(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、重複範囲内の1つの所定位置を境に、使用するノズルを切り替えているため、記録画像の、その所定位置付近のノズルで形成した部分に局所的に濃度が濃い部分、あるいは、薄い部分が必ず1箇所だけ生じるため、この部分が目立ってしまう。
【0009】
一方、特許文献2では、切り替え位置が重複範囲全域で分散されるため、重複範囲のノズルによって形成された画像部分内で濃度が均一化される。しかし、重複範囲に隣接する、非重複範囲に対応する画像部分では、1種類のノズルのみによってドットが形成されるため、重複範囲に対応する画像部分と非重複範囲に対応する画像部分とを比べると、濃度に差が出る。このため、重複範囲と非重複範囲にまたがったベタ画像を印刷する場合、重複範囲の全域で画像部分の濃度が均一化されてしまうと、その両側の非重複範囲に対応する画像部分に対して、バンド状に目立ってしまう。つまり、特許文献2では、特許文献1で問題になるような、切り替え位置付近での局所的な濃度変化は重複範囲全体で分散されて目立たなくなるが、重複範囲と非重複範囲との間での濃度差が逆に目立ってしまう。
【0010】
本発明の目的は、2つのヘッドユニットのノズル配列方向の位置ズレに起因して、ノズル列の重複範囲に対応する画像部分に生じる局所的な濃度変化による画質低下、あるいは、重複範囲と非重複範囲にそれぞれ対応する画像部分の間の濃度差に起因する画質低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明のインクジェットプリンタは、被記録媒体に対してインクを吐出するインクジェットプリンタであって、
第1方向の一方側の第1端部及び前記第1方向の他方側の第2端部と、前記第1方向に沿って所定間隔で配列された複数の第1ノズルからなる第1ノズル列
と、を有する第1ヘッドユニットと、
前記第1方向の前記一方側の第3端部及び前記第1方向の前記他方側の第4端部と、前記第1方向に沿って前記所定間隔で配列された複数の第2ノズルからなる第2ノズル列
と、を有する第2ヘッドユニットと、前記第1ヘッドユニット及び前記第2ヘッドユニットのそれぞれのインク吐出動作を制御する制御部と、を備え、
前記第1ヘッドユニットと前記第2ヘッドユニットは
、前記
第1方向と交差する
第2方向において異なる位置に配置され、
前記第3端部が前記第1方向において前記第1端部と前記第2端部との間に位置し、前記
第1方向において前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とが重なる重複範囲内に
、複数の前記第1ノズルと複数の前記第2ノズルと
が配置されており、
前記制御部は、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列からそれぞれインクを吐出させて、前記
第2方向に並ぶ複数のドット列を形成する際に、前記重複範囲では、インクを吐出するノズルを前記第1ノズルと前記第2ノズルの間で切り替え、前記第1ノズルと前記第2ノズルとが切り替えられる切り替え範囲が、前記重複範囲よりも狭く、少なくとも一部のドット列を形成する際の、前記切り替え範囲内の、前記第1ノズルと前記第2ノズルの切り替え位置が3カ所以上あり、前記
第2方向において隣接する2つのドット列の間で、前記切り替え範囲が異な
り、前記2つのドット列のうちの、一方が、前記第1方向に連続して前記第1ノズルによって形成される複数のドットからなる第1ドット群を含み、他方が、前記第1方向に連続して前記第2ノズルによって形成される複数のドットからなる第2ドット群を含み、前記第1ドット群において前記複数の第1ノズルのうち前記第2端部に最も近い第1ノズルによって形成されるドットである第1ドットの前記第1方向の位置が、前記第2ドット群において前記複数の第2ノズルのうち前記第3端部に最も近い第2ノズルによって形成されるドットである第2ドットの前記第1方向の位置と同じ位置、又は、前記第2ドット群において前記複数の第2ノズルのうち前記第3端部に最も近い第2ノズルよりも前記第4端部に近い第2ノズルによって形成されるドットである第3ドットの前記第1方向の位置と前記第2ドットの前記第1方向の位置との間の位置となるように、前記第1ヘッドユニットと前記第2ヘッドユニットを制御することを特徴とするものである。
【0012】
また、第
7の発明は、前記第1の発明と関連する、インクジェットプリンタの記録方法についての発明である。
【0013】
本発明の前提として、2つのヘッドユニットのノズル列同士が一部重なっている。また、そのノズル列の重複範囲内で、第1ヘッドユニットの第1ノズルと第2ヘッドユニットの第2ノズルは、ノズル配列方向において同じ位置に配置されている。その上で、複数のドット列の各々を形成する際に、前記重複範囲内において、第1ノズルと第2ノズルの何れか一方のみを使用するのではなく、下記(1)〜(3)の要件に従って2種類のノズルを使い分ける。
