(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の架橋メタクリル樹脂(A)に、芳香族ビニル、シアン化ビニル、アクリルエステル、メタクリルエステル、マレイミド、及び無水マレイン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(以下、「グラフト単量体」と称す。)がグラフト重合したグラフト架橋メタクリル樹脂(B)。
架橋メタクリル樹脂(A)の存在下に前記グラフト単量体をグラフト重合させることで得られ、グラフト重合時の架橋メタクリル樹脂(A)の割合が、40〜80質量%で、グラフト単量体の割合が20〜60質量%であり(ただし、架橋メタクリル樹脂(A)とグラフト単量体混合物の合計を100質量%とする。)、グラフト率が23〜100%であることを特徴とする請求項2に記載のグラフト架橋メタクリル樹脂(B)。
請求項1の架橋メタクリル樹脂(A)、及び/又は、請求項2又は3のグラフト架橋メタクリル樹脂(B)5〜20質量部と、該架橋メタクリル樹脂(A)及びグラフト架橋メタクリル樹脂(B)以外の他の熱可塑性樹脂(C)80〜95質量部とを合計で100質量部となるように含むことを特徴とする耐傷付き性樹脂組成物。
他の熱可塑性樹脂(C)が、ゴム質重合体に、芳香族ビニル、シアン化ビニル、アクリルエステル、メタクリルエステル、マレイミド、及び無水マレイン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(以下、「グラフト単量体」と称す。)をグラフト重合したグラフト重合体(D)を含むことを特徴とする請求項4に記載の耐傷付き性樹脂組成物。
前記ゴム質重合体のゲル含有量が55〜99質量%で、体積平均粒子径が0.08〜0.5μmであり、グラフト重合体(D)は、該ゴム質重合体の40〜80質量%と前記グラフト単量体の20〜60質量%(ただし、ゴム質重合体とグラフト単量体との合計で100質量%とする。)とをグラフト重合してなり、グラフト率が23〜100%であることを特徴とする請求項5に記載の耐傷付き性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、「メタクリルエステル」とは「メタクリル酸エステル(メタクリル酸とアルコールとのエステル)」をさし、「アクリルエステル」とは「アクリル酸エステル(アクリル酸とアルコールとのエステル)」をさす。
【0021】
[架橋メタクリル樹脂(A)]
本発明の架橋メタクリル樹脂(A)は、架橋性単量体と、メタクリル系単量体とを含むメタクリル系単量体混合物を重合して得られる重合体であり、クロロホルムで膨潤させた場合のゲル化率が90〜100%、膨潤度が2〜20倍であり、かつ体積平均粒子径が0.01〜0.5μmであることを特徴とする。
【0022】
架橋性単量体は、重合性二重結合を2つ以上有する多官能性単量体であり、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレートなどが挙げられるこれらの架橋性単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
架橋性単量体の使用量は、架橋メタクリル樹脂(A)の製造に用いる架橋性単量体とメタクリル系単量体の合計を100質量%とした場合、36〜66質量%が好ましい。この架橋性単量体の使用量が36質量%未満では、十分な耐引っ掻き傷性の向上効果が得られず、架橋性単量体の使用量が66質量%以上を超えると、樹脂に配合した際に、架橋メタクリル樹脂(A)同士で凝集してブツとなり、光沢性、発色性、表面外観が悪化するおそれがある。
【0024】
メタクリル系単量体としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等のメタクリルエステル、メタクリル酸などが挙げられる。これらの単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
メタクリル系単量体の使用量は、架橋メタクリル樹脂(A)の製造に用いる架橋性単量体とメタクリル系単量体の合計を100質量%とした場合、34〜64質量%が好ましい。このメタクリル系単量体の使用量が34質量%未満では、樹脂に配合した際に、架橋メタクリル樹脂(A)同士で凝集してブツとなり、光沢性、発色性、表面外観が悪化するおそれがあり、メタクリル系単量体の使用量が64質量%を超えると、十分な耐引っ掻き傷性の向上効果が得られない。
【0026】
本発明の架橋メタクリル樹脂(A)を製造する際に用いるメタクリル系単量体混合物は、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の共重合可能な単量体を含有してもよい。
