特許第6205847号(P6205847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205847
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】通信制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   H04L12/44 200
   H04L12/44 M
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-112217(P2013-112217)
(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2014-232952(P2014-232952A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090620
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 宣幸
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 崇之
【審査官】 衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−301938(JP,A)
【文献】 特開2009−065443(JP,A)
【文献】 特開2011−087190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向装置からの信号を受信する受信処理手段と、
上記対向装置から応答信号を要求する制御信号を受信すると、1又は複数の通信制御処理を行う通信制御処理手段と、
上記対向装置から応答信号を要求する制御信号を受信すると、上記通信制御処理手段の処理後、上記応答信号を上記対向装置に送信する送信処理手段と、
上記通信制御処理手段による処理時間を計測する処理時間計測手段と、
上記処理時間計測手段により計測された計測処理時間と、上記制御信号に対する応答処理時間とに基づいて、上記応答処理時間内に上記通信制御処理手段に実行させる処理内容を設定する処理内容設定手段と
を備え
上記処理時間計測手段が、上記対向装置から処理時間計測要求を受信した場合に、上記通信制御処理手段による処理時間を計測し、
上記処理内容設定手段が、上記対向装置により決定された種類の通信制御処理を、上記応答処理時間内に上記通信制御処理手段に実行させる処理内容として設定する
ことを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
対向装置からの信号を受信する受信処理手段と、
上記対向装置から応答信号を要求する制御信号を受信すると、1又は複数の通信制御処理を行う通信制御処理手段と、
上記対向装置から応答信号を要求する制御信号を受信すると、上記通信制御処理手段の処理後、上記応答信号を上記対向装置に送信する送信処理手段と、
上記通信制御処理手段による処理時間を計測する処理時間計測手段と、
上記処理時間計測手段により計測された計測処理時間と、上記制御信号に対する応答処理時間とを比較し、上記計測処理時間が上記応答処理時間を越える場合に、上記通信制御処理手段に上記処理の次に実行させる次処理が上記応答処理時間内に終了するように当該次処理の内容を設定する処理内容設定手段と
を備えることを特徴とする通信制御装置。
【請求項3】
上記処理時間計測手段が、上記制御信号の受信時から上記応答信号の送信時までの時間情報を、上記通信制御処理手段による計測処理時間として計測するものであることを特徴とする請求項に記載の通信制御装置。
【請求項4】
上記処理内容設定手段が、上記通信制御処理手段による上記次処理の内容を、上記処理に比べて処理工程を減らして設定することを特徴とする請求項2又は3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
上記処理時間計測手段が、上記対向装置から処理時間計測要求を受信した場合に、上記通信制御処理手段による処理時間を計測するものであることを特徴とする2又は3に記載の通信制御装置。
【請求項6】
コンピュータを、
対向装置からの信号を受信する受信処理手段と、
上記対向装置から応答信号を要求する制御信号を受信すると、1又は複数の通信制御処理を行う通信制御処理手段と、
上記対向装置から応答信号を要求する制御信号を受信すると、上記通信制御処理手段の処理後、上記応答信号を上記対向装置に送信する送信処理手段と、
上記通信制御処理手段による処理時間を計測する処理時間計測手段と、
上記処理時間計測手段により計測された計測処理時間と、上記制御信号に対する応答処理時間とに基づいて、上記応答処理時間内に上記通信制御処理手段に実行させる処理内容を設定する処理内容設定手段と
して機能させ
上記処理時間計測手段に、上記対向装置から処理時間計測要求を受信した場合に、上記通信制御処理手段による処理時間を計測させ、
上記処理内容設定手段に、上記対向装置により決定された種類の通信制御処理を、上記応答処理時間内に上記通信制御処理手段に実行させる処理内容として設定させる
ことを特徴とする通信制御プログラム。
【請求項7】
応答信号を要求する制御信号を送信した対向装置に対して、当該対向装置における通信制御処理に係る処理時間の計測要求信号を送信する処理時間計測要求手段と、
上記対向装置が計測した通信制御処理に係る計測処理時間を含む情報を取得する計測処理時間取得手段と、
上記対向装置から取得した上記計測処理時間と、上記制御信号に対する応答処理時間とに基づいて、上記応答処理時間内に上記対向装置において実行させる処理内容を決定する処理内容決定手段と、
上記処理内容決定手段により決定された上記処理内容を含む情報を上記対向装置に送信する処理内容設定要求手段と
を備えることを特徴とする通信制御装置。
【請求項8】
上記処理内容決定手段が、上記対向装置から取得した上記計測処理時間に基づいて、上記応答処理時間の時間長を調整するものであることを特徴とする請求項7に記載の通信制御装置。
【請求項9】
コンピュータを、
応答信号を要求する制御信号を送信した対向装置に対して、当該対向装置における通信制御処理に係る処理時間の計測要求信号を送信する処理時間計測要求手段と、
上記対向装置が計測した通信制御処理に係る計測処理時間を含む情報を取得する計測処理時間取得手段と、
上記対向装置から取得した上記計測処理時間と、上記制御信号に対する応答処理時間とに基づいて、上記応答処理時間内に上記対向装置において実行させる処理内容を決定する処理内容決定手段と、
上記処理内容決定手段により決定された上記処理内容を含む情報を上記対向装置に送信する処理内容設定要求手段として機能させることを特徴とする通信制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置及びプログラムに関し、例えば、光通信ネットワークを構成する光回線終端装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、一般個人宅へ高速・広帯域ブロードバンドサービスを提供するために、伝送路に光ファイバを用いたFTTH(Fiber To The Home)が普及している。FTTHによるブロードバンドサービスの提供には、光アクセスシステムとしてPON(Passive Optical Network)が多く利用されている。例えば、光アクセスシステムの1つとしてPON技術にギガビットイーサネット(登録商標)技術を採用したGE−PONシステムがある。