(1)少なくとも一部のドット列を形成する際の、切り替え範囲内の、第1ノズルと第2ノズルの切り替え位置が3カ所以上ある。
(2)切り替え範囲が重複範囲よりも狭い。
(3)隣接する2つのドット列の間で、切り替え範囲が異なる。
【0014】
本発明において、「重複範囲内で第1ノズルと第2ノズルを切り替える」とは、ノズル配列方向における所定の位置を境にして、この所定の位置に対して一方側では第1ノズルからインクを吐出させ、所定の位置に対して他方側では第2ノズルからインクを吐出させることを意味する。また、インクを吐出する第1ノズルと第2ノズルの間の前記所定の位置を、切り替え位置という。
【0015】
重複範囲内における第1ノズルと第2ノズルの切り替え位置が1カ所しかないと、被記録媒体に記録された画像において、切り替え位置に対応する部分に、局所的に濃度が濃くなる部分、又は、濃度が薄くなる部分が必ず1カ所生じるため、目立ってしまう。即ち、2つのヘッドユニットが互いに離れる方向にずれて配置されている場合には、切り替え位置の両側の第1ノズルと第2ノズルによって形成される2つのドットが離れるために、全てのドット列の、切り替え位置に対応する部分の濃度が常に薄くなる。逆に、2つのヘッドユニットが互いに近づく方向にずれて配置されている場合には、全てのドット列の、前記切り替え位置に対応する部分の濃度が常に濃くなる。このように、重複範囲に対応する画像部分に、局所的に濃度が薄い部分又は濃い部分のみが現れるため、かなり目立ってしまう。
【0016】
これに対して、上記(1)のように、切り替え範囲内の切り替え位置が3カ所以上である場合は以下のようになる。2つのヘッドユニットがノズル配列方向に位置がずれて配置されている場合に、そのずれの方向が離間方向であっても接近方向であっても、各ドット列の、一部の切り替え位置に対応する部分では濃度が濃くなり、残りの切り替え位置に対応する部分では濃度が薄くなる。つまり、複数のドット列の重複範囲に対応する部分に、濃度の濃い部分と薄い部分とが混在することになるため、それぞれが目立ちにくくなる。
【0017】
また、重複範囲の全域において複数の切り替え位置が分散して存在していると、2つのヘッドユニットの位置がノズル配列方向にずれたときに、各ドット列の、前記重複範囲のノズルで形成される部分の全域において、前記の濃い部分と薄い部分とが混在する。そのため、重複範囲に対応する画像部分全体で濃度が均一化されるが、逆に、重複範囲に対応する画像部分全体が、重複範囲に隣接する非重複範囲に対応する画像部分に対して、バンド状に目立ってしまう。
【0018】
これについて、本発明では、上記(2)のように、切り替え範囲が重複範囲よりも狭いため、濃い部分と薄い部分とが混在する範囲が狭くなる。さらに、上記(3)のように、隣接するドット列の間で切り替え範囲が異なっている。尚、「切り替え範囲」が異なるとは、切り替え範囲の幅もしくは位置が異なっているということを意味する。これにより、濃い部分と薄い部分が混在する範囲が、隣接するドット列の間でずれる。以上より、記録画像の、濃い部分と薄い部分が混在する部分の幅が重複範囲よりも狭くなり、且つ、その輪郭が不規則な形状となる。従って、上記の、濃い部分と薄い部分が混在する部分が、ノズル配列方向のある固定された位置に輪郭を有するバンド状とならず周囲に対して目立ちにくくなる。
【0019】
第2の発明のインクジェットプリンタは、前記第1の発明において、前記制御部は、全ての前記ドット列について、前記切り替え範囲の前記切り替え位置が3カ所以上となるように、前記第1ヘッドユニットと前記第2ヘッドユニットを制御することを特徴とするものである。これにより、重複範囲に対応する画像部分において、局所的に濃度が濃い部分又は局所的に濃度が薄い部分が、一層目立ちにくくなる。
【0020】
第3の発明のインクジェットプリンタは、前記第1又は第2の発明において、前記制御部は、全ての
前記ドット列について、前記
第2方向に隣接するドット列との間で前記切り替え範囲が異なるように、前記第1ヘッドユニットと前記第2ヘッドユニットを制御することを特徴とするものである。重複範囲に対応する画像部分において、局所的に濃度が濃い部分又は局所的に濃度が薄い部分が、一層目立ちにくくなる。
【0021】
第4の発明のインクジェットプリンタは、前記第3の発明において、前記制御部は、全ての
前記ドット列について、前記
第2方向に隣接するドット列との間で前記切り替え範囲内の前記切り替え位置が全て異なるように、前記第1ヘッドユニットと前記第2ヘッドユニットを制御することを特徴とするものである。
【0022】
