(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体とを備えたラジアル転がり軸受の軸受寿命の試験を行う為、
ハウジングと、このハウジングの内側に回転自在に支持され、前記ラジアル転がり軸受の内輪を外嵌する回転軸と、この回転軸を回転駆動する回転駆動手段と、このラジアル転がり軸受にラジアル荷重を付与する為のラジアル荷重付与手段とを備えるラジアル転がり軸受用試験装置に於いて、
前記ハウジングは、上方が開口した略矩形箱状で、その内側に、前記ラジアル転がり軸受の一部を浸漬する潤滑油を貯留する為の潤滑油溜りが設けられており、前記回転軸の軸方向に離隔する状態で設けられた1対の軸方向側壁部と、これら両軸方向側壁部の端部同士を連続させた1対の幅方向側壁部とを備え、これら両軸方向側壁部とこれら両幅方向側壁部とが一体に形成されており、これら両幅方向側壁部の下側部内側面から連続して形成される前記潤滑油溜りの底面が、前記回転軸の中心軸と同心の部分円筒状の凹曲面であり、
前記ラジアル転がり軸受が1対設けられており、これら両ラジアル転がり軸受を構成する内輪が、前記回転軸の先端部と基端寄り部分に外嵌されており、同じく外輪が、前記両軸方向側壁部に支持されており、
前記ラジアル荷重付与手段が、前記両ラジアル転がり軸受に水平方向のラジアル荷重を付与するものであり、
前記両ラジアル転がり軸受にアキシアル荷重を付与する為のアキシアル荷重付与手段を備える事を特徴とするラジアル転がり軸受用試験装置。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受の寿命は、この転がり軸受を構成する軌道輪や転動体の材質、形状、大きさ、潤滑状態、荷重等の各種因子が複雑に絡み合って変化する。従って、用途に応じた適切な耐久性を有する転がり軸受を得る為には、前記各種因子が前記転がり軸受の寿命に及ぼす影響を知る為の試験を行う必要がある。
図7は、特許文献1に記載されたラジアル転がり軸受用試験装置を示している。このラジアル転がり軸受用試験装置は、特許請求の範囲に記載したハウジングである、固定ハウジング1の内側に、回転軸2の先端部(
図7の左端部)と基端寄り部分とを、それぞれが供試軸受である、1対のラジアル転がり軸受3、3により回転自在に支持している。又、この回転軸2のうちでこれら両ラジアル転がり軸受3、3の間に位置する中間部の周囲に可動ハウジング4を、前記回転軸2と同心に配置している。この可動ハウジング4は前記固定ハウジング1の内部に、径方向の変位を可能に、回転方向の変位を阻止した状態で設けられている。そして、前記可動ハウジング4の内周面と前記回転軸2の中間部外周面との間に、サポート軸受5を設けている。そして、このサポート軸受5及び前記両ラジアル転がり軸受3、3の下半部を、前記固定ハウジング1の内側に設けられた潤滑油溜り6に貯留された潤滑油中に浸漬している。この潤滑油中には、必要に応じて、金属粉末、セラミック粉末等の異物7、7を混入する。又、油圧シリンダ等の加圧装置により、前記可動ハウジング4に、鉛直方向(
図7の上下方向)に向いた所望値のラジアル荷重Fを付与自在としている。
【0003】
前記両ラジアル転がり軸受3、3の寿命試験を行う場合には、前記加圧装置により前記可動ハウジング4を押圧する事で、この可動ハウジング4、前記サポート軸受5及び前記回転軸2を介し前記両ラジアル転がり軸受3、3を鉛直方向に押圧すると共に、この回転軸2を回転駆動する。この結果、所望のラジアル荷重Fを付加されつつ、所望の回転速度で回転された状態で、前記両ラジアル転がり軸受3、3の耐久性評価の為の寿命試験が行える。
【0004】
ところで、上述の様なラジアル転がり軸受用試験装置の場合、信頼性の高い評価を行う為には、前記固定ハウジング1の剛性を十分に高くする事が重要である。即ち、この固定ハウジング1の剛性が十分でない場合、前記ラジアル荷重Fによりこの固定ハウジング1のうちでこのラジアル荷重Fを支承する部分が変形(弾性変形)する可能性がある。これにより、前記ラジアル荷重Fを供試軸受である前記両ラジアル転がり軸受3、3に正常に付与できず、試験結果のばらつきが大きくなる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、ハウジングの剛性を十分に高くして試験結果のばらつきを抑えられるラジアル転がり軸受用試験装置を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のラジアル転がり軸受用試験装置は、前述した従来から知られているラジアル転がり軸受用試験装置と同様に、ラジアル転がり軸受の耐久性評価(寿命試験)を行う為のものである。
