(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205848
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】太陽電池セルの検査装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20170925BHJP
H01L 31/04 20140101ALI20170925BHJP
【FI】
G01B11/24 K
H01L31/04
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-112775(P2013-112775)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-232040(P2014-232040A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100101753
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 隆司
(72)【発明者】
【氏名】永井 正道
【審査官】
池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−256053(JP,A)
【文献】
特開2009−186338(JP,A)
【文献】
特開2011−196708(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0104255(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02284523(EP,A1)
【文献】
特開平11−250238(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/152445(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B11/00−11/30
G01N21/84−21/958
H01L31/02
31/0216−31/0224,
31/0236,
31/0248−31/0256
31/0352−31/036 ,
31/0392−31/078 ,
31/18,
51/42−51/48
H02S10/00−10/40,
30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルの端縁の形状を検査する太陽電池セルの検査装置において、
前記太陽電池セルの端縁を含む画像を、広角レンズを介して撮影するカメラと、
前記太陽電池セルの端縁に対して、前記カメラとは逆側から光を照射する光照射部と、
前記カメラにより撮影した前記太陽電池セルの端縁を含む画像から、前記太陽電池セルの端縁の位置を複数点で測定し、それらの複数点で測定した端縁の位置から、前記カメラにより撮影された前記太陽電池セルの端縁に相当する近似曲線を表す多項式を演算する演算部と、
前記演算部で演算した多項式により表される近似曲線を利用して、前記太陽電池セルの端縁の形状を検査する検査部と、
を備え、
前記カメラにより前記広角レンズを介して撮影された画像における太陽電池セルの端縁の位置と、前記多項式により表される近似曲線の位置を比較し、両者の距離が設定値以上であった場合に太陽電池セルの端縁に欠陥が存在していると判断することを特徴とする太陽電池セルの検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池セルの検査装置において、
前記演算部は、複数点で測定した前記太陽電池セルの端縁の位置に基づいて、最小二乗法により前記多項式で表される近似曲線を演算する太陽電池セルの検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、略矩形状の太陽電池セルの端縁の形状を検査する太陽電池セルの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セルの生産工程においては、例えば、反射防止膜の成膜後に、太陽電池セルの形状の欠陥、表面の欠陥、あるいは、内部の欠陥の検査が実行される。これらの検査のうち、太陽電池セルの端縁に生じた欠けや突起を検査する形状欠陥の検査は、太陽電池セルの下面側から可視光を照射し、太陽電池セルの上面側に配置したカメラにより太陽電池セルの端縁付近を通過した可視光を受光して太陽電池セルの端縁を含む画像を得ることにより、太陽電池セルの端縁に欠けや突起等の欠陥が存在するか否かを判定する構成となっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−53973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような太陽電池セルの形状欠陥の検査を行う場合においては、カメラにより撮影した太陽電池セルの端縁を含む画像から、太陽電池セルの端縁の位置を複数点で測定し、それらの複数点で測定した端縁の位置から太陽電池セルの端縁を表す近似直線を求め、この近似直線と実際の太陽電池セルの端縁の画像の位置との差異に基づいて、太陽電池セルの端縁に欠けや突起等の欠陥が生じているか否かを判定している。
【0005】
ここで、太陽電池セルの端縁を含む画像は、通常、レンズを介してカメラにより撮影される。そして、検査装置を小型化するため、太陽電池セルの表面に対してカメラを近接配置するためには、レンズとして広角レンズが使用される。このような広角レンズを使用した場合には、樽型歪あるいは糸巻き型歪により、略矩形状の太陽電池セルの直線状の端縁の画像が曲線状に歪むという現象が生ずる。このため、太陽電池セルの端縁を表す近似直線と実際の太陽電池セルの端縁の位置との差異に基づいて太陽電池セルの端縁の欠けや突起等の欠陥を判定する場合に、その判定精度が低下するという問題が生ずる。