隣接するノズル列の間で、切り替え範囲が異なっていても、その中の3以上の切り替え位置のうちの一部が一致する場合もある。この点、本発明では、全てのドット列について、隣接するドット列との間で、切り替え位置が全て異なっている。尚、隣接する2つのドット列の間で、切り替え位置が全て異なるとは、2つのドット列についての切り替え範囲が全く重ならないことを意味する。このように、全てのドット列について、隣接するドット列の間で、切り替え位置を全て異ならせることで、重複範囲に対応する画像部分において、局所的に濃度が濃い部分又は局所的に濃度が薄い部分が、一層目立ちにくくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、2つのヘッドユニットのノズル配列方向の位置ズレに起因して、ノズル列の重複範囲に対応する画像部分に生じる局所的な濃度変化による画質低下、あるいは、重複範囲と非重複範囲にそれぞれ対応する画像部分の間の濃度差に起因する画質低下を防止することである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、インクジェットプリンタの概略平面図である。インクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド2と、記録用紙100を所定の搬送方向に搬送する2つの搬送ローラ3,4とを備えている。尚、以下では、
図1の紙面手前側を上方、紙面向こう側を下方、
図1の左右方向をインクジェットプリンタ1の左右方向と定義して、適宜、上下左右の方向語を使用して説明する。
【0026】
インクジェットヘッド2は、用紙幅方向に配列された複数のノズル11,21から、搬送されてくる記録用紙100に対してインクを吐出する。これにより、用紙幅方向にそれぞれ延び、且つ、搬送方向に並ぶ、複数のドット列を記録用紙100に形成し、画像を記録する。即ち、インクジェットヘッド2は、いわゆる、ライン型のインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド2は、第1ヘッドユニット10及び第2ヘッドユニット20と、保持部材
40を備えている。
【0027】
第1ヘッドユニット10は、その下面に形成された複数の第1ノズル11を有する。複数の第1ノズル11は、搬送方向と直交する、記録用紙100の用紙幅方向に沿って所定の間隔で配列されて、1列の第1ノズル列12をなしている。同様に、第2ヘッドユニット20は、その下面に形成された複数の第2ノズル21を有する。複数の第2ノズル21も、前記用紙幅方向に沿って、前記第1ノズルと同じ間隔で配列されて、1列の第2ノズル列22をなしている。尚、本実施形態では、ノズル11,21の配列方向と、記録用紙100の搬送方向とが、直交している場合を例に挙げて説明するが、ノズル配列方向と搬送方向とが90度以外の角度で交差していてもよい。また、以下の、ノズル11,21に関連する説明においては、用紙幅方向と平行な「ノズル配列方向」という表現も使用する。
【0028】
2つのヘッドユニット10,20は、それぞれのノズル11,21が形成された下面が水平面となる姿勢で、保持部材
40によって保持されている。第1ヘッドユニット10と第2ヘッドユニット20は、搬送方向に位置がずれて配置されている。また、第1ヘッドユニット10の第1ノズル列12の右端部と、第2ヘッドユニット20の第2ノズル列22の左端部とが、搬送方向において重なっている。別の言い方をすれば、搬送方向から見て、第1ノズル列12の右端部と第2ノズル列22の左端部とが重なっている。尚、第1ノズル列12及び第2ノズル列22のうちの、第1ノズル列12と第2ノズル列22が部分的に重なっている範囲を、以下では、重複範囲と呼ぶ。また、第1ノズル列12と第2ノズル列22とが重なっていない範囲を、非重複範囲と呼ぶ。
【0029】
重複範囲内においては、第1ヘッドユニット10の第1ノズル11と第2ヘッドユニット20の第2ノズル21の、用紙幅方向、即ち、ノズル配列方向における位置が一致している。ノズル配列方向において位置が一致している2つのノズル11,21は、画像データにおける同じ座標の画素を受け持つ。ノズル配列方向において位置が一致する2つのノズル11,21とは、別の言い方をすれば、記録用紙100の用紙幅方向において同じ座標を有する画素が割り当てられる2つのノズルということもできる。重複範囲内においては、これら2つのノズル11,21の何れか一方からインクが吐出され、各ドット列が形成される。第1ヘッドユニット10と第2ヘッドユニット20とが正規の位置関係にあるときに、ノズル配列方向における位置が一致した2つのノズル11,21は、用紙幅方向における同じ位置にインクを着弾させることができるが、第1ヘッドユニット10と第2ヘッドユニット20とが正規の位置からずれて配置されているときは、2つのノズル11,21から吐出されるインクは、上記のヘッドユニット10,20のずれに応じて用紙幅方向にずれた位置に着弾することになる。尚、
図1では、重複範囲において、第1ノズル列12の3つの第1ノズル11と第2ノズル列22の3つの第2ノズル21とが重なっている状態が示されているが、
図1はあくまでも概略図であって、後で説明する
図3に示すように、実際は、7つの第1ノズル11と7つの第2ノズル21とが互いに重なっている。
【0030】
搬送ローラ3,4は、搬送方向におけるインクジェットヘッド2の両側にそれぞれ配置されている。2つの搬送ローラ3,4は、搬送モータ5(
