特許第6205792号(P6205792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6205792心電計測装置、心電計測方法、及び心電計測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205792
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】心電計測装置、心電計測方法、及び心電計測プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0428 20060101AFI20170925BHJP
   A61B 5/0408 20060101ALI20170925BHJP
   A61B 5/0492 20060101ALI20170925BHJP
   A61B 5/04 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   A61B5/04 310B
   A61B5/04 300E
   A61B5/04ZDM
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-75631(P2013-75631)
(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-200270(P2014-200270A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲山 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢治
(72)【発明者】
【氏名】福家 佐和
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−200268(JP,A)
【文献】 特表2007−504917(JP,A)
【文献】 特開2012−139484(JP,A)
【文献】 特開2001−269322(JP,A)
【文献】 特開2000−126145(JP,A)
【文献】 実開昭59−188405(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0028823(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/04−5/0472
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電計測装置であって、
第1計測電極と第1基準電極とが、第1距離を保ち、前記心電計測装置の装着時に心電の伝播方向に対して垂直方向となるように配置されている第1電極対と、
第2計測電極と第2基準電極とが、前記第2計測電極と前記第2基準電極を結ぶ線分が前記第1計測電極と前記第1基準電極を結ぶ線分と閾値以上の角度を有し、前記第1距離との差分が閾値以下の第2距離を保ち、前記心電計測装置の装着時に心電の伝播方向に対して水平方向となるように配置されている第2電極対と、
前記第1電極対の差動電位である第1電位と検出する第1電位検出部と、
前記第2電極対の差動電位である第2電位と検出する第2電位検出部と、
前記第2電位から前記第1電位を減算することで、心電を検出する心電検出部と、
を備えることを特徴とする心電計測装置。
【請求項2】
前記第1距離及び前記第2距離は、50mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の心電計測装置。
【請求項3】
前記第1電極対及び前記第2電極対が配置された電極装備面の反対側の面は、
当該心電計測装置の装着時における上下方向を表すマークが記されていることを特徴とする請求項1に記載の心電計測装置。
【請求項4】
前記第1電極対及び前記第2電極対が配置された電極装備面の反対側の面は、
当該心電計測装置を固定する固定部が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の心電計測装置。
【請求項5】
前記第1電位に含まれる筋電成分の振幅の大きさに従って前記第1電位を補正する第1補正部と、
前記第2電位に含まれる筋電成分の振幅の大きさに従って前記第2電位を補正する第2補正部とを、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の心電計測装置。
【請求項6】
前記第1電位検出部は、