【0006】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、太陽電池セルの端縁の形状を正確に検査することが可能な太陽電池セルの検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、太陽電池セルの端縁の形状を検査する太陽電池セルの検査装置において、前記太陽電池セルの端縁を含む画像を、
広角レンズを介して撮影するカメラと、前記太陽電池セルの端縁に対して、前記カメラとは逆側から光を照射する光照射部と、前記カメラにより撮影した前記太陽電池セルの端縁を含む画像から、前記太陽電池セルの端縁の位置を複数点で測定し、それらの複数点で測定した端縁の位置から、前記カメラにより撮影された前記太陽電池セルの端縁に相当する近似曲線を表す多項式を演算する演算部と、前記演算部で演算した多項式により表される近似曲線を利用して、前記太陽電池セルの端縁の形状を検査する検査部と、を備え
、前記カメラにより前記広角レンズを介して撮影された画像における太陽電池セルの端縁の位置と、前記多項式により表される近似曲線の位置を比較し、両者の距離が設定値以上であった場合に太陽電池セルの端縁に欠陥が存在していると判断することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記演算部は、複数点で測定した前記太陽電池セルの端縁の位置に基づいて、最小二乗法により前記多項式で表される近似曲線を演算する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、多項式により表される近似曲線を利用して太陽電池セルの端縁の形状を検査することにより、カメラにより撮影された画像に歪みが生じた場合においても、太陽電池セルの端縁の形状を正確に検査することが可能となる。このため、検査装置を小型化するための広角レンズを使用した場合においても、広角レンズによる歪みの影響を排除して正確な検査を実行することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、最小二乗法により近似曲線を表す多項式を容易に演算することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明に係る太陽電池セルの検査装置の概要図である。
【
図2】この発明に係る太陽電池セルの検査装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【
図3】この発明に係る太陽電池セルの検査装置による形状欠陥の検査の基本的な考え方を、従来の形状欠陥の検査と比較して説明するための説明図である。
【
図4】演算部22により太陽電池セル100の端縁に相当する近似曲線101を表す多項式を演算する動作を説明する説明図である。
【
図5】検査部23により多項式により表される近似曲線101を利用して太陽電池セル100の端縁の形状を検査する動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係る太陽電池セルの検査装置の概要図である。
【0013】
この太陽電池セルの検査装置は、略矩形状の太陽電池セル100に対して、その端縁に生じた欠けや突起を検査する形状欠陥の検査を行うものであり、白色反射板200に向けて可視光を照射するための複数のLED素子13と、LED素子13から出射され白色反射板200で反射した後、太陽電池セル100の端縁を通過した可視光を、レンズ11を介して受光することにより、太陽電池セル100の端縁を含む画像を撮影するCCDカメラ12とを備える。
【0014】
なお、この発明に係る太陽電池セルの検査装置により検査される太陽電池は、その端縁が直線状となる略矩形状の形状を有する。ここで、略矩形状とは、正確な矩形状である場合や、矩形の角部が面取りされた変形8角形である場合など、実質的に矩形状である全ての形状を含む。また、太陽電池セルとは、電極等が形成され反射防止膜が成膜された状態の太陽電池セルのみではなく、電極等の形成や反射防止膜の成膜等がなされる前の基板状態の太陽電池セルをも含む。
【0015】
図2は、この発明に係る太陽電池セルの検査装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【0016】
この発明に係る太陽電池セルの検査装置は、論理演算を実行するCPU、装置の制御に必要な動作プログラムが格納されたROM、制御時にデータ等が一時的にストアされるRAM等から構成され、装置全体を制御する制御部20を備える。この制御部20は、後述するように、機能的構成として、CCDカメラ12により撮影された太陽電池セル100の端縁に相当する近似曲線を表す多項式を演算する演算部22と、この演算部22で演算した多項式により表される近似曲線を利用して太陽電池セル100の端縁の形状を検査する検査部23とを有する画像処理部21を備える。この制御部20は、上述したCCDカメラ12と、LED光源13とに接続されている。また、この制御部20は、CCDカメラ12により撮影された画像や、その他の各種の情報を表示する表示部14とも接続されている。
【0017】
図3は、この発明に係る太陽電池セルの検査装置による形状欠陥の検査の基本的な考え方を、従来の形状欠陥の検査と比較して説明するための説明図である。
【0018】
略矩形状を成す太陽電池セル100の検査装置においては、従来、
図3(a)に示すように、CCDカメラ12により撮影した太陽電池セル100の端縁を含む画像から太陽電池セル100の端縁の位置を複数点で測定し、それらの複数点で測定した端縁の位置から太陽電池セル100の端縁に相当する近似直線Aを求める。そして、この近似直線Aと実際の太陽電池セル100の端縁の位置との差異に基づいて、太陽電池セル100の端縁に欠けや突起等の欠陥が生じているか否かを判定していた。
【0019】
しかしながら、