図2参照)によって同期して回転駆動されることで、記録用紙100を搬送方向に搬送する。
【0031】
図2は、インクジェットプリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
図2に示す制御装置6は、インクジェットプリンタ1の全体制御を司る。制御装置6は、バスによって互いに接続された、CPU(Central Processing Unit)31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)34等を備えている。また、制御装置6には、インクジェットヘッド2の2つ
のヘッドユニット10,20、2つの搬送ローラ3,4を駆動する搬送モータ5等が接続されている。さらに、制御装置6には、外部装置であるPC35が接続される。
【0032】
制御装置6は、ROM32に記憶された各種プログラムに従って、CPU31及びASIC34によって、ヘッドユニット10,20や搬送モータ5等のインクジェットプリンタ1の各駆動部を制御する。一例を挙げると、PC35から記録画像のデータが入力されると、制御装置6は、この画像データに基づいて2つのヘッドユニット10,20と搬送モータ5を制御し、搬送ローラ3,4によって搬送される記録用紙100に対して2つのヘッドユニット10,20からそれぞれインクを吐出させる。これにより、記録用紙100に所望の画像を記録する。尚、上の説明では、制御装置6がCPU及びASICの協働によって印刷等の処理を行うとしたが、制御装置6が複数のCPUを備え、複数のCPUによって処理を分担して行ってもよい。また、制御装置6が複数のASICを備え、複数のASICによって処理を分担してもよい。あるいは、1つのASIC単独で処理を行ってもよい。
【0033】
次に、PC35から記録画像のデータが入力されて、インクジェットヘッド2により記録用紙100に画像を記録する際に、制御装置6により実行される、2つのヘッドユニット10,20のインク吐出制御について説明する。
図3は、2つのヘッドユニットの重複範囲におけるインク吐出制御を説明する図である。
図3の上側に、一部が重複する2つのノズル列12,22を示し、下側に、これら2つのノズル列12,22によって記録用紙100に形成される複数のドット列を示す。
図3では、8つのドット列が示されている。説明の便宜上、8つのドット列の各々には、搬送方向上流側から順に列番号が付されている。
【0034】
先にも述べたが、
図3に示すように、2つのヘッドユニット10,20は、記録用紙100の用紙幅方向に延びるノズル列12,22をそれぞれ有する。第1ノズル列12の右端部と第2ノズル列22の左端部は、用紙幅方向において重なっている。これ
らノズル列12,22の重複範囲には、各ノズル列12,22の7つ
のノズル11,21が配置されている。また、第1ノズル列12の7つの第1ノズル11と、第2ノズル列22の7つの第2ノズル21とは、ノズル配列方向における位置が互いに一致している。また、重複範囲の左右両側には、第1ノズルのみからなる非重複範囲と、第2ノズルのみからなる非重複範囲が位置している。
【0035】
制御装置6は、搬送方向に搬送される記録用紙100に対して、2つのヘッドユニット10,20の複数のノズル11,21からそれぞれインクを吐出させることにより、記録用紙100に、搬送方向に並ぶ複数のドット列からなる画像を形成させる。尚、
図3では、記録用紙100に、複数のドットがノズル配列方向及び搬送方向にそれぞれ等間隔で配列された、いわゆるベタの画像を形成する例が示されている。しかし、実際にPC35から送られる記録画像のデータによっては、
図3に示される複数のドットのうち一部のドットが形成されない場合や、あるいは、ドット列単位で形成されない場合も当然あり得る。
【0036】
制御装置6は、左側の非重複範囲の複数の第1ノズル11からそれぞれインクを吐出させて、記録用紙100の領域X1に複数のドットD1を形成させる。同様に、右側の非重複範囲の複数の第2ノズル21からそれぞれインクを吐出させて、記録用紙100の領域X2に複数のドットD2を形成させる。
【0037】
ノズル列12,22が重なる重複範囲においては、ノズル配列方向における位置が一致する第1ノズル11と第2ノズル21とが存在している。制御装置6は、この重複範囲においては第1ノズル11と第2ノズル21を使い分ける。つまり、重複範囲内のノズルによって、記録用紙100の領域X1と領域X2との間の領域Yに、用紙幅方向に並ぶ7つのドットDを形成することになるが、それら7つのドットDをそれぞれ形成するノズルを、第1ノズル11と第2ノズル21との間で切り替える。
【0038】
尚、
