(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
20メッシュ(目開き0.833mm)のふるいで振盪装置を用いて2分間以上振盪させた際の、ふるい上に残るふるい残量が95重量%以上である請求項1または2記載の環式ポリアリーレンスルフィドペレット。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
(1)環式ポリアリーレンスルフィド組成物
本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィド組成物は、下記式(A)で表される環式ポリアリーレンスルフィドを50重量%以上含む環式ポリアリーレンスルフィド混合物である。
【0018】
ここで、本発明の実施形態における環式ポリアリーレンスルフィドをより詳細に説明すると、式−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする環式化合物であり、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(A)のごとき化合物である。
【化2】
(Arはアリーレン基を表す)
【0019】
ここでArとしては式(B)〜式(M)などで表わされる単位を例示できるが、中でも式(B)〜式(D)が好ましく、式(B)及び式(C)がより好ましく、式(B)が特に好ましい。
【化3】
(ただし、式中のR1,R2は水素、炭素数1から6のアルキル基、炭素数1から6のアルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
【0020】
なお、環式ポリアリーレンスルフィドは、前記式(B)〜式(M)などのアリーレン基を有する繰り返し単位のランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよく、それらの混合物であってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい環式ポリアリーレンスルフィドとしては、主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
【化4】
を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環式ポリフェニレンスルフィド(以下、環式PPSと略すこともある)が挙げられる。
【0021】
環式ポリアリーレンスルフィドの前記(A)式中の繰り返し数mは4〜50であって、4〜25が好ましく、4〜20が更により好ましい。mがこの様な範囲の環式PASは溶融した際に流動化する温度が低くなる傾向にあるため、環式PASを成形加工する際や、他の樹脂と溶融混練する際に加工温度を低くできるとの観点で有利となる。また、mが4未満の環式PASの製造は現実的でなく、mが50を超えると環式ポリアリーレンスルフィドの性質が、後述する線状ポリアリーレンスルフィドの性質に類似してくる傾向にあり、mが大きい環式ポリアリーレンスルフィドはmが小さなものに比べて結晶化し易くなる。繰り返し数mの異なる環式PASの含有率は、高速液体クロマトグラフィーにより分析することができる。
【0022】
本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィド組成物は、300℃の温度条件で、剪断速度2sec
-1において測定した溶融粘度が0.1Pa・s以下が好ましく、より好ましくは0.05Pa・s以下、さらに好ましくは0.03Pa・s以下である。溶融粘度は、公知の溶融粘度の測定方法で測定することが可能であり、例えば以下の方法で測定することができるがこれに限定されるものではない。測定サンプルの結晶化状態および融点の影響を取り除くため、まず測定サンプルをホットプレート上で30秒加熱・溶融させた後、ドライアイスで急冷させる。このような測定サンプルを、測定温度である300℃近傍で、測定装置であるレオロジー社製MR−300ソリキッドメータにセットして測定温度まで再昇温し、約2分間静置した後に、剪断速度2sec
-1の溶融粘度(Pa・s)を測定する。測定における剪断速度は、まず0.3sec
-1から200sec
-1まで昇速した後に200sec
-1から0.3sec
-1まで降速することで測定することができる。なお、溶融粘度のデータは、上記パターンで試料に剪断を一旦付与した後で、引き続き同様の剪断を付与して測定した際のものを採用する。
【0023】
また、本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィド組成物は、前記式(A)で表される環式ポリアリーレンスルフィドを50重量%以上含む環式ポリアリーレンスルフィド組成物であって、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含むものである。環式ポリアリーレンスルフィド組成物に含まれる環式ポリアリーレンスルフィドの上限値に特に制限は無いが、98重量%以下が好ましい範囲として例示できる。ここで環式ポリアリーレンスルフィド組成物に含まれる環式ポリアリーレンスルフィド以外の化合物は、後述する線状ポリアリーレンスルフィドであることが特に好ましい。
【0024】
なお、環式ポリアリーレンスルフィドを50重量%以上含む本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィド組成物は、例えば国際公開公報WO2007/034800などに開示されている以下の方法により得ることも可能である。環式ポリアリーレンスルフィドの含有量は高速液体クロマトグラフィーで測定可能である。
【0025】
(a)少なくともポリハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤および有機極性溶媒を含有する混合物を加熱してポリアリーレンスルフィド樹脂を重合する。これにより、80メッシュふるい(目開き0.125mm)で分離される顆粒状PAS樹脂、重合で生成したPAS成分であって前記顆粒状PAS樹脂以外のPAS成分(ポリアリーレンスルフィドオリゴマーと称する)、有機極性溶媒、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩を含む混合物を調製する。その後、ここに含まれるポリアリーレンスルフィドオリゴマーを分離回収し、残余の混合物を精製することで環式PAS組成物を得る方法。
【0026】
(b)少なくともポリハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤および有機極性溶媒を含有する混合物を加熱してポリアリーレンスルフィド樹脂を重合する。そして、重合終了後に公知の方法によって有機極性溶媒の除去を行い、ポリアリーレンスルフィド樹脂、水、およびハロゲン化アルカリ金属塩を含む混合物を調製し、これを公知の方法で精製することにより、環式PASを含むPAS樹脂を得る。その後、このPAS樹脂を用いて、実質的にPAS樹脂は溶解しないが環式PASは溶解する溶剤を用いた抽出を行ない、環式PAS組成物を回収する方法。
【0027】
(c)少なくともポリハロゲン化芳香族化合物、スルフィド化剤および有機極性溶媒を含有する混合物を加熱してポリアリーレンスルフィド樹脂を重合する。そして、重合終了後に公知の方法によってハロゲン化アルカリ金属塩、および、ポリアリーレンスルフィド樹脂の除去を行い、少なくとも(ア)環式ポリアリーレンスルフィド及び(イ)有機溶媒を含む混合物であって環式ポリアリーレンスルフィド(ア)の50重量%以上が溶解している混合物に、(イ)とは異なる溶媒(ウ)を加えることで環式ポリアリーレンスルフィド(ア)を固形分として回収率50重量%以上で回収する方法。
【0028】
(2)線状ポリアリーレンスルフィド