前記寿命試験の対象となるラジアル転がり軸受は、外輪と、内輪と、複数個の転動体とを備える。
このうちの外輪は、内周面に外輪軌道を有する。
又、前記内輪は、外周面に内輪軌道を有する。
又、前記各転動体は、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に転動自在に設けられている。
【0008】
そして、本発明のラジアル転がり軸受用試験装置は、ハウジングと、回転軸と、回転駆動手段と、
ラジアル荷重付与手段とを備える。
このうちの回転軸は、前記ハウジングの内側に回転自在に支持され、前記ラジアル転がり軸受の内輪を外嵌する為のものである。
又、前記回転駆動手段は、前記回転軸を回転駆動する。
又、前記
ラジアル荷重付与手段は、前記ラジアル転がり軸受にラジアル荷重を付与する。
【0009】
特に、本発明のラジアル転がり軸受用試験装置に於いては、前記ハウジングを、複数の部材を連結(固定)して構成するのではなく、全体を一体に形成する。
具体的には、ハウジングは、上方が開口した略矩形箱状で、その内側に、前記ラジアル転がり軸受の一部を浸漬する潤滑油を貯留する為の潤滑油溜りが設けられており、前記回転軸の軸方向に離隔する状態で立設された1対の軸方向側壁部と、これら両軸方向側壁部の端部同士を連続させた1対の幅方向側壁部とを備え、これら両軸方向側壁部とこれら両幅方向側壁部とが一体に形成されている。そして、これら両幅方向側壁部の下側部内側面から連続して形成される前記潤滑油溜りの底面を、前記回転軸の中心軸と同心の部分円筒状の凹曲面とする。
又、前記ラジアル転がり軸受を1対設け、これら両ラジアル転がり軸受を構成する内輪を、前記回転軸の先端部と基端寄り部分に外嵌し、同じく外輪を、前記両軸方向側壁部に支持する。
又、前記ラジアル荷重付与手段を、前記両ラジアル転がり軸受に水平方向のラジアル荷重を付与するものとする。
更に、前記両ラジアル転がり軸受にアキシアル荷重を付与する為のアキシアル荷重付与手段を備える。
上述の様な本発明のラジアル転がり軸受用試験装置を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記ハウジングを、炭素鋼製とする。即ち、このハウジングを、炭素鋼製である素材に鍛造加工を施し、更に必要に応じて切削加工を施す事により造る。
【0010】
又、好ましくは請求項
3に記載した発明の様に、前記潤滑油溜りの底面の曲率半径を、前記ラジアル転がり軸受の外径の0.6倍以上、2倍以下(好ましくは、1倍)とする。
又、好ましくは請求項
4に記載した発明の様に、前記潤滑油中に、金属粉末、セラミック粉末等の異物を混入する。
【発明の効果】
【0011】
上述の様に構成する本発明のラジアル転がり軸受用試験装置によれば、ハウジングを全体を一体に形成している為、このハウジングの剛性を十分に高くできて、ラジアル荷重を供試軸受であるラジアル転がり軸受に正常に付与できる。この結果、試験結果のばらつきを抑え、このラジアル転がり軸受の寿命に関して、信頼性の高い評価を行う事が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜3は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例の場合、回転軸2aの先端部(