図3において、説明の便宜上、ノズル列12,22を構成する複数のノズル11,21のうちの、重複範囲にある7つのノズルについては、左から順に(a)、(b)、(c)・・・の記号が付してある。また、これに対応して、以下の説明では、前記記号に対応するノズル11,21について、適宜、a、b、c等の記号を付ける。同じ記号が付された第1ノズル11と第2ノズル21は、ノズル配列方向の位置が一致している。a、b、c等の同じ記号が付された第1ノズル11と第2ノズル21は、同じ座標の画素が割り当てられた2つのノズルである。各ドット列を形成する際には、これら2つのノズル11,21のうちの何れか一方のノズルからインクが吐出される。重複範囲内の左側から4番目に位置する第1ノズル11と第2ノズル21であれば、「第1ノズル11d」、「第2ノズル21d」のように記載する。また、重複範囲内のノズルと区別するため、非重複範囲の第1ノズル11及び第2ノズル21を、「第1ノズル11s」及び「第2ノズル21s」とも記載する場合がある。
【0039】
重複範囲における第1ノズル11と第2ノズル21の切り替えについて、詳細に説明する。
図4は、
図3における、2つのノズル列と、これら2列のノズル列によって形成されるドット列の対応関係を説明する図である。
図4では、
図3の8つのドット列のうち、第1ドット列、第2ドット列、及び、第3ドット列について示している。また、
図4では、複数の第1ノズル11及び複数の第2ノズル21のうちの、各ドット列を形成する際にどのノズルからインクを吐出するのかがわかりやすくなるように、インクを吐出するノズルにはハッチングを施してある。
【0040】
図4を参照して、複数のドット列の各々を形成する際の、第1ノズル11と第2ノズル21の切り替えについて説明する。尚、以下に説明する、重複範囲における第1ノズル11と第2ノズル21の切り替えは、ドット列毎に行う。つまり、隣接するドット列の間で、第1ノズル11と第2ノズル21の切り替え方が異なるということである。
【0041】
まず、各ドット列に対して、第1ノズル11と第2ノズル21を切り替える切り替え範囲を設定する。切り替え範囲は、以下に説明する切り替え位置が存在する範囲である。本実施形態では、切り替え範囲内には、3つの切り替え位置P1,P2,P3が設定される。
図4に太線で示すように、切り替え位置P1,P2,P3は、ノズル配列方向に隣接する複数のノズル間の何れかの位置に設定される。各切り替え位置P1,P2,P3を境にして、ノズル配列方向の一方側では第1ノズル11からインクを吐出させ、ノズル配列方向の他方側では第2ノズル21からインクを吐出させる。尚、
図3、
図4に示されるドット列についても、3つの切り替え位置P1,P2,P3との対応がわかりやすくなるように、第1ノズル11で形成されたドットD1と第2ノズル21で形成されたドットD2との間に、太線を入れてある。
【0042】
図4に示される切り替え範囲は、次のように定義することができる。切り替え範囲は、最も左側に位置する切り替え位置P1のさらに左側に位置する第1ノズル11から、最も右端に位置する切り替え位置P3のさらに右側に位置する第2ノズル21までの範囲である。
【0043】
また、切り替え範囲を、以下のように、別の表現で定義することもできる。切り替え範囲の左側(第1ヘッドユニット10側)の端に位置するノズルとは、インクを吐出してドットD2を形成する第2ノズル21のうちの最も左側に位置する第2ノズル21より、さらに左側に位置する第1ノズル11である。
図4の第1ドット列の例で言えば、インクを吐出する第2ノズル21のうちの、最も左に位置するノズルは第2ノズル21aである。この第2ノズル21のさらに左側に位置する、非重複範囲の第1ノズル11sが、切り替え範囲の左端のノズルに該当する。また、第2ドット列の例では第1ノズル11dが、第3ドット列の例では第1ノズル11aが、それぞれ、切り替え範囲の左端のノズルに該当する。
【0044】
また、切り替え範囲の右側(第2ヘッドユニット20側)の端に位置するノズルとは、インクを吐出してドットD1を形成する第1ノズル11のうちの最も右側に位置する第1ノズル11より、さらに右側に位置する第2ノズル21である。
図4の第1ドット列の例で言えば、インクを吐出する第1ノズル11のうちの、最も右に位置するノズルは第1ノズル11bである。この第1ノズル11bのさらに右側に位置する第2ノズル21cが、切り替え範囲の右端のノズルに該当する。また、第2ドット列の例では第2ノズル21gが、第3ドット列の例では第2ノズル21eが、それぞれ、切り替え範囲の右端のノズルに該当する。
【0045】
また、上記の切り替え範囲は、重複範囲よりも狭い範囲となっている。このことは、切り替え範囲内のノズルによって記録用紙100に形成されるドットDの数が、重複範囲内のノズルによって形成されるドットDの数よりも少ない、と言い換えることもできる。本実施形態では、重複範囲のノズル数が7つであるのに対して、第1ドット列を形成する際の切り替え範囲内のノズル数は4つ、第2ドット列では切り替え範囲内のノズル数が4つ、第3ドット列では切り替え範囲内のノズル数が5つとなっている。
【0046】