既述した環式PAS組成物組成物が含有する線状ポリアリーレンスルフィドは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位としており、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する線状のホモポリマーまたは線状のコポリマーである。Arとしては前記式(B)〜式(M)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(B)〜式(D)が好ましく、式(B)及び式(C)がより好ましく、式(B)が特に好ましい。
【0029】
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(N)〜式(Q)などで表される単位を主要構成単位とする好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する線状のホモポリマーまたは線状のコポリマーとすることができる。Arとしては前記式(B)〜式(M)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(B)〜式(D)が好ましく、式(B)及び式(C)がより好ましく、式(B)が特に好ましい。
【0030】
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(N)〜式(Q)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
【化5】
また、本発明の実施形態における線状PASは、上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
【0031】
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい線状PASとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
【化6】
を80モル%以上、特に90モル%以上含有する線状ポリフェニレンスルフィド(以下、線状PPSと略すこともある)の他、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンが挙げられる。
【0032】
本発明の実施形態における各種線状PASの溶融粘度に特に制限は無いが、一般的な線状PASの溶融粘度としては0.01〜1,000Pa・s(300℃、剪断速度1,000/秒)の範囲が例示でき、0.01〜500Pa・sの範囲が入手の容易性の観点で好ましい範囲といえる。また、線状PASの分子量にも特に制限は無く、一般的なPASの重量平均分子量としては200〜1,000,000が例示できる。なお、本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィド組成物における環式ポリアリーレンスルフィド以外の化合物は線状ポリアリーレンスルフィドであることが特に好ましいことは前述したとおりであるが、環式ポリアリーレンスルフィドに含まれる線状PASの分子量は、200以上であることが好ましく、300以上であることが特に好ましい。また、上記線状PASの分子量は、5,000以下であることが好ましく、2,500以下であることが特に好ましい。この好ましい分子量の線状PASは、通常の線状PASよりも分子量が小さいため、融点が低く溶融しやすい傾向にある。
【0033】
一般的に環式化合物の製造は、目的物である環式化合物の生成と線状化合物の生成の競争反応であるため、環式PASの製造を目的とする方法においては、目的物の環式PAS以外に線状PASが少なからず副生物として生成する。従って環式PASを得ようとする際には少なからず副生物である線状PASが混合する傾向にある。
【0034】
(3)環式ポリアリーレンスルフィドペレットの製造方法
本発明の実施形態の環式PAS組成物の形態はペレットである。ここでいうペレットとは、環式PAS組成物を粒状にしたものである。ペレットの形状としては特に制限はなく、例えば円柱状、直方状、球状などが挙げられる。具体例としてはペレット100gを20メッシュ(目開き0.833mm)のふるい、好ましくは16メッシュ(目開き0.991mm)のふるいで振盪装置を用い、2分間以上10分間以下、好ましくは2分間振盪させた際のふるい上に残るふるい残量が95重量%以上、好ましくは97重量%以上のものが挙げられる。なお、本実施形態では、上記したふるい残量は、通常は99.9重量%以下になる。
【0035】
また、ペレットの最長径は特に限定されないが、ペレット最長部の平均長が1.0mm以上のものが好ましく、1.5mm以上のものがより好ましく、2.0mm以上のものが特に好ましい。また、ペレット最長部の平均長が50.0mm以下のものが好ましく、10.0mm以下のものがより好ましく、7.0mm以下のものが特に好ましい。なお、測定方法は任意にペレットを20個取り出し、ノギスあるいはマイクロメーターを用いてペレットの最長部を測定し、平均値を算出する。
【0036】
本発明の実施形態で得られる環式PASペレットを構成する環式PAS組成物は、非酸化性雰囲気下で50℃から330℃以上の任意の温度まで昇温速度20℃/分で熱重量分析を行った際の重量減少率ΔWrが、1.0%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがさらに好ましい。なお、上記加熱時の重量減少率ΔWrの下限値に特に制限はないが、重量減少率ΔWrは、通常は0.001%以上となる。上記した加熱時の重量減少率ΔWrとは、具体的には、200℃到達時点の試料重量(W1)を基準として、330℃到達時の試料重量(W2)がどのくらい減少しているかを表す値であり、下記(2)式で表される。
ΔWr=(W1−W2)/W1×100(%)・・・(2)
【0037】
環式PASペレットを構成する環式PAS組成物の重量減少率ΔWrを、上記した好ましい数値範囲にすることで、環式PAS組成物を用いて成形加工する際の発生ガス量を低減することができ、押出成形時の口金やダイス、また射出成型時の金型への付着物が低減され生産性が向上する傾向があるため好ましい。
【0038】
本発明の実施形態の環式PASペレットを得る方法としては、ノズルオリフィス板または口金などの穿孔されたディスクの形態の開口部または流路または細管ノズルまたは落下管から、環式PAS組成物の溶融物(以下、単に環式PAS溶融物とも呼ぶ)を液滴状に滴下して、水などの液体、あるいは、空気や窒素などの気体で冷却する方法を採用することができる。また、環式PAS溶融物をダイスノズルよりクーリングベルト上に押出し、ストランド状にしたものをストランドカッターによりペレット化する方法を採用することができる。また、環式PAS溶融物をダイスノズルより冷却水中に押出し、同時にダイスノズル出口でカッティングしてペレット化する方法(アンダーウォーターカット法)を採用することができる。また、ノズルを有するロ−タの回転によってベルトコンベア上に環式PAS溶融物を吐出して造粒する方法、あるいは、環式PAS溶融物をダイスノズルから押出した後、傾斜面上を流下する冷却水中に引取り、その下流域において樹脂を切断しペレット化する方法などを採用することができる。なお、環式PASは可塑化しても充分な粘度が得られず脆いため、水などの冷却用の液体を貯留する冷却槽中へと環式PAS溶融物を押出して、環式PASをストランド状に成形することは困難である。そのため、樹脂のペレット化方法として通常知られる方法、具体的には、溶融した樹脂を冷却槽へとノズルから押出してストランド状にしたものをストランドカッターでカッティングする方法により、環式PASをペレット化することは困難である。
【0039】