図1の左端部)と基端寄り部分とを固定ハウジング1aに対し、それぞれが供試軸受である、1対のラジアル転がり軸受3a、3bにより回転自在に支持している。即ち、これら両ラジアル転がり軸受3a、3bの内輪8、8を、前記回転軸2aの先端部と基端寄り部分とに外嵌している。これら両内輪8、8の内側面は、この回転軸2aの中間部に設けた段差部9、9に、ワッシャ10、10を介して突き当てている。又、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bの外輪11、11を、前記固定ハウジング1aのうち、前記回転軸2aの軸方向に離隔する状態で鉛直方向に立設された1対の軸方向側壁部12、12に支持している。この為に、これら両軸方向側壁部12、12に設けた円孔13、13の内側に略円筒状の支持スリーブ14a、14bを取り付けている。そして、前記各外輪11、11を、これら両支持スリーブ14a、14bの先端部内周面に設けた円筒面状の支持部15a、15bに内嵌している。前記両ラジアル転がり軸受3a、3bのうちの一方(
図1の右側)のラジアル転がり軸受3aを構成する外輪11の外側面を、前記両支持スリーブ14a、14bのうちの一方の支持スリーブ14aの支持部15aの奥端部に設けた段差面に突き当てている。これにより、前記一方のラジアル転がり軸受3aを、前記ワッシャ10の外側面と前記一方の支持スリーブ14aの支持部15aの段差面との間で軸方向に強く挟持している。これに対し、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bのうちの他方(
図1の左側)のラジアル転がり軸受3bを構成する外輪11の外側面は、前記両支持スリーブ14a、14bのうちの他方の支持スリーブ14bの内側に軸方向変位を可能に挿入(嵌入)したピストン部16の先端面に突き当てている。これにより、前記他方のラジアル転がり軸受3bを、前記ワッシャ10の外側面と前記ピストン部16の先端面との間で軸方向に強く挟持している。本例の場合、このピストン部16の基端面を、図示しない、油圧シリンダ等の加圧装置により押圧する事で、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bに所望値のアキシアル荷重F
aを付与できる様にしている。
【0014】
又、前記回転軸2aの中間部の周囲にこの回転軸2aと同心に、略円筒状の可動ハウジング4aを配置している。そして、この可動ハウジング4aの内周面と前記回転軸2aの中間部外周面との間に、1対のサポート軸受5a、5aを設けている。前記可動ハウジング4aは、前記固定ハウジング1aの内部に、径方向の変位を可能に、且つ、回転方向の変位を阻止した状態で設けられている。そして、本例の場合、前記可動ハウジング4aに、水平方向に所望値のラジアル荷重F
rを付与できる様にしている。即ち、前記固定ハウジング1aを構成する前記両軸方向側壁部12、12の端部同士を連続させた1対の幅方向側壁部17a、17bのうち、一方(
図2の右側)の幅方向側壁部17aに水平方向に貫通する状態で設けた通孔18に、略円柱状の押圧治具19の先端部を挿通し、この押圧治具19の基端面(
図2の右端面)に、前記固定ハウジング1a(幅方向側壁部17a)の外側に設置した、油圧シリンダ等の加圧装置の押圧ロッド20の先端面(
図2の左端面)を、鋼球21及び押圧板22を介して突き当てて、ラジアル荷重付与手段を構成している。又、この押圧板22の外側面に振動センサ23を設け、この振動センサ23によりこの押圧板22の振動を検出する事で、前記各部材2a、5a、4a、19を介し前記両ラジアル転がり軸受3a、3bの振動を検出自在としている。
又、前記回転軸2aを、直接若しくは無端ベルトを掛け渡されたプーリ及びカップリングを介して、電動モータ等の駆動源の出力軸に接続し、前記回転軸2aを所望の回転速度で回転駆動する為の回転駆動手段を構成している。
【0015】
又、本例の場合、前記固定ハウジング1aは、
図3に示す様に、上方が開口した略矩形箱状で、炭素鋼製の素材に鍛造加工及び切削加工を施して造る事により、全体を一体に形成している。又、前記固定ハウジング1aの内側には、潤滑油溜り6aが設けられており、この潤滑油溜り6aの底面は、前記回転軸2aと同心の部分円筒状の凹曲面としている。この潤滑油溜り6aの底面の曲率半径rは、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bの外径Dの0.6倍以上、2倍以下(好ましくは、1倍以下)としている(0.6D≦r≦2D)。又、前記潤滑油溜り6aの底面と前記可動ハウジング4a及び前記両支持スリーブ14a、14bの外周面との間に、板状のヒータ24を、このヒータ24の上下両側面と、この潤滑油溜り6aの底面、並びに、前記可動ハウジング4a及び前記両支持スリーブ14a、14bの外周面との間に隙間を介在させた状態で設けている。