(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外径方向に突出しかつ軸方向に延びる外歯部を円周方向に複数形成した第1回転軸と、内径方向に突出しかつ軸方向に延びる内歯部を円周方向に複数形成した第2回転軸とからなり、前記外歯部および前記内歯部を利用して前記第1回転軸に対し前記第2回転軸を軸方向に摺動可能にかつ回転方向に係合可能に嵌合させた回転伝達装置において、
前記外歯部および前記内歯部は、互いに回転方向に係合する歯面を有し、
前記外歯部および前記内歯部の一方の前記歯面には、前記外歯部および前記内歯部の他方の前記歯面側へ突出しかつ軸方向に延びる弾性変形可能な突起部が形成されており、
前記外歯部および前記内歯部の他方の前記歯面に対する前記外歯部および前記内歯部の一方の前記歯面における前記突起部の接触面積は、前記外歯部および前記内歯部の他方の前記歯面に対する前記外歯部および前記内歯部の一方の前記歯面における前記突起部を除く部分の接触面積よりも小さいことを特徴とする回転伝達装置。
請求項1に記載の回転伝達装置の組み立て方法であって、前記第1回転軸および前記第2回転軸を軸方向に嵌合させ、前記第1回転軸および前記第2回転軸間で正方向および逆方向に相対回転させることにより、前記突起部は、前記外歯部および前記内歯部の他方の前記歯面によって弾性圧縮量を減らした状態とすることを特徴とする回転伝達装置の組み立て方法。
請求項1に記載の回転伝達装置を備えた車両用ステアリング装置であって、前記第1回転軸は、インターミディエイトシャフト側に回転連結されたインナーシャフトであり、前記第2回転軸は、ハンドルに回転連結されたアウターシャフトであることを特徴とする車両用ステアリング装置。
請求項1に記載の回転伝達装置を備えたインターミディエイトシャフトであって、前記第1回転軸は、ピニオンシャフト側の第2の自在継手に回転連結されたロアーシャフトであり、前記第2回転軸は、ステアリングシャフト側の第1の自在継手に回転連結されたアッパーシャフトであることを特徴とするインターミディエイトシャフト。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
突起物Aは、回転方向のガタを吸収する機能は無く、第2回転軸の回転を第1回転軸に滑らかに伝えることができない。突起部Bは、回転方向のガタを吸収する力が非常に弱いため、第2回転軸の回転を第1回転軸に滑らかに伝えることができない。本発明は上述した問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、第1回転軸および第2回転軸間で滑らかに回転を伝えることのできる回転伝達装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、外径方向に突出しかつ軸方向に延びる外歯部を円周方向に複数形成した第1回転軸と、内径方向に突出しかつ軸方向に延びる内歯部を円周方向に複数形成した第2回転軸とからなり、前記外歯部および前記内歯部を利用して前記第1回転軸に対し前記第2回転軸を軸方向に摺動可能にかつ回転方向に係合可能に嵌合させた回転伝達装置において、前記外歯部および前記内歯部は、互いに回転方向に係合する歯面を有し、前記外歯部および前記内歯部の一方の前記歯面に
は、前記外歯部および前記内歯部の他方の前記歯面側へ突出しかつ軸方向に
延びる
弾性変形可能な突起部
が形成
されたものである。
【0007】
上述した構成によれば、第1回転軸および第2回転軸間で滑らかに回転を伝えることのでき、第1回転軸および第2回転軸間の相対摺動抵抗を最適なものにすることができる回転伝達装置を提供することができる。
【0008】
さらに、前記外歯部および前記内歯部の他方の前記歯面に対する
前記外歯部および前記内歯部の一方の前記歯面における前記突起部の接触面積は、
前記外歯部および前記内歯部の他方の前記歯面に対する前記外歯部および前記内歯部の
一方の前記歯面における前記突起部を除く部分の接触面積よりも小さ
いことを特徴とするものである。
【0009】
