとに最も高いレベルを抽出し、それを合成して合成画像D5を出力する(S300)。
【0051】
詳細には、図7に示すように、合成出力部400はレベル平滑化部300からN個の平滑化ソーナー画像D4を読み込み(S301)、読み込んだN個の平滑化ソーナー画像D4について、インデックスごとにN個の画素ijからレベルの最大値を抽出する(S302)。図6のS210の処理で、エコーと判定された画素のレベルはそのまま保持され、ノイズと判定された画素のレベルは平滑化されていることから、S302においてN個の平滑化ソーナー画像D4の所定のインデックスに対応するN個の画素から最大レベル値を抽出することにより、エコーのある座標ではエコーレベルの最大値が抽出され、ノイズ座標では平滑化されたノイズレベルの最大値が抽出される。
【0052】
そして、合成出力部400は、インデックスごとに抽出した最大レベル値をそのインデックスに対応する座標のレベルに決定し、全座標について決定したレベルを合成して合成画像D5を出力する(S303)。
【0053】
以上のように、本実施形態に係るソーナー画像処理装置100は、一つのソーナー画像内における空間の連続性を評価することによって大型目標のエコーを抽出し、さらに、N個のソーナー画像間における画像間の連続性を評価することによって小型エコー候補を小型目標のエコーとノイズとに分離する。この場合、一部のソーナー画像にしか現れない大型目標のエコーを高精度に抽出できると共に、ノイズとの分離が困難な小型目標のエコーを高精度にノイズと分離することができる。
【0054】
そして、本実施形態に係るソーナー画像処理装置100は、大型目標のエコーの画素と小型目標のエコーの画素のレベルをそのまま維持すると共に、ノイズと認定した画素のレベルを平滑化する。この場合、ノイズのレベルのみを平滑化して低減することができ、SN比の低下の小さい合成画像D5を出力することができる。
【0055】
さらに、本実施形態に係るソーナー画像処理装置100は、合成出力部400においてソーナー画像の各インデックスのレベルを決定する時に、そのインデックスに対応するN個の画素のレベルから最大レベル値を抽出する。所定のインデックスのレベルとして、レベルの平均値ではなく最大レベル値を適用することにより、エコー座標ではエコーレベルの最大値が抽出され、ノイズ座標では平滑化されたノイズレベルの最大値が抽出され、SN比をさらに向上させることができる。
【0056】
なお、上述の実施形態では、二値化画像D2、エコー座標D3および平滑化ソーナー画像D4等の中間ファイルを生成し、各部において必要なファイルを読み出すこととしたが、これらの中間ファイルを出力することなく、メモリ上で読み書きすることでも良い。
【0057】
また、上述の実施形態では、ノイズのレベルを平均値に置き換えることにより、ノイズを平滑化したが、これに限定されない。例えば、ノイズのレベルを予め設定した低いレベル値に置き換えることもできるし、1以下の係数をノイズのレベルに乗算することもできる。
【0058】
本願発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
10 ソーナー画像処理装置
20 画像内評価手段
30 画像間評価手段
40 補正手段
50 合成出力手段
100 ソーナー画像処理装置
200 空間連続性判定部
300 レベル平滑化部
400 合成出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7