(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記太陽電池用防水シートと接する層の構成材料が、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体であることを特徴とする請求項3または4に記載の防水シート付き太陽電池層。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の太陽電池用防水シート、防水シート付き太陽電池層および防水構造体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
《防水シート付き太陽電池層および防水構造体》
まず、本発明の太陽電池用防水シートの説明に先立ち、防水シート付き太陽電池層および防水構造体について説明する。
【0014】
図1は、本発明の防水構造体の実施形態を示す斜視図、
図2は、
図1に示す防水構造体の平面図、
図3は、
図1中のA−A線での断面図、
図4は、
図1中のB−B線での断面図、
図5は、
図1に示す防水構造体の太陽電池層を示す断面図である。
なお、以下では、
図1〜
図4中に矢印で「上」、「下」、「右」、「左」、「前」、「後」の方向を示し、また、
図5中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。また、
図4では、アルミニウムテープ113の図示が省略されている。
【0015】
各図に示す屋根防水構造体(防水構造体)1は、屋根や屋上などの躯体10の上面に敷設される(設けられる)。この屋根防水構造体1は、躯体10の上面に所定の間隙111を介して敷設される複数の断熱材(断熱層)110と、各断熱材110の上面に敷設される不燃性繊維を含有する複数の不燃絶縁層(絶縁層)120と、各不燃絶縁層120の上面に敷設される複数の防水層130と、各不燃絶縁層120および各防水層130の上面に敷設され、複数の電子部品セルである太陽電池セル141が内蔵されている複数の電子部品層である複数の防水シート付き太陽電池層140とを有している。また、防水シート付き太陽電池層140の各太陽電池セル141は、断熱材110と断熱材110との間の間隙111において配線される。また、断熱材110と不燃絶縁層120とにより、断熱性および絶縁性を有する下地層が構成される。なお、以下では、複数設けられた部材(層)については、代表してその1つを説明する。
【0016】
躯体10の形態としては、特に限定されず、例えば、表面が前後方向で凹凸の金属屋根である下地デッキプレート、フラットデッキプレート、瓦棒、RC(reinforced concrete)、ALC(autoclaved light weight concrete)などが挙げられる。
各断熱材110は、前後方向に細長く上下方向に扁平で左右方向に一定幅の平板状の部材であり、各断熱材110が左右方向に所定の間隙111を介して躯体10の上面に敷設されている。その断熱材110表面には、本実施形態では、図示しない表面材が貼着されている。この表面材としては、例えば、アルミニウム箔、紙、ポリエチレン系樹脂フィルム、エチレン酢酸ビニル系樹脂フィルムなどが挙げられる。また、間隙111の内面には、本実施形態では、金属層としてアルミニウムテープ112が被覆されている。
【0017】
断熱材110の厚さは、特に限定されず、例えば、20mm以上100mm以下とされる。また、断熱材110の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム、フェノールフォームなど、合成樹脂の発泡成形体などが挙げられる。
なお、断熱材110の上面には目地テープ114が貼着されている。目地テープ114は、飛び火による延焼を抑制する観点から不燃性のアルミニウムを基材としたアルミニウムテープであるのが好ましい。また、断熱材110の下層には要所に図示しない補助鋼板が配置されており、これが図示しないビスで躯体10に固定されている。
【0018】
各不燃絶縁層120と各防水層130と各防水シート付き太陽電池層140とは、各々がシート状をなしており、断熱材110の上面に順番に敷設されている。
図1、
図3および
図4に示すように、各不燃絶縁層120は、各断熱材110の上面に敷設されている。この場合、不燃絶縁層120は、その平面視での形状が断熱材110と同一であり、すなわち、前後方向に細長い矩形状をなしており、断熱材110の間隙111の上面開口には配置されていない。なお、各断熱材110の間隙111の上面開口は、金属層であるアルミニウムテープ113で封止されている。