さらに、搬送方向に隣接する2つのドット列の間で切り替え範囲が異なっている。尚、切り替え範囲が異なるとは、切り替え範囲の幅もしくは位置が異なっていることを意味する。例えば、第1ドット列を形成する際の切り替え範囲は、非重複範囲の第1ノズル11sから重複範囲内の第2ノズル21cまでの範囲である。これに対して、第2ドット列では、重複範囲の第1ノズル11dから第2ノズル21gとなっている。また、第3ドット列では、重複範囲の第1ノズル11aから第2ノズル21eとなっている。
【0047】
以上、本実施形態における、ノズル配列方向における第1ノズル11と第2ノズル21の切り替えについて整理すると、以下のようになる。
(1)各ドット列を形成する際の、切り替え範囲内の切り替え位置が3カ所ある。
(2)切り替え範囲が重複範囲よりも狭い。
(3)隣接する2つのドット列の間で、切り替え範囲が異なる。
以下、(1)〜(3)の要件を満たす本実施形態と、これらの要件を満たさない比較形態1,2と比較することにより、(1)〜(3)の意義について説明する。
【0048】
図5は、本実施形態において形成される複数のドット列を示す図である。
図6は、比較形態1において形成される複数のドット列を示す図である。
図7は、比較形態2において形成される複数のドット列を示す図である。
図5〜
図7のそれぞれにおいて、(a)は2つのヘッドユニット10,20の位置ズレがない場合のドット列、(b)は2つのヘッドユニット10,20の位置ズレがある場合のドット列をそれぞれ示す。
【0049】
(要件(1)について)
上記要件(1)については、本実施形態を比較形態1と比較する。
図6(a)に示すように、比較形態1では、どのドット列を形成する場合でも、第1ノズル11と第2ノズル21の切り替え位置が1カ所のみとなっている。この比較形態1において、実線で示す正規の位置関係に対して、第2ヘッドユニット20の位置が、二点鎖線で示すように、第1ヘッドユニット10に対して右側、つまり、第1ヘッドユニット10から離れる方向に相対的にdだけずれている場合を考える。このとき、
図6(b)に示すように、切り替え位置を挟む第1ノズル11と第2ノズル21によって形成される、2つのドットD1,D2が離れるため、各ドット列の、切り替え位置に対応する部分30の濃度が全て薄くなる。逆に、第2ヘッドユニット20の位置が、第1ヘッドユニット10に対して左側、つまり、第1ヘッドユニット10から離れる方向に相対的にずれている場合には、各ドット列の、切り替え位置に対応する部分30の濃度が全て濃くなる。このように、記録用紙100に形成された画像の、領域Yの画像部分に、局所的に濃度が薄い部分又は濃い部分のみが現れるため、かなり目立ってしまう。
【0050】
これに対して、
図5(a)に示すように、本実施形態では、各ドット列を形成する際の、第1ノズル11と第2ノズル21の切り替え位置が3カ所という、要件(1)を具備している。この場合に、第2ヘッドユニット20の位置が、二点鎖線で示すように、第1ヘッドユニット10に対して右側にdだけ相対的にずれた場合を考える。このとき、
図5(b)に示すように、各ドット列の、一部の切り替え位置に対応する部分は濃度が濃い部分となり、残りの切り替え位置に対応する部分は濃度が薄い部分となる。より具体的には、切り替え位置を挟んで、第1ノズル11が左側、第2ノズル21が右側となる部分、即ち、
図4の切り替え位置P1,P3に対応する部分31,33では、2つのドットD1,D2が離れるために濃度が薄くなる。一方、切り替え位置を挟んで、第1ノズル11が右側、第2ノズル21が左側となる部分、即ち、
図4の切り替え位置P2に対応する部分32では、2つのドットD1,D2が近づいて一部重なるために濃度が濃くなる。
【0051】
また、第2ヘッドユニット20の位置が、第1ヘッドユニット10に対して左側に相対的にずれた場合は、前記と逆になる。即ち、
図4の切り替え位置P1,P3に対応する部分31,33では、2つのドットD1,D2が近づいて一部重なるために濃度が濃くなり、
図4の切り替え位置P2に対応する部分32では、2つのドットD1,D2が離れるために薄くなる。このように、2つのヘッドユニット10,20の位置がノズル配列方向にずれたときに、本実施形態では、領域Yに、濃い部分と薄い部分とが混在することになるため、個々の濃い部分あるいは薄い部分が目立ちにくくなる。
【0052】
(要件(2)、(3)について)
要件(2)、(3)については、本実施形態を比較形態2と比較する。
図7(a)に示すように、比較形態
2では、どのドット列に対しても、重複範囲の全域で第1ノズル11と第2ノズル21とが切り替えられている。つまり、重複範囲の全域において複数の切り替え位置が分散して存在している。また、本実施形態でいう切り替え範囲が重複範囲よりも広くなっているとも言える。
【0053】
このように、重複範囲全域で複数の切り替え位置が分散して存在していると、2つのヘッドユニット10,20の相対位置がノズル配列方向にずれたときには、各ドット列の、重複範囲に対応する領域Yの全域において、前記の濃い部分と薄い部分とが混在することになる。これにより、記録用紙100に記録される画像の、領域Yの画像部分全体で濃度が均一化される。しかし、逆に、領域Yの画像部分全体が、その両側の、非重複範囲に対応する領域X1,X2の画像部分に対して、濃度の異なるバンド状に目立ってしまう。