上述した構成によれば、第1回転軸および第2回転軸間で滑らかに回転を伝えることのでき、第1回転軸および第2回転軸間の相対摺動抵抗を最適なものにすることができる回転伝達装置を提供することができる。
【0010】
請求項
2に記載の発明は、
請求項1に記載の回転伝達装置の組み立て方法であって、前記第1回転軸および前記第2回転軸を軸方向に嵌合させ、前記第1回転軸および前記第2回転軸間で正方向および逆方向に相対回転させることに
より、前記突起部が、前記外歯部および前記内歯部の他方の前記歯面に
よって弾性圧縮量を減らした状態
とすることを特徴とするものである。
【0011】
請求項
2に記載の発明によれば、突起部は適度な弾性力を有するので第1回転軸および第2回転軸間でより滑らかに回転を伝えることのでき、前記第1回転軸および前記第2回転軸間の相対摺動抵抗をより最適なものにすることができる。
【0012】
請求項
3に記載の発明は、請求項1に記載の回転伝達装置を備えた車両用ステアリング装置であって、前記第1回転軸が、インターミディエイトシャフト側に回転連結されたインナーシャフトであり、前記第2回転軸が、ハンドルに回転連結されたアウターシャフトであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項
3に記載の発明によれば、第1回転軸および第2回転軸間で滑らかに回転を伝えることのでき、第1回転軸および第2回転軸間の相対摺動抵抗を最適なものにすることができる車両用ステアリング装置のステアリングシャフトを提供することができる。
【0016】
請求項
4に記載の発明は、請求項1に記載の回転伝達装置を備えたインターミディエイトシャフトであって、前記第1回転軸が、ピニオンシャフト側の第2の自在継手に回転連結されたロアーシャフトであり、前記第2回転軸が、ステアリングシャフト側の第1の自在継手に回転連結されたアッパーシャフトであることを特徴とするものである。
【0017】
請求項
4に記載の発明によれば、第1回転軸および第2回転軸間で滑らかに回転を伝えることのでき、第1回転軸および第2回転軸間の相対摺動抵抗を最適なものにすることができるインターミディエイトシャフトを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1回転軸および第2回転軸間で滑らかに回転を伝えることのでき、第1回転軸および第2回転軸間の相対摺動抵抗を最適なものにすることができる回転伝達装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1の実施形態である車両用ステアリング装置について、
図1乃至
図5にもとづいて説明する。
図1は、車両用ステアリング装置の縦断面図、
図2は、
図1のA−A線断面図、
図3は、
図2の一部拡大断面図、
図4は、インナーシャフトの一部拡大斜視図、
図5は、ダイスを使った成形状態断面図である。
【0021】
図1および
図2に示すように、車両用ステアリング装置10は、ステアリングチューブ20と、ステアリングチューブ20に転がり軸受22、24を介して回転可能に支持されるステアリングシャフト25とを有する。車両用ステアリング装置10は、図略のブラケットを介して車体に固定される。ステアリングシャフト25の一端には図略のハンドルが回転連結され、ステアリングシャフト15の他端には図略のインターミディエイトシャフトが回転連結されている。
【0022】
前記ステアリングチューブ20は、円筒形状のアウターチューブ21と、円筒形状のインナーチューブ23とからなり、アウターチューブ21にインナーチューブ23が遊嵌されている。アウターチューブ21に図略のブラケットが固定され、このアウターチューブ21に転がり軸受22を介して後述するアウターシャフト26が回転可能に軸承されている。インナーチューブ23に転がり軸受24を介して後述するインナーシャフト28が回転可能に軸承されている。
【0023】
