特許第6205733号(P6205733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205733
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】自覚式眼屈折力測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/028 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   A61B3/02 A
   A61B3/02 D
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-16260(P2013-16260)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2014-147417(P2014-147417A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2016年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】細井 良晋
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−085642(JP,A)
【文献】 特開平05−228115(JP,A)
【文献】 特開平07−236612(JP,A)
【文献】 特開2007−097707(JP,A)
【文献】 特開平11−225966(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01138251(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の眼底に検査用視標を形成させるための視標光束を前記被検眼に向けて投光する投光光学系と、前記投光光学系の光路中であって屈折力を変化しうるように構成された矯正光学系と、前記矯正光学系を通過した光束をリレーし、かつ前記矯正光学系によって矯正された前記視標光束を前記被検眼に投影するように配置されたリレー光学系と、を備え、前記矯正光学系の屈折力を変化することにより前記被検眼の眼屈折力を測定する自覚式眼屈折力測定装置であって、
前記被検眼と、前記矯正光学系によって矯正された前記視標光束との位置ずれを検出するずれ検出手段と、
前記ずれ検出手段によって検出された検出結果に基づいて、前記視標光束の投影位置を光学的に補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする自覚式眼屈折力測定装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記矯正光学系と被検者との間に配置された光学部材を駆動させる駆動手段を有し、前記検出結果に基づいて前記駆動手段を制御し、前記視標光束を偏向させることにより前記投影位置を光学的に補正することを特徴とする請求項1の自覚式眼屈折力測定装置。
【請求項3】
前記矯正光学系は、左右一対に設けられた右眼用矯正光学系と左眼用矯正光学系を有し、
前記補正手段は、左右一対に設けられた右眼用補正手段と、左眼用補正手段と、を有することを特徴とする請求項1または2の自覚式眼屈折力測定装置。
【請求項4】
前記矯正光学系は、左右一対に設けられた右眼用矯正光学系と左眼用矯正光学系を有し、
前記リレー光学系は、さらに、左右一対の各矯正光学系を通過した光束を共通にリレーするリレー光学系であって、
前記光学部材は、前記リレー光学系における前記右眼用矯正光学系と前記左眼用矯正光学系の共通光路に配置されていることを特徴とする請求項の自覚式眼屈折力測定装置。
【請求項5】
さらに、前記被検眼の左右眼の傾きを検出する傾き検出手段と、
前記傾き検出手段による検出結果を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの自覚式眼屈折力測定装置。
【請求項6】
前記ずれ検出手段は、前記被検眼の眼屈折力の測定中における、前記被検眼と、前記矯正光学系によって矯正された前記視標光束との位置ずれを検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれかの自覚式眼屈折力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検眼に視標を呈示する自覚式眼屈折力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自覚式眼屈折力測定装置としては、例えば、屈折度の調節が可能な矯正光学系を被検者の眼前に個別に配置し、矯正光学系を介して検査視標を被検眼の眼底へ投光するものが知られている(特許文献1参照)。検者は、被検者の応答を受けその視標が被検者に適正に見えるまで矯正光学系の調節を行って矯正値を求め、この矯正値に基づいて被検眼の屈折力を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−176893号公報