前記第1計測電極で計測した電位と前記第1基準電極で計測した電位の差分を求め、前記第1電位を検出し、
前記第2電位検出部は、
前記第2計測電極で計測した電位と前記第2基準電極で計測した電位の差分を求め、前記第2電位を検出することを特徴とする請求項1に記載の心電計測装置。
【請求項7】
心電計測装置で実行される心電計測方法であって、
前記心電計測装置は、
第1計測電極と第1基準電極とが、第1距離を保ち、前記心電計測装置の装着時に心電の伝播方向に対して垂直方向となるように配置されている第1電極対と、
第2計測電極と第2基準電極とが、前記第2計測電極と前記第2基準電極を結ぶ線分が前記第1計測電極と前記第1基準電極を結ぶ線分と閾値以上の角度を有し、前記第1距離との差分が閾値以下の第2距離を保ち、前記心電計測装置の装着時に心電の伝播方向に対して水平方向となるように配置されている第2電極対と、を備え、
前記第1電極対の差動電位である第1電位と検出する第1電位検出工程と、
前記第2電極対の差動電位である第2電位と検出する第2電位検出工程と、
前記第2電位から前記第1電位を減算することで、心電を検出する心電検出工程と、
を含むことを特徴とする心電計測方法。
【請求項8】
心電計測装置が備えるコンピュータで実行される心電計測プログラムであって、
前記心電計測装置は、
第1計測電極と第1基準電極とが、第1距離を保ち、前記心電計測装置の装着時に心電の伝播方向に対して垂直方向となるように配置されている第1電極対と、
第2計測電極と第2基準電極とが、前記第2計測電極と前記第2基準電極を結ぶ線分が前記第1計測電極と前記第1基準電極を結ぶ線分と閾値以上の角度を有し、前記第1距離との差分が閾値以下の第2距離を保ち、前記心電計測装置の装着時に心電の伝播方向に対して水平方向となるように配置されている第2電極対と、を備え、
前記第1電極対の差動電位である第1電位と検出する第1電位検出ステップと、
前記第2電極対の差動電位である第2電位と検出する第2電位検出ステップと、
前記第2電位から前記第1電位を減算することで、心電を検出する心電検出ステップと、を前記コンピュータに実行させるための心電計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、心電計測装置、心電計測方法、及び心電計測プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘルスケアへの意識が高まっている。そのため、日常生活で心電計測が行える心電計測装置が提案されている。このような心電計測装置は、一般的に、電極を、心臓を挟むように配置して生体電位を計測し、心電計測を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−25361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の心電計測装置では、装着時に、専門知識や医師の指導を必要とするものや、ベルトなどを用いて電極を固定するものなど、被験者が日常生活で負担なく心電計測が行えるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る心電計測装置は、第1計測電極と第1基準電極とが、第1距離を保って配置されている第1電極対と、第2計測電極と第2基準電極とが、前記第2計測電極と前記第2基準電極を結ぶ線分が前記第1計測電極と前記第1基準電極を結ぶ線分と閾値以上の角度を有し、前記第1距離との差分が閾値以下の第2距離を保って配置されている第2電極対と、前記第1電極対の差動電位である第1電位と検出する第1電位検出部と、前記第2電極対の差動電位である第2電位と検出する第2電位検出部と、前記第1電位と前記第2電位を減算処理することで、心電を検出する心電検出部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態に係る心電計測装置のハードウェア構成例を示す図。
図2】第1の実施形態に係る心電計測装置の外観例(その1)を示す図。
図3】第1の実施形態に係る心電計測装置の装着例を示す図。
図4】第1の実施形態に係る心電計測装置の外観例(その2)を示す図。
図5】第1の実施形態に係る心電計測装置の外観例(その3)を示す図。
図6】第1の実施形態に係る心電計測の機能構成例を示す図。
図7】筋肉の模式図。
図8】第1の実施形態に係る心電を検出する方法例を示す図。
図9】第1の実施形態に係る生体電位と心電の波形例を示す図。
図10】第1の実施形態に係る各電極の配置例を示す図。
図11】第1の実施形態に係る心電検出時の処理手順例を示すフローチャート。
