(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、半導体光素子の製造方法の主要な工程を示す図である。
図2〜
図6は、半導体光素子の製造方法の主要な工程を説明するための図である。
【0019】
図2の(a)部に示されるように、表面1a及び裏面1bを有する半導体基板1を準備する。半導体基板1は、n型のIII−V族半導体からなり、例えばn型InP基板である。そして、この半導体基板1の表面1a上に、バッファ層2、コア層3、上部クラッド層4、及びコンタクト層6をこの順に成長させてエピタキシャル積層Eを形成する(半導体層成長工程S1(
図1参照))。
【0020】
ここで、バッファ層2は、第1導電型のIII−V族化合物半導体であり、例えばn型InPからなる。コア層3は、アンドープのIII−V族化合物半導体であり、例えばAlGaInAsからなる井戸層及びAlInAsからなる障壁層を含んでいる。上部クラッド層4は、第2導電型のIII−V族化合物半導体であり、例えばp型InPからなる。コンタクト層6は、第2導電型のIII−V族化合物半導体であり、例えばp型InGaAsPまたはp型InGaAsからなる。
【0021】
図2の(b)部に示されるように、コンタクト層6上にエッチングマスク7を形成する(マスク形成工程S2(
図1参照))。エッチングマスク7は、例えば、熱CVD法によって成膜されたSiO
2といった絶縁膜によって好適に構成され、溝8(
図2の(c)部参照)に対応する開口7aを有する。このようなエッチングマスク7は、コンタクト層6上に絶縁膜を成膜した後に、一般的なフォトリソグラフィ法によってこの絶縁膜をエッチングすることにより形成される。
【0022】
図2の(c)部に示されるように、エッチングマスク7を利用してエピタキシャル積層E及び半導体基板1をエッチングする。このエッチングにより、コンタクト層6、上部クラッド層4、コア層3、及びバッファ層2を貫通する溝8が形成され、光導波路のための半導体メサ9が形成される(半導体メサ形成工程S3(
図1参照))。光導波路は、半導体メサ9が延在する方向に沿った光導波路方向を有している。この工程S3により、半導体メサ9を有する基板生産物Pが得られる。
【0023】
工程S3では、例えば、HIガスを用いるドライエッチング法を用いることが好ましい。ドライエッチング法によれば、垂直性が高く且つ平滑な側面9aを有する半導体メサ9が形成され、光の伝搬特性を良好にすることができる。特に、本実施形態のようにエピタキシャル積層Eを構成する各層がInP系の半導体からなる場合には、誘導結合プラズマエッチング(ICP−RIE)法を用いることがより好ましい。この工程S3において、光導波方向と直交する方向の半導体メサ9の幅W1は例えば1μm以上2μm以下である。また、半導体メサ9の高さH1、すなわち溝8の深さは例えば3μm以上4μm以下である。
【0024】
図2の(d)部に示されるように、半導体保護膜(第1絶縁膜)11を化学気相成長法(CVD法)によって形成する(第1絶縁膜形成工程S4(
図1参照))。半導体保護膜11は例えばSiO
2、SiON、又はSiNといった、例えば厚さが0.1μm〜0.3μmの絶縁性材料からなる。半導体保護膜11は、半導体メサ9の側面9a上と上面9b上に形成され、半導体メサ9を覆っている。また、半導体保護膜11は、溝8の側壁面8a及び底面8b、並びにコンタクト層6の上面6aを覆っている。
【0025】
図3の(a)部に示されるように、埋め込み樹脂領域12を形成する(埋め込み樹脂領域形成工程S5(
図1参照))。スピン塗布法によって埋め込み樹脂領域12のための樹脂を半導体保護膜11上に塗布する。樹脂には、ベンゾシクロブテン(BCB)を用いることが好ましい。なお、樹脂には、例えば、ポリイミド、或いは旭硝子株式会社製のALポリマーといった感光性の樹脂を用いてもよい。
【0026】
溝8における埋め込み樹脂領域12の高さH3は、半導体メサ9の高さH1よりも大きい。この場合に、半導体メサ9の上面9bを基準とする埋め込み樹脂領域12の上面12aの高さH3は2μm以上であることが好ましく、その上限は例えば3μmである。このような平坦な上面12aを有する埋め込み樹脂領域12によって半導体メサ9の側面9aが埋め込まれる。
【0027】
図3の(b)部に示されるように、埋め込み樹脂領域12のうち半導体メサ9上の部分に開口(第1開口)Aを形成する(埋め込み樹脂領域エッチング工程S6(