【0019】
不燃絶縁層120は、本実施形態では、不燃性繊維を含有する樹脂シートからなり、不燃性繊維がシート状の不織布として形成されている。より具体的には、不燃絶縁層120は、不燃性繊維の不織布を芯材として、その両面または片面に樹脂シートを貼り合わせた構成となっている。なお、不燃性繊維は、不織布に限らず、織布でもよいことは、言うまでもない。
この不燃絶縁層120の不燃性繊維としては、特に限定されないが、ガラス繊維が好ましい。また、樹脂シートは、としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン系樹脂などが挙げられる。また、ガラス繊維(不燃性繊維)の含有量は、特に限定されないが、例えば、質量70g/m
2以上が樹脂シートに含有されていることが好ましい。
【0020】
ガラス繊維が樹脂シートに質量70g/m
2以上含有されていることにより、飛び火による火種を、不燃絶縁層120で効果的に阻止し、屋根面への燃え抜けを防止することができる。
なお、不燃性繊維としては、施工性、経済性等を考慮すれば、ガラス繊維が好ましいが、ガラス繊維には限定されず、この他、例えば、金属繊維、セラミック繊維なども用いることができる。
【0021】
また、樹脂シートの構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどが挙げられる。これらのうち、特に、ポリエチレンを用いるのが好ましい。これにより、施工時の強度を維持することができる。
また、不燃絶縁層120では、不燃性繊維と樹脂シートとの接着性を向上させるために、不燃性繊維と樹脂シートとの層間には、接着層として、LDPE(低密度ポリエチレン)で構成された樹脂層を介在させることが好ましい。
【0022】
また、上記の樹脂シートは、断熱性を考慮して、ポリエチレン製の不織布とすることもできる。ポリエチレン製の不織布を用いることにより、縦横方向の伸びが抑えられ、不燃性繊維の伸びや破損を防ぐこともできる。なお、ポリエチレン製の不織布は、延伸してテープ状に成形したポリエチレンフィルムを2軸(縦横)または3軸(縦・両斜め)の格子状に配置して、その交点を接着したシートを芯材として、両面にポリエチレンフィルムをラミネートして得ることができる。
また、不燃絶縁層120のその他の形態としては、不燃性繊維を短繊維(チョップドストランド)として、それを樹脂に含有させ、押出成形やカレンダー成形によりシート状に成形加工した樹脂シートが挙げられる。この場合、繊維の直径は、特に限定されないが、6〜24μmであることが好ましい。
【0023】
図3および
図4に示すように、各不燃絶縁層120は、固定具151と、固定具151と形状の異なる固定具152とが不燃絶縁層120を押さえ止める態様で、頭部(係合部)151aを有する複数のビス(棒状部材)150によって複数の固定具151、152を躯体10に固定することで、その躯体10に固定されている。すなわち、不燃絶縁層120は、全面ではなく、その一部において、固定具151、152およびビス150により、躯体10に固定されている。
なお、ビス150は、不燃絶縁層120を貫通して躯体10に挿入され、その頭部151aが固定具151、152に係合することで躯体10に不燃絶縁層120を固定する。また、固定具151、152とビス150とにより、固定手段が構成される。
【0024】
ここで、
図1および
図2に示すように、本実施形態では、固定具151として、例えば、円盤状の固定具である円盤固定金具等を用いる。そして、複数の固定具151は、各防水シート付き太陽電池層140の隣り合う2つの防水シート付き太陽電池層140の間の間隙に設けられている。
また、本実施形態では、固定具152として、長手形状をなし、例えば、長方形の平板状の固定具である平板固定金具等を用いる。そして、固定具152は、複数の防水シート付き太陽電池層140に跨るように設けられている。
【0025】
また、各防水層130は、細長いシート状(帯状)をなしている。すなわち、各防水層130は、各防水シート付き太陽電池層140の隣り合う2つの防水シート付き太陽電池層140の間に位置するように、帯状に敷設されている。具体的には、防水層130は、例えば、前後方向に細長く、左右方向に複数配列した下層と、左右方向に細長く、前後方向に複数配列した上層とがクロスした2層構造に形成されている。ここで、防水層130の構成材料としては、特に限定されないが、PVC(ポリ塩化ビニル)が好ましい。防水層130をPVCで構成することにより、その自己消火性により、飛び火による延焼を効果的に抑制することができる。