前記ステアリングシャフト25は、円筒形状のアウターシャフト26と、円柱形状のインナーシャフト28とからなり、アウターシャフト26にインナーシャフト28が軸方向に摺動可能にかつ回転方向に係合可能に嵌合されている。アウターシャフト26の一端には図略のハンドルが連結され、インナーシャフト28の他端には図略のインターミディエイトシャフトが連結されている。インターミディエイトシャフトは、さらに図略のピニオンシャフト、ラックシャフトを介してタイヤに連結されている。
【0024】
図3乃至
図5に示すように、アウターシャフト26の内周およびインナーシャフト28の外周にスプラインが形成されている。アウターシャフト26のスプラインは、内径側へ突出し、断面台形形状の内歯部27を有し、インナーシャフト28のスプラインは、外径側へ突出し、断面台形形状の外歯部29を有する。内歯部27は、アウターシャフト26の内周に円周方向に等間隔に設けられ、軸方向に延びている。外歯部29は、インナーシャフト28の外周に円周方向に等間隔に設けられ、軸方向に延びている。
【0025】
内歯部27および外歯部29は、互いに回転方向に係合する歯面を有する。内歯部27の歯面の断面は、直線を有し、外歯部29の歯面の断面は、インボリュート曲線を有する。
図2乃至
図5に示すように、外歯部29は、鉄系材料に転造等により断面台形形状の元外歯部29aを形成し、元外歯部29aに所定の肉厚を持つ樹脂コート29bを形成し、樹脂コート29bの外周をダイス等で成形することによって作られている(
図5)。
【0026】
外歯部29の左右両側の歯面に断面半円形状の突起部29cが形成されている。突起部29cは、内歯部27の歯面に接触する位置まで突出し、インナーシャフト28の軸線と平行に延びている。インナーシャフト28のスプラインの一端から中間までは、樹脂コート29bを有する外歯部29であり、インナーシャフト28のスプラインの中間以降の残り部分は、樹脂コート29bを有しない元外歯部29aである。全ての外歯部29に突起部29cを形成する必要がなく、上述した実施形態では、2つ置きの外歯部29に突起部29cを形成した。内歯部27および外歯部29の両歯面同士の接触面積に比べて、内歯部27の歯面に対する突起部29cの接触面積の方が小さい。従って、両歯面が弾性変形するに比べて突起部29cの方が弾性変形しやす。
【0027】
次に上述した構成にもとづいて、インナーシャフト28のスプラインの形成方法について説明する。
【0028】
インナーシャフト28の外周に、転造あるいはホブ切りあるいはプレス成形によって断面台形形状の元外歯部29aを円周方向に等間隔に形成する。元外歯部29aの内、一端から中間までを、樹脂が入ったタンクにどぶ付けする。これによって、元外歯部29aの内、一端から中間までに、樹脂コート29bが形成される。樹脂コート29bが硬化したら、これをダイス95に通す。ダイス95には、荒削り用のダイスと、仕上げ用のダイスがあり、荒削り用のダイスで樹脂コート29bを荒削りし、この後、仕上げ用のダイスで樹脂コート29bを仕上げ削りする。ダイス95によって、歯面と突起部29cが同時に形成される。こうして、インナーシャフト28のスプラインは、一端から中間まで、外歯部29を有し、中間から残り部分は、元外歯部29aを有する。タンクに入った樹脂は、熱溶融型の樹脂を使用する。他の変形例として、2液硬化型の樹脂を使用しても良い。
【0029】
続いて、ステアリングチューブの組付け動作について説明する。
【0030】
アウターシャフト26にインナーシャフト28をスプライン嵌合させる。このとき、突起部29cが歯面に比べて柔らかいので、径方向のガタの無い状態で、スムーズに嵌合させ、軸方向に摺動させることができる。アウターチューブ21に転がり軸受22を嵌合させ、アウターチューブ21の一部をかしめることによって、アウターチューブ21に転がり軸受22を固定する。インナーチューブ23に転がり軸受24を嵌合させ、インナーチューブ23の一部をかしめることによって、インナーチューブ23に転がり軸受24を固定する。ステアリングシャフト25に転がり軸受22を嵌合させ、止め輪を嵌めて抜け止めする。ステアリングシャフト25に転がり軸受24を嵌合させ、止め輪を嵌めて抜け止めする。こうして、ステアリングチューブ20内にステアリングシャフト25が回転可能に組み付けられる。