【特許文献2】特開昭59−85642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、矯正光学系を被検者の眼前に配置せずに、矯正光学系の像を、リレー光学系を介して被検眼の眼前に形成され得るように構成された装置がある(特許文献2参照)。
【0005】
ところで、この種の装置は、矯正光学系の像が形成される位置が限定されているため、被検眼の移動によって、矯正光学系の像の形成位置が、被検眼の眼前からずれてしまう場合がありうる。この場合、適正な測定を行うことができない。結果として、検者は、再測定、被検者の顔の位置の調整等を行う必要があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑み、矯正光学系を被検者の眼前に配置せずに、スムーズに眼屈折力を測定できる自覚式眼屈折力測定装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1) 本開示の第1態様に係る自覚式眼屈折力測定装置は、被検眼の眼底に検査用視標を形成させるための視標光束を前記被検眼に向けて投光する投光光学系と、前記投光光学系の光路中であって屈折力を変化しうるように構成された矯正光学系と、前記矯正光学系を通過した光束をリレーし、かつ前記矯正光学系によって矯正された前記視標光束を前記被検眼に投影するように配置されたリレー光学系と、を備え、前記矯正光学系の屈折力を変化することにより前記被検眼の眼屈折力を測定する自覚式眼屈折力測定装置であって、前記被検眼と、前記矯正光学系によって矯正された前記視標光束との位置ずれを検出するずれ検出手段と、前記ずれ検出手段によって検出された検出結果に基づいて、前記視標光束の投影位置を光学的に補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検者に適正な視標呈示が行える。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の装置の外観図である。図2は本実施形態の内部を示す概略構成図である。本件発明の装置は視標投光系10と、矯正光学系20、リレー光学系30、検出光学系40、ずれ補正手段50から大略構成される。視標投光系10は、被検眼Eに検査視標を投光する投光光学系である。矯正光学系20は、左右の被検眼Eに向かう検査視標の光束の屈折度をそれぞれ変化し得るように構成される。リレー光学系30は矯正光学系20を通過した視標を被検眼Eへリレーする。検出光学系40は、被検眼Eの位置ずれを検出するずれ検出手段である。検出光学系40は眼屈折力測定中の被検眼Eの位置ずれを検出する。ずれ補正手段50は眼位置のずれに基づいて、検査視標の結像位置を補正する補正手段である。なお、以下符号に付されるR、Lはそれぞれ右眼用、左眼用を示すものとする。また、以下の説明では、被検眼Eと装置との位置関係について、被検眼Eと装置が対向した状態における前後方向をZ方向、左右方向をX方向、上下方向をY方向として説明する。
【0011】
<外観>
図1(a)は本実施形態の自覚式眼屈折力測定装置(以下、装置と略す)1を斜め方向から見た概略図である。装置1は、筐体2と、被検者に視標を呈示するための呈示窓3、装置1を操作するためのコントローラ4、被検眼Eと装置1との距離を一定に保つための額当て60などを備える。
【0012】
図1(b)は本実施形態の額当て60をA方向から見たときの図である。額当て60は、当接部61、連結部62、回転ノブ63、送りネジ64で構成される。送りネジ64は連結部62の雌ネジ部65と螺合する。また、送りネジ64は当接部61と係合する。回転ノブ63は送りネジ64の本装置1側の端部に設けられる。連結部62には溝66がある。当接部61には凸部67が備わる。この溝66と凸部67により当接部61が回転するのを防止している。
【0013】
これにより、検者が回転ノブ63を回転させると、当接部61が送りネジ73の回転軸方向に押し出されるか、または引き戻される。従って、回転ノブ63の操作により、当接部61はZ方向に移動可能である。
【0014】
また、本実施形態の視標呈示装置1は報知手段8を備える。報知手段8は、装置1と被検眼EとのZ方向における位置が適正であること報知する。報知手段8としては、光源やスピーカーなどが考えられる。報知手段8の詳細は後述する。
【0015】
筐体2の内部には視標投光系10と、矯正光学系20、リレー光学系30、検出光学系40、ずれ補正手段50等が配置される。
【0016】
<視標投光系>
図2を用いて視標投光系10を説明する。視標投光系10は、例えば、視標投光部11と、ハーフミラー14、凹面鏡15、駆動部16等によって構成される。視標投光部11は、例えば、光源12、液晶ディスプレイ13等で構成され、検査視標を投光する。
【0017】
液晶ディスプレイ13は、例えば、2枚のガラス板の間に特殊な液体を封入し、電圧をかけることによって液晶分子の向きを変え、光の透過率を増減させることで像を表示する構造になっている。光源12からの出射光が液晶ディスプレイ13を透過することで、表示された像を投影することができる。
【0018】
視標投光部11は、球面度数、円柱度数、円柱軸等の検出のため各種の検査視標を投光することができる。これらの検査視標は、例えば、ディスプレイ13の表示が制御部90によって制御されることで選択され、光源12によって投影される。
【0019】