【0003】
GE−PONは、IEEE802.3ahで標準化された光通信ネットワークのシステムであり、一般的には、局側光回線終端装置(OLT:Optical Line Terminal)と、加入者側光回線終端装置(ONU:Optical Network Unit)と、光スプリッタとを有して構成される。
【0004】
ONUの通信処理としては、まずONUは、OLTからMPCP(Multipoint Control Protocol)フレームを受信する。ONUは、MPCPフレームを解析し、フレームの種類に従って処理を行う。このとき、MPCPフレームがGATEフレームであった場合、ONUはOLTにMPCPフレームを送信する必要が発生する。
【0005】
次に、ONUは、GATEフレームがDiscovery GATEフレームあるいはNormal GATEフレームであるか判別を行う。Discovery GATEフレームであった場合は、図2に示すように、ONUは、Grant#1 Start time(図2では、Grant Startと表記)からRandom Delay時間待った後に、REGISTER_REQフレームをOLTに送信する。
【0006】
一方、Normal GATEフレームであった場合、ONUは、GATEフレームのGrant#1 Start timeおよびGrant#1 Lengthに従ってREPORTフレームを送信する。
【0007】
このとき、ONUがMPCPフレームを受信してからMPCPフレーム(REGISTER REQフレームおよびREPORTフレーム)を送信するまでに必要なONU通信制御処理時間(ONU processing time)は、IEEE802.3ahによって16.384μsec以内と定められている。
【0008】
今後、省電力化のため、標準規格IEEE P1904.1(SIEPON:Standard for Service Interoperability in Ethernet(登録商標) Passive Optical Networks)の導入等が考えられる。そうすると、ONUにおける通信制御処理の処理内容が増大し、通信制御処理の処理時間が増大すると考えられており、OLT−ONU間の通信遅延発生、通信切断に繋がる可能性がある。
【0009】
また、光通信ネットワークの多分岐化やOLT−ONU間の距離長延化により、OLTからの処理時間要求がさらに短くなると考えられる。つまり、ONUがGATEフレームを受信してから、GATEフレームのGrant#1 Start timeまで時間間隔が短くなると、その分ONUが通信制御処理時間を高速に行うことが要求され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−089323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、ONUにおける通信制御処理時間のより一層の短縮化と共に、ONUにおける通信制御処理の処理時間の増大に対して、通信遅延の増大や通信切断を回避するために、ONUにおいて実行される通信制御処理時間を計測して、実行される通信制御処理の最適化を行うことが望まれる。
【0012】
しかしながら、従来のONUの通信制御処理時間を計測する方法は、例えばオシロスコープの計測器を使うなど非常に難しかった。なぜなら、ONUの通信制御処理時間は、常に一定ではなく、OLTからのGATEフレームの内容(例えば、Grant数)や通信制御中の処理内容により、処理時間が動的に変動するものである。
【0013】
そのため、ONU自身あるいはOLTがONUの通信制御処理時間の監視制御を行うことができる通信制御装置及びプログラムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するために、第1の本発明は、(1)対向装置からの信号を受信する受信処理手段と、(2)対向装置から応答信号を要求する制御信号を受信すると、1又は複数の通信制御処理を行う通信制御処理手段と、(3)対向装置から応答信号を要求する制御信号を受信すると、通信制御処理手段の処理後、応答信号を対向装置に送信する送信処理手段と、(4)通信制御処理手段による処理時間を計測する処理時間計測手段と、(5)処理時間計測手段により計測された計測処理時間と、制御信号に対する応答処理時間とに基づいて、応答処理時間内に通信制御処理手段に実行させる処理内容を設定する処理内容設定手段とを備え、処理時間計測手段が、対向装置から処理時間計測要求を受信した場合に、通信制御処理手段による処理時間を計測し、処理内容設定手段が、対向装置により決定された種類の通信制御処理を、応答処理時間内に通信制御処理手段に実行させる処理内容として設定することを特徴とする通信制御装置である。
第5の本発明は、(1)対向装置からの信号を受信する受信処理手段と、(2)対向装置から応答信号を要求する制御信号を受信すると、1又は複数の通信制御処理を行う通信制御処理手段と、(3)対向装置から応答信号を要求する制御信号を受信すると、通信制御処理手段の処理後、応答信号を対向装置に送信する送信処理手段と、(4)通信制御処理手段による処理時間を計測する処理時間計測手段と、(5)処理時間計測手段により計測された計測処理時間と、制御信号に対する応答処理時間とを比較し、計測処理時間が応答処理時間を越える場合に、通信制御処理手段に処理の次に実行させる次処理が応答処理時間内に終了するように当該次処理の内容を設定する処理内容設定手段とを備えることを特徴とする通信制御装置である。
【0015】
第2の本発明は、コンピュータを、(1)対向装置からの信号を受信する受信処理手段と、(2)対向装置から応答信号を要求する制御信号を受信すると、1又は複数の通信制御処理を行う通信制御処理手段と、(3)対向装置から応答信号を要求する制御信号を受信すると、通信制御処理手段の処理後、応答信号を対向装置に送信する送信処理手段と、(4)通信制御処理手段による処理時間を計測する処理時間計測手段と、(5)処理時間計測手段により計測された計測処理時間と、制御信号に対する応答処理時間とに基づいて、応答処理時間内に通信制御処理手段に実行させる処理内容を設定する処理内容設定手段として機能させることを特徴とする通信制御プログラムである。
【0016】
第3の本発明は、(1)応答信号を要求する制御信号を送信した対向装置に対して、当該対向装置における通信制御処理に係る処理時間の計測要求信号を送信する処理時間計測要求手段と、(2)対向装置が計測した通信制御処理に係る計測処理時間を含む情報を取得する計測処理時間取得手段と、(3)対向装置から取得した計測処理時間と、制御信号に対する応答処理時間とに基づいて、応答処理時間内に対向装置において実行させる処理内容を決定する処理内容決定手段と、(4)処理内容決定手段により決定された処理内容を含む情報を対向装置に送信する処理内容設定要求手段とを備えることを特徴とする通信制御装置である。