図12】変形例1に係る心電計測の機能構成例を示す図。
図13】変形例1に係る心電の波形例を示す図。
図14】変形例2に係る心電計測の機能構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、心電計測装置、心電計測方法、及び心電計測プログラムの実施形態を詳細に説明する。
【0008】
[第1の実施形態]
<心電計測装置>
図1は、本実施形態に係る心電計測装置100のハードウェア構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る心電計測装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、外部記憶装置104、入力装置105、表示装置106などを備えている。本実施形態に係る心電計測装置100は、各ハードウェアがバスBを介して接続されている。
【0009】
CPU101は、装置全体の制御や搭載機能を実現する演算装置である。ROM102は、例えば、機能を実現するプログラムや機能設定のデータなどが格納されている不揮発性の半導体メモリである。RAM103は、プログラムやデータが読み出され一時保持される揮発性の半導体メモリである。よって、CPU101は、例えば、ROM102から、プログラムやデータをRAM103上に読み出し、処理を実行することで、装置全体の制御や搭載機能を実現する。
【0010】
外部記憶装置104は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やメモリカード(Memory Card)などの不揮発性の記憶装置である。なお、外部記憶装置104には、フレキシブルディスク(FD)、CD(Compact Disk)、及びDVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体も含まれる。入力装置105は、例えば、テンキーやタッチパネルなどであり、心電計測装置100に各操作信号を入力するのに用いられる。表示装置106は、例えば、ディスプレイなどであり、心電計測装置100による処理結果を表示する。
【0011】
また、本実施形態に係る心電計測装置100は、測定電極1、基準電極1、測定電極2、及び基準電極2の少なくとも4つの電極108(以下「電極群108」という)と駆動回路107を備えている。本実施形態に係る心電計測装置100は、駆動回路107がバスBを介して接続されている。
【0012】
電極群108は、被験者の表皮に接することで生体電位を検出する。駆動回路107は、各電極を駆動させる。駆動回路107は、電極群108から得た生体電位の検出値を、バスBを介してCPU101などに出力する。
【0013】
ここで、本実施形態に係る心電計測装置100の外観と装着例、また、電極群108の配置例について説明する。
【0014】
《外観と装着例1》
図2は、本実施形態に係る心電計測装置100の外観例(その1)を示す図である。また、図3は、本実施形態に係る心電計測装置100の装着例を示す図である。図2(a)に示すように、本実施形態では、計測時に被験者の表皮に接する面に、測定電極1、基準電極1、測定電極2、及び基準電極2が備えられている。なお、以降の説明では、計測時に被験者の表皮に接する面を電極装備面という。また、電極装備面の形状には、矩形が採用されている。また、図2(b)に示すように、本実施形態では、電極装備面の反対側の面(以下「非電極装備面」という)に、装着時の上下方向を示すマークMが記されている。なお、上下方向の表し方は、マークMに限らず、例えば、上下方向の表す文字などでもよい。
【0015】
これにより、被験者は、図3に示すように、マークMが表す上方向を頭側、マークMが表す下方向を足側に向けて、電極装備面の電極群108が腹部の臍のあたりに接するように、ズボンなどの衣服のゴムやベルトに付して心電計測装置100を装着する。このように、本実施形態に係る心電計測装置100は、電極装備面の形状を矩形にしたことで、被験者の装着性を向上することができる。また、本実施形態に係る心電計測装置100は、非電極装備面に上下方向を表すマークMを記したことで、被験者の誤った装着を防ぐことができる。
【0016】
《電極群108の配置例》