【0026】
この防水層130は、固定具151、152の上面および固定具151、152の周辺の不燃絶縁層120の上面に敷設されており、固定具151、152に固着されている。すなわち、防水層130は、固定具151、152と、固定具151、152の周辺の不燃絶縁層120とを覆っており、固定具151、152の周辺以外の不燃絶縁層120は、覆っていない。
なお、防水層130の端縁同士は、例えば、溶剤、熱、接着剤等で溶着、融着、または接着されており、防水性が保持されている。
【0027】
各防水シート付き太陽電池層140は、全体として前後方向に細長い長方形のシート状(帯状)をなしており、行列状に配置された前後方向に細長い長方形の複数の太陽電池セル141を有している。この複数の太陽電池セル141の数および配置は、特に限定されないが、例えば、左右方向に2列、前後方向に4列などが挙げられる。
図5に示すように、この防水シート付き太陽電池層140は、防水シート(太陽電池用防水シート)147と、積層構造の接着層142と、裏面保護層143と、下面封止材144と、フィルム状の太陽電池セル141と、上面封止材145と、表面保護層146とが、防水層130側からこの順序で積層された積層構造を有している。防水シート147の端縁同士は、例えば、溶剤、熱、接着剤等で溶着、融着、または接着されており、防水性が保持されている。
【0028】
防水シート147の構成材料については、後に詳述する。
また、接着層142の構成材料としては、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を用いるのが好ましい。エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体は、防水シート147と良好に接着することができる。
なお、接着層142を含まない積層構造であってもよい。
【0029】
また、裏面保護層143構成材料としては、特に限定されず、例えば、フッ素系樹脂などが挙げられる。この裏面保護層143は、フィルム状をなしており、両面にコロナ処理を施している。
なお、裏面保護層143を含まない積層構造であってもよい。
また、下面封止材144の構成材料としては、エチレン共重合体を用いるのが好ましい。エチレン共重合体は、太陽電池セルを保護し、発電性能を長期間維持することができる。この下面封止材144は、太陽電池セル141下面を封止するものであり、フィルム状をなしている。
【0030】
また、太陽電池セル141としては、特に限定されず、例えば、フィルム状のアモルファスシリコン系、有機系、化合物系の太陽電池セルなどが挙げられる。
上面封止材145の構成材料としては、エチレン共重合体を用いるのが好ましい。エチレン共重合体は、太陽電池セルを保護し、発電性能を長期間維持することができる。この上面封止材145は、太陽電池セル141の上面を封止するものであり、フィルム状をなしている。
また、表面保護層146の構成材料としては、特に限定されず、例えば、フッ素系樹脂などが挙げられる。この表面保護層146は、フィルム状をなしており、上面封止材145と接する面にコロナ処理を施している。
【0031】
また、防水シート付き太陽電池層140の寸法は、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるが、上面封止材145の厚さは、0.3mm以下であることが好ましく、総厚が0.7mm以下であることが好ましく、そして、特に、上面封止材145の厚さが0.3mmで下面封止材144の厚さが0.4mmであることが好ましい。
このような各防水シート付き太陽電池層140は、左右方向および前後方向にそれぞれ間隔を隔て並設されている。そして、防水シート付き太陽電池層140は、平面視で、固定具151、152と重ならないように、不燃絶縁層120の上面および固定具151、152の周辺の防水層130の上面に敷設されており、その端部が防水層130に固着されている。この場合、防水シート付き太陽電池層140の外周部全体が防水層130に固着されている。防水シート付き太陽電池層140の防水層130への固着方法は、特に限定されず、例えば、溶着等が挙げられる。
【0032】
なお、防水シート付き太陽電池層140は、その端部のみが防水層130を介して固定具151、152に固定されているので、全面が固定されている場合に比べて、強風などによる防水シート付き太陽電池層140の太陽電池セル141の破損や損傷を防止または抑制することができる。