その他の共重合可能な単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−もしくはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレンなどの芳香族ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、グリシジルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートなどのアクリルエステル、アクリル酸、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド類や無水マレイン酸などが挙げられる。これらのその他の共重合可能な単量体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
メタクリル系単量体混合物が、これらのその他の共重合可能な単量体を含有する場合、メタクリル系単量体混合物中のその他の共重合可能な単量体の含有量は20質量%以下であることが好ましい。
【0027】
本発明の架橋メタクリル樹脂(A)は、以下に示すクロロホルム膨潤法によるゲル化率が90〜100%であり、膨潤度が2〜20倍であることを特徴とする。ゲル化率が90%未満では、耐引っ掻き傷性の向上効果が得られない。また、膨潤度が2倍未満では、架橋メタクリル樹脂(A)が樹脂中で凝集しやすくなり、表面外観が悪化し、20倍より大きいと、耐引っ掻き傷性の向上効果が得られない。
【0028】
<架橋メタクリル樹脂(A)のゲル化率、膨潤度の測定および計算方法>
試料約0.1gを、クロロホルム中に2時間浸漬して平衡膨潤させた後、膨潤した試料を濾過し、溶解しなかった部分を取り出して真空乾燥する。ゲル化率は、最初に採取した試料に対するクロロホルム膨潤後に溶解しなかった部分の重量分率として定義され、下記式[I]で求められる。
ゲル化率(%)=真空乾燥後の試料(g)÷膨潤前の試料(g)×100 ・・・[I]
また、膨潤度は、上記真空乾燥後の試料の重量に対する膨潤した試料の重量の増加割合として定義され、下記式[II]で求められる。
膨潤度(倍)=膨潤した試料(g)÷真空乾燥後の試料(g) ・・・[II]
【0029】
また、本発明の架橋メタクリル樹脂(A)の体積平均粒子径は、0.01〜0.5μmであり、好ましくは0.05〜0.3μmである。架橋メタクリル樹脂(A)の体積平均粒子径が0.01μm未満では、耐引っ掻き傷性の向上効果が得られず、0.5μmを超えると、表面外観が悪くなる。
【0030】
架橋メタクリル樹脂(A)は、塊状重合法、溶液重合法、塊状懸濁重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法により製造することができるが、粒子径を制御しやすい点では、乳化重合法によることが好ましい。
【0031】
架橋メタクリル樹脂(A)のゲル化率を上記好適範囲とするには、架橋性単量体を上記の36〜66質量%の範囲で用いればよい。また、架橋メタクリル樹脂(A)の膨潤度を上記好適範囲とするにも、架橋性単量体を上記の範囲で用いればよい。更に、架橋メタクリル樹脂(A)の体積平均粒子径は、乳化重合に用いる乳化剤の添加量により制御することができ、上記好適範囲とするには、架橋メタクリル樹脂(A)の製造に用いる架橋性単量体とメタクリル系単量体の合計を100質量%とした場合、乳化剤を0.4〜2.8質量%用いればよい。
【0032】
[グラフト架橋メタクリル樹脂(B)]
本発明の架橋メタクリル樹脂(A)は、芳香族ビニル、シアン化ビニル、アクリルエステル、メタクリルエステル、マレイミド、及び無水マレイン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体(以下、これらを「グラフト単量体」と称す場合がある。)がグラフト重合したグラフト架橋メタクリル樹脂(B)として用いることもできる。架橋メタクリル樹脂(A)にこれらの単量体がグラフト重合されていると、樹脂への分散性がより良好となり、表面外観がより一層優れたものとなることから、好ましい。
【0033】
グラフト単量体としては、上記メタクリル系単量体混合物におけるメタクリル系単量体として例示したメタクリルエステルや、その他の共重合可能な単量体として例示した芳香族ビニル、シアン化ビニル、マレイミド類、無水マレイン酸、アクリルエステルが挙げられ、それらのうちの1種以上を使用できる。なかでも、芳香族ビニルとしてスチレン、α−メチルスチレンの少なくとも1つと、シアン化ビニルとしてアクリロニトリルを使用することが好ましく、特に架橋メタクリル樹脂(A)へのグラフト重合に用いるグラフト単量体100質量%中の芳香族ビニルの含有量を70〜82質量%、シアン化ビニルの含有量を18〜30質量%の単量体混合物とすることにより、後述の熱可塑性樹脂(C)との相溶性が増し、表面外観が良好となる。