ディスプレイ13の検査視標が投影された光束は、ハーフミラー14を透過し、凹面鏡15によって反射される。そして、反射された光束はハーフミラー14によって反射される。反射された光束は一対の矯正光学系20R,20Lに入射する。
【0020】
駆動部16は視標投光部11を凹面鏡15に近づける、または、遠ざける方向に移動可能にする。駆動部16は、遠用検査時と近用検査時とで視標の呈示距離を光学的に変更する距離変更手段として機能する。
【0021】
<矯正光学系>
一対の矯正光学系20R,20Lは球面度数、円柱度数、円柱軸等を矯正する。矯正光学系20Rは右眼測定用、矯正光学系20Lは左眼測定用であり、これらは光学的に同一の構成になっている。図3は矯正光学系20R,20Lを図2のB方向から見た概略図である。
【0022】
図3に示すように矯正光学系20R,20Lの検査光路をそれぞれ光路L1,光路L2とすると、光路L1と光路L2の間の距離Dは、被検者の瞳孔間距離に設定される。
【0023】
矯正光学系20Rを例として矯正光学系20R,20Lを説明する。矯正光学系20Rに備わるレンズディスク21Rには、多数の光学素子(球面レンズ、円柱レンズ、分散プリズム、等)が同一円周上に配置されている。レンズディスク21Rが駆動部(アクチュエータ等)22Rによって回転制御されることにより、検者が所望する光学素子が右眼用の検査光路L1に配置される。
【0024】
また、光路L1に配置された光学素子(例えば、円柱レンズ、クロスシリンダレンズ、ロータリープリズム等)が駆動部23Rによって回転制御されることにより、検者が所望する回転角度にて光学素子が光路L1に配置される。光路L1に配置される光学素子の切換え等は、コントローラ4などの入力手段(操作手段)の操作によって行われてもよい。
【0025】
レンズディスク21Rは、1つのレンズディスク、又は図3に示すように複数のレンズディスクからなる。複数のレンズディスクが配置された場合、各レンズディスクに対応する駆動部22aR〜22dRがそれぞれ設けられる。例えば、レンズディスク群として、各レンズディスクが開口(又は0Dのレンズ)及び複数の光学素子を備える。各レンズディスクの種類としては、度数の異なる複数の球面レンズを有する球面レンズディスク、度数の異なる複数の円柱レンズを有する円柱レンズディスク、複数種類の補助レンズを有する補助レンズディスクが代表的である。補助レンズディスクには、赤フィルタ/緑フィルタ、プリズム、クロスシリンダレンズ、偏光板、マドックスレンズ、オートクロスシリンダレンズの少なくともいずれかが配置される。また、円柱レンズは、駆動部22aRにより光軸L1を中心に回転可能に配置され、ロータリプリズム及びクロスシリンダレンズは、駆動部23bR,23cRにより各光軸を中心に回転可能に配置されてもよい。
【0026】
上記の構成によって、右眼測定用矯正光学系20Rは球面度数、円柱度、円柱軸、プリズム値などの屈折状態を独立別個に矯正し得るように構成されているが、左眼用測定用光学系20Lも同様に説明できるので、その詳細は省略する。なお、各矯正光学系20R,20Lは被検眼ER,ELの瞳孔間距離PDに合致できるよう両者の距離を調節可能としてもよい。
【0027】
この場合、レンズディスク21R,21Lに移動機構を設ける。移動機構はレンズディスク21R,21Lを移動させ、両者の相対的な距離を調節してもよい。瞳孔間距離PDを瞳孔間距離計等によって測定し、その測定結果をコントローラ4に入力する。すると、制御部90は、距離Dと瞳孔間距離PDが一致するように移動機構を駆動し、レンズディスク21R,21Lを移動する。瞳孔間距離測定手段を装置1に設けてもよい。
【0028】
<リレー光学系>
図2に示すように、リレー光学系30は、例えば、ハーフミラー31、凹面鏡32、追尾用ミラー33、凹面鏡34、追尾用ミラー33を下方(Y方向)に移動可能な移動機構35から構成されてもよい。移動機構35には駆動部36が備わり、追尾用ミラー33を下方(Y方向)に移動させる。
【0029】
移動機構35は、被検眼Eに向けて視標光束を投光するための光路を切り換える光路切換手段である。例えば、移動機構35は、視標光束を水平方向から被検眼Eに向けて投光するための第1光路と、水平方向に対して下方に傾斜した方向から被検眼Eに投光するための第2光路とを切り換える。移動機構35は、例えば、光学部材(追尾用ミラー33等)の配置を変更し、視標光束の光路を切り換える。
【0030】
1対の矯正光学系20R,20Lを通過した各光束は、ハーフミラー31を通過し、凹面鏡32によって反射され集光する。そして、光束はハーフミラー31によって反射され、追尾用ミラー33を通過する。追尾用ミラー33を通過した光束は、凹面鏡34によって反射される。そして、その反射光は、追尾用ミラー33によって反射され、被検眼ER,ELに到達し、両眼底上に視標の像を形成させる。
【0031】
また、矯正光学系20R,20Lを通過した各光束は、リレー光学系30により共通にリレーされ両被検眼ER,ELの眼鏡装用位置(例えば、角膜頂点から12mm程度)に矯正光学系20R,20Lの像が形成されるようになっている。従って、矯正光学系20R,20Lがあたかも眼前に配置されたことと等価になっており、被検者は追尾用ミラー33を介して自然の状態で視標の像を視準することができる。
【0032】