図1に示す太陽電池セルの検査装置において、装置をコンパクトに構成できるようにCCDカメラ12を太陽電池セル100に近接配置させる場合には、レンズ11として広角レンズを使用する必要が生ずる。レンズ11として広角レンズを使用した場合には、広角レンズに特有の樽型歪あるいは糸巻き型歪により、略矩形状の太陽電池セル100の直線状の端縁の画像が、
図3(a)に示すように、曲線状に歪むという現象が生ずる。このような現象が生じた場合には、
図3(a)においてハッチングで示すように、近似直線Aと太陽電池セル100の端縁の位置との間に差異が生ずる。このような条件の下で、近似直線Aと実際の太陽電池セル100の端縁の画像の位置との差異に基づいて太陽電池セル100の欠陥を判定した場合には、その判定精度が低下するという問題が生ずる。
【0020】
このため、この発明に係る太陽電池セルの検査装置においては、近似直線Aにかえて、CCDカメラ12により撮影された太陽電池セル100の端縁の位置に相当する曲線Bに対応した多項式からなる近似曲線を求め、この近似曲線を利用して太陽電池セル100の端縁形状を検査することにより、広角レンズ特有の樽型歪あるいは糸巻き型歪の影響を解消している。
【0021】
次にこの発明に係る太陽電池セルの検査装置による太陽電池セル100の検査動作について説明する。
図4は、演算部22により太陽電池セル100の端縁に相当する近似曲線101を表す多項式を演算する動作を説明する説明図である。また、
図5は、検査部23により多項式により表される近似曲線101を利用して太陽電池セル100の端縁の形状を検査する動作を示す説明図である。
【0022】
太陽電池セル100の端縁の形状を検査するときには、
図1に示すように、LED素子13から白色反射板200に向けて可視光を照射する。LED素子13から出射され白色反射板200で反射した可視光は、太陽電池セル100の端縁付近を通過した後、レンズ11を介してCCDカメラ12に入射する。CCDカメラ12は、太陽電池セル100の端縁を含む画像を撮影する。
【0023】
図2に示す画像処理部21における演算部22は、CCDカメラ12により撮影した太陽電池セル100の端縁を含む画像から、太陽電池セル100の端縁に相当する近似曲線101を表す多項式を演算する。この場合においては、
図4に示すように、太陽電池セル100の端縁付近の領域を複数の単位領域Eに分割する。そして、各単位領域における端縁の位置を求める。この端縁の位置は、単位領域E内の画素値の変化値に基づいて求められる。
図2においては、各単位領域Eにおける端縁の重心位置を各単位領域Eにおける端縁の位置として、黒丸で示している。
【0024】
次に、演算部22は、これらの端縁の位置を通過する近似曲線101を示す多項式を演算する。この多項式としては、例えば、下記の二次式が使用される。
【0025】
Y=aX
2 +bX+c
この多項式の演算時には、最小二乗法が利用される。すなわち、最小二乗法により、計数a、b、cを求めることにより、多項式が演算される。このように、最小二乗法を利用した場合には、近似曲線101を表す多項式を容易に演算することが可能となる。
【0026】
レンズ11として広角レンズを採用することにより生ずる樽型歪や糸巻き型歪は、二次式により表される曲線で対応することが可能となる。ただし、三次式以上の高次の多項式を使用してもよい。
【0027】
なお、
図4においては、単一の近似曲線101を図示しているが、この近似曲線101は、略矩形状を成す太陽電池セル100における直線状の4辺の全てに対して求められる。ここで、
図4に示す近似曲線101と直交する方向の近似直線を求めるときには、上述した式のXとYとを入れ替えればよい。
【0028】
太陽電池セル100の端縁に相当する近似曲線101を表す多項式が演算されれば、この多項式により表される近似曲線101を利用して太陽電池セル100の端縁の形状を検査する。この場合には、
図5に示すように、CCDカメラ12により撮影された画像における太陽電池セル100の端縁の位置102と、多項式により表される近似曲線101の位置を比較する。そして、両者の距離dが設定値以上であった場合に、太陽電池セル100の端縁に欠けや突起等の欠陥が存在していると判断する。この太陽電池セル100の端縁の形状の検査結果は、例えば、表示部14に表示される。
【0029】
以上のように、この発明に係る太陽電池セルの検査装置においては、太陽電池セル100の端縁の位置を表す曲線Bに対応した多項式からなる近似曲線101を利用して太陽電池セル100の端縁の形状を検査することから、検査装置を小型化するためにレンズ11として広角レンズを使用して太陽電池セル100の表面に対してカメラ12を近接配置した場合に、CCDカメラ12により撮影された太陽電池セル100の端縁の画像に樽型歪や糸巻き型歪が生じた場合においても、その歪みを補正して検査精度を高く維持することが可能となる。
【0030】
なお、上述した実施形態においては、白色反射板200に向けて可視光を照射するための複数のLED素子13を使用し、LED素子13から出射され白色反射板200で反射可視光を太陽電池セル100の端縁付近に照射している。しかしながら、太陽電池セル100におけるCCDカメラ12とは逆側の位置に光源を配置し、この光源から太陽電池セル100の端縁付近に向けて光を照射するようにしてもよい。
【0031】
また、上述した実施形態においては、太陽電池セル100の端縁に生じた欠けや突起を検査する形状欠陥の検査のみを行う検査装置にこの発明を適用しているが、例えば特許文献1として記載した特開2013−53973号公報に記載されたように、太陽電池セルの形状の欠陥、表面の欠陥、および、内部の欠陥の検査を同時に実行する太陽電池セルの検査装置にこの発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0032】
11 レンズ
12 CCDカメラ
13 LED光源
14 表示部
20 制御部
21 画像処理部
22 演算部
23 検査部
100 太陽電池セル
101 近似曲線
200 白色反射板
E 単位領域