一例として、ノズルオリフィス板または口金から環式PAS溶融物を液滴として滴下して水などの液体、あるいは空気、窒素などの気体で冷却する方法を示すがこの限りではない。溶融した環式PASを180〜400℃、好ましくは190〜350℃、更に好ましくは200〜300℃に加熱した口金等の穿孔されたディスクの形態の開口部または流路または細管ノズルまたは落下管から落下する。孔の直径は、0.2mm以上が好ましく、0.25mm以上がより好ましく、0.3mm以上が更に好ましい。また、孔の直径は、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下が更に好ましい。落下した環式PAS組成物は液滴の形状のまま冷却され、ペレットを得ることができる。冷却の方法は、液体を用いる方法、気体を用いる方法が挙げられる。液体を用いる方法としては、環式PAS溶融物の液滴を液体に落下させる方法を挙げることができる。液体としては、取り扱い性および安全性の観点から水が好ましいが、この限りではない。冷却用の液体温度は、10℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましい。また、冷却用の液体温度は、70℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましい。上限温度より高い温度では環式PASペレット同士が合着してしまう。また、気体を用いて冷却する方法としては、環式PAS溶融物の液滴が落下する際に、落下方向に対して向流または並流で気体を噴霧することで液滴を冷却して、ペレットを得る方法を挙げることができる。気体の種類は特に制限されないが、特に、経済性及び取扱いの容易さの面からは空気もしくは窒素が好ましい。
【0040】
特に溶融した環式PAS組成物をダイスノズルよりクーリングベルト上の押出し、ストランド状にしたものをストランドカッターによりペレット化する方法は、ペレットの形状にムラがなく大きさが均一で、さらにペレットに液体が付着しないため乾燥する必要もなく、経済性及び取扱いの容易さの面から好ましい。クーリングベルトの温度は、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましい。また、クーリングベルトの温度は、80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
【0041】
環式PAS組成物の溶融の方法は、特に制限されず、例えば、ベント式溶融押出機を使用する方法、あるいは攪拌槽内で溶融攪拌する方法などが挙げられる。溶融温度としては、180℃以上が例示でき、190℃以上がより好ましく、200℃以上が更に好ましい。また、溶融温度としては、400℃以下が例示でき、350℃以下がより好ましく、300℃以下が更に好ましい。180℃以上であると環式PAS組成物の溶融解温度以上であるため、環式PAS組成物が溶融に長時間を要しない。また、400℃以下であると、環式PAS組成物の高重合度体への転化や副反応の進行を抑制することができ、環式PAS組成物の流動性が著しく低下しない。
【0042】
また、環式PASペレット製造における環式PASの溶融時の雰囲気は、非酸化性雰囲気下、例えば窒素、ヘリウム、及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下が望ましい。また、減圧条件下で行うことが好ましい。特に、経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気下もしくは減圧条件下が好ましい。
【0043】
また、溶融時間は、使用する原料の環式PAS組成物の組成、融解ピーク温度、融解熱量およびこれら原料の量あるいは溶融温度にも依存するので一概に規定できないが、0.05時間以上が例示でき、0.1時間以上が好ましく、0.25時間以上がより好ましく、0.5時間以上が更に好ましい。また、100時間以下が例示でき、20時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましく、6時間以下がさらに好ましい。この好ましい時間とすることで、原料の環式PASを均一に溶解することができ、また、溶融時の環式PASの変質も起こりにくくできる傾向にある。
【0044】
なお、環式PAS組成物をペレット化しても、環式PASの含有率が実質的に変化することはない。よって、既述した本発明の実施形態の環式PAS組成物をペレット化した場合に、環式PASペレットを構成する環式PAS組成物は、前記式(A)で表される環式ポリアリーレンスルフィドを50重量%以上含む環式PAS組成物であって、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含むものである。本発明の実施形態の環式PASペレットを構成する環式PAS組成物に含まれる環式ポリアリーレンスルフィドの上限値に特に制限は無いが、98重量%以下が好ましい範囲として例示できる。ここで本発明の実施形態の環式PASペレットを構成する環式PAS組成物に含まれる環式ポリアリーレンスルフィド以外の化合物は、既述した線状ポリアリーレンスルフィドであることが特に好ましい。
【0045】
また、環式PAS組成物をペレット化しても、環式PASペレットを構成する環式PAS組成物の溶融粘度が実質的に変化することはない。よって、既述した本発明の実施形態の環式PAS組成物をペレット化した場合に、環式PASペレットを構成する環式PAS組成物は、300℃の温度条件で、剪断速度2sec
-1において測定した溶融粘度が0.1Pa・s以下が好ましく、より好ましくは0.05Pa・s以下、さらに好ましくは0.03Pa・s以下である。なお、溶融粘度の測定方法は、本発明の実施形態の環式PAS組成物の溶融粘度の測定方法として説明したとおりである。
【0046】
かくして得られる環式PASペレットは搬送性に優れるだけでなく、ガス発生量が少なく、取り扱いや成形操作における噛み込み性に優れるため、成形加工に際して極めて有用である。
【0047】
(4)本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィドペレットの用途
(a)本発明の実施形態の環式PASペレットを配合した樹脂組成物
本発明の実施形態の環式PASペレットは、各種樹脂に配合して樹脂組成物を得るために用いることも容易である。各成分の配合方法としては、例えば、スクリューフィーダーにより定量的に押出機ホッパーに供給して混合する方法、およびタンブラーやヘンシェルミキサー等を使用する方法などが挙げられる。特にスクリューフィーダーを用いる方法は、定量性を保ちながら樹脂組成物を排出することができ、また、各成分の供給量が回転数とリニアーに比例し、比較的精度もよく、各成分の供給量の調整も簡単に出来るため好ましい。このような方法は、樹脂組成物の粉粒体をホッパーから排出したり輸送したりするのに多く用いられている。環式PASはペレットにすることで搬送性が改善され、定量性を保つことができる。
【0048】
このような環式PASペレットを配合した樹脂組成物は、溶融加工時のすぐれた流動性を発現する傾向が強く、また滞留安定性にも優れる傾向にある。この様な特性、特に流動性の向上は、樹脂組成物を溶融加工する際の加熱温度が低くても溶融加工性に優れるという特徴を発現するため、射出成形品や繊維、フィルム等の押出成形品に加工する際の溶融加工性の向上をもたらす点で大きなメリットとなる。環式PASを配合した際にこの様な特性の向上が発現する理由は定かではないが、環式PASの構造の特異性、すなわち環状構造であるために通常の線状化合物と比較してコンパクトな構造をとりやすいため、マトリックスである各種樹脂との絡み合いが少なくなりやすいこと、各種樹脂に対して可塑剤として作用すること、またマトリックス樹脂どうしの絡み合い抑制にも奏効するためと推測している。
【0049】
環式PASペレットを各種樹脂に配合する際の配合量に特に制限は無いが、各種樹脂100重量部に対して本発明の実施形態の環式PASペレットを0.1重量部以上、好ましくは0.5重量部以上配合することで顕著な特性の向上を得ることが可能である。また、各種樹脂100重量部に対して本発明の実施形態の環式PASペレットを50重量部以下、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下配合することで顕著な特性の向上を得ることが可能である。
【0050】