前記ヒータ24は、前記潤滑油溜り6aの底面に沿って湾曲している。即ち、このヒータ24の上下両側面を、前記回転軸2aの中心軸と同心の部分円筒状の曲面としている。そして、前記潤滑油溜り6aに、所望の比率で金属粉末やセラミック粉末等の異物7、7を混入した潤滑油を貯留している。この為、実験開始から実験終了までの間中、この潤滑油中の前記異物7、7の混入率が変化する事はない。そして、前記回転軸2a、延いては前記両ラジアル転がり軸受3a、3b及び前記両サポート軸受5a、5aの回転に伴って、前記潤滑油が撹拌され、前記異物7、7がこの潤滑油中で均一に分散する。尚、前記潤滑油溜り6a内に、この潤滑油溜り6a内の潤滑油の流れを適正にする為の整流手段を設ける事もできる。
【0016】
上述の様に構成する、本例のラジアル転がり軸受用試験装置により、供試軸受である前記両ラジアル転がり軸受3a、3bの耐久性試験(寿命試験)を行う場合には、前記回転軸2aによる撹拌効果及び負荷圏の潤滑性を考慮して、前記潤滑油溜り6a内に潤滑油を、前記回転軸2aを回転駆動する以前の状態で、この回転軸2aの下端部から上端部までの範囲に規制する事が好ましい。そこで、本例の場合には、この潤滑油の油面(上面)がこの回転軸2aの中心軸上に位置する様に貯留している。そして、この回転軸2aを回転駆動する以前の状態で、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bの下半部のみを前記潤滑油中に浸漬している。これにより、寿命試験中に、前記回転軸2aの外周面のうちの少なくとも下端部が潤滑油中に浸漬し、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bが径方向に関して少なくとも下端から1/3の部分が潤滑油中に浸漬した状態となる様にしている。そして、前記ヒータ24によりこの潤滑油の油温を所望の温度(例えば100℃)に保持する。本例の場合、この潤滑油の油面を、前記回転軸2aを回転駆動する以前の状態で、この回転軸2aの中心軸上に位置させている為、寿命試験中にも、この回転軸2aや前記両ラジアル転がり軸受3a、3bを所定の温度の範囲内に保持し易い。又、前記ピストン部16の基端面を押圧する事で前記回転軸2aを軸方向に押圧し、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bに所望のアキシアル荷重F
aを付加する。更に、前記押圧ロッド20により前記可動ハウジング4aの外周面を押圧する事で前記回転軸2aを水平方向に押圧し、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bに所望のラジアル荷重F
rを付加する。この状態で、前記回転軸2aを、これら両ラジアル転がり軸受3a、3bを構成する玉25、25の回転(公転)方向が、これら両ラジアル転がり軸受3a、3bの円周方向に関して前記ラジアル荷重の作用方向前方に位置する負荷圏(
図2に太線で示す部分)を、下方から上方に向け通過する方向(
図2の時計方向)に、所望の回転速度で回転駆動する。この結果、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bが、所望のラジアル荷重F
r及びアキシアル荷重F
aを付加されつつ所望の回転速度で回転駆動される。この状態で、前記振動センサ23が検出する前記両ラジアル転がり軸受3a、3bの振動値(振幅)が、試験開始時の初期振動値の1.5倍以上、3倍未満(例えば2倍)に設定された閾値を超えた時点をこれら両ラジアル転がり軸受3a、3bの寿命とし、試験を終了する。この閾値が初期振動値の1.5倍未満の場合、これら両ラジアル転がり軸受3a、3b以外の破損に基づく振動により試験が終了する可能性がある。又、前記閾値が3倍以上である場合は、破損が大幅に進行してしまい、破損の起点となった部位を特定できなくなる可能性がある。尚、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bを交換する際には、前記両支持スリーブ14a、14bを軸方向外方に変位させた状態で、前記回転軸2aの軸方向両側から前記両ラジアル転がり軸受3a、3bの交換を行う。