図1参照))。開口Aは、半導体メサ9上に形成された半導体保護膜11を露出させるものであり、開口Aの形成には、例えばCF
4やO
2ガスによるドライエッチング法を用いる。また、開口Aの形成において、開口Aのエッチング深さはエッチング時間により制御する。工程S6のエッチングでは、開口Aから半導体メサ9の上面9bが露出するまで実施する。また、半導体メサ9の上面9bに形成された半導体保護膜11の厚さだけオーバーエッチングしてもよい。
【0028】
この開口Aは、半導体メサ9の幅W1を利用して規定される。すなわち、光導波方向と直交する方向における開口Aの幅W2は、該方向における半導体メサ9の幅W1より若干大きく形成されている。より詳細には、開口Aの幅W2は、半導体メサ9の幅W1に半導体メサ9の両側面9aに形成された半導体保護膜11の厚さt1を加えた合計幅よりも大きい。
【0029】
また、工程S6では、開口Aの形成と同時に、領域Yにおける埋め込み樹脂領域12をエッチングして開口Bを形成する。開口Bは、スクライブ方向と直交する方向における幅W3が、例えば100μmである。
【0030】
図3の(c)部に示されるように、半導体メサ9上の半導体保護膜11をエッチングして除去することにより、半導体メサ9の上面9bを開口Aに露出させる(第1絶縁膜エッチング工程S7(
図1参照))。この工程S7には、例えば、CF
4ガスによるドライエッチング法を用いる。工程7を実施した後の開口Aには、少なくとも、半導体メサ9の上面9bが露出され、半導体メサ9の側面9a上の両側の半導体保護膜11の端面11aが形成されている。
【0031】
続いて、半導体メサ9上に、コンタクト層6とオーミック接触をなすオーミック金属膜15pを形成する(オーミック金属膜形成工程S8(
図1参照))。まず、
図4の(a)部に示されるように、リフトオフのためのマスク13を形成する(工程S8a)。マスク13はポジレジストであり、マスク13の形成には二層レジスト法を用いる。マスク13は、埋め込み樹脂領域12の上面12aと、開口Aの側壁面A1と、開口Bの側壁面B1及び底面B2に形成される。より詳細には、マスク13は、開口Aの側壁面A1において、上面12aから開口Aの底面A2の間に形成されている。また、マスク13の縁部13aは、開口Aの内側に形成されている。このような形状のマスク13は、マスク13を形成するためのパターン形状や露光時間を制御することにより得られる。
【0032】
図4の(b)部に示されるように、半導体メサ9上及びレジスト13上に、例えば蒸着法によって金属膜15を形成する(工程S8b)。この金属膜15は、半導体メサ9の上面9bを含む開口Aの底面A2全体に形成された金属膜15aと、埋め込み樹脂領域12の上面12a上のマスク13上に形成された金属膜15bとを含んでいる。ここで、開口Aの底面A2は、半導体メサ9の上面9bと、半導体保護膜11の端面11aとを含んで構成されている。
【0033】
底面A2は、さらに、埋め込み樹脂領域12の底面12cを含んでいてもよい。このような底面A2に設けられたオーミック金属層15pは、半導体メサ9の幅W1方向に半導体保護層11より外側に突出した突出部Sを含む。
【0034】
金属膜15は、Au膜、Zn膜、Au膜がこの順に積層された構成(Au/Zn/Au)を有し、これらAu膜及びZn膜は蒸着法によって形成される。なお、金属膜15は、Ti膜、Pt膜、Au膜がこの順に積層された構成(Ti/Pt/Au)であってもよい。
【0035】
図4の(c)部に示されるように、金属膜15において不要部分をリフトオフ法によって除去する(工程S8c)。不要部分とは、埋め込み樹脂領域12上の金属膜15bである。
【0036】
以上の工程S8a〜S8cにより、半導体メサ9の上面9bの全体と、半導体保護膜11の端面11a上と、埋め込み樹脂領域12の底面上12cとに接触するオーミック金属膜15pが形成される(オーミック金属膜形成工程S8(
図1参照))。
【0037】
ここで、開口Aは、領域Yの埋め込み樹脂領域12の高さH4相当する2μm〜3μm程度の段差が形成されている。工程S8a〜工程S8cのように、オーミック金属膜15pを蒸着法及びリフトオフ法によって、少なくとも半導体メサ9の上面9bに成膜するためには、この高さH4以上の高さを有するレジスト13(例えば3〜4μm)が必要である。また、開口Aの幅W2が半導体メサ9の幅W1と同等である(1μm〜2μm)場合には、アクセプト比が高くなる上に高い重ね合わせ精度が要求される。本実施形態では、開口Aの幅W2を半導体メサ9の幅W1よりも大きくして、半導体メサ9の幅W1よりも広くパターン形成している。