こうして、被検者は自然視の状態で視標を直視しつつ検者に対する応答を行い、検査視標が適正に見えるまで矯正光学系20R,20Lによる矯正を図り、その矯正値に基づいて屈折度数測定を行うようになっている。
【0033】
<検出光学系>
図2に示すように、検出光学系40は自動追尾用光源41、遮蔽板42、平面ミラー43、ハーフミラー44、集光レンズ45、受光素子46等で構成される。検出光学系40は眼屈折力測定中の被検眼Eの位置ずれを検出する。また、検出光学系40は、被検眼Eと矯正光学系20の像とのずれを検出する。光源41は、例えば、被検者の眼鏡装用位置に配置されるよう、テストフレーム7に取り付けられる。光源41の位置ずれに基づいて、被検眼Eの位置ずれを検出する。遮蔽板42には、2つの孔42a,42bが開いている。孔42aと孔42bは間隔を空けて設けられる。また、蓋47は孔42bを塞ぐために設けられる。駆動部48は蓋47を制御し、孔42bを開閉することができてもよい。
【0034】
光源41から出射された光束は追尾用ミラー33を通過し、遮蔽板42に開いた孔42a,42bを通る。孔42aを通過した光束はハーフミラー44を通過する。その後、その光束は集光レンズ45で集光され、受光素子46に受光される。一方、孔42bを通過した光束は平面ミラー43、ハーフミラー44で反射される。そして集光レンズ45によって集光され、受光素子46に受光される。受光素子46としては、CCDやCMOS、PSD(光位置センサ)などの2次元センサを用いてもよい。
【0035】
本実施形態の作動距離の調節方法について説明する。本装置1では、孔42a,42bを通った2つの光束が合致して受光素子46に受光されるように、被検眼Eに対する作動距離が設定される。すなわち、矯正光学系20R,20Lの像が形成される位置と、テストフレーム7のレンズ枠の位置(例えば、角膜頂点から12mmだけ被検者の前方)がZ方向(作動距離方向)において一致する。
【0036】
このような構成は、一般的にレンジファインダーと呼ばれ、カメラのピント合わせ等に利用される構成である。作動距離調整の方法として、例えば、検者は回転ノブ63を操作して、当接部61を限界まで被検者側に押し出す。検者は、被検者にテストフレーム7を装着させる。そして、被検者の額を当接部61に当てるように指示する。
【0037】
このとき、テストフレーム7に取り付けられた光源12からの出射光は孔42a,42bで分離される。そして、分離された各光束は集光レンズ45通過し、受光素子46の表面上の異なる位置で集光する。
【0038】
検者は回転ノブ63を操作し、当接部61を徐々に装置1の方向に引き戻す。それと同時に、被検者の額およびテストフレーム7,光源41も装置1の方向に移動する。光源41と装置1の距離が適正になると、孔42a,42bで分離された光束が、受光素子46の表面上に合致して集光するようになる。
【0039】
このとき、制御部90は受光素子46の信号から、作動距離が適正になったことを検知し、報知手段8に指令信号を送る。指令信号を受け取ると、報知手段8はテストフレーム7と装置1とのZ方向の距離が適正になったことを検者に報知する。
【0040】
報知手段8が作動すると、検者は作動距離が適正であることを認識する。そして、検者は回転ノブ63の操作を終了し、作動距離調整を完了する。
【0041】
なお、2次元センサに限らず、例えば、ラインセンサなどの1次元センサが考えられる。この場合、2つの1次元センサを少なくとも一定の角度(好ましくは、90度)を成すように配置するとよい。また、2つのセンサにそれぞれ光束を集光させるためにセパレータレンズなどを用いて、光束を2つに分離させてもよい。
【0042】
<ずれ補正手段>
ずれ補正手段50は、例えば、追尾用ミラー33、駆動機構51(図2参照)で構成される。追尾用ミラー33は左右一対の矯正光学系20R,20Lの共通光路に配置される。追尾用ミラー33を回転移動させることで、矯正光学系20R,20L(において光路L1,L2に配置された光学素子)の像が形成される位置を補正する。
【0043】
なお、矯正光学系20R,20L(において光路L1,L2に配置された光学素子)の像とは、実際に光が集光して形成される像ではない。つまり、矯正光学系20R,20Lの像の形成される位置とは、リレー光学系30に関して矯正光学系20R,20L(において光路L1,L2に配置された光学素子)と共役な位置のことである。
【0044】
追尾用ミラー33は、光反射部材等の光学部材であってもよい。駆動機構51は追尾用ミラー33の鏡面が向く方向を変更できてもよい。駆動機構51は、例えば、水平方向及び鉛直方向、または、そのどちらか一方の回転軸を持つ回転機構などが考えられる。
【0045】
ずれ補正手段50は、例えば、追尾用ミラー33のような光学部材を駆動させ、矯正光学系20R,20L(において光路L1,L2に配置された光学素子)の像を形成させるためのみかけの光束を偏向させる。これにより、矯正光学系20R,20L(において光路L1,L2に配置された光学素子)の像が形成する位置が被検眼Eの眼前に位置するように光学的に補正される。被検眼Eの眼前とは、例えば、被検眼Eの眼鏡装用位置である。
【0046】