【0017】
第4の本発明は、コンピュータを、(1)応答信号を要求する制御信号を送信した対向装置に対して、当該対向装置における通信制御処理に係る処理時間の計測要求信号を送信する処理時間計測要求手段と、(2)対向装置が計測した通信制御処理に係る計測処理時間を含む情報を取得する計測処理時間取得手段と、(3)対向装置から取得した計測処理時間と、制御信号に対する応答処理時間とに基づいて、応答処理時間内に対向装置において実行させる処理内容を決定する処理内容決定手段と、(4)処理内容決定手段により決定された処理内容を含む情報を対向装置に送信する処理内容設定要求手段として機能させることを特徴とする通信制御プログラムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ONU自身あるいはOLTがONUの通信制御処理時間の監視制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係る光通信ネットワークの全体構成を示す全体構成図である。
図2】ディスカバリープロセスの処理(IEEE802.3ah)を示すシーケンス図である。
図3】第1の実施形態のONUの内部構成を示す内部構成図である。
図4】第1の実施形態のONUの制御部による主な機能を説明する機能ブロック図である。
図5】第1の実施形態のONUにおける通信制御処理の監視処理の動作を示すフローチャートである。
図6】第1の実施形態に係るセッション断要因値を説明する説明図である。
図7】第1の実施形態に係る通信制御処理レベル決定テーブルの構成を示す構成図である。
図8】第2の実施形態のOLTの内部構成を示す内部構成図である。
図9】第2の実施形態のOLTの制御部による主な機能を説明する機能ブロック図である。
図10】第2の実施形態のONUの制御部による主な機能を説明する機能ブロック図である。
図11】第2の実施形態のONUにおける通信制御処理の監視処理の動作を示すシーケンスである。
図12】IEEE802.1agフレームフォーマットの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(A)第1の実施形態
以下、本発明の通信制御装置及びプログラムの第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
第1の実施形態では、例えばGE−PONシステムを採用する光通信システム(光通信ネットワーク)に本発明を適用する場合を例示する。
【0022】
(A−1)第1の実施形態の構成
(A−1−1)全体構成
図1は、第1の実施形態に係る光通信ネットワーク10の全体構成を示す全体構成図である。図1において、光通信ネットワーク10は、OLT1、複数のONU2−1〜2−N、光スプリッタ4を有する。
【0023】
光通信ネットワーク10は、OLT1と複数のONU2−n(1≦n≦Nとを、光スプリッタ4を用いて1本の光ファイバ3を分岐させて1対多に接続する構成である。このように、光ファイバ3や伝送装置を複数の加入者で共有することにより経済的なFTTHサービスを提供することができる。
【0024】
なお、図1では、説明を容易にするために、最も簡単なネットワークトポロジーを例示するが、光通信ネットワーク10のネットワークトポロジーは様々な構成を採用することができる。例えば、光通信ネットワーク10は複数の光スプリッタ4を備えて更に多段的な分岐を可能とするツリー構成としても良い。
【0025】
光通信ネットワーク10は、OLT1からONU2−nへの通信(下り通信)と、ONU2−nからOLT1への通信(上り通信)には、それぞれ異なる波長を用いたWDM(Wavelength Division Multiplexing)方式を利用している。また、1本の光ファイバ3を複数のONU2−nで共用しているため、ONU2−nからOLT1への上り通信は、例えばTDMA(Time Division Multiple Access)方式を用いて、上り通信信号の衝突を回避している。
【0026】
光スプリッタ4は、OLT1から送信される下り信号をONU2−nに分配したり、ONU2−nから送信される上り信号を多重してOLT1に与えたりするものである。光スプリッタ4は、分配多重器の一例である。
【0027】
OLT1は、局側の光回線終端装置であり、光ファイバ3を通じて光スプリッタ4と接続すると共に、上位ネットワークであるコアネットワーク5と接続するものである。OTL1は、各ONU2−nのTDMAによるアクセス制御を行うために、Multi−point MAC Control(MPCP)と呼ばれる制御機能を有する。つまり、OLT1は、各ONU2−nとの間でMAC Controlフレームを送受信することによりMPCP制御を実現している。
【0028】
ここで、OLT1は、各ONU2−nとの間の通信に先立ち、ディスカバリープロセスと呼ばれる手順を行い、各ONU2−nとの間の通信リンクを確立する。ディスカバリープロセスの手順は図2のシーケンスの手順でなされる。ディスカバリープロセスでは、TDMA制御のために、OLT1が全てのONU2−nとの間で時刻同期を行う。
【0029】
また、OLT1は、通信リンクの確立後、各ONU2−nが送信するデータ量(送信要求量)をReportフレームで通知を受ける。これにより、OLT1は、データ送信を要求する全てのONU2−nの送信要求量に基づいて、それぞれのONU2−nに上り通信の送信帯域を割り当て、各ONU2−nの送信許可量(Grant値)及び送信開始時刻を含むGateフレームを各ONU2−nに通知する。なお、OLT1による送信帯域の割当制御方法(DBA:Dynamic Bandwidth Allocation)は、本発明と関係するものではないため、詳細な説明を省略するが、特に限定されるものではなく種々の方法を広く適用することができる。
【0030】
各ONU2−nは、ユーザ側の光回線終端装置であり、光ファイバ3を通じて光スプリッタ4と接続すると共に、UNI(User Network Interface)を介してユーザ端末(図示しない)と接続するものである。なお、1台のONU2−nは、1台のユーザ端末と接続するものとしても良いし又は複数台のユーザ端末と接続するものとしても良い。
【0031】
各ONU2−nは、OLT1との間のディスカバリープロセスによりOLT1との間のリンクを確立する。図2のシーケンスの手順によりディスカバリープロセスを行い、各ONU2−nがOLT1との間でリンクが確立すると、各ONU2−nは、上述したReportフレームにより、自身の送信要求量をOLT1に通知する。そして、各ONU2−nは、OLT1から通知されたGateフレームを解析し、OLT1から指示された送信開始時刻に、送信許可量の送信データ(データフレーム)を送信する。
【0032】
また、各ONU2−nは、OLT1との間の通信リンクの運用・管理・保守のために、定期的(例えば1秒周期)にOAMフレームと呼ばれる制御フレームをOLT1との間で送受信する。
【0033】
(A−1−2)ONU2−nの内部構成