【0017】
上述の様な本例のラジアル転がり軸受用試験装置によれば、前記固定ハウジング1aを、全体を一体に形成している為、前記ラジアル荷重F
r及び前記アキシアル荷重F
aに対する剛性を十分に高くできる。この効果に就いて、
図2に加え、比較例に係る構造を示した
図4を用いて説明する。固定ハウジング1bは、上方が開口した矩形箱状で、平板状の底板部26に、互いに平行な1対の側板部27、27と、これら両側板部27、27の端部同士を連結した1対の端板部とを、それぞれ溶接や接着等により支持固定する事で造られている。即ち、前記固定ハウジング1bは、5枚の板材を連結する事により造られている。この為、回転軸2aに付与する水平方向のラジアル荷重F
rを大きくした場合に、前記両側板部27、27のうちでこのラジアル荷重F
rの作用方向前側に位置し、このラジアル荷重F
rを支承する側板部27(
図4の左側)が、このラジアル荷重F
rの作用方向に向け倒れる方向に変形(弾性変形)する可能性がある。この結果、このラジアル荷重F
rを、供試軸受である前記両ラジアル転がり軸受3a、3bに正常に付与できなくなって、試験結果のばらつきが大きくなる可能性がある。これに対し、本例の場合、前記固定ハウジング1aは全体を一体に形成すると共に、前記潤滑油溜り6bの底面を凹曲面として、前記両幅方向側壁部17a、17bの板厚を上端よりも下端側で大きくしている為、前記ラジアル荷重F
rに対する剛性を十分に高くできる。この為、このラジアル荷重F
rを前記両ラジアル転がり軸受3a、3bに正常に付与し、試験結果がばらつく事を防止できる。又、前記潤滑油溜り6aの内面に、複数の板材を組み合わせる事で形成される継ぎ目がない為、前記固定ハウジング1aの伝熱性を良好にできる。又、前記潤滑油溜り6a内を洗浄する際に、前記潤滑油中に混入した異物7、7が前記継ぎ目に付着し(引っ掛かり)残留する事がない。これにより、この潤滑油の性状を均一に保ち易くできる為、試験結果のばらつきを抑えられる。
【0018】
又、本例の場合、前記潤滑油溜り6aの底面を、前記回転軸2aの中心軸と同心の部分円筒状の凹曲面としている為、前記潤滑油やこの潤滑油中に混入した大小様々な異物7、7が、前記潤滑油溜り6a内で滞留(堆積)するのを防止して、この潤滑油の性状をこの潤滑油溜り6a内で均一にできる。即ち、前述の
図4に示した比較例に係る構造の場合、固定ハウジング1bの内側に設けた潤滑油溜り6bのうちで、底板部26の上面と側板部27、27の内側面との連続部である隅部(
図4に鎖線αで囲んだ部分)に、潤滑油やこの潤滑油中に混入した異物7、7が滞留し易くなる。これに対し、本例の場合、前記潤滑油溜り6aの底面を部分円筒状の凹曲面とする事で、潤滑油や異物7、7の滞留を防止している。更に、本例の場合、前記潤滑油溜り6aの底面と、前記可動ハウジング4a及び前記両支持スリーブ14a、14bの外周面との間に前記ヒータ24を、これら各面とこのヒータ24の上下両側面との間にそれぞれ隙間を介在させた状態で設けている。この為、流路の絞りに基づき、このヒータ24の上下両側部分で前記潤滑油の流速を速くでき、この潤滑油や前記異物7、7がより滞留し難くできる。又、潤滑油との熱交換を効率良く行える。特に、本例の場合、前記潤滑油溜り6aの底面の曲率半径rを、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bの外径Dの0.6倍以上、2倍以下としている(0.6D≦r≦2D)為、必要とする潤滑油の油量を徒に増大させる事なく、前記潤滑油の循環性を良好にできる。更に、前記曲率半径rを、前記外径Dの1倍以下(r≦D)とすれば、前記潤滑油の油量をより低減する事ができる。即ち、前記曲率半径rを、前記外径Dの2倍よりも大きくした場合(r>2D)、必要とする潤滑油の油量が増大する。一方、前記曲率半径rを、前記外径Dの0.6倍未満とした場合(r<0.6D)、前記ヒータ24の上下両側部分の隙間が狭くなり過ぎて、前記潤滑油の循環性が低下する。又、このヒータ24の上下両側部分に隙間を設ける事で、このヒータ24の上下両側面と前記潤滑油との接触面積を広くでき、この潤滑油の油温調節を効率良く行う事ができる。又、前記潤滑油溜り6aの底面を凹曲面として、この潤滑油溜り6aの表面を滑らかに連続させている為、この潤滑油溜り6aの表面が均一に熱を吸収又は放散する事ができて、油温にばらつきが生じる事を防止できる。具体的には、前記潤滑油溜り6a内に貯留した潤滑油の油温を、所望の温度±3℃の範囲内に調節可能になる。