駆動機構51は、駆動部(例えば、ボイルコイルモータ機構等)52を備え、水平方向の回転軸、及び鉛直方向の回転軸に対して追尾用ミラー33を回転させてもよい。つまり、駆動部52は追尾用ミラー33をXY方向に回転させてもよい。なお、ずれ補正用の反射ミラーが複数設けられた構成(例えば、ガルバノモータ機構が利用される)であってもよく、この場合、一方がX方向に回転され、他方がY方向に回転されてもよい。
【0047】
<制御系>
図4は本実施形態の制御系を示すブロック図である。コントローラ4に備わる制御部90は、視標投光系10の光源12、ディスプレイ13、駆動部16、矯正光学系20の駆動部22,23、リレー光学系30の駆動部36、検出光学系40の光源41、受光素子46、駆動部48、ずれ補正手段50の駆動部52、コントローラのメモリ80などと接続されてもよい。制御部90は受光素子46からの受光信号を受け取る。制御部90はこの受光信号に基づいて駆動部52を制御し、追尾用ミラー33の向く方向を制御する。
【0048】
<追尾用ミラー制御方法>
追尾用ミラー33の制御方法を説明する。図5は本実施形態に係る装置において、検査中の被検眼Eの位置ずれを補正する際の一例である。図5(a)は被検眼Eの眼位置がずれる前の状態であり、図5(b)はY方向に眼位置がずれた直後の図であり、図5(c)はずれに基づいて追尾用ミラー33の角度が補正された後の状態である。なお、被検眼Eと光源41は一体的に移動するものとする。また、検査中において孔42bは蓋47によって塞がれているものとする。
【0049】
図5(a)に示すように、光源41が基準位置Pにあり、追尾用ミラー33は基準姿勢(例えば、X方向に0°、Y方向に45°傾いた位置)にある。光源41が位置Pにある状態では、矯正光学系20の像は、被検眼Eの眼前に形成される。これにより、被検眼Eに入射した視標光束は被検眼Eに対して適正な位置で結像するものとする。位置Pから出射された光源41の光束は追尾用ミラー33、孔42a、ハーフミラー44、集光レンズ45を通過し、受光素子46の表面上の基準点Oに集光する。受光素子46は受光信号を制御部90に送信する。そして、制御部90は受光信号に基づいて基準点Oの位置情報を得る。メモリ80には基準点Oの位置情報が記憶されている。
【0050】
ここから、図5(b)に示すように、光源41はY方向にΔYだけずれた位置Qに移動したとする。追尾用ミラー33の角度が補正される前の状態では、矯正光学系20の像は被検眼の眼前から外れた位置に形成される。これにより、被検眼Eに入射した視標光束は、被検眼Eに対して不適正な位置で結像する。このとき、位置Qから出射された光源41の光束は追尾用ミラー33、孔42a、ハーフミラー44、集光レンズ45を通過し、受光素子46の表面上の点V1に集光する。点V1は基準点OからY方向にΔY´だけずれた位置である。受光素子46はこのときの受光信号を制御部90に送信する。制御部90は受光信号から点V1の基準点Oからのずれ量とずれた方向を検知する。
【0051】
制御部90は、受光素子46からの受光信号に基づいて、駆動部52を制御する。制御方法の一例として、制御部90は、ずれ量ΔY´とずれた方向に基づき、メモリ80に予め記憶された駆動量だけ追尾用ミラー33を駆動させ、方向を変化させてもよい。例えば、メモリ80には点V1が基準点OからΔY´1だけずれている場合は角度θ1°、ΔY´2だけずれている場合は角度θ2°、ΔY´3だけずれている場合は角度θ3°、・・・、というように、ずれ量ΔY´に対応する角度θが予め記憶されている。ずれ量ΔYに対応する角度θ°(回転量、回転方向)は計算によって求めてもよいし、実験によって求めてもよい。制御部90は、受光素子46からの受光信号からずれ量ΔY´を求め、メモリ80に記憶されたΔY´に対応する角度θ°だけ追尾用ミラー33を回転させる。これにより、矯正光学系20の像が被検眼Eの眼前に形成されるように補正される。従って、被検眼Eに入射した視標光束は適正位置で結像するようになる。このように、被検眼Eの位置がずれた時、追尾用ミラー33を回転させて矯正光学系20の像が形成する位置を補正することによって、被検眼Eに対して適正な視標呈示を行える。
【0052】
なお、追尾用ミラー33の駆動量及び駆動方向は、点V1の基準点Oからのずれに基づいて決定するものとしたが、点V1の位置情報(番地)に基づいて決定してもよい。このような方法によっても、被検眼Eの位置がずれたとき、被検眼Eに対して適正な視標呈示を行える。
【0053】
なお、以上の説明では、Y方向の位置ずれが生じた場合の追尾用ミラー33の制御方法を説明したが、X方向の位置ずれが生じた場合も同様の制御方法であるため、説明を省略する。
【0054】
<遠用検査手順・動作>
本実施形態の装置1を用いて被検眼Eの遠用検査を行う手順を装置1の動作とともに説明する。まず、検者はコントローラ4を操作し、測定モードを遠用測定モードに設定する。そして、所望の遠用検査視標を呈示窓3に呈示する。次に、検者は被検者にテストフレーム7を装着させる。また、検者は、額当て60に被検者の額を当てさせ、呈示窓3を観察するように指示する。検者は報知手段8が作動する(例えば、ランプが点灯する)まで、ノブ63の操作によって額当て60の作動距離方向の位置を調整する。額当て60の位置調整が完了すると、検者はコントローラ4の操作によって孔42bを蓋47で塞ぐ。制御部90は駆動部48を制御して蓋47で孔42bを塞ぐ。これにより、受光素子46に受光される光束は孔42aを通過した光束のみになる。孔42aを通過した光束は、XY方向の眼位置の検出に利用される。