【0034】
グラフト架橋メタクリル樹脂(B)は、架橋メタクリル樹脂(A)の存在下に上記のグラフト単量体をグラフト重合させることで得られる。
グラフト重合時の架橋メタクリル樹脂(A)の割合は、40〜80質量%であり、グラフト単量体の割合は20〜60質量%であることが好ましい(ただし、架橋メタクリル樹脂(A)とグラフト単量体混合物の合計を100質量%とする。)。架橋メタクリル樹脂(A)の割合が上記範囲内であれば、発色性、光沢性を低下させることなく、耐引っ掻き傷性を向上させる架橋メタクリル樹脂(A)本来の効果を損なうことなく、樹脂中への分散性を十分に高めることができ、表面外観が向上する。
【0035】
グラフト架橋メタクリル樹脂(B)は、樹脂への分散性が良好となることから、グラフト率が23〜100%であることが好ましい。
【0036】
なお、本発明におけるグラフト率(G)は、下記式[III]より求められる。
G=100(P−E)/E ・・・[III]
P:アセトン不溶分の質量(グラフト架橋メタクリル樹脂(B)または後述のグラフト重合体(D)をメタノールで洗浄した後、アセトンで抽出し、遠心分離機でアセトン可溶分とアセトン不溶分に分離し、得られたアセトン不溶分を真空乾燥した後の質量(g))
E:グラフト重合前のグラフト架橋メタクリル樹脂(B)またはグラフト重合体(D)の質量(g)
【0037】
グラフト架橋メタクリル樹脂(B)は、塊状重合法、溶液重合法、塊状懸濁重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法により製造することができる。
【0038】
なお、前述の体積平均粒子径の架橋メタクリル樹脂(A)に、グラフト単量体を上記の好適なグラフト率でグラフト重合して得られるグラフト架橋メタクリル樹脂(B)の体積平均粒子径は通常0.01〜0.6μm程度である。
【0039】
[熱可塑性樹脂(C)]
本発明の耐傷付き性樹脂組成物は、上記の架橋メタクリル樹脂(A)及び/又はグラフト架橋メタクリル樹脂(B)と、架橋メタクリル樹脂(A)及びグラフト架橋メタクリル樹脂(B)以外の他の熱可塑性樹脂(C)を含むものである。
【0040】
熱可塑性樹脂(C)としては、前記メタクリル系単量体のメタクリルエステル及び/又は前記その他の共重合可能な単量体のアクリルエステルの1種又は2種以上を主成分とする単量体又は単量体混合物を重合して得られるポリメタクリレートやポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリカプロラクトン、芳香族ポリエステルエラストマー、ポリアミド系エラストマー、ASグラフトポリエチレン、ASグラフトポリプロピレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂などのスチレン系樹脂等が挙げられ、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明における熱可塑性樹脂(C)は、ゴム質重合体に、芳香族ビニル、シアン化ビニル、アクリルエステル、メタクリルエステル、マレイミド、及び無水マレイン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体をグラフト重合したグラフト重合体(D)を含有すると、耐擦り傷性も良好となることから好ましい。
【0042】
グラフト重合体(D)を形成するゴム質重合体としては、例えば、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、天然ゴム等のジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体等のオレフィン系ゴム、ポリオルガノシロキサン等のシリコン系ゴム等が挙げられ、これらは1種を単独で、あるいは2種以上を混合して使用できる。また、ゴム質重合体の構造が複合形態をとってもよく、例えば、ポリブタジエンにアクリル酸エステルを重合したものや、ポリオルガノシロキサンにアクリル酸エステルを重合したものでもよい。これらゴム質重合体の中でも、得られる樹脂組成物の耐擦り傷性が向上することから、ジエン系ゴム、オレフィン系ゴムが好ましい。
【0043】
ゴム質重合体の架橋の有無は特に制限はされないが、発色性に優れることから架橋されていることが好ましく、ゴム質重合体のゲル化率は50〜99質量%であることが好ましい。