【0038】
図5の(a)部に示されるように、埋め込み樹脂領域12を保護するポリマー保護膜(第2絶縁膜)16を形成する(第2絶縁膜形成工程S9(
図1参照))。ポリマー保護膜16は、半導体保護膜11と同様に、例えばSiO
2、SiON、又はSiNといった、例えば厚さが0.1μm〜0.4μmの絶縁性材料からなる。ポリマー保護膜16は、埋め込み樹脂領域12の上面12aと、開口Aから露出したオーミック金属膜15pと、開口Bから露出した半導体保護膜11とに接触して形成される。
【0039】
開口Aには領域Yの埋め込み樹脂領域12の高さH4に相当する2μm〜3μm程度の段差が形成されている。このため、ポリマー保護膜16の成膜には、埋め込み樹脂領域12を形成する樹脂材料との密着性が良く、かつステップカバレッジが良い成膜方法の適用が求められる。このような条件を満たす成膜法として、工程S9ではスパッタ法が適用される。
【0040】
また、オーミック金属膜15pを形成(工程S8)した後に、ポリマー保護膜16を形成しているので、オーミック金属膜15pは、半導体メサ9の上面9bよりも外側の突出部Sで埋め込み樹脂領域12の底面12cと第2ポリマー保護膜16に挟まれると共に、半導体保護膜11と第2ポリマー保護膜16に挟まれている。
【0041】
図5の(b)部に示されるように、ポリマー保護膜16をエッチングして、半導体メサ9上のポリマー保護膜16にコンタクトホールである開口C(第2開口)を形成する。開口Cの形成には、例えばCF
4ガスによるドライエッチング法を用いる。この開口Cからは、半導体メサ9上のオーミック金属膜15pが露出される(コンタクトホール形成工程S10(
図1参照))。
【0042】
工程S10では、光導波方向と直交する方向における開口Cの幅W4が、半導体メサ9の幅W1より広くなっても良い。これはオーミック金属膜15pの幅W5が半導体メサ9の幅W1よりも大きく、且つ半導体メサ9の側面9aの半導体保護膜11及び埋め込み樹脂領域12がオーバーエッチングされることはないためである。
【0043】
図5の(c)部に示されるように、バリア金属膜17を形成する(バリア金属膜形成工程S11(
図1参照))。バリア金属膜17は、ポリマー保護膜16の上面16aと、開口A,Cから露出したオーミック金属膜15pとを含む面上に形成される。この工程S11では、まず、Ti(チタン)膜を成膜し、その上にPt膜を成膜し、さらにその上にAu膜を成膜して、Ti/Pt/Au膜を形成する。これらの金属膜の形成には、例えば蒸着やスパッタリングを用いる。なお、バリア金属膜17は、TiW膜上にAu膜が成膜されたTiW/Au膜であってもよい。
【0044】
図6の(a)部に示されるように、バリア金属膜17上にボンディングパッド18を形成する(ボンディングパッド形成工程S12(
図1参照))。ボンディングパッド18は、開口A内に形成された部分と、溝8と開口Bとの間の領域Y上に形成された部分と、を含んでいる。この工程S12では、ボンディングパッド18を、例えばAuメッキによってバリア金属膜17上に形成する。そして、
図6の(b)部に示されるように、バリア金属膜17のうちボンディングパッド18から露出した部分をエッチングによって除去する。
【0045】
図6の(c)部に示されるように、半導体保護膜11及びポリマー保護膜16において、スクライブライン上の部分、すなわち開口Bに露出したコンタクト層6上に形成された部分を、例えはエッチングにより除去する(素子分離溝形成工程S13(
図1参照))。
【0046】
図6の(d)部に示されるように、半導体基板1の裏面1b上にカソード電極であるオーミック金属膜19を形成する(オーミック金属膜形成工程S14(
図1参照))。オーミック金属膜19は、AuGe膜の上にAu膜が形成されたAuGe/Au膜である。これらの金属膜の形成には、例えば蒸着法やスパッタ法を用いる。この工程S14により形成されるオーミック金属膜19のAuGe膜は、半導体基板1とオーミック接触を成す。なお、オーミック金属膜19は、AuGe膜を成膜し、その上にTi膜、Pt膜、及びAu膜を順に成膜したAuGe/Ti/Pt/Au膜であってもよい。