また、防水シート付き太陽電池層140では、太陽電池セル141に電気的に接続されている出力端子ユニット161がその下面に設置されており、この出力端子ユニット161が図示しないコネクタなどを介してケーブル163に電気的に接続されている(配線されている)。このような出力端子ユニット161、コネクタ、ケーブル163などは、断熱材110の間隙111に配置されている。
【0033】
なお、防水シート付き太陽電池層140の形態は、前述したものには限定されない。防水シート付き太陽電池層140の別の形態としては、防水シート147と、下面封止材144と、フィルム状の太陽電池セル141と、上面封止材145と、表面保護層146とが、防水層130側からこの順序で積層された積層構造などが挙げられる。下面封止材144および上面封止材145の構成材料としては、例えば、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体などを用いることができる。また、防水シート付き太陽電池層140の寸法は、特に限定されず、諸条件に応じて適宜設定されるが、上面封止材145および下面封止材144の厚さは、それぞれ、0.6mm以下であることが好ましく、0.3mmであることがより好ましい。
【0034】
上述した本実施形態の屋根防水構造体1では、最上層の防水シート付き太陽電池層140の各太陽電池セル141が太陽光を受光して発電する。そして、発電された電力は、各断熱材110の間隙111に挿通されている出力端子ユニット161、コネクタ、ケーブル163などを介して外部に出力される。
ここで、防水シート付き太陽電池層140が故障した場合は、その防水シート付き太陽電池層140を交換する。この防水シート付き太陽電池層140の故障は、例えば、目視で確認することができ、また、定期点検などにおいて、防水シート付き太陽電池層140の太陽電池セル141の出力を測定することなどで検出することができる。
なお、防水シート付き太陽電池層140全体のうち、故障している防水シート付き太陽電池層140のみを交換する。また、防水層130については、防水層130が劣化していない場合や、防水層130の劣化の程度が比較的少ない場合は、交換しなくてよい。
【0035】
《太陽電池用防水シート》
次に、本発明の太陽電池用防水シート(太陽電池用防水シート147)について詳細に説明する。
本発明の太陽電池用防水シートは、JIS K6721に準拠して測定される重合度が300以上1300以下のポリ塩化ビニルを含み、液状の可塑剤の含有量が2重量%以下である点に特徴を有している。
ところで、従来の太陽電池用防水シートでは、その構成材料に液状の可塑剤(液状可塑剤)が含まれており、この液状可塑剤が太陽電池セルへ移行してしまい、太陽電池の発電能力を低下させてしまうといった問題があった。液状の可塑剤を添加しないことも考えられるが、防水シートの柔軟性が低下してしまうといった問題があった。
【0036】
これに対して、本発明の太陽電池用防水シートでは、JIS K6721に準拠して測定される重合度が300以上1300以下のポリ塩化ビニルを用いることにより、加工性を良好なものとしつつ、実質的に液状の可塑剤を含まない(液状の可塑剤の含有量が2重量%以下とする)ことで、液状可塑剤の移行による太陽電池セルの発電能力の低下を防止することができる。また、防水性を優れたものとすることができる。
また、本発明において、液状の可塑剤の含有量が2重量%以下である。これにより、太陽電池セルの発電能力の低下を防止することができる。
【0037】
本発明において、ポリ塩化ビニルの重合度は300以上1300以下であるが、重合度は、500以上1100以下であるのがより好ましい。これにより、加工性をさらに向上させることができる。重合度が前記上限値を超えると、十分な加工性を得ることができない。一方、重合度が前記下限値未満であると、太陽電池用防水シートの機械特性(特に、機械強度)が低下する。
太陽電池用防水シートを構成する材料には、ポリ塩化ビニルと相溶する常温で固体状の可塑剤が含まれているのが好ましい。このような固体状の可塑剤を含むことにより、太陽電池セルの発電能力の低下を防止し、柔軟性を優れたものとするとともに、液状の可塑剤を含む太陽電池用防水シートよりも機械特性を効果的に向上させることができる。
【0038】