図3は、第1の実施形態のONU2−nの内部構成を示す内部構成図である。図3において、第1の実施形態のONU2−nは、光受信部210、受信処理部220、ユーザネットワークインタフェース部230、送信処理部240、光送信部250、制御部260を有する。
【0034】
光受信部210は、光ファイバ3から光信号を受信し、光信号を電気信号に変換して受信処理部220に与えるものである。
【0035】
受信処理部220は、制御部260の制御の下、光受信部210からの受信信号に対して所定の受信処理を行うものである。受信処理部220が受信する信号は、OLT1からのデータ信号である場合もあれば、OLT1からの制御信号である場合もある。
【0036】
ユーザネットワークインタフェース部230は、ユーザ端末と接続するインタフェース部である。ユーザネットワークインタフェース部230は、受信処理部220からユーザ端末宛の信号を受け取り、その信号をユーザ端末に送信したり、又はユーザ端末から受け取った信号を送信処理部240に与えたりするものである。
【0037】
送信処理部240は、制御部260の制御の下、制御信号や、ユーザネットワークインタフェース部230から受け取った信号に対して所定の送信処理を行うものである。
【0038】
光送信部250は、送信処理部240から送信信号を受け取り、電気信号を光信号に変換して光ファイバ3に送信するものである。
【0039】
制御部260は、ONU2−nの機能を司るものである。制御部260は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、入出力インタフェース部等を有するものであり、CPUが、ROMに格納される処理プログラムを実行することにより、ONU2−nの機能が実現される。
【0040】
図4は、第1の実施形態のONU2−nの制御部260による主な機能を説明する機能ブロック図である。
【0041】
図4に示すように、ONU2−nの制御部260は、通信制御処理部31、通信制御処理時間計測部32、通信制御処理時間判定部33、通信制御処理レベル設定部34、記憶部35を有する。
【0042】
通信制御処理部31は、ONU2−nの通信制御処理を行うものである。通信制御処理部31は、OLT1との間の制御信号に対する通信制御処理や、受信したデータ信号又は送信するデータ信号に対する通信制御処理を行うものである。
【0043】
ここで、通信制御処理部31が行う処理は、ONU2−nにおける様々な通信制御処理を適用することができ、例えば、GATE解析処理、省電力処理、距離長延化対応処理、ログ記録処理等を適用することができる。勿論、通信制御処理部31が行う処理は、上記各種処理に限定されるものではないが、第1の実施形態では、説明を容易にするために、通信制御処理部31が、GATE解析処理、省電力処理、距離長延化対応処理、ログ記録処理を行うものとする。
【0044】
また、通信制御処理部31は、後述する通信制御処理レベル設定部34により設定された通信制御処理レベル値に従って通信制御処理を行う。
【0045】
GATE解析処理部311は、OLT1との間でディスカバリープロセスを行う際に、OLT1から受信したGATEフレームに対する処理を行うものである。
【0046】
GATE解析処理部311は、OLT1から受信した制御信号を解析し、受信した制御信号がGATEフレームである場合、GATEフレームがDiscovery GATEフレームあるいはNormal GATEフレームであるかを判別する。
【0047】
GATE解析処理部311は、Discovery GATEフレームである場合、Grant#1 Start time(Grant Start)からRandom Delay時間待った後に、REGISTER_REQフレームをOLTに送信する。
【0048】
また、GATE解析処理部311は、Normal GATEフレームである場合、GATEフレームのGrant#1 Start timeおよびGrant#1 Lengthに従ってREPORTフレームを送信する。
【0049】
なお、ONU2−nがMPCPフレームを受信してからMPCPフレーム(REGISTER REQフレームおよびREPORTフレーム)を送信するまでに必要なONU2−nの通信制御処理時間(ONU processing time)は、IEEE802.3ahによって16.384μsec以内と定められている。
【0050】
省電力処理部312は、送受信処理の省電力処理を行うものである。省電力処理部312は、種々の省電力処理を適用することができるが、例えば、IEEE P1904.1に規定される省電力処理を適用することができる。
【0051】
距離長延化対応処理部313は、自装置であるONU2−nとOLT1との間の距離長延化(以下、長延化ともいう)に対応する処理を行うものである。
【0052】
ログ記録処理部314は、自装置であるONU2−nにおける通信制御処理に係る情報を記録するものである。
【0053】
通信制御処理時間計測部32は、通信制御処理部31が行う通信制御処理時間を計測するものである。つまり、通信制御処理時間計測部32は、通信制御処理部31が通信制御中に、通信制御処理部31の通信制御処理時間を計測する。これにより、通信制御処理時間は処理内容に応じて動的に変動し得るものであるが、通信制御処理中の通信制御処理時間を計測することができる。
【0054】
ここで、通信制御処理時間は、通信制御処理部31が実行する通信制御処理に要する時間であるが、通信制御処理時間計測部32は、他の通信機器から信号を受信してから、他の通信機器に信号を送信するまでの時間を通信制御処理時間として計測する。例えば、OLT1がONU2−nに対してMPCPフレームを送信する場合、通信制御処理時間計測部32は、OLT1からのMPCPフレームの受信時から当該MPCPフレームに対する応答フレームの送信時までの時間を通信制御処理時間とする。
【0055】
また、通信制御処理時間計測部32は、複数の通信制御処理時間を計測して記憶部35に記憶しておき、複数の通信制御処理時間の平均値を算出するようにしても良い。
【0056】
通信制御処理時間判定部33は、通信制御処理時間計測部32により求められた通信制御処理時間と閾値とを比較判定するものである。ここで、閾値は、例えばIEEE802.3ahの標準規格値である16.384μsecとすることができる。これにより、ONU2−n自身の通信制御処理がIEEE802.3ahの標準規格値である16.384μsec以下で実行されているか又は越えて実行されているかを判定することができる。
【0057】
また、通信制御処理時間判定部33は、通信制御処理部31の各種処理の処理時間と各種処理に対応する閾値とを比較判定するようにしてもよい。例えば、省電力処理時間は○○μsec、距離長延化対応処理時間は××μsec、ログ記録処理時間は△△μsec等のように各種処理時間を保持しておき、通信制御処理時間判定部33は、各種処理時間と対応する閾値とを比較する。これにより、各種処理が閾値に比べて処理時間が長いか又は短いかを判定できる。
【0058】
通信制御処理レベル設定部34は、通信制御処理部31が行う通信制御処理の種別を示す通信制御処理レベルを設定するものである。通信制御処理レベル設定部34による通信制御処理レベルの決定方法については動作の項で詳細に説明する。