図2(a)に示すように、本実施形態に係る心電計測装置100には、測定電極1、基準電極1、測定電極2、及び基準電極2が、電極装備面の矩形の頂点に配置され、電極装備面の矩形の対角に位置する測定電極1及び基準電極1と測定電極2及び基準電極2の2組の電極対が備えられている。なお、図2(a)には、装着時の上方向の位置に測定電極1及び2が配置され、下方向に基準電極1及び2が配置されている例が示されているが、この限りでない。例えば、装着時の上方向の位置に基準電極1及び2を配置し、下方向に測定電極1及び2を配置するようにしてもよい(測定電極1及び2と基準電極1及び2の配置が上下逆であってもよい)。
【0017】
《外観と装着例2、3》
図4、5は、本実施形態に係る心電計測装置100の外観例(その2、その3)を示す図である。例えば、図4に示すように、本実施形態に係る心電計測装置100は、非電極装備面にクリップCなどを備えていてもよい。これにより、被験者は、電極装備面の電極群108が腹部の臍のあたりに接するように、クリップCでズボンなどの衣服のゴムやベルトを挟み、心電計測装置100を装着する。このように、本実施形態に係る心電計測装置100は、当該心電計測装置100を固定する手段(固定部)を設けたことで、被験者の体動により、電極装備面の電極群108が生体から剥がれ落ちることを防ぐことができる。
【0018】
また、本実施形態に係る心電計測装置100は、図5に示すように、衣服Wそのものに内蔵可能としてもよい。なおこの場合には、電極群108が心電計測装置100から着脱可能な構成とすることが望ましい。
【0019】
従来の計測器には、胸に装着することで心電計測を行うものがある。しかし、このような計測器は、電極を固定するために、ベルトなどを用いて装着する必要があり、被験者にとって煩雑なものであった。また、従来の計測器には、腕に装着することで心電計測を行うものがある。しかし、このような計測器では、被験者の体動で計測器がずれてしまい、心電計測ができなくなる恐れがあった。
【0020】
これに対して、本実施形態に係る心電計測装置100は、上記構成により、装着が簡便に行え、被験者が日常的に利用可能な心電計測環境を提供することができる。
【0021】
<心電計測機能>
本実施形態に係る心電計測機能について説明する。本実施形態に係る心電計測装置100は、計測電極1及び基準電極1と計測電極2及び基準電極2の少なくとも2組の電極対を備えている。本実施形態に係る計測電極1及び基準電極1と計測電極2及び基準電極2の各電極対は、被験者の身体部位における装着位置(計測時における当該心電計測装置100の設置位置)の筋繊維の方向と心電の伝播方向を考慮して、電極装備面に配置されている。本実施形態に係る心電計測装置100は、計測電極1及び基準電極1の電極間と計測電極2及び基準電極2の電極間の各差動電位を2組の生体電位として検出する。本実施形態に係る心電計測装置100は、2組の生体電位を減算処理し、心電を検出する。本実施形態に係る心電計測装置100は、このような心電計測機能を有している。
【0022】
従来の計測器では、装着位置の筋繊維の動きにより、筋電などのノイズが発生することや、電極で心臓を挟む心電計測に比べて、検出される生体電位が小さい(心電波の振幅が小さい)ことなどによる計測精度の低下が懸念される。
【0023】
そこで、本実施形態に係る心電計測機能では、装着位置の筋繊維の方向と心電の伝播方向を考慮して電極装備面に配置された2組の電極対の各差動電位を生体電位として検出し、検出した2組の生体電位を減算処理し、心電を検出する仕組みとした。
【0024】
以下に、本実施形態に係る心電計測機能の構成とその動作について説明する。
【0025】
図6は、本実施形態に係る心電計測の機能構成例を示す図である。図6に示すように、本実施形態に係る心電計測機能は、生体電位検出部11、基線ゆらぎ除去部12、心電検出部13、及び表示制御部14などを有している。生体電位検出部11は、計測電極1及び基準電極1の電極間と計測電極2及び基準電極2の電極間の各差動電位を2組の生体電位として検出する機能部である。基線ゆらぎ除去部12は、検出された2組の生体電位の高周波成分と基線ゆらぎを除去する機能部である。心電検出部13は、基線ゆらぎ除去処理後の出力に対して減算処理を行い、心電を検出する機能部である。表示制御部14は、検出された心電波形などの計測結果を表示するために表示装置106を制御する機能部である。
【0026】
生体電位検出部11は、計測電極1及び基準電極1の電極対1(第1電極対)と計測電極2及び基準電極2の電極対2(第2電極対)で計測された電位に基づき、各電極対1,2の2組の差動電位を検出する。このとき生体電位検出部11は、計測電極1で計測した電位と基準電極1で計測した電位の差分を求め、計測電極1及び基準電極1の電極間の差動電位(第1電位)を検出する。また、生体電位検出部11は、計測電極2で計測した電位と基準電極2で計測した電位の差分を求め、計測電極2及び基準電極2の電極間の差動電位(第2電位)を検出する。これにより、生体電位検出部11は、検出した各差動電位を2組の生体電位として検出する。