また、上記樹脂組成物には必要に応じて更に繊維状および/または非繊維状の充填材を配合することも可能である。その配合量は、前記各種樹脂100重量部に対して0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上が例示できる。また、400重量部以下、好ましくは300重量部以下、より好ましくは200重量部以下、更に好ましくは100重量部以下の範囲が例示できる。このような範囲とすることで、優れた流動性を維持しつつ機械的強度が向上できる傾向にある。充填剤の種類としては、繊維状、板状、粉末状、および粒状などのいずれの充填剤も使用することができる。これら充填剤の好ましい具体例としてはガラス繊維、タルク、ワラストナイト、モンモリロナイト、および合成雲母などの層状珪酸塩が例示でき、特に好ましくはガラス繊維である。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、およびミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、上記の充填剤は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明の実施形態に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。また、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、あるいはエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0051】
また、樹脂組成物の熱安定性を保持するために、フェノール系およびリン系化合物の中から選ばれた1種以上の耐熱剤を含有せしめることも可能である。かかる耐熱剤の配合量は、耐熱改良効果の点から前記各種樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、特に0.02重量部以上であることが好ましい。また、上記配合量は、成形時に発生するガス成分の観点からは、前記各種樹脂100重量部に対して5重量部以下、特に1重量部以下であることが好ましい。また、フェノール系及びリン系化合物を併用して使用することは、特に耐熱性、熱安定性、流動性保持効果が大きく好ましい。
【0052】
さらに、前記樹脂組成物には以下のような化合物、すなわち、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物などのカップリング剤、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重宿合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、その他、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、および発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物はいずれも前記各種樹脂100重量部に対して20重量部未満、好ましくは10重量部以下、更に好ましくは1重量部以下の添加でその効果が有効に発現する傾向にある。
【0053】
上記のごとき環式PASペレットを配合してなる樹脂組成物を製造する方法は特に限定されるものではないが、例えば環式PASペレット、各種樹脂および必要に応じてその他の充填材や各種添加剤を予めブレンドした後、各種樹脂および環式PASペレットの流動化温度以上において一軸または二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの通常公知の溶融混合機で溶融混練する方法、および、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが用いられる。ここで本発明の実施形態の環式PASペレットは融解熱量が小さく、結晶性が低いという特徴を有するため、線状PASに比べて大幅に低い温度で流動化が可能であり、このことは上記溶融混練の際に特に好ましい特徴といえる。
【0054】
ここで環式PASペレットを配合する各種樹脂に特に制限は無く、結晶性樹脂および非晶性樹脂の熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂にも適用が可能である。
【0055】
ここで結晶性樹脂の具体例としては例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シンジオタクチックポリスチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリイミド樹脂およびこれらの共重合体などが挙げられ、1種または2種以上併用してもよい。中でも、耐熱性、成形性、流動性および機械特性の点で、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリエステル樹脂が好ましい。また、得られる成形品の透明性の面からはポリエステル樹脂が好ましい。各種樹脂として結晶性樹脂を用いる場合は、上述した流動性の向上の他に結晶化特性も向上する傾向がある。また、各種樹脂としてポリフェニレンスルフィド樹脂を用いることも特に好ましく、この場合、流動性の向上と共に、結晶性の向上、さらにはこれらが奏効した効果として射出成形時のバリ発生が顕著に抑制されるという特徴が発現しやすい傾向にある。
【0056】
非晶性樹脂としては非晶性を有する溶融成形可能な樹脂であれば、特に限定されないが、耐熱性の点で、ガラス転移温度が50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることが特に好ましい。上記ガラス転移温度の上限は、特に限定されないが、成形性などの点から300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましい。なお、本発明の実施形態において、非晶性樹脂のガラス転移温度は、示差熱量測定において非晶性樹脂を30℃〜予測されるガラス転移温度以上まで、20℃/分の昇温条件で昇温し1分間保持した後、20℃/分の降温条件で0℃まで一旦冷却し、1分間保持した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観察されるガラス転移温度(Tg)を指す。このような非晶性樹脂の具体例としては、非晶性ナイロン樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアリレート樹脂、ABS樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、およびポリ(メタ)アクリレート共重合、ポリスルホン樹脂、およびポリエーテルスルホン樹脂から選ばれる少なくとも1種が例示でき、1種または2種以上併用してもよい。これら非晶性樹脂の中でも、特に高い透明性を有するポリカーボネート(PC)樹脂、ABS樹脂の中でも透明ABS樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリ(メタ)アクリレート共重合体、およびポリエーテルスルホン樹脂を好ましく使用することができる。各種樹脂として非晶性樹脂を用いる場合には、前述の溶融加工時の流動性向上に加えて、透明性に優れる非晶性樹脂を使用した場合においては、高い透明性を維持させることができるという特徴を発現できる。ここで、非晶性樹脂組成物に高い透明性を発現させたい場合には、環式PASペレットとして融解熱量が10J/g以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは融解ピークが実質的に認められないものを用いることが好ましい。この様な環式PASペレットを用いることで、非晶性樹脂と溶融混練する際に環式PASが溶融分散し易くなるため、樹脂中の凝集物が低減したり、透明性が向上する傾向にあるため効果的である。
【0057】