【0059】
記憶部35は、通信制御処理時間計測部32により求められた通信制御処理時間や、通信制御処理時間と比較する各閾値や、通信制御処理レベル設定部34が設定する通信制御処理レベルやその設定に必要な情報等を記憶するものである。記憶部35は、揮発性メモリや不揮発性メモリ等を適用できる。
【0060】
(A−2)第1の実施形態の動作
以下では、第1の実施形態のONU2−nにおける通信制御処理の監視動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0061】
図5は、第1の実施形態のONU2−nにおける通信制御処理の監視処理の動作を示すフローチャートである。
【0062】
ここでは、ONU2−nにおいて通信制御処理に係る処理時間を計測させる際、ONU2−nにおいて時間計測フラグがセットされる。ここで、時間計測フラグは、例えばONU2−nの電源起動時や、PONリンクのシャットダウン発生時等にセットする。ただし、所定時間周期で、時間計測フラグがセットされるようにしても良い。
【0063】
OLT1から送信された光信号がONU2−nに与えられると、ONU2−nの光受信部210は、光信号を電気信号に変換して受信処理部220に与える。制御部260は、受信信号を受信すると通信制御処理を開始する。
【0064】
制御部260は、受信信号がMPCPフレームを含むものであるか否かを確認する。MPCPフレームである場合、通信制御処理部31は受信したMPCPフレームに対応する処理を行う(S101)。
【0065】
このとき、通信制御処理時間計測部32は、時間計測フラグが設定されているか否かを判断する(S102)。そして、時間計測フラグが設定されている場合、通信制御処理時間計測部32は、当該MPCPフレームの受信時刻を計測する(S103)。通信制御処理時間計測部32は、計測したMPCPフレームの受信時刻を、例えば揮発性メモリ等に一時的に記憶するようにする。なお、時間計測フラグが設定されていない場合、制御部260は処理をS104に移行する。
【0066】
次に、通信制御処理部31のGATE解析処理部311は、受信したMPCPフレームがGATEフレームであるか否かを判定する(S104)。受信したMPCPフレームがGATEフレーム以外である場合、制御部260は受信したMPCPフレームに対応する処理を行い(S105)、通信制御処理を終了する。
【0067】
また、受信したMPCPフレームがGATEフレームである場合、通信制御処理部31は、通信制御処理レベル設定部34により設定された通信制御処理レベルを確認し(S106)、その通信制御処理レベルに対応する通信制御処理を行う(S107〜S119)。
【0068】
ここで、通信制御処理レベルは、通信制御処理部31が実行する通信制御処理の種別を示す識別情報である。
【0069】
例えば、通信制御処理レベル「1」は、GATEフレーム受信処理のみを通信制御処理中に実行することを示す。従って、通信制御処理レベルが「1」の場合、通信制御処理部31は、今回受信したGATEフレームに対応する通信制御処理としてGATEフレーム受信処理のみを行う(S107)。
【0070】
また例えば、通信制御処理レベル「2」の場合、通信制御処理部31はGATEフレーム受信処理(S108)とログ記録処理(S109)とを行い、通信制御処理レベル「3」の場合、通信制御処理部31はGATEフレーム受信処理(S110)と省電力処理(S111)とログ記録処理(S112)とを行い、通信制御処理レベル「4」の場合、通信制御処理部31はGATEフレーム受信処理(S113)と長延化対応処理(S114)とログ記録処理(S115)とを行い、通信制御処理レベル「5」の場合、通信制御処理部31は、GATEフレーム受信処理(S116)と省電力処理(S117)と長延化対応処理(S118)とログ記録処理(S119)とを行う。
【0071】
初期化タイミングのときには、通信制御処理レベル設定部314は、所定の通信制御処理レベルを初期値(デフォルト値)として設定する。初期化タイミングは、例えば、電源起動時又はPONリンク遮断時等とする。これにより、電源起動時等の初期化タイミングのときには、通信制御処理部31は、初期値である通信制御処理レベルに対応する通信制御処理を行う。
【0072】
通信制御処理部31が受信したMPCPフレームに対する通信制御処理を行うと、制御部260は、受信したMPCPフレームに対する応答フレーム(MPCPフレーム)を生成し、ONU2−nは、その生成したMPCPフレームをOLT1宛に送信する(S120)。
【0073】
このとき、通信制御処理時間計測部32は時間計測フラグが設定されているか否かを確認する(S121)。なお、時間計測フラグが設定されていない場合、制御部260は通信制御処理を終了する。
【0074】
時間計測フラグが設定されている場合、通信制御処理時間計測部32は、送信するMPCPフレームの送信時刻を計測して(S122)、計測したMPCPフレームの送信時刻を記憶部35に記憶する。そして、制御部260は通信制御処理フラグをクリアして(S123)、通信制御処理を終了する。
【0075】
なお、通信制御処理フラグのクリアタイミングは、特に限定されるものではなく、例えば図5の通信制御処理中であっても良いし、又は通常の処理中であっても良い。
【0076】
ここで、通信制御処理時間計測部32は、図3のS103でMPCPフレームの受信時刻を計測し、図3のS123でMPCPフレームの送信時刻を計測する。従って、通信制御処理時間計測部32は、MPCPフレームの送信時刻とMPCPフレームの受信時刻との差分を取ることで、動的に変化する通信制御処理時間を計測することができる。
【0077】
通信制御処理時間の計測には、nsec単位の時間分解能が要求される。そこで、通信制御処理時間計測部32は、CPUクロックに同期してカウントアップするレジスタのレジスタ値を利用して、通信制御処理時間を計測する方法を適用できる。つまり、通信制御処理時間計測部32は、MPCPフレームの受信時の時刻情報及びMPCPフレームの送信時の時刻情報としてレジスタ値を記憶部35に記憶する。
【0078】
具体的には、例えば、CPUのクロック周波数が62.5MHzであるとする。この場合、CPUの1クロック分の時間は16nsec(=1÷62.5÷1000000)となる。MPCPフレームの受信時の時刻情報が1000であり、MPCPの送信時の時刻情報が2000であるとすると、通信制御処理時間は、16μsec(=(2000−1000)×16nsec)となる。
【0079】
なお、この場合に、レジスタ値を記憶する記憶部35は、Read/Write速度が高速な揮発性メモリであることが望ましい。
【0080】
図3において、例えば通信制御処理レベル「1」の場合、通信制御処理部31は、今回受信したMPCPフレームに対する通信制御処理としてGATEフレーム受信処理のみを行うことになる。そのため、受信したMPCPフレームに対する通信制御処理に係る時間は比較的短くなる。
【0081】
一方、例えば通信制御処理レベル「5」の場合、通信制御処理部31は、GATEフレーム受信処理と、省電力処理と、長延化対応処理と、ログ記録処理とを行うことになる。そのため、受信したMPCPフレームに対する通信制御処理に係る時間は比較的長くなる。