なお、ゴム質重合体のゲル化率はゴム質重合体の架橋度を示し、具体的には、秤量したゴム質重合体を適当な溶剤に20時間かけて溶解させ、次いで、100メッシュ金網で分取し、金網に残った不溶分を乾燥させたのち秤量し、溶剤に溶解させる前のゴム質重合体に対する乾燥させた不溶分の割合(質量%)で求められる。ゴム質重合体の溶解に用いる溶剤としては、例えば、ジエン系ゴムやオレフィン系ゴムではトルエンを、アクリル系ゴムではアセトンを用いると測定しやすい。
【0044】
また、ゴム質重合体の体積平均粒子径は、0.08〜0.5μmであることが好ましい。ゴム質重合体の体積平均粒子径が上記範囲であると、得られる樹脂組成物や成形品の発色性が良好となる。
【0045】
グラフト重合体(D)は、ゴム質重合体の存在下に、芳香族ビニル、シアン化ビニル、アクリルエステル、メタクリルエステル、マレイミド、及び無水マレイン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体をグラフト重合させることで得られる。グラフト重合に用いる単量体(以下、「グラフト単量体」)としては、グラフト架橋メタクリル樹脂(B)のグラフト重合に用いたグラフト単量体と同様のものを用いることができる。なかでも、芳香族ビニルとしてスチレン、α−メチルスチレンの少なくとも1つと、シアン化ビニルとしてアクリロニトリルを使用することが好ましく、特にグラフト重合に用いるグラフト単量体100質量%中の芳香族ビニルの含有量を70〜82質量%、シアン化ビニルの含有量を18〜30質量%の単量体混合物とすることが、架橋メタクリル樹脂(A)やグラフト架橋メタクリル樹脂(B)、熱可塑性樹脂(C)との相溶性が増し、表面外観が良好となる点で好ましい。
【0046】
グラフト重合時のゴム質重合体の割合は、40〜80質量%であり、グラフト単量体の割合は20〜60質量%であることが好ましい(ただし、ゴム質重合体とグラフト単量体の合計を100質量%とする。)。ゴム質重合体の割合が上記範囲内であれば、グラフト重合体(D)の生産性が良好であるとともに、樹脂組成物やその成形品に擦り傷が付きにくくなる。
【0047】
グラフト重合体(D)は、樹脂組成物やその成形品の発色性、成形外観が良好となることから、グラフト率が23〜100%であることが好ましい。
グラフト重合体(D)のグラフト率は、前述のグラフト架橋メタクリル樹脂(B)のグラフト率の求め方と同様の方法で測定することができる。
【0048】
グラフト重合体(D)は、塊状重合法、溶液重合法、塊状懸濁重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法により製造され、容易に重合できる点では、乳化重合法が好ましい。
【0049】
[配合割合]
本発明の耐傷付き性樹脂組成物における架橋メタクリル樹脂(A)及び/又はグラフト架橋メタクリル樹脂(B)の配合量は、樹脂組成物やその成形品の光沢性、発色性が低下しにくく、耐引っ掻き傷性が向上し、樹脂中に分散しやすいことから、該架橋メタクリル樹脂(A)及び/又はグラフト架橋メタクリル樹脂(B)と熱可塑性樹脂(C)との合計を100質量部とした場合に、5〜20質量部、好ましくは8〜15質量部である。また、同様な理由から、本発明の樹脂組成物における熱可塑性樹脂(C)の配合量は、該熱可塑性樹脂(C)と架橋メタクリル樹脂(A)及び/又はグラフト架橋メタクリル樹脂(B)との合計を100質量部とした場合に、80〜95質量部、好ましくは85〜92質量部である。
【0050】
また、本発明の樹脂組成物におけるグラフト重合体(D)の配合量は、樹脂組成物やその成形品に擦り傷が付きにくいことから、該グラフト重合体(D)を含む全熱可塑性樹脂(C)を100質量部とした場合に、0〜95質量部であることが好ましく、特に5〜50質量部であることが好ましい。
【0051】
[添加剤]
本発明の耐傷付き性樹脂組成物には、架橋メタクリル樹脂(A)及び/又はグラフト架橋メタクリル樹脂(B)と、熱可塑性樹脂(C)の他に、耐傷付き性樹脂組成物や成形品の物性を損なわない範囲において、樹脂組成物の製造時(混合時)、成形時に、慣用の他の添加剤、例えば滑材、顔料、染料、充填剤(カーボンブラック、酸化チタン等)、耐熱剤、酸化劣化防止剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤等を配合することができる。
【0052】
[耐傷付き性樹脂組成物の製造方法]
本発明の耐傷付き性樹脂組成物は、公知の装置を使用した公知の方法で製造できる。例えば、一般的な方法として溶融混合法があり、この方法で使用する装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等が挙げられる。混合には回分式、連続式のいずれを採用してもよい。また、各成分の混合順序などにも特に制限はなく、全ての成分が均一に混合されればよい。