【0019】
又、本例の場合、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bの下半部のみを潤滑油中に浸漬し、これら両ラジアル転がり軸受3a、3bに対し水平方向にラジアル荷重F
rを付与している。更に、前記回転軸2aの回転方向を規制し、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bを構成する玉25、25が、前記負荷圏を下方から上方に向け通過する方向に回転(公転)する様にしている。この為、このラジアル荷重F
rの作用方向前方に位置する負荷圏の潤滑状態を適正な状態にする事ができ、この負荷圏で潤滑油が不足乃至枯渇する傾向になって、試験結果のばらつきが大きくなったり、潤滑状態が過剰になって、試験時間が徒に増大するのを防止できる。更に、前記各玉25、25の公転方向を規制している為、前記潤滑油溜り6a内に貯留した潤滑油中に混入した前記異物7、7を、前記負荷圏に適切に送り込む事ができ、この面からも試験結果を安定させられる(ばらつきを抑えられる)。
【0020】
この理由に就いて、
図2に加え、
図5〜6を参照しつつ、より詳しく説明する。
図5は、前述した従来構造の場合と同様に、供試軸受であるラジアル転がり軸受3cに対し、ラジアル荷重Fを鉛直方向に付与する構造を示している。先ず、このラジアル転がり軸受3cの内輪8aを、回転軸2bを介し鉛直方向下向きに押圧した場合、
図5の(A)に示す様に、前記ラジアル転がり軸受3cの下端部{同図の(A)に太線で示した部分}が負荷圏となる(この下端部にラジアル荷重Fが付与される)。前記ラジアル転がり軸受3cは、下半部を潤滑油中に浸漬している為、負荷圏の潤滑状態が過剰となり(良好になり過ぎて)、試験時間が増大する。一方、サポート軸受5(
図7参照)は上端部が負荷圏となり、この負荷圏の潤滑油が不足乃至枯渇する傾向となる。この結果、前記サポート軸受5の寿命が短くなり、このサポート軸受5を頻繁に交換する必要がある。又、このサポート軸受5の寿命が前記ラジアル転がり軸受3cの寿命よりも短くなって、このラジアル転がり軸受3cの寿命試験を正常に行えなくなる可能性がある。これに対し、このラジアル転がり軸受3cの内輪8aを、前記回転軸2bを介し鉛直方向上向きに押圧した場合、
図5の(B)に示す様に、前記ラジアル転がり軸受3cの上端部{同図の(B)に太線で示した部分}が負荷圏となる(この上端部にラジアル荷重Fが付加される。)。この負荷圏となる上端部では潤滑油が不足乃至枯渇する傾向となる為、寿命試験を行った場合に、何らかの原因で前記ラジアル転がり軸受3cの上端部に潤滑油の飛沫がかかるか、かからないかによって、試験結果が大きくばらつく可能性がある。この様なばらつきは、潤滑油中に異物7、7を混入した場合に顕著となる。
【0021】
これに対し、本例の場合、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bに対し水平方向にラジアル荷重F
rを付与すると共に、前記各玉25、25の公転方向を、前記負荷圏を下方から上方に向け通過する方向としている為、
図6の(A)に示す様に、前記潤滑油中に、前記潤滑油溜り6aの底部から前記負荷圏に向く流れを惹起できる。この結果、前記負荷圏のうちで、前記潤滑油中に浸漬していない部分にも、この潤滑油の一部を跳ねかける事ができる為、潤滑油を程良く行き渡らせる事ができて、安定した試験を行う事が可能になる。又、前記潤滑油中に混入した異物7、7を前記負荷圏に適切に送り込む事ができる。一方、前記各玉25、25の公転方向を、前記負荷圏を上方から下方に向け通過する方向とした場合、