【0082】
ONU2−nの通信制御処理機能が数多くなり、それら全ての通信制御処理を実行すると通信制御処理時間が長くなる。装置起動時や再起動時等の場合、ディスカバリープロセスがなされるが、MPCPフレームを受信してからMPCPフレームを返信するまでの時間は標準規格値(16.384μsec)以下であることが必要となる。
【0083】
そこで、通信制御処理レベル設定部34は、通信制御処理時間計測部32が計測した通信制御処理中の通信制御処理時間に基づいて、通信制御処理時間が間に合わないと判断した場合に、通信制御処理レベルを変更して、通信制御処理の処理(例えば、省電力処理、長延化対応処理、通信ログ記述処理など)を減らす。
【0084】
一方、処理時間が間に合うと判断した場合、通信制御処理レベル設定部34は、通信制御処理レベルを変更せず通信制御処理の処理を削減させずに通常どおり動作させる。
【0085】
これにより、通信制御処理時間に応じて、通信制御中処理を最適化させることができ、OLT1とONU2−nとの間の通信遅延発生、通信切断を抑制することができる。また、OLT1とONU2−nとの間の通信遅延発生、通信切断が発生した場合には、通信制御処理を最小限に抑えることで通信遅延、通信切断回復につなげることができる。
【0086】
具体的には、以下のような動作例を適用することができる。
【0087】
通信制御処理時間判定部33は、計測された通信制御処理時間と、閾値(例えば、標準規格値である16.384μsec)とを比較し、通信制御処理レベルの通信制御処理が、標準規格値である16.384μsec以内で行なわれるか否かを判断する。
【0088】
通信制御処理レベル設定部34は、通信制御処理時間判定部33により、現在の通信制御処理レベルの通信制御処理時間が閾値(例えば標準規格値)を超えている場合に、通信制御処理レベルを変更する。
【0089】
通信制御処理レベルの決定方法は、通信制御処理時間が閾値以下となるものを決定する方法であれば、種々の方法を広く適用することができる。
【0090】
例えば、図5の例のように通信制御処理レベル値が小さくなれば、通信制御処理時間も短くなる。そこで、現在の通信制御処理レベル値の通信制御処理時間が閾値を超える場合、通信制御処理レベル設定部34は、通信制御処理レベル値を「1」だけ又は複数レベル値だけ値を減らすようにして決定する方法を適用できる。
【0091】
また例えば、例えば、電源断等のようにONU2−nが意図しない事象により、OLT1とのセッションが断たれることがある。この場合、ONU2−nはOLT1との間でディスカバリープロセスにより再接続処理を行う必要がある。このとき、多数の通信制御処理機能を有するONU2−nが全ての通信制御処理を行うことにより、通信制御処理時間が閾値(標準規格値)を超えることが生じ得る。上記のような場合、通信制御処理レベル設定部34は、GATE解析処理、ログ記録処理、省電力処理、長延化対応処理のうち、所定の優先順序で選択する方法を適用できる。
【0092】
具体的には、通信制御処理レベル設定部34は、通信制御処理の優先順序を決定する要素として、以下の3個の要素に基づいて判断する。
【0093】
(1)セッション断要因値
(2)省電力機能設定値(例えば、「1」のとき有効、「0」のとき無効)
(3)長延化機能設定値(例えば、「1」のとき有効、「0」のとき無効)
セッション断要因値は、ONU2−nにおいて、OLT1との間のセッション断が生じたときに、そのセッション断の要因を示す値である。
【0094】
図6は、第1の実施形態に係るセッション断要因値を説明する説明図である。図6に示すように、例えば、セッション断要因値「0」は「電源断によるセッション断」、「1」は「PONリンク断によるセッション断」、「2」は「装置故障発生によるセッション断」、「3」は「ウォッチドックタイマー起動によるセッション断」、「4」は「その他の起動要因」、「5」は「セッション断発生なし」を示す。セッション断要因値は、例えば不揮発性メモリあるいは揮発性メモリの記憶部35に保存しておき、通信制御処理レベル決定時に使用する。
【0095】
例えば、電源断が発生したとき、装置起動時に、制御部260はセッション断要因値を「0」に初期化することで、電源断が発生したことを表すことができる。その後、上位装置との通信制御処理が成功したとき、制御部260は、セッション断要因値を、セッション断発生なしを示す「5」にする。
【0096】
省電力機能設定値は、当該ONU2−nの省電力処理機能が有効か否かを設定する値である。通信制御処理部31が省電力処理部312を有している場合には、省電力機能設定値は有効を示す「1」が設定され、省電力処理部312を有していない場合には、省電力機能設定値は無効を示す「0」が設定される。
【0097】
長延化機能設定値は、当該ONU2−nの距離長延化対応処理機能が有効か否かを設定する値である。通信制御処理部31が距離長延化対応処理部313を有している場合には、長延化機能設定値は有効を示す「1」が設定され、距離長延化対応処理部313を有していない場合には、長延化機能設定値は無効を示す「0」が設定される。
【0098】
通信制御処理レベル設定部34は、セッション断要因値、省電力機能設定値、長延化機能設定値に基づいて、通信制御処理レベル決定テーブルを参照して、通信制御処理レベルを決定する。
【0099】
図7は、第1の実施形態に係る通信制御処理レベル決定テーブルの構成を示す構成図である。
【0100】
図7に示すように、通信制御処理レベル決定テーブルは、セッション断要因値と、省電力機能設定値及び長延化機能設定値との組み合わせに応じて、通信制御処理レベル値を求めるものである。なお、通信制御処理レベル決定テーブルの値は一例である。そのため、自由に変更することができる。また、変更の方法として、コンソールからのコマンドで値を変更できるようにしても良い。
【0101】
例えば、セッション断要因値が「1」であり、省電力機能設定値が「1(有効)」であり、長延化機能設定値が「1(有効)」である場合、通信制御処理レベル設定部34は、図7の通信制御処理レベル決定テーブルを参照して、通信制御処理レベル値「5」を設定する。
【0102】
また例えば、セッション断要因値が「2」であり、省電力機能設定値が「1(有効)」であり、長延化機能設定値が「1(有効)」である場合、通信制御処理レベル設定部34は、図7の通信制御処理レベル決定テーブルを参照して、通信制御処理レベル値「2」を設定する。
【0103】
ここで、通信制御処理レベルの設定・変更は、ONU2−nの通常処理中に行われることが望ましい。例えば、通信制御処理レベルの設定・変更は、通信制御処理中に行うのではなく、BOOT起動後の通常処理中の任意のタイミング(例えば、電源起動後の初期化処理中あるいはPONリンク断発生による初期化中の処理あるいは周期的に実施する等)に行う。これにより、通信制御処理中は、通信制御処理部31が、決定された通信制御処理レベルの値をロードするだけで済む。
【0104】