【0027】
基線ゆらぎ除去部12は、例えば、カットオフ周波数15[Hz]のローパスフィルタ機能により、検出された生体電位の波形から余分な高周波成分を除去し、高周波成分除去後の波形に対して一次微分処理を行うことで、基線ゆらぎを除去する。
【0028】
心電検出部13は、基線ゆらぎ除去後の出力(2組の生体電位)に対して減算処理を行い、筋電を除去した心電を検出する。
【0029】
以下に、本実施形態に係る心電の検出方法について説明する。
【0030】
《心電検出方法》
図7は、筋肉の模式図である。また、図8は、本実施形態に係る心電を検出する方法例を示す図である。図7に示すように、筋電は、筋肉の動きとともに発生し、筋肉の中央付近から筋繊維の方向である筋電進行方向に伝播する。また、図8(a)に示すように、人の腹部には、体を支えるための腹直筋と呼ばれる筋肉が縦方向に備わっている。
【0031】
このことから、腹直筋の筋電は、腹直筋の繊維方向、すなわち、生体の頭から足を結ぶ直線方向(図中の実線矢印の方向)に伝播する。そのため、本実施形態では、図8(b)に示すように、計測電極1及び基準電極1の電極対1と計測電極2及び基準電極2の電極対2で、略同電位の筋電が検出される。
【0032】
図8(a)に示すように、心電は、心臓の筋肉が発生する電位であり、発生源が心臓である。心電は、心臓を中心とした同心円状(図中の点線矢印の方向)に生体表面を伝播する。そのため、例えば、図8(a)に示すように、電極群108を臍の横に配置した場合には、次のような方向に伝播する。心電は、図8(b)に示すように、計測電極2と基準電極2を結ぶ方向(図中の点線矢印の方向)に伝播する。これは、計測電極2及び基準電極2の電極対2が、心電の伝播方向に対して略並行となるように配置されているからである。そのため、本実施形態では、伝播した心電によって、計測電極2及び基準電極2の電極間の電位が変動し、同電極間の差動電位から振幅の大きな心電が検出される。一方、計測電極1と基準電極1を結ぶ方向は、心臓を中心とした同心円上に位置することから、計測電極1で計測された電位と基準電極1で計測された電位が略同電位となる。これは、計測電極1及び基準電極1の電極対1が、心電の伝播方向に対して略垂直になるように配置されているである。これにより、本実施形態では、計測電極1及び基準電極1の電極間の差動電位から心電が検出されない。
【0033】
このように、本実施形態に係る心電計測装置100では、適切に装着された場合、計測電極2及び基準電極2の電極対2が心電の伝播方向に対して並行(水平方向)となるように配置され、計測電極1及び基準電極1の電極対1が心電の伝播方向に対して垂直(垂直方向)となるように配置されている。
【0034】
これによって、本実施形態に係る心電計測装置100は、計測電極1及び基準電極1の電極間の差動電位と計測電極2及び基準電極2の電極間の差動電位に、同程度(同電位)の筋電が含まれる。また、本実施形態では、計測電極1及び基準電極1の電極間の差動電位に心電が含まれず、計測電極2及び基準電極2の電極間の差動電位に心電が含まれる。
【0035】
本実施形態に係る心電検出部13では、上記差動電位の特性の違いに着目し、心電を含む差動電位から心電を含まない差動電位を減算することで、筋電を除去した心電を検出する。
【0036】
《心電波形》
図9は、本実施形態に係る生体電位と心電の波形例を示す図である。図9(a)には、計測電極1及び基準電極1の電極間の差動電位(生体電位)に対して、基線ゆらぎ除去処理を行った後の出力波形(生体電位波形)が示されている。また、図9(b)には、計測電極2及び基準電極2の電極間の差動電位に対して、基線ゆらぎ除去処理を行った後の出力波形が示されている。また、図9(c)には、基線ゆらぎ除去後の出力に対して減算処理を行い、筋電を除去した心電波形が示されている。
【0037】
このように、本実施形態に係る心電計測機能では、基線ゆらぎ除去部12による除去処理が行われると、図9(a)、(b)に示すような基線ゆらぎ除去後の2組の生体電位が、基線ゆらぎ除去部12から心電検出部13へと出力される。これを受けて、心電検出部13は、2組の生体電位のうち、心電を含む生体電位から心電を含まない生体電位を減算し、図9(c)に示すような心電(筋電を除去した心電)を検出する。その後、心電の検出結果は、心電検出部13から表示制御部14へと出力される。その結果、表示制御部14は、心電の検出結果を心電の計測結果として表示装置106に表示する。