このような固体状の可塑剤としては、ポリ塩化ビニルと相溶する常温で固体状であれば特に限定されないが、特に、一酸化炭素とエチレンとを含む共重合体を用いることが好ましい。さらに好ましくは、エチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合体を用いることが好ましい。さらに好ましくは、エチレン−アクリル酸メチル−一酸化炭素共重合体、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル−一酸化炭素共重合体を用いることが好ましい。
このような固体状の可塑剤としては、具体的には、エルバロイ741、エルバロイ742、エルバロイH441、エルバロイHP661、エルバロイHP662、エルバロイHP4051、エルバロイAS、エルバロイAM等(エルバロイは、三井・デュポンポリケミカル株式会社の商品名)、等が挙げられる。
【0039】
固体状の可塑剤のJIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)は、5g/10min以上40g/10min以下であるのが好ましく、20g/10min以上40g/10min以下であるのがより好ましい。これにより、太陽電池用防水シートの機械特性、加工性をさらに向上させることができる。
上記のような固体状の可塑剤の太陽電池用防水シート中における含有量は、10重量%以上50重量%以下であるのが好ましく、20重量%以上40重量%以下であるのがより好ましい。これにより、太陽電池用防水シートの機械特性、柔軟性をさらに向上させることができる。
なお、太陽電池用防水シートを構成する材料としては、上述した成分に限定されず、例えば、各種安定化剤、各種酸化防止剤、各種紫外線吸収剤、加工助剤、滑剤、充填材、難燃剤、色材等を含んでいてもよい。
【0040】
以上、本発明の太陽電池用防水シート、防水シート付き太陽電池層および防水構造体を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や、工程が付加されていてもよい。
なお、前記実施形態では、下地層は、断熱材110と不燃絶縁層120との2層で構成されているが、本発明では、これに限定されず、下地層は、1層で構成されていてもよく、また、3層以上で構成されていてもよい。
【0041】
また、本発明では、断熱材110の間隙111の上面開口が不燃絶縁層120で封止されていてもよい。
また、本発明では、断熱材110の間隙111の内部が別体の断熱部材で充填されていてもよい。この断熱部材の構成材料としては、例えば、断熱材110と同様のものを用いることができる。
また、前記実施形態の防水構造体は、屋根や屋上などの躯体の上面に設けられるものであるが、本発明では、これに限定されず、防水構造体は、建造物の躯体上であれば、他の部位に設けられるものでもよい。
【0042】
また、前記実施形態の防水シート付き太陽電池層の施工方法では、防水シート付き太陽電池を屋根や屋上などの躯体の上面に設けているが、本発明では、これに限定されず、防水シート付き太陽電池層を、建造物の躯体上であれば、他の部位に設けてもよい。
また、前記実施形態の防水シート付き太陽電池層の交換方法では、防水シート付き太陽電池層は、屋根や屋上などの躯体の上面に設けられているが、本発明では、これに限定されず、防水シート付き太陽電池層は、建造物の躯体上であれば、他の部位に設けられていてもよい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
《1》防水シート付き太陽電池層の製造
各実施例および各比較例の防水シート付き太陽電池層を以下のようにして製造した。
(実施例1〜10、比較例1〜4)
1.太陽電池用防水シートの製造
表1に示すような配合比率に従って、ポリ塩化ビニル、可塑剤、充填剤、安定剤、滑剤及び色剤を混合し、190℃で溶融混練して厚さ0.9mmの太陽電池用防水シートを製造した。
2.防水シート付き太陽電池層の製造
表1に示すような厚みの表面保護材、上面封止材、太陽電池セル、下面封止材、表面保護材、接着剤、得られた太陽電池用防水シートを表1に示すような構成で積層し、150℃20分で加熱圧着して防水シート付き太陽電池層を製造した。
【0044】
<使用した原材料>
(1)ポリ塩化ビニル(1):重合度800
(2)ポリ塩化ビニル(2):重合度1200
(3)ポリ塩化ビニル(3):重合度400
(4)ポリ塩化ビニル(4):重合度1400
(5)ポリ塩化ビニル(5):重合度200
(6)液状の可塑剤:エポキシ化大豆油
(7)固体状の可塑剤(1):エチレン−アクリル酸メチル−一酸化炭素共重合体(MFR;20g/