通信制御処理レベル設定部34により決定された通信制御処理レベルの値は、不揮発性メモリあるいは揮発性メモリの記憶部35に格納される。このとき、可能な限りリードアクセス速度が早いメモリ(記憶部35)に保存することが望ましい。その理由は、図5のS106に示すように、GATEフレーム受信時に、通信制御処理部31は通信制御処理レベル値を読み出し、迅速な通信制御処理を行う必要があるためである。
【0105】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、ONU2−n自身が、通信制御処理時間を計測し、その計測結果に応じて、通信制御処理として実行する通信制御処理を決定することができる。そのため、通信制御処理中の最適化を図ることができる。
【0106】
(B)第2の実施形態
次に、本発明の通信制御処理時間監視制御装置及びプログラムの第2の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0107】
(B−1)第2の実施形態の構成
第1の実施形態では、ONU自身が通信制御処理時間を計測し、その計測結果に基づいて、ONU自身が通信制御処理レベル値を設定する場合を説明した。
【0108】
これに対して、第2の実施形態は、OLTの指示に従ってONUが通信制御処理時間を計測し、OLTがONUにより計測された通信制御処理時間に基づいて通信制御処理レベル値を決定してONUに設定指示するというものである。
【0109】
第2の実施形態においても、光通信ネットワークの全体構成は第1の実施形態と同様であるので図1を用いて説明する。
【0110】
図8は、第2の実施形態のOLT1の内部構成を示す内部構成図である。
【0111】
図8において、第2の実施形態のOLT1は、受信した光信号を電気信号に変換する光受信部110、制御部160の制御を受けて所定の受信処理を行う受信信号受信処理部120、コアネットワークとの間の情報授受を行うコアネットワークインタフェース部130、制御部160の制御を受けて所定の送信処理を行う送信処理部140、電気信号を光信号に変換して送信する光送信部150、ONU2−nとの間の通信処理を制御する制御部160を有する。
【0112】
なお、OLT1は、光ファイバ3を介して複数のONU2−nとの間で光通信を行うものである。従って、制御部160は、それぞれのONU2−nの通信制御処理を統括的に管理するものとしても良い。
【0113】
図9は、第2の実施形態のOLT1の制御部160による主な機能を説明する機能ブロック図である。
【0114】
図9に示すように、OLT1の制御部160は、通信制御処理時間計測要求部41、通信制御処理時間取得部42、通信制御処理時間判定部43、通信制御処理レベル決定部44、通信制御処理レベル設定要求部45、記憶部46を有する。
【0115】
通信制御処理時間計測要求部41は、ONU2−nに対して、通信制御処理時間の計測を要求するものである。
【0116】
通信制御処理時間取得部42は、ONU2−Nにより計測された通信制御処理時間を取得するものである。
【0117】
通信制御処理時間判定部43は、通信制御処理時間取得部42により取得された通信制御処理時間と閾値(例えば、標準規格値等)とを比較判定するものである。
【0118】
通信制御処理レベル決定部44は、通信制御処理時間判定部43による判定結果に基づいて、ONU2−nにおける通信制御処理レベル値を決定するものである。また、通信制御処理レベル決定部44は、ONU2−nから取得した通信制御処理時間に基づいて、ONU2−nにおける通信制御処理時間(標準規格値)の時間長を調整するものである。
【0119】
通信制御処理レベル設定要求部45は、通信制御処理レベル決定部44により決定された通信制御処理レベル値、及び又は、調整後のONU2−nにおける通信制御処理時間を、対応するONU2−nに設定要求するものである。
【0120】
記憶部46は、通信制御処理時間取得部42により取得された各ONU2−nの通信制御処理時間や、通信制御処理時間と比較する各閾値や、通信制御処理レベル決定部44が決定した通信制御処理レベルやその設定に必要な情報等を記憶するものである。記憶部46は、揮発性メモリや不揮発性メモリ等を適用できる。
【0121】
図10は、第2の実施形態のONU2−nの制御部260による主な機能を説明する機能ブロック図である。
【0122】
図10に示すように、ONU2−nの制御部260は、通信制御処理部31、通信制御処理時間計測要求取得部51、通信制御処理時間計測部32、通信制御処理時間応答部52、通信制御処理レベル設定要求取得部53、通信制御処理レベル設定部54、通信制御処理レベル設定応答部55、記憶部56を有する。
【0123】
通信制御処理部31は、第1の実施形態と同様に、ONU2−nの通信制御処理を行うものであり、通信制御処理の種類は特に限定されるものではない。第2の実施形態においても、通信制御処理部31が、GATE解析処理部311、省電力処理部312、距離長延化対応処理部313、ログ記録処理部314を有する場合を例示する。
【0124】
また、通信制御処理部31は、後述する通信制御処理レベル設定部34により設定された通信制御処理レベル値に従って通信制御処理を行う。
【0125】
通信制御処理時間計測要求取得部51は、OLT1から通信制御処理時間計測要求を取得するものである。
【0126】
通信制御処理時間計測部32は、通信制御処理時間計測要求が与えられると、自身の通信制御処理に係る時間を計測するものである。
【0127】
ここで、通信制御処理時間の計測方法は、例えば、第1の実施形態と同様に、OLT1から送信されたMPCPフレームの受信時刻と、OLT1へのMPCPフレームの送信時刻とを計測する方法を適用することができる。
【0128】
通信制御処理時間応答部52は、通信制御処理時間をOLT1に応答するものである。
【0129】
なお、第2の実施形態では、通信制御処理時間の計測要求を受信したときに、通信制御処理時間を計測する場合を例示するが、通信制御処理時間計測部32が、事前に通信制御処理時間を計測しておき、その事前に計測しておいた通信制御処理時間をOLT1に送信するようにしても良い。
【0130】
通信制御処理レベル設定要求取得部53は、OLT1から通信制御処理レベル設定要求を取得するものである。
【0131】
通信制御処理レベル設定部54は、通信制御処理レベル設定要求があると、OLT1から取得した通信制御処理レベル値を、記憶部56に設定するものである。これにより、OLT1により決定された通信制御処理レベル値に応じた処理を通信制御処理部31が行う。
【0132】
通信制御処理レベル設定応答部55は、OLT1から通信制御処理レベル設定要求に対応する応答を行うものである。
【0133】
記憶部56は、通信制御処理レベル設定部54により設定される通信制御処理レベル値やその設定に必要な情報等を記憶するものである。記憶部56は、揮発性メモリや不揮発性メモリ等を適用できる。
【0134】
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態のONU2−nにおける通信制御処理の監視動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0135】
図11は、第2の実施形態のONU2−nにおける通信制御処理の監視処理の動作を示すシーケンスである。