【0038】
ここで、本実施形態に係る電極群108の配置について追記する。図2(a)では、測定電極1と基準電極1を結ぶ線分と、測定電極2と基準電極2を結ぶ線分が、各線分の中点で交わるように配置されている例が示されているが、この限りでない。
【0039】
図10は、本実施形態に係る各電極の配置例を示す図である。例えば、図10(a)に示すように、測定電極1と基準電極1を結ぶ線分と、測定電極2と基準電極2を結ぶ線分が、各線分の中点でない点で交わるように配置してもよい。また、図10(b)に示すように、測定電極1と基準電極1を結ぶ線分と、測定電極2と基準電極2を結ぶ線分が、交わらないように配置してもよい。このように、本実施形態に係る電極群108の配置は、計測電極1及び基準電極1の電極対1を結ぶ線分と計測電極2及び基準電極2の電極対2を結ぶ線分が、閾値以上の角度を有している。また、本実施形態に係る電極群108の配置は、測定電極1及び基準電極1の電極対1と測定電極2及び基準電極2の電極対2の一方が、心電の伝播方向に対して略並行となるように配置され、他方が心電の伝播方向に対して略垂直となるように配置されていればよい。
【0040】
ただし、上記心電検出方法で説明したように、電極群108における各電極間の距離については、筋電を除去するために、計測電極1及び基準電極1の電極間と計測電極2及び基準電極2の電極間で、同程度の筋電が検出可能な距離を保つ必要がある。すなわち、各電極は、心電計測装置100を適切に装着した場合に同じ腹直筋上に接するような距離を保つように、電極装備面に配置されていることが望ましい。そのため、電極群108における各電極間の距離は、腹直筋の断面幅と同じ又は小さい長さとすることが望ましい。例えば、電極群108における各電極間の距離は、50[mm]以下である。このように、本実施形態に係る電極群108の配置は、計測電極1及び基準電極1の電極間が、第1距離を保って配置され、計測電極2及び基準電極2の電極間が、第1距離との差分が閾値以下の第2距離を保って配置されている。
【0041】
以上のような本実施形態に係る心電計測機能は、心電計測装置100において、心電計測プログラムが実行され、上記各機能部が連携動作することで実現される。
【0042】
心電計測プログラムは、実行環境である心電計測装置100が備えるROM102に予め組み込んで提供される。心電計測プログラムは、上記各機能部を含むモジュール構成となっており、CPU101がROM102からプログラムを読み出し実行することで、RAM103上に各機能部が生成される。なお、心電計測プログラムの提供方法は、この限りでない。例えば、心電計測プログラムを、インターネットなどに接続された機器に格納し、ネットワーク経由でダウンロードし、配布する方法であってもよい。また、心電計測装置100が読み取り可能な記録媒体に、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルを記録し提供する方法であってもよい。
【0043】
以下に、心電計測プログラム実行時の処理(各機能部の連携動作)について、フローチャートを用いて説明する。
【0044】
《心電計測時の処理》
図11は、本実施形態に係る心電検出時の処理手順例を示すフローチャートである。図11に示すように、本実施形態に係る心電計測装置100は、入力装置105を介して、被験者からの心電計測開始指示を受け付ける(ステップS101:YES)。なお、本実施形態に係る心電計測装置100は、心電計測開始指示を受け付けない間(ステップS101:NO)、心電計測開始待ち状態となる。
【0045】
次に、生体電位検出部11は、電極群108の2組の電極対1,2から生体電位を検出する(ステップS102)。このとき生体電位検出部11は、計測電極1で計測した電位と基準電極1で計測した電位の差分を求め、計測電極1及び基準電極1の電極間の差動電位を検出する。また、生体電位検出部11は、計測電極2で計測した電位と基準電極2で計測した電位の差分を求め、計測電極2及び基準電極2の電極間の差動電位を検出する。これにより、生体電位検出部11は、検出した各差動電位を2組の生体電位として検出する。
【0046】
次に、基線ゆらぎ除去部12は、検出された2組の生体電位に対して基線ゆらぎ除去処理を行う(ステップS103)。このとき基線ゆらぎ除去部12は、検出された生体電位の波形から余分な高周波成分を除去し、高周波成分除去後の波形に対して一次微分処理を行う。これにより、基線ゆらぎ除去部12は、高周波成分及び基線ゆらぎを除去する。