【0053】
[成形品]
本発明の成形品は、本発明の耐傷付き性樹脂組成物が成形されたものである。その成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形機法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法及びインフレーション成形法等が挙げられる。これらのなかでも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
本発明の成形品は、耐傷付き性に優れ、発色性、成形外観にも優れることから、特に自動車内外装部品などに好適に使用できる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0055】
[物性の測定方法]
(1)ゲル化率、膨潤度およびグラフト率
それぞれ上述した方法により求めた。
なお、以下の例において、前記式[III]中のPは、グラフト架橋メタクリル樹脂(B)又はグラフト重合体(D)をメタノールで洗浄した後、アセトンで抽出して遠心分離機でアセトン可溶分とアセトン不溶分に分離し、得られたアセトン不溶分を真空乾燥した後の質量(g)である。
(2)体積平均粒子径
日機装株式会社製「ナノトラック150」を用い、体積平均粒子径を測定した。
【0056】
[製造例1:架橋メタクリル樹脂(A1)]
耐圧反応容器に蒸留水430質量部とアルケニルコハク酸カリウム1.4質量部、メチルメタクリレート50質量部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート50質量部、アリルメタクリレート2質量部と、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.26質量部、硫酸第一鉄七水塩0.00015質量部、ナトリウムアルデヒドスルホキシド0.33質量部、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四カルボン酸二ナトリウム0.00045質量部を仕込み、内温を75℃まで昇温し、2時間反応を行った。その後、90℃まで昇温し、60分間保持することで反応を完結させた。内容物を硫酸水溶液で凝固した後、遠心脱水機で洗浄、脱水を繰り返し、乾燥させて架橋メタクリル樹脂(A1)を得た。
架橋メタクリル樹脂(A1)の体積平均粒子径は0.06μm、ゲル化率は99%、膨潤度は10倍であった。
【0057】
[製造例2:架橋メタクリル樹脂(A2)]
アルケニルコハク酸カリウムの使用量を2.8質量部とした以外は、製造例1と同様の条件で反応を行って、架橋メタクリル樹脂(A2)を得た。
架橋メタクリル樹脂(A2)の体積平均粒子径は0.01μm、ゲル化率は99%、膨潤度は10倍であった。
【0058】
[製造例3:架橋メタクリル樹脂(A3)]
アルケニルコハク酸カリウムの使用量を0.4質量部とした以外は、製造例1と同様の条件で反応を行って、架橋メタクリル樹脂(A3)を得た。
架橋メタクリル樹脂(A3)の体積平均粒子径は0.5μm、ゲル化率は99%、膨潤度は10倍であった。
【0059】
[製造例4:架橋メタクリル樹脂(A4)]
メチルメタクリレートの使用量を62質量部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートの使用量を36質量部とした以外は、製造例1と同様の条件で反応を行って、架橋メタクリル樹脂(A4)を得た。
架橋メタクリル樹脂(A4)の体積平均粒子径は0.06μm、ゲル化率は90%、膨潤度は20倍であった。
【0060】
[製造例5:架橋メタクリル樹脂(A5)]
メチルメタクリレートの使用量を32質量部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートの使用量を66質量部とした以外は、製造例1と同様の条件で反応を行って、架橋メタクリル樹脂(A5)を得た。
架橋メタクリル樹脂(A5)の体積平均粒子径は0.06μm、ゲル化率は100%、膨潤度は2倍であった。
【0061】
[製造例6:架橋メタクリル樹脂(A6)]
アルケニルコハク酸カリウムの使用量を3.0質量部とした以外は、製造例1と同様の条件で反応を行って、架橋メタクリル樹脂(A6)を得た。
架橋メタクリル樹脂(A6)の体積平均粒子径は0.009μm、ゲル化率は99%、膨潤度は10倍であった。
【0062】
[製造例7:架橋メタクリル樹脂(A7)]
アルケニルコハク酸カリウムの使用量を0.3質量部とした以外は、製造例1と同様の条件で反応を行って、架橋メタクリル樹脂(A7)を得た。