【0047】
そして、オーミック金属膜19を成膜した後に、オーミック金属膜19において埋め込み樹脂領域12の開口Bの直下に形成された部分をエッチングにより除去して開口Dを形成する。最後に、半導体基板1をスクライブラインである開口B,Dに沿って切断する(素子切断工程S15(
図1参照))以上の工程S1〜S15を実施することにより、半導体光変調素子が完成する。
【0048】
次に、以上の工程S1〜S15により得られる導波路型の半導体光素子の構造について説明する。
図7は、チップ化される前の半導体素子の構造の端面を示す斜視図である。
図7に示されるように、導波路型の半導体光素子50は、半導体光変調素子である。
【0049】
半導体光素子50は、半導体基板1を含んで構成された半導体メサ9を備えている。半導体基板1は、半導体光素子50の機械的強度を保持するための支持基板として機能する。半導体基板1上には、バッファ層2が設けられている。
【0050】
バッファ層2は、コア層3の結晶性を良好にする機能を有する。バッファ層2上には、コア層3が設けられている。コア層3は、複数の井戸層および障壁層が交互に積層された多重量子井戸構造(MQW)を含んでいる。なお、コア層3は、一つの井戸層が上下の障壁層に挟まれた量子井戸構造であってもよいし、単一の半導体材料からなる層であってもよい。コア層3上には、上部クラッド層4が設けられている。上部クラッド層4は、コア層3を導波する光をコア層3に閉じ込めるためのクラッドとして機能する。上部クラッド層4上にはコンタクト層6が設けられている。コンタクト層6は、電極とのオーミック接触のために設けられている。
【0051】
上述したように、半導体メサ9は、半導体基板1の一部と、バッファ層2と、コア層3と、上部クラッド層4と、コンタクト層6を含んで構成されている。
【0052】
半導体光素子50は、トレンチである溝8を有している。溝8は、領域Xの光導波路を構成するストライプ状の半導体メサ9を形成するために設けられている。溝8は、光導波方向Gに沿って延びている。溝8は、コンタクト層6、上部クラッド層4、コア層3、及びバッファ層2を貫通するエッチングにより形成され、その底面は半導体基板1により構成されている。溝8の内壁は、領域Xにおける光導波路のための半導体メサ9の側面9aを構成している。半導体メサ9では主にコア層3を光が導波する。半導体メサ9は、側面9aとその外部との屈折率差によって左右方向に光を閉じ込めると共に、上部クラッド層4及びバッファ層2とコア層3との屈折率差によって上下方向に光を閉じ込める。
【0053】
半導体保護膜11は、半導体メサ9などの半導体領域を外部から絶縁して保護するためのものである。半導体メサ9のコンタクト層6とアノード電極構造体21との接触を可能とするために、半導体メサ9の上面9bの半導体保護層11は除去されている。
【0054】
埋め込み樹脂領域12は、半導体メサ9の側面9aを埋め込み、後述するアノード電極構造体21のボンディングパッド18を設けるためのものである。埋め込み樹脂領域12によって、半導体メサ9の側面9aが埋め込まれるので、側面9aへの金属層の形成を回避し、光導波路を伝播する光の散乱や吸収が抑制される。また、埋め込み樹脂領域12は、ボンディングパッド18による浮遊容量を低減して素子の高周波特性の劣化を抑制するために、溝8の深さH1よりも厚く形成されている(
図3の(a)部参照)。
【0055】
また、埋め込み樹脂領域12は、2つの開口A及び開口Bを有する。開口Aは、埋め込み樹脂領域12の半導体メサ9上であって、半導体基板1上において後述する光変調部66(
図8参照)となる領域に形成されている。開口Aには、オーミック金属膜15pとバリア金属膜17とボンディングパッド18とが配置されている。開口Bは、半導体光素子50をチップ化するときのスクライブラインとして機能する。
【0056】
ポリマー保護膜16は、埋め込み樹脂領域12を保護し、埋め込み樹脂領域12の上面12aからの吸湿を防ぐためのものである。半導体メサ9上のポリマー保護膜16には開口Cが設けられている。
【0057】
アノード電極構造体21は、半導体メサ9の上面9bからポリマー保護膜16の上面16aに亘って設けられている。本実施形態のアノード電極構造体21は、オーミック金属膜15pとバリア金属膜17とボンディングパッド18とを含んでいる。
【0058】