【0054】
これに対して、本実施形態は、切り替え範囲が重複範囲よりも狭いという、要件(2)を具備している。従って、2つのヘッドユニット10,20の相対位置がノズル配列方向にずれたときに、濃い部分と薄い部分とが混在する範囲が狭くなる。また、本実施形態は、隣接するドット列の間で切り替え範囲が異なっているという、要件(3)を具備している。つまり、前記の濃い部分と薄い部分とが混在する範囲が、隣接するドット列の間でずれている。以上より、記録画像の、濃い部分と薄い部分が混在する部分の幅が重複範囲よりも狭くなり、且つ、その輪郭が不規則な形状となる。従って、上記の濃い部分と薄い部分とが混在する部分がバンド状とならず、左右両側の画像部分に対して目立ちにくくなる。
【0055】
また、本実施形態では、全てのドット列について、上記要件(1)〜(3)を全て満足するように切り替え範囲が設定される。そのため、重複範囲に対応する、領域Yの画像部分における、局所的に濃度が濃い部分又は局所的に濃度が薄い部分が、一層目立ちにくくなる。
【0056】
図8は、記録用紙に記録される、複数のドット列からなるパターンを模式的に示す図である。尚、
図8(a)は2つのヘッドユニットのノズル列が重なっていない、つまり、重複範囲のないインクジェットヘッドで形成したパターンを示す。一方、
図8(b)は、本実施形態のインクジェットヘッドで形成したパターンを示す。
【0057】
図8において、横方向が用紙幅方向(ノズル配列方向)であり、縦方向が搬送方向である。横方向の解像度は300dpi、縦方向の解像度は600dpiである。また、
図8では、1つのノズルから吐出する液滴量を3種類の中で変えており、これにより、記録用紙100に、大、中、小の、サイズの異なる3種類のドットからなるパターンを形成している。尚、
図8のパターンの上側に記載の、「−42.3μm」、「0μm」、「+42.3μm」は、それぞれ、2つのヘッドユニット10,20のノズル配列方向における位置ズレ量を示す。つまり、左側のパターンは、2つのヘッドユニット10,20の相対位置が両者の離間する方向に42.3μmずれた状態を示す。また、中央のパターンは2つのヘッドユニット10,20に位置ズレがない状態を示す。また、右側のパターンは、2つのヘッドユニット10,20の相対位置が両者の接近する方向に42.3μmずれた状態を示す。
【0058】
図8(a)に示すように、重複範囲のないインクジェットヘッドでは、2つのヘッドユニット10,20の相対位置が離間方向にずれると、パターンに白スジが発生する。また、2つのヘッドユニット10,20の相対位置が接近方向にずれると、パターンに黒スジが発生する。これに対して、
図8(b)に示すように、本実施形態のインクジェットヘッドでは、2つのヘッドユニット10,20の相対位置がずれても、白スジや黒スジが視認されにくいことがわかる。
【0059】
次に、前記実施形態の変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0060】
(変更形態1)
図3、
図4に示す前記実施形態では、全てのドット列について、切り替え範囲の切り替え位置が3カ所となっていた。これに対して、一部のドット列については切り替え範囲の切り替え位置が3カ所であるが、残りのドット列については、切り替え位置が1カ所であってもよい。
図9、
図10に示す例では、偶数番目のドット列、即ち、第2ドット列、第4ドット列、第6ドット列、及び、第8ドット列を形成する際には、切り替え範囲の切り替え位置が3カ所となっている。一方、奇数番目のドット列、即ち、第1ドット列、第3ドット列、第5ドット列、及び、第7ドット列を形成する際には、切り替え範囲の切り替え位置が1カ所しかない。尚、ノズルの切り替えに起因する濃度変化を目立たなくさせるには、やはり、多くのノズル列について、切り替え位置が3カ所であることが好ましい。具体的には、全てのノズル列のうちの、半数以上のノズル列について、切り替え位置が3カ所であることが好ましい。
【0061】
(変更形態2)
前記実施形態では、全てのドット列について、隣接するドット列との間で、第1ノズル11と第2ノズル21を切り替える切り替え範囲を異ならせていた。これに対して、一部のドット列については、これに隣接するドット列と、切り替え範囲が一致していてもよい。例えば、
図11の例では、第4ドット列と第5ドット列とで、切り替え範囲が一致している。
【0062】
(変更形態3)
前記実施形態では、隣接するドット列の間で切り替え範囲は異なっているものの、切り替え範囲内の3つの切り替え位置のうちの一部において一致している箇所がある。例えば、
図4において、第2ドット列を形成する際の、切り替え範囲内の左端の切り替え位置P1と、第3ドット列を形成する際の、切り替え範囲内の右端の切り替え位置P3とが、一致している。これに対して、