【0055】
次にXY方向の眼位置の検出を行う。孔42aを通過した光源41からの光束は、ハーフミラー44、集光レンズ45を通過し、例えば、受光素子46の表面上の点Gに集光する(図6参照)。受光素子46はこのときの受光信号を制御部90に送る。制御部90は受光信号を受け取り、点Gの基準点Oからのずれ量ΔX´g,ΔY´gとずれた方向を算出する。
【0056】
XY方向の眼位置の検出が完了すると、制御部90は、ずれ量ΔX´g,ΔY´gに基づき、メモリ80から追尾用ミラー33をX方向に回転させる角度θX°と回転方向、Y方向に回転させる角度θY°と回転方向をそれぞれ読み出す。制御部90は駆動部52を制御し、追尾用ミラー33の向く方向を変化させる。追尾用ミラー33の方向が変化することによって、矯正光学系20の像が被検眼Eの眼前に形成されるように補正される。従って、被検眼Eに入射した視標光束は被検眼Eに対して適正位置で結像するようになる。
【0057】
上記の動作によって、被検眼Eに対して適正に検査視標を呈示することができると、検者は遠用検査を開始する。検者は、被検者に自然視の状態で視標を直視させ、検査視標の見え具合について尋ねる。検者は、検査視標が適正に見えるまで矯正光学系20R,20Lによる矯正を図り、その矯正値に基づいて屈折度数測定を行う。
【0058】
ところで、検査中、被検者の姿勢が変化し、被検眼Eの位置がずれることがある。この場合、矯正光学系20の像の形成位置が被検眼Eの眼前から外れてしまうため、被検者には適正な検査視標が観察できなくなる。被検眼Eの位置がずれると、光源41の位置もずれる。光源41の位置がずれると、光源41からの光束が受光素子46の表面上に集光する位置がずれる。
【0059】
例えば、ずれた位置を点Kとする。受光素子46は、このときの受光信号を制御部90に送る。制御部90は受光信号を受け取り、点Kの基準点Oからのずれ量ΔX´k,ΔY´kとずれた方向を算出する。制御部90は、ずれ量ΔX´k,ΔY´kとずれた方向に基づき、メモリ80から追尾用ミラー33をX方向に回転させる角度θX°と回転方向、Y方向に回転させる角度θY°と回転方向をそれぞれ読み出す。制御部90は駆動部52を制御し、追尾用ミラー33の向く方向を変化させる。追尾用ミラー33の方向が変化することによって、矯正光学系20の像が被検眼Eの眼前に形成されるように補正される。つまり、眼屈折力測定中の被検眼Eの位置ずれを検出し、被検眼Eの眼前に矯正光学系20の像が復帰されるように像の形成位置を補正する。従って、被検眼Eに入射した視標光束は被検眼Eに対して適正位置で結像するようになる。
【0060】
上記のような構成を備えることで、検査中に被検眼Eの位置がずれ、矯正光学系20の像の形成位置が被検眼Eの眼前から外れてしまっても、矯正光学系20の像を再び眼前に形成させることができる。これにより、被検眼Eに対して適正な視標呈示を行える。従って、被検者は被検眼Eの位置がずれることによって不適正な視標を観察することがなくなる。また、被検者は検査中、姿勢を一定に保つ必要がなく、楽な姿勢で検査を行うことができる。検者は、被検眼Eの位置ずれを確認してから装置や被検者の位置を調整する必要がなくなる。
【0061】
<近用検査手順・動作>
近用検査を行う手順を装置1の動作とともに説明する。図7は近用検査時における光学系の配置を示す概略図である。検者はコントローラ4を操作し、測定モードを近用測定モードに設定する。近用測定モードに設定されると、制御部90は駆動部16を制御し、視標投光部11(例えば、光源12とディスプレイ13)を凹面鏡15に近づける。光路長を変化させることで、検査視標を近用距離(例えば、被検眼Eから40mm前方)にて呈示することができる。なお、近用距離を短く設定する場合、ハーフミラー14と凹面鏡15を凸レンズで置き換えた構成にすることが考えられる。この構成において、検査視標を遠用距離から近用距離に切り替えて呈示する場合、視標投光部11を凸レンズに近づけるとよい。この構成については、特開昭59‐85642号公報を参照されたい。
【0062】
また、視標投光部11を移動させると、矯正光学系20R,20Lの度数が変わってしまう。そのため、視標投光部11を移動させた距離に基づいて、矯正光学系20R,20Lの度数を補正するとよい。例えば、測定モードを近用測定モードに設定すると、制御部90は、屈折度数が+10ディオプターである球面レンズが光路L1,L2に配置された状態を0ディオプターの状態(非矯正状態)として検査してもよい。これにより、矯正光学系20を遠用検査と近用検査とで取り替えることなく、同一の矯正光学系20を用いてどちらの検査も行うことができる。
【0063】
また、近用測定モードに設定されると、制御部90は駆動部36を制御し、追尾用ミラー33の位置を被検眼Eに対して下方向(Y方向)に移動させる。追尾用ミラー33を下方向に移動させると、遠用検査時に比べ、リレー光学系30は視標光束を下方向から被検眼Eに投光することになる。被検者は検査視標を観察するために、視線を水平方向から下方に傾斜させる。
【0064】
その後の検査手順及び装置の動作は遠用検査時と同様であるため、説明を省略する。ただし、追尾用ミラー33を下方(Y方向)へ移動させた場合、光路の長さが変化することで、被検眼Eに到達する光束の屈折度が変化することが考えられる。この場合、近用検査時に改めて額当て60の作動距離調整を行うことが好ましい。