【0031】
さらに続いて、アウターチューブ21およびアウターシャフト26の軸方向移動について説明する。
【0032】
インナーチューブ23に対しアウターチューブ21を前後方向に移動させると同時にインナーシャフト28に対しアウターシャフト26を前後方向に移動させることができる。
【0033】
アウターシャフト26の内歯部27の歯面に、インナーシャフト28の外歯部29の突起部29cが柔らかく当たっているので、インナーシャフト28に対しアウターシャフト26を滑らかに摺動させることができる。突起部29cがインナーシャフト28の軸線と平行に所定の長さに渡って設けられているので、インナーシャフト28に対しアウターシャフト26に傾きを抑えることができ、インナーシャフト28に対するアウターシャフト26のこじりつきを防ぐことができる。
【0034】
次に、ハンドル回転操作について説明する。
【0035】
ハンドルを回転操作すると、ハンドルの回転は、アウターシャフト26、インナーシャフト28を経てインターミディエイトシャフトに伝えられる。アウターシャフト26の内歯部27の歯面に、インナーシャフト28の外歯部29の突起部29cが当接し、突起部29cがインナーシャフト28の軸線と平行に所定の長さに渡って設けれ、突起部29cは回転力を伝えるのに十分な弾性力を有するので、アウターシャフト26の回転はインナーシャフト28に滑らかに伝えられる。
【0036】
本発明の第2の実施形態であるインターミディエイトシャフトについて、
図6乃至
図8にもとづいて説明する。
図6は、インターミディエイトシャフトの正面図であり、
図7は、
図6のB−B線断面図、
図8は、
図7の一部拡大断面図である。
【0037】
図6および
図7に示すようにインターミディエイトシャフト50は、アッパーシャフト51と、アッパーシャフト51に対し伸縮可能にかつ回転連結されたロアーシャフト55と、アッパーシャフト51の一端に設けられた第1の自在継手60と、ロアーシャフト55の他端に設けられた第2の自在継手70とからなる。
【0038】
第1の自在継手60は、第1のヨーク61と、図略の第1の十字部材と、第2のヨーク65とからなる。第1のヨーク61および第1の十字部材は、互いに相対回転可能に連結され、第1の十字部材および第2のヨーク65は、互いに相対回転可能に連結される。第1の十字部材に対する第1のヨーク61の回転軸線と、第1の十字部材に対する第2のヨーク65の回転軸線は、互いに直交している。第1のヨーク61には車両用ステアリング装置のステアリングシャフト80が連結され、第2のヨーク65にはアッパーシャフト51が一体形成されている。第1のヨーク61にはネジ穴62が形成され、ステアリングシャフト80を第1のヨーク61に締め付け固定するときに使用される。
【0039】
第2の自在継手70は、第3のヨーク71と、図略の第2の十字部材と、第4のヨーク75とからなる。第3のヨーク71および第2の十字部材は、互いに相対回転可能に連結され、第2の十字部材および第4のヨーク75は、互いに相対回転可能に連結される。第2の十字部材に対する第3のヨーク71の回転軸線と、第2の十字部材に対する第4のヨーク75の回転軸線は、互いに直交している。第3のヨーク71にはピニオンシャフト85が連結され、第4のヨーク75にはロアーシャフト55が一体形成されている。第3のヨーク71にはネジ穴72が形成され、ピニオンシャフト85を第3のヨーク71に締め付け固定するときに使用される。
【0040】
図7および
図8に示すように、アッパーシャフト51の内周およびロアーシャフト55の外周にスプラインが形成されている。アッパーシャフト51のスプラインは、内径側へ突出し、断面台形形状の内歯部52を有し、ロアーシャフト55のスプラインは、外径側へ突出し、断面台形形状の外歯部56を有する。内歯部52は、アッパーシャフト51の内周に円周方向に等間隔に設けられ、軸方向に延びている。外歯部56は、ロアーシャフト55の外周に円周方向に等間隔に設けられ、軸方向に延びている。