図12に示すように、全てのドット列について、隣接するドット列の間で、切り替え位置が全て異なっていてもよい。尚、隣接する2つのドット列の間で、切り替え位置が全て異なるとは、2つのドット列についての切り替え範囲が重ならないことを意味する。このように、全てのドット列について、隣接するドット列の間で、切り替え位置を全て異ならせることで、局所的に濃度が濃い部分又は局所的に濃度が薄い部分が、一層目立ちにくくなる。
【0063】
(変更形態4)
前記実施形態では、切り替え範囲内に3つの切り替え位置が設定されていたが、切り替え位置が5カ所以上であってもよい。尚、重複範囲の左側には第1ノズル11のみの非重複範囲が位置し、重複範囲の右側には第2ノズル21のみの非重複範囲が位置していることから、重複範囲での第1ノズル11と第2ノズル21の切り替え回数は、必ず奇数回となる。つまり、切り替え位置の数は常に奇数個となり、偶数個になることはあり得ない。
【0064】
(変更形態5)
前記実施形態では、重複範囲のノズルの数が7つであったが、重複範囲のノズルの数は適宜変更できる。例えば、
図13には、重複範囲のノズルが5つで、且つ、各ドット列を形成する際の切り替え位置を3カ所とした例が示されている。尚、重複範囲よりも狭い切り替え範囲内に、3つの切り替え位置を存在させるには、切り替え範囲内にノズルが少なくとも4つ配置されている必要がある。このことから、重複範囲のノズルの数は、5つ以上にする必要がある。
【0065】
(変更形態6)
前記実施形態のインクジェットヘッド2は、ライン型のインクジェットヘッドであった。これに対して、搬送方向に沿って配列された複数のノズルを有し、搬送方向と交差する走査方向に移動しながら記録用紙に向けてインクを吐出する、いわゆる、シリアル型のインクジェットヘッドであってもよい。
【0066】
(変更形態7)
ヘッドユニットの数は2つには限られず、3以上の複数のヘッドユニットがノズル配列方向に沿って千鳥状に配置されていてもよい。
【実施例】
【0067】
本発明の具体的な実施例について、比較例と比較して説明する。まず、2つの実施例(実施例1、実施例2)と比較例の記録条件について説明する。
【0068】
[記録条件]
(1)共通条件(実施例1,2及び比較例で共通)
(環境温度)25℃
(解像度)用紙幅方向300dpi、搬送方向600dpi
(ノズルから吐出するインクの液滴量)5pl、14pl、35pl
(重複範囲のノズル数)7つ
(記録するパターンの種類)
・
図14に示す36種類のパターン+縦罫線パターン+横罫線パターンの、合計38種類のパターンを、上記の3種類の液滴量の中で変えて、114通りのパターンを形成。
・114通りのパターンのそれぞれについて、2つのヘッドユニットの位置ズレなし(位置ズレ0μm)、離間方向の位置ズレ(−40μm)、接近方向の位置ズレ(+40μm)の3通りでパターンを記録。合計342個のパターンを形成。
【0069】
(2)個別条件
a)実施例1
実施例1は、
図3〜
図5の実施形態に対応した実施例である。
・全てのドット列について、切り替え範囲内の切り替え位置が3カ所。
・全てのドット列について、切り替え範囲が重複範囲よりも狭い。
・全てのドット列について、隣接するドット列の間で、切り替え範囲が異なっている。
b)実施例2
実施例2は、
図9の変更形態1に対応した実施例である。
・一部のドット列について、切り替え範囲内の切り替え位置が3カ所。その他のドット列については、切り替え位置が1カ所。
・全てのドット列について、切り替え範囲が重複範囲よりも狭い。
・全てのドット列について、隣接するドット列との間で、切り替え範囲が異なっている。
c)比較例
比較例は、
図6の比較形態1に対応した例である。
・全てのドット列について、切り替え範囲内の切り替え位置が1カ所。
・全てのドット列について、切り替え範囲が重複範囲よりも狭い。
・全てのドット列について、隣接するドット列との間で、切り替え範囲が異なっている。
【0070】
[判定方法]
実施例1、実施例2、及び、比較例のそれぞれについて、上述した342個のパターンを形成した。これら342個のパターンのそれぞれについて目視で検査を行い、官能評価で良否を4段階で判定した。判定基準は以下の通りである。
◎:非常にきれいでつなぎ目の位置がわからない。
○:つなぎ目の位置はわかるが、きれいであり許容範囲。
△:許容できるかどうかの判断が難しい。
×:許容できない。
【0071】
[判定結果]
図15に判定結果を示す。実施例1では、◎の判定数がパターン総数のうちの約80%、◎と○を合わせると約98%となる。一方で、×の判定数は0である。実施例1では、つなぎ目の印字品質が非常に高いことがわかる。一方、比較例では、◎の判定数がパターン総数の70%未満にとどまっている。また、×の判定数が4である。このように、比較例ではパターンによってはつなぎ目の印字品質が悪くなる場合があることがわかる。また、実施例2は、実施例1よりは印字品質が悪いものの、比較例と比べると高い印字品質が得られている。