架橋メタクリル樹脂(A7)の体積平均粒子径は0.6μm、ゲル化率は99%、膨潤度は10倍であった。
【0063】
[製造例8:架橋メタクリル樹脂(A8)]
メチルメタクリレートの使用量を64質量部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートの使用量を34質量部とした以外は、製造例1と同様の条件で反応を行って、架橋メタクリル樹脂(A8)を得た。
架橋メタクリル樹脂(A8)の体積平均粒子径は0.06μm、ゲル化率は89%、膨潤度は21倍であった。
【0064】
[製造例9:架橋メタクリル樹脂(A9)]
メチルメタクリレートの使用量を30質量部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートの使用量を68質量部とした以外は、製造例6と同様の条件で反応を行って、架橋メタクリル樹脂(A9)を得た。
架橋メタクリル樹脂(A9)の体積平均粒子径は0.06μm、ゲル化率は100%、膨潤度は1.5倍であった。
【0065】
上記架橋メタクリル樹脂(A1)〜(A9)の物性を表1にまとめて示す。
【0066】
【表1】
【0067】
[製造例10:グラフト架橋メタクリル樹脂(B1)]
製造例1で反応を完結させた後、引き続き耐圧反応容器にアルケニルコハク酸カリウム0.4質量部と硫酸第一鉄七水塩0.002質量部、ナトリウムアルデヒドスルホキシド0.64質量部、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四カルボン酸二ナトリウム0.006質量部を追加した。内温を65℃まで昇温し、更にアクリロニトリル22質量部、スチレン78質量部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.45質量部の混合液を100分かけて加え、30分間保持することで反応を完結させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト架橋メタクリル樹脂(B1)を得た。
グラフト架橋メタクリル樹脂(B1)の体積平均粒子径は0.07μm、グラフト率は27%であった。
【0068】
[製造例11:グラフト架橋メタクリル樹脂(B2)]
アクリロニトリルの使用量を18質量部、スチレンの使用量を82質量部とした以外は、製造例10と同様に反応を行って、グラフト架橋メタクリル樹脂(B2)を得た。
グラフト架橋メタクリル樹脂(B2)の体積平均粒子径は0.07μm、グラフト率は23%であった。
【0069】
[製造例12:グラフト架橋メタクリル樹脂(B3)]
アクリロニトリルの使用量を30質量部、スチレンの使用量を70質量部とした以外は、製造例10と同様に反応を行って、グラフト架橋メタクリル樹脂(B3)を得た。
グラフト架橋メタクリル樹脂(B3)の体積平均粒子径は0.07μm、グラフト率は27%であった。
【0070】
[製造例13:グラフト架橋メタクリル樹脂(B4)]
アクリロニトリルの使用量を17質量部、スチレンの使用量を83質量部とした以外は、製造例10と同様に反応を行って、グラフト架橋メタクリル樹脂(B4)を得た。
グラフト架橋メタクリル樹脂(B4)の体積平均粒子径は0.07μm、グラフト率は22%であった。
【0071】
[製造例14:グラフト架橋メタクリル樹脂(B5)]
アクリロニトリルの使用量を31質量部、スチレンの使用量を69質量部とした以外は、製造例10と同様に反応を行って、グラフト架橋メタクリル樹脂(B5)を得た。
グラフト架橋メタクリル樹脂(B5)の体積平均粒子径は0.07μm、グラフト率は22%であった。
【0072】
[製造例15:グラフト重合体(D1)]
ゲル化率72質量%、体積平均粒子径0.25μmであるエチレン・α−オレフィン共重合体の乳化ラテックス70質量部(固形分換算)に、ピロリン酸ナトリウム0.15質量部、硫酸第一鉄七水塩0.006質量部、およびフラクトース0.35質量部を仕込み、内温を80℃に保った。これに、スチレン23.4質量部およびアクリロニトリル6.6質量部からなる単量体混合物と、クメンハイドロパーオキサイド0.6質量部とを、各々別の供給口から140分かけて同時に滴下して重合を行った。この間、内温は80℃で一定に制御した。滴下終了後、さらに100分間、80℃のまま保持した後に冷却してグラフト重合を完結させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト重合体(D1)を得た。
グラフト重合体(D1)のグラフト率は31%であった。
【0073】
[製造例16:グラフト重合体(D2)]