上記で得られる、各種樹脂に環式PASペレットを配合した樹脂組成物は通常公知の射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、および紡糸などの任意の方法で成形することができ、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、シート、および繊維などとして利用できる。またこれにより得られた各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。また、上記樹脂組成物およびそれからなる成形品は、リサイクルすることが可能である。例えば、樹脂組成物およびそれからなる成形品を粉砕し、好ましくは粉末状とした後、必要に応じて添加剤を配合して得られる樹脂組成物は、上記樹脂組成物と同じように使用でき、成形品とすることも可能である。
【0058】
(b)環式PASペレットの高重合度体への転化
本発明の実施形態によって製造される環式PASペレットは、成形加工性に優れることに加えて溶融した際の流動性が高いため、開環重合によりポリマーを得る際のプレポリマーとして好適に用いることが可能である。例えば、環式PASペレットを繊維状物質や充填剤と溶融混練した後に、環式PASの高重合度体への転化を行うことで、ポリアリーレンスルフィドの高重合度体と繊維状物質からなる複合材料構造体を容易に作製する事ができる。なおここでいうプレポリマーとは少なくとも本発明の実施形態の環式ポリアリーレンスルフィドを含み、以下に例示する方法によりポリアリーレンスルフィドの高重合度体へ変換可能なもの、すなわちポリアリーレンスルフィドのプレポリマーであり、以下PASプレポリマーと称する場合もある。また、以下の説明では、PASプレポリマーの転化により得られる高重合度体のことを、単にPASとも呼ぶ。
【0059】
環式PASペレットの開環重合は、環式PASペレットの開環が起こり、高分子量体が生成する条件下で行えばよく、例えば本発明の実施形態の環式PASペレットを含むPASプレポリマーを加熱して高重合度体に転化させる方法が好ましい方法として例示できる。この加熱の温度は前記PASプレポリマーが流動化する温度以上であることが好ましく、このような温度条件であれば特に制限は無い。加熱温度がPASプレポリマーの流動化温度以上では分子量の高いPASを短時間で得やすくなる傾向がある。なお、PASプレポリマーが流動化する温度は、PASプレポリマーの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えばPASプレポリマーを示差走査型熱量計やレオメーターに代表される粘弾性測定機で分析することで把握することが可能である。なお、加熱温度が高すぎるとPASプレポリマー間、加熱により生成したPAS間、及びPASとポリアリーレンスルフィドプレポリマー間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるPASの特性が低下する場合があるため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。このような好ましくない副反応の顕在化を抑制しやすい加熱温度としては、100℃以上が例示でき、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上である。また、上記好ましくない副反応の顕在化を抑制しやすい加熱温度としては、400℃以下が例示でき、好ましくは380℃以下、より好ましくは360℃以下である。一方、ある程度の副反応が起こっても差し障り無い場合には、250〜450℃、好ましくは280〜420℃の温度範囲も選択可能であり、この場合には極短時間で高分子量体への転化を行えるという利点がある。
【0060】
前記加熱を行う時間は使用するPASプレポリマーにおける環式PASペレットの含有率やm数、及び分子量などの各種特性、また、加熱温度等の条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。溶融時間としては0.05時間以上が例示でき、0.1時間以上が好ましい。また、溶融時間としては、100時間以下が例示でき、20時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましい。0.05時間未満ではPASプレポリマーのPASへの転化が不十分になりやすく、100時間を超えると好ましくない副反応による得られるPASの特性への悪影響が顕在化する可能性が高くなる傾向にあるのみならず、経済的にも不利益を生じる場合がある。
【0061】
また、PASプレポリマーには、加熱による高重合度体への転化に際して転化を促進する各種触媒成分を使用することも可能である。このような触媒成分としてはイオン性化合物やラジカル発生能を有する化合物が例示できる。イオン性化合物としては、たとえばチオフェノールのナトリウム塩やリチウム塩等、硫黄のアルカリ金属塩が例示できる。また、ラジカル発生能を有する化合物としては、たとえば加熱により硫黄ラジカルを発生する化合物を例示でき、より具体的にはジスルフィド結合を含有する化合物が例示できる。なお、各種触媒成分を使用する場合、触媒成分は通常はPASに取り込まれ、得られるPASは触媒成分を含有するものになることが多い。特に触媒成分としてアルカリ金属及び/または他の金属成分を含有するイオン性の化合物を用いた場合、これに含まれる金属成分の大部分は得られるPAS中に残存する傾向が強い。また、各種触媒成分を使用して得られたPASは、PASを加熱した際の重量減少が増大する傾向にある。従って、より純度の高いPASを所望する場合および/または加熱した際の重量減少の少ないPASを所望する場合には、触媒成分の使用をできるだけ少なくする、好ましくは使用しないことが望まれる。従って、各種触媒成分を使用してPASプレポリマーを高重合度体へ転化する際には、PASプレポリマーと触媒成分を含む反応系内のアルカリ金属量が100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下更に好ましくは10ppm以下であって、なお且つ、反応系内の全イオウ重量に対するジスルフィド重量が1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.3重量%未満、更に好ましくは0.1重量%未満になるように触媒成分の添加量を調整して行うことが好ましい。
【0062】
PASプレポリマーの加熱による高重合度体への転化は、通常は溶媒の非存在下で行うが、溶媒の存在下で行うことも可能である。溶媒としては、PASプレポリマーの加熱による高重合度体への転化の阻害や生成したPASの分解や架橋など好ましくない副反応を実質的に引き起こさないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシドおよびジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、およびアセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、およびテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、およびクロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、およびポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、並びに、ベンゼン、トルエン、およびキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。また、二酸化炭素、窒素、および水等の無機化合物を超臨界流体状態として溶媒に用いることも可能である。これらの溶媒は1種類または2種類以上の混合物として使用することができる。
【0063】