【0047】
次に、心電検出部13は、基線ゆらぎ除去後の出力(2組の生体電位)に基づき、筋電を除去した心電を検出する(ステップS104)。このとき心電検出部13は、2組の生体電位のうち、心電を含む生体電位から心電を含まない生体電位を減算する。これにより、心電検出部13は、筋電を除去した心電を検出する。
【0048】
次に、本実施形態に係る心電計測装置100は、被験者からの心電計測が終了したか否かを判定する(ステップS105)。
【0049】
その結果、本実施形態に係る心電計測装置100は、心電計測が終了していないと判定された場合(ステップS105:NO)、ステップS102の処理に戻り、心電計測処理を継続する。
【0050】
一方、本実施形態に係る心電計測装置100は、心電計測が終了したと判定された場合(ステップS105:YES)、表示制御部14が、検出された心電波形などの計測結果を表示装置106に表示する(ステップS106)。
【0051】
<まとめ>
以上のように、本実施形態に係る心電計測装置100によれば、計測電極1及び基準電極1と計測電極2及び基準電極2の少なくとも2組の電極対1,2が、被験者の身体部位における装着位置の筋繊維の方向と心電の伝播方向を考慮して、電極装備面に配置されている。本実施形態に係る心電計測装置100は、生体電位検出部11が、計測電極1及び基準電極1の電極間と計測電極2及び基準電極2の電極間の各差動電位を2組の生体電位として検出する。本実施形態に係る心電計測装置100は、心電検出部13が、2組の生体電位を減算処理し、心電を検出する。
【0052】
これにより、本実施形態に係る心電計測装置100は、装着位置の筋繊維の動きによる筋電の発生や、電極で心臓を挟む心電計測より検出される生体電位が小さいことなどによる計測精度の低下を防ぐことができる。
【0053】
このように、本実施形態に係る心電計測装置100は、被験者が日常生活で負担なく心電計測を行うことができる。また、本実施形態に係る心電計測装置100は、計測精度を向上させることができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、心電計測プログラムを実行することにより、心電計測機能を実現する構成について説明を行ったが、この限りでない。例えば、生体電位検出部11の機能を差動増幅回路で実現し、基線ゆらぎ除去部12の機能をローパスフィルタ回路で実現するなど、各種ハードウェアによって心電計測機能を実現してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、被験者に対する心電の計測結果を知らせる方法に、表示する方法を用いた例を説明したが、この限りでない。例えば、本実施形態に係る心電計測装置100が通信IF(interface;非図示)を備えている場合には、心電の計測結果を、ネットワークを経由して外部機器に送信し、心電の計測結果を知らせる方法であってもよい。なお、ネットワークは、有線又は無線、通信方式などを問わない。また、外部端末は、例えば、携帯電話や情報端末などの通信機能を有する機器であればよい。
【0056】
以下に、本実施形態に係る心電計測装置100の変形例について説明する。なお、以下の変形例の説明では、本実施形態と同じ点について、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
<変形例1>
図12は、本変形例1に係る心電計測の機能構成例を示す図である。図12に示すように、本変形例1に係る心電計測装置100は、心電のR波を検出するR波検出部15を有していてもよい。
【0058】
本変形例1に係るR波検出部15は、心電検出部13で検出された心電波形からR波を検出する。R波検出部15は、次のような方法でR波を検出する。R波検出部15は、例えば、1.5[sec]を検出時間幅とし、検出時間内の心電波形の極大値Vを検出する。このときR波検出部15は、次のような(条件式1)に従って、R波を検出する。
V ≧ μ+α×σ ・・・ (条件式1)
V:心電波形の極大値
μ:検出した心電波形の極大値の平均値、σ:分散値、α:係数(例えば0.8)
μ+α×σ:閾値
【0059】
図13は、本変形例1に係る心電の波形例を示す図である。本変形例1に係るR波検出部15は、図13に示すように、検出した心電波形の極大値Vのうち、閾値以上の極大値V(図中の丸印)をR波として検出する。なお、R波の検出方法は、検出時間幅を用いた変動閾値による検出方法でなく、固定閾値を用いる方法などであってもよい。