蒸留水170重量部に、ゲル化率95質量%、体積平均粒子径0.3μmであるポリブタジエンの乳化ラテックス70質量部(固形分換算)と、スチレン70質量部、アクリロニトリル30質量部からなる単量体混合物と、不均化ロジン酸カリウム1質量部、水酸化ナトリウム0.01質量部、ピロリン酸ナトリウム0.45質量部、硫酸第一鉄七水塩0.01質量部、デキストローズ0.57質量部、t−ドデシルメルカプタン0.08質量部及びクメンハイドロパーオキサイド1.0質量部とを仕込み、60℃から反応を開始し、途中で75℃まで昇温し、2時間半後乳化グラフト重合を完結させた。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト共重合体(D2)を得た。
グラフト重合体(D2)のグラフト率は33%であった。
【0074】
熱可塑性樹脂(C)として、ポリメチルメタクリレート(三菱レイヨン社製「アクリペットVHSK」)、ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック社製「ユーピロンS−3000F」)を用いた。
【0075】
[実施例1〜19、比較例1〜10]
表2〜4に示す配合組成(質量部)で各成分を混合し、28mm二軸押出機(日本製鋼所製「TEX−28V」)を用いて240℃で溶融混練して、ペレット状の樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を射出成形した成形品について、光沢性、発色性、耐傷付き性(鉛筆硬度、ガーゼ摩耗)、表面外観を以下の方法により評価した。
評価結果を表2〜4に示す。
【0076】
<光沢性>
2mm厚の平板の成形品について、デジタル変角光沢計(スガ試験機社製「UGV−5D」)にて入射角60°、反射角60°の条件で測定した。
【0077】
<発色性>
樹脂組成物のペレット100質量部に対して、カーボンブラック0.5質量部を混合して着色し、100×100mm(厚み2mm)の黒着色板(試験片)を射出成形した。得られた黒着色板(試験片)について、色差計でL*を測定した。L*が低いほど黒色となり、発色性が良好である。
【0078】
<鉛筆硬度>
JIS K5600に準拠し、750gの荷重において、成形品(試験片)の鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度が硬いほど、硬く尖ったものにより付く傷が付きにくい。F以上を合格とした。
【0079】
<ガーゼ摩耗>
図1に示すように、先端部1が略半球形に形成された棒状の治具2を用意し、該先端部1に、ガーゼを8枚重ねた積層シートSを被せた。そして、成形品(試験片)Mの表面に対して、棒状の治具2が直角になるように、積層シートSが被せられた先端部1を接触させ、該先端部1を成形品Mの表面において水平方向(図中矢印X方向)に摺動させ、100回往復させた。その際、加える荷重は1kgとした。100回往復させた後、成形品Mの表面における擦り傷を目視で観測し、以下の4段階で評価した。
ガーゼ摩耗が良好なほど、軍手、ガーゼや布などで成形品の表面を拭いた場合や、衣類などが擦れた場合の耐擦り傷性が良好となる。○以上を合格とした。
◎:ほとんど傷が付かない
○:目立たない傷が付く
△:目立つ傷が付く
×:手で触ってわかるほど削れた傷が付く
【0080】
<表面外観>
発色性を評価した100×100mm(厚み2mm)の黒着色板(試験片)について、目視でブツの有無を観察し、以下の4段階で評価した。△以上を合格とした。
◎:全くブツはない
○:ブツはほとんど見えない
△:わずかにブツが見える
×:ブツがはっきり見える
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
表2,3の実施例1〜19に示すように、本発明の架橋メタクリル樹脂(A)又はグラフト架橋メタクリル樹脂(B)を用いた各実施例によれば、発色性、光沢性を低下させず、耐引っ掻き傷性が良好となった耐傷付き性樹脂組成物および成形品が得られた。特に、実施例6に示すように、架橋メタクリル樹脂をグラフト化することにより、発色性、光沢性を低下させず、耐傷付き性に優れ、表面外観に優れた耐傷付き性樹脂組成物および成形品が得られた。
一方、表4に示すように、各比較例で得られた樹脂組成物および成形品は、光沢性、発色性、耐傷付き性、表面外観のうち少なくとも一つが不十分であった。
すなわち、比較例1、2は架橋メタクリル樹脂の体積平均粒子径が本発明の範囲外であることから、耐引っ掻き傷性もしくは表面外観に劣った。比較例3、4はゲル化率又は膨潤度が本発明の範囲外であることから、耐引っ掻き傷性もしくは表面外観に劣った。比較例5〜10は、本発明の架橋メタクリル樹脂(A)もグラフト架橋メタクリル樹脂(B)を含まない、熱可塑性樹脂(C)の物性を示すものである。