前記、PASプレポリマーの加熱による高重合度体への転化は、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行ってもよいし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限無く行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用できる。
【0064】
PASプレポリマーの加熱による高重合度体への転化の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましく、減圧条件下で行うことも好ましい。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これによりPASプレポリマー間、加熱により生成したPAS間、及びPASとPASプレポリマー間などで架橋反応や分解反応等の好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。なお、非酸化性雰囲気とはPAS成分が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、更に好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。また、減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下が更に好ましい。下限としては0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上がより好ましい。減圧条件が好ましい上限を越える場合は、架橋反応など好ましくない副反応が起こりやすくなる傾向にあり、一方好ましい下限未満では、反応温度によってはPASプレポリマーに含まれる分子量の低い環式ポリアリーレンスルフィドが揮散しやすくなる傾向にある。
【0065】
前記したPASプレポリマーの高重合度体への転化は繊維状物質の共存下で行うことも可能である。ここで繊維状物質とは細い糸状の物質のことであって、天然繊維のごとく細長く引き延ばされた構造である任意の物質が好ましい。繊維状物質存在下でPASプレポリマーの高重合度体への転化を行うことで、PASと繊維状物質からなる複合材料構造体を容易に作成する事ができる。このような構造体は、繊維状物質によって補強されるため、PAS単独の場合に比べて、たとえば機械物性に優れる傾向にある。
【0066】
ここで、各種繊維状物質の中でも長繊維からなる強化繊維を用いることが好ましく、これによりPASを高度に強化する事が可能になる。一般に樹脂と繊維状物質からなる複合材料構造体を作成する際には、樹脂が溶融した際の粘度が高いことに起因して、樹脂と繊維状物質のぬれが悪くなる傾向にあり、均一な複合材料ができなかったり、期待通りの機械物性が発現しないことが多い。ここでぬれとは、溶融樹脂のごとき流体物質と繊維状化合物のごとき固体基質との間に、実質的に空気または他のガスが捕捉されないように、この流体物質と固体基質との物理的状態の良好且つ維持された接触があることを意味する。ここで流体物質の粘度が低い方が繊維状物質とのぬれは良好になる傾向にある。本発明の実施形態のPASプレポリマーは融解した際の粘度が、一般的な熱可塑性樹脂、たとえば従来知られる製造方法により製造されたPASと比べて著しく低いため、繊維状物質とのぬれが良好になりやすい。PASプレポリマーと繊維状物質が良好なぬれを形成した後に、PASプレポリマーを高重合度体に転化することにより、繊維状物質と高重合度体(ポリアリーレンスルフィド)が良好なぬれを形成した複合材料構造体を容易に得ることができる。
【0067】
繊維状物質としては長繊維からなる強化繊維が好ましいことは前述したとおりであり、本発明の実施形態に用いられる強化繊維に特に制限はないが、好適に用いられる強化繊維としては、一般に、高性能強化繊維として用いられる耐熱性及び引張強度の良好な繊維があげられる。例えば、その強化繊維には、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、およびボロン繊維が挙げられる。この内、比強度、比弾性率が良好で、軽量化に大きな寄与が認められる炭素繊維や黒鉛繊維が、最も良好なものとして例示できる。炭素繊維や黒鉛繊維は用途に応じて、あらゆる種類の炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが可能であるが、引張強度が450Kgf/mm
2以上であり 、引張伸度が1.6%以上である高強度高伸度炭素繊維が最も適している。長繊維状の強化繊維を用いる場合、その長さは、5cm以上であることが好ましい。この長さの範囲では、強化繊維の強度を複合材料として十分に発現させることが容易となる。また、炭素繊維や黒鉛繊維は、他の強化繊維を混合して用いてもかまわない。また、強化繊維は、その形状や配列を限定されず、例えば、単一方向、ランダム方向、シート状、マット状、織物状、あるいは組み紐状であっても使用可能である。また、特に、比強度、比弾性率が高いことを要求される用途には、強化繊維が単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取り扱いの容易なクロス(織物)状の配列も本発明の実施形態には適している。
【0068】
また、前記したPASプレポリマーの高重合度体への転化は充填剤の存在下で行うことも可能である。充填剤としては、たとえば非繊維状ガラス、非繊維状炭素、および無機充填剤を例示できる。無機充填材としては、たとえば炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナなどを例示できる。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
【0070】
<環式PAS含有率の測定>
PASの環式PAS含有率の算出は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて下記方法で行った。
環式PASの加熱により得られた生成物約10mgを250℃で1−クロロナフタレン約5gに溶解させた。室温に冷却すると沈殿が生成した。孔径0.45μmのメンブランフィルターを用いて1−クロロナフタレン不溶成分を濾過し、1−クロロナフタレン可溶成分を得た。得られた可溶成分のHPLC測定により、未反応の環式PAS量を定量し、PASの環式PAS含有率を算出した。HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)。
【0071】
<分子量測定>
環式PASの分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で重量平均分子量(Mw)を算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学製 SSC−7100
カラム名:昭和電工製 shodex UT806M
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
【0072】
<環式PPS組成物の溶融粘度>
測定サンプルは、測定サンプルの結晶化状態、融点の影響を取り除くため、まずホットプレート上で30秒加熱・溶融させた後、ドライアイスで急冷させたサンプルを使用した。
溶融粘度測定は、レオロジー社製MR−300ソリキッドメータを用いて、測定温度である300℃近傍で試料を装置にセットして測定温度まで再昇温し、約2分間静置した後に測定を行い、剪断速度2sec
-1の溶融粘度(Pa・s)を測定した。測定における剪断速度は、以下の(a)および(b)を順次実行するパターンで変化させた。
(a)0.3sec
-1から200sec
-1まで昇速
(b)200sec
-1から0.3sec
-1まで降速
なお、溶融粘度の測定値としては、上記パターンで試料に剪断を一旦付与した後に、引き続き同様の剪断を付与して測定した際のものを採用した。
【0073】
<加熱時重量減少率の測定>
加熱時重量減少率は、熱重量分析機を用いて下記条件で行った。なお、試料は2mm以下の細粒物を用いた。
装置:パーキンエルマー社製 TGA7