オーミック金属膜15pは、半導体メサ9の上面9bを含む埋め込み樹脂領域12の開口Aの底面の全体に設けられている。オーミック金属膜15pのAuZn膜と半導体メサ9のコンタクト層6とが互いに接触することにより、アノード電極構造体21とコンタクト層6とがオーミック接触を成す。オーミック金属膜15pの一部は、ポリマー保護膜16の開口Cを介してバリア金属膜17と電気的に接続されている。
【0059】
バリア金属膜17は、埋め込み樹脂領域12上のポリマー保護膜16と接している。そして、バリア金属膜17のTi膜とポリマー保護膜16が互いに接触することによって、バリア金属膜17とポリマー保護膜16との接合強度(密着性)が高められている。ボンディングパッド18は、アノード電極構造体21と外部回路とを電気的に接続するボンディングワイヤが接合される部分である。
【0060】
カソード電極構造体22は、半導体基板1の裏面1b上に設けられたオーミック金属膜19からなる。また、半導体基板1の裏面1bにおいて、埋め込み樹脂領域12の開口Bの直下には、半導体基板1を切断するための開口Dが設けられている。
【0061】
次に、上述した導波路型の半導体光素子50の一例であるマッハツェンダ光変調器60について説明する。マッハツェンダ光変調器60は、光通信網を構築するための一装置であり、電気信号により光の位相を制御して透過光の光強度を変化させる半導体光素子である。
【0062】
図8は、マッハツェンダ光変調器60の平面図である。
図8に示されるように、マッハツェンダ光変調器60は、信号光を処理するためのいわゆる多モード干渉導波路(MMI)であるカプラ61,62を備えている。カプラ61は信号光を2個の分岐光に分岐するものであり、カプラ62は所定の処理がなされた分岐光を合成して新たな信号光を生成する。
【0063】
カプラ61には、光導波路62a,62bを通じて信号光が入射される。カプラ61から出射された分岐光は、光導波路63a,63bを通じてカプラ61に入射される。カプラ61から出射された信号光は、光導波路64a,64bを通じて外部に出射される。
【0064】
ここで、カプラ61とカプラ62との間には、分岐光の一方について位相を変化させる光変調部66が設けられている。光変調部66は、光導波路63a上に設けられた直流電圧が印加されるp電極66aと、交流電圧が印加されるp電極66bとを有している。また、光変調部66は、光導波路63b上に設けられた直流電圧が印加されるp電極66cと、交流電圧が印加されるp電極66dとを有している。また、光導波路63aと光導波路63bとの間にはn電極66eが設けられている。光変調部66では、p電極66a〜66dに印加する電圧を制御することにより、信号光の位相制御が行われる。
【0065】
ここで、
図7は、
図8におけるVII−VII線に沿った断面であり、光導波路63aが半導体メサ9に対応し、アノード電極構造体21がp電極66aに対応する。
【0066】
次に、比較例に係る半導体光素子90の製造方法について説明する。
図9は、比較例に係る半導体光素子の製造方法の主要な工程を示す図であり、
図10は比較例に係る半導体光素子90の構造を示す端面の斜視図である。
【0067】
図9の(a)部に示されるように、埋め込み樹脂領域12に開口Aを形成(工程S6)した後に、半導体保護膜11をエッチングして半導体メサ9の上面9bを露出させる(工程S7)。比較例の製造方法は、この工程S7までは、本実施形態の製造方法と同様の工程により行われる。続いて、ポリマー保護膜91をスパッタ法により形成し、開口Aの底部に形成されたポリマー保護膜91をエッチングして半導体メサ9の上面9bを露出させる(
図9の(b)部参照)。次に、半導体メサ9の上面9bを含む開口Aの底部にオーミック金属膜92を蒸着法及びリフトオフ法により形成する(
図9の(c)部参照)。
【0068】
そして、オーミック金属膜92及びポリマー保護膜16にバリア金属膜93を成膜する(
図9の(d)部参照)。その後、本実施形態の工程S11〜S15(
図1参照)を実施することにより、
図10に示される半導体光素子90が製造される。
【0069】
上述した比較例の製造方法によれば、半導体メサ9の上面9b上にスパッタ法によってポリマー保護膜91を成膜するので、半導体メサ9の上面9bにダメージを与えてしまう。さらに、半導体保護膜11をエッチングする工程と、ポリマー保護膜91をエッチングする工程とにおいて、さらに、半導体メサ9の上面9bにダメージを与えてしまう。従って、上面9bをなすコンタクト層6にダメージが増加するのでコンタクト抵抗が増加する虞がある。