【0041】
内歯部52および外歯部56は、互いに回転方向に係合する歯面を有する。内歯部52の歯面の断面は、インボリュート曲線を有し、外歯部56の歯面の断面は、インボリュート曲線を有する。外歯部56は、鉄系材料に転造等により断面台形形状の元外歯部56aを形成し、元外歯部56aに所定の肉厚を持つ樹脂コート56bを形成し、樹脂コート56bの外周をダイス等で成形することによって作られている。外歯部56の左右両側の歯面に断面半円形状の突起部56cが形成されている。突起部56cは、内歯部52の歯面に対し隙間56dを形成する位置まで突出し、ロアーシャフト55の軸線と平行に延びている。全ての外歯部56に突起部56cを形成する必要がなく、上述した実施形態では、2つ置きの外歯部56に突起部56cを形成した。
【0042】
アッパーシャフト51に対するロアーシャフト55の軸方向移動について説明する。
【0043】
アッパーシャフト51の内歯部52の歯面に、ロアーシャフト55の外歯部56の突起部56cが柔らかく当たっているので、ロアーシャフト55に対しアッパーシャフト51を滑らかに摺動させることができる。突起部56cがロアーシャフト55の軸線と平行に所定の長さに渡って設けられているので、ロアーシャフト55に対しアッパーシャフト51の傾きを抑えることができ、ロアーシャフト55に対するアッパーシャフト51のこじりつきを防ぐことができる。
【0045】
ステアリングシャフト80の回転は、第1の自在継手60、アッパーシャフト51、ロアーシャフト55、第2の自在継手70を経てピニオンシャフト85に伝えられる。アッパーシャフト51の内歯部52の歯面に、ロアーシャフト55の外歯部56の突起部56cが当接し、突起部56cがロアーシャフト55の軸線と平行に所定の長さに渡って設けられ、突起部56cは回転力を伝えるのに十分な弾性力を有するので、アッパーシャフト51の回転はロアーシャフト55に滑らかに伝えられる。複数の外歯部56間にピッチ誤差、歯形誤差等のバラツキがあっても突起部56cは外歯部56の歯面より弱い弾力性を有するので、隙間56dをできるだけ少なくすることができ、アッパーシャフト51の回転をロアーシャフト55に直ぐに伝えることができる。
【0046】
第4の実施形態について、
図10乃至
図13にもとづいて説明する。第4の実施形態は、第1の実施形態である車両用ステアリング装置において、突起部の位置ならびに形状を変え、突起部の弾性変形量をコントロールしたものである。突起部以外の部品および部位は、ほぼ同一であるので、同一番号を付与して説明を割愛する。
【0047】
図10は、
図3相応の一部拡大断面図で、アウターシャフトおよびインナーシャフト間の相対回転量を明記した状態図、
図11は、
図10の一部拡大図で、相対回転させる前の突起部の弾性変形量を明記した状態図、
図12は、
図10の一部拡大図で、相対回転させた後の突起部の弾性変形量を明記した状態図、
図13は、
図10の一部拡大図で、相対回転させたときの突起部の変形量を明記した状態図である。
【0048】
外歯部29の左右両側の歯面に断面台形形状の突起部29fが形成されている。突起部29fは、内歯部27の歯面に接触する位置まで突出し、インナーシャフト28の軸線と平行に延びている。突起部29fは、外歯部29の歯たけ方向の中間で、内歯部27の歯先に近い位置に形成されている。全ての外歯部29に突起部29fを形成する必要がなく、上述した実施形態では、2つ置きの外歯部29に突起部29fを形成した。
【0049】
アウターシャフト26にインナーシャフト28をスプライン嵌合させる前の突起部29fの断面形状は、
図11の一点鎖線で示すように、山が高い台形形状である。アウターシャフト26にインナーシャフト28をスプライン嵌合させた後の突起部29fの断面形状は、
図11の実線で示すように、山が低くなり、山幅が大きくなり、樽状に膨らみを持った台形形状である。かかる状態で、インナーシャフト28からアウターシャフト26を除くと、突起部29fの断面形状は、