測定雰囲気:窒素気流下
試料仕込み重量:約10mg
測定条件
(a)プログラム温度50℃で1分保持
(b)プログラム温度50℃から350℃まで昇温。この際の昇温速度20℃/分。
<振盪後のふるい上の粉体またはペレット残量の測定>
粉体またはペレット100gを20メッシュ(目開き0.833mm)のふるいで振盪装置を用い、2分間振盪させた際のふるい上に残るふるい粉体またはペレット残量を調べた。
【0074】
<ペレットの最長径の測定>
ペレットの最長径は、任意にペレットを20個取り出し、ノギスを用いてペレットの最長部の長さを測定し、平均値を算出した。
【0075】
<ガス発生量>
腹部が100mm×25mm、首部が255mm×12mm、肉厚が1mmのガラスアンプルにサンプル3gを計り入れてから真空封入した。このガラスアンプルの胴部のみを、アサヒ理化製作所製のセラミックス電気管状炉ARF−30Kに挿入して320℃で2時間加熱した。アンプルを取り出した後、管状炉によって加熱されておらず揮発性成分の付着したアンプル首部をヤスリで切り出して秤量した。次いで付着ガスを5gのクロロホルムで溶解して除去した後、60℃のガラス乾燥機で1時間乾燥してから再度秤量した。揮発性成分を除去した前後のアンプル首部の重量差をガス発生量(ポリマーに対する重量%)とした。
【0076】
[参考例1]
撹拌機および上部に抜き出しバルブを具備したオートクレーブに水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を1.648kg(水硫化ナトリウム0.791kg(14.1モル))、水酸化ナトリウムの48重量%水溶液を1.225kg(水酸化ナトリウム0.588kg(14.7モル))、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)35L、およびp−ジクロロベンゼン(p−DCB)2.278kg(15.5モル)を仕込んだ。
【0077】
反応容器を室温・常圧下にて窒素ガス下に密閉した後、400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで25分かけて昇温した。次いで、250℃まで35分かけて昇温し、250℃で2時間反応を行った。次いで、内温を250℃に保ちながら、抜き出しバルブを徐々に開放し、40分かけて溶媒を26.6kg留去した。溶媒留去の完了後、オートクレーブを室温近傍にまで冷却し、内容物を回収した。
【0078】
[比較例1]
参考例1で回収した内容物を、反応液の温度が100℃になるように窒素下にて加熱撹拌を行なった。100℃で20分間保持した後、平均目開き10μmのステンレス製金網を用いて固液分離を行ない、得られた濾液成分を約3倍量のメタノールに滴下し析出成分を回収した。得られた固体成分を約2.5Lの80℃温水でリスラリー化し、30分間80℃で攪拌後、濾過する操作を3回繰り返したのち、得られた固形分を減圧下80℃で8時間乾燥を行ない、乾燥粉体(比較例1の環式PAS組成物)を得た。得られた乾燥粉体の溶融粘度を分析した結果、0.03Pa・sであった。また、得られた乾燥粉体の赤外吸収スペクトルおよび高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、環式ポリフェニレンスルフィドを87重量%含有していることが分かった。また、上記比較例1の環式PAS組成物100gを、20メッシュ(目開き0.833mm)のふるいで振盪装置を用いて2分間振盪させた際の、ふるい上に残るふるい残量は3.2重量%であり、また、200℃〜330℃の加熱時重量減少率ΔWrは1.391%であった。また、スクリュー長さLとスクリュー径Dとの比L/Dが12の単軸スクリューフィーダーを用いて、上記乾燥粉体の搬送を実施したところ、スクリュー内で圧密されて搬送できなかった。
【0079】
[実施例1]
比較例1の環式PAS組成物を撹拌機付きのステンレス製反応器に仕込み、窒素ガス雰囲気下で30分間かけて室温から200℃まで昇温して溶融させ、200℃到達後減圧して2時間撹拌したのち、ギアポンプを用いて孔径0.6mmで200℃に温度調節した口金から溶融物を液滴状に吐出して、30℃の水に落下させて冷却し、環式PASペレット(実施例1の環式PASペレット)を得た。実施例1の環式PASペレットを任意に20個とりペレットの最長部の平均長を測定したところ7.8mmであった。また、上記実施例1の環式PASペレット100gを、20メッシュ(目開き0.833mm)のふるいで振盪装置を用いて2分間振盪させた際の、ふるい上に残るふるい残量は99.2重量%であった。また、上記実施例1の環式PASペレットの200℃〜330℃の加熱時重量減少率ΔWrは0.952%であった。また、比較例1と同様にスクリューフィーダーを用いて実施例1の環式PASペレットの搬送を実施したところ、ペレットは圧密されることなく搬送された。なお、環式PAS組成物をペレット化しても、環式PASの含有率が実質的に変化することはないため、実施例1の環式PASペレットにおける環式PAS含有率は、ペレット化に用いた比較例1の環式PAS組成物と同じである。
【0080】
[実施例2]
溶融温度および口金温度を250℃にしたこと以外は実施例1と同様に行い、環式PASペレット(実施例2の環式PASペレット)を得た。実施例2の環式PASペレットの最長部の平均長を、実施例1と同様にして測定したところ5.3mmであった。また、上記実施例2の環式PASペレット100gを、20メッシュ(目開き0.833mm)のふるいで振盪装置を用いて2分間振盪させた際の、ふるい上に残るふるい残量は98.5重量%であった。また、上記実施例2の環式PASペレットの200℃〜330℃の加熱時重量減少率ΔWrは0.523%であった。また、実施例1と同様にスクリューフィーダーを用いて実施例2の環式PASペレットの搬送を実施したところ、ペレットは圧密されることなく搬送された。なお、環式PAS組成物をペレット化しても、環式PASの含有率が実質的に変化することはないため、実施例2の環式PASペレットにおける環式PAS含有率は、ペレット化に用いた比較例1の環式PAS組成物と同じである。
【0081】
[実施例3]
溶融温度および口金温度を300℃にし撹拌時間を1時間としたこと以外は実施例1と同様に行い、環式PASペレット(実施例3の環式PASペレット)を得た。実施例3の環式PASペレットの最長部の平均長を、実施例1と同様にして測定したところ2.8mmであった。また、上記実施例3の環式PASペレット100gを、20メッシュ(目開き0.833mm)のふるいで振盪装置を用いて2分間振盪させた際の、ふるい上に残るふるい残量は97.5重量%であった。また、上記実施例3の環式PASペレットの200℃〜330℃の加熱時重量減少率ΔWrは0.049%であった。また、実施例1と同様にスクリューフィーダーを用いて実施例3の環式PASペレットの搬送を実施したところ、ペレットは圧密されることなく搬送された。なお、環式PAS組成物をペレット化しても、環式PASの含有率が実質的に変化することはないため、実施例3の環式PASペレットにおける環式PAS含有率は、ペレット化に用いた比較例1の環式PAS組成物と同じである。
【0082】
[実施例4]
ペレット化の方法を、ダイスノズルよりクーリングベルト上の押出し、ストランド状にしたものをストランドカッターによりペレット化する方法を用いたこと以外は実施例3と同様に行い、環式PASペレット(実施例4の環式PASペレット)を得た。クーリングベルトの温度は20℃であった。実施例4の環式PASペレットの最長部の平均長を、実施例1と同様にして測定したところ8.0mmであった。また、上記実施例4の環式PASペレット100gを、20メッシュ(目開き0.833mm)のふるいで振盪装置を用いて2分間振盪させた際の、ふるい上に残るふるい残量は99.8重量%であった。また、上記実施例4の環式PASペレットの200℃〜330℃の加熱時重量減少率ΔWrは0.047%であった。また、実施例3と同様にスクリューフィーダーを用いて実施例4の環式PASペレットの搬送を実施したところ、ペレットは圧密されることなく搬送された。なお、環式PAS組成物をペレット化しても、環式PASの含有率が実質的に変化することはないため、実施例4の環式PASペレットにおける環式PAS含有率は、ペレット化に用いた比較例1の環式PAS組成物と同じである。