【0136】
まず、OLT1において、通信制御処理時間計測要求部41は、ONU2−nに対して通信制御処理時間計測要求信号を送信する(S201)。通信制御処理時間の計測タイミングは、第1の実施形態と同様に、例えば、ONU2−nの装置起動時やセッション断後の再接続時等とすることができる。
【0137】
ここで、OLT1とONU2−nとの間の通信制御処理に係る情報の授受は、例えば、Ethernet(登録商標) OAMを用いて行うことができる。Ethernet(登録商標) OAMの方式は、例えば、ITU−T Y.1731,IEEE802.1ag,IEEE802.3ah等の標準規格技術や、独自技術を適用することができる。
【0138】
図12は、IEEE802.1agフレームフォーマットの構成を示す構成図である。この実施形態では、OLT1とONU2−nとの間の通信について、IEEE802.1ag OAMフレームフォーマットを用いる場合を例示する。例えば、OLT1がONU2−nに対して通信制御処理時間計測要求を行う場合、図12に示すフレームフォーマットの「Sub−Typeフィールド」に、通信制御処理時間計測要求を示す値を格納し、「Valueフィールド」にGET Request又はGET Responseを示す値を格納する。なお、図12の「Typeフィールド」は、ベンダ独自を示すOrganization Specific TLVとする場合を示す。
【0139】
ONU2−nにおいて、OLT1から通信制御処理時間計測要求信号を受信すると、通信制御処理時間計測部32は、通信制御処理時間を計測する(S202)。通信制御処理時間計測部32による通信制御処理時間の計測方法は、第1の実施形態と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0140】
そして、通信制御処理時間応答部52は、OLT1に対して通信制御処理時間応答信号を送信する(S203)。
【0141】
OLT1において、通信制御処理時間判定部43は、ONU2−nから受信した通信制御処理時間と閾値とを比較して、通信制御処理時間が閾値以下であるか否かを判定する。そして、ONU2−nにおける通信制御処理時間が、閾値を超えるような場合、通信制御処理レベル決定部44は、当該ONU2−nの通信制御処理レベルの値を決定する(S204)。
【0142】
OLT1において、通信制御処理レベル設定要求部45は、通信制御処理レベル決定部44により決定された通信制御処理レベル値を含む設定要求信号をONU2−nに送信する(S205)
ONU2−nにおいて、通信制御処理レベル設定要求取得部53がOLT1から通信制御処理レベル設定要求信号を取得すると、通信制御処理レベル設定部54は、OLT1から取得した通信制御処理レベル値を記憶部56に記憶して設定する(S206)。そして、通信制御処理レベル設定応答部55が、OLT1に対して通信制御処理レベル設定応答信号を送信する(S207)。
【0143】
このように、OLT1は、ONU2−nから取得した通信制御処理時間に基づいて、当該ONU2−nの通信制御処理レベル値を決定する。ONU2−nは、OLT1から受信した通信制御処理レベル値を設定に反映し、OL1Tに反映したことを通知する。
【0144】
このようにすることで、ONU2−nにおいて、通信制御処理部31は、OLT1から受信した通信制御処理レベル値に応じた通信制御処理を行うことができる。
【0145】
第2の実施形態によれば、OLT1は、ONU2−nの通信制御処理時間を知ることができる。さらに、OLT1は、GATEフレームのGrant Start Timeの設定限界値を計算することができる。
【0146】
ここで、Grant Start Timeの設定限界値の計算方法を説明する。
【0147】
Grant Start Timeの設定限界値をtとする。ONU2−nの現在の通信制御処理レベルによる通信制御処理時間をTとする。OLT−ONU2−n間の光信号が届く時間をΔtとし、OLT1がGate信号を送信するまでに必要な時間をΔuとする。
【0148】
このとき、OLT1は、下記式(1)に基づいて、Grant Start Timeの設定限界値tを求める。
【0149】
t=T+Δt+Δu …(1)
これにより、OLT1は、ONU2−nの通信制御処理時間に合わせてGrant Start Timeを決定することも可能である。
【0150】
Grant Start Timeが大きくなればONU2−nがGATEフレームを受信してから、REPORTを送信するまでの時間間隔が長くなり、その分ONU2−nの通信制御処理時間に余裕ができる。
【0151】
逆に、Grant Start Timeを小さくすることも可能である。その場合、ONU2−nは、今までより早くOLT1にREPORTを返すことができるため、OLT1−ONU2−n間の通信遅延をより小さくできる。
【0152】
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果と同様の効果を奏することができる。また、第2の実施形態によれば、OLT1が、各ONU2−nの通信制御処理に係る通信制御処理時間を知ることができるため、Grant Start Timeの調整を行うことができる。
【0153】
(C)他の実施形態
(C−1)上述した実施形態では、光通信ネットワークを構成するONUが自身の通信制御処理時間を監視したり、又はOLTからの要求信号に基づいてONUが通信制御処理時間を監視したりする場合を例示した。しかし、本発明は、電気的な通信処理を行う通信機器に広く適用することができる。
【0154】
(C−2)上述した実施形態では、光通信システムがGE−PONシステムを採用する場合を例示したが、他の光通信システムにも広く適用することができる。
【0155】
(C−3)第2の実施形態では、OLTからの要求に応じてONUが通信制御処理時間を計測し、OLTが通信制御処理レベル値を決定し、ONUがOLTにより決定された通信制御処理レベル値に基づく通信制御処理を行う場合を例示した。第2の実施形態の変形例として、OLTからの要求に基づいて、ONUが通信制御処理時間を計測し、ONU自身がその計測結果に基づいて通信制御処理レベルを決定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0156】
10…光通信ネットワーク、
2−n…ONU、220…受信処理部、240…送信処理部、260…制御部、31…通信制御処理部、32…通信制御処理時間計測部、33…通信制御処理時間判定部、34…通信制御処理レベル設定部、35…記憶部、51…通信制御処理時間計測要求取得部、52…通信制御処理時間応答部、53…通信制御処理レベル設定要求取得部、54…通信制御処理レベル設定部、55…通信制御処理レベル設定応答部、56…記憶部、
1…OLT、120…受信処理部、140…送信処理部、160…制御部、41…通信制御処理時間計測要求部、42…通信制御処理時間取得部、43…通信制御処理時間判定部、44…通信制御処理レベル決定部、45…通信制御処理レベル設定要求部、46…記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12