10min)
(8)固体状の可塑剤(2):エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(1)(MFR;10g/
10min)
(9)固体状の可塑剤(3):エチレン−メタクリル酸メチル−一酸化炭素共重合体(1)(MFR;30g/
10min)
(10)固体状の可塑剤(4):エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体(2)(MFR;3g/
10min)
(11)固体状の可塑剤(5):エチレン−メタクリル酸メチル−一酸化炭素共重合体(2)(MFR;50g/
10min)
(12)固体状の可塑剤(6):エチレン−アクリル酸メチル共重合体(MFR;20g/
10min)
(13)充填剤:炭酸カルシウム
(14)安定剤:バリウム亜鉛系安定剤
(15)滑剤:ステアリン酸
(16)顔料:カーボンブラック
(17)表面保護層:フッ素フィルム
(18)上面封止材(1):ポリエチレンフィルム
(19)上面封止材(2):エチレン−アクリル酸メチル共重合体フィルム
(20)上面封止材(3):エチレン−メタクリル酸メチル共重合体フィルム
(21)上面封止材(4):ポリプロピレンフィルム
(22)太陽電池セル:アモルファス太陽電池セル
(23)下面封止材(1):ポリエチレンフィルム
(24)下面封止材(2):エチレン−アクリル酸メチル共重合体フィルム
(25)下面封止材(3):エチレン−メタクリル酸メチル共重合体フィルム
(26)下面封止材(4):ポリプロピレンフィルム
(27)裏面保護層:フッ素フィルム
(28)接着層(1):エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム
(29)接着層(2):エチレン−メタクリル酸メチル共重合体フィルム
(30)接着層(3):ポリプロピレンフィルム
【0045】
《2》評価
上記の様にして得られた太陽電池用防水シート及び防水シート付き太陽電池層を用いて各種試験を行った。
[太陽電池用防水シートの加工性]
単軸押出機を用いて樹脂温度190℃で押出した太陽電池用防水シートの加工性を評価した。評価は○(シート表面が平滑)、△(シート表面が凹凸)、×(加工が不可能)とし、○、△レベルを合格とした。
[太陽電池用防水シートの柔軟性]
太陽電池用防水シートを半径60mmの紙管に巻き取った後、巻き出したシートの巻き癖を平面に置いた時のシート端部の反り高さで評価した。評価は○(反り高さ:10mm未満)、△(反り高さ:10mm以上、20mm未満)、×(反り高さ:20mm以上)とし、○、△レベルを合格とした。
【0046】
[太陽電池用防水シートの機械特性]
JIS A 6008に準拠して太陽電池用防水シートの引張強さを評価した。評価は○(引張強さ1800N/cm
2以上)、△(引張強さ:1000N/cm
2以上、1800N/cm
2未満)、×(引張強さ:1000N/cm
2未満)とし、○、△レベルを合格とした。
[太陽電池用防水シートの接着性]
真空プレス機を用いて太陽電池用防水シートと太陽電池層を加熱圧着(150℃で20分間加圧)後、太陽電池用防水シートと太陽電池層の剥離強度を測定した。評価は○(剥離強度1.5N/mm以上)、△(剥離強度1.0N/mm以上、1.5N/mm未満)、×(剥離強度1.0N/mm未満)とし、○、△レベルを合格とした。
【0047】
[防水シート付き太陽電池層の発電能力]
ソーラーシミュレーターを用いて高温高湿処理(80℃85%RHの条件下で3000時間静置)前後の防水シート付き太陽電池層の発電出力を測定し、出力保持率を求めた。評価は○(出力保持率90%以上)、×(出力保持率90%未満)とし、○レベルを合格とした。
これらの結果を表1に示した。
また、防水シート付き太陽電池層の防水性についても評価を実施し、実施例1〜10は、問題ないことを確認した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の評価結果からわかるように、実施例に示す本発明の太陽光電池用防水シートは加工性が良好で、かつ非常に優れた柔軟性、機械特性、および太陽電池層との接着性を示し、太陽電池用防水シートを用いた防水シート付き太陽電池層では、可塑剤の移行が無く、太陽電池の発電能力の低下が見られなかった。これに対して、比較例1〜4は全て、太陽光電池用防水シートの加工性、柔軟性、機械特性、太陽電池層との接着性、及び防水シート付き太陽電池層の発電能力のバランスがとれていない。