【0083】
[比較例2]
加熱撹拌の温度を120℃とした以外は比較例1と同様に行い、乾燥粉体(比較例2の環式PAS組成物)を得た。得られた乾燥粉体の溶融粘度を分析した結果、0.06Pa・sであった。また、得られた乾燥粉体は環式ポリフェニレンスルフィドを80重量%含有していることが分かった。また、上記比較例2の環式PAS組成物100gを、20メッシュ(目開き0.833mm)のふるいで振盪装置を用いて2分間振盪させた際の、ふるい上に残るふるい残量は2.5重量%であり、また、200℃〜330℃の加熱時重量減少率ΔWrは2.123%であった。また、比較例1と同様にスクリューフィーダーを用いて上記乾燥粉体の搬送を実施したところ、粉体は圧密されて搬送できなかった。
【0084】
[実施例5]
比較例2で得られた乾燥粉体を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、環式PASペレット(実施例5の環式PASペレット)を得た。実施例5の環式PASペレットを任意に20個とりペレットの最長部の平均長を測定したところ4.2mmであった。また、上記実施例5の環式PASペレット100gを、20メッシュ(目開き0.833mm)のふるいで振盪装置を用いて2分間振盪させた際の、ふるい上に残るふるい残量は98.7重量%であった。また、上記実施例5の環式PASペレットの200℃〜330℃の加熱時重量減少率ΔWrは0.952%であった。また、実施例1と同様にスクリューフィーダーを用いて実施例5の環式PASペレットの搬送を実施したところ、ペレットは圧密されることなく搬送された。なお、環式PAS組成物をペレット化しても、環式PASの含有率が実質的に変化することはないため、実施例5の環式PASペレットにおける環式PAS含有率は、ペレット化に用いた比較例2の環式PAS組成物と同じである。
【0085】
[参考例2]
ここでは国際公開公報WO2007/034800に開示されている方法により環式ポリアリーレンスルフィドを調製した例を示す。
【0086】
撹拌機付きのステンレス製反応器1に48%水硫化ナトリウム水溶液1169kg(10kmol)、48%水酸化ナトリウム水溶液841kg(10.1kmol)、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略する場合もある)を1983kg(20kmol)、50%酢酸ナトリウム水溶液322kg(1.96kmol)を仕込み、常圧で窒素を通じながら約240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、精留塔を介して水1200kgおよびNMP26kgを留出した。なお、この脱液操作の間に仕込んだイオウ成分1モル当たり0.02モルの硫化水素が系外に飛散した。
【0087】
次いで、約200℃まで冷却した後、内容物を別の攪拌機付きのステンレス製反応器2に移送した。反応器1にNMP932kgを仕込み内部を洗浄し、洗浄液を反応器2に移した。次に、p−ジクロロベンゼン1477kg(10.0kmol)を反応器2に加え、窒素ガス下に密封し、撹拌しながら200℃まで昇温した。次いで200℃から270℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、この温度で140分保持した。水353kg(19.6kmol)を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後220℃まで0.4℃/分の速度で冷却してから、約80℃まで急冷し、スラリー(A)を得た。
【0088】
このスラリー(A)を2623kgのNMPで希釈しスラリー(B)を得た。80℃に加熱したスラリー(B)をふるい(80メッシュ、目開き0.175mm)で濾別し、メッシュオン成分としてスラリーを含んだ顆粒状PPS樹脂を、濾液成分としてスラリー(C)を得た。
【0089】
スラリー(C)1000kgをステンレス製反応器に仕込み、反応器内を窒素で置換してから、撹拌しながら減圧下100〜150℃で約1.5時間処理して大部分の溶媒を除去した。
【0090】
次いでイオン交換水1200kg(スラリー(C)の1.2倍量)を加えた後、約70℃で30分撹拌してスラリー化した。このスラリーを濾過して白色の固形物を得た。得られた固形物にイオン交換水1200kgを加えて70℃で30分撹拌して再度スラリー化し、同様に濾過後、窒素雰囲気下120℃で乾燥したのち、80℃で減圧乾燥を行い、乾燥固形物を11.6kg得た。
【0091】
[比較例3]
参考例2で得られたポリフェニレンスルフィド混合物を10kg分取し、溶剤としてクロロホルム150kgを用いて、常圧還流下で1時間攪拌することでポリフェニレンスルフィド混合物と溶剤を接触させた。ついで熱時濾過により固液分離を行い抽出液を得た。ここで分離した固形物にクロロホルム150kgを加え、常圧還流下で1時間攪拌した後、同様に熱時濾過により固液分離を行い、抽出液を得て、先に得た抽出液と混合した。得られた抽出液は室温で一部固形状成分を含むスラリー状であった。
【0092】
この抽出液スラリーを減圧下で処理する事で、抽出液重量が約40kgになるまでクロロホルムの一部を留去してスラリーを得た。次いでこのスラリー状混合液をメタノール600kgに撹拌しながら滴下した。これにより生じた沈殿物を濾過して固形分を回収し、次いで80℃で減圧乾燥することで乾燥固体(比較例3の環式PAS組成物)を得た。得られた乾燥粉体の溶融粘度を分析した結果、0.02Pa・sであった。乾燥粉体の赤外吸収スペクトルおよび高速液体クロマトグラフィーによる分析の結果、環式ポリフェニレンスルフィドを97重量%含有していることが分かった。また、上記比較例3の環式PAS組成物100gを、20メッシュ(目開き0.833mm)のふるいで振盪装置を用いて2分間振盪させた際の、ふるい上に残るふるい残量は2.8重量%であり、また、200℃〜330℃の加熱時重量減少率ΔWrは1.245%であった。また、比較例1と同様にスクリューフィーダーを用いて乾燥粉体の搬送を実施したところ、粉体は圧密されて搬送できなかった。
【0093】
[実施例6]
比較例3で得られた乾燥粉体を用いたこと以外は実施例2と同様に行い、環式PASペレット(実施例6の環式PASペレット)を得た。実施例6の環式PASペレットを任意に20個とりペレットの最長部の平均長を測定したところ3.9mmであった。また、上記実施例6の環式PASペレット100gを、20メッシュ(目開き0.833mm)のふるいで振盪装置を用いて2分間振盪させた際の、ふるい上に残るふるい残量は98.5重量%であった。また、上記実施例6の環式PASペレットの200℃〜330℃の加熱時重量減少率ΔWrは0.439%であった。また、実施例1と同様にスクリューフィーダーを用いて実施例6の環式PASペレットの搬送を実施したところ、ペレットは圧密されることなく搬送された。なお、環式PAS組成物をペレット化しても、環式PASの含有率が実質的に変化することはないため、実施例6の環式PASペレットにおける環式PAS含有率は、ペレット化に用いた比較例3の環式PAS組成物と同じである。
【0094】
各実施例および比較例における測定結果、および各実施例におけるペレット化の条件を、表1にまとめて示す。実施例1〜4と比較例1、実施例5と比較例2、および実施例6と比較例3との間で加熱時重量減少率ΔWrを比較することにより、ペレット化によって、ペレット化する前よりガス発生量が低減していることが分かった。また、実施例1〜4と比較例1、実施例5と比較例2、および実施例6と比較例3との間で評価結果を比較することにより、ペレット化によって、ペレット化する前より搬送性が向上することが分かった。
【0095】
【表1】