【0065】
一般的に、人が近くのものを自然視するとき、視線は水平方向より下方に傾斜する。上記のように、追尾用ミラー33を下方に移動させ、被検者の視線を水平方向から下方に傾斜させることで、より自然視に近い状態で被検者の近用検査を行うことができる。
【0066】
また、近用検査においても前述のように、検出光学系40とずれ補正手段50によって、矯正光学系20の像を被検眼Eの眼前に形成するように補正することができる。
【0067】
ところで、近用検査の際、例えば、被検者が首を前方に傾けて視線方向を下方に傾斜させる場合が考えられる。このような場合、一定の方向(例えば、被検眼Eに対して水平方向)から被検眼Eを検出することが困難な場合がある。例えば、被検眼Eが瞼に隠れてしまうような場合である。
【0068】
本実施形態の検出光学系40は、被検眼Eの位置ずれを検出するために、被検者が装着するテストフレーム7の光源41を検出している。テストフレーム7の位置であれば、被検者の首が傾く等の状況変化が生じてもその位置を検出することができる。このように、被検者が装用するテストフレーム7の位置を検出することで、被検眼Eの検出が困難な場合にも、被検眼Eの位置ずれを検出することができる。
【0069】
また、本実施形態の検出光学系40はテストフレーム7の位置を検出するものとしたが、これに限らない。例えば、鼻や口などの特徴部位を検出するものとしてもよい。その検出結果に基づいて、被検眼E等の位置ずれを検出できればよい。
【0070】
このように、検出光学系40は、被検眼Eの眼位置と、眼位置等のずれを求めることができればよい。もちろん、被検眼E等の位置ずれを検出する手法として、被検眼Eの位置を直接的に検出することによって、位置ずれを検出するようにしてもよい。
【0071】
なお、視標投光系10は本実施形態の構成に限るものではない。例えば、図8(a)に示すように、視標投光系10は、光源112、ディスプレイ113、反射部材114、凹面鏡115を備えてもよい。光源112からの光束は、ディスプレイ113の表示を投影し、反射部材114によって反射され、凹面鏡115に対して斜めに入射する。そして、光束は凹面鏡115によって反射され、凹面鏡115の光軸上を進み、矯正光学系20R,20Lを通過する。それ以降の光路は本実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
上記のように、凹面鏡115に対して凹面鏡115の光軸外から視標光束を入射させる構成を備えることで、視標投光系10のハーフミラー14を省略することができる。ハーフミラーは通過する、または反射するたびに光量が低下するため、これを省略することによって視標光束の光量を維持できる。
【0073】
また、図8(b)に示すように、視標投光系10は液晶ディスプレイ13の代わりに、DMD(Digital Micromirror Device)213を用いてもよい。一般的にDMD213は反射率が高く、明るい。そのため、偏光を用いる液晶ディスプレイ13を用いた場合と比べ、視標光束の光量を維持できる。
【0074】
なお、検出光学系40は本実施形態の構成に限らない。例えば、図9(a)に示すように、検出光学系40は、テストフレーム7に取り付けられた2つの光源141a,光源141b、集光レンズ142、受光素子143を備えてもよい。光源141aと光源141bの光束は受光素子143の表面上に集光する位置が異なる。例えば、点I,点Jに集光したとする。点I,点Jの2点間の距離Wは、Z方向(作動距離方向)における光源141a,141bと装置1との距離によって変化する。
【0075】
したがって、この2点間の距離Wが予め設定された距離になるように、額当て60及び被検眼Eの作動距離を調整することができる。このような構成の場合、被検眼Eが装置1に近い場合には距離Wが大きくなり、被検眼Eが装置1から遠い場合には距離Wが小さくなる。したがって、制御部90は距離Wの長さによって被検眼Eと装置1との距離を算出してもよい。算出した距離に基づいて、制御部90が額当て60の位置を自動で調節するための駆動部を設けてもよい。また、被検眼Eと装置1との距離が近い、または遠いことを検者に報知するための報知手段を設けてもよい。
【0076】
XY方向における被検眼Eの位置検出は、本実施形態と同様に考えることができる。例えば、ある基準点からの点Iのずれ量とずれた方向に基づいて被検眼EのXY方向の位置を検出することができる。
【0077】
このように、検出光学系40は、被検眼Eの眼位置と、眼位置のずれを求めることができればよい。
【0078】
また、点I,点Jの位置からテストフレーム7の傾きを検出してもよい。例えば、図9(b)に示すように、2点の傾きαを検出し、その検出結果に基づいて、テストフレーム7の傾きを検出してもよい。テストフレーム7の傾きを検出することで、左右の被検眼EL,ERの傾きを検出する。このように、検出光学系40は、被検眼ER,ELの傾きを検出する傾き検出手段として機能する。
【0079】