図11の一点鎖線で示すように、山が高い台形形状にほぼ復帰する。
【0050】
アウターシャフト26にインナーシャフト28をスプライン嵌合させた後、アウターシャフト26の内歯部27に対しインナーシャフト28の外歯部29を
図10および
図13の二点鎖線に示す位置まで時計方向(正方向)および反時計方向(逆方向)に相対回転させる。
図13の一点鎖線で示す山が高い台形形状が、相対回転によって、点線で示す位置へ移動し、スプライン嵌合による圧縮のみならず、相対回転の圧縮が加わり、より大きく圧縮されることとなる。その結果、
図12のスプライン嵌合した状態から、アウターシャフト26を除くと、突起部29fは、
図12の一点鎖線で示すように、山が低く、山幅が大きい台形形状となる。すなわち、突起部29fは、
図11の一点鎖線で示すように、山が高い台形形状から、
図12の一点鎖線で示すように、山が低く、山幅が大きい台形形状に塑性変形したこととなる。
【0051】
図12の一点鎖線で示す突起部29fの状態で、アウターシャフト26にインナーシャフト28をスプライン嵌合させると、突起部29fの断面形状は、
図12の実線で示すように、山が低くなり、山幅が大きくなり、樽状に膨らみを持った台形形状となる。
図12に示すように、弾性変形量が小さく、弾性係数が大きい突起部29fの持つ弾性力は、
図11に示すように、弾性変形量が大きく、弾性係数が小さい突起部29fの持つ弾性力に比べて小さいので、インナーシャフト28に対しアウターシャフト26を小さい摺動抵抗で持って滑らかに摺動させることができる。
【0052】
第4の実施形態におけるインナーシャフト28のスプラインの形成方法は、第1の実施形態と同様であるので、説明は割愛する。
【0053】
続いて、ステアリングチューブの組付け動作について説明する。
【0054】
アウターシャフト26にインナーシャフト28をスプライン嵌合させる。突起部29fは、
図11の一点鎖線で示すように、山が高い台形形状から、
図11の実線で示すように、山が低くなり、山幅が大きくなり、樽状に膨らみを持った台形形状に弾性変形する。続いて、アウターシャフト26の内歯部27に対しインナーシャフト28の外歯部29を
図10および
図13の二点鎖線に示す位置まで時計方向(正方向)に相対回転させ、反時計方向(逆方向)に相対回転させる。突起部29fは、
図13の一点鎖線で示す山が高い台形形状から、
図12の一点鎖線で示すように、山が低く、山幅が大きい台形形状に塑性変形する。スプライン嵌合によって、突起部
29fは、
図12の一点鎖線で示すように、山が低く、山幅が大きい台形形状から、
図12の実線で示すように、山が低くなり、山幅が大きくなり、樽状に膨らみを持った台形形状に弾性変形する。
【0055】
塑性変形前の
図11の突起部29fの弾性変形量に比べて、塑性変形後の
図12の突起部29fの弾性変形量が小さいので、塑性変形前の
図11の突起部29fの弾性力に比べて、塑性変形後の
図12の突起部29fの弾性力が小さい。この結果、塑性変形後の突起部29fによって、径方向のガタの無い状態で、アウターシャフト26の回転をインナーシャフト28に滑らかに伝えることができ、インナーシャフト28に対しアウターシャフト26を低い荷重でもって軸方向に摺動させることができる。
【0056】
複数の外歯部29間にピッチ誤差、歯形誤差等のバラツキがあり、塑性変形前の
図11の複数の突起部
29f間に弾性変形量のバラツキがあっても、塑性変形後の
図12の突起部
29f間における弾性変形量のバラツキを小さくすることができる。
【0057】
アウターチューブ21に転がり軸受22を嵌合させ、アウターチューブ21の一部をかしめることによって、アウターチューブ21に転がり軸受22を固定する。インナーチューブ23に転がり軸受24を嵌合させ、インナーチューブ23の一部をかしめることによって、インナーチューブ23に転がり軸受24を固定する。ステアリングシャフト25に転がり軸受22を嵌合させ、止め輪を嵌めて抜け止めする。ステアリングシャフト25に転がり軸受24を嵌合させ、止め輪を嵌めて抜け止めする。こうして、ステアリングチューブ20内にステアリングシャフト25が回転可能に組み付けられる。