【0070】
一方、本実施形態の半導体光素子50の製造方法では、半導体に与えるダメージの低い蒸着法及びリフトオフ法を用いて、オーミック金属膜15pを半導体メサ9の上面9b上に形成するため、オーミック金属膜15pの成膜時においてコンタクト層6へ与えるダメージを低減することができる。
【0071】
また、本実施形態の半導体光素子50の製造方法では、ポリマー保護膜16を形成するときには、半導体メサ9の上面9bがオーミック金属膜15pに覆われているので、スパッタ法によるポリマー保護膜16の成膜により半導体メサ9の上面9bがダメージを受けることがない。
【0072】
さらに、本実施形態の半導体光素子50の製造方法では、ポリマー保護膜16をエッチングするときには、半導体メサ9の上面9bがオーミック金属膜15pに覆われているので、ポリマー保護膜16のエッチングにより半導体メサ9の上面9bがダメージを受けることがない。従って、エッチングによるダメージの印加を1回削減することができる。
【0073】
従って、本実施形態の半導体光素子50の製造方法によれば、オーミック金属膜15pと接触するコンタクト層6に与えられるダメージが低減されるので、コンタクト抵抗の増加を抑制することができる。
【0074】
また、ベンゾシクロブテンからなる埋め込み樹脂領域12上に、シリコンを含む絶縁性材料からなるポリマー保護膜16をスパッタ法により成膜するため、埋め込み樹脂領域12に対するポリマー保護膜16の密着性を高めることができる。そして、埋め込み樹脂領域12からのポリマー保護膜16の剥がれが抑制されるので、ボンディングパッド18に対するボンディングの作業性を向上させることができる。
【0075】
また、半導体保護膜11を形成する工程S4では、CVD法によって半導体保護膜11を成膜するので、半導体保護膜11の形成時において半導体メサ9の上面9bに与えるダメージを抑制することができる。
【0076】
また、オーミック金属膜15pは、金を含む材料からなるので、ポリマー保護膜16の形成によりオーミック金属膜15pが受けるダメージを抑制することができる。
【0077】
また、開口Aからは半導体メサ9の上面9b全体が露出されるので、半導体メサ9の上面9b全体にオーミック金属膜15pを形成することができる。従って、コンタクト抵抗の増大をさらに抑制することができる。
【0078】
本実施形態の半導体光素子50の製造方法によれば、埋め込み樹脂領域12により平坦化されているので、半導体メサ9の上面9bに対して容易にアノード電極構造体21を形成することができる。従って、コンタクト抵抗の増加の問題を解決しつつ、高周波特性が向上され、さらに製造コストに有利なウエハプロセス大口径化が可能になるので量産性に著しく寄与する。
【0079】
以上、本発明を具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨に逸脱しない範囲において変更可能である。
【0080】
本実施形態の製造方法により製造される半導体光素子は、表面側にアノード側の電極を設け、裏面側にカソード側の電極を設けたが、半導体光素子は、表面側にカソード側の電極を設け、裏面側にアノード側の電極を設ける構成であってもよい。
【0081】
本実施形態の製造方法の説明では、半導体保護膜11及びポリマー保護膜が誘電体絶縁材料であるSiO
2やSiNからなる構成を例示したが、半導体保護膜11及びポリマー保護膜16は、Si,Al,Ti等を含むフッ化物、酸化物、窒化物からなる構成であってもよい。
【0082】
本実施形態の製造方法では、半導体基板1上に光電変換回路を形成しても良い。この光電変換回路は、例えばヘテロ接合バイポーラトランジスタといったInP系電子デバイス、キャパシタ、抵抗素子を含む。
【0083】
本実施形態の製造方法は、上述した光変調器の他に、半導体レーザ、受光素子の製造に適用されてもよい。
【0084】
本実施形態の製造方法は、半導体メサ9が一方向に延びた光導波路である場合を例に説明したが、半導体メサは、例えば、表面入射及び裏面入射を想定した円柱メサ構造であってもよい。
【0085】
半導体基板1の導電性は、p型の半導体基板であってもよく、Feをドープした半絶縁性の半導体基板であってもよい。半絶縁性の半導体基板の場合には、カソード電極は半導体基板の表面側に形成する。