図6の(B)に示す様に、潤滑油中に、ラジアル転がり軸受3a(3b)の円周方向に関して前記負荷圏と反対側に向く流れが惹起される。この為、前記負荷圏のうちで、前記潤滑油中に浸漬していない部分では潤滑油が不足する。従って、この潤滑油が不足した部分(範囲)は、僅かな飛沫の影響で潤滑状態が変化し、試験結果がばらつく要因となる。又、前記負荷圏に適切な量の異物7、7を送り込めなくなる(異物7、7は潤滑油の流れにより非負荷圏側に集まってしまう)。又、前記回転軸2aを回転駆動する以前の状態で、潤滑油の油面がこの回転軸2aの中心軸上に位置する様にしている為、前記可動ハウジング4aの外周面と前記押圧治具19の先端面との当接部を潤滑して、これら両面同士の間でフレッチングが発生するのを防止できる。更に、前記回転軸2aの外周面のうちの少なくとも下端部を、潤滑油中に浸漬させられる為、前記両ラジアル転がり軸受3a、3b及び前記回転軸2a等の前記固定ハウジング1aの内側に配置された部材の温度変化を抑制する事ができる。
【0022】
更に、本例の場合、前記振動センサ23を、先端面を前記可動ハウジング4aに当接した押圧治具19の基端面と、前記押圧ロッド20により押圧された鋼球21との間に設けた押圧板22に設置している。即ち、前記振動センサ23を、前記ラジアル荷重F
rの作用方向に関して直列に設けた前記押圧板22の振動を検知する様に設けている為、前記両ラジアル転がり軸受3a、3bの振動の検出精度が向上する。又、前記押圧治具19の基端面と前記押圧板22とを面接触させている。この面からも前記振動の検出精度の向上を図れる。又、前記振動センサ23は、前記固定ハウジング1aの外側に設けている為、この振動センサ23に潤滑油の飛沫がかかったり、前記ヒータ24の発生する熱によって高温になるのを防止できる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明の効果を確認する為に行った実験に就いて説明する。この実験は、耐久評価試験の為の寿命試験を、試験装置及び回転軸の回転方向が異なるものを対象に、それぞれ10回ずつ行い、試験結果のばらつきに就いて検証した。実施例及び比較例1に就いては本発明の実施の形態の1例に係る試験装置を使用し、比較例2に就いては
図4に記載した試験装置を使用した。前記寿命試験の条件は、次の通りである。又、回転軸の回転方向は、実施例及び比較例2に就いては、供試軸受を構成する各転動体が負荷圏を下方から上方に向け通過する方向とし、比較例1に就いては、同じく上方から下方に向け通過する方向とした。
供試軸受 : 呼び番号6208(外径=80mm、内径=40mm、幅=18mm)
試験荷重 : 7300N{P/C(負荷荷重/定格荷重)=0.25}
回転速度 : 4500min
−1
試験温度 : 100℃
潤滑油 : トランスミッション油
異物 : 鉄系金属粉末を所定量混入
この様な条件の下、振動センサの検出する供試軸受の振動値が初期振動値の2倍となった時点を、この供試軸受の寿命とした。そして、その時点で試験を打ち切り、内輪軌道及び外輪軌道、並びに、各転動体の転動面の剥離の有無を、目視により確認した。尚、最長試験時間は、500時間(Hr)とし、500時間経過時点で振動値が初期振動値の2倍に達しなかった供試軸受に関しては、以後の試験は打ち切りとした。この様にして行った寿命試験の結果を、次の表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
上述の様な表1から分かる様に、実施例では、比較例1〜2と比較して、試験結果のばらつきが抑えられている。即ち、比較例1の場合、負荷圏のうちで潤滑油に浸漬されていない部分に潤滑油が不足すると共に、異物を供試軸受に十分供給できない為、寿命の最大値と最小値との差が5倍以上となり、ワイブルスロープの値も1.8と低い。更に、各供試軸受毎に、内輪、外輪及び玉の何れも破損しており、破損部位にもばらつきが生じた。又、比較例2の場合、水平方向に付加されるラジアル荷重に対する固定ハウジングの剛性が不足し、この固定合うジングを構成する側板部に弾性変形が生じる為、供試軸受にラジアル荷重を正常に付与できない。又、異物を供試軸受に十分に供給できない為、各供試軸受のうちの4割の供試軸受で打ち切り時間を超えた。これに対し、実施例の場合には、寿命の最大値と最小値との差が1.6倍と小さく、ワイブルスロープの値も6.3と高くなっている。又、破損部位も、内輪或いは内外輪の何れかとなっている。