【0058】
続いて、アウターチューブ21およびアウターシャフト26の軸方向移動について説明する。
【0059】
インナーチューブ23に対しアウターチューブ21を前後方向に移動させると同時にインナーシャフト28に対しアウターシャフト26を前後方向に移動させることができる。
【0060】
アウターシャフト26の内歯部27の歯面に、インナーシャフト28の外歯部29の突起部29fが柔らかく当たっており、突起部29fの弾性力を塑性変形によって下げているので、インナーシャフト28に対しアウターシャフト26を滑らかにかつ低い荷重でもって摺動させることができる。突起部29fがインナーシャフト28の軸線と平行に所定の長さに渡って設けられているので、インナーシャフト28に対しアウターシャフト26に傾きを抑えることができ、インナーシャフト28に対するアウターシャフト26のこじりつきを防ぐことができる。
【0061】
次に、ハンドル回転操作について説明する。
【0062】
ハンドルを回転操作すると、ハンドルの回転は、アウターシャフト26、インナーシャフト28を経てインターミディエイトシャフトに伝えられる。アウターシャフト26の内歯部27の歯面に、インナーシャフト28の外歯部29の突起部29fが当接し、突起部29fがインナーシャフト28の軸線と平行に所定の長さに渡って設けれ、突起部29fは回転力を伝えるのに十分な弾性力を有し、塑性変形によって突起部29fの弾性力を下げているので、アウターシャフト26の回転はインナーシャフト28により滑らかに伝えられる。
【0063】
このようなものにおいても、第1回転軸に第2回転軸を嵌合させるときに、滑らかに嵌合させることができる。第1回転軸の回転は、滑らかに第2回転軸に伝えることができる。
【0064】
本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0065】
第1の実施形態では、
図3に示すように突起部29cを内歯部27の歯面に接触する位置まで突出させた。第3の実施形態では、
図9に示すように突起部29fを内歯部27の歯面で圧縮される位置まで突出させても良い。
図9はアウターシャフト26に対しインナーシャフト28が中立にある状態を示し、二点鎖線の突起部が圧縮前の状態であり、実線の突起部が圧縮後の状態である。中立状態で圧縮されている突起部
29fは、さらに圧縮可能な弾力性を有する。内歯部27の歯面および外歯部29の歯面間を圧縮された突起部
29fで詰めることができ、アウターシャフト26およびインナーシャフト28間のガタを無くすことができる。
【0066】
上述した第1の実施形態および第2の実施形態は、インナーシャフト28の外歯部29の歯面に、アウターシャフト26の内歯部27の歯面に当接する突起部29cを形成した。他の実施形態として、アウターシャフト26の内歯部27の歯面に、インナーシャフト28の外歯部29の歯面に当接する突起部を形成しても良い。
【0067】
上述した第1の実施形態は、外歯部29の左右両側の歯面に断面半円形状の突起部29cを形成した。他の実施形態として、円弧の両側を直線で繋いだ断面形状を有する突起部29cを、外歯部29の左右両側の歯面に形成しても良い。
【0068】
上述した第1の実施形態は、一つの外歯部29の左右両側の歯面に断面半円形状の突起部29cを形成した。他の実施形態として、隣り合う一方の外歯部29の左側の歯面に断面半円形状の突起部29cを形成し、隣り合う他方の外歯部29の右側の歯面に断面半円形状の突起部29cを形成しても良い。
【0069】
上述した第1の実施形態は、18個の外歯部29に対し、6個の外歯部29に突起部29cを形成した。これに限らず、外歯部29の個数と、突起部29cを形成した外歯部29の個数は、任意に設定できる。
【0070】
上述した第1の実施形態は、外歯部29に突起部29cを外径側の位置に形成した。これに限らず、外歯部29に突起部29cを径方向の任意の位置に形成することができる。