【0060】
このように、本変形例1に係る心電計測機能では、心電検出部13で検出された心電波形が、心電検出部13からR波検出部15へと出力される。R波検出部15は、検出した心電波形の極大値Vのうち、図13に示すような閾値以上の極大値VをR波として検出する。その後、R波の検出結果は、R波検出部15から表示制御部14へと出力される。その結果、表示制御部14は、R波の検出結果を表示装置106に表示する。なお、被験者に対するR波の検出結果の通知方法は、表示に限らない。例えば、R波の検出を知らせるアラームの発音などであってもよい。また、被験者に対して通知される結果の内容は、R波の検出結果のみでなくてもよい。例えば、心電の検出結果とR波の検出結果を併せて通知してもよい。また、例えば、R波の検出結果に異常があった場合のみ通知するようにしてもよい。
【0061】
以上のように、本変形例1に係る心電計測装置100は、被験者に対して、心電の検出結果だけでなく、R波の検出結果も通知することができる。
【0062】
<変形例2>
図14は、本変形例2に係る心電計測の機能構成例を示す図である。図14に示すように、本変形例2に係る心電計測装置100は、生体電位を増幅する生体電位増幅部16を有していてもよい。
【0063】
本変形例2に係る生体電位増幅部16は、基線ゆらぎ除去後の生体電位に含まれる筋電成分の振幅の大きさに従って、生体電位を増幅する。
【0064】
上記実施形態でも述べたように、測定電極1及び基準電極1の電極間の差動電位と測定電極2及び基準電極2の電極間の差動電位には、同程度の筋電が含まれる。しかし、例えば、心電計測装置100が、腹直筋から少しずれた位置に装着された場合や、マークMで表す上下方向に対して、心電計測装置100が傾いた状態で装着された場合など、心電計測装置100の装着状態によって、各差動電位に含まれる筋電の振幅が異なる。
【0065】
そこで、本変形例2に係る心電計測機能では、生体電位増幅部16により、基線ゆらぎ除去後の生体電位に含まれる筋電成分の振幅の大きさに従って、生体電位を増幅し、補正する。
【0066】
生体電位増幅部16は、基線ゆらぎ除去後の2組の出力波形それぞれに対して、例えば、1.5[sec]間を検出時間幅とし、検出時間内の出力波形のすべての極大値と極小値を検出する。生体電位増幅部16は、隣り合った極大値と極小値の差分の平均値を求め、筋電振幅値とする。これにより、生体電位増幅部16は、計測電極1及び基準電極1の電極対1から計測された出力波形と計測電極2及び基準電極2の電極対2から計測された出力波形のそれぞれに対応する2組の筋電振幅値を取得する。
【0067】
その結果、生体電位増幅部16は、次の(式1)で算出された増幅率1に従って、計測電極1及び基準電極1の電極対1に対応する出力波形を増幅する。
増幅率1 = 筋電振幅値2/(筋電振幅値1+筋電振幅値2) ・・・ (式1)
筋電振幅値1:計測電極1及び基準電極1の電極対1に対応する筋電振幅値
筋電振幅値2:計測電極2及び基準電極2の電極対2に対応する筋電振幅値
【0068】
また、生体電位増幅部16は、次の(式2)で算出された増幅率2に従って、計測電極2及び基準電極2の電極対2に対応する出力波形を増幅する。
増幅率2 = 筋電振幅値1/(筋電振幅値1+筋電振幅値2) ・・・ (式2)
【0069】
なお、上記増幅率は、これに限らない。例えば、筋電振幅の大きさに従って予め決定したおいた増幅率であってもよい。
【0070】
このように、本変形例2に係る心電計測機能では、生体電位増幅部16による増幅処理が行われると、増幅後の2組の生体電位が、生体電位増幅部16から心電検出部13へと出力される。
【0071】
以上のように、本変形例2に係る心電計測装置100は、各電極対1,2から検出された2組の差動電位に含まれる筋電の振幅が異なる場合でも、心電検出前に補正を行うことで、計測精度の低下を防ぐことができる。
【0072】
最後に、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
11 生体電位検出部
12 基線ゆらぎ除去部
13 心電検出部
14 表示制御部
100 心電計測装置
108 電極群
図1
図2
図3
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図5
図6
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図10
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