左右の被検眼EL,ERが傾くと、矯正光学系20の像が被検眼Eの眼前から外れた位置で形成される。したがって、制御部90は、検出光学系40によって左右の被検眼EL,ERの傾きが検出されると、報知手段8を作動させる。これにより、検査視標が適正に呈示されていないことを検者に報知するようにしてもよい。検者は、報知手段8が作動したことを確認し、被検者に首を横に傾けないように指示する。
【0080】
このように、左右の被検眼EL.ERの傾きを検出する検出手段(例えば、検出光学系40)と、その結果を報知するための報知手段(例えば、報知手段8)を備えてもよい。
【0081】
なお、ずれ補正手段50は本実施形態の構成に限らない。例えば、図10に示すように、ずれ補正手段50は上記の構成と、さらに凹面鏡34を移動させる移動機構151を備える構成でもよい。移動機構151は駆動部152等を備える。
【0082】
移動機構151によって凹面鏡34がXZ方向に移動されると、矯正光学系20の像が形成される位置が変化する。これにより、制御部90は検出光学系40によって検出した被検眼Eのずれに基づいて移動機構151を制御し、矯正光学系20の像が被検眼Eの眼前に形成されるように補正する。このように、被検眼Eに対して適正な視標呈示を行うようにしてもよい。
【0083】
また、図11に例示するように、ずれ補正手段50は、前述の構成と、さらにロータリプリズム233a,233b、移動機構251を備えてもよい。移動機構251は駆動部252a,252bを備える。矯正光学系20R,20Lを通過した光源12からの視標光束は、リレー光学系30を介し、ロータリプリズム233a,233bを通過し、被検眼Eに入射する。移動機構251によってロータリプリズム233a,233bをそれぞれ回転させると、矯正光学系20の像が形成される位置が変化する。これにより、矯正光学系20の像が被検眼Eの眼前に形成されるように補正してもよい。図11では、ロータリプリズム233bを90°回転させる前(図11(a)参照)と、回転させた後(図11(b)参照)を例示している。
【0084】
このように、ずれ補正手段50は光学部材によって視標光束の光路を変化させてもよい。ただし、ロータリプリズム233a,233b等を用いる場合、光源41からの光束が受光素子46に到達するまでに、ロータリプリズム233a,233b等の影響を受ける場合がある。したがって、検出光学系40は、ロータリプリズム233a,233b等の影響が及ばない位置に配置されることが好ましい。例えば、遮蔽板42、平面ミラー43、ハーフミラー44、集光レンズ45、受光素子46等の受光系はハーフミラー33の上方であって、凹面鏡34より被検者側に配置されてもよいし、筐体2の外部に配置されてもよい。
【0085】
また、変容例として、検査中、被検眼EのZ方向のずれに基づいて、視標光束の像が形成される位置を補正することが考えられる。この場合、矯正光学系20R,20Lは、それぞれ周知のアルバレッツレンズで構成されるとよい。
【0086】
アルバレッツレンズは、一方の面が特殊な非球面で、他方の面が平面で形成された光学素子(例えば、位相差板等)2枚によって構成される。そして、これら2枚の光学素子の非球面側を対向させ、互いに180°回転させた位置を保ち、両者を互いに反対方向に同一の変位量(移動量)だけ変位(移動)させることによって、屈折力を連続的に変化させることができる(米国特許3,305,294号)。
【0087】
検出光学系40は、Z方向の被検眼Eのずれを検出し、その検出結果に基づいて、視標投光系10を凹面鏡14に対して移動させる。同時に、視標光束の度数変化を補正するように、アルバレッツレンズの2枚の光学素子を変位させるとよい。
【0088】
このように、検査中、被検眼EのZ方向のずれに基づいて、矯正光学系20の像が形成される位置を補正することができる。
【0089】
なお、本装置1はコントローラ4に制御部90を備えるものとしたが、これに限らない。制御部は筐体2の内部に設けられてもよい。あるいは、コントローラ4と筐体2の内部にそれぞれ設けられてもよい。制御部と、それに接続される各構成要素は有線または無線によって接続されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】本実施形態に係る自覚式眼屈折力測定装置の外観構成図である。
図2】本実施形態に係る自覚式眼屈折力測定装置の光学系を示す概略図である。
図3】本実施形態に係る矯正光学系の概略図である。
図4】本実施形態に係る自覚式眼屈折力測定装置の制御系を示すブロック図である。
図5】本実施形態に係る自覚式眼屈折力測定装置のずれ補正手段を説明する図である。
図6】本実施形態に係る自覚式眼屈折力測定装置の受光素子状の集光位置の変化を示す図である。
図7】本実施形態の近用測定時の光学系の配置を示す概略図である。
図8】本実施形態の変容例を説明するための図である。
図9】検出光学系の変容例を示す図である。
図10】ずれ補正手段の変容例を示す図である。
図11】ずれ補正手段の変容例を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 自覚式眼屈折力測定装置
2 筐体
3 呈示窓
4 コントローラ
7 テストフレーム
10 視標投光系
20 矯正光学系
30 リレー光学系
40 検出光学系
50 ずれ補正手